説明

保水ブロックおよび保水ブロック製造装置

【課題】強度の向上を図ることができるとともに、効率良く吸水できる保水ブロックおよび保水ブロック製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】板厚の薄い平板状を呈する保水ブロック1,2,3,100であって、所定の高さ寸法に設定された樹脂性のトレー10,20,30,110と、このトレー10,20,30,110内に一体的に固着収納されるポーラスコンクリート11,21,31,111とからなり、トレー10,20,30,110の底板部12,22,32,112には、吸水効率を高めるための孔部が形成、または形成可能とされている。また、トレー10,20,30を所定高さに支持し、ポーラスコンクリート11,21,31を複数の孔部12a,22a,32aから、所定寸法分、はみ出させることによって保水ブロック1,2,3を製造する保水ブロック製造装置40,50。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板厚の薄い平板状を呈する保水ブロックおよび保水ブロック製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートアイランド現象の抑制を目的として、屋上緑化や壁面緑化等を始め、建物の温度上昇を防止するための様々な技術が開発されている。
特許文献1に記載の技術は、上面側に、比較的大きい骨材間に比較的大きい空隙を有するとともに、下面側に、比較的小さい骨材間に比較的小さい空隙を有し、さらに保水性および透水性を有するポーラスコンクリートにより形成された多孔質版を建物の屋上のコンクリートスラブ上に複数設置するというものである。そして、多孔質版の空隙には植栽用土が充填されており、植物の苗や種子を植栽できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−136772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、個人住宅でも、上記特許文献1に記載の多孔質版のようなブロック材を用いて建物の緑化を行いたいという要望が増えている。
ところが、例え空隙の多いポーラスコンクリートといえども、厚みが大きければ、その分重くなってしまうため、建物への負担が大きくなるという問題がある。そこで、できるだけブロック材を薄くしたいという要望があるが、薄くしてしまうと、ブロック材自体の強度を維持・向上させることが困難となる場合があった。
また、このようにブロック材を薄くしてしまうと、同じ材料からなる厚みのあるブロック材に比して、保水量の低減は免れられないため、ブロック材の強度の維持・向上だけでなく、効率良く吸水できる技術の開発が望まれていた。
【0005】
本発明の課題は、強度の向上を図ることができるとともに、効率良く吸水できる保水ブロックおよび保水ブロック製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図5に示すように、板厚の薄い平板状を呈する保水ブロック1,2,3であって、
所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口した樹脂性のトレー10,20,30と、
このトレー10,20,30内に打設されるとともに該トレー10,20,30内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリート11,21,31とからなり、
前記トレー10,20,30は、底板部12,22,32と、この底板部12,22,32の周縁部から立ち上がる側板部13,23,33とを備えており、
前記底板部12,22,32には、トレー10,20,30内部と外部とを連通するとともに、前記ポーラスコンクリート11,21,31の骨材の粒径よりも大きな孔部12a,22a,32aが複数形成されていることを特徴とする。
【0007】
なお、前記保水ブロック1,2,3としては、例えば砂を混入することなく、かつ強度を補う添加剤を添加することなく、粒度3〜20mmの軽石(乾燥比重が0.4)50〜62重量%とポルトランドセメント50〜38重量%との配合物に、水40〜50重量%を散布して混練した状態の生コンクリートを型枠に入れて固めたものが挙げられる。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、前記ポーラスコンクリート11,21,31は、前記トレー10,20,30内に打設されるとともに該トレー10,20,30内に一体的に固着収納されるので、前記ポーラスコンクリート11,21,31を、単独では強度を維持できない薄さにしたとしても、該ポーラスコンクリート11,21,31の強度が低下することを確実に防ぐことができる。したがって、例えば単独で強度を維持できる程度の厚さのポーラスコンクリートで構成される保水ブロックに比して板厚の薄い保水ブロック1,2,3を、確実に得ることができる。
また、前記ポーラスコンクリート11,21,31を、前記トレー10,20,30内に打設して、該トレー10,20,30内に一体的に固着収納するため、該トレー10,20,30を、前記ポーラスコンクリート11,21,31の型枠として利用できる。これによって、前記ポーラスコンクリート11,21,31を予めトレー10,20,30の形状に対応できるように成形しておく必要がないので、単に前記トレー10,20,30内に打設するだけで済み、保水ブロック1,2,3を容易に形成することができる。
さらに、前記底板部12,22,32には、トレー10,20,30内部と外部とを連通するとともに、前記ポーラスコンクリート11,21,31の骨材の粒径よりも大きな孔部12a,22a,32aが複数形成されているので、前記ポーラスコンクリート11,21,31の骨材を、前記複数の孔部12a,22a,32aからはみ出させて、前記トレー10,20,30が載置される床面等に当接させることができる。これによって、前記トレー10,20,30の上部の開口からだけでなく、前記底板部12,22,32側からも吸水できるので、例えば上部だけが開口するトレーを用いた保水ブロックに比して、効率良く吸水することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項1に記載の保水ブロック1において、
前記底板部12は、この底板部12と一体的に形成されるとともに、前記複数の孔部12a…の周縁部から下方に向かって突出する複数の筒状の突出脚部17…を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記底板部12は、この底板部12と一体的に形成されるとともに、前記複数の孔部12a…の周縁部から下方に向かって突出する複数の筒状の突出脚部17…を有しているので、これら複数の突出脚部17…によって前記トレー10を所定高さに支持することができる。これによって、例えば前記底板部12が床面等に、べたで載置される場合に比して、前記底板部12の下方に満遍なく水を行き渡らせることができるので、前記底板部12側から吸水する際に、前記底板部12の周縁側の孔部12aや中央側の孔部12aの区別なく、より効率良く吸水することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項2に記載の保水ブロック1において、
前記ポーラスコンクリート11が、前記複数の孔部12a…から前記複数の突出脚部17…を介して、所定の寸法分、これら突出脚部17…の下端部よりも下方にはみ出しており(例えば、はみ出し部11a)、
そのはみ出し寸法は3mm〜5mmに設定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記ポーラスコンクリート11が、前記複数の孔部12a…から前記複数の突出脚部17…を介して、所定の寸法分、これら突出脚部17…の下端部よりも下方にはみ出しており、そのはみ出し寸法は3mm〜5mmに設定されているので、該突出脚部17…の下端部よりも下方にはみ出した部分から確実に吸水でき、さらに効率良く吸水できることになる。
また、前記ポーラスコンクリート11を、前記突出脚部17…の下端部よりも下方にはみ出させることによって、例えば前記ポーラスコンクリート11を、前記突出脚部17…の下端部よりも下方にはみ出させない場合に比して、前記トレー10とポーラスコンクリート11との結合度合を高めることができるので、前記ポーラスコンクリート11が前記トレー10から脱離しにくくなる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図4および図5に示すように、請求項1に記載の保水ブロック2,3において、
前記ポーラスコンクリート21,31が、前記複数の孔部22a,32aから、所定の寸法分、前記底板部22,32の下面よりも下方にはみ出しており、
前記底板部22,32の下面よりも下方にはみ出した部分は脚部21a,31aとされており、
これら脚部21a,31aのはみ出し寸法は3mm〜12mmに設定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記ポーラスコンクリート21,31が、前記複数の孔部22a,32aから、所定の寸法分、前記底板部22,32の下面よりも下方にはみ出しており、前記底板部22,32の下面よりも下方にはみ出した部分は脚部21a,31aとされているので、これら脚部21a,31aによって前記トレー20,30を所定高さに支持することができる。これによって、例えば前記底板部22,32が床面等に、べたで載置される場合に比して、前記底板部22,32の下方に満遍なく水を行き渡らせることができるので、前記底板部22,32側から吸水する際に、前記底板部22,32の周縁側の孔部22a,32aや中央側の孔部22a,32aの区別なく、より効率良く吸水することができる。
また、前記脚部21a,31aのはみ出し寸法は3mm〜12mmに設定されているので、該脚部21a,31aから確実に吸水でき、さらに効率良く吸水できることになる。
さらに、前記ポーラスコンクリート21,31を、前記複数の孔部22a,32aから、所定の寸法分、前記底板部22,32の下面よりも下方にはみ出させることによって、例えば前記ポーラスコンクリート21,31を、前記複数の孔部22a,32aから、前記底板部22,32の下面よりも下方にはみ出させない場合に比して、前記トレー20,30とポーラスコンクリート21,31との結合度合を高めることができるので、前記ポーラスコンクリート21,31が前記トレー20,30から脱離しにくくなる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば図5に示すように、請求項4に記載の保水ブロック3において、
前記脚部31aは、前記複数の孔部32aの開口幅よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記脚部31aは、前記複数の孔部32aの開口幅よりも大きくなるように形成されているので、前記トレー30内のポーラスコンクリート31と脚部31aとによって前記トレー30の底板部32を挟みこむような形となる。これによって、前記トレー30とポーラスコンクリート31との結合強度を確実に高めることができるので、前記ポーラスコンクリート31が前記トレー30から脱離することを確実に防ぐことができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、例えば図6〜図8に示すように、板厚の薄い平板状を呈する保水ブロック100であって、
所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口した樹脂性のトレー110と、
このトレー110内に打設されるとともに該トレー110内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリート111とからなり、
前記トレー110は、底板部112と、この底板部112の周縁部から立ち上がる側板部113とを備えており、
前記底板部112は、この底板部112の外周縁よりも内側に所定の間隔をあけて、かつ該底板部112の全周にわたって切り離し用ミシン目112aを線状に形成することによって、この切り離し用ミシン目112aよりも内側の部分112bを切り離し可能に構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、前記ポーラスコンクリート111は、前記トレー110内に打設されるとともに該トレー110内に一体的に固着収納されるので、前記ポーラスコンクリート111を、単独では強度を維持できない薄さにしたとしても、該ポーラスコンクリート111の強度が低下することを確実に防ぐことができる。したがって、例えば単独で強度を維持できる程度の厚さのポーラスコンクリートで構成される保水ブロックに比して板厚の薄い保水ブロック100を、確実に得ることができる。
また、前記ポーラスコンクリート111を、前記トレー110内に打設して、該トレー110内に一体的に固着収納するため、該トレー110を、前記ポーラスコンクリート111の型枠として利用できる。これによって、前記ポーラスコンクリート11を予めトレー110の形状に対応できるように成形しておく必要がないので、単に前記トレー110内に打設するだけで済み、保水ブロック100を容易に形成することができる。
さらに、前記底板部112は、この底板部112の外周縁よりも内側に所定の間隔をあけて、かつ該底板部112の全周にわたって切り離し用ミシン目112aを線状に形成することによって、この切り離し用ミシン目112aよりも内側の部分112bを切り離し可能に構成されているので、例えば、この底板部112に孔部を形成して吸水効率を向上させる場合とは異なり、前記トレー110内に、過度にポーラスコンクリート111を流し込むなどして、孔部からポーラスコンクリート111が余計に出てしまうようなことを確実に防ぐことができる。これによって、前記トレー110内へのポーラスコンクリート111の打設作業を、孔部からポーラスコンクリート111が余計に出てしまうようなことを考慮せずに容易かつ確実に行うことができる。
その上、前記ポーラスコンクリート111が固まった後、前記底板部112の切り離し用ミシン目112aよりも内側の部分112bを切り離すことによって、前記ポーラスコンクリート111の底面を下方に大きく露出させることができる。これによって、前記トレー110の上部の開口からだけでなく、前記底板部112側からも吸水できるので、例えば上部だけが開口するトレーを用いた保水ブロックに比して、効率良く吸水することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、例えば図6〜図8に示すように、請求項6に記載の保水ブロック100において、
前記トレー111は、このトレー111の周方向に沿って水平に設けられる少なくとも一段の水平部112cを備えていることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、前記トレー111は、このトレー111の周方向に沿って水平に設けられる少なくとも一段の水平部112cを備えているので、前記ポーラスコンクリート111が固まり、前記底板部112の切り離し用ミシン目112aよりも内側の部分112bを切り離すことによって、前記ポーラスコンクリート111の底面を下方に大きく露出させた後に、この水平部112cによって前記ポーラスコンクリート111を確実に支持することができ、このポーラスコンクリート111が前記トレー110から抜け落ちることを確実に防ぐことができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、例えば図6〜図8に示すように、請求項6または7に記載の保水ブロック100において、
前記底板部112は、この底板部112の厚さ方向に窪むようにして形成された複数の窪み部112dを有していることを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、前記底板部112は、この底板部112の厚さ方向に窪むようにして形成された複数の窪み部112dを有しているので、これら複数の窪み部112d内に前記ポーラスコンクリート111を充填することができる。
そして、これら複数の窪み部112dに充填された部分のポーラスコンクリート111は、前記底板部112の切り離し用ミシン目112aよりも内側の部分112bを切り離した後に下方に突出した状態となるので、前記窪み部112dの深さを適宜設定しておくことによって、これら複数の突出部分を、保水ブロック100自体を支持する脚部111aとして利用することができる。
これによって、例えば前記底板部112が床面等に、べたで載置される場合に比して、前記底板部112の下方に満遍なく水を行き渡らせることができるので、前記底板部112側から吸水する際に、前記ポーラスコンクリート111の周縁側や中央側の区別なく、より効率良く吸水することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、例えば図1〜図5に示すように、請求項1〜8に記載の保水ブロック1,2,3,100において、
前記トレー10,20,30,110は平面視四角形状に形成されており、
その高さ寸法が20mm〜40mmに設定されており、一辺の長さが200mm〜500mmに設定されていることを特徴とする。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、前記トレー10,20,30,110は平面視四角形状に形成されており、その高さ寸法が20mm〜40mmに設定されており、一辺の長さが200mm〜500mmに設定されているので、前記ポーラスコンクリート11,21,31,111を、前記トレー10,20,30,110の上部開口からはみ出ないようにして該トレー10,20,30,100内に一体的に固着収納させることで、板厚の薄い保水ブロック1,2,3,100をより確実に得ることができる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、例えば図1〜図5に示すように、請求項1〜9のいずれか一項に記載の保水ブロック1,2,3,100において、
前記側板部13,23,33,113の内側面には、この内側面の中央付近の高さからトレー10,20,30,110中央側に向かって突出するとともに前記底板部12,22,32,112と対向するリブ16,26,36,116が設けられていることを特徴とする。
【0026】
請求項10に記載の発明によれば、前記側板部13,23,33,113の内側面には、この内側面の中央付近の高さからトレー10,20,30,110中央側に向かって突出するとともに前記底板部12,22,32,112と対向するリブ16,26,36,116が設けられているので、このリブ16,26,36,116よりも上方のポーラスコンクリート11,21,31,111と、リブ16,26,36,116よりも下方のポーラスコンクリート11,21,31,111とによって該リブ16,26,36,116を挟みこむような形となる。これによって、前記トレー10,20,30,110とポーラスコンクリート11,21,31,111との結合強度を、より高めることができるので、前記ポーラスコンクリート11,21,31,111が前記トレー10,20,30,110から脱離することを、より確実に防ぐことができる。
【0027】
請求項11に記載の発明は、例えば図1,図9および図10に示すように、板厚の薄い平板状を呈しており、
所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口し、さらに内部と外部とを連通する複数の孔部12a…,22a…が形成される底板部12,22と、この底板部12,22の周縁部から立ち上がる側板部13,23とを備えるトレー10,20と、
前記複数の孔部12a…,22a…の開口径よりも小さな粒径の骨材によって構成されており、さらに前記トレー10,20内に打設されるとともに該トレー10,20内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリート11,21とからなる保水ブロック1,2の製造装置40であって、
前記トレー10,20が複数並設される底面部41と、
この底面部41と前記複数のトレー10…,20…の底板部12,22との間に設けられるとともに、これら底面部12,22と前記複数のトレー10,20の底板部12,22との間に隙間を形成する複数のスペーサ42…,43…とを備えており、
これら複数のスペーサ42…,43…の高さ寸法は3mm〜5mmに設定されていることを特徴とする。
【0028】
請求項11に記載の発明によれば、前記トレー10,20が複数並設される底面部41と、この底面部41と前記複数のトレー10…,20…の底板部12,22との間に設けられるとともに、これら底面部12,22と前記複数のトレー10,20の底板部12,22との間に隙間を形成する複数のスペーサ42…,43…とを備えているので、このスペーサ42…,43…によって、前記トレー10,20を、前記底面部41の上方に、所定の高さで支持することができる。これによって、前記トレー10,20の底板部12,22と前記底面部41との間に隙間を形成できるので、前記トレー10,20内に打設したポーラスコンクリート11,21の骨材を、前記複数の孔部12a…,22a…から確実にはみ出させることができる。したがって、該複数の孔部12a…,22a…からはみ出した部分から確実に吸水でき、効率良く吸水できることになる。
そして、このような製造装置40で製造される保水ブロック1,2は、前記ポーラスコンクリート11,21を、前記トレー10,20内に打設するとともに該トレー10,20内に一体的に固着収納してなるので、前記ポーラスコンクリート11,21を、単独では強度を維持できない薄さにしたとしても、該ポーラスコンクリート11,21の強度が低下することを確実に防ぐことができる。したがって、例えば単独で強度を維持できる程度の厚さのポーラスコンクリートで構成される保水ブロックに比して板厚の薄い保水ブロック1,2を、確実に得ることができる。
【0029】
請求項12に記載の発明は、例えば図1,図11〜図13に示すように、板厚の薄い平板状を呈しており、
所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口し、さらに内部と外部とを連通する複数の孔部32a…が形成される底板部32と、この底板部32の周縁部から立ち上がる側板部33とを備えるトレー30と、
前記複数の孔部32a…の開口径よりも小さな粒径の骨材によって構成されており、さらに前記トレー30内に打設されるとともに該トレー30内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリート31とからなる保水ブロック3の製造装置50であって、
前記トレー30が複数並設される本体型枠51からなり、
この本体型枠51は、前記トレー30が載置される載置面52と、この載置面52に開口するとともに、該載置面52に載置されるトレー30の複数の孔部32aの位置に対応して配置形成される複数の凹状穴部53…とを備えており、
これら複数の凹状穴部53…の上部開口部43aの開口幅は、前記トレー30の複数の孔部32a…の開口幅よりも大きくなるように形成されており、
これら凹状穴部53…の上部開口部53aから底面53bまでの深さ寸法は3mm〜12mmに設定されていることを特徴とする。
【0030】
請求項12に記載の発明によれば、前記トレー30が複数並設される本体型枠51からなり、この本体型枠51は、前記トレー30が載置される載置面52と、この載置面52に開口するとともに、該載置面52に載置されるトレー30の複数の孔部32aの位置に対応して配置形成される複数の凹状穴部53…とを備えているので、前記トレー30を前記載置面52に載置することによって、該トレー30を、前記凹状穴部53…の底面53bから所定の高さの位置に支持できる。これによって、前記トレー30の底板部32と前記凹状穴部53…の底面53bとの間に隙間を形成できるので、前記トレー30内に打設したポーラスコンクリート31の骨材を、前記複数の孔部32a…から確実にはみ出させることができる。したがって、該複数の孔部32a…からはみ出した部分から確実に吸水でき、効率良く吸水できることになる。
また、前記複数の凹状穴部53…の上部開口部43aの開口幅は、前記トレー30の複数の孔部32a…の開口幅よりも大きくなるように形成されているので、前記複数の孔部32a…からはみ出すポーラスコンクリート31を、前記凹状穴部53…の形状に合わせた形状とすることができる。すなわち、前記トレー30の底板部32を、前記トレー30内のポーラスコンクリート31と、前記底板部32の下方にはみ出したポーラスコンクリート31とによって挟みこむような形となる。これによって、前記トレー30とポーラスコンクリート31との結合強度を確実に高めることができるので、前記ポーラスコンクリート31が前記トレー30から脱離することを確実に防ぐことができる。
そして、このような製造装置50で製造される保水ブロック3は、前記ポーラスコンクリート31を、前記トレー30内に打設するとともに該トレー30内に一体的に固着収納してなるので、前記ポーラスコンクリート31を、単独では強度を維持できない薄さにしたとしても、該ポーラスコンクリート31の強度が低下することを確実に防ぐことができる。したがって、例えば単独で強度を維持できる程度の厚さのポーラスコンクリートで構成される保水ブロックに比して板厚の薄い保水ブロック3を、確実に得ることができる。
【0031】
請求項13に記載の発明は、例えば図1,図11〜図13に示すように、請求項12に記載の保水ブロック製造装置50において、
前記本体型枠51は、この本体型枠51の上面51aよりも一段低い位置に前記載置面52を設けることによって該載置面52を底面とし、かつ前記トレー30の下部が嵌め込まれるトレー収容部51bを備えており、
このトレー収容部51bは、前記載置面52が、前記トレー30の底板部32と略等しい大きさとなるようにして、かつ該トレー収容部51bの内周壁面51cが、前記トレー30の下部の外周面と略等しい大きさとなるようにして形成されていることを特徴とする。
【0032】
請求項13に記載の発明によれば、前記トレー収容部51bは、前記載置面52が、前記トレー30の底板部32と略等しい大きさとなるようにして、かつ該トレー収容部51bの内周壁面51cが、前記トレー30の下部の外周面と略等しい大きさとなるようにして形成されているので、前記トレー30を、前記トレー収容部51bに嵌め込むようにして前記載置面52に載置することができ、複数の前記トレー30を、前記本体型枠51にセットしやすくなる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ポーラスコンクリートは、トレー内に打設されるとともに該トレー内に一体的に固着収納されるので、このポーラスコンクリートを、単独では強度を維持できない薄さにしたとしても、該ポーラスコンクリートの強度が低下することを確実に防ぐことができる。したがって、例えば単独で強度を維持できる程度の厚さのポーラスコンクリートで構成される保水ブロックに比して板厚の薄い保水ブロックを、確実に得ることができる。
また、ポーラスコンクリートを、トレー内に打設して、該トレー内に一体的に固着収納するため、該トレーを、ポーラスコンクリートの型枠として利用できる。これによって、ポーラスコンクリートを予めトレーの形状に対応できるように成形しておく必要がないので、単にトレー内に打設するだけで済み、保水ブロックを容易に形成することができる。
【0034】
さらに、底板部には、トレー内部と外部とを連通するとともに、ポーラスコンクリートの骨材の粒径よりも大きな孔部が複数形成されているので、ポーラスコンクリートの骨材を、複数の孔部からはみ出させて、トレーが載置される床面等に当接させることができる。これによって、トレーの上部の開口からだけでなく、底板部側からも吸水できるので、例えば上部だけが開口するトレーを用いた保水ブロックに比して、効率良く吸水することができる。
【0035】
また、底板部を、この底板部の外周縁よりも内側に所定の間隔をあけて、かつ該底板部の全周にわたって切り離し用ミシン目を線状に形成することによって、この切り離し用ミシン目よりも内側の部分を切り離し可能に構成することで、例えば、この底板部に孔部を形成して吸水効率を向上させる場合とは異なり、トレー内に、過度にポーラスコンクリートを流し込むなどして、孔部からポーラスコンクリートが余計に出てしまうようなことを確実に防ぐことができる。これによって、トレー内へのポーラスコンクリートの打設作業を、孔部からポーラスコンクリートが余計に出てしまうようなことを考慮せずに容易かつ確実に行うことができる。
その上、ポーラスコンクリートが固まった後、底板部の切り離し用ミシン目よりも内側の部分を切り離すことによって、ポーラスコンクリートの底面を下方に大きく露出させることができる。これによって、トレーの上部の開口からだけでなく、底板部側からも吸水できるので、例えば上部だけが開口するトレーを用いた保水ブロックに比して、効率良く吸水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の保水ブロックの一例を示す斜視図である。
【図2】(a)および(b)ともに、図1に示す保水ブロックを構成するトレーの一例を示すものであり、リブを省略した状態の斜視図である。
【図3】図1に示す保水ブロックの一部を示す拡大側断面図である。
【図4】図1に示す保水ブロックの一部を示す拡大側断面図である。
【図5】図1に示す保水ブロックの一部を示す拡大側断面図である。
【図6】本発明の保水ブロックの一例を示す底面側斜視図である。
【図7】図13に示す保水ブロックの一部であり、底板部の切り離し用ミシン目よりも内側の部分を切り離す前の状態を示す拡大側断面図である。
【図8】図13に示す保水ブロックの一部であり、底板部の切り離し用ミシン目よりも内側の部分を切り離した後の状態を示す拡大側断面図である。
【図9】本発明の保水ブロック製造装置の一例を示す斜視図であり、装置上に載置されたトレーのリブが省略された状態となっている。
【図10】図9に示す保水ブロック製造装置の一部を示す部分拡大断面図(a)および(b)である。
【図11】本発明の保水ブロック製造装置の他の一例を示す斜視図であり、装置上に載置されたトレーのリブが省略された状態となっている。
【図12】図11に示す保水ブロック製造装置の一部およびトレーを示す部分拡大断面図である。
【図13】図11に示す保水ブロック製造装置の一部の他の例およびトレーを示す部分拡大断面図である。
【図14】本発明の保水ブロックを利用してなる温度上昇抑制システムが設けられる建物のバルコニーを示す斜視図である。
【図15】本発明の保水ブロックを利用してなる温度上昇抑制システムが設けられる建物のバルコニーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の保水ブロックおよび保水ブロック製造装置の実施の形態について説明する。
また、保水ブロックは、図14および図15に示すように、例えば建物4の屋上やバルコニー5等の床面5aに複数並べて設けられるものである。そして、この床面5aには、この床面5aの勾配方向に沿って、保水ブロックが複数敷き詰められる複数の貯水部6,6が並設されている。
【0038】
(保水ブロックの第1の実施の形態)
図1は本発明に係る保水ブロックの一例を示す斜視図である。
図1において符号1は、この保水ブロックを示す。保水ブロック1は、板厚の薄い平板状を呈しており、所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口した樹脂性のトレー10と、このトレー10内に打設されるとともに該トレー10内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリート11とからなる。
【0039】
ここで、前記トレー10は、図2(a)に示すように、底板部12と、この底板部12の周縁部から立ち上がる側板部13とを備えている。
また、このトレー10は、平面視正方形状に形成されており、その高さ寸法が20mm〜40mmに設定されており、一辺の長さが200mm〜500mmに設定されている。本実施の形態においては、高さ寸法が30mmに設定されており、一辺の長さが、300mmに設定されているものとする。
なお、本実施の形態ではこのような寸法設定としたが、これに限られるものではなく、上記の高さ寸法および一辺の長さの範囲内で適宜変更可能である。
また、平面視における形状も正方形に限られるものではない。すなわち、例えば長方形・平行四辺形・菱形等のような四角形状であれば、複数の保水ブロック1同士を並べやすくなるという利点があるため好ましい。さらに、このような四角形状に限られず、複数の保水ブロック1同士を並べやすい形状であれば、どのような形状でもよいものとする。
【0040】
前記底板部12は、平面視において正方形状に形成されており、この底板部12には、トレー10内部と外部とを連通するとともに、前記ポーラスコンクリート11の骨材の粒径よりも大きな孔部12aが複数形成されている。
この孔部12aは、本実施の形態では、底板部12と同じく平面視において正方形状に形成されている。
【0041】
また、前記底板部12は、図3に示すように、この底板部12と一体的に形成されるとともに、前記複数の孔部12a…の周縁部から下方に向かって突出する複数の筒状の突出脚部17…を有している。
この突出脚部17は、図2(a)および図3に示すように、前記正方形状に形成された孔部12aの周縁部から下方に向かって突出するようにして形成されるので、角筒状を呈している。
なお、この角筒状の突出脚部17の下端部において下方に向かって開口する部分を孔部17aと称する。この孔部17aは、前記底板部12に形成された孔部12aと対向するようにして位置している。
そして、これら複数の突出脚部17…によって前記トレー10を所定高さに支持することができる。これによって、例えば前記底板部12が貯水部6,6に、べたで載置される場合に比して、前記底板部12の下方に満遍なく水を行き渡らせることができる。
【0042】
前記側板部13は、樹脂製とされているため、成型しやすく、厚みを薄く形成することができ、さらに、厚みを薄くしたとしても、ある程度の強度を確保することができる。
また、この側板部13は、図1〜図3に示すように、前記底板部12の四方の縁部から立ち上がる4つの側面部分を有している。そして、この側板部13は、これら4つの側面部分のうちの、2つの側面部分の幅方向中央部からそれぞれ突出して設けられる凸部14,14と、残りの2つの側面部分の幅方向中央部にそれぞれ設けられる凹部15,15とを有している。
したがって、前記トレー10を隣り合わせて並べる際に、互いに隣り合うトレー10,10のうち、一方のトレー10の凸部14が、他方のトレー10の凹部15に嵌合可能となっている。
【0043】
なお、前記側板部13は、前記底板部12の四方の縁部から斜め上方に立ち上がる傾斜部13aと、この傾斜部13aの上端部から水平方向に延出する水平部13bと、この水平部13bの延出端部から上方に立ち上がる立ち上がり部13cとを備えている。
そして、本実施の形態において、前記側面部分とは、前記側板部13の上部に位置する前記立ち上がり部13cの四方の側面を指している。
【0044】
なお、前記側板部13は以上のように形成されているので、複数のトレー10を並べることによって、隣り合うトレー10,10の間に空洞を形成することができる。すなわち、隣り合う傾斜部13a,13aと、隣り合う水平部13b,13bとで囲まれた部分を指している。また、この隣り合うトレー10,10間の空洞は、外部から視認しにくいという利点があるため、この空洞に灌水パイプ等を配設してもよい。
【0045】
一方、前記凸部14,14は、図1および図2(a)に示すように、前記側板部13の側面部分から外側に突出する平面視略三角形状に形成されたものであり、前記凹部15,15は、前記側面部分から前記トレー10の内側に向かって突出する平面視略三角形状に形成されたものである。
また、前記凸部14,14は、前記凹部15,15に合致する大きさに形成されており、これによって、これら凸部14,14と凹部15,15とが互いに嵌合できるようになっている。
【0046】
このように、前記側板部13は、前記4つの側面部分のうちの、2つの側面部分の幅方向中央部からそれぞれ突出して設けられる凸部14,14と、残りの2つの側面部分の幅方向中央部にそれぞれ設けられる凹部15,15とを有することによって、互いに隣り合うトレー10,10のジョイントを容易かつ正確に行えるので、複数の保水ブロック1同士を前記貯水部6に容易かつ正確に敷き詰めることができるようになっている。
【0047】
前記側板部13の内側面には、図3に示すように、この内側面の中央付近の高さからトレー10中央側に向かって突出するとともに前記底板部12と対向するリブ16が設けられている。
また、このリブ16は、前記側板部13の内周方向に沿って水平に配置されている。
このようなリブ16が設けられることによって、このリブ16よりも上方のポーラスコンクリート11と、リブ16よりも下方のポーラスコンクリート11とによって該リブ16を挟みこむような形となるので、前記トレー10とポーラスコンクリート11との結合強度を確実に高めることができる。
さらに、このようなリブ16を前記側板部13に設けることによって、前記トレー10自体の強度を向上させることができる。
【0048】
前記ポーラスコンクリート11は、水が蒸発する際に周囲の熱を奪いながら蒸発する性質を利用して、このポーラスコンクリート11が設置される場所の周囲の温度上昇を抑制したり、温度低下を促したりすることを目的とするものである。
本実施の形態のポーラスコンクリート11としては、例えば砂を混入することなく、かつ強度を補う添加剤を添加することなく、粒度3〜20mmの軽石(乾燥比重が0.4)50〜62重量%とポルトランドセメント50〜38重量%との配合物に、水40〜50重量%を散布して混練した状態の生コンクリートを型枠に入れて固めたものが挙げられる。なお、軽石は産地により乾燥比重が多少ばらつくが、大きな相違はない。
【0049】
また、配合比を容積で表すと、軽石(乾燥比重が0.4)70〜85容積%と、ポルトランドセメント30〜15容積%との配合物に対して水20〜30容積%を散布して混練するものである。
さらに、このように軽石を骨材とするコンクリートの含水比重は、セメントと砕石等の天然骨材とポルトランドセメントのみを使用したコンクリートの約60%であり、乾燥比重は、約50%である。
【0050】
保水性能については、軽石を骨材として使用したポーラスコンクリート11の含水比重は約1200kg/mであり、およそ300kg/m以上の水分を保水できる。また、浸透性能については、軽石で保水しきれなくなった水分を透過させるので、天然骨材を使用したコンクリートと同等の性能を得ることができる。
すなわち、このような軽石を骨材とするポーラスコンクリート11を、例えば舗装面の舗装材として用いた場合、例えばポーラスコンクリート11を50mmの厚みで舗装すると、含水重量は60kg/mであり、乾燥比重は45kg/mであるから15リットルの水を保水することが可能となり、優れた性能を有している。
【0051】
なお、前記トレー10内に打設される前段階(すなわち、固化する前の段階)のポーラスコンクリート11は適当な粘度を有しており、前記トレー10内に打設された後(すなわち、固化した後の段階)のポーラスコンクリート11は、骨材同士の間に、連続する隙間を有する状態となっている。
【0052】
また、このポーラスコンクリート11は、図3に示すように、前記トレー10内に打設されるため、該トレー10の内側面に象られたような形状となる。
すなわち、このポーラスコンクリート11の上面は、下面よりも面積が広くなるように形成されている。これによって、このポーラスコンクリート11の上部が下部よりもオーバーハングすることになる。
【0053】
なお、本実施の形態のポーラスコンクリート11の上面には、芝を植栽したり、セラミックタイルを取り付けたりしてもよい。
これによって、芝が植栽されたポーラスコンクリート11が敷き詰められた部分を緑化することができ、外観性に優れる。
また、セラミックタイルは多孔質体であるから、このようなセラミックタイルが前記ポーラスコンクリート11の上面に取り付けられていたとしても、前記ポーラスコンクリート11に浸透して保持された水は、このセラミックタイルを通じて確実に蒸発することとなる。また、前記ポーラスコンクリート11の上面にセラミックタイルが取り付けられているので、前記ポーラスコンクリート11の上面を趣のある仕上げにすることができ、外観性に優れる。
さらに、このセラミックタイルが取り付けられたポーラスコンクリート11と、芝が設けられたポーラスコンクリート11とを並設することによって、より外観性を向上させることができる。
【0054】
そして、本実施の形態のポーラスコンクリート11は、図3に示すように、前記複数の孔部12a…から前記複数の突出脚部17…を介して、所定の寸法分、これら突出脚部17…の下端部よりも下方にはみ出すようにして、前記トレー10内に打設されている。
なお、このはみ出した部分を、はみ出し部11aと称する。また、このはみ出し部11aのはみ出し寸法は3mm〜5mmに設定されている。このように前記ポーラスコンクリート11の一部が、前記突出脚部17…の下端部よりも下方にはみ出していれば、このはみ出し部11aから確実に吸水できる。さらに、前記はみ出し部11aがない場合に比して、前記トレー10とポーラスコンクリート11との結合度合を高めることができる。
【0055】
以上のような本実施の形態の保水ブロック1によれば、前記ポーラスコンクリート11は、前記トレー10内に打設されるとともに該トレー10内に一体的に固着収納されるので、前記ポーラスコンクリート11を、単独では強度を維持できない薄さにしたとしても、該ポーラスコンクリート11の強度が低下することを確実に防ぐことができる。したがって、例えば単独で強度を維持できる程度の厚さのポーラスコンクリートで構成される保水ブロックに比して板厚の薄い保水ブロック1を、確実に得ることができる。
また、前記ポーラスコンクリート11を、前記トレー10内に打設して、該トレー10内に一体的に固着収納するため、該トレー10を、前記ポーラスコンクリート11の型枠として利用できる。これによって、前記ポーラスコンクリート11を予めトレー10の形状に対応できるように成形しておく必要がないので、単に前記トレー10内に打設するだけで済み、保水ブロック1を容易に形成することができる。
さらに、前記底板部12には、トレー10内部と外部とを連通するとともに、前記ポーラスコンクリート11の骨材の粒径よりも大きな孔部12aが複数形成されているので、前記ポーラスコンクリート11の骨材を、前記複数の孔部12aからはみ出させて、前記トレー10が載置される床面等に当接させることができる。これによって、前記トレー10の上部の開口からだけでなく、前記底板部12側からも吸水できるので、例えば上部だけが開口するトレーを用いた保水ブロックに比して、効率良く吸水することができる。
【0056】
また、前記トレー10は平面視四角形状に形成されており、その高さ寸法が20mm〜40mmに設定されており、一辺の長さが200mm〜500mmに設定されているので、前記ポーラスコンクリート11を、前記トレー10の上部開口からはみ出ないようにして該トレー10内に一体的に固着収納させることで、板厚の薄い保水ブロック1をより確実に得ることができる。
【0057】
また、前記底板部12は、この底板部12と一体的に形成されるとともに、前記複数の孔部12a…の周縁部から下方に向かって突出する複数の筒状の突出脚部17…を有しているので、これら複数の突出脚部17…によって前記トレー10を所定高さに支持することができる。これによって、例えば前記底板部12が床面等に、べたで載置される場合に比して、前記底板部12の下方に満遍なく水を行き渡らせることができるので、前記底板部12側から吸水する際に、前記底板部12の周縁側の孔部12aや中央側の孔部12aの区別なく、より効率良く吸水することができる。
【0058】
また、前記ポーラスコンクリート11が、前記複数の孔部12a…から前記複数の突出脚部17…を介して、所定の寸法分、これら突出脚部17…の下端部よりも下方にはみ出しており、そのはみ出し寸法は3mm〜5mmに設定されているので、該突出脚部17…の下端部よりも下方にはみ出した部分から確実に吸水でき、さらに効率良く吸水できることになる。
また、前記ポーラスコンクリート11を、前記突出脚部17…の下端部よりも下方にはみ出させることによって、例えば前記ポーラスコンクリート11を、前記突出脚部17…の下端部よりも下方にはみ出させない場合に比して、前記トレー10とポーラスコンクリート11との結合度合を高めることができるので、前記ポーラスコンクリート11が前記トレー10から脱離しにくくなる。
【0059】
また、前記側板部13の内側面には、この内側面の中央付近の高さからトレー10中央側に向かって突出するとともに前記底板部12と対向するリブ16が設けられているので、このリブ16よりも上方のポーラスコンクリート11と、リブ16よりも下方のポーラスコンクリート11とによって該リブ16を挟みこむような形となる。これによって、前記トレー10とポーラスコンクリート11との結合強度を、より高めることができるので、前記ポーラスコンクリート11が前記トレー10から脱離することを、より確実に防ぐことができる。
【0060】
(保水ブロックの第2の実施の形態)
次に、図面を参照して本発明の保水ブロックの第2の実施の形態について説明する。
【0061】
本実施の形態の保水ブロック2は、図1,図2(b),図4に示すように、板厚の薄い平板状を呈しており、所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口した樹脂性のトレー20と、このトレー20内に打設されるとともに該トレー20内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリート21とからなる。
また、前記トレー20は、底板部22と、この底板部22の周縁部から立ち上がる側板部23とを備えており、底板部22には、トレー20内部と外部とを連通するとともに、前記ポーラスコンクリート21の骨材の粒径よりも大きな孔部22aが複数形成されている。
【0062】
ここで、前記底板部22は、図2(b)に示すように、平面視において正方形状に形成されており、前記孔部22aは、本実施の形態では、底板部22と同じく平面視において正方形状に形成されている。
【0063】
前記側板部23は、図2(b),図4に示すように、前記底板部22の四方の縁部から立ち上がる4つの側面部分を有している。そして、この側板部23は、これら4つの側面部分のうちの、2つの側面部分の幅方向中央部からそれぞれ突出して設けられる凸部24,24と、残りの2つの側面部分の幅方向中央部にそれぞれ設けられる凹部25,25とを有している。
【0064】
また、前記側板部23は、前記底板部22の四方の縁部から斜め上方に立ち上がる傾斜部23aと、この傾斜部23aの上端部から水平方向に延出する水平部23bと、この水平部23bの延出端部から上方に立ち上がる立ち上がり部23cとを備えている。
【0065】
さらに、この側板部23の内側面には、図4に示すように、この内側面の中央付近の高さからトレー20中央側に向かって突出するとともに前記底板部22と対向するリブ26が設けられている。また、このリブ26は、前記側板部23の内周方向に沿って水平に配置されている。
【0066】
一方、前記ポーラスコンクリート21は、図4に示すように、前記トレー20内に打設されるため、該トレー20の内側面に象られたような形状となる。
すなわち、このポーラスコンクリート21の上面は、下面よりも面積が広くなるように形成されている。これによって、このポーラスコンクリート21の上部が下部よりもオーバーハングすることになる。
【0067】
なお、本実施の形態のポーラスコンクリート21の上面には、芝を植栽したり、セラミックタイルを取り付けたりしてもよい。
これによって、芝が植栽されたポーラスコンクリート21が敷き詰められた部分を緑化することができ、外観性に優れる。
また、セラミックタイルは多孔質体であるから、このようなセラミックタイルが前記ポーラスコンクリート21の上面に取り付けられていたとしても、前記ポーラスコンクリート21に浸透して保持された水は、このセラミックタイルを通じて確実に蒸発することとなる。また、前記ポーラスコンクリート21の上面にセラミックタイルが取り付けられているので、前記ポーラスコンクリート21の上面を趣のある仕上げにすることができ、外観性に優れる。
さらに、このセラミックタイルが取り付けられたポーラスコンクリート21と、芝が設けられたポーラスコンクリート21とを並設することによって、より外観性を向上させることができる。
【0068】
そして、このポーラスコンクリート21は、前記複数の孔部22a…から、所定の寸法分、前記底板部22の下面よりも下方にはみ出すようにして、前記トレー20内に打設されている。
また、前記底板部22の下面よりも下方にはみ出した部分は脚部21aとされており、これら脚部21aのはみ出し寸法は3mm〜12mmに設定されている。
なお、本実施の形態の保水ブロック2における前記脚部21aのはみ出し寸法は、第1の実施の形態の保水ブロック1におけるはみ出し部11aのはみ出し寸法と同じく、3mm〜5mmに設定されていることが好ましい。
【0069】
本実施の形態によれば、保水ブロックの第1の実施の形態と同じ効果を得ることができるとともに、前記ポーラスコンクリート21が、前記複数の孔部22a…から、所定の寸法分、前記底板部22の下面よりも下方にはみ出しており、前記底板部22の下面よりも下方にはみ出した部分は脚部21aとされているので、これら脚部21a…によって前記トレー20を所定高さに支持することができる。これによって、例えば前記底板部22が貯水部6,6に、べたで載置される場合に比して、前記底板部22の下方に満遍なく水を行き渡らせることができるので、前記底板部22側から吸水する際に、前記底板部22の周縁側の孔部22aや中央側の孔部22aの区別なく、より効率良く吸水することができる。
また、前記脚部21aのはみ出し寸法は3mm〜12mmに設定されているので、該脚部21aから確実に吸水でき、さらに効率良く吸水できることになる。
さらに、前記ポーラスコンクリート21を、前記複数の孔部22a…から、所定の寸法分、前記底板部22の下面よりも下方にはみ出させることによって、例えば前記ポーラスコンクリート21を、前記複数の孔部22a…から、前記底板部22の下面よりも下方にはみ出させない場合に比して、前記トレー20とポーラスコンクリート21との結合度合を高めることができるので、前記ポーラスコンクリート21が前記トレー20から脱離しにくくなる。
【0070】
(保水ブロックの第3の実施の形態)
次に、図面を参照して本発明の保水ブロックの第3の実施の形態について説明する。
【0071】
本実施の形態の保水ブロック3は、図1,図2(b),図5に示すように、板厚の薄い平板状を呈しており、所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口した樹脂性のトレー30と、このトレー30内に打設されるとともに該トレー30内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリート31とからなる。
また、前記トレー30は、底板部32と、この底板部32の周縁部から立ち上がる側板部33とを備えており、底板部32には、トレー30内部と外部とを連通するとともに、前記ポーラスコンクリート31の骨材の粒径よりも大きな孔部33aが複数形成されている。
【0072】
ここで、前記底板部32は、図2(b)に示すように、平面視において正方形状に形成されており、前記孔部33aは、本実施の形態では、底板部32と同じく平面視において正方形状に形成されている。
【0073】
前記側板部33は、図2(b),図4に示すように、前記底板部32の四方の縁部から立ち上がる4つの側面部分を有している。そして、この側板部33は、これら4つの側面部分のうちの、2つの側面部分の幅方向中央部からそれぞれ突出して設けられる凸部34,34と、残りの2つの側面部分の幅方向中央部にそれぞれ設けられる凹部35,35とを有している。
【0074】
また、前記側板部33は、前記底板部32の四方の縁部から斜め上方に立ち上がる傾斜部33aと、この傾斜部33aの上端部から水平方向に延出する水平部33bと、この水平部33bの延出端部から上方に立ち上がる立ち上がり部33cとを備えている。
【0075】
さらに、この側板部33の内側面には、図5に示すように、この内側面の中央付近の高さからトレー30中央側に向かって突出するとともに前記底板部32と対向するリブ36が設けられている。また、このリブ36は、前記側板部33の内周方向に沿って水平に配置されている。
【0076】
一方、前記ポーラスコンクリート31は、図5に示すように、前記トレー30内に打設されるため、該トレー30の内側面に象られたような形状となる。
すなわち、このポーラスコンクリート31の上面は、下面よりも面積が広くなるように形成されている。これによって、このポーラスコンクリート31の上部が下部よりもオーバーハングすることになる。
【0077】
なお、本実施の形態のポーラスコンクリート31の上面には、芝を植栽したり、セラミックタイルを取り付けたりしてもよい。
これによって、芝が植栽されたポーラスコンクリート31が敷き詰められた部分を緑化することができ、外観性に優れる。
また、セラミックタイルは多孔質体であるから、このようなセラミックタイルが前記ポーラスコンクリート31の上面に取り付けられていたとしても、前記ポーラスコンクリート31に浸透して保持された水は、このセラミックタイルを通じて確実に蒸発することとなる。また、前記ポーラスコンクリート31の上面にセラミックタイルが取り付けられているので、前記ポーラスコンクリート31の上面を趣のある仕上げにすることができ、外観性に優れる。
さらに、このセラミックタイルが取り付けられたポーラスコンクリート31と、芝が設けられたポーラスコンクリート31とを並設することによって、より外観性を向上させることができる。
【0078】
そして、このポーラスコンクリート31は、前記複数の孔部33a…から、所定の寸法分、前記底板部32の下面よりも下方にはみ出すようにして、前記トレー30内に打設されている。
また、前記底板部32の下面よりも下方にはみ出した部分は脚部31aとされており、これら脚部31aのはみ出し寸法は3mm〜12mmに設定されている。
さらに、これら脚部31aは、図5に示すように、前記複数の孔部32aの開口幅よりも大きくなるように形成されている。
【0079】
本実施の形態によれば、保水ブロックの第1および第2の実施の形態と同じ効果を得ることができるとともに、前記脚部31aは、前記複数の孔部32aの開口幅よりも大きくなるように形成されているので、前記トレー30内のポーラスコンクリート31と脚部31aとによって前記トレー30の底板部32を挟みこむような形となる。これによって、前記トレー30とポーラスコンクリート31との結合強度を確実に高めることができるので、前記ポーラスコンクリート31が前記トレー30から脱離することを確実に防ぐことができる。
【0080】
(保水ブロックの第4の実施の形態)
次に、図面を参照して本発明の保水ブロックの第4の実施の形態について説明する。
ところで、所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口した樹脂性のトレー内に、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリートを打設し、該トレー内に一体的に固着収納してなる保水ブロックを屋上等に敷き詰め、気化熱を利用して建物の温度上昇を防止したいという要望がある。
このような要望に対して、例えば上述の保水ブロックを、水を適宜供給できる貯水プール内に設置することによって、常時、保水ブロックに水を保水させ、気化熱による建物の温度上昇抑止力を向上させる場合がある。
この時、保水ブロックの吸水効率を高めるために、前記トレーとして、底板部に孔部を形成したものを用いる場合がある。また、孔部から所定量のポーラスコンクリートをはみ出させて脚部を形成し、この脚部によって保水ブロック自体を所定高さに支持することで、トレーの底板部の中央側にも満遍なく水を行き渡らせて、より効率よく吸水しようという試みがなされている。
ところが、このように底板部に孔部を形成したトレーを用いると、トレー内に、過度にポーラスコンクリートを流し込んでしまった際に、孔部からポーラスコンクリートが余計にはみ出てしまう場合がある。このようなことが防ぐために、作業者は、ポーラスコンクリートを慎重にトレー内に流し込まなければならず、手間であった。
【0081】
本実施の形態の保水ブロック100は、図6〜図8に示すように、所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口した樹脂性のトレー110と、このトレー110内に打設されるとともに該トレー110内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリート111とからなる。
また、前記トレー110は、底板部112と、この底板部112の周縁部から立ち上がる側板部113とを備えており、前記底板部112は、この底板部112の外周縁よりも内側に所定の間隔をあけて、かつ該底板部112の全周にわたって切り離し用ミシン目112aを線状に形成することによって、この切り離し用ミシン目112aよりも内側の部分112b(以下、切り離し部と称する)を切り離し可能に構成されている。
【0082】
また、本実施の形態の底板部112は、この底板部112の厚さ方向に窪むようにして形成された複数の窪み部112dを有している。
この窪み部112dは、前記底板部112に形成されるとともに、前記ポーラスコンクリート111の骨材の粒径よりも大きく設定された複数の孔部112eの周縁部から下方に向かって突出する筒状部112fと、この筒状部112fの下端部に設けられるとともに該筒状部112fの下端部を閉塞する底部112gとからなる。
そして、前記ポーラスコンクリート111は、この窪み部112dに充填されるようになっている。
【0083】
なお、前記底板部112は、四角形状に形成されており、これに伴って、前記筒状部112fも四角筒とされており、前記底部112gも四角形状に形成されることになる。
また、前記複数の窪み部112dは、前記切り離し用ミシン目112aよりも内側、すなわち、前記切り離し部112bに設けられている。
【0084】
そして、前記複数の窪み部112dに充填された部分のポーラスコンクリート111は、前記切り離し部112bを切り離した後に下方に突出した状態となる。
したがって、前記窪み部112dの深さを適宜設定しておくことによって、これら複数の突出部分を、保水ブロック100自体を支持する脚部111aとして利用することができる。
【0085】
すなわち、本実施の形態では、図7に示すように、前記底板部112の下面と前記底部112gとの間の長さが、前記底板部112の厚さ寸法よりも長くなるように設定されており、前記切り離し部112bを切り離した後でも、前記ポーラスコンクリート111による脚部111aを前記底板部の下面よりも下方に突出させることができる。
これによって、例えば前記底板部112が床面等に、べたで載置される場合に比して、前記底板部112の下方に満遍なく水を行き渡らせることができるので、前記底板部112側から吸水する際に、前記ポーラスコンクリート111の周縁側や中央側の区別なく、より効率良く吸水することができる。
【0086】
なお、本実施の形態の前記脚部111aが、前記底板部32、すなわち、前記水平部の下面よりも下方にはみ出す部分のはみ出し寸法は3mm〜12mmに設定されている。
また、これら脚部111aは、保水ブロック100自体を確実に支持できる個数と、設置場所とを考慮する必要がある。本実施の形態においては、図6に示すように、前記窪み部112dを25個設けたので、脚部11aも25個形成されることになる。しかしながら、これに限られるものではなく、前記底板部112の四つ角に窪み部112dをそれぞれ1個ずつ設けて、脚部111aを4個としてもよい。
【0087】
また、前記底板部112から切り離し部112bを切り離した後のトレー110は、図8に示すように、このトレー110の周方向に沿って水平に設けられる水平部112cを備えている。
この水平部112cは、前記底板部112から切り離し部112bを切り離した後に残存する部分であり、前記底板部112の外周縁から内側に向かって突出するようにして形成されている。
【0088】
このように前記トレー111は、このトレー111の周方向に沿って水平に設けられる少なくとも一段の水平部112cを備えているので、前記ポーラスコンクリート111が固まり、前記底板部112の切り離し用ミシン目112aよりも内側の部分112bを切り離すことによって、前記ポーラスコンクリート111の底面を下方に大きく露出させた後に、この水平部112cによって前記ポーラスコンクリート111を確実に支持することができ、このポーラスコンクリート111が前記トレー110から抜け落ちることを確実に防ぐことができる。
【0089】
前記傾斜部113は、図6〜図8に示すように、前記底板部112の四方の縁部から立ち上がる4つの側面部分を有している。そして、この側板部113は、これら4つの側面部分のうちの、2つの側面部分の幅方向中央部からそれぞれ突出して設けられる凸部114,114と、残りの2つの側面部分の幅方向中央部にそれぞれ設けられる凹部115,115とを有している。
【0090】
また、前記側板部113は、前記底板部112の四方の縁部から斜め上方に立ち上がる傾斜部113aと、この傾斜部113aの上端部から水平方向に延出する水平部113bと、この水平部113bの延出端部から上方に立ち上がる立ち上がり部113cとを備えている。
なお、この水平部113bは、前記水平部112cと同じく、前記ポーラスコンクリート111の抜け落ちを防ぐことができる。本実施の形態では、前記水平部112cと水平部113bとを2つとも用いるが、どちらか一方でもよいし、さらに前記側板部113を段形状ににして、より多くの水平部を形成してもよいものとする。
【0091】
さらに、この側板部113の内側面には、この内側面の中央付近の高さからトレー110中央側に向かって突出するとともに前記底板部112と対向するリブ116が設けられている。また、このリブ116は、前記側板部113の内周方向に沿って水平に配置されている。
【0092】
一方、前記ポーラスコンクリート111は、図7および図8に示すように、前記トレー110内に打設されるため、該トレー110の内側面に象られたような形状となる。
すなわち、このポーラスコンクリート111の上面は、下面よりも面積が広くなるように形成されている。これによって、このポーラスコンクリート111の上部が下部よりもオーバーハングすることになる。
【0093】
なお、以上のような保水ブロック100は、上述のように、前記トレー110の底板部112に孔部が形成されていないため、特に専用の製造装置等は必要がない。
すなわち、保水ブロック100を製造する際は、まず、前記トレー110を地面等に複数並設しておく。
【0094】
続いて、これら複数のトレー110に、ポーラスコンクリート111を流し込み、前記窪み部112d内にもポーラスコンクリート111を充填する。
そして、これら複数のトレー110内に流し込まれたポーラスコンクリート111の表面を均して平らにする。
【0095】
前記トレー110に流し込まれたポーラスコンクリート111が固まった後、前記底板部112の切り離し用ミシン目112aに沿って該底板部112を切断することによって、前記水平部112cを残存させるとともに、前記切り離し部112bを切り離す。
このように切り離し部112bを切り離すことによって、前記脚部111aを形成しつつ、前記ポーラスコンクリート111の底面を下方に大きく露出させることができる。
【0096】
本実施の形態によれば、前記ポーラスコンクリート111は、前記トレー110内に打設されるとともに該トレー110内に一体的に固着収納されるので、前記ポーラスコンクリート111を、単独では強度を維持できない薄さにしたとしても、該ポーラスコンクリート111の強度が低下することを確実に防ぐことができる。したがって、例えば単独で強度を維持できる程度の厚さのポーラスコンクリートで構成される保水ブロックに比して板厚の薄い保水ブロック100を、確実に得ることができる。
また、前記ポーラスコンクリート111を、前記トレー110内に打設して、該トレー110内に一体的に固着収納するため、該トレー110を、前記ポーラスコンクリート111の型枠として利用できる。これによって、前記ポーラスコンクリート11を予めトレー110の形状に対応できるように成形しておく必要がないので、単に前記トレー110内に打設するだけで済み、保水ブロック100を容易に形成することができる。
【0097】
さらに、前記底板部112は、この底板部112の外周縁よりも内側に所定の間隔をあけて、かつ該底板部112の全周にわたって切り離し用ミシン目112aを線状に形成することによって、この切り離し用ミシン目112aよりも内側の部分112bを切り離し可能に構成されているので、例えば、この底板部112に孔部を形成して吸水効率を向上させる場合とは異なり、前記トレー110内に、過度にポーラスコンクリート111を流し込むなどして、孔部からポーラスコンクリート111が余計に出てしまうようなことを確実に防ぐことができる。これによって、前記トレー110内へのポーラスコンクリート111の打設作業を、孔部からポーラスコンクリート111が余計に出てしまうようなことを考慮せずに容易かつ確実に行うことができる。
その上、前記ポーラスコンクリート111が固まった後、前記底板部112の切り離し用ミシン目112aよりも内側の部分112bを切り離すことによって、前記ポーラスコンクリート111の底面を下方に大きく露出させることができる。これによって、前記トレー110の上部の開口からだけでなく、前記底板部112側からも吸水できるので、例えば上部だけが開口するトレーを用いた保水ブロックに比して、効率良く吸水することができる。
【0098】
(保水ブロック製造装置の第1の実施の形態)
次に、図面を参照して本発明の保水ブロック製造装置の実施の形態について説明する。
【0099】
本実施の形態の保水ブロック製造装置40は、図9および図10に示すように、上述の保水ブロック1,2を製造するためのものであり、前記トレー10,20が複数並設される底面部41と、この底面部41と前記複数のトレー10…,20…の底板部12,22との間に設けられるとともに、これら底面部12,22と前記複数のトレー10,20の底板部12,22との間に隙間を形成する複数のスペーサ42…,43…とを備えており、これら複数のスペーサ42…,43…の高さ寸法は3mm〜5mmに設定されている。
【0100】
前記底面部41は、前記保水ブロック1,2を複数並べられる水平面であればよく、例えば、樹脂性・木製・金属製などの板材、コンクリート等の床面でもよいものとする。
本実施の形態においては、表面の塵芥や小石等をきれいに取り除いた状態のコンクリートの床面を採用する。
【0101】
前記スペーサ42…,43…は、図9および図10に示すように、長尺な棒状部材であり、少なくとも、前記底面部41に並設されるトレー10…,20…の底板部12,22の一方および他方の側端部の下面に当接するようにして、前記底面部41上に配置されている。
これによって、前記スペーサ42…,43…の長さ方向に沿って複数のトレー10…,20…を載せることができるので、複数のトレー10…,20…を一列に並設するのであれば、前記スペーサ42…,43…は少なくとも2本で済むことになる。
【0102】
前記トレー20の場合は、図10(a)に示すように、前記スペーサ42…が、少なくとも、前記底板部22の一方および他方の側端部に当接するようにして、前記底面部41上に配置すればよい。
なお、このような形態に限られるものではなく、前記複数のスペーサ42…を、前記孔部22aを避けるようにして前記底面部41上に配置してもよいものとする。
【0103】
また、前記スペーサ43の場合は、図10(b)に示すように、前記スペーサ43…が、少なくとも、前記底板部12の一方および他方の側端部側に位置する突出脚部17の外側の下面に当接するようにして、前記底面部41上に配置すればよい。
なお、このような形態に限られるものではなく、前記スペーサ43を、一列に並ぶ複数のトレー10…の、一列に並ぶ突出脚部17…ごとに対応できるように、前記底面部41上に複数配置してもよいものとする。
【0104】
さらに図9に示すように、複数のトレー10…,20…を並設してなる列を、前記底面41上に複数並べる場合であっても、少なくとも2本のスペーサ42,42、43,43によって一列分の複数のトレー10…,20…を支持すればよい。
【0105】
このように前記底面部41と前記トレー10…,20…との間に、前記複数のスペーサ42…,43…を設けることによって、前記トレー10,20内に打設したポーラスコンクリート11,21の骨材を、前記複数の孔部12a…,22a…から確実にはみ出させることができる。
【0106】
このような製造装置40によって、前記保水ブロック1,2を製造するには、前記底面部41上に所定の間隔をあけて並設された複数のスペーサ42…,43…の上に、前記複数のトレー10…,20…を、前記複数のスペーサ42…,43…の長さ方向に沿って並設する。
【0107】
続いて、並設された複数のトレー10…,20…内に、前記ポーラスコンクリート11,21を打設する。このとき、このポーラスコンクリート11,21の一部を、前記トレー10…,20…の複数の孔部12a…,22a…から、3mm〜5mm分、はみ出させるようにする。
そして、固化する前に、このポーラスコンクリート11,21の上面を平らに均し、その後は固化するまで放置するだけで、前記保水ブロック1,2を製造することができる。
【0108】
本実施の形態によれば、前記トレー10,20が複数並設される底面部41と、この底面部41と前記複数のトレー10…,20…の底板部12,22との間に設けられるとともに、これら底面部12,22と前記複数のトレー10,20の底板部12,22との間に隙間を形成する複数のスペーサ42…,43…とを備えているので、このスペーサ42…,43…によって、前記トレー10,20を、前記底面部41の上方に、所定の高さで支持することができる。これによって、前記トレー10,20の底板部12,22と前記底面部41との間に隙間を形成できるので、前記トレー10,20内に打設したポーラスコンクリート11,21の骨材を、前記複数の孔部12a…,22a…から確実にはみ出させることができる。したがって、該複数の孔部12a…,22a…からはみ出した部分から確実に吸水でき、効率良く吸水できることになる。
そして、このような製造装置40で製造される保水ブロック1,2は、前記ポーラスコンクリート11,21を、前記トレー10,20内に打設するとともに該トレー10,20内に一体的に固着収納してなるので、前記ポーラスコンクリート11,21を、単独では強度を維持できない薄さにしたとしても、該ポーラスコンクリート11,21の強度が低下することを確実に防ぐことができる。したがって、例えば単独で強度を維持できる程度の厚さのポーラスコンクリートで構成される保水ブロックに比して板厚の薄い保水ブロック1,2を、確実に得ることができる。
【0109】
(保水ブロック製造装置の第2の実施の形態)
次に、図面を参照して本発明の保水ブロック製造装置の第2の実施の形態について説明する。
【0110】
本実施の形態の保水ブロック製造装置50は、図11および図12に示すように、上述の保水ブロック3を製造するためのものであり、前記トレー30が複数並設される本体型枠51からなり、この本体型枠51は、前記トレー30が載置される載置面52と、この載置面52に開口するとともに、該載置面52に載置されるトレー30の複数の孔部32aの位置に対応して配置形成される複数の凹状穴部53…とを備えている。
【0111】
また、これら複数の凹状穴部53…の上部開口部43aの開口幅は、前記トレー30の複数の孔部32a…の開口幅よりも大きくなるように形成されており、これら凹状穴部53…の上部開口部53aから底面53bまでの深さ寸法は3mm〜12mmに設定されている。
【0112】
また、前記本体型枠51は、この本体型枠51の上面51aよりも一段低い位置に前記載置面52を設けることによって該載置面52を底面とし、かつ前記トレー30の下部が嵌め込まれるトレー収容部51bを備えている。
【0113】
このトレー収容部51bは、前記載置面52が、前記トレー30の底板部32と略等しい大きさとなるようにして、かつ該トレー収容部51bの内周壁面51cが、前記トレー30の下部の外周面と略等しい大きさとなるようにして形成されている。
すなわち、前記トレー収容部51bの内側面は、前記トレー30の下部の形状に象られたように形成されている。
【0114】
このようなトレー収容部51bによれば、前記トレー30を、該トレー収容部51bに嵌め込むようにして前記載置面52に載置することができ、複数の前記トレー30を、前記本体型枠51にセットしやすくなるという利点がある。
【0115】
なお、本実施の形態の凹状穴部53によれば、前記保水ブロック3の脚部31aは角柱状に形成されることになるが、前記凹状穴部53の底面53bを上面開口部53aの開口幅よりも狭くしたり、上面開口部53aの周縁部と底面53bとの間の内側壁面53cの形状を垂直面以外の形状としたりすることで、前記脚部31aの形状を適宜変更することが可能となる。
【0116】
このような製造装置50によって、前記保水ブロック3を製造するには、前記複数のトレー30を、前記本体型枠51のトレー収容部51bに嵌め込むようにして前記載置面52に載置する。
【0117】
続いて、並設された複数のトレー30…内に、前記ポーラスコンクリート31を打設する。このとき、このポーラスコンクリート31の一部を、前記トレー30…の複数の孔部32a…から、3mm〜12mm分、はみ出させるようにする。
そして、固化する前に、このポーラスコンクリート31の上面を平らに均し、その後は固化するまで放置するだけで、前記保水ブロック3を製造することができる。
【0118】
なお、本実施の形態の保水ブロック製造装置50は、上述のようなものに限られるものではない。
すなわち、図13に示す保水ブロック製造装置50Aは、前記トレー30が複数並設される本体型枠51Aからなり、この本体型枠51Aは、水平に配置される底板部51Aaと、この底板部51Aaの上面から垂直に立ち上がるとともに筒状に形成される筒状リブ51Abとを備えている。
【0119】
この筒状リブ51Abの上面は、前記トレー30が載置される載置面52Aとなっており、この筒状リブ51Abは、載置されるトレー30の複数の孔部32aの位置に対応して前記底板部51Aa上に配置されている。
また、この筒状リブ51Abの上部開口部53Aaの開口幅は、前記トレー30の複数の孔部32a…の開口幅よりも大きくなるように形成されており、これら上部開口部53Aaから、底板部51Aaまでの深さ寸法は3mm〜12mmに設定されている。
このような保水ブロック製造装置50Aでもよいものとする。
また、上述のようなトレー収容部51bを適宜形成してもよいものとする。
【0120】
本実施の形態によれば、前記トレー30が複数並設される本体型枠51からなり、この本体型枠51は、前記トレー30が載置される載置面52と、この載置面52に開口するとともに、該載置面52に載置されるトレー30の複数の孔部32aの位置に対応して配置形成される複数の凹状穴部53…とを備えているので、前記トレー30を前記載置面52に載置することによって、該トレー30を、前記凹状穴部53…の底面53bから所定の高さの位置に支持できる。これによって、前記トレー30の底板部32と前記凹状穴部53…の底面53bとの間に隙間を形成できるので、前記トレー30内に打設したポーラスコンクリート31の骨材を、前記複数の孔部32a…から確実にはみ出させることができる。したがって、該複数の孔部32a…からはみ出した部分から確実に吸水でき、効率良く吸水できることになる。
また、前記複数の凹状穴部53…の上部開口部43aの開口幅は、前記トレー30の複数の孔部32a…の開口幅よりも大きくなるように形成されているので、前記複数の孔部32a…からはみ出すポーラスコンクリート31を、前記凹状穴部53…の形状に合わせた形状とすることができる。すなわち、前記トレー30の底板部32を、前記トレー30内のポーラスコンクリート31と、前記底板部32の下方にはみ出したポーラスコンクリート31とによって挟みこむような形となる。これによって、前記トレー30とポーラスコンクリート31との結合強度を確実に高めることができるので、前記ポーラスコンクリート31が前記トレー30から脱離することを確実に防ぐことができる。
そして、このような製造装置50で製造される保水ブロック3は、前記ポーラスコンクリート31を、前記トレー30内に打設するとともに該トレー30内に一体的に固着収納してなるので、前記ポーラスコンクリート31を、単独では強度を維持できない薄さにしたとしても、該ポーラスコンクリート31の強度が低下することを確実に防ぐことができる。したがって、例えば単独で強度を維持できる程度の厚さのポーラスコンクリートで構成される保水ブロックに比して板厚の薄い保水ブロック3を、確実に得ることができる。
【0121】
(保水ブロックを利用した温度上昇抑制システム)
次に、図面を参照して本発明の保水ブロックを利用した実施の形態の一例として、温度上昇抑制システムについて説明する。
【0122】
この温度上昇抑制システムは、図14および図15に示すように、建物4の屋上やバルコニー5等の床面5aに設けられることによって周囲の温度上昇を抑制するものであり、前記床面5aには、この床面5aの建物側端部から外部側端部に向かって低くなる水勾配が設けられており、前記床面5a上には、複数の貯水部6,6が前記床面5aの勾配方向に沿って並設されており、これら複数の貯水部6,6には、前記保水ブロック1,2,3,100が複数敷き詰められており、前記床面5aの勾配方向の上方に位置する貯水部6の近傍には、この貯水部6に水を供給するための給水手段7が設けられており、前記床面5aの勾配方向の下方には、前記床面5aの勾配方向の下方に位置する貯水部6から溢れる水を外部に排出する排水孔8が設けられている。
【0123】
なお、この温度上昇抑制システムは、前記建物4のバルコニー5の床面5aに設けられるものとするが、これに限られるものではなく、建物の屋上に設けてもよいものとする。建物の屋上に温度上昇抑制システムを設ける場合の建物の屋根は陸屋根の形態とする。なお、このように温度上昇抑制システムを前記バルコニー5に設ける場合、このバルコニー5は耐荷重性の高いルーフバルコニーであることが望ましい。
また、前記建物4には、この建物4の内部と前記バルコニー5とを行き来するための出入り口4aが、前記バルコニー2に面して設けられている。
【0124】
一方、前記複数の貯水部6,6は、前記床面5aの勾配方向に沿って、かつ、この床面5aの勾配方向と直交する方向に所定の間隔をあけて所定長さの側壁部材6aを複数配置するとともに、これら複数の側壁部材6a,6a間に、これら複数の側壁部材6a,6aの長さ方向に沿って所定の間隔をあけて複数並設される所定高さの仕切り部材6bを架設し、さらに、前記複数の側壁部材6a,6aと、これら複数の側壁部材6a,6aの長さ方向両端部間にそれぞれ架設される仕切り部材6b,6bとで囲まれる部分に防水シート6cを敷設することによって、前記床面5a上に並設されている。
なお、各貯水部6に貯留される水の深さは、この貯水部6が設けられる床面5a自体が建物側端部から外部側端部に向かって低くなるように傾斜しているので、各貯水部6の建物側端部ほど浅く、外部側端部ほど深くなる。
【0125】
また、前記保水ブロック1,2,3,100は、前記貯水部6,6に、隣り合う保水ブロック1,1、2,2、3,3、100,100間に形成される空洞に、前記仕切り部材6bを収容するようにして敷き詰められることになる。
さらに、上述のような灌水パイプ(図示せず)等を、前記給水手段7に繋げて、前記仕切り部材6bが収容されない空洞に収容してもよいものとする。
【0126】
前記給水手段7は、図14および図15に示すように、前記床面5aの勾配方向の上方に位置する貯水部6の近傍に設けられており、給水源に接続されるとともに水が吐出される吐出部7aと、この吐出部7aに接続されるとともに、先端が前記隣り合う保水ブロック材1,1、2,2、3,3、100,100間の空洞から差し込まれて前記貯水部6に設けられるホース7bとを備えている。
なお、前記給水源としては、例えば通常の水道の他に、風呂や、雨水等を貯留する貯留タンク等が挙げられ、適宜選択される。
【0127】
前記排水孔8は、図14に示すように、前記床面5aの勾配方向の下端部に設けられている。なお、前記床面5aの勾配方向の下端部は、前記床面5aの勾配方向と直交する方向に長尺な排水帯8aとされており、この排水帯8aの一部に前記排水孔8が設けられている。この排水帯8aは、前記排水孔8に向かって傾斜するように構成されており、前記貯水部6から溢れた水だけでなく、前記貯水部6の周囲を流れる雨水等も排水しやすい。また、この排水帯8aは前記床面5aよりも一段低い溝状にしてもよいものとする。
【0128】
また、前記排水孔8には、図15に示すように、この排水孔8を隠すとともに、外部からのゴミによる詰まりを防ぐためのカバー8bが被せられている。
さらに、このカバー8bの上面までの高さは、前記床面5aの勾配方向の下方に位置する貯水部6に敷き詰められた保水ブロック1,2,3,100の上面と略等しくなるように設定されている。そして、このカバー8bを除く、前記複数の貯水部6,6周囲の床面5aに、砂利(図示せず)等を敷くなどして、前記複数の貯水部6,6と前記バルコニー5の周壁5bとの間の溝を埋めるようにする。この時、この溝に敷かれる砂利を、前記排水孔8のカバー8bや、前記複数の貯水部6,6に敷き詰められた保水ブロック材1,2,3,100と略等しい高さにすることで、前記バルコニー5内の段差を少なくできるので、安全性および外観性に優れる。
【0129】
以上のような温度上昇抑制システムによれば、前記複数の貯水部6,6は、前記床面5aに対して広域に設けられることとなる。さらに、水は蒸発するに際して所定の熱量を周囲から奪う性質を備えていることから、前記床面5aに対して広域に設けられる複数の貯水部6,6に前記保水ブロック1,2,3,100が複数敷き詰められていることによって、この保水ブロック1,2,3,100に浸透して保持された水が蒸発する際に、この保水ブロック1,2,3,100の周囲の熱を奪いながら蒸発するので、前記床面5aに対して広い範囲で、前記床面5aの温度の上昇を抑制したり、温度を低下させたりすることができる。これによって、前記バルコニー5の温度の上昇を抑制したり、温度を低下させたりでき、延いては、建物4の温度上昇をも抑制することができるので、快適な居住環境を形成することが可能となる。
また、前記床面5aに、この床面5aの建物側端部から外部側端部に向かって低くなる水勾配が設けられるとともに、前記複数の貯水部6,6が前記床面5aの勾配方向に沿って並設されているので、前記床面5aの勾配方向の上方に位置する貯水部6の近傍に設けられる給水手段7から水を供給するだけで、前記床面5aの勾配方向の上方に位置する貯水部6から、下方に位置する貯水部6へと容易に水を行き渡らせることができ、前記床面5aの勾配方向の下方に位置する貯水部6から溢れた水は前記排水孔8から確実に排出することができる。さらに、前記仕切り部材6bの高さを低く設定することによって、前記複数の貯水部6に貯留される水の深さを浅くすることができるので、前記給水手段7から前記床面5aの勾配方向の上方に位置する貯水部6に供給した水を、前記床面5aの勾配方向の下方に位置する貯水部6へと、より容易に行き渡らせやすくなるとともに、水が滞留することによって生じる悪臭や雑菌・虫の発生を確実に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0130】
1 保水ブロック
2 保水ブロック
3 保水ブロック
10 トレー
11 ポーラスコンクリート
12 底板部
12a 孔部
13 側板部
20 トレー
21 ポーラスコンクリート
22 底板部
22a 孔部
23 側板部
30 トレー
31 ポーラスコンクリート
32 底板部
32a 孔部
33 側板部
40 保水ブロック製造装置
50 保水ブロック製造装置
100 保水ブロック
110 トレー
111 ポーラスコンクリート
112 底板部
112a 切り離し用ミシン目
113 側板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚の薄い平板状を呈する保水ブロックであって、
所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口した樹脂性のトレーと、
このトレー内に打設されるとともに該トレー内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリートとからなり、
前記トレーは、底板部と、この底板部の周縁部から立ち上がる側板部とを備えており、
前記底板部には、トレー内部と外部とを連通するとともに、前記ポーラスコンクリートの骨材の粒径よりも大きな孔部が複数形成されていることを特徴とする保水ブロック。
【請求項2】
請求項1に記載の保水ブロックにおいて、
前記底板部は、この底板部と一体的に形成されるとともに、前記複数の孔部の周縁部から下方に向かって突出する複数の筒状の突出脚部を有していることを特徴とする保水ブロック。
【請求項3】
請求項2に記載の保水ブロックにおいて、
前記ポーラスコンクリートが、前記複数の孔部から前記複数の突出脚部を介して、所定の寸法分、これら突出脚部の下端部よりも下方にはみ出しており、
そのはみ出し寸法は3mm〜5mmに設定されていることを特徴とする保水ブロック。
【請求項4】
請求項1に記載の保水ブロックにおいて、
前記ポーラスコンクリートが、前記複数の孔部から、所定の寸法分、前記底板部の下面よりも下方にはみ出しており、
前記底板部の下面よりも下方にはみ出した部分は脚部とされており、
これら脚部のはみ出し寸法は3mm〜12mmに設定されていることを特徴とする保水ブロック。
【請求項5】
請求項4に記載の保水ブロックにおいて、
前記脚部は、前記複数の孔部の開口幅よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする保水ブロック。
【請求項6】
板厚の薄い平板状を呈する保水ブロックであって、
所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口した樹脂性のトレーと、
このトレー内に打設されるとともに該トレー内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリートとからなり、
前記トレーは、底板部と、この底板部の周縁部から立ち上がる側板部とを備えており、
前記底板部は、この底板部の外周縁よりも内側に所定の間隔をあけて、かつ該底板部の全周にわたって切り離し用ミシン目を線状に形成することによって、この切り離し用ミシン目よりも内側の部分を切り離し可能に構成されていることを特徴とする保水ブロック。
【請求項7】
請求項6に記載の保水ブロックにおいて、
前記トレーは、このトレーの周方向に沿って水平に設けられる少なくとも一段の水平部を備えていることを特徴とする保水ブロック。
【請求項8】
請求項6または7に記載の保水ブロックにおいて、
前記底板部は、この底板部の厚さ方向に窪むようにして形成された複数の窪み部を有していることを特徴とする保水ブロック。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の保水ブロックにおいて、
前記トレーは平面視四角形状に形成されており、
その高さ寸法が20mm〜40mmに設定されており、一辺の長さが200mm〜500mmに設定されていることを特徴とする保水ブロック。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の保水ブロックにおいて、
前記側板部の内側面には、この内側面の中央付近の高さからトレー中央側に向かって突出するとともに前記底板部と対向するリブが設けられていることを特徴とする保水ブロック。
【請求項11】
板厚の薄い平板状を呈しており、
所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口し、さらに内部と外部とを連通する複数の孔部が形成される底板部と、この底板部の周縁部から立ち上がる側板部とを備えるトレーと、
前記複数の孔部の開口径よりも小さな粒径の骨材によって構成されており、さらに前記トレー内に打設されるとともに該トレー内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリートとからなる保水ブロックの製造装置であって、
前記トレーが複数並設される底面部と、
この底面部と前記複数のトレーの底板部との間に設けられるとともに、これら底面部と前記複数のトレーの底板部との間に隙間を形成する複数のスペーサとを備えており、
これら複数のスペーサの高さ寸法は3mm〜5mmに設定されていることを特徴とする保水ブロック製造装置。
【請求項12】
板厚の薄い平板状を呈しており、
所定の高さ寸法に設定されるとともに上部が開口し、さらに内部と外部とを連通する複数の孔部が形成される底板部と、この底板部の周縁部から立ち上がる側板部とを備えるトレーと、
前記複数の孔部の開口径よりも小さな粒径の骨材によって構成されており、さらに前記トレー内に打設されるとともに該トレー内に一体的に固着収納され、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリートとからなる保水ブロックの製造装置であって、
前記トレーが複数並設される本体型枠からなり、
この本体型枠は、前記トレーが載置される載置面と、この載置面に開口するとともに、該載置面に載置されるトレーの複数の孔部の位置に対応して配置形成される複数の凹状穴部とを備えており、
これら複数の凹状穴部の上部開口部の開口幅は、前記トレーの複数の孔部の開口幅よりも大きくなるように形成されており、
これら凹状穴部の上部開口部から底面までの深さ寸法は3mm〜12mmに設定されていることを特徴とする保水ブロック製造装置。
【請求項13】
請求項12に記載の保水ブロック製造装置において、
前記本体型枠は、この本体型枠の上面よりも一段低い位置に前記載置面を設けることによって該載置面を底面とし、かつ前記トレーの下部が嵌め込まれるトレー収容部を備えており、
このトレー収容部は、前記載置面が、前記トレーの底板部と略等しい大きさとなるようにして、かつ該トレー収容部の内周壁面が、前記トレーの下部の外周面と略等しい大きさとなるようにして形成されていることを特徴とする保水ブロック製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−73150(P2011−73150A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223811(P2009−223811)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】