説明

保水処理剤、保水処理剤の製造方法、保水性構造体、保水性構造体の製造方法、及び保水剤

【課題】吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置でき、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができるる保水処理剤及びその製造方法、並びに、充分な保水量を確保できる保水性構造体の製造方法、及び保水処理剤を容易に製造できる保水剤を提供する。
【解決手段】本発明の保水処理剤40は、流動性を有する保水処理剤である。この保水処理剤40は、セメントを含むことなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、及びこの吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤(グリセリン)を混合してなる保水剤20と、水Wとを混合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水処理剤、保水処理剤の製造方法、及び、保水処理剤を用いた保水性構造体の製造方法、並びに、これらに用いる保水剤、及び保水性構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートアイランド現象が大きな問題となっている。この現象は、特に、都心部において、地面の大半をアスファルトやコンクリート等で舗装していることが、大きな要因となっている。
具体的には、アスファルトやコンクリート等で地面を舗装していない場合には、雨が降れば、雨水が地中に浸透し吸収される。このため、晴れて、地面が加熱されれば、地中に吸収されている水が蒸発することとなる。このときに要する水の気化熱により、地表面の温度を低下させることができる。
【0003】
しかしながら、アスファルト等の透水性に乏しい舗装材により舗装した場合には、雨水の多くが地中に吸収されることなく、下水道を通じて排水されてしまう。このため、晴れて、地面が加熱された場合でも、前述のように、水の気化熱により、地表面の温度を低下させることができなくなる。これが、ヒートアイランド現象の大きな要因となっていた。
【0004】
このような課題を解決するべく、近年、舗装体に保水性を付与する処理剤、及びこれを用いる舗装の処理方法や、保水性を有する舗装体などが、多数提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。すなわち、舗装体内部に水を蓄えておき、地面が加熱された場合には、水の気化熱により、地表面の温度を低下させるというものである。
【特許文献1】特開2002−212906号公報
【特許文献2】特開2004−3158号公報
【0005】
特許文献1では、セメントと、疎水性の被膜を有する吸水性樹脂とを含む、舗装用処理剤、及びこれを用いる舗装の処理方法が提案されている。具体的には、上記舗装用処理剤をスラリー状にして、これを既に舗装された舗装体内部へ注入することで、舗装体に保水性を与えるものである。
特許文献2では、透水性舗装の表面から粉粒状の保水材を散布した後、樹脂モルタル(骨材として、平均粒径が2mm以下で、通水性を有するものを用いる)を骨材間隔に充填する保水性舗装が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、吸水性樹脂とセメントと水とを混合したスラリー(セメントミルク)を舗装体内部へ注入する手法では、充分な量の吸水性樹脂を充填することができなかった。さらに、セメントの影響で吸水性樹脂の吸水能力が大きく低下してしまうこともあった。具体的には、例えば、舗装体内部にスラリーを充填した後、吸水性樹脂の表面を被覆していたセメントが硬化することで、吸水性樹脂の表面にコンクリートの被膜が形成されることがある。この場合は、外部から吸水性樹脂内に水が浸透し難くなり、しかも、コンクリートの被膜により吸水性樹脂の膨潤が妨げられることから、吸水性樹脂による吸水が妨げられるので、吸水性樹脂の吸水能力が低下すると考えられる。また、舗装体の内部でセメントが硬化することで、舗装体の空隙部の体積が大きく減少することからも、吸水性樹脂の吸水による膨潤が妨げられるので、吸水性樹脂の吸水能力が低下すると考えられる。従って、特許文献1のように、吸水性樹脂とセメントと水とを混合したスラリー(セメントミルク)を舗装体内部へ注入する手法では、舗装体に良好な保水性を与えることができなかった。
【0007】
また、特許文献2のように、透水性舗装の表面から粉粒状の保水材を散布する手法では、舗装体の上層部にしか保水材を含有させることができなかった。このため、充分な保水量を確保することができなかった。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、吸水性ポリマの吸水能力を損なうことなく、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置でき、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる保水処理剤及びその製造方法、並びに、充分な保水量を確保できる保水性構造体及びその製造方法、及び保水処理剤を容易に製造できる保水剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その解決手段は、流動性を有する保水処理剤であって、セメントを含むことなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、及び水、を混合してなる保水処理剤である。
【0009】
本発明の保水処理剤は、流動性を有しているため、連続多孔質層保持体の連続多孔質層の空隙部内に充填し易い。
なお、流動性を有する保水処理剤としては、吸水性ポリマ粉末が分散している液体や、吸水性ポリマ粉末が吸水してなるゲルの粒が分散している液体などを例示できる。
【0010】
ところで、吸水性ポリマ粉末は、その吸水速度が速いことから、単に、水と混合した場合には、水との混合と同時に、吸水性ポリマー粉末の吸水による膨潤が急速に進行してしまう。このため、吸水性ポリマ粉末と水とを混合した後、直ちに、連続多孔質層の空隙部内へ保水処理剤の充填を開始したとしても、充填途中で、吸水性ポリマ粉末が吸水により大きく膨潤して連続多孔質層の孔より大きくなってしまい、吸水した吸水性ポリマ粉末を連続多孔質層の空隙部内に充填できなくなる虞がある。また、連続多孔質層の空隙部に充填する前に、吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の孔より大きく膨潤してしまい、吸水した吸水性ポリマ粉末の充填ができなくなる虞がある。
【0011】
これに対し、本発明の保水処理剤は、吸水速度低下剤(アルコール等の有機溶剤、粘性付与剤、一価の金属塩、その水溶液など)により、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させている。これにより、吸水性ポリマ粉末の吸水による膨潤速度を低下させることができるので、連続多孔質層の空隙部内に充填可能な状態(吸水性ポリマの大きさが連続多孔質層の孔より小さい状態)を長く保持することができる。これにより、充分な量の保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0012】
従って、本発明の保水処理剤を用いれば、適切且つ充分に、吸水性ポリマを、連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。
なお、連続多孔質層の空隙部内に配置した吸水性ポリマは、次第に、吸水により大きく膨潤するので、連続多孔質層に保持される。
【0013】
しかも、本発明の保水処理剤は、セメントを含んでいないので、セメントの影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞もない。
以上より、本発明の保水処理剤を用いれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置でき、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる。
【0014】
なお、吸水性ポリマ粉末としては、保水性が高く、感温性を有する吸水性ポリマとして、サーモゲル(株式会社興人製、商標名)を例示することができる。また、保水性が高く耐塩性に優れた、変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマを用いても良い。変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマとしては、アクアリックCS−6(株式会社日本触媒製、商品名)を例示することができる。さらに、耐熱性に優れた吸水性ポリマとして、アクアリックCS−7(株式会社日本触媒製、商品名)を例示することができる。
【0015】
また、吸水速度低下剤としては、有機溶剤(アルコール類、ケトン類、グリコールエーテル類、ジオール類など)、粘性付与剤(増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊剤等)、一価の金属塩、その水溶液などを例示できる。粘性付与剤は、水に粘性を付与できるもの(親水性の増粘剤など)が好ましいが、有機溶剤と共に粘性付与剤を混合する場合は、有機溶剤に粘性を付与できるもの(アクリル系高分子など)でも良い。
【0016】
また、保水処理剤を充填する連続多孔質層保持体としては、その一部または全部に、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層を備えるものであればいずれでも良い。例えば、その一部または全部を連続多孔質層とした、舗装体(透水性舗装等)や、コンクリート等からなるブロック(透水性ブロック等)や、植木鉢や、プランタや、コンクリート等からなる建築物(例えば、外壁や屋上に連続多孔質層を有する建築物)を挙げることができる。
【0017】
さらに、全体に連続多孔質層を備える連続多孔質層保持体としては、例えば、樹脂発泡体(ポリウレタンフォームなど)、海綿、繊維構造体(不織布など)を挙げることができる。また、一部に連続多孔質層を備える連続多孔質層保持体として、例えば、土台部分に連続多孔質層(樹脂発泡体や繊維構造体など)を備える人工芝や、容器底部や側壁部に連続多孔質層(樹脂発泡体や繊維構造体など)を備える植木鉢やプランターなどを挙げることができる。
【0018】
また、樹脂発泡体としては、樹脂を発泡させて連続気孔としたものであればいずれでも良いが、例えば、ゴム系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系等の合成樹脂系の発泡体を挙げることができる。
【0019】
また、繊維構造体は、繊維または線材からなり、内部に空隙部を有するものを指す。例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ポリ塩化ビニリデン、モダクリル等からなる合成繊維や線材を主材とする不織布(シート状、板状など)、パルプ、綿、麻等の天然繊維や、レーヨン、アセテート等の再生・半合成繊維を主材とする不織布(シート状、板状など)を挙げることができる。また、フェルトや織布でも良い。また、複数の繊維を絡み合わせたものでも良い。また、椰子の繊維など比較的太い繊維やリボン状の木材薄板などを編んだり絡み合わせたりしたものでも良い。また、へちま繊維体など植物由来の繊維体も含む。また、ポリプロピレン等の合成樹脂や金属などからなる線材を、三次元網目構造に成形した構造体をも含む。
【0020】
さらに、上記の保水処理剤であって、前記吸水速度低下剤は、親水性である保水処理剤とすると良い。
【0021】
疎水性の吸水速度低下剤を用いた保水処理剤を、連続多孔質層内に充填した場合は、疎水性の吸水速度低下剤が吸水性ポリマの表面に残存し、その影響で、吸水性ポリマの吸水能力が損なわれ、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができない。
【0022】
これに対し、本発明の保水処理剤では、吸水速度低下剤として親水性の吸水速度低下剤を用いている。このため、本発明の保水処理剤を連続多孔質層内に充填した後、時間の経過に伴って、雨水などと共に、親水性の吸水速度低下剤を連続多孔質層の外部に排出させることができるので、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる。
また、親水性の吸水速度低下剤は、適切に、水と混合することができる。親水性の吸水速度低下剤と混合した水は、吸水性ポリマ粉末にゆっくり吸収されることとなることから、より一層、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下する。
【0023】
親水性の吸水速度低下剤としては、例えば、親水性の有機溶剤(アルコール類、ケトン類、グリコールエーテル類、ジオール類など)、親水性の粘性付与剤、一価の金属塩、その水溶液などを挙げることができる。これらの吸水速度低下剤は、1種のみを保水処理剤に含有させても良いし、2種以上を混合して含有させても良い。
【0024】
親水性の有機溶剤としては、アルコール類(エタノール、エチレングリコール、グリセリン等、1〜3価のアルコール)や、ケトン類(メチルエチルケトン、アセトン等)や、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)や、ジオール類(1,3ブチレングリコール等)やN−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどを例示できる。
このうち、特に、エタノール、エチレングリコール、グリセリンは、安価であり、自然環境を汚染することもないので、好ましい。
【0025】
ところで、吸水性ポリマ粉末は、親水性有機溶剤を吸収することで粘着性が生じ、親水性有機溶剤を吸収した吸水性ポリマ同士が互いに付着し、吸水性ポリマの粒が大きくなってしまうので、連続多孔質層の空隙部内に充填し難くなることがある。
従って、吸水速度低下剤として親水性有機溶剤を用いる場合は、吸水性ポリマ粉末の種類に応じて、その吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤を選択するのが好ましい。これにより、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させることができると共に、保水処理剤中で吸水性ポリマ粉末を適切に分散させることができる。
【0026】
具体的には、例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、多価のアルコール(エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等)を用いるのが好ましい。また、変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマ(アクアリックCS−6など)を用いる場合は、一価のアルコール(エタノール、メタノール、プロパノール等)を用いるのが好ましい。
【0027】
また、吸水速度低下剤として、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤に加えて、吸水性ポリマ粉末に吸収され易い親水性有機溶剤を少量添加するようにしても良い。このようにすれば、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤のみを用いる場合に比べて、少量の吸水速度低下剤で、吸水性ポリマ粉末の吸水速度について同等の低減効果を得ることができる。例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、吸収され難いグリセリン10重量部に加えて、吸収され易いエタノールを1重量部添加するようにしても良い。
【0028】
また、吸水速度低下剤として、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤に加えて、一価の金属塩を少量添加するようにしても良い。このようにすれば、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤のみを用いる場合に比べて、少量の吸水速度低下剤で、吸水性ポリマ粉末の吸水速度について同等の低減効果を得ることができる。例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、吸収され難いグリセリン10重量部に加えて、一価の金属塩を0.1重量部添加するようにしても良い。但し、一価の金属塩の影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞があるため、一価の金属塩の添加量は極少量とするのが好ましく、また、耐金属塩性に優れた吸水性ポリマ粉末(例えば、サーモゲル)を用いるのが好ましい。
【0029】
また、親水性の粘性付与剤としては、例えば、親水性の増粘剤、親水性の安定剤、親水性のゲル化剤、親水性の糊剤等を挙げることができる。特に、セルロースを主原料としたアニオン性の水溶性高分子(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、非イオン性の水溶性セルロースエーテル(例えば、信越化学工業製のメトローズ)、アルギン酸塩などの多糖類(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)、アニオン性のアクリル系水溶性高分子が好適である。カルボキシメチルセルロースナトリウムとしては、CMCダイセル(ダイセル化学工業製、商標名)を例示できる。また、アルギン酸ナトリウムとしては、アルギテックス(株式会社キミカ製、商品名)を例示できる。また、アニオン性のアクリル系水溶性高分子としては、アロンA−50P(東亜合成製、商品名)を例示できる。また、液状の粘性付与剤として、例えば、アデカノール(旭電化製、商品名)を挙げることができる。
【0030】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、前記吸水性ポリマ粉末、前記吸水速度低下剤、及び前記水、のみを混合してなる保水処理剤とするのが好ましい。
この保水処理剤は、吸水性ポリマ粉末、吸水速度低下剤、及び水のみを混合しているので、流動性に優れている。これにより、保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に、容易に且つ短時間で注入することができる。
【0031】
あるいは、前記いずれかの保水処理剤であって、骨材を有し、上記骨材同士の間に複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部に、一旦充填した上記保水処理剤が、上記連続多孔質層から外部に漏出しない程度にまで、粘性付与剤の混合により粘性を高めてなる保水処理剤とするのが好ましい。
【0032】
具体的には、保水処理剤を充填する予定の連続多孔質層の孔の大きさ、連続多孔質層に隣り合う他層と界面の状態(界面を通じて他層に保水処理剤が流れ易いか否か等)に応じて、粘性付与剤の混合により粘度を調整してなる保水処理剤である。
この保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。
【0033】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、前記吸水性ポリマ粉末を前記吸水速度低下剤と混合した後、これを前記水と混合してなる、または、前記水を前記吸水速度低下剤と混合した後、これを前記吸水性ポリマ粉末と混合してなる保水処理剤とするのが好ましい。
【0034】
本発明の保水処理剤は、吸水性ポリマ粉末を吸水速度低下剤と混合して、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させた後、水を混合してなる。または、水を吸水速度低下剤と混合して、水が吸水性ポリマに吸収される吸水速度を低下させた後、吸水性ポリマ粉末を混合してなる。このため、本発明の保水処理剤は、適切に、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤となる。
【0035】
但し、吸水速度低下剤として、水溶性に優れていない粘性付与剤(例えば、CMCダイセルなど)を用いた保水処理剤としては、粘性付与剤を、先に水と混合した後、吸水性ポリマ粉末と混合してなる保水処理剤が好ましい。粘性付与剤により増粘した水と吸水性ポリマ粉末とを混合することで、より確実に、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤となるからである。仮に、CMCダイセルと吸水性ポリマ粉末とを混合した後、これに水を混合した場合には、加えた水にCMCダイセルが溶解する速度よりも、吸水性ポリマ粉末の吸水速度のほうが速いので、吸水性ポリマ粉末が吸水により大きく膨潤してしまうため、連続多孔質層の空隙部内に充填し難くなる。但し、吸水速度低下剤として、水溶性に優れていない粘性付与剤に加えて、グリセリンを用いた場合は、吸水性ポリマ粉末を吸水速度低下剤(粘性付与剤及びグリセリン)と混合した後、水を混合してなる保水処理剤でも、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0036】
他の解決手段は、流動性を有する保水処理剤であって、セメントを含むことなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末に、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末と、水、とを混合してなる保水処理剤である。
【0037】
本発明の保水処理剤は、吸水速度を低下させた(すなわち、吸水による膨潤速度を低下させた)低速吸水性ポリマ粉末と、水とを混合している。このように、吸水による膨潤速度を低下させた低速吸水性ポリマ粉末を用いることで、保水処理剤について、連続多孔質層の空隙部内に充填可能な状態を長く保持することができる。
従って、本発明の保水処理剤を用いれば、適切且つ充分に、吸水性ポリマを、連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。なお、連続多孔質層の空隙部内に配置した低速吸水性ポリマ粉末等は、次第に、吸水により大きく膨潤するので、連続多孔質層に保持される。
【0038】
しかも、本発明の保水処理剤は、セメントを含んでいないので、セメントの影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞もない。
以上より、本発明の保水処理剤を用いれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置でき、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる。
【0039】
なお、本発明の保水処理剤としては、例えば、吸水性ポリマ粉末として感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用い、吸水速度低下剤としてエタノールまたは一価の金属塩(一価の金属塩の水溶液)を用いた保水処理剤を挙げることができる。
【0040】
さらに、上記の保水処理剤であって、前記低速吸水性ポリマ粉末及び前記水のみを混合してなる保水処理剤とするのが好ましい。
この保水処理剤は、低速吸水性ポリマ粉末及び水のみを混合しているので、流動性に優れている。これにより、保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に、容易に且つ短時間で注入することができる。
【0041】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合してなる保水処理剤とすると良い。
【0042】
本発明の保水処理剤は、吸水した吸水性ポリマ粉末、または吸水した低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合している。このため、本発明の保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、連続多孔質層の空隙部内において、吸水した吸水性ポリマ粉末等を、速やかにゲル化させることができる。これにより、吸水した吸水性ポリマ粉末等を、適切に、連続多孔質層に保持させることができる。
なお、ゲル化促進剤としては、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の粘土鉱物を例示できる。
【0043】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、界面活性剤を混合してなる保水処理剤とすると良い。
【0044】
本発明の保水処理剤は、界面活性剤を混合してなる。これにより、保水処理剤中で吸水性ポリマ粉末を適切に分散させることができるので、保水処理剤の流動性を向上させることができる。従って、保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に注入し易くなり、また、保水処理剤の注入可能時間が長くなるので好ましい。
なお、界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル、αオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等を含有する組成物(AE剤)を挙げることができる。具体的には、例えば、AE−02(花王製、商品名)を用いることができる。
【0045】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、前記吸水性ポリマ粉末は、感温性を有する保水処理剤とすると良い。
【0046】
感温性を有する吸水性ポリマは、自身の温度が所定の温度(感温点という)に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達すると吐水する(吸水していた水が脱離する)性質を有している。このため、本発明の保水処理剤を連続多孔質層保持体(透水性舗装体や透水性ブロックなど)に充填することで、舗装体やブロック等の連続多孔質層保持体の温度が吸水性ポリマの感温点に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達したときに吸水していた水を排出する性質を、連続多孔質層保持体に与えることができる。
【0047】
従って、例えば、感温点が35℃程度である吸水性ポリマ粉末を含む保水処理剤を、舗装体内に充填すれば、夏季において、晴天時には、舗装体が加熱されて、舗装体(吸水性ポリマ)の温度が35℃を超えて上昇するので、吸水性ポリマに貯えられていた水が排水され、蒸発することとなる。このときに要する水の気化熱により、舗装体の温度を低下させることができる。なお、晴天時でも、舗装体(吸水性ポリマ)の温度が35℃を下回っている間は、吸水性ポリマに貯えている水を保持し続けることができることから、長期にわたって効率良く、舗装体の温度を低く保つことができる。一方、降雨時には、舗装体が冷却されて、舗装体(吸水性ポリマ)の温度が35℃以下に低下するので、吸水性ポリマが吸水することにより水を貯えることができる。
なお、感温性を有する吸水性ポリマ粉末として、例えば、サーモゲル(株式会社興人製、商標名)を用いることができる。
【0048】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、前記吸水性ポリマ粉末は、変性アクリル系架橋重合体を主成分として含む保水処理剤とすると良い。
【0049】
変性アクリル系架橋重合体は、保水性及び耐塩性が高く、また、吸水と乾燥との繰り返しによる吸収能力の低下が小さい。このため、本発明の保水処理剤を連続多孔質層保持体(透水性舗装体や透水性ブロックなど)に充填することで、長期間にわたり、高い保水性を、連続多孔質層保持体に与えることができる。
【0050】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、前記保水処理剤に含まれる成分のうち、前記吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、上記吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上としてなる、または前記保水処理剤に含まれる成分のうち、前記低速吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、上記低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上としてなる保水処理剤とすると良い。
【0051】
本発明の保水処理剤では、保水処理剤に含まれる成分のうち、吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上としている。または、保水処理剤に含まれる成分のうち、低速吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上としている。このため、本発明の保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、連続多孔質層の空隙部内に位置する吸水性ポリマの量を、この吸水性ポリマの量では空隙部の体積を超える量の水を吸収できない量に制限することができる。従って、仮に、連続多孔質層の空隙部内に位置する吸水性ポリマが可能な限り(飽和状態に至るまで)吸水したときでも、吸水した吸水性ポリマ(ゲル)が空隙部の容積を超えることがない。このように、吸水により膨潤した吸水性ポリマ(ゲル)が、連続多孔質層の空隙部の容積よりも大きくなるのを防止できるので、膨潤した吸水性ポリマ(ゲル)が骨材を押圧することによる連続多孔質層の膨張破壊を防止できる。
【0052】
但し、吸水性ポリマに吸水されている水が凍結したときの体積膨張まで考慮すると、保水処理剤に含まれる成分のうち、吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積の1.1倍以上とするのが好ましい。または、保水処理剤に含まれる成分のうち、低速吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積の1.1倍以上とするのが好ましい。
【0053】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部への上記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する、漏出抑制材を混合してなる保水処理剤とすると良い。
【0054】
本発明の保水処理剤には、吸水した吸水性ポリマ粉末または吸水した低速吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する「漏出抑制材」が混合されている。このため、本発明の保水処理剤を用いれば、吸水した吸水性ポリマ粉末または吸水した低速吸水性ポリマ粉末が、連続多孔質層の空隙部に充填した状態を適切に維持することができる。さらには、充填後、乾燥した吸水性ポリマが再び吸水したときも、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、繰り返し水を蓄えることができる。
【0055】
なお、漏出抑制材としては、例えば、繊維(例えば、ロックウールやガラス繊維等の無機繊維、PP繊維等の有機繊維)、粘土鉱物(例えば、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト等)、増粘剤(例えば、ヒドロキシエチルセルロース等)などを挙げることができる。
このうち、特に、長期にわたって繰り返し、吸水した吸水性ポリマ粉末または吸水した低速吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できる点で、繊維が好適である。例えば、繊維としてロックウールを用いる場合、粒径が5〜13mmの自然石と粒径が5mm以下の砂を骨材として含む透水性舗装体(連続多孔質層)に対しては、吸水性ポリマ粉末(サーモゲル、興人製)と吸水速度低下剤(グリセリン)と水とロックウール(細粒綿、日本ロックウール社製)とを、1:30:126:3以下(重量比)の割合で混合した保水処理剤を用いるのが好ましい。また、繊維構造体(もやいドレーン、吉原化工製)からなる連続多孔質層に対しては、吸水性ポリマ粉末(サーモゲルB01、興人製)と水とロックウール(粒状綿、日本ロックウール社製)とを、1:150:1.5〜10(重量比)の割合で混合した保水処理剤を用いるのが好ましい。
【0056】
本発明の保水処理剤は、特に、空隙部の孔径が、吸水性ポリマ粉末または低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水を100%吸水したときの大きさ(球状と仮定したときの径)よりも大きな連続多孔質層内に充填する場合に好適である。空隙部の孔径がこのように大きい場合でも、本発明の保水処理剤を用いれば、吸水した吸水性ポリマ粉末または吸水した低速吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できるからである。
【0057】
さらに、上記の保水処理剤であって、前記漏出抑制剤として繊維を含む保水処理剤とするのが好ましい。
【0058】
繊維を含む保水処理剤を用いれば、長期にわたって繰り返し、吸水した吸水性ポリマ粉末または吸水した低速吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できる。しかも、繊維を混合することで、吸水性ポリマがままこ状態になる(保水処理剤中で、複数の吸水性ポリマの粉末同士が付着しあって塊状になる)のを抑制することができる。従って、この保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、吸水性ポリマを、空隙部内に分散させて(ままこ状態にすることなく)配置させることができる。これにより、乾燥後、吸水性ポリマが再び吸水する際に、迅速に吸水することができる。しかも、連続多孔質層の空隙部内において、水が繊維を伝わって吸水性ポリマに吸収されやすくなるので好ましい。
【0059】
他の解決手段は、保水処理剤であって、セメントを含むことなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部への上記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した上記吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材、及び水、を混合してなる保水処理剤である。
【0060】
本発明の保水処理剤には、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する「漏出抑制材」が混合されている。このため、本発明の保水処理剤を用いれば、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の空隙部に充填した状態を、適切に維持することができる。さらには、充填後、乾燥した吸水性ポリマが再び吸水したときも、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、繰り返し水を蓄えることができる。
【0061】
本発明の保水処理剤は、特に、空隙部の孔径が、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水を100%吸水したときの大きさ(球状と仮定したときの径)よりも大きな連続多孔質層内に充填する場合に好適である。空隙部の孔径がこのように大きい場合でも、本発明の保水処理剤を用いれば、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できるからである。
【0062】
さらに、上記の保水処理剤であって、吸水した前記吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合してなる保水処理剤とするのが好ましい。
ゲル化促進剤を混合した保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、連続多孔質層の空隙部内において、吸水した吸水性ポリマ粉末を、速やかにゲル化させることができる。これにより、吸水した吸水性ポリマ粉末を、適切に、連続多孔質層に保持させることができる。
なお、ゲル化促進剤としては、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の粘土鉱物を例示できる。
【0063】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、界面活性剤を混合してなる保水処理剤とするのが好ましい。
界面活性剤を混合した保水処理剤では、保水処理剤中で吸水性ポリマ粉末を適切に分散させることができるので、保水処理剤の流動性を向上させることができる。従って、保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に注入し易くなり、また、保水処理剤の注入可能時間が長くなるので好ましい。
【0064】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、前記吸水性ポリマ粉末は、感温性を有する保水処理剤とするのが好ましい。
感温性を有する吸水性ポリマは、自身の温度が所定の温度(感温点という)に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達すると吐水する(吸水していた水が脱離する)性質を有している。このため、この保水処理剤を連続多孔質層保持体(透水性舗装体や透水性ブロックなど)に充填することで、連続多孔質層保持体の温度が吸水性ポリマの感温点に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達したときに吸水していた水を排出する性質を、連続多孔質層保持体に与えることができる。
【0065】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、前記吸水性ポリマ粉末は、変性アクリル系架橋重合体を主成分として含む保水処理剤とするのが好ましい。
変性アクリル系架橋重合体は、保水性及び耐塩性が高く、また、吸水と乾燥との繰り返しによる吸収能力の低下が小さい。このため、この保水処理剤を連続多孔質層保持体(透水性舗装体や透水性ブロックなど)に充填することで、長期間にわたり、高い保水性を、連続多孔質層保持体に与えることができる。
【0066】
さらに、上記いずれかの保水処理剤であって、前記保水処理剤に含まれる成分のうち、前記吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、上記吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上としてなる保水処理剤とするのが好ましい。
【0067】
この保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、連続多孔質層の空隙部内に位置する吸水性ポリマの量を、この吸水性ポリマの量では空隙部の体積を超える量の水を吸収できない量に制限することができる。従って、仮に、連続多孔質層の空隙部内に位置する吸水性ポリマが可能な限り(飽和状態に至るまで)吸水したときでも、吸水した吸水性ポリマ(ゲル)が空隙部の容積を超えることがない。このように、吸水により膨潤した吸水性ポリマ(ゲル)が、連続多孔質層の空隙部の容積よりも大きくなるのを防止できるので、膨潤した吸水性ポリマ(ゲル)が骨材を押圧することによる連続多孔質層の膨張破壊を防止できる。但し、吸水性ポリマに吸水されている水が凍結したときの体積膨張まで考慮すると、保水処理剤に含まれる成分のうち、吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積の1.1倍以上とするのが好ましい。
【0068】
他の解決手段は、セメントを混合することなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、及び水、を混合する保水処理剤の製造方法である。
【0069】
本発明の保水処理剤の製造方法では、吸水性ポリマ粉末に、吸水速度低下剤及び水を加えるので、流動性を有する保水処理剤を得ることができる。流動性を有する保水処理剤は、連続多孔質層の空隙部内に充填し易いので好ましい。
しかも、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤(アルコール等の親水性有機溶剤、親水性の粘性付与剤、一価の金属塩、その水溶液など)を混合している。これにより、吸水性ポリマの吸水による膨潤速度を低下させることができるので、連続多孔質層の空隙部内に充填可能な状態を長く保持することができる。
【0070】
その上、本発明の製造方法では、セメントを混合していないので、セメントの影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞もない。
以上より、本発明の製造方法によれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置でき、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる保水処理剤を製造することができる。なお、連続多孔質層の空隙部内に配置した吸水性ポリマは、次第に、吸水により大きく膨潤するので、連続多孔質層に保持される。
【0071】
さらに、上記の保水処理剤の製造方法であって、前記吸水速度低下剤として、親水性の吸水速度低下剤を混合する保水処理剤の製造方法とすると良い。
【0072】
本発明の保水処理剤の製造方法では、吸水速度低下剤として親水性の吸水速度低下剤を混合する。親水性の吸水速度低下剤を混合してなる保水処理剤を、連続多孔質層内に充填すれば、その後、時間の経過に伴って、雨水などと共に、親水性の吸水速度低下剤を連続多孔質層の外部に排出させることができるので、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる。また、親水性の吸水速度低下剤は、適切に、水と混合することができる。親水性の吸水速度低下剤と混合した水は、吸水性ポリマ粉末にゆっくり吸収されることとなることから、より一層、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下する。
【0073】
さらに、上記の保水処理剤の製造方法であって、前記吸水性ポリマ粉末、前記吸水速度低下剤、及び前記水、のみを混合して上記保水処理剤を製造する保水処理剤の製造方法とするのが好ましい。
この製造方法では、吸水性ポリマ粉末、吸水速度低下剤、及び水のみを混合して保水処理剤を製造しているので、流動性に優れた保水処理剤を得ることができる。このため、本発明の製造方法で製造した保水処理剤は、連続多孔質層の空隙部内に、容易に且つ短時間で注入することができる。
【0074】
あるいは、前記の保水処理剤の製造方法であって、骨材を有し、上記骨材同士の間に、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部に、一旦充填した上記保水処理剤が、上記連続多孔質層から外部に漏出しない程度にまで、粘性付与剤の混合により粘性を高める保水処理剤の製造方法とするのが好ましい。
【0075】
具体的には、保水処理剤を充填する予定の連続多孔質層の孔の大きさ、連続多孔質層に隣り合う他層と界面の状態(界面を通じて他層に保水処理剤が流れ易いか否か等)に応じて、粘性付与剤の混合により粘度を調整する。
この製造方法により製造した保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。
なお、粘性付与剤とは、水に粘性を付与できるものであればいずれでも良く、例えば、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊剤等を挙げることができる。
【0076】
さらに、上記いずれかの保水処理剤の製造方法であって、前記吸水性ポリマ粉末を前記吸水速度低下剤と混合した後、これを前記水と混合する、または、前記水を前記吸水速度低下剤と混合した後、これを前記吸水性ポリマ粉末と混合する保水処理剤の製造方法とすると良い。
【0077】
本発明の製造方法では、吸水性ポリマ粉末を吸水速度低下剤と混合して、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させた後、これを水と混合する。または、水を吸水速度低下剤と混合して、水が吸水性ポリマに吸収される吸水速度を低下させた後、これを吸水性ポリマ粉末と混合する。このように製造することで、適切に、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤を得ることができる。
【0078】
但し、吸水速度低下剤として、水溶性に優れていない粘性付与剤(例えば、CMCダイセルなど)を混合する場合は、粘性付与剤を、先に水と混合した後、吸水性ポリマ粉末を混合するのが好ましい。粘性付与剤により増粘した水と吸水性ポリマ粉末とを混合することで、より確実に、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤となるからである。仮に、CMCダイセルと吸水性ポリマ粉末とを混合した後、これに水を混合した場合には、加えた水にCMCダイセルが溶解する速度よりも、吸水性ポリマ粉末の吸水速度のほうが速いので、吸水性ポリマ粉末が吸水により大きく膨潤してしまうため、連続多孔質層の空隙部内に充填し難くなる。但し、吸水速度低下剤として、水溶性に優れていない粘性付与剤に加えて、グリセリンを用いる場合は、吸水性ポリマ粉末を吸水速度低下剤(粘性付与剤及びグリセリン)と混合した後、これに水を混合しても、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤を得ることができる。
【0079】
他の解決手段は、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末に、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥して、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末を製造する工程と、上記低速吸水性ポリマ粉末と水とを混合する工程と、を備える保水処理剤の製造方法である。
【0080】
本発明の保水処理剤の製造方法では、吸水速度を低下させた(すなわち、吸水による膨潤速度を低下させた)低速吸水性ポリマ粉末と、水とを混合する。このように、吸水による膨潤速度を低下させた低速吸水性ポリマ粉末を用いることで、保水処理剤について、連続多孔質層の空隙部内に充填可能な状態を長く保持することができる。しかも、本発明の製造方法では、セメントを混合していないので、セメントの影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞もない。
【0081】
以上より、本発明の製造方法によれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置でき、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる保水処理剤を製造することができる。
なお、連続多孔質層の空隙部内に配置した低速吸水性ポリマ粉末は、次第に、吸水により大きく膨潤するので、連続多孔質層に保持される。
【0082】
さらに、上記の保水処理剤の製造方法であって、前記低速吸水性ポリマ粉末及び前記水のみを混合して上記保水処理剤を製造する保水処理剤の製造方法とするのが好ましい。
この製造方法では、低速吸水性ポリマ粉末及び水のみを混合して保水処理剤を製造しているので、流動性に優れた保水処理剤を得ることができる。このため、本発明の製造方法で製造した保水処理剤は、連続多孔質層の空隙部内に、容易に且つ短時間で注入することができる。
【0083】
さらに、上記いずれかの保水処理剤の製造方法であって、吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合する保水処理剤の製造方法とすると良い。
【0084】
本発明の製造方法では、吸水した吸水性ポリマ粉末、または吸水した低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合している。このため、本発明の製造方法によれば、連続多孔質層の空隙部内において、吸水した吸水性ポリマ粉末等が速やかにゲル化する保水処理剤を製造することができる。この保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、吸水した吸水性ポリマ粉末等を、連続多孔質層に適切に保持させることができる。
なお、ゲル化促進剤としては、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の粘土鉱物を例示できる。また、ゲル化促進剤は、吸水性ポリマ粉末と吸水速度低下剤とを混合した後または低速吸水性ポリマを製造した後に、水と共に(予め、ゲル化促進剤を水と混合しておいても良い)混合する、または水とは別に(先後は不問)混合するのが好ましい。
【0085】
さらに、上記いずれかの保水処理剤の製造方法であって、界面活性剤を混合する保水処理剤の製造方法とすると良い。
【0086】
本発明の製造方法では、界面活性剤を混合している。これにより、保水処理剤中で吸水性ポリマ粉末を適切に分散させることができるので、保水処理剤の流動性を向上させることができる。従って、保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に注入し易くなり、また、保水処理剤の注入可能時間が長くなるので好ましい。
【0087】
さらに、上記の保水処理剤の製造方法であって、前記界面活性剤を、前記吸水速度低下剤と共に前記吸水性ポリマ粉末と混合する、または前記吸水性ポリマ粉末を前記吸水速度低下剤と混合した後、前記水を混合する前に混合する、または前記吸水性ポリマ粉末を前記吸水速度低下剤と混合した後、さらに前記水を混合した後に混合する保水処理剤の製造方法とするのが好ましい。
このようなタイミングで界面活性剤を混合して保水処理剤を製造することで、適切に、吸水性ポリマ粉末が分散した保水処理剤を製造できる。
なお、低速吸水性ポリマ粉末を用いて保水処理剤の製造する場合は、いずれのタイミングで界面活性剤を混合しても、適切に、吸水性ポリマ粉末が分散した保水処理剤を製造できる。
【0088】
さらに、上記いずれかの保水処理剤の製造方法であって、前記保水処理剤に含まれる成分のうち、前記吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、上記吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上とする、または前記保水処理剤に含まれる成分のうち、前記低速吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、上記低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上とする保水処理剤の製造方法とすると良い。
【0089】
本発明の製造方法では、保水処理剤に含まれる成分のうち、吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上として保水処理剤を製造する。または、保水処理剤に含まれる成分のうち、低速吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上として保水処理剤を製造する。このため、本発明の製造方法により製造した保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、連続多孔質層の空隙部内に位置する吸水性ポリマの量を、この吸水性ポリマの量では空隙部の体積を超える量の水を吸収できない量に制限することができる。従って、仮に、連続多孔質層の空隙部内に位置する吸水性ポリマが可能な限り(飽和状態に至るまで)吸水したときでも、吸水した吸水性ポリマ(ゲル)が空隙部の容積を超えることがない。このように、吸水により膨潤した吸水性ポリマ(ゲル)が、連続多孔質層の空隙部の容積よりも大きくなるのを防止できるので、膨潤した吸水性ポリマ(ゲル)が骨材を押圧することによる連続多孔質層の膨張破壊を防止できる。
【0090】
但し、吸水性ポリマに吸水されている水が凍結したときの体積膨張まで考慮すると、保水処理剤に含まれる成分のうち、吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積の1.1倍以上とするのが好ましい。または、保水処理剤に含まれる成分のうち、低速吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積の1.1倍以上とするのが好ましい。
【0091】
さらに、上記いずれかの保水処理剤の製造方法であって、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部への上記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する、漏出抑制材を混合する保水処理剤の製造方法とするのが好ましい。
【0092】
漏出抑制材を混合した保水処理剤を用いて、これを連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、吸水した吸水性ポリマ粉末または吸水した低速吸水性ポリマ粉末が、連続多孔質層から外部に漏出するのが抑制されるので、これらが連続多孔質層の空隙部に充填された状態を適切に維持することができる。さらには、充填後、乾燥した吸水性ポリマが再び吸水したときも、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、繰り返し水を蓄えることができる。
【0093】
また、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部に充填する保水処理剤の製造方法であって、セメントを混合することなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、上記空隙部への上記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した上記吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材、及び水、を混合する保水処理剤の製造方法とするのが好ましい。
【0094】
漏出抑制材を混合した保水処理剤を用いて、これを連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのが抑制されるので、これが連続多孔質層の空隙部に充填された状態を適切に維持することができる。さらには、充填後、乾燥した吸水性ポリマが再び吸水したときも、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、繰り返し水を蓄えることができる。
なお、漏出抑制剤は、吸水性ポリマと水を混合する前に、吸水性ポリマと混合するのが好ましい。
【0095】
他の解決手段は、骨材を有し、上記骨材同士の間に、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層を、表面または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える保水性構造体であって、上記吸水性ポリマは、自身の一部若しくは全部が、上記骨材同士を結合する結合材によって上記骨材に接着されることなく、しかも、セメントによって被覆されることなく、上記空隙部内に配置されてなる保水性構造体である。
【0096】
本発明の保水性構造体では、吸水性ポリマが、その一部若しくは全部が、骨材同士を結合する結合材で骨材に接着されることなく、しかも、セメントによって被覆されることなく、空隙部内に配置されている。これにより、吸水性ポリマが吸水する際、骨材、結合材、またはセメントにより、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。従って、本発明の保水性構造体によれば、十分な保水量を確保することが可能となる。
【0097】
なお、連続多孔質層保持体としては、その一部または全部に連続多孔質層を備えるものであればいずれでも良い。例えば、その一部または全部を連続多孔質層とした、舗装体(透水性舗装等)や、コンクリート等からなるブロック(透水性ブロック等)や、植木鉢や、プランタや、コンクリート等からなる建築物(例えば、外壁や屋上に連続多孔質層を有する建築物)を挙げることができる。
【0098】
さらに、上記の保水性構造体であって、吸水した前記吸水性ポリマが前記連続多孔質層の外部から漏出するのを抑制する漏出抑制材を、上記連続多孔質層の前記空隙部内に備える保水性構造体とすると良い。
【0099】
本発明の保水性構造体は、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材を、連続多孔質層の空隙部内に備えている。このため、吸水性ポリマが吸水したとき、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、水を蓄えることができる。
本発明の保水性構造体の構成は、特に、連続多孔質層の空隙部の孔径が、吸水性ポリマ粉末または低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水を100%吸水したときの大きさ(球状と仮定したときの径)よりも大きな場合に有効である。空隙部の孔径がこのように大きい場合でも、連続多孔質層の空隙部内に漏出抑制材を備えていることで、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できるからである。
【0100】
さらに、上記の保水性構造体であって、前記漏出抑制材として繊維を含む保水性構造体とするのが好ましい。
この保水性構造体では、漏出抑制材として繊維を含んでいる。このため、長期にわたって繰り返し、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できる。しかも、連続多孔質層の空隙部内において、水が繊維を伝わって吸水性ポリマに吸収されやすくなる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、より適切に、水を蓄えることができる。
【0101】
他の解決手段は、骨材を有し、上記骨材同士の間に、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層、を表面または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える保水性構造体の製造方法であって、上記連続多孔質層の上記空隙部の少なくとも一部に、前記いずれかの保水処理剤を充填する充填工程を備える保水性構造体の製造方法である。
【0102】
本発明の保水性構造体の製造方法では、吸水性ポリマ粉末、この吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、及び水を混合してなる保水処理剤を用いる。または、低速吸水性ポリマ粉末と水とを混合してなる保水処理剤を用いる。このような保水処理剤は、流動性を有するため、連続多孔質層保持体の連続多孔質層の空隙部内に充填し易くなる。なお、連続多孔質層保持体としては、その一部または全部に連続多孔質層を備えるものであればいずれでも良いが、例えば、舗装体(透水性舗装等)、コンクリート等からなるブロック(透水性ブロック等)、植木鉢、プランタ、コンクリート等からなる建築物(例えば、外壁や屋上に連続多孔質層を有する建築物)を挙げることができる。
【0103】
ところで、吸水性ポリマ粉末は、その吸水速度が速いことから、単に、水と混合した場合には、水との混合と同時に、吸水性ポリマー粉末の吸水による膨潤が急速に進行してしまう。このため、吸水性ポリマ粉末と水とを混合した後、直ちに、連続多孔質層の空隙部内へ保水処理剤の充填を開始したとしても、充填途中で、吸水性ポリマ粉末が吸水により大きく膨潤して連続多孔質層の孔より大きくなってしまい、吸水した吸水性ポリマ粉末を連続多孔質層の空隙部内に充填できなくなる虞がある。また、連続多孔質層の空隙部に充填する前に、吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の孔より大きく膨潤してしまい、吸水した吸水性ポリマ粉末の充填ができなくなる虞がある。
【0104】
これに対し、本発明の保水性構造体の製造方法では、吸水速度低下剤(アルコール等の親水性有機溶剤、親水性の粘性付与剤、一価の金属塩、その水溶液など)により、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させた保水処理剤を用いる。あるいは、吸水速度を低下させた低速吸水性ポリマ粉末を有する保水処理剤を用いる。これにより、吸水性ポリマの吸水による膨潤速度が遅くなるので、保水処理剤に含まれる吸水性ポリマを、連続多孔質層の空隙部内に充填可能な状態を長く保持することができる。従って、保水処理剤を充分に連続多孔質層の空隙部内に充填することができるので、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。
なお、連続多孔質層の空隙部内に配置した吸水性ポリマは、次第に、吸水により大きく膨潤するので、連続多孔質層を構成する骨材に保持される。
【0105】
しかも、本発明の製造方法では、セメントを含まない保水処理剤を用いているので、セメントの影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞はない。
以上より、本発明の製造方法によれば、充分な保水量を確保できる保水性構造体を製造できる。
【0106】
なお、保水性構造体としては、例えば、舗装体(透水性舗装等)、コンクリート等からなるブロック(透水性ブロック等)、植木鉢、プランタ、コンクリート等からなる建築物(例えば、外壁や屋上に連続多孔質層を有する建築物)などの連続多孔質層の空隙部内に、吸水性ポリマを配置したものを挙げることができる。
【0107】
また、本発明の製造方法では、保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部の全体に充填しても良いし、連続多孔質層の空隙部の一部にのみ充填するようにしても良い。前者の製造方法によれば、保水能力に優れた保水性構造体を得ることができる。また、後者の製造方法としては、例えば、連続多孔質層からなる舗装体について、連続多孔質層の下側半分に保水処理剤を充填し、上側半分には保水処理剤を充填しないようにしても良い。これにより、舗装体の下側半分を保水層とし、上側半分を透水層とした舗装体を製造することができる。
【0108】
さらに、上記の保水性構造体の製造方法であって、前記充填工程において、前記連続多孔質層の前記空隙部に、一旦充填した前記保水処理剤が、上記連続多孔質層から外部に漏出しない程度にまで、粘性付与剤の混合により粘性を高めてなる保水処理剤を充填する保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
【0109】
具体的には、保水処理剤を充填する予定の連続多孔質層の孔の大きさ、連続多孔質層に隣り合う他層と界面の状態(界面を通じて他層に保水処理剤が流れ易いか否か等)に応じて、粘性付与剤の混合により粘度を調整してなる保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部に充填する。
この製造方法によれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。
なお、粘性付与剤とは、水に粘性を付与できるものであればいずれでも良く、例えば、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊剤等を挙げることができる。
【0110】
また、骨材を有し、上記骨材同士の間に、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層、を表面または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える保水性構造体の製造方法であって、上記連続多孔質層の上記空隙部の少なくとも一部に、セメントを含むことなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、及び水、を混合してなる保水処理剤を充填する充填工程を備える保水性構造体の製造方法が好ましい。
【0111】
この保水性構造体の製造方法では、吸水性ポリマ粉末、この吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、及び水を混合してなる保水処理剤を用いる。このような保水処理剤は、流動性を有するため、連続多孔質層保持体の連続多孔質層の空隙部内に充填し易い。
【0112】
しかも、この保水処理剤は、吸水速度低下剤(アルコール等の親水性有機溶剤、親水性の粘性付与剤、一価の金属塩、その水溶液など)により、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させている。これにより、吸水性ポリマの吸水による膨潤速度を低下させることができるので、保水処理剤に含まれる吸水性ポリマを、連続多孔質層の空隙部内に充填可能な状態を長く保持することができる。従って、保水処理剤を充分に連続多孔質層の空隙部内に充填することができるので、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。
なお、連続多孔質層の空隙部内に配置した吸水性ポリマは、次第に、吸水により大きく膨潤するので、連続多孔質層を構成する骨材に保持される。
【0113】
その上、この製造方法では、セメントを含まない保水処理剤を用いているので、セメントの影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞はない。
以上より、この製造方法によれば、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与え、充分な保水量を確保できる保水性構造体を製造できる。
【0114】
さらに、上記の保水性構造体の製造方法であって、前記保水処理剤は、前記吸水速度低下剤として、親水性の吸水速度低下剤を混合してなる保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
【0115】
この製造方法では、親水性の吸水速度低下剤を混合してなる保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に充填する。親水性の吸水速度低下剤を混合してなる保水処理剤を、連続多孔質層内に充填すれば、その後、時間の経過に伴って、雨水などと共に、親水性の吸水速度低下剤を連続多孔質層の外部に排出させることができるので、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる。
【0116】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記保水処理剤として、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、及び水、のみを混合してなる保水処理剤を用いる保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
吸水性ポリマ粉末、吸水速度低下剤、及び水のみを混合してなる保水処理剤は、流動性に優れている。従って、この保水処理剤を用いる製造方法では、保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に、容易に且つ短時間で注入することができる。
【0117】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記連続多孔質層保持体は、前記連続多孔質層を表面に有する舗装体であり、前記充填工程において、前記保水処理剤を、上記連続多孔質層の前記空隙部の少なくとも一部に充填する保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
この製造方法では、前述の保水処理剤を、舗装体にかかる連続多孔質層の空隙部の少なくとも一部に充填する。これにより、充分な保水量を確保できる舗装体を、適切に製造できる。具体的には、例えば、透水性舗装体の連続多孔質層の空隙部内に、前述の保水処理剤を充填することで、保水能力の高い保水性舗装体にすることができる。
【0118】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記保水処理剤として、前記吸水性ポリマ粉末を前記吸水速度低下剤と混合した後、これを前記水と混合してなる保水処理剤、または、前記水を前記吸水速度低下剤と混合した後、これを前記吸水性ポリマ粉末と混合してなる保水処理剤、を用いる保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
【0119】
この製造方法では、吸水性ポリマ粉末を吸水速度低下剤と混合して、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させた後、水を混合してなる保水処理剤を用いる。または、水を吸水速度低下剤と混合して、水が吸水性ポリマに吸収される吸水速度を低下させた後、吸水性ポリマ粉末を混合してなる保水処理剤を用いる。このような保水処理剤は、吸水速度低下剤(アルコール、粘性付与剤、一価の金属塩、その水溶液など)により、適切に、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤となる。従って、この製造方法によれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置できる。
【0120】
但し、吸水速度低下剤が、水溶性に優れていない粘性付与剤(例えば、CMCダイセルなど)である場合は、粘性付与剤を、先に水と混合した後、吸水性ポリマ粉末と混合してなる保水処理剤を用いるのが好ましい。粘性付与剤により増粘した水と吸水性ポリマ粉末とを混合することで、より確実に、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤となるからである。仮に、CMCダイセルと吸水性ポリマ粉末とを混合した後、これに水を混合した場合には、加えた水にCMCダイセルが溶解する速度よりも、吸水性ポリマ粉末の吸水速度のほうが速いので、吸水性ポリマ粉末が吸水により大きく膨潤してしまうため、連続多孔質層の空隙部内に充填し難くなる。但し、吸水速度低下剤として、水溶性に優れていない粘性付与剤に加えて、グリセリンを用いた場合は、吸水性ポリマ粉末を吸水速度低下剤(粘性付与剤及びグリセリン)と混合した後、水を混合してなる保水処理剤でも、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0121】
また、骨材を有し、上記骨材同士の間に、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層、を表面または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える保水性構造体の製造方法であって、上記連続多孔質層の上記空隙部の少なくとも一部に、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末に、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末と、水と、を混合してなる保水処理剤を充填する充填工程を備える保水性構造体の製造方法が好ましい。
【0122】
この保水性構造体の製造方法では、低速吸水性ポリマ粉末と水とを混合してなる保水処理剤を用いる。このような保水処理剤は、流動性を有するため、連続多孔質層保持体の連続多孔質層の空隙部内に充填し易くなる。
しかも、吸水性ポリマとして、吸水速度を低下させた(すなわち、吸水による膨潤速度を低下させた)低速吸水性ポリマ粉末を用いる。このように、吸水による膨潤速度を低下させた低速吸水性ポリマ粉末を用いることで、保水処理剤について、連続多孔質層の空隙部内に充填可能な状態を長く保持することができる。従って、保水処理剤を充分に連続多孔質層の空隙部内に充填することができるので、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。
【0123】
その上、この製造方法では、セメントを含まない保水処理剤を用いているので、セメントの影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞もない。
以上より、この製造方法によれば、充分な保水量を確保できる保水性構造体を製造できる。
【0124】
さらに、上記の保水性構造体の製造方法であって、前記保水処理剤は、前記低速吸水性ポリマ粉末及び前記水のみを混合してなる保水処理剤である保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
低速吸水性ポリマ粉末及び水のみを混合してなる保水処理剤は、流動性に優れている。従って、この保水処理剤を用いる製造方法では、保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に、容易に且つ短時間で注入することができる。
【0125】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記保水処理剤は、吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合してなる保水処理剤である保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
【0126】
この製造方法では、吸水した吸水性ポリマ粉末、または吸水した低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合した保水処理剤を用いる。このため、連続多孔質層の空隙部内において、吸水した吸水性ポリマ粉末等を、速やかにゲル化させることができる。これにより、吸水した吸水性ポリマ粉末等を、適切に、連続多孔質層を構成する骨材に保持させることができる。
【0127】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記保水処理剤は、界面活性剤を混合してなる保水処理剤である保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
界面活性剤を混合してなる保水処理剤は、保水処理剤中で吸水性ポリマ粉末を適切に分散させることができるので、保水処理剤の流動性を向上させることができる。従って、この保水処理剤を用いることで、保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に注入し易くなり、また、保水処理剤の注入可能時間が長くなるので好ましい。
【0128】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記保水処理剤は、前記吸水性ポリマ粉末が感温性を有する保水処理剤である保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
【0129】
感温性を有する吸水性ポリマは、自身の温度が所定の温度(感温点という)に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達すると吐水する(吸水していた水が脱離する)性質を有している。このため、感温性を有する吸水性ポリマ粉末を混合してなる保水処理剤を、連続多孔質層保持体(透水性舗装体や透水性ブロック)に充填することで、連続多孔質層保持体の温度が吸水性ポリマの感温点に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達したときに吸水していた水を排出する性質を、連続多孔質層保持体に与えることができる。
【0130】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記保水処理剤は、前記吸水性ポリマ粉末が変性アクリル系架橋重合体を主成分として含む保水処理剤である保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
【0131】
変性アクリル系架橋重合体は、保水性及び耐塩性が高く、また、吸水と乾燥との繰り返しによる吸収能力の低下が小さい。このため、吸水性ポリマ粉末が変性アクリル系架橋重合体を主成分として含む保水処理剤を、連続多孔質層保持体(透水性舗装体や透水性ブロックなど)に充填することで、長期間にわたり、高い保水性を、連続多孔質層保持体に与えることができる。
【0132】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記保水処理剤は、上記保水処理剤に含まれる成分のうち、前記吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、上記吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上としてなる、または上記保水処理剤に含まれる成分のうち、前記低速吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、上記低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上としてなる保水処理剤である保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
【0133】
この製造方法では、保水処理剤に含まれる成分のうち、吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上とした保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に充填する。または、保水処理剤に含まれる成分のうち、低速吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上とした保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に充填する。このため、この保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、連続多孔質層の空隙部内に位置する吸水性ポリマの量を、空隙部の体積を超える量の水を吸収できない量に制限することができる。従って、仮に、連続多孔質層の空隙部内に位置する吸水性ポリマが可能な限り(飽和状態に至るまで)吸水したときでも、吸水した吸水性ポリマ(ゲル)が空隙部の容積を超えることがない。このように、吸水により膨潤した吸水性ポリマ(ゲル)が、連続多孔質層の空隙部の容積よりも大きくなるのを防止できるので、膨潤した吸水性ポリマ(ゲル)が骨材を押圧することによる連続多孔質層の膨張破壊を防止できる。
【0134】
但し、吸水性ポリマに吸水されている水が凍結したときの体積膨張まで考慮すると、保水処理剤に含まれる成分のうち、吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積の1.1倍以上とした保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に充填するのが好ましい。または、保水処理剤に含まれる成分のうち、低速吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積の1.1倍以上とした保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に充填するのが好ましい。
【0135】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記保水処理剤は、前記吸水速度低下剤としてアニオン性の水溶性高分子を含み、前記充填工程に先立って、前記連続多孔質層の表面のうち、上記保水処理剤を上記連続多孔質層の前記空隙部内に充填する際の入口となる入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍と、上記連続多孔質層と他層との界面及びその近傍と、の少なくともいずれかに、多価金属塩を配置する充填前多価金属塩配置工程を備える保水性構造体の製造方法とすると良い。
【0136】
アニオン性の水溶性高分子の水溶液は、多価金属塩を添加することで架橋し、ゲルとなる。従って、保水処理剤として、アニオン性の水溶性高分子を含む保水処理剤を用いた場合、この保水処理剤を多価金属塩と反応させることで、保水処理剤をゲル化することができる。
【0137】
そこで、本発明の製造方法では、充填工程に先立って、連続多孔質層の表面のうち入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍と、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍との少なくともいずれかに、多価金属塩を配置させることにした。これにより、例えば、流動性の高い(粘性の低い)保水処理剤を連続多孔質層内に注入した場合でも、連続多孔質層の表面及びその近傍、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍において、アニオン性の水溶性高分子を含む保水処理剤が多価金属塩と反応してゲル化する(流動性を失う)ので、注入した保水処理剤が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、保水処理剤を、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0138】
なお、多価金属塩を、連続多孔質層の入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍に配置する手法としては、例えば、多価金属塩またはその水溶液を、連続多孔質層の入口表面を除いた表面に散布または塗布する手法を挙げることができる。
また、多価金属塩を、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍に配置する手法としては、多価金属塩の水溶液を、連続多孔質層の表面から注入する手法を挙げることができる。あるいは、他層の上に連続多孔質層を形成するに先立って、他層の表面に、多価金属塩またはその水溶液を、散布または塗布するようにしても良い。
【0139】
さらに、上記の保水性構造体の製造方法であって、前記連続多孔質層保持体は、前記連続多孔質層を表面に有する舗装体であり、前記充填前多価金属塩配置工程において、前記多価金属塩の水溶液を、上記連続多孔質層の表面から上記舗装体内に注入する保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
【0140】
多価金属塩の水溶液を、舗装体の表面から舗装体内に注入することで、連続多孔質層とその下層(例えば、砕石層や地盤など)との境界及びその近傍に、多価金属塩を配置させることができる。これにより、例えば、流動性の高い(粘性の低い)保水処理剤を注入した場合でも、連続多孔質層とその下層との境界及びその近傍において、保水処理剤が多価金属塩と反応してゲル化する(流動性を失う)ので、注入した保水処理剤が連続多孔質層から下層等に漏出するのを抑制できる。従って、連続多孔質層を有する舗装体に対し、保水処理剤を、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0141】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記保水処理剤は、前記吸水速度低下剤としてアニオン性の水溶性高分子を含み、前記充填工程の後に、前記連続多孔質層の表面及びその近傍に、多価金属塩を配置する充填後多価金属塩配置工程を備える保水性構造体の製造方法とすると良い。
【0142】
本発明の製造方法では、アニオン性の水溶性高分子を含む保水処理剤を、連続多孔質層に充填した後に、連続多孔質層の表面及びその近傍に、多価金属塩を配置する。これにより、連続多孔質層の表面及びその近傍において、保水処理剤が多価金属塩と反応してゲル化する(流動性を失う)ので、連続多孔質層内に充填した保水処理剤が表面から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、保水処理剤を、適切に、連続多孔質層の空隙部内に保持することができ、その結果、吸水性ポリマを連続多孔質層の空隙部内に適切且つ充分に配置することができる。
【0143】
さらに、上記の保水性構造体の製造方法であって、前記連続多孔質層保持体は、前記連続多孔質層を表面に有する舗装体であり、前記充填後多価金属塩配置工程において、前記多価金属塩またはその水溶液を、上記連続多孔質層の表面に散布する保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
【0144】
この製造方法では、アニオン性の水溶性高分子を含む保水処理剤を、舗装体の連続多孔質層に充填した後に、連続多孔質層の表面に、多価金属塩の水溶液を散布する。これにより、連続多孔質層の表面及びその近傍において、保水処理剤が多価金属塩と反応してゲル化する(流動性を失う)ので、連続多孔質層内に充填した保水処理剤が表面から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、保水処理剤を、適切に、連続多孔質層の空隙部内に保持することができ、その結果、吸水性ポリマを連続多孔質層の空隙部内に適切且つ充分に配置することができる。
【0145】
他の解決手段は、骨材を有し、上記骨材同士の間に、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層を、表面または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える保水性構造体の製造方法であって、上記連続多孔質層の上記空隙部の少なくとも一部に、請求項11に記載の保水処理剤を充填する充填工程を備える保水性構造体の製造方法である。
【0146】
本発明の製造方法では、連続多孔質層の上記空隙部の少なくとも一部に、漏出抑制材が混合された保水処理剤を充填する。これにより、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制して、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の空隙部に充填された状態を、適切に維持することができる。さらには、充填後、乾燥した吸水性ポリマが再び吸水したときも、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、水を蓄えることができるようになる。
本発明の製造方法は、特に、連続多孔質層の空隙部の孔径が、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水を100%吸水したときの大きさ(球状と仮定したときの径)よりも大きな場合に有効である。空隙部の孔径がこのように大きい場合でも、本発明の保水処理剤を用いれば、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できるからである。
【0147】
さらに、上記の保水性構造体の製造方法であって、前記充填工程は、前記吸水性ポリマ粉末が吸水して、前記連続多孔質層の前記空隙部の孔径以上の大きさとなった前記保水処理剤を、上記空隙部内に押圧充填する保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
この製造方法を用いれば、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の空隙部から外部に漏出し難くなるので、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の空隙部に充填された状態を、より適切に維持することができる。
【0148】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記充填工程に先立って、前記連続多孔質層の表面のうち、上記保水処理剤を上記連続多孔質層の前記空隙部内に充填する際の入口となる入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍と、上記連続多孔質層と他層との界面及びその近傍と、の少なくともいずれかに、吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を配置する保水性構造体の製造方法とすると良い。
【0149】
本発明の製造方法では、充填工程に先立って、ゲル化促進剤を、連続多孔質層の表面のうち入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍と、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍との少なくともいずれかに配置する。これにより、例えば、流動性の高い(粘性の低い)保水処理剤を連続多孔質層内に注入した場合でも、連続多孔質層の表面及びその近傍、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍において、吸水した吸水性ポリマがゲル化促進剤と接触してゲル化する(流動性を失う)ので、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0150】
なお、ゲル化促進剤としては、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の粘土鉱物を例示できる。このゲル化促進剤は、単独で配置しても良いし、水と混合した混合液を散布するようにしても良い。また、充填前多価金属塩配置工程において、多価金属塩と共に配置しても良い。
【0151】
さらに、上記の保水性構造体の製造方法であって、前記連続多孔質層保持体は、前記連続多孔質層を表面に有する舗装体であり、前記充填工程に先立って、前記ゲル化促進剤と水との混合液を、上記連続多孔質層の表面から上記舗装体内に注入する保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
【0152】
ゲル化促進剤と水との混合液を、連続多孔質層の表面から舗装体内に注入することで、連続多孔質層とその下層(例えば、砕石層や地盤など)との境界及びその近傍に、ゲル化促進剤を配置させることができる。これにより、その後、例えば、流動性の高い(粘性の低い)保水処理剤を注入した場合でも、連続多孔質層とその下層との境界及びその近傍において、保水処理剤がゲル化促進剤と接触してゲル化する(流動性を失う)ので、注入した保水処理剤が連続多孔質層から下層等に漏出するのを抑制できる。従って、連続多孔質層を有する舗装体に対し、保水処理剤を、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0153】
さらに、上記いずれかの保水性構造体の製造方法であって、前記充填工程の後に、前記連続多孔質層の表面及びその近傍に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を配置する保水性構造体の製造方法とすると良い。
【0154】
本発明の製造方法では、保水処理剤を連続多孔質層に充填した後、連続多孔質層の表面及びその近傍に、ゲル化促進剤を配置する。これにより、連続多孔質層の表面及びその近傍において、吸水した吸水性ポリマがゲル化促進剤と接触してゲル化する(流動性を失う)ので、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層の表面から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
なお、ゲル化促進剤(粘度鉱物など)は、単独で配置しても良いし、水と混合した混合液を散布するようにしても良い。また、充填前多価金属塩配置工程において、多価金属塩と共に配置しても良い。
【0155】
さらに、上記の保水性構造体の製造方法であって、前記連続多孔質層保持体は、前記連続多孔質層を表面に有する舗装体であり、前記充填工程の後に、ゲル化促進剤またはその水溶液を、上記連続多孔質層の表面に散布する保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
【0156】
この製造方法では、保水処理剤を舗装体の連続多孔質層に充填した後、連続多孔質層の表面に、ゲル化促進剤またはその水溶液を散布する。これにより、舗装体の連続多孔質層の表面及びその近傍において、吸水した吸水性ポリマがゲル化促進剤と接触してゲル化する(流動性を失う)ので、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層の表面から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0157】
他の解決手段は、水との混合により、流動性を有する保水処理剤となる保水剤であって、セメントを含むことなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、及び上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、を混合してなる保水剤である。
【0158】
本発明の保水剤を水とを混合することで、吸水性ポリマの吸水速度が抑制された保水処理剤を、容易に得ることができる。これにより、吸水性ポリマの吸水による膨潤速度を低下させることができるので、連続多孔質層の空隙部内に充填可能な状態を長く保持することができる。従って、本発明の保水剤を用いれば、充分な量の保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填することができるので、適切且つ充分に、吸水性ポリマを、連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。
【0159】
しかも、本発明の保水剤は、セメントを含んでいないので、セメントの影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞もない。なお、本発明の保水剤に含まれている吸水速度低下剤は、保水処理剤を連続多孔質層内に充填した後、時間の経過と共に、蒸発等により外部に排出されるので、吸水速度低下剤の影響で、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができなくなる虞もない。
以上より、本発明の保水剤を用いれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置でき、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる。
【0160】
なお、吸水速度低下剤としては、例えば、有機溶剤(アルコール類、ケトン類、グリコールエーテル類、ジオール類など)、水に粘性を付与する粘性付与剤(増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊剤等)、一価の金属塩(塩化ナトリウム等)、その水溶液などを挙げることができる。この吸水速度低下剤は、1種のみを単独で含有させても良いし、2種以上を混合して含有させても良い。但し、吸水速度低下剤として、一価の金属塩を用いる場合は、吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞があるため、一価の金属塩の添加量は少量とするのが好ましく、また、耐金属塩性に優れた吸水性ポリマ粉末(例えば、サーモゲル)を用いるのが好ましい。
【0161】
さらに、上記の保水剤であって、前記吸水速度低下剤は、親水性である保水剤とすると良い。
【0162】
疎水性の吸水速度低下剤を混合してなる保水剤を用いた場合は、連続多孔質層内に充填した後も、疎水性の吸水速度低下剤が吸水性ポリマの表面に残存し、その影響で、吸水性ポリマの吸水能力が損なわれ、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができない。
【0163】
これに対し、本発明の保水剤では、吸水速度低下剤として親水性の吸水速度低下剤を用いている。このため、保水処理剤を連続多孔質層内に充填した後、時間の経過に伴って、雨水などと共に、親水性の吸水速度低下剤を連続多孔質層の外部に排出させることができるので、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる。
また、親水性の吸水速度低下剤は、適切に、水と混合することができる。親水性の吸水速度低下剤と混合した水は、吸水性ポリマ粉末にゆっくり吸収されることとなることから、より一層、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下する。
【0164】
ところで、吸水性ポリマ粉末は、親水性有機溶剤を吸収することで粘着性が生じ、親水性有機溶剤を吸収した吸水性ポリマ同士が互いに付着し、吸水性ポリマの粒が大きくなってしまうので、連続多孔質層の空隙部内に充填し難くなることがある。
従って、吸水速度低下剤として親水性有機溶剤を用いる場合は、吸水性ポリマ粉末の種類に応じて、その吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤を選択するのが好ましい。これにより、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させることができると共に、保水処理剤中で吸水性ポリマ粉末を適切に分散させることができる。
【0165】
具体的には、例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、多価のアルコール(エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等)を用いるのが好ましい。また、変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマ(アクアリックCS−6など)を用いる場合は、一価のアルコール(エタノール、メタノール、プロパノール等)を用いるのが好ましい。
【0166】
また、吸水速度低下剤として、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤に加えて、吸水性ポリマ粉末に吸収され易い親水性有機溶剤を少量添加するようにしても良い。このようにすれば、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤のみを用いる場合に比べて、少量の吸水速度低下剤で、吸水性ポリマ粉末の吸水速度について同等の低減効果を得ることができる。例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、吸収され難いグリセリン10重量部に加えて、吸収され易いエタノールを1重量部添加するようにしても良い。
【0167】
また、吸水速度低下剤として、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤に加えて、一価の金属塩を少量添加するようにしても良い。このようにすれば、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤のみを用いる場合に比べて、少量の吸水速度低下剤で、吸水性ポリマ粉末の吸水速度について同等の低減効果を得ることができる。例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、吸収され難いグリセリン10重量部に加えて、一価の金属塩を0.1重量部添加するようにしても良い。但し、一価の金属塩の影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞があるため、一価の金属塩の添加量は極少量とするのが好ましく、また、耐金属塩性に優れた吸水性ポリマ粉末(例えば、サーモゲル)を用いるのが好ましい。
【0168】
さらに、上記いずれかの保水剤であって、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、及び上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、のみを混合してなる保水剤とするのが好ましい。
この保水剤は、吸水性ポリマ粉末及び吸水速度低下剤のみを含有しているので、これを水と混合してなる保水処理剤は、流動性に優れた保水処理剤となる。この保水処理剤を用いれば、連続多孔質層の空隙部内に、容易に且つ短時間で注入することができる。
【0169】
他の解決手段は、水との混合により、流動性を有する保水処理剤となる保水剤であって、セメントを含むことなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末に、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末を含む保水剤である。
【0170】
本発明の保水剤は、低速吸水性ポリマ粉末を含んでいる。従って、本発明の保水剤と水とを混合することで、吸水性ポリマの吸水速度が低下した(すなわち、吸水による膨潤速度が低下した)保水処理剤を容易に得ることができる。このように、吸水性ポリマの吸水による膨潤速度が低下した保水処理剤では、連続多孔質層の空隙部内に充填可能な状態を長く保持することができる。従って、本発明の保水剤を用いれば、充分に連続多孔質層の空隙部内に充填することができるので、適切且つ充分に、吸水性ポリマを、連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。
【0171】
しかも、本発明の保水剤は、セメントを含んでいないので、セメントの影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞もない。
以上より、本発明の保水剤を用いれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層保持体(舗装体など)の連続多孔質層の空隙部内に配置でき、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる。
【0172】
また、上記の保水剤であって、前記低速吸水性ポリマ粉末のみからなる保水剤とするのが好ましい。
この保水剤は、低速吸水性ポリマ粉末のみからなるので、これを水と混合してなる保水処理剤は、流動性に優れた保水処理剤となる。この保水処理剤を用いれば、連続多孔質層の空隙部内に、容易に且つ短時間で注入することができる。
【0173】
または、前記いずれかの保水剤であって、吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合してなる保水剤とすると良い。
【0174】
本発明の保水剤は、吸水した吸水性ポリマ粉末、または吸水した低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合している。このため、本発明の保水剤と水と混合してなる保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、連続多孔質層の空隙部内において、吸水した吸水性ポリマ粉末等を、速やかにゲル化させることができる。これにより、吸水した吸水性ポリマ粉末等を、適切に、連続多孔質層に保持させることができる。
なお、ゲル化促進剤としては、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の粘土鉱物を例示できる。
【0175】
さらに、上記いずれかの保水剤であって、界面活性剤を混合してなる保水剤とすると良い。
【0176】
本発明の保水剤は、界面活性剤を混合している。このため、本発明の保水剤と水と混合すれば、吸水性ポリマ粉末を適切に分散させることができるので、流動性が良好な保水処理剤を得ることができる。これにより、保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に注入し易くなり、また、保水処理剤の注入可能時間が長くなるので好ましい。
【0177】
さらに、上記いずれかの保水剤であって、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部への前記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材を混合してなる保水剤とすると良い。
【0178】
本発明の保水剤には、吸水した吸水性ポリマ粉末または吸水した低速吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する「漏出抑制材」が混合されている。このため、本発明の保水剤と水と混合してなる保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、吸水した吸水性ポリマ粉末または吸水した低速吸水性ポリマ粉末が、連続多孔質層の空隙部に充填した状態を適切に維持することができる。さらには、充填後、乾燥した吸水性ポリマが再び吸水したときも、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、繰り返し水を蓄えることができる。
【0179】
他の解決手段は、水との混合により保水処理剤となる保水剤であって、セメントを含むことなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、及び複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部への上記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した上記吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材、を混合してなる保水剤である。
【0180】
本発明の保水剤には、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する「漏出抑制材」が混合されている。このため、本発明の保水剤と水とを混合してなる保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の空隙部に充填した状態を適切に維持することができる。さらには、充填後、乾燥した吸水性ポリマが再び吸水したときも、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、繰り返し水を蓄えることができる。
【0181】
さらに、上記の保水剤であって、前記漏出抑制材として繊維を含む保水剤とするのが好ましい。
繊維を含む保水剤を用いれば、長期にわたって繰り返し、吸水した吸水性ポリマ粉末または吸水した低速吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できる。しかも、連続多孔質層の空隙部内において、水が繊維を伝わって吸水性ポリマに吸収されやすくなるので好ましい。
【0182】
さらに、上記いずれかの保水剤であって、吸水した前記吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合してなる保水剤とするのが好ましい。
このゲル化促進剤を混合した保水剤と水とを混合してなる保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、連続多孔質層の空隙部内において、吸水した吸水性ポリマ粉末等を、速やかにゲル化させることができる。これにより、吸水した吸水性ポリマ粉末等を、適切に、連続多孔質層に保持させることができる。
【0183】
さらに、上記いずれかの保水剤であって、界面活性剤を混合してなる保水剤とするのが好ましい。
この界面活性剤を混合した保水剤と水とを混合すれば、吸水性ポリマ粉末を適切に分散させることができるので、流動性が良好な保水処理剤を得ることができる。これにより、保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に注入し易くなり、また、保水処理剤の注入可能時間が長くなるので好ましい。
【0184】
他の解決手段は、水との混合により、流動性を有する保水処理剤となる保水剤であって、セメントを含むことなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、及び上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を、互いに別個に備える保水剤である。
【0185】
本発明の保水剤は、吸水性ポリマ粉末と吸水速度低下剤とを、互いに別個に備えている。このため、例えば、保水性構造体の製造現場において、吸水性ポリマ粉末と吸水速度低下剤と混合した後、これを水と混合することで、容易に、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤を製造することができる。または、吸水速度低下剤と水と混合した後、これを吸水性ポリマ粉末と混合しても、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤を製造することができる。このように、本発明の保水剤を用いれば、保水性構造体の製造現場でも、容易に、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤を製造することができる。
【0186】
なお、吸水速度低下剤として、水溶性に優れていない粘性付与剤(例えば、CMCダイセルなど)を備える保水剤の場合は、粘性付与剤を水と混合した後、これを吸水性ポリマ粉末と混合して、保水処理剤を製造するのが好ましい。粘性付与剤により増粘した水と吸水性ポリマ粉末とを混合することで、より確実に、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤となるからである。仮に、CMCダイセルと吸水性ポリマ粉末とを混合した後、これに水を混合した場合には、加えた水にCMCダイセルが溶解する速度よりも、吸水性ポリマ粉末の吸水速度のほうが速いので、吸水性ポリマ粉末が吸水により大きく膨潤してしまうため、連続多孔質層の空隙部内に充填し難くなる。
但し、吸水速度低下剤として、水溶性に優れていない粘性付与剤に加えて、グリセリンを備える保水剤の場合は、吸水性ポリマ粉末を吸水速度低下剤(粘性付与剤及びグリセリン)と混合した後、水を混合して保水処理剤を製造しても良い。このように製造した保水処理剤でも、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0187】
さらに、前記の保水剤であって、前記吸水性ポリマ粉末及び前記吸水速度低下剤を、互いに別個に備えるのみである保水剤とするのが好ましい。
この保水剤は、吸水性ポリマ粉末及び吸水速度低下剤のみからなるので、これを水と混合してなる保水処理剤は、流動性に優れた保水処理剤となる。この保水処理剤を用いれば、連続多孔質層の空隙部内に、容易に且つ短時間で注入することができる。
【0188】
さらに、上記いずれかの保水剤であって、前記吸水速度低下剤は、アニオン性の水溶性高分子を含み、多価金属塩またはその水溶液を別個に備える保水剤とすると良い。
【0189】
本発明の保水剤では、多価金属塩またはその水溶液を、吸水性ポリマ粉末及び吸水速度低下剤とは、別個に備えている。
アニオン性の水溶性高分子の水溶液は、多価金属塩を添加することで架橋し、ゲルとなる。従って、アニオン性の水溶性高分子を含む保水剤と水とを混合した保水処理剤を、連続多孔質の空隙部に充填する場合、この保水処理剤を多価金属塩と反応させることで、保水処理剤をゲル化することができる。
【0190】
従って、本発明の保水剤は、次のように用いると良い。例えば、保水処理剤(本発明の保水剤のうち多価金属塩またはその水溶液を除いたものと、水との混合液)を連続多孔質の空隙部に充填するに先立って、連続多孔質層の表面のうち保水処理剤を充填する入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍と、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍との少なくともいずれかに、多価金属塩またはその水溶液を配置する。
【0191】
これにより、例えば、流動性の高い(粘性の低い)保水処理剤を連続多孔質層内に注入した場合でも、連続多孔質層の表面及びその近傍、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍において、アニオン性の水溶性高分子を含む保水処理剤が多価金属塩と反応してゲル化する(流動性を失う)ので、注入した保水処理剤が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、保水処理剤を、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0192】
さらに、上記いずれかの保水剤であって、吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤をさらに別個に備える保水剤とすると良い。
【0193】
本発明の保水剤では、ゲル化促進剤を、吸水性ポリマ粉末、吸水速度低下剤、及び多価金属塩またはその水溶液とは、別個に備えている。
本発明の保水剤は、次のように用いると良い。例えば、保水処理剤(本発明の保水剤のうちゲル化促進剤を除いたものと、水との混合液)を連続多孔質の空隙部に充填するに先立って、連続多孔質層の表面のうち保水処理剤を充填する入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍と、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍との少なくともいずれかに、ゲル化促進剤を配置する。
【0194】
これにより、例えば、流動性の高い(粘性の低い)保水処理剤を連続多孔質層内に注入した場合でも、連続多孔質層の表面及びその近傍、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍において、保水処理剤がゲル化促進剤と接触してゲル化する(流動性を失う)ので、注入した保水処理剤が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、保水処理剤を、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0195】
さらに、上記いずれかの保水剤であって、界面活性剤を別個に備える保水剤とすると良い。
【0196】
本発明の保水剤は、界面活性剤を、吸水性ポリマ粉末、吸水速度低下剤、多価金属塩またはその水溶液、及びゲル化促進剤とは、別個に備えている。このため、例えば、保水性構造体の製造現場において、吸水性ポリマ粉末と吸水速度低下剤と界面活性剤と水と混合することで、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させると共に、吸水性ポリマが適切に分散した保水処理剤を製造することができる。この保水処理剤は、流動性が良好となるので、連続多孔質層の空隙部内に注入し易くなり、また、注入可能時間が長くなるので好ましい。
【0197】
さらに、上記4つの保水剤のいずれかであって、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部への前記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材を別個に備える保水剤とするのが好ましい。
この保水剤は、漏出抑制材を、吸水性ポリマ粉末、吸水速度低下剤、多価金属塩またはその水溶液、ゲル化促進剤、及び界面活性剤とは、別個に備えている。このため、例えば、保水性構造体の製造現場において、吸水性ポリマ粉末と吸水速度低下剤と漏出抑制材と水と混合することで、適切に、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できる保水処理剤を得ることができる。
【0198】
また、水との混合により、保水処理剤となる保水剤であって、セメントを含むことなく、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、及び複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部への上記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した上記吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材、を互いに別個に備える保水剤が好ましい。
この保水剤は、吸水性ポリマ粉末と漏出抑制材とを別個に備えている。このため、例えば、保水性構造体の製造現場において、吸水性ポリマ粉末と漏出抑制材と水と混合することで、適切に、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できる保水処理剤を得ることができる。
【0199】
さらに、上記の保水剤であって、吸水した前記吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を別個に備える保水剤とするのが好ましい。
この保水剤は、ゲル化促進剤を、吸水性ポリマ粉末及び漏出抑制材とは、別個に備えている。
この保水剤は、次のように用いると良い。例えば、保水処理剤(本発明の保水剤のうちゲル化促進剤を除いたものと、水との混合液)を連続多孔質の空隙部に充填するに先立って、連続多孔質層の表面のうち保水処理剤を充填する入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍と、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍との少なくともいずれかに、ゲル化促進剤を配置する。これにより、例えば、流動性の高い(粘性の低い)保水処理剤を連続多孔質層内に注入した場合でも、連続多孔質層の表面及びその近傍、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍において、保水処理剤がゲル化促進剤と接触してゲル化する(流動性を失う)ので、注入した保水処理剤が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、保水処理剤を、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0200】
さらに、上記いずれかの保水剤であって、界面活性剤をさらに別個に備える保水剤とするのが好ましい。
この保水剤は、界面活性剤を、吸水性ポリマ粉末、漏出抑制材、及び界面活性剤とは、別個に備えている。このため、例えば、保水性構造体の製造現場において、吸水性ポリマ粉末と漏出抑制材と界面活性剤と水と混合することで、吸水性ポリマ及び漏出抑制材が適切に分散した保水処理剤を製造し、これを用いて保水性構造体を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0201】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(実施例1)
本実施例1では、保水性構造体として、保水性舗装体100を製造した。図1は、本実施例1の保水性舗装体100の断面図である。保水性舗装体100は、骨材110を有する連続多孔質層101と、吸水性ポリマ120とを備える厚さ4cmの舗装体で、被舗装面11上に設けられている。詳細には、骨材110同士が、図示しないバインダ樹脂により結合されると共に、複数の孔104が三次元的に連結した空隙部103を形成している。この空隙部103内には、連続多孔質層101(保水性舗装体100)の全体にわたり、吸水性ポリマ120が配置されている。
【0202】
詳細には、吸水性ポリマ120は、自身の一部若しくは全部が、骨材110同士を結合するバインダ樹脂(結合材)によって骨材110に接着されることなく、しかも、セメントによって被覆されることなく、骨材110若しくは図示しないバインダ樹脂の表面に付着した状態で、空隙部103内に配置されている。これにより、吸水性ポリマ120が吸水する際、骨材110、バインダ樹脂(結合材)、またはセメントにより、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマ120の持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。従って、本実施例1の保水性構造体によれば、十分な保水量を確保することができる。
【0203】
なお、本実施例1の保水性舗装体100では、骨材110として、粒径5〜13mmの自然石と、粒径5mm以下の砂とを用いている。
また、吸水性ポリマ120は、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマであり、図1では、吸水によりゲル化した状態を示している。
【0204】
この吸水性ポリマ120は、感温性を有している(本実施例1では、感温点が35℃)。このため、夏季において、晴天時に保水性舗装体100が加熱されて、吸水性ポリマ120の温度が35℃を超えて上昇すると、吸水性ポリマ120に貯えられていた水が排水され、蒸発することとなる。このときに要する水の気化熱により、保水性舗装体100の温度を低下させることができる。一方、降雨時には、保水性舗装体100が冷却されて、吸水性ポリマ120の温度が35℃以下に低下するので、吸水性ポリマ120が吸水することにより水を貯えることができる。
【0205】
次に、本実施例1の保水性舗装体100の製造方法について説明する。
図2は、連続多孔質層101からなる透水性舗装体102(連続多孔質層保持体に相当する)の断面図である。
まず、アタパルジャイト(ゲル化促進剤に相当する)と水との混合液を、連続多孔質層101の表面101b(入口表面に相当する)から、連続多孔質層101(透水性舗装体102)内に注入した。これにより、連続多孔質層101と被舗装体10(下層に相当する)との境界及びその近傍(具体的には、被舗装面11上など)に、アタパルジャイトを配置することができる。
【0206】
次に、吸水性ポリマ粉末とグリセリン(吸水速度低下剤に相当する)と水とを、1:30:126(重量比)の割合で混合して、保水処理剤40を製造した。
具体的には、まず、図3に示すように、吸水性ポリマ粉末とグリセリンとを、1:30(重量比)の割合で、容器25内で混合して、保水剤20を得た。なお、本実施例1では、吸水性ポリマ粉末として、粒径0.3mm以下のサーモゲル(株式会社興人製、商標名)を用いている。このサーモゲルは、保水性が高く(1gのサーモゲルが100〜150gの水を吸収する)、感温性を有する(本実施例1では、感温点が35℃)吸水性ポリマ粉末である。
次いで、図4に示すように、この保水剤20と水Wとを、31:126(重量比)の割合で、容器45内で混合して、液状の(流動性を有する)保水処理剤40を得た。
【0207】
ところで、本実施例1の保水処理剤40では、吸水性ポリマ粉末と、その他の成分(グリセリン及び水)との混合比(重量比)を、1:156としている。すなわち、1gの吸水性ポリマ粉末に対し、その他の成分(グリセリン及び水)を156gの割合で混合している。ここで、グリセリンの比重が約1.26であるから、その他の成分(グリセリン及び水)156gの体積は、約150cm3 となる。
本実施例1の吸水性ポリマ粉末は、1gで、最大150g(150cm3)の水を吸収することから、本実施例1の保水処理剤40では、保水処理剤40に含まれる成分のうち、吸水性ポリマ粉末を除く成分(グリセリン及び水)の体積を、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上としていることになる。
【0208】
このため、後述のように、本実施例1の保水処理剤40を連続多孔質層101の空隙部103内に充填すれば、連続多孔質層101の空隙部103内に位置する吸水性ポリマ120の量を、この吸水性ポリマ120の量では空隙部103の体積を超える量の水を吸収できない量に制限することができる。従って、仮に、連続多孔質層101の空隙部103内に位置する吸水性ポリマ120が可能な限り(飽和状態に至るまで)吸水したときでも、吸水した吸水性ポリマ120(ゲル)が空隙部103の容積を超えることがない。このように、吸水した吸水性ポリマ120(ゲル)が連続多孔質層101の空隙部103の容積よりも大きく膨潤するのを防止できるので、膨潤した吸水性ポリマ120(ゲル)が骨材110を押圧することによる連続多孔質層101の膨張破壊を防止できる。
【0209】
引き続き、充填工程に進み、この保水処理剤40を、連続多孔質層101からなる透水性舗装体102(連続多孔質層保持体に相当する、図2参照)の空隙部103内に充填した。具体的には、保水処理剤40を、連続多孔質層101の表面101b(入口表面に相当する)から、連続多孔質層101の空隙部103内に注入した。
【0210】
ところで、吸水性ポリマ粉末は、その吸水速度が速いことから、単に、水と混合した場合には、水との混合と同時に、吸水性ポリマー粉末の吸水による膨潤が急速に進行してしまう。このため、吸水性ポリマ粉末と水とを混合した後、直ちに、連続多孔質層101の空隙部103内へ、吸水性ポリマ粉末と水との混合物の充填を開始したとしても、充填途中で、吸水性ポリマ粉末が吸水により大きく膨潤して連続多孔質層101の孔104より大きくなってしまい、吸水した吸水性ポリマ粉末を連続多孔質層101の空隙部103内に充填できなくなる虞がある。また、連続多孔質層101の空隙部103に充填する前に、吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層101の孔104より大きく膨潤してしまい、吸水した吸水性ポリマ粉末の充填ができなくなる虞がある。
【0211】
これに対し、本実施例1の保水処理剤40は、吸水性ポリマ粉末をグリセリン(吸水速度低下剤に相当する)と混合して、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させた後、水を混合してなる。これにより、吸水性ポリマ粉末の吸水による膨潤速度を低下させることができるので、本実施例1の保水処理剤40について、連続多孔質層101の空隙部103内に充填可能な状態(吸水した吸水性ポリマ粉末の大きさが連続多孔質層101の孔104より小さい状態)を長く保持することができた。このため、本実施例1では、保水処理剤40を、連続多孔質層101の空隙部103内に、適切に充填することができた。
【0212】
しかも、本実施例1の保水処理剤40は、吸水性ポリマ粉末、グリセリン(吸水速度低下剤に相当する)、及び水のみを混合しているので、流動性に優れている。このため、保水処理剤40を、連続多孔質層101の空隙部103内に、容易に且つ短時間で注入することができた。
【0213】
その上、本実施例1では、前述のように、充填工程に先立って、連続多孔質層101と被舗装体10(下層に相当する)との境界及びその近傍(具体的には、被舗装面11上など)に、アタパルジャイト(ゲル化促進剤)を配置している。このため、充填工程において、液状の保水処理剤40を連続多孔質層101の空隙部103内に注入すると、被舗装面11及びその近傍において、吸水した吸水性ポリマ120がアタパルジャイトと接触して、速やかにゲル化する(流動性を失う)。これにより、吸水性ポリマ120が、連続多孔質層101から外部に漏出する(例えば、被舗装体10内に進入する)のを抑制することができる。
【0214】
次に、アタパルジャイト(ゲル化促進剤に相当する)と水との混合液を、連続多孔質層101の表面101b(入口表面に相当する)に散布した。これにより、連続多孔質層101の表面101b及びその近傍に、アタパルジャイトを配置することができる。このため、連続多孔質層101の表面101b及びその近傍において、吸水した吸水性ポリマ120がアタパルジャイトと接触してゲル化する(流動性を失う)ので、吸水した吸水性ポリマ120が連続多孔質層101の表面101bから外部に漏出するのを抑制することができる。
【0215】
次いで、連続多孔質層101の表面101bに散水し、表面101bに残存していたアタパルジャイト等を洗い流した。保水処理剤40の注入後まもなく、保水処理剤40に含まれていた吸水性ポリマ粉末は、いずれも、吸水によりゲル状の吸水性ポリマ120に変化するので、連続多孔質層101を構成する骨材110に保持される。
以上より、連続多孔質層101の全体にわたり、連続多孔質層101の空隙部103内に吸水性ポリマ120が配置された保水性舗装体100(図1参照)が完成する。
【0216】
ところで、保水処理剤40に含まれていたグリセリンは、親水性であるため、時間の経過に伴って、雨水などと共に連続多孔質層の外部に排出される。このため、グリセリンの影響で、吸水性ポリマ120の高い吸水能力が損なわれる虞がなく、連続多孔質層101に良好な保水性を与えることができなくなる虞がない。しかも、グリセリンは、自然環境を汚染することがないので好ましい。
その上、本実施例1では、セメントを含まない保水処理剤40を用いているので、セメントの影響で吸水性ポリマ120の吸水能力が低下する虞はない。
以上より、本実施例1の製造方法によれば、充分な保水量を確保できる保水性舗装体100(保水性構造体に相当する)を製造できる。
【0217】
(実施例2)
本実施例2では、実施例1と異なる保水処理剤を用いて、保水性舗装体100(保水性構造体に相当する)を製造した。
具体的には、まず、実施例1と異なり、吸水性ポリマ粉末、グリセリン、粘性付与剤、及び水酸化カルシウム(多価金属塩)を別個に備える(混合していない)保水剤を用意した。
次いで、実施例1と異なり、充填前多価金属塩配置工程において、保水剤に含まれている水酸化カルシウムの水溶液(多価金属塩の水溶液)を、図2に示す連続多孔質層101の表面101b(入口表面に相当する)から、連続多孔質層101内に注入した。これにより、連続多孔質層101と被舗装体10(下層に相当する)との境界及びその近傍(具体的には、被舗装面11上など)に、水酸化カルシウム(多価金属塩)を配置することができる。
【0218】
次に、実施例1と異なり、保水剤に含まれている吸水性ポリマ粉末、グリセリン(吸水速度低下剤に相当する)、及び粘性付与剤と、水とを混合して、保水処理剤を製造した。具体的には、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水と粘性付与剤とを、1:1:149:0.3(重量比)の割合で混合した。
【0219】
詳細には、まず、吸水性ポリマ粉末とグリセリンとを、1:1(重量比)の割合で混合して、ポリマ混合物を得た。なお、本実施例2でも、実施例1と同様に、吸水性ポリマ粉末として、粒径0.3mm以下のサーモゲル(株式会社興人製、商標名)を用いている。 次いで、水と粘性付与剤とを、149:0.3(重量比)の割合で混合して、増粘水を得た。なお、本実施例2では、粘性付与剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウムを主成分とするCMCダイセル(ダイセル化学工業製、商標名)を用いている。
その後、ポリマ混合物と増粘水とを、2:149.3(重量比)の割合で混合して、液状の(流動性を有する)保水処理剤を得た。
【0220】
ところで、本実施例2の保水処理剤では、吸水性ポリマ粉末と、その他の成分(グリセリン及び水)との混合比(重量比)を、1:150としている。すなわち、1gの吸水性ポリマ粉末に対し、その他の成分(グリセリン及び水)を150gの割合で混合している。ここで、グリセリンの比重が約1.26であるから、その他の成分(グリセリン及び水)150gの体積は、約150cm3となる。なお、本実施例2では、粘性付与剤も添加しているが、その添加量は極少量であるため、粘性付与剤の体積は考慮していない。
本実施例2の吸水性ポリマ粉末は、1gで、最大150g(150cm3)の水を吸収することから、本実施例2の保水処理剤では、保水処理剤に含まれる成分のうち、吸水性ポリマ粉末を除く成分(グリセリン及び水)の体積を、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上としていることになる。
【0221】
このため、本実施例2でも、実施例1と同様に、吸水した吸水性ポリマ120(ゲル)が連続多孔質層101の空隙部103よりも大きく膨潤するのを防止できるので、膨潤した吸水性ポリマ120(ゲル)が骨材110を押圧することによる連続多孔質層101の膨張破壊を防止できる。
【0222】
引き続き、充填工程に進み、この保水処理剤を、連続多孔質層101からなる透水性舗装体102(連続多孔質層保持体に相当する、図2参照)の空隙部103内に充填した。具体的には、保水処理剤を、実施例1と同様に、連続多孔質層101の表面101b(入口表面に相当する)から、連続多孔質層101の空隙部103内に注入した。
【0223】
本実施例2でも、実施例1と同様に、吸水性ポリマ粉末をグリセリン(吸水速度低下剤に相当する)と混合して、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させた後、これに水(増粘水)を混合して保水処理剤を製造した。これにより、吸水性ポリマ粉末の吸水による膨潤速度を低下させることができるので、本実施例2の保水処理剤について、連続多孔質層101の空隙部103内に充填可能な状態(吸水した吸水性ポリマ粉末の大きさが連続多孔質層101の孔104より小さい状態)を長く保持することができた。このため、本実施例2でも、保水処理剤を、連続多孔質層101の空隙部103内に、適切に充填することができた。
【0224】
しかも、本実施例2では、前述のように、充填工程に先立って、充填前多価金属塩配置工程において、連続多孔質層101と被舗装体10(下層に相当する)との境界及びその近傍(具体的には、被舗装面11上など)に、水酸化カルシウム(多価金属塩)を配置している。このため、充填工程において、カルボキシメチルセルロースナトリウム(アニオン性の水溶性高分子)を含む保水処理剤を連続多孔質層101の空隙部103内に注入すると、被舗装面11及びその近傍において、保水処理剤が水酸化カルシウムと反応してゲル化する(流動性を失う)。これは、アニオン性の水溶性高分子が、多価金属塩との反応により架橋し、ゲルとなる性質を有しているからである。これにより、吸水性ポリマ120が、連続多孔質層101から外部に漏出する(例えば、被舗装体10内に進入する)のを抑制することができる。
【0225】
次に、充填後多価金属塩配置工程において、水酸化カルシウム水溶液を、連続多孔質層101の表面101b(入口表面に相当する)に散布した。これにより、連続多孔質層101の表面101b及びその近傍に、水酸化カルシウム(多価金属塩)を配置することができる。このため、連続多孔質層101の表面101b及びその近傍において、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む保水処理剤が、水酸化カルシウムと反応してゲル化する(流動性を失う)。これにより、吸水性ポリマ120が、連続多孔質層101の表面101bから外部に漏出するのを抑制することができる。
【0226】
次いで、連続多孔質層101の表面101bに散水し、表面101bに残存していた水酸化カルシウム等を洗い流した。保水処理剤の注入後まもなく、保水処理剤に含まれていた吸水性ポリマ粉末は、いずれも、吸水によりゲル状の吸水性ポリマ120に変化するので、連続多孔質層101を構成する骨材110に保持される。
以上より、連続多孔質層101の全体にわたり、連続多孔質層101の空隙部103内に吸水性ポリマ120が配置された保水性舗装体100(図1参照)が完成する。
【0227】
なお、保水処理剤に含まれていたグリセリン及びCMCダイセル(粘性付与剤)は、親水性であるため、時間の経過に伴って、雨水などと共に連続多孔質層の外部に排出される。このため、グリセリン及びCMCダイセルの影響で、吸水性ポリマ120の高い吸水能力が損なわれる虞がなく、連続多孔質層101に良好な保水性を与えることができなくなる虞がない。
【0228】
(保水処理剤の注入試験)
次に、本実施形態にかかる8種類の保水処理剤(サンプル1〜7)について、図1に示す連続多孔質層101の表面101bから、空隙部103内への注入可能時間を測定した。具体的には、各保水処理剤を、所定時間毎に、断続的に連続多孔質層101の表面101b上に散布し、各保水処理剤に含まれている吸水性ポリマが、膨潤により、連続多孔質層101の空隙部内103内に進入できなくなるまで、経過時間Tを測定した。なお、経過時間Tは、保水処理剤を製造する際に保水剤(またはポリマ混合物)と水との混合を開始した時を、計測開始時としている。
【0229】
また、保水剤(またはポリマ混合物)と水との混合を開始した時から1分を経過するまで(T≦1分)は、10秒毎に、保水処理剤を連続多孔質層101の表面101bに散布した。その後、保水剤(またはポリマ混合物)と水との混合を開始した時から5分を経過するまで(1分<T≦5分)は、1分毎に、保水処理剤を散布した。その後、保水剤(またはポリマ混合物)と水との混合を開始した時から30分を経過するまで(5分<T≦30分)は、5分毎に、保水処理剤を散布した。
【0230】
(サンプル1)
実施例1にかかる保水処理剤を、サンプル1とした。
このサンプル1では、注入可能時間が10〜15分となった。すなわち、保水剤(吸水性ポリマ粉末とグリセリンの混合物)と水との混合を開始した時から10分を経過した時は、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができたが、15分を経過した時には、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができなかった。
【0231】
(サンプル2)
サンプル1の保水処理剤と比較して、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水との混合比のみを異ならせて、サンプル2にかかる保水処理剤を製造した。具体的には、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水との混合比(重量比)を、1:40:118とした。
このサンプル2では、注入可能時間が30分以上となった。すなわち、保水剤(吸水性ポリマ粉末とグリセリンの混合物)と水との混合を開始した時から30分を経過した時でも、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができた。
【0232】
(サンプル3)
サンプル1の保水処理剤と比較して、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水との混合比のみを異ならせて、サンプル3にかかる保水処理剤を製造した。具体的には、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水との混合比(重量比)を、1:20:134とした。
このサンプル3では、注入可能時間が1〜2分となった。すなわち、保水剤(吸水性ポリマ粉末とグリセリンの混合物)と水との混合を開始した時から1分を経過した時は、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができたが、2分を経過した時には、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができなかった。
【0233】
(サンプル4)
サンプル1の保水処理剤と比較して、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水との混合比のみを異ならせて、サンプル4にかかる保水処理剤を製造した。具体的には、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水との混合比(重量比)を、1:1:149とした。
このサンプル4では、注入可能時間が10〜20秒となった。すなわち、保水剤(吸水性ポリマ粉末とグリセリンの混合物)と水との混合を開始した時から10秒を経過した時は、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができたが、20秒を経過した時には、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができなかった。
【0234】
(サンプル5)
実施例2にかかる保水処理剤を、サンプル5とした。
このサンプル5では、注入可能時間が3〜4分となった。すなわち、ポリマ混合物(吸水性ポリマ粉末とグリセリンの混合物)と水(増粘水)との混合を開始した時から3分を経過した時は、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができたが、4分を経過した時には、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができなかった。
【0235】
(サンプル6)
粒径0.3mm以下の吸水性ポリマ粉末(具体的には、サーモゲル)とグリセリンとを混合した後、これにエタノールを加えて混合して、保水剤を得た。このとき、エタノールがサーモゲルに吸収され、エタノールを吸収したサーモゲルが、グリセリン中で分散する。これは、サーモゲルが、グリセリンは吸収し難いが、エタノールは吸収し易い性質を有しているためである。なお、サーモゲルとグリセリンとエタノールとは、1:20:2(重量比)の割合で混合している。その後、保水剤と水とを、23:132(重量比)の割合で混合して、保水処理剤を得た。この保水処理剤をサンプル6とした。
【0236】
このサンプル6では、注入可能時間が5〜10分となった。すなわち、保水剤と水との混合を開始した時から5分を経過した時は、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができたが、10分を経過した時には、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができなかった。
【0237】
(サンプル7)
グリセリンと粘性付与剤とを20:0.2(重量比)の割合で混合した。その後、この混合物と、粒径0.3mm以下の吸水性ポリマ粉末(具体的には、サーモゲル)とを、20:1(重量比)の割合で混合して、保水剤を得た。次いで、この保水剤と水とを、21:134(重量比)の割合で混合して、保水処理剤を得た。この保水処理剤をサンプル8とした。なお、サンプル7では、粘性付与剤として、アロンA−50P(東亜合成製、商品名)を用いている。
【0238】
このサンプル7では、注入可能時間が2〜3分となった。すなわち、保水剤と水との混合を開始した時から2分を経過した時は、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができたが、3分を経過した時には、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができなかった。
【0239】
(サンプル8)
粒径0.3mm以下の吸水性ポリマ粉末(具体的には、サーモゲル)に、エタノールを吸収させた。次いで、これを乾燥させた後、粉砕し、粒径0.3mm以下の低速吸水性ポリマ粉末(保水剤に相当する)を製造した。なお、1重量部の吸水性ポリマ粉末(サーモゲル)に対し、2重量部のエタノールを加えている。この低速吸水性ポリマ粉末(保水剤)と水とを、1:150(重量比)の割合で混合した保水処理剤を、サンプル8とした。
【0240】
このサンプル8では、注入可能時間が1〜2分であった。すなわち、保水剤と水との混合を開始した時から1分を経過した時は、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができたが、2分を経過した時には、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができなかった。
なお、サンプル8の保水処理剤は、低速吸水性ポリマ粉末及び水のみを混合しているので、流動性に優れていた。このため、サンプル8の保水処理剤を、連続多孔質層101の空隙部103内に、容易に且つ短時間で注入することができた。
【0241】
(サンプル9)
粒径0.3mm以下の吸水性ポリマ粉末(具体的には、サーモゲル)と、グリセリンと、塩化ナトリウムとを、1:20:0.1(重量比)の割合で混合して保水剤を得た。次いで、この保水剤と水とを、21.1:134(重量比)の割合で混合した保水処理剤を、サンプル9とした。
このサンプル9では、注入可能時間が3〜4分であった。すなわち、保水剤と水との混合を開始した時から3分を経過した時は、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができたが、4分を経過した時には、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができなかった。
【0242】
なお、サンプル9では、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと塩化ナトリウムとを混合した後、これに水を混合して保水処理剤を製造したが、吸水性ポリマ粉末とグリセリンとを混合した混合物と、塩化ナトリウムと水とを混合した塩化ナトリウム水溶液とを混合して保水処理剤を製造した場合でも、サンプル9と同様に、注入可能時間が3〜4分であった。
【0243】
(サンプル10)
サンプル9の保水処理剤と比較して、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと塩化ナトリウムと水との混合比のみを異ならせて、サンプル10にかかる保水処理剤を製造した。具体的には、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと塩化ナトリウムと水との混合比(重量比)を、1:1:1:149とした。
このサンプル10では、注入可能時間が2〜3分であった。すなわち、保水剤と水との混合を開始した時から2分を経過した時は、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができたが、3分を経過した時には、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができなかった。
【0244】
(サンプル11)
粒径0.3mm以下の吸水性ポリマ粉末(具体的には、サーモゲル)5重量部に、5wt%の塩化ナトリウム水溶液を100重量部吸収させた。次いで、これを乾燥させた後、粉砕し、粒径0.3mm以下の低速吸水性ポリマ粉末(保水剤に相当する)を製造した。この低速吸水性ポリマ粉末(保水剤)とグリセリンと水とを、1:1:149(重量比)の割合で混合した保水処理剤を、サンプル11とした。
【0245】
このサンプ11では、注入可能時間が1〜2分であった。すなわち、保水剤と水との混合を開始した時から1分を経過した時は、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができたが、2分を経過した時には、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に進入させることができなかった。
【0246】
(比較サンプル)
比較形態として、吸水性ポリマ粉末(具体的には、サーモゲル)及び水のみを混合した比較サンプルを製造した。具体的には、粒径0.3mm以下の吸水性ポリマ粉末(具体的には、サーモゲル)と水とを、1:149(重量比)の割合で混合した。混合開始と同時に、吸水性ポリマ粉末が急速に吸水して大きく膨潤すると共に、吸水した吸水性ポリマ同士が付着して、大きな塊となった。
この比較サンプルでは、注入可能時間を測定できなかった。すなわち、吸水性ポリマ粉末と水との混合を開始した時から10秒を経過した時には、既に、吸水性ポリマを連続多孔質層101の空隙部内103内に注入できなくなっていた。換言すれば、この注入試験において、比較サンプルでは、吸水性ポリマを、連続多孔質層101の空隙部内103内に注入することができなかった。
【0247】
ここで、本実施形態にかかるサンプル1〜11の保水処理剤と、比較形態にかかる比較サンプルの保水処理剤とについて、注入試験の結果を表1に示す。なお、表1で示す、吸水性ポリマ、グリセリン、エタノール、塩化ナトリウム、粘性付与剤、及び水の値の単位は、重量部である。
【0248】
【表1】

【0249】
表1において、各サンプルの注入可能時間を比較するとわかるように、実施形態にかかるサンプル1〜11の保水処理剤では、比較形態にかかる比較サンプルの保水処理剤に比べて、注入可能時間を増大させることができた。すなわち、実施形態にかかるサンプル1〜11の保水処理剤では、吸水性ポリマについて、連続多孔質層101の空隙部103内に充填可能な状態(吸水性ポリマの大きさが連続多孔質層101の孔104より小さい状態)を長く保持することができた。換言すれば、実施形態にかかるサンプル1〜11では、吸水性ポリマの吸水速度を低下させることができた。
【0250】
サンプル1〜7及びサンプル9,10の結果より、吸水性ポリマ粉末に吸水速度低下剤(実施形態では、グリセリン、エタノール、塩化ナトリウム、粘性付与剤)を混合することにより、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させることができるといえる。また、サンプル8の結果より、吸水性ポリマ粉末(サーモゲル)に、一旦エタノールを吸収させた後、これを乾燥させることで、吸水速度が低下した低速吸水性ポリマ粉末を得ることができるといえる。
【0251】
さらに、実施形態にかかるサンプル1〜11の結果について、詳細に検討する。
まず、サンプル1〜4の結果について検討する。これらのサンプルは、吸水性ポリマ粉末に対する吸水速度低下剤(具体的には、グリセリン)の添加量が異なる関係にある。サンプル1〜4の結果を比較すると、吸水性ポリマ粉末に対する吸水速度低下剤(具体的には、グリセリン)の添加量を増大させるにしたがって、吸水性ポリマの吸水速度が低下することがわかる。
【0252】
次に、サンプル3とサンプル6の結果について検討する。これらのサンプルは、1重量部のサーモゲル(吸水性ポリマ粉末)に対し、吸水速度低下剤として、サーモゲルに吸収され難いグリセリンを20重量部加えている点で等しいが、サンプル6では、吸水速度低下剤として、さらに、サーモゲルに吸収され易いエタノールを2重量部加えている点で、サンプル3と異なっている。サンプル3とサンプル6の結果を比較すると、サンプル3では注入可能時間が1〜2分であったのに対し、サンプル6では、注入可能時間が5〜10分となった。この結果より、吸水速度低下剤として、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤に加えて、吸水性ポリマ粉末に吸収され易い親水性有機溶剤を少量添加することで、吸水性ポリマの吸水速度が大きく低下することがわかる。
【0253】
次に、サンプル4とサンプル5の結果について検討する。これらのサンプルは、1重量部のサーモゲル(吸水性ポリマ粉末)に対し、吸水速度低下剤として、グリセリンを1重量部加えている点で等しいが、サンプル5では、さらに、粘性付与剤を0.3重量部加えている点で、サンプル4と異なっている。サンプル4とサンプル5の結果を比較すると、サンプル4では注入可能時間が10〜20秒であったのに対し、サンプル5では、注入可能時間が3〜4分となった。この結果より、粘性付与剤(具体的には、CMCダイセル)により、保水処理剤の粘性を高めることで、吸水性ポリマの吸水速度が大きく低下することがわかる。
【0254】
次に、サンプル3とサンプル9の結果について検討する。これらのサンプルは、1重量部のサーモゲル(吸水性ポリマ粉末)に対し、吸水速度低下剤として、グリセリンを20重量部加えている点で等しいが、サンプル9では、さらに、塩化ナトリウムを0.1重量部加えている点で、サンプル3と異なっている。サンプル3とサンプル9の結果を比較すると、サンプル3では注入可能時間が1〜2分であったのに対し、サンプル9では、注入可能時間が3〜4分となった。この結果より、吸水速度低下剤として、グリセリンに加えて、塩化ナトリウムを少量添加することで、吸水性ポリマの吸水速度が大きく低下することがわかる。
【0255】
次に、サンプル4とサンプル10の結果について検討する。これらのサンプルは、1重量部のサーモゲル(吸水性ポリマ粉末)に対し、吸水速度低下剤として、グリセリンを1重量部加えている点で等しいが、サンプル10では、さらに、塩化ナトリウムを1重量部加えている点で、サンプル4と異なっている。サンプル4とサンプル10の結果を比較すると、サンプル4では注入可能時間が10〜20秒であったのに対し、サンプル10では、注入可能時間が2〜3分となった。この結果より、吸水速度低下剤として、グリセリンに加えて、塩化ナトリウムを少量添加することで、吸水性ポリマの吸水速度が大きく低下することがわかる。
【0256】
次に、サンプル4とサンプル11の結果について検討する。これらのサンプルは、1重量部の吸水性ポリマ粉末に対し、吸水速度低下剤として、グリセリンを1重量部加えている点で等しいが、サンプル11では、吸水性ポリマ粉末(サーモゲル)に、一旦塩化ナトリウム水溶液を吸収させた後、これを乾燥させた吸水性ポリマ粉末を用いている点でサンプル4と異なっている。サンプル4とサンプル11の結果を比較すると、サンプル4では注入可能時間が10〜20秒であったのに対し、サンプル11では、注入可能時間が1〜2分となった。この結果より、吸水性ポリマ粉末(サーモゲル)に、一旦塩化ナトリウム水溶液を吸収させた後、これを乾燥させることで、吸水速度が低下した低速吸水性ポリマ粉末を得ることができるといえる。
【0257】
(実施例3)
本実施例3では、保水性構造体200(図6参照)を製造し、その保水率を調査した。
(連続多孔質層の作製)
まず、図5に示すように、円筒容器250内に、複数の孔204が三次元的に連結した空隙部203が形成されてなる連続多孔質層201を作製した。
具体的には、骨材として、粒径5〜13mmの自然石と、粒径5mm以下の砂とを、4:1(重量比)の割合で混合した骨材210を用意した。また、バインダとして、硬化性乳剤(近代化成株式会社製)を用意した。
【0258】
次いで、骨材210とバインダ(図示しない)とを20:1(重量比)の割合で混合した。この混合材を、内径10cm×高さ9cmの円筒容器250内に充填し、マーシャルランマーを用いて、充填した混合材を突き固めた。その後、バインダを乾燥させることで、円筒容器250内に、連続多孔質層201を作製した。このようにして、円筒容器250内に連続多孔質層201を備えるサンプルを、3ヶ(サンプルA,B,Cとする)作製した。なお、連続多孔質層201の理論密度(空隙部203が存在しないと仮定したときの密度)は、2.419となる。
【0259】
(連続多孔質層201の空隙率の算出)
サンプルA〜Cの乾燥重量を測定し、これから円筒容器250の重量を差し引いて、各サンプルについて連続多孔質層201の乾燥重量を算出した。さらに、各サンプルの円柱形状をなす連続多孔質層201について、直径及び高さを測定し、この測定寸法に基づいて、各サンプルにかかる連続多孔質層201のかさ体積を算出した。次いで、各サンプルについて、乾燥重量をかさ体積で除して、かさ密度を算出した。このかさ密度を、理論密度2.419で除して、この値を1から差し引くことで、各サンプルにかかる連続多孔質層201の空隙率を算出した。この結果を表2に示す。
【0260】
【表2】

【0261】
表2に示すように、サンプルA,B,Cでは、ぞれぞれ、連続多孔質層201の空隙率が26.5%,25.2%,25.3%となった。従って、連続多孔質層201の空隙率は、平均で25.9%となった。また、サンプルA,B,Cについて、かさ体積に空隙率を乗じて、空隙体積(空隙部203の体積に相当する)を算出したところ、順に、101.5cc,95.1cc,95.7ccとなった。従って、連続多孔質層201の空隙体積(空隙部203の体積に相当する)は、平均で97.4ccとなった。
【0262】
(保水性構造体の製造)
まず、実施例2と比較して、吸水性ポリマ粉末(サーモゲル)、グリセリン(吸水速度低下剤に相当する)、水、及び粘性付与剤(CMCダイセル)の混合比のみを異ならせて、保水処理剤を製造した。具体的には、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水と粘性付与剤との割合(重量比)を、2:30:126:0.2とした。
【0263】
次いで、この保水処理剤を、サンプルA,B,Cのそれぞれについて、連続多孔質層201の空隙部203内に充填した。具体的には、保水処理剤を、連続多孔質層201の表面201b(入口表面に相当する)から、連続多孔質層201の空隙部203内に注入した。注入後まもなく、保水処理剤に含まれていた吸水性ポリマ粉末は、いずれも、吸水によりゲル状の吸水性ポリマ220に変化するので、連続多孔質層201を構成する骨材210に保持される。
以上より、図6に示すように、連続多孔質層201の全体にわたり、連続多孔質層201の空隙部203内に吸水性ポリマ220が配置された保水性構造体200が完成する。
【0264】
(保水性構造体の保水率の算出)
次に、本実施例3の保水性構造体200(サンプルA,B,C)について、保水率(空隙部203内を占める水の割合)を算出した。
まず、水を貯えた水槽中に、サンプルA,B,Cをそれぞれ約12時間浸漬し、保水性構造体200に含まれている吸水性ポリマ220に、充分に吸水させた。次いで、各サンプルを水槽中から取り出し、その後、約60℃に保持された乾燥機内に、各サンプルを2日間安置した。これにより、吸水性ポリマ220に保持されている水を、蒸発させた。この吸水及び乾燥のサイクルを、3回繰り返した後、各サンプルの重量を測定した。
【0265】
その後、再び、水を貯えた水槽中に、サンプルA,B,Cをそれぞれ約12時間浸漬して(4回目の吸水)、保水性構造体200に含まれている吸水性ポリマ220に、充分に吸水させた。次いで、各サンプルを水槽中から取り出し、各サンプルの重量を測定した。
次に、サンプルA,B,Cのそれぞれについて、4回目の吸水後の重量から3回目の乾燥後の重量を差し引いて、保水性構造体200の保水量(g)を算出した。次いで、各サンプルについて、保水量(g)を空隙体積(cc)で除して、保水性構造体200の保水率を算出した。この結果を表2に示す。
【0266】
表2に示すように、サンプルA,B,Cでは、ぞれぞれ、保水性構造体200の保水率が90.0%,88.3%,94.4%となった。従って、保水性構造体200の保水率は、平均で90.9%となり、極めて高い値を示した。
以上より、本実施例3の保水性構造体200は、極めて保水性の高い構造体であると言える。従って、本実施例3の保水性構造体の製造方法によれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に配置でき、充分な保水量を確保できる保水性構造体を製造できるといえる。
【0267】
(実施例4)
本実施例4では、保水性構造体として、保水性ブロック400を製造した。図7は、本実施例4の保水性ブロック400の斜視破断面図である。保水性ブロック400は、骨材410(粒径5〜10mmの砂利)を有する連続多孔質層401と、吸水性ポリマ420とを備えている。詳細には、骨材410同士の間に、複数の孔404が三次元的に連結した空隙部403を形成している。この空隙部403内には、連続多孔質層401(保水性ブロック400)の全体にわたり、吸水性ポリマ420が配置されている。
【0268】
(保水性ブロック400の製造)
まず、セメントと水とを混練してセメントミルクを作製し、これに骨材410(粒径5〜10mmの砂利)を加えて混合した。この混合材を、所定形状の型枠内に流し込んだ。その後、型枠内の混合材を押圧しつつ、これに振動を加えた後、養生し、所定時間放置した。その後、脱型し、乾燥させることにより、図8に示す連続多孔質層保持体402を得た。この連続多孔質層保持体402は、連続多孔質層401からなり、骨材410同士の間に、複数の孔404が三次元的に連結した空隙部403を形成している。
【0269】
次に、図9に示すように、4ヶの連続多孔質層保持体402を、所定の間隙Sを空けて容器450内に配置した。次いで、容器450内に保水処理剤を注入して、4ヶの連続多孔質層保持体402を保水処理剤中に浸漬した。これにより、連続多孔質層401の空隙部403内に、保水処理剤を充填することができる。なお、本実施例4でも、実施例1と同等の保水処理剤を用いている。
次いで、所定時間が経過した後、4ヶの連続多孔質層保持体402を容器250内から取り出した。その後、連続多孔質層保持体402の表面を水洗し、乾燥することで、本実施例4の保水性ブロック400(図7参照)が完成する。
【0270】
なお、連続多孔質層保持体402を保水処理剤中に浸漬する時間は、連続多孔質層401内に進入した吸水性ポリマが吸水によりゲル化するまでの時間に設定するのが好ましい。これにより、連続多孔質層401内に進入した吸水性ポリマが、外部に漏出するのを抑制できる。なお、吸水性ポリマが吸水によりゲル化したか否かは、間隙S内に位置する保水処理剤を観察することで確認できる。
【0271】
また、保水処理剤中に浸漬した連続多孔質層保持体402を容器250内から取り出した後、連続多孔質層保持体402の表面に、ゲル化促進剤(例えば、アタパルジャイトなどの粘度鉱物)を塗布するのが好ましい。これにより、連続多孔質層保持体402(連続多孔質層401)の表面及びその近傍において、吸水した吸水性ポリマ420がゲル化促進剤と接触して、速やかにゲル化する(流動性を失う)ので、連続多孔質層401内に位置する吸水性ポリマ420が、連続多孔質層401から外部に漏出するのを抑制できる。
【0272】
(実施例5)
本実施例5では、実施例1と異なる保水処理剤を用いて、保水性舗装体100(保水性構造体に相当する)を製造した。
具体的には、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水とロックウール(漏出抑制材に相当する)を、1:30:126:0.5(重量比)の割合で混合して、保水処理剤を製造した。具体的には、まず、吸水性ポリマ粉末とグリセリンとロックウールとを、1:30:0.5(重量比)の割合で混合してポリマ混合物を得た。その後、このポリマ混合物と水とを、31.5:126(重量比)の割合で混合して、保水処理剤を得た。
【0273】
なお、本実施例5でも、吸水性ポリマ粉末として、粒径0.3mm以下のサーモゲル(株式会社興人製、商標名)を用いている。
また、ロックウールとして、細粒綿(日本ロックウール社製)を用いている。
【0274】
引き続き、充填工程に進み、この保水処理剤を、連続多孔質層101からなる透水性舗装体102(連続多孔質層保持体に相当する、図2参照)の空隙部103内に充填した。具体的には、保水処理剤を、実施例1と同様に、連続多孔質層101の表面101b(入口表面に相当する)から、連続多孔質層101の空隙部103内に注入した。
なお、本実施例5では、実施例1と異なり、保水処理剤の充填前に、アタパルジャイト(ゲル化促進剤に相当する)と水との混合液を、連続多孔質層101(透水性舗装体102)内に注入することは行っていない。
【0275】
本実施例5では、ロックウール(漏出抑制材である繊維)を混合した保水処理剤を用いているので、保水処理剤を連続多孔質層101の空隙部103内に充填したときに、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層101から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層101の空隙部103内に充填された状態を、適切に維持することができる。このようにして、連続多孔質層101の空隙部103内に、吸水性ポリマ120と共にロックウール(漏出抑制材)が配置された保水性構造体を製造することができる。
【0276】
さらに、充填後、乾燥した吸水性ポリマ120が再び吸水したときも、ロックウール(漏出抑制材)の存在により、吸水した吸水性ポリマ120が連続多孔質層101から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層101の空隙部内103に、適切に、繰り返し水を蓄えることができる。
【0277】
特に、本実施例5では、漏出抑制剤として繊維(具体的には、ロックウール)を用いているので、長期にわたって繰り返し、吸水した吸水性ポリマ120が連続多孔質層101から外部に漏出するのを抑制できる。しかも、連続多孔質層101の空隙部103内において、水が繊維を伝わって吸水性ポリマ120に吸収されやすくなるので好ましい。
【0278】
以上において、本発明を実施例1〜5に即して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0279】
例えば、実施例1〜3では、吸水性ポリマとして、サーモゲル(株式会社興人製、商標名)を用いたが、アクアリックCS−6(株式会社日本触媒製、商品名)等の変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマを用いても良い。
変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマは、耐塩性に優れている。このため、この吸水性ポリマを連続多孔質層の空隙部内に配置した保水性構造体の表面に、塩を散布すれば、保水性構造体の表面に位置する吸水性ポリマに、塩水を保持させることができる。これにより、保水性構造体の表面の凝固点を降下させ、表面の凍結防止を図ることもできる。
【0280】
また、実施例1では、連続多孔質層101の空隙部103内に保水処理剤40を充填して、保水性舗装体100を製造した。しかしながら、保水処理剤40を、連続多孔質層を有するブロック、植木鉢、プランタ、建築物(具体的には、建築物のうち外壁や屋上を構成する部位)などに充填して、保水性のブロック、植木鉢、プランタ、建築物を製造するようにしても良い。実施例2についても同様である。
【0281】
また、実施例1の保水性舗装体100に含まれている吸水性ポリマ120は、経時劣化により、吸水能力が低下する。このため、保水性舗装体100を製造(連続多孔質層101の空隙部103内に保水処理剤40を充填)した後、所定期間(例えば、3年)毎に、保水処理剤40を保水性舗装体100内に注入するのが好ましい。これにより、保水性舗装体100について、良好な保水能力を維持することができる。
【0282】
また、実施例1では、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水とを、1:30:126(重量比)の割合で混合した保水処理剤40を、連続多孔質層101の空隙部103内に注入したが、保水処理剤を構成する成分の混合割合は、これに限定されるものではない。例えば、グリセリンの割合を低減することで、保水処理剤の粘度が低下するので、充填工程において、保水処理剤が連続多孔質層101の空隙部103内へ速やかに進入する。これにより、充填工程における作業時間(注入時間)を短縮することができる。このように、グリセリンの混合割合を調整することで、充填工程における作業時間(注入時間)を調整することができる。
【0283】
また、実施例1では、保水処理剤として、吸水性ポリマ粉末とグリセリン(吸水速度低下剤に相当する)と水とを混合した保水処理剤40を用いたが、さらに、ゲル化促進剤(例えば、アタパルジャイト等の粘度鉱物)を混合した保水処理剤を用いても良い。ゲル化促進剤を混合した保水処理剤を連続多孔質層101の空隙部103内に充填すれば、連続多孔質層101の空隙部103内において、吸水した吸水性ポリマ粉末を、速やかにゲル化させることができる。これにより、吸水した吸水性ポリマ粉末を、適切に、連続多孔質層101を構成する骨材110に保持させることができる。このため、充填工程に先立って、連続多孔質層101と被舗装体10との境界及びその近傍(具体的には、被舗装面11上など)に、アタパルジャイト(ゲル化促進剤)を配置する工程を省くこともできる。
【0284】
また、実施例2では、水149重量部に対し、粘性付与剤(具体的には、カルボキシメチルセルロースナトリウムを主成分とするCMCダイセル)を0.3重量部混合したが、連続多孔質層101の空隙部103に充填した保水処理剤が、連続多孔質層101から外部に漏出しない程度にまで、粘性付与剤の混合割合を高めても良い。これにより、充填工程において充填した保水処理剤が、連続多孔質層101から外部に漏出するのを抑制できる。このため、充填工程に先立って、連続多孔質層101と被舗装体10との境界及びその近傍(具体的には、被舗装面11上など)に、水酸化カルシウム(多価金属塩)を配置する充填前多価金属塩配置工程を省くこともできる。
【0285】
また、実施例1では、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水とを混合した保水処理剤40を用いたが、さらに界面活性剤を加えて、保水処理剤としても良い。
また、実施例2では、吸水性ポリマ粉末、グリセリン、粘性付与剤、及び水酸化カルシウム(多価金属塩)を別個に備える(混合していない)保水剤を用意したが、さらに界面活性剤を別個に備える保水剤としても良い。さらに、吸水性ポリマ粉末、グリセリン(吸水速度低下剤に相当する)、及び粘性付与剤と、水とを混合して、保水処理剤を製造したが、さらに界面活性剤を加えて、保水処理剤としても良い。
【0286】
上記のように界面活性剤を加えることで、保水処理剤の流動性が増すので、保水処理剤を連続多孔質層101の空隙部103内に注入し易くなり、注入可能時間が長くなるので好ましい。
なお、界面活性剤としては、例えば、AE−02(花王製、商品名)などのAE剤を用いることができる。また、界面活性剤の添加量は、例えば、1重量部の吸水性ポリマ粉末に対し、0.2重量部の界面活性剤を加えるようにすると良い。
【0287】
また、実施例2では、吸水性ポリマ粉末とグリセリンとを1:1(重量比)の割合で混合してポリマ混合物を製造し、これとは別に、水と粘性付与剤とを149:0.3(重量比)の割合で混合して増粘水を製造し、ポリマ混合物と増粘水とを2:149.3(重量比)の割合で混合して保水処理剤を得た。
しかしながら、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと粘性付与剤とを混合した後、これに水を混合して、保水処理剤を製造するようにしても良い。但し、この場合は、グリセリンの混合割合を増大させるのが好ましい。例えば、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと粘性付与剤と水との混合比(重量比)を、1:5:0.3:146として製造した保水処理剤であれば、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0288】
また、実施例5では、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水とロックウールを混合した保水処理剤を用いたが、グリセリン(吸水速度低下剤)を加えることなく、保水処理剤としても良い。また、この保水処理剤を連続多孔質層101の空隙部103内に充填する場合は、吸水性ポリマ粉末が吸水して空隙部103の孔104の径以上の大きさとなった状態の保水処理剤を、空隙部103内に押圧充填するのが好ましい。このようにすれば、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層101の空隙部103から外部に漏出し難くなるので、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層101の空隙部103に充填した状態を、より適切に維持することができる。
【0289】
また、実施例5では、保水処理剤を、連続多孔質層101からなる透水性舗装体102の空隙部103内に充填して、保水性構造体(保水性舗装体)を製造した。
しかしながら、保水処理剤を、繊維構造体の空隙部に充填して保水性構造体を製造するようにしても良い。この場合にも、上記のように、グリセリン(吸水速度低下剤)を加えることなく、吸水性ポリマ粉末と水とロックウールを混合した保水処理剤を用いて、これを充填するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0290】
【図1】実施例1にかかる保水性舗装体100の断面図である。
【図2】透水性舗装体102の断面図である。
【図3】実施例1にかかる保水剤20の製造方法を説明する説明図である。
【図4】実施例1にかかる保水処理剤40の製造方法を説明する説明図である。
【図5】実施例3にかかる連続多孔質層201の断面図である。
【図6】実施例3にかかる保水性構造体200の断面図である。
【図7】実施例4にかかる保水性ブロック400の斜視破断面図である。
【図8】実施例4にかかる連続多孔質層保持体402の斜視破断面図である。
【図9】実施例4にかかる保水性ブロック400の製造方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0291】
20 保水剤
40 保水処理剤
100 保水性舗装体(保水性構造体)
101,201,401 連続多孔質層
102 透水性舗装体(連続多孔質層保持体)
103,203,403 空隙部
110,210,410 骨材
120,220,420 吸水性ポリマ
200 保水性構造体
400 保水性ブロック(保水性構造体)
402 連続多孔質層保持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する保水処理剤であって、
セメントを含むことなく、
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、
上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、及び
水、を混合してなる
保水処理剤。
【請求項2】
請求項1に記載の保水処理剤であって、
前記吸水速度低下剤は、親水性である
保水処理剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保水処理剤であって、
前記吸水性ポリマ粉末を前記吸水速度低下剤と混合した後、これを前記水と混合してなる、または、
前記水を前記吸水速度低下剤と混合した後、これを前記吸水性ポリマ粉末と混合してなる
保水処理剤。
【請求項4】
流動性を有する保水処理剤であって、
セメントを含むことなく、
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末に、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末と、
水、とを混合してなる
保水処理剤。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の保水処理剤であって、
吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合してなる
保水処理剤。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の保水処理剤であって、
界面活性剤を混合してなる
保水処理剤。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の保水処理剤であって、
前記吸水性ポリマ粉末は、感温性を有する
保水処理剤。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の保水処理剤であって、
前記吸水性ポリマ粉末は、変性アクリル系架橋重合体を主成分として含む
保水処理剤。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の保水処理剤であって、
前記保水処理剤に含まれる成分のうち、前記吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、上記吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上としてなる、または
前記保水処理剤に含まれる成分のうち、前記低速吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、上記低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上としてなる
保水処理剤。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の保水処理剤であって、
複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部への上記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する、漏出抑制材を混合してなる
保水処理剤。
【請求項11】
保水処理剤であって、
セメントを含むことなく、
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、
複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部への上記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した上記吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材、及び
水、を混合してなる
保水処理剤。
【請求項12】
セメントを混合することなく、
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、
上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、及び
水、を混合する
保水処理剤の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の保水処理剤の製造方法であって、
前記吸水速度低下剤として、親水性の吸水速度低下剤を混合する
保水処理剤の製造方法。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の保水処理剤の製造方法であって、
前記吸水性ポリマ粉末を前記吸水速度低下剤と混合した後、これを前記水と混合する、
または、
前記水を前記吸水速度低下剤と混合した後、これを前記吸水性ポリマ粉末と混合する
保水処理剤の製造方法。
【請求項15】
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末に、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥して、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末を製造する工程と、
上記低速吸水性ポリマ粉末と水とを混合する工程と、を備える
保水処理剤の製造方法。
【請求項16】
請求項12〜請求項15のいずれか一項に記載の保水処理剤の製造方法であって、
吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合する
保水処理剤の製造方法。
【請求項17】
請求項12〜請求項16のいずれか一項に記載の保水処理剤の製造方法であって、
界面活性剤を混合する
保水処理剤の製造方法。
【請求項18】
請求項12〜請求項17のいずれか一項に記載の保水処理剤の製造方法であって、
前記保水処理剤に含まれる成分のうち、前記吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、上記吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上とする、または
前記保水処理剤に含まれる成分のうち、前記低速吸水性ポリマ粉末を除く成分の体積を、上記低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水の体積以上とする
保水処理剤の製造方法。
【請求項19】
骨材を有し、上記骨材同士の間に、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層を、表面または全体に備える連続多孔質層保持体と、
上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える
保水性構造体であって、
上記吸水性ポリマは、自身の一部若しくは全部が、上記骨材同士を結合する結合材によって上記骨材に接着されることなく、しかも、セメントによって被覆されることなく、上記空隙部内に配置されてなる
保水性構造体。
【請求項20】
請求項19に記載の保水性構造体であって、
吸水した前記吸水性ポリマが前記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材を、上記連続多孔質層の前記空隙部内に備える
保水性構造体。
【請求項21】
骨材を有し、上記骨材同士の間に、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層を、表面または全体に備える連続多孔質層保持体と、
上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える
保水性構造体の製造方法であって、
上記連続多孔質層の上記空隙部の少なくとも一部に、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の保水処理剤を充填する充填工程を備える
保水性構造体の製造方法。
【請求項22】
請求項21に記載の保水性構造体の製造方法であって、
前記保水処理剤は、前記吸水速度低下剤としてアニオン性の水溶性高分子を含み、
前記充填工程に先立って、
前記連続多孔質層の表面のうち、上記保水処理剤を上記連続多孔質層の前記空隙部内に充填する際の入口となる入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍と、
上記連続多孔質層と他層との界面及びその近傍と、の少なくともいずれかに、
多価金属塩を配置する充填前多価金属塩配置工程を備える
保水性構造体の製造方法。
【請求項23】
請求項21または請求項22に記載の保水性構造体の製造方法であって、
前記保水処理剤は、前記吸水速度低下剤としてアニオン性の水溶性高分子を含み、
前記充填工程の後に、
前記連続多孔質層の表面及びその近傍に、多価金属塩を配置する
充填後多価金属塩配置工程を備える
保水性構造体の製造方法。
【請求項24】
骨材を有し、上記骨材同士の間に、複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層を、表面または全体に備える連続多孔質層保持体と、
上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える
保水性構造体の製造方法であって、
上記連続多孔質層の上記空隙部の少なくとも一部に、請求項11に記載の保水処理剤を充填する充填工程を備える
保水性構造体の製造方法。
【請求項25】
請求項21〜請求項24のいずれか一項に記載の保水性構造体の製造方法であって、
前記充填工程に先立って、
前記連続多孔質層の表面のうち、上記保水処理剤を上記連続多孔質層の前記空隙部内に充填する際の入口となる入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍と、
上記連続多孔質層と他層との界面及びその近傍と、の少なくともいずれかに、
吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を配置する
保水性構造体の製造方法。
【請求項26】
請求項21〜請求項25のいずれか一項に記載の保水性構造体の製造方法であって、
前記充填工程の後に、
前記連続多孔質層の表面及びその近傍に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を配置する
保水性構造体の製造方法。
【請求項27】
水との混合により、流動性を有する保水処理剤となる保水剤であって、
セメントを含むことなく、
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、及び
上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、を混合してなる
保水剤。
【請求項28】
請求項27に記載の保水剤であって、
前記吸水速度低下剤は、親水性である
保水剤。
【請求項29】
水との混合により、流動性を有する保水処理剤となる保水剤であって、
セメントを含むことなく、
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末に、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末を含む
保水剤。
【請求項30】
請求項27〜請求項29のいずれか一項に記載の保水剤であって、
吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合してなる
保水剤。
【請求項31】
請求項27〜請求項30のいずれか一項に記載の保水剤であって、
界面活性剤を混合してなる
保水剤。
【請求項32】
請求項27〜請求項31のいずれか一項に記載の保水剤であって、
複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部への前記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材を混合してなる
保水剤。
【請求項33】
水との混合により保水処理剤となる保水剤であって、
セメントを含むことなく、
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、及び
複数の孔が三次元的に連結した空隙部が形成されてなる連続多孔質層の上記空隙部への上記保水処理剤の充填時及び充填後に、吸水した上記吸水性ポリマ粉末が上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材、を混合してなる
保水剤。
【請求項34】
水との混合により、流動性を有する保水処理剤となる保水剤であって、
セメントを含むことなく、
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、及び
上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を、互いに別個に備える
保水剤。
【請求項35】
請求項27〜請求項34のいずれか一項に記載の保水剤であって、
前記吸水速度低下剤は、アニオン性の水溶性高分子を含み、
多価金属塩またはその水溶液を別個に備える
保水剤。
【請求項36】
請求項27〜請求項35のいずれか一項に記載の保水剤であって、
吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を別個に備える
保水剤。
【請求項37】
請求項27〜請求項36のいずれか一項に記載の保水剤であって、
界面活性剤を別個に備える
保水剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−111099(P2008−111099A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229433(P2007−229433)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(505156938)株式会社加藤組 (4)
【Fターム(参考)】