説明

保水性舗装及びその製造方法

【課題】 バインダ樹脂の流出や白華現象等の問題が生じることがなく、表層材としても保水性ブロックを固定する下地層としても活用することができる多孔質保水層を備えた、高い保水性を有する保水性舗装及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 有機樹脂結合材と骨材とを含有する多孔質保水層を備えた保水性舗装を用いる。特に、前記有機樹脂結合材を、前記骨材100質量部に対して0.3質量部以上20質量部以下含有することが好ましく、前記骨材のAMERICAN FOUNDRY SOCIETY 粒度指数が5以上180以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水性を有する舗装に関し、より詳しくは、有機樹脂結合材を用いた多孔質保水層を有する保水性舗装に関するものである。さらには、路盤上に、有機樹脂結合材を用いた多孔質保水層と保水性を有する保護層の設置をこの順に備える保水性舗装に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部のヒートアイランド現象、あるいは、夏場の歩道、沿道等での気温上昇が問題となっている。そのようななか、該気温上昇を抑制する方法として、冷却効果が期待できる保水性舗装の需要が高まっている。保水性舗装とは、内部に水分が保たれた舗装であり、該水分が揮発する際の気化熱により路面温度の上昇を抑える性能を有する舗装である。なお、一般的な保水性舗装の構成としては、路盤上に下地層があり、さらにその上に保水層(保水性ブロック等)が形成されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−181706号公報
【特許文献2】特開2001−73307号公報
【特許文献3】特開平10−311003号公報
【特許文献4】特開2003−74005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、保水性舗装に用いられる保水性ブロックの下地層には、不陸調整等のためにクッション性を出すため砂(以下、クッション砂)を使用していた(例えば、上記特許文献1や特許文献2)。しかしながら、このようなクッション砂は、降雨や保水性舗装への給水に伴って流出してしまう問題があった。そこで、そのような問題を解決するため、複数の下層構造の上端面に透水性ブロックが敷設される透水性舗装路面構造において、透水性ブロックが敷設される下側の層が、通常の砂で形成されるサンドクッションに代る単粒度砕石層であることを特徴とする透水性を有する舗装路面構造(特許文献3)が提案されている。しかし、その効果は十分なものではなかった。
【0005】
また、より積極的に流出を食い止める手法として、セメント1重量部に対して、3.70〜5.90重量部の粗骨材と、0.37〜0.58重量部の細骨材と、0.20〜0.30重量部の水とからなる配合割合で構成した母体コンクリートに、セメント1重量部に対して、3.70〜5.90重量部の細骨材と、0.33〜0.86重量部の水とからなる配合割合で構成した保水性モルタルを付着した舗装材の締め固めによって形成することを特徴とする保水性舗装体、すなわちセメント系モルタルをブロック下地に用いる方法が提案されている(特許文献4)。しかしながら、セメント系モルタルを用いると、クッション砂の流出は防止できるが、新たに、セメントによる汚染によって、白華が発生し美観性が損なわれること、あるいは、保水層が目詰りすることで保水性能が低下することが問題となっていた。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記のような問題を解決しつつ、バインダ樹脂の流出や白華現象等の問題が生じることがなく、表層材としても保水性ブロックを固定する下地層としても活用することができる多孔質保水層を備えた、高い保水性を有する保水性舗装及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、クッション砂やその他の骨材に対して有機樹脂結合材を用いた硬化層を多孔質保水層として用いることで、バインダ樹脂の流出や白華現象等の問題が生じることがなく、高い保水性を有する保水性舗装が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は次の第1〜8の発明から構成される。
【0008】
第1の発明は、有機樹脂結合材と骨材とを含有する多孔質保水層を備えた保水性舗装に関するものである。骨材を有機樹脂結合材で硬化させることにより、白華現象がなく経時でバインダ樹脂の流出もない、表層材としても保水性ブロックを固定する下地層としても活用することができる多孔質保水層を形成させることができる。
【0009】
第2の発明は、前記骨材100質量部に対して、前記有機樹脂結合材を不揮発分換算で0.3質量部以上20質量部以下含有する第1の発明に記載の保水性舗装に関するものである。有機樹脂結合材の量をこの範囲内とすることで、十分な保水性能を発現させることができる。
【0010】
第3の発明は、前記骨材のAMERICAN FOUNDRY SOCIETY粒度指数が5以上180以下である第1又は第2の発明に記載の保水性舗装に関するものである。骨材の粒度(粒径)をこの範囲内とすることで、十分な保水性能を発現させることができる。
【0011】
第4の発明は、前記有機樹脂結合材が、エポキシ樹脂系結合材、ポリウレタン樹脂系結合材、ポリブタジエン樹脂系結合材、アクリル樹脂系結合材から選ばれる1種以上の有機樹脂結合材である第1〜第3のいずれかの発明に記載の保水性舗装に関するものである。特定の有機樹脂結合材を用いることで、より効果的に保水性能を発現させられるうえ、多孔質保水層に十分な強度が付与される。
【0012】
第5の発明は、路盤上に、前記多孔質保水層と、保水性を有する保護層の設置を、この順に備える第1〜第4のいずれかの発明に記載の保水性舗装に関するものである。前記多孔質保水層上にさらに保水性を有する保護層を設置することにより、より効果的な保水性舗装を構成できる。この際、該多孔質保水層は該保護層の下地層となる。
【0013】
第6の発明は、前記多孔質保水層中に、給水管を備える第1〜第5のいずれかの発明に記載の保水性舗装に関するものである。給水管を備えることにより、より効率的に多孔質保水層に水が供給される。
【0014】
第7の発明は、前記路盤が、粒径0.1mm以下の微粒材を10質量%以上30質量%以下含有する保水性路盤である第5又は第6の発明に記載の保水性舗装に関するものである。このような保水性路盤を形成させることで、より効果的な保水性舗装を構成できる。
【0015】
第8の発明は、骨材100質量部に対し、有機樹脂結合材を不揮発分換算で0.3質量部以上20質量部以下含有する混合物を混練する工程と、混練された混合物を路盤(あるいは保水性路盤)上に設置する工程と、該混合物中の有機樹脂結合材を硬化させて多孔質保水層を形成する工程とを含む保水性舗装の製造方法に関するものである。該工程で保水性舗装を製造することにより、より効率的に保水性舗装を構成できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明における保水性舗装及びその製造方法は、有機樹脂結合材をバインダとして用いることにより、バインダ樹脂の流出、白華現象や目詰まり等のセメント汚染が起こらず、かつ、表層材としても保水性ブロックを固定する下地層としても活用することができる多孔質保水層を備えた、高い保水性を有する保水性舗装を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、多孔質保水層2上に保水性を有する保護層1が設置された、第5の発明の保水性舗装の一形態を示した説明図である。
【図2】図2は、多孔質保水層2上に保水性を有する保護層1が設置され、かつ、多孔質保水層内に給水管5が布設された、第6の発明に係る保水性舗装の一形態を示した説明図である。
【図3】図3は、多孔質保水層2上に保水性を有する保護層1が設置され、かつ、多孔質保水層下に保水性路盤6が設けられた、第7の発明に係る保水性舗装の一形態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0019】
[多孔質保水層]
本発明における多孔質保水層は、有機樹脂結合材を用いて骨材を固めた層である。該多孔質保水層は、自らが保水性を有するだけでなく、保水性ブロックを固定する下地層としても活用することができるものである。該多孔質保水層は、層内に保つ水分を徐々に揮発させることで効率的に路面の熱を奪い(水の気化熱による効果)、周囲の温度上昇を抑える性能を持つ。つまり、水の気化熱を効果的に環境温度低下に利用することができる。該多孔質保水層は、降雨、散水、あるいは配管から供給された水を貯える(保水する)ため、効果的に環境温度低下に利用するためには、一定の吸水量が必要である。吸水量としては、完全乾燥状態の多孔質保水層に対して10体積%以上が好ましく、15体積%以上がより好ましく、20体積%以上が特に好ましい。10体積%以下であっても環境温度低下には寄与するが、保水できる量が少ないことから持続性に欠ける場合がある。
【0020】
[有機樹脂結合材]
本発明における有機樹脂結合材は、セメントのような無機系結合材とは異なり、有機樹脂を主成分とする結合材であり、骨材を固定させることによって骨材の流出を抑えられるうえ、強度の高い多孔質保水層を形成させることができるものである。特に、強度の高い多孔質保水層であると、表層材として用いたときに歩行者が保水性舗装上を通行しても多孔質保水層の破壊が起こらず信頼性が高いのでより好ましいが、骨材を固定して流出を抑える機能を有していれば、従来公知の各種有機樹脂が利用できる。
【0021】
上記有機樹脂結合材としては、無溶剤型有機樹脂結合材、溶剤型有機樹脂結合材、水性型有機樹脂結合材を用いることができる。これら有機樹脂結合材は、一種のものを用いてもよいし、二種以上を混合、あるいは併用して用いてもよい。無溶剤型有機樹脂結合材としては、エポキシ樹脂系結合材、ポリウレタン樹脂系結合材、ポリブタジエン樹脂系結合材、ビニル樹脂系結合材(例えば、アクリル樹脂系、メタクリル樹脂系、ビニルエステル樹脂系、ビニルエーテル樹脂系等)、シリル化ポリウレタン樹脂系結合材、変成シリコーン樹脂系結合材等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、溶剤型の有機樹脂結合材としては、クロロプレンやニトリルゴム等を溶剤に溶解させたゴム系結合材や、上記無溶剤型有機樹脂結合材を溶剤希釈したもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、水性型有機樹脂結合材としては、酢酸ビニルエマルジョン、クロロプレンエマルジョン、アクリルエマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ウレタンエマルジョン、EVAエマルジョン、SBRエマルジョン、アクリルシリコンエマルジョン、シリル化ポリウレタンエマルジョン等の従来公知のエマルジョンを主成分とする結合材が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、上述の各種エマルジョンは、対応する架橋剤を配合することで、効率的に硬化させることができる。例えば、エポキシ樹脂エマルジョンにアミン系架橋剤を用いる系、あるいは、各種エマルジョンとポリイソシアネートを混合する系(水性高分子−イソシアネート系結合材)が挙げられる。なお、水溶性の有機樹脂の場合でも保水性能は発現するが、保水時に徐々に有機樹脂が溶解もしくは膨潤してしまい強度の維持が十分ではないため、非水溶性の有機樹脂を用いることが好ましい。但し、該水溶性の有機樹脂とは硬化物が水溶性である有機樹脂(例えば、デンプン、ポリビニルアルコール等)を指す。上述の各種エマルジョンは、硬化時にエマルジョン粒子同士の融着や架橋剤による架橋で非水溶性となるため、上記有機樹脂結合材として利用できるのである。
これらのなかでは、揮発成分が少なく硬化収縮が少ないことから、無溶剤型有機樹脂結合材がより好適に用いられる。特に、エポキシ樹脂系結合材、ポリウレタン樹脂系結合材、ポリブタジエン樹脂系結合材、アクリル樹脂系結合材等の反応硬化型有機樹脂系結合材が、多孔質保水層の保水性能と強度のバランスが良いため、最も好適に用いられる。
なお、上記有機樹脂結合材の粘度は、骨材保持の性能、保水性能に影響を与えない限りは特に限定されないが、100万mPa・s以下が好ましく、50万mPa・s以下がより好ましく、10万mPa・s以下が特に好ましい。上記有機樹脂結合材の粘度が100万mPa・sを上回ると、骨材との混和性が低下する懸念がある。本発明にかかる有機樹脂結合材は、粘度が上記の範囲に入るように、必要に応じて各有機樹脂結合材に適した粘度調整剤を利用していてもよい。該粘度調整剤としては、たとえば、無溶剤型有機樹脂結合材、溶剤型有機樹脂結合材においては、常温液状の有機化合物が利用でき、水性型有機樹脂結合材においては、水あるいは水溶性の常温液状有機化合物が利用できるが、これらに限定されるわけではない。
【0022】
[骨材]
本発明における骨材は、けい砂、川砂、山砂、石灰石砕砂、砕砂、スラグ砕砂、軽量骨材等の他、ガラスカレットなどのリサイクル骨材も使用できる。該骨材は、一種のものを用いてもよいし、材質や粒径の異なる二種以上を混合、あるいは併用して用いてもよい。該骨材の粒径としては、圧縮強度と最大吸水率を確保する上で、AFS粒度指数が5以上180以下であるものを選択して用いる。AFS粒度指数としては、20〜120のものがより好ましく、30〜70のものがさらに好ましい。AFS粒度指数が180を超える細かい骨材を用いると結合材が多く必要とされ高コストとなるうえ、均一に混練することが難しくなる場合がある。また、AFS粒度指数が5未満の粗い骨材を用いると空隙が大きくなりすぎて保水能力が低下する場合がある。これらのなかでは、日本国内で用いられている4号〜8号けい砂が汎用的であるためより好ましく、5号けい砂及び6号けい砂が多孔質保水層の保水性能と強度のバランスが良いため特に好ましい。
【0023】
一般的に国内で用いられている4号けい砂のAFS粒度指数は20程度、5号けい砂のAFS粒度指数は30程度、6号けい砂のAFS粒度指数は50程度、7号けい砂のAFS粒度指数は80程度、8号けい砂のAFS粒度指数は120程度である。
AFS粒度指数は「AMERICAN FOUNDRY SOCIETY 粒度指数」の略称で、鋳型および鋳型材料に関する試験方法のJACT試験法S−1に準じて測定される値である。AFS粒度指数の小さいものほど粒径が大きく、AFS粒度指数の大きいものほど粒径が小さくなる。AFS粒度指数はΣ(W×AFS係数)/100であり、Wは連続する各ふるいの間にとどまる骨材の質量分率である。下記表1に、ふるい目の寸法とAFS係数との関係を示す。

【0024】
[表1] AFS係数とふるい目の寸法の関係
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
AFS係数 ふるい目の寸法(μm)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3 3350
6 1700
10 850
20 600
30 425
40 300
50 212
70 150
100 106
140 75
200 53
300 Pan(53μm未満)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【0025】
上記有機樹脂結合材と上記骨材の配合割合は、上記骨材100質量部に対して、上記有機樹脂結合材を不揮発分換算で0.3質量部以上20質量部以下とするのが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下とするのがより好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下とするのが特に好ましい。上記有機樹脂結合材が不揮発分換算で0.3質量部を下回ると得られる多孔質保水層の強度が十分でない場合があり、20質量部を上回ると得られる多孔質保水層の保水性能が低下する場合がある。なお、得られる多孔質保水層の上に保水性ブロック等の保護層を形成させる場合、該多孔質保水層は骨材の流出がなく、保水性ブロックを固定する能力があればよいので、上記有機樹脂結合材が10質量部を上回っても問題はない。
【0026】
本発明における保水性舗装について図を用いて説明する。
本発明における保水性舗装は、路盤4上に、前記多孔質保水層2と、保水性を有する保護層1の設置を、この順に備えるものである。その一形態を図1に示す。前記保水性を有する保護層1としては、例えば、保水性ブロック、天然石樹脂舗装、透水性ゴムマット、ウッドチップ等の公知の材料を使用すればよい。
本発明においては、前記多孔質保水層2の上に必ずしも保護層1を必要としない。しかし、路面表面は日光に晒されたり、人や車輌の通行による摩耗等の影響を受けたりすることから、前記多孔質保水層2上に保護層1を設ける形態とすることで、多孔質保水層2の劣化を抑制することができるのでより好ましい。
【0027】
また、本発明における保水性舗装は、前記多孔質保水層2中に給水管5を備える態様としてもよい。さらに、図示したように多孔質保水層2と路盤4との間に例えば遮水用シート3を設けてもよい。その一態様を図2に示す。本発明の多孔質保水層2は、骨材やバインダ樹脂の流出、白華現象等の問題が生じることがなく、高い保水性を有するので、さらに給水管5を敷設し、この給水管から多孔質保水層に水を供給することによって、より効率的に気温上昇を抑制することができる。
図中の給水管5は、金属或いは樹脂製の中空管であって、長さ方向に一定の間隔で、或いは、ランダムに微細な穴が形成されており、図示されない水分供給設備に接続している。好天が続き雨水による水分の供給がない場合においても、給水管5により前記多孔質保水層2内に定期的に給水することで、路面の温度低下効果を維持することができる。ここで用いられる給水管5は、前記多孔質保水層2の形成時に層内に配置されることが、施工の簡易性及び硬化した前記多孔質保水層2により給水管5が保護されるという観点から好ましい。また、遮水用シート3を設けることにより、給水管5から供給された水が路盤4へ流失せず、遮水シート3上に保持されることから、供給された水分は道路表面の温度低下などにより有効に使用される。なお,給水管や遮水用シートとしては、従来公知のものを用いることができる。
【0028】
さらに、本発明における保水性舗装は、路盤4に代えて粒径0.1mm以下の微粒材を10質量%以上30質量%以下含有する保水性路盤6(貯水層)を形成し、その上に前記多孔質保水層2を形成してもよい。その一形態を図3に示す。前記保水性路盤6(貯水層)を設けることにより、路面上に降雨による大量の水がもたらされた場合においても、必要量の貯水し、過剰分は透水(排水)することができる。
【0029】
前記多孔質保水層の製造方法としては、前記骨材100質量部に対し、前記有機樹脂結合材を0.3質量部以上20質量部以下含有する混合物を混練し(工程I)、この混練された混合物を路盤(あるいは保水性路盤)上に設置し(工程II)、次いで該混合物中の有機樹脂結合材を硬化させて多孔質保水層を形成する(工程III)。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0031】
[有機樹脂結合材の準備]
有機樹脂結合材1として、2液型エポキシ樹脂系結合材を準備した。主剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤:ポリチオール/ポリアミン混合物、不揮発分:約100%。
有機樹脂結合材2として、2液型ポリウレタン樹脂系結合材を準備した。主剤:ポリブタジエンポリオール、硬化剤:ポリイソシアネート、不揮発分:約100%。
有機樹脂結合材3として、2液型ポリウレタン樹脂系結合材を準備した。主剤:ポリカーボネートポリオール、硬化剤:ポリイソシアネート、不揮発分:約100%。
有機樹脂結合材4として、1液型ポリブタジエン系結合材を準備した。酸化硬化タイプ。不揮発分:約100%。
有機樹脂結合材5として、1液型変成シリコーン系結合材を準備した。湿気硬化タイプ。不揮発分:約100%。
有機樹脂結合材6として、1液型シリル化ポリウレタン系結合材を準備した。湿気硬化タイプ。不揮発分:約100%。
有機樹脂結合材7として、1液型SBSゴム系結合材を準備した。乾燥硬化タイプ。不揮発分:約50%。
有機樹脂結合材8として、1液型シリル化ポリウレタンエマルジョン系結合材を準備した。乾燥硬化タイプ。不揮発分:約40%。
有機樹脂結合材9として、1液型シリル化ポリウレタンシードアクリルエマルジョン系結合材を準備した。乾燥硬化タイプ。不揮発分:約50%。
有機樹脂結合材10として、1液型アクリルスチレンエマルジョン系結合材を準備した。乾燥硬化タイプ。不揮発分:約50%。
有機樹脂結合材11として、1液型クロロプレンラテックス系結合材を準備した。乾燥硬化タイプ。不揮発分:約60%。
有機樹脂結合材12として、2液型水性ビニルウレタン系結合材を準備した。乾燥硬化タイプ。不揮発分:約60%。
有機樹脂結合材13として、3液型ビニルエステル樹脂系結合材を準備した。過酸化物硬化タイプ。有効成分:約100%。
【0032】
[骨材の準備]
骨材として、6号けい砂を準備した。
【0033】
[多孔質保水層の骨材保持特性]
(実施例1〜13、比較例1)
6号けい砂20gに対し、各有機樹脂結合材を不揮発分換算で0.4g加え、均一になるように混練した(骨材100質量部に対して有機樹脂結合材を不揮発分換算で2.0質量部)。得られた6号けい砂と各有機樹脂結合材の混合物を円柱状のプラスチックカップ(直径約45mm)に注型し、23℃相対湿度50%で1日間養生した後脱型したうえ、傾斜角15度にしたガラス板に置いた。比較例1として有機樹脂結合材を配合していない6号けい砂20gを同様に置いた。脱型物(直径約45mm×高さ約7mmの円柱)をガラス板上に置いた際の形状(状態)を目視で観察した。
その後、それぞれの脱型物及び6号けい砂に対して、1Lプラスチックボトルに入れた600mlの水を1分間かけて滴下し、6号けい砂の流出を目視で観察した。これらの目視観察の結果を表2に示す。

【0034】
[表2] 多孔質保水層の骨材保持特性
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使用した有機樹脂結合材 脱型物の状態 流出性
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実施例 1 有機結合材 1 形状保持(硬化) 流出なし
実施例 2 有機結合材 2 形状保持(硬化) 流出なし
実施例 3 有機結合材 3 形状保持(硬化) 流出なし
実施例 4 有機結合材 4 形状保持(硬化) 流出なし
実施例 5 有機結合材 5 形状保持(硬化) 流出なし
実施例 6 有機結合材 6 形状保持(硬化) 流出なし
実施例 7 有機結合材 7 形状保持(硬化) 流出なし
実施例 8 有機結合材 8 形状保持(硬化) 流出なし
実施例 9 有機結合材 9 形状保持(硬化) 流出なし
実施例10 有機結合材10 形状保持(硬化) 流出なし
実施例11 有機結合材11 形状保持(硬化) 流出なし
実施例12 有機結合材12 形状保持(硬化) 流出なし
実施例13 有機結合材13 形状保持(硬化) 流出なし
比較例 1 なし 形状保持不能 流出あり
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【0035】
以上のことから、本発明にかかる多孔質保水層は、骨材を十分結合し形状を保持することで従来問題となっていたクッション砂の流出のような問題が起こさないため、保水性舗装に好適に用いることができる。
【0036】
[多孔質保水層の保水特性]
(実施例14〜26、参考例)
6号けい砂20gに対し、各有機樹脂結合材を不揮発分換算で0.4g加え、均一になるように混練した(骨材100質量部に対して有機樹脂結合材を不揮発分換算で2.0質量部)。得られた6号けい砂と各有機樹脂結合材の混合物をプラスチックカップに注型し、23℃相対湿度50%で4日間養生した後脱型した。得られた脱型物(直径約45mm×高さ約7mmの円柱)を水1000mlに1時間浸漬し、吸水率(体積%)を測定した。吸水率は、下記の式を用いて計算した。さらに、吸水した各脱型物をガラス板の上に置き、23℃相対湿度50%で乾燥させ、乾燥2時間後及び乾燥6時間後の水放散率(質量%)を測定した。水放散率は、下記の式を用いて計算した。
なお、参考例として有機樹脂結合材を配合せず、6号けい砂20gに対し水を6.0g散布したものについて水放散率を測定した。その際、砂は保形性がないため、直径約45mm×高さ約7mmの円柱状プラスチックカップ(上面のみ開放)に充填した状態で評価した。その結果を表3に示す。
吸水率=(吸水された水の体積)/(試験体のかさ体積)×100
但し、水の比重を1として、「吸水された水の体積=水浸漬後の重量−水浸漬前の重量」で計算した。
水放散率=(水浸漬後の重量−乾燥後の重量)/(水浸漬後の重量−水浸漬前の重量)×100

【0037】
[表3] 多孔質保水層の保水特性
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使用した 吸水率 水放散率(質量%)
有機樹脂結合材 (体積%) 2時間後 6時間後
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実施例14 有機結合材 1 21.6 10.1 32.4
実施例15 有機結合材 2 20.6 10.9 34.0
実施例16 有機結合材 3 22.3 5.7 26.0
実施例17 有機結合材 4 34.8 7.2 20.4
実施例18 有機結合材 5 25.0 10.6 30.5
実施例19 有機結合材 6 23.3 11.1 31.9
実施例20 有機結合材 7 20.1 14.5 41.5
実施例21 有機結合材 8 27.3 8.8 27.6
実施例22 有機結合材 9 26.2 11.2 31.6
実施例23 有機結合材10 26.8 5.2 23.0
実施例24 有機結合材11 39.5 5.5 18.7
実施例25 有機結合材12 22.4 9.6 30.6
実施例26 有機結合材13 27.5 16.4 48.2
参考例 なし − 9.3 22.2
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【0038】
表3の結果から、本発明にかかる多孔質保水層となる脱型物(実施例14〜26)は、十分な吸水性を有していることが分かる。なお、各脱型物は硬化しており水浸漬試験の前後において形状を保持していた。また,水放散率についても6号けい砂単体(参考例)と比較して遜色ない放散性を示した。以上のことから、本発明にかかる多孔質保水層は、十分な吸水性及び水放散性を有するため、保水性舗装に好適に用いることができる。
【0039】
[有機樹脂結合材量の影響]
(実施例27〜36、比較例2)
5号けい砂20gに対し、上記有機樹脂結合材4(1液型ポリブタジエン系結合材)を所定量加え、均一になるように混練した。その後、実施例1〜13と同様に骨材保持特性(養生期間は6日間)を、実施例14〜26と同様に保水特性(養生期間は6日間、水放散率は乾燥6時間で測定)を評価した。その結果を表4に示す。

【0040】
[表4] 有機樹脂結合材量の影響
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有機樹脂結合材4の 脱型物の状態 吸水率 水放散率
添加量(質量部*1) [流出性] (体積%) (質量%)
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実施例27 28 硬化[流出なし] 15.1 43.1
実施例28 24 硬化[流出なし] 15.2 38.7
実施例29 20 硬化[流出なし] 16.3 36.2
実施例30 16 硬化[流出なし] 16.5 32.6
実施例31 8 硬化[流出なし] 26.9 26.5
実施例32 4 硬化[流出なし] 36.9 20.9
実施例33 2 硬化[流出なし] 36.6 23.1
実施例34 1 硬化[流出なし] 38.7 24.9
実施例35 0.4 硬化[流出なし] 29.3 20.8
実施例36 0.2 硬化[流出なし] 19.6 46.1
比較例 2 0.1 硬化不良[流出あり] 測定不能 測定不能
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*1:骨材(5号けい砂)100質量部あたりに換算した添加量

【0041】
(実施例37〜45、比較例3及び4)
5号けい砂を6号けい砂に代えた以外は実施例27〜36及び比較例2と同様に、骨材保持特性及び保水特性を評価した。その結果を表5に示す。

【0042】
[表5] 有機樹脂結合材量の影響
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有機樹脂結合材4の 脱型物の状態 吸水率 水放散率
添加量(質量部*1) [流出性] (体積%) (質量%)
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実施例37 28 硬化[流出なし] 11.1 57.6
実施例38 24 硬化[流出なし] 14.4 40.1
実施例39 20 硬化[流出なし] 20.9 36.5
実施例40 16 硬化[流出なし] 21.4 31.5
実施例41 8 硬化[流出なし] 35.9 23.7
実施例42 4 硬化[流出なし] 46.2 19.0
実施例43 2 硬化[流出なし] 47.8 20.7
実施例44 1 硬化[流出なし] 39.8 24.6
実施例45 0.4 硬化[流出なし] 23.9 33.8
比較例 3 0.2 硬化[流出あり] 測定不能 測定不能
比較例 4 0.1 硬化不良[流出あり] 測定不能 測定不能
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*1:骨材(6号けい砂)100質量部あたりに換算した添加量

【0043】
比較例2〜4に示されるように、有機樹脂結合材の添加量が少ないと、十分に骨材を硬化させることができない場合(比較例2及び4)や、十分に骨材を保持できず水流によって骨材が流出してしまう場合(比較例3)がある。逆に、実施例27〜36及び実施例37〜45に示されるように、骨材に対して適量の有機樹脂結合材があれば、十分な骨材保持特性が得られることが分かる。特に、有機樹脂結合材の添加量(不揮発分換算)が5号けい砂の場合0.2質量部以上、6号けい砂の場合0.4質量部以上であれば、十分な骨材保持特性が得られることが分かる。さらに、それらは十分な吸水性と適度な水放散性を有していることから、本発明にかかる多孔質保水層は、保水性舗装に好適に用いることができる。
【0044】
本発明にかかる多孔質保水層は、図1〜3に示されるような構成によって保水性舗装として利用することができる。各実施例に示したように、本発明にかかる多孔質保水層は、適度に硬化し流水による骨材の流出がないことから、多孔質保水層の上に保水性ブロック等の保護層を形成させても、該保護層を十分固定させることができる。また、本発明にかかる多孔質保水層はセメントを用いていないため、セメントによる汚染である白華現象も起こらない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明における保水性舗装は、バインダ樹脂の流出や白華現象等の問題が生じることがなく、表層材としても保水性ブロックを固定する下地層としても活用することができる多孔質保水層を備えた、高い保水性を有する保水性舗装であるから、都市部のヒートアイランド現象、あるいは、夏場の歩道、沿道等の気温上昇対策に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 保護層
2 多孔質保水層
3 遮水用シート
4 路盤
5 給水管
6 保水性路盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機樹脂結合材と骨材とを含有する多孔質保水層を備えた保水性舗装。
【請求項2】
前記骨材100質量部に対して、前記有機樹脂結合材を不揮発分換算で0.3質量部以上20質量部以下含有する請求項1に記載の保水性舗装。
【請求項3】
前記骨材のAMERICAN FOUNDRY SOCIETY 粒度指数が5以上180以下である請求項1又は請求項2に記載の保水性舗装。
【請求項4】
前記有機樹脂結合材が、エポキシ樹脂系結合材、ポリウレタン樹脂系結合材、ポリブタジエン樹脂系結合材、アクリル樹脂系結合材から選ばれる1種以上の有機樹脂結合材である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の保水性舗装。
【請求項5】
路盤上に、前記多孔質保水層と、保水性を有する保護層の設置を、この順に備える請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の保水性舗装。
【請求項6】
前記多孔質保水層中に、給水管を備える請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の保水性舗装。
【請求項7】
前記路盤が、粒径0.1mm以下の微粒材を10質量%以上30質量%以下含有する保水性路盤である請求項5又は請求項6に記載の保水性舗装。
【請求項8】
骨材100質量部に対し、有機樹脂結合材を不揮発分換算で0.3質量部以上20質量部以下含有する混合物を混練する工程と、混練された混合物を路盤上に設置する工程と、該混合物中の有機樹脂結合材を硬化させて多孔質保水層を形成する工程とを含む保水性舗装の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−117236(P2012−117236A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266092(P2010−266092)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(592182698)株式会社竹中道路 (14)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】