保水用セラミックス及び保水構造体
【課題】保水性が高く、また包蔵した水の蒸発性が良好であり、水の蒸発潜熱による冷却効果が高い保水用セラミックスと、この保水用セラミックスを用いた保水構造体とを提供する。
【解決手段】焼結された多孔質セラミックスよりなり、外部に連通した内径1mm以上の通気孔21を有する保水用セラミックス20。全体積の53〜70%が孔径1〜100μmの気孔よりなる。通気孔は、保水用セラミックスの柱軸方向に貫通してもよく、横方向に貫通してもよい。通気孔は複数本設けられてもよく、2以上の方向に設けられてもよい。
【解決手段】焼結された多孔質セラミックスよりなり、外部に連通した内径1mm以上の通気孔21を有する保水用セラミックス20。全体積の53〜70%が孔径1〜100μmの気孔よりなる。通気孔は、保水用セラミックスの柱軸方向に貫通してもよく、横方向に貫通してもよい。通気孔は複数本設けられてもよく、2以上の方向に設けられてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水性に優れ、また保水した水が蒸発し易い保水用セラミックスと、この保水用セラミックスを用いた保水構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質セラミックスよりなるブロックの壁体に水を掛け、蒸発潜熱によって打ち水の如き冷却効果を得るようにした冷却壁体が特開2003−184199に記載されている。同号公報の0026〜0027段落には、焼成時におけるバーミキュライトの発泡作用を利用して製造した多孔質セラミックスが記載されている。しかしながら、このような発泡セラミックス焼結体は、気孔が粗大であり、保水性が高くない。
【0003】
特開平8−73282の0005段落には、粘土、吸水性ポリマー及び水を混練し、成形した後、電子レンジで乾燥し、次いで1100℃で2時間焼成する多孔質セラミックスの製造方法が記載されている。同号公報には、吸水した吸水性ポリマーの粒径が0.1〜2.0mmであると記載されている(請求項4)。このように、吸水性ポリマーの粒径が大きいと、多孔質セラミックスの気孔も粗大となり、多孔質セラミックスの保水性は高くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−184199
【特許文献2】特開平8−73282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、保水性が高く、また包蔵した水の蒸発性が良好であり、水の蒸発潜熱による冷却効果が高い保水用セラミックスと、この保水用セラミックスを用いた保水構造体とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の保水用セラミックスは、焼結された多孔質セラミックスよりなる保水用セラミックスにおいて、内径1mm以上の通気孔を有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の保水用セラミックスは、請求項1において、該保水用セラミックスの全体積の53〜70%が孔径1〜100μmの気孔よりなることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の保水用セラミックスは、請求項1又は2において、前記通気孔が複数本、略平行に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の保水用セラミックスは、請求項1又は2において、異なる方向に延在した通気孔が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の保水用セラミックスは、請求項4において、少なくとも一部の延在方向の異なる通気孔同士が交わっていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6の保水用セラミックスは、請求項1ないし5のいずれか1項において、該保水用セラミックスは柱軸方向に延在した柱形であり、前記通気孔は柱軸方向に延在していることを特徴とするものである。
【0012】
請求項7の保水用セラミックスは、請求項1ないし5のいずれか1項において、該保水用セラミックスは柱軸方向に延在した柱形であり、前記通気孔は柱軸方向と交差方向に延在していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項8の保水構造体は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の保水用セラミックスが建造物又は地表に配材されてなるものである。
【0014】
請求項9の保水構造体は、請求項8において、少なくとも一部の前記通気孔が上下方向を指向していることを特徴とするものである。
【0015】
請求項10の保水構造体は、請求項8において、少なくとも一部の前記通気孔が横方向を指向していることを特徴とするものである。
【0016】
請求項11の保水構造体は、請求項10において、複数の保水用セラミックスの通気孔が一直線状に連なるように保水用セラミックスが配列されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項12の保水構造体は、請求項9ないし11のいずれか1項において、建造物又は地表との間に通気間隙をあけて通気板が配置され、該通気板の上に前記保水用セラミックスが配材されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の保水用セラミックスは、多孔質セラミックスよりなり、包蔵した水の蒸発潜熱によって冷却効果を発揮する。本発明では、保水用セラミックスに内径1mm以上の通気孔が設けられているので、保水用セラミックスの深奥部まで水が浸透し易く、また保水用セラミックスの深奥部に包蔵された水も蒸発し易い。従って、水の吸収速さ及び蒸発速さが大きい。
【0019】
本発明の一態様にあっては、保水用セラミックスは、全体積の53〜70%が孔径1〜100μmの気孔よりなる。このように比較的微細な気孔を多量に有する保水用セラミックスは保水性が高いと共に、表面の比表面積も大きく、水の蒸発性がよい。従って、降雨や散水によって素早く多量の水を吸水し、都市型洪水を防止することができる。また、この孔径の気孔は、超微細というものではなく、凍結するときには、気孔内の水が凍結時の水の体積膨張に伴って保水用セラミックス外に速やかに押し出されるので、凍結融解が繰り返されても、割れるおそれが殆どない。
【0020】
保水した本発明の保水用セラミックスからは、上記の通り、水の蒸発により大きな潜熱が奪われる。そのため、この保水用セラミックスを建物の屋上や庭などに敷き詰めた本発明の保水構造体は、建物や庭などの冷却効果に優れる。
【0021】
本発明において、通気孔を複数本略平行に設けたり、異なる方向に延在させたりすることにより、上記の効果が高くなる。
【0022】
異なる方向に延在した通気孔を交わらせることにより、保水用セラミックス内部で気化した蒸気が複数方向に流れて保水用セラミックス外に流出するので、蒸散効率が高いものとなる。
【0023】
通気孔が上下方向を指向するように保水用セラミックスを敷き詰めた場合、降雨や散水の水が通気孔を流れ下って保水用セラミックスの深奥部に速やかに到達するようになる。
【0024】
通気孔が横方向を指向するように保水用セラミックスを敷き詰めた場合には、保水用セラミックス深奥部の水分から気化した蒸気が横方向に流れて保水用セラミックス外に流出する。この場合、複数の保水用セラミックスの通気孔を一直線状に連ねることにより、蒸散効率が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態に係る保水用セラミックスの斜視図である。
【図2】別の実施の形態に係る保水用セラミックスの斜視図である。
【図3】(a)図はさらに別の実施の形態に係る保水用セラミックスの斜視図である。(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【図4】異なる実施の形態に係る保水用セラミックスの斜視図である。
【図5】さらに別の実施の形態に係る保水用セラミックスの水平断面図である。
【図6】実施の形態に係る保水構造体を示す断面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】実施例及び比較例における試験方法の説明図であり、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【図9】実験例1〜5の保水用セラミックスの気孔の孔径分布図である。
【図10】実験例6〜10の保水用セラミックスの気孔の孔径分布図である。
【図11】(a)図は、試験体1を示す模式的な断面図、(b)図は試験体1〜3のスラブ下温度の経時変化を示すグラフである。
【図12】試験体1,3のスラブ表面温度の経時変化を示すグラフである。
【図13】(a)図は試験体4を示す模式的な断面図、(b)図は試験体4,5の上方大気温度の経時変化を示すグラフである。
【図14】ケース1〜3の初期及び維持費用を比較するグラフである。
【図15】保水用セラミックスと芝生の試験期間内の蒸散・吸水量を対比して示すグラフである。
【図16】保水用セラミックスと芝生の蒸散量と吸水量の累計を対比して示すグラフである。
【図17】実験例における試験方法の説明図であり、パレット上の保水用セラミックスの積重状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0027】
[保水用セラミックスの形状]
まず、第1図〜第5図を参照して保水用セラミックスの形状例について説明する。
【0028】
本発明の保水用セラミックスは、焼結された多孔質セラミックスよりなり、外部に連通した内径1mm以上の通気孔を有する。
【0029】
第1図の保水用セラミックス20は、円柱形状であり、柱軸心部を柱軸方向に貫通した通気孔21を有する。この保水用セラミックス20の高さHは10〜300mm特に20〜100mm程度が好ましい。保水用セラミックス20の直径(外径)D0は10〜300mm特に20〜100mm程度が好ましい。通気孔21の内径D1は1〜200mm特に5〜50mm程度が好ましい。通気孔21の内周面と保水用セラミックス20の外周面との間の肉厚Wは3〜50mm特に5〜30mm程度が好ましい。
【0030】
第1図の保水用セラミックス20では通気孔21が1本だけ設けられているが、2本以上設けられてもよい。第2図は多数の通気孔23を設けることによりハニカム状とされた保水用セラミックス22を示している。この保水用セラミックス22の直径、高さの好ましい範囲は保水用セラミックス20と同様である。2本以上の通気孔を柱軸方向に貫設する場合、保水用セラミックスの柱軸と直交方向の断面において通気孔の合計の断面積が保水用セラミックスの断面積の10〜90%特に30〜70%程度であることが好ましい。
【0031】
第1,2図では、通気孔は柱軸方向に延設されているが、柱軸方向と交差方向、例えば直交方向に設けられてもよい。第3図の保水用セラミックス24では、柱軸方向と直交方向に2本の通気孔25が設けられている。この実施の形態では通気孔25は互いに平行である。この保水用セラミックス24の直径及び高さの好ましい範囲は保水用セラミックス20と同様である。
【0032】
この通気孔25の内径D5は保水用セラミックス24の直径D4の5〜90%特に10〜60%程度が好ましい。
【0033】
通気孔25同士の距離は2〜100mm特に6〜30mm程度が好ましい。
【0034】
保水用セラミックス20の上端面又は下端面と、直近の通気孔25までの距離は2〜100mm特に6〜30mm程度が好ましい。
【0035】
第3図では、通気孔25は互いに平行であるが、第4図の保水用セラミックス26のように、設置高さの異なる複数の通気孔27がそれぞれ指向方向を異ならせて設けられてもよい。第4図の保水用セラミックス26の好ましい直径、高さ、通気孔の内径及びその位置は第3図の場合と同様である。
【0036】
第3,4図では、2本の横方向の通気孔25が設けられているが、1本又は3本以上の横方向の通気孔25が設けられてもよい。
【0037】
2本以上の通気孔25を設ける場合、各々の指向方向は任意である。また、通気孔25は柱軸と斜交方向に延在してもよい。すなわち、柱軸方向を鉛直方向とした場合に傾斜した通気孔であってもよい。
【0038】
本発明の保水用セラミックスでは、第5図の保水用セラミックス28のように放射4方向に延在する十字形にクロスする横孔よりなる通気孔29を設けてもよい。
【0039】
このような放射状の通気孔は、放射3方向に延在してもよく、5方向以上に延在してもよい。
【0040】
また、図示は省略するが、柱軸方向に延在する通気孔と、横方向や傾斜方向に延在する通気孔とを設けてもよい。例えば、保水用セラミックス20の外形と保水用セラミックス24の外形とが同一だとしたときに、保水用セラミックス20に設けられた通気孔21と同形状の通気孔を保水用セラミックス24の柱軸心部を柱軸方向に貫通するよう設けてもよい。また、保水用セラミックス20の外形と保水用セラミックス24の外形とが同一だとしたときに、保水用セラミックス20に設けられた通気孔21と同形状の通気孔を保水用セラミックス26の柱軸心部を柱軸方向に貫通するよう設けてもよい。
【0041】
上記実施の形態では保水用セラミックスはいずれも円柱形であるが、楕円柱形や、三角柱形、五角柱形又はそれ以上の多角柱形であってもよい。また、柱状以外の形状、例えば球状、楕円球状、立方体、錐体、円盤形状などとされてもよい。
【0042】
円柱形以外の形状の保水用セラミックスの場合、容積は上記円柱形保水用セラミックスと同程度であることが好ましい。
【0043】
[保水構造体]
次に、本発明の保水構造体について説明する。
【0044】
この保水構造体は、建造物又は地表に本発明の保水用セラミックスを配材したものである。
【0045】
建造物のうちでも屋上に保水用セラミックスを配材するのが好ましい。保水用セラミックスは建造物又は地表に直に配材されてもよく、建造物の上面や地表との間に間隔をあけて通気板を設置し、この通気板の上に保水用セラミックスを配材してもよい。このようにすれば、通気板の下側のスペースに空気が流れるので、保水用セラミックスの下側からも水蒸気が蒸散するようになり、冷却効果が向上する。
【0046】
第6図はこの保水構造体の一例を示す縦断面図であり、建造物又は地表40の上方にスペーサ41を介して通気板42が設置されている。通気板42の下側が通気スペース43となっている。通気板42の設置高さは1〜300mm特に5〜150mm程度が好ましい。
【0047】
通気板42としてはパンチングメタル、網状体、グレーチング、すのこ状部材など多種のものを用いることができる。なお、スペーサ41間に梁を架設し、その上に通気板42を設置してもよい。
【0048】
この通気板42の上に保水用セラミックスをランダムに敷き詰めてもよく、規則的に配列してもよい。
【0049】
第6図では、第3図に示した保水用セラミックス24を、保水用セラミックス24の柱軸方向が上下方向となるように配列している。また、各保水用セラミックス24の通気孔25が一直線状に揃うように、保水用セラミックス24の側面を突き合わせて密に配列している。このように通気孔25を連通させることにより、各保水用セラミックス24から通気孔25内に蒸散した水がスムーズに保水構造体外に流出するようになり、冷却効果が向上する。
【0050】
第6図では保水用セラミックス24を通気板42の上に1段だけ配材しているが、2段以上配材してもよい。第3図以外の保水用セラミックス24,26,28を用いてもよい。
【0051】
この保水構造体によれば、急激な降雨や一時的に多量の散水が行われたときでも、水を十分に保水することができる。従って、保水用セラミックスを都市の多くの建物や庭、空地等に敷き詰めることにより、都市型洪水を防止することも可能となる。
【0052】
また、この保水用セラミックスから、水が蒸発するときの蒸発潜熱により冷却が行われるので、保水用セラミックスを都市の多くの建物や庭、空地等に敷き詰めることにより、ヒートアイランド現象を防止することが可能となる。
【0053】
次に、この保水用セラミックスを構成する多孔質セラミックスの好適な気孔径、材料、組成及び製造方法等について説明する。
【0054】
[保水用セラミックスの気孔径]
本発明で用いる保水用セラミックスは、その保水用セラミックスの全体積(通気孔の容積は含まないものとする)の53〜70%好ましくは55〜68%が、孔径1〜100μm、好ましくは15〜40μmの微細気孔よりなることが好ましい。上述の通り、このように微細な気孔を多量に含むことにより、保水用セラミックスの保水性及び水の蒸発性が良好となる。
【0055】
より好ましくは、この孔径1〜100μmの気孔の60%以上、例えば70〜95%が孔径10〜50μm、好ましくは15〜40μmの気孔よりなる。
特に、本発明で用いる保水用セラミックスは、その保水用セラミックスの全体積の10〜70%、特には15〜50%が孔径15〜40μmの微細気孔よりなることが好ましい。
【0056】
この保水用セラミックスの全気孔率は、55〜80%であることが好ましい。保水用セラミックスの全気孔率が55%未満では、全体積の53〜70%が孔径1〜100μmの微細気孔の保水用セラミックスの実現し得ず、80%よりも大きいと、強度が不足し、敷設材料としての実用性が損なわれる。
【0057】
なお、本発明では、気孔の孔径の測定は、水銀ポロシメータを用い、JIS R 1655に従って行われる。
【0058】
上記孔径の気孔内の水は、凍結時に保水用セラミックス外に押し出され易く、凍結融解作用を繰り返し受けても、保水用セラミックスが割れることは殆どない。
【0059】
[セラミックスの組成]
この保水用セラミックスを構成するセラミックスの組成は
SiO2:50〜80wt%とりわけ55〜70wt%
Al2O3:10〜30wt%とりわけ15〜25wt%
Na2O及びK2Oの合計:1〜10wt%とりわけ3〜7wt%
であることが好ましい。
【0060】
かかるソーダ・カリを多く含むアルミノ珪酸塩系セラミックスは、親水性であり、保水用セラミックスの保水性及び水の蒸発性が良好となる。
【0061】
なお、湿潤状態にある保水用セラミックスに藻が発生することを防止するために、CuOを保水用セラミックス中に0.1〜1.5wt%程度配合してもよい。
【0062】
本発明で用いる保水用セラミックスには、その一部又は全面に光触媒コーティング液を塗布して光触媒効果を付与してもよく、これにより、光触媒による浄化作用で、保水用セラミックスの耐汚染性を高めることができる。
【0063】
[保水用セラミックスの製造方法]
次に保水用セラミックスの好適な製造方法について説明する。
【0064】
この保水用セラミックスを製造するには、窯業系原料、アルミナセメント及び粉末状吸水性ポリマー並びに好ましくは更に炭酸リチウムを乾式混合し、次いで水を添加して混合し、その後、成形、乾燥及び焼成する。この際の配合割合は、好ましくは、
窯業系原料:75〜95wt%、特に80〜95wt%
アルミナセメント:3〜15wt%、特に5〜15wt%
吸水性ポリマー:0.5〜10wt%、特に1〜5wt%
炭酸リチウム:10wt%以下、特に1〜10wt%、とりわけ1〜5wt%
である。
【0065】
なお、水の混合割合は、水以外の全原料の合計重量に対して130〜170wt%程度であって、吸水性ポリマーに対して80〜150倍程度とすることが、取り扱い性、成形性、吸水性ポリマーの吸水膨張性、その後の乾燥、焼成効率の面から好ましい。
【0066】
窯業系原料としては、カリ長石、粘土、珪砂などの1種又は2種以上を用いることができるが、これに限定されない。これらの窯業系原料をSiO2、Al2O3、Na2O+K2Oの割合が前述となるように選択して用いる。
【0067】
アルミナセメントとしては、JISに定めるものを用いることができる。
【0068】
このアルミナセメントは、硬化が速いので、水を添加して混合し、成形すると、短時間のうちにハンドリングできる程度の成形体が得られる。
【0069】
粉末状吸水性ポリマーとしては、粒径10〜50μm特に20〜30μm程度のものが好適である。
【0070】
吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸塩系、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体ケン化物、でんぷん・アクリル酸グラフト共重合体など、各種のものを1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0071】
この混合物を成形するには、定量充填機、鋳込成型機、押出成形機、ハニカム成形機などを用いることができるが、これに限定されない。通気孔を開ける方法としては、成形の際に型などを用いて開ける等の方法が例示される。例えば押し出し成形をする場合は、中玉を設けて成形し、成形と同時に孔を開けることができる。また、成形した後の成形体に対して、管状の金型で孔をくりぬいて開けることができる。また、乾燥体や焼成体に対してドリルを用いて孔を開けることもできる。
【0072】
この成形体を好ましくは80〜250℃で5〜40時間特に6〜12時間加熱して乾燥した後、好ましくは1050〜1200℃特に1100〜1150℃で0.2〜20時間特に0.3〜2時間焼成して焼結体とする。この焼成には、ローラーハースキルン、トンネルキルン、シャトルキルン等を用いることができる。
【0073】
[保水用セラミックスの応用例及びその効果]
保水用セラミックスは、気孔径及びその割合が厳密に制御された多孔質セラミックスであり、雨水を吸水することにより治水し、また、吸水した水を日射によって蒸散させる性能を有する。
【0074】
従って、保水用セラミックスを、ビル屋上や個人住宅又は公共施設の通路、広場、庭等に敷設することにより、以下のA,Bのような環境対策を図ることができる。
【0075】
A.個別ビルの環境対策
A−1.ビルの省エネ・CO2削減:
保水用セラミックスをビル屋上に敷設することにより、保水用セラミックスによる雨水の治水・蒸散で、屋上スラブ温度を下げ、階下の空調の使用電力量を減らすことができる。
【0076】
また、屋上に設置された空調室外機の周辺温度を下げ、全階の空調の運転効率を向上させ、使用電力量を減らすこともできる。特に、屋上階の夏場の空調の使用電力量を大きく低減することができる。
【0077】
この結果、CO2の排出量の削減も可能となる。
【0078】
A−2.ビルの屋上緑化の代替:
保水用セラミックスは、芝生等の植物と同様の保水、冷却の性能を有すると共に、高耐久・長寿命かつ自然降雨を利用する維持管理不要な材料であるため、屋上緑化代替の有力候補となる。
【0079】
現状の屋上緑化は維持に手間が掛かり、管理費も高いが、保水用セラミックスによれば、この問題を解決できる。
【0080】
A−3.ビルの屋上防水層のメンテナンス経費削減:
保水用セラミックスは、熱伝導率が0.2W/m・K程度の低熱伝導性で断熱性が高いので、これをビル屋上に敷設することにより、屋上スラブ温度を一定に保つことができる。また、紫外線も防ぐことができる。
【0081】
現状では10年程度で防水層の補修が必要とされるが、保水用セラミックスを適用することにより、このメンテナンス頻度を低減できる。
【0082】
B.都市の環境対策
B−1.ヒートアイランド対策:
保水用セラミックスは、ビル屋上を占有する各種機器(室外機・熱源など)の下にも敷設できるので、本発明の保水用セラミックスを各所に敷設することにより、都市の蒸散面積を増やし、街区全体の温度をより一層低減することができる。
【0083】
また、保水用セラミックスは、芝生と比較して高い蒸散能力があるので、芝生に比べて単位面積当たりの温度低減効果も高い。
【0084】
B−2.ゲリラ豪雨対策:
保水用セラミックスは、芝生と比較して高い治水能力があるので、ビル屋上に可能な限り敷設すれば、ゲリラ豪雨のピークカットが期待できる。
【0085】
B−3.資源の再利用
保水用セラミックスは、従来、廃棄物とされていた長石キラを主原料(例えば原料の90%)として製造することができる。長石キラはタイル原料の長石を採掘する時の副産物であり、従来は廃棄物とされていたものである。
【0086】
以下に、上記の保水用セラミックスを構成する多孔質セラミックスによる上記A,Bの効果を示す実験例ないしは試算例を挙げる。
【0087】
<A−1.ビルの省エネ・CO2削減>
第11図(a)に示すように、底部及び4側面が断熱材11で構成された箱型容器内にコンクリートスラブ12を敷設し、その上に、多孔質セラミックス(例えば、後掲の実験例2と同様にして製造された多孔質セラミックス)13を厚さ10cmに敷設し、試験体1とした。多孔質セラミックスの敷設面積は1m2である。なお、底部断熱材11とコンクリートスラブ12との間には、温度センサ14を設けた。
【0088】
別に、この多孔質セラミックスの代りに芝生を植えたものを試験体2とし、多孔質セラミックスを敷設しなかったものを試験体3とした。
【0089】
これらの試験体1〜3を並べて置き、気温と、各試験体の温度センサ14の測定温度の経時変化を調べ、結果を第11図(b)に示した。
【0090】
なお、第11図(b)のグラフ中、吸水期間は、降雨のあった期間であり、それ以外は、曇ないし晴天であった。
【0091】
第11図(b)より明らかなように、多孔質セラミックスを敷設した試験体1は、敷設なしの試験体3に対してスラブ下温度で最大−8℃の温度低減効果があった。しかも、試験体1の蒸散効果は、芝生を植えた試験体2よりも大きいものであった。
【0092】
この結果から、多孔質セラミックスによる雨水の治水・蒸散で、屋上スラブ温度を下げ、階下の空調の使用電力量を減らすことができることが分かる。
【0093】
次に、第11図(a)に示すと同様に多孔質セラミックス13を敷設すると共に温度センサ14を設けた試験体1と、多孔質セラミックスを敷設していない試験体3により、屋上スラブ表面温度の変化を模擬するものとして、1日24時間の温度センサ14の測定温度を調べ、結果を第12図に示した。
【0094】
なお、多孔質セラミックス、コンクリートスラブ及び土の一般的な熱伝導率は以下に示す通りである。
【0095】
多孔質セラミックス :0.20W/m・K
コンクリートスラブ :0.15W/m・K
土 :0.63W/m・K
【0096】
第12図より明らかなように、屋上スラブの表面温度の一日の変化量は、多孔質セラミックスを敷設した試験体1では2℃であるのに対して、敷設していない試験体3では15℃だった。この結果から、多孔質セラミックスを敷設することにより、日射によるスラブへの熱負荷が軽減されることが分かる。
【0097】
次に、第13図(a)に示すように、底部及び4側面が断熱材11で構成された箱型容器内にコンクリートスラブ12を敷設し、その上に、多孔質セラミックス(例えば、後掲の実験例2と同様にして製造された多孔質セラミックス)13を厚さ10cmに敷設し、試験体4とした。多孔質セラミックスの敷設面積は1m2である。多孔質セラミックスの敷設面の上方1cmの位置に温度センサ14を設けた。
【0098】
別に、多孔質セラミックスを敷設しなかったものを試験体5とした。この試験体5ではコンクリートスラブ12の上方1cmの位置に温度センサ14を設けた。
【0099】
これらの試験体4,5を並べて置き、1日24時間の温度センサ14の測定温度の変化を調べ、結果を第13図(b)に示した。
【0100】
第13図(b)より明らかなように、多孔質セラミックスを敷設した試験体4と敷設していない試験体5とでは、1cm上方の大気温度として、最大5℃の差があった。
【0101】
この結果から、多孔質セラミックスを敷設することにより、屋上に設置された空調室外機の周辺温度を下げ、全階の空調の運転効率を向上させ、使用電力量を減らすことができることが分かる。
【0102】
<A−2.ビルの屋上緑化の代替及びA−3.ビルの屋上防水層のメンテナンス経費削減>
多孔質セラミックスをビル屋上に敷設した場合(ケース1)と、これを敷設していない従来仕様(ケース2)と、芝生や低木を植えた屋上緑化の場合(ケース3)とで、単位面積当たりの初期費用(敷設ないし植栽費用)と20年間の維持(メンテナンス)費用を試算し、その比較結果を第14図に示した。
【0103】
第14図に示されるように、多孔質セラミックスは初期費用のみでその後の維持管理は殆ど不要である。一方、多孔質セラミックスを敷設しない従来仕様のケース2では、防水層の補修等の維持費がかかり、結果として、本発明品と同等である。
【0104】
屋上緑化のケース3では、初期費用に加えて、剪定、刈込み、芝刈り、施肥、除草、病害虫防除、灌漑装置の点検、その他の総合点検等の維持費用がかさみ、第14図に示す費用以外にも灌漑設備による散水のための運転に必要な電気代及び水道代がかかる。
【0105】
これらの結果から、前述の如く、多孔質セラミックスは、治水・蒸散において、芝生等植物の性能と同等であると共に、高耐久・長寿命かつ自然降雨を利用した維持管理不要なものである上に、屋上緑化に比較して、初期費用は1/2、維持費用も格段に安く、屋上緑化代替の有力候補となることが分かる。
【0106】
<B−1.ヒートアイランド対策>
東京都23区内のビル屋上全てに多孔質セラミックスを敷設すると、治水・蒸散に機能する都市の蒸散面積を10%増加させることができる。
【0107】
現在、ビルの屋上には機器類(室外機・熱源など)が設置されているが、多孔質セラミックスは、ビル屋上の各種機器の下にも敷設できるので、都市の蒸散面積を増やし、街区全体の温度を大幅に低減することができる。
【0108】
多孔質セラミックスと芝生の治水・蒸散の繰り返し試験結果を示す第16図から明らかなように、多孔質セラミックスは、芝生の約2倍の蒸散能力があるため、上記の10%の都市の蒸散面積の増加は、芝生に替算すれば、2倍の20%の都市の蒸散面積の増加となり、更なる有効性が明らかである。
【0109】
<B−2・ゲリラ豪雨対策>
多孔質セラミックスと芝生について、10月2日〜10月16日の15日間にわたる期間の単位体積当たりの蒸散量と吸水量の累計を比較した第15図より明らかなように、多孔質セラミックスは芝生よりも2倍以上の吸水・蒸散量を有する。
【0110】
ビル屋上には多孔質セラミックスを10cmの厚さで50km2の面積に敷設すると180万m3もの治水ができ、東京都23区で3mm/hrのゲリラ豪雨のピークカットを図ることができる。
【0111】
<B−3.資源の再利用>
多孔質セラミックスは、例えば、従来廃棄物とされていた長石キラ90重量%と、その他の材料10重量%で製造することができる。単位面積当たりの多孔質セラミックスの重量を40kg/m2とすると、5000m2の敷設に必要となる長石キラの量は、
5000(m2)×40(kg/m2)×0.9÷1000=180ton
となる。
【0112】
即ち、多孔質セラミックスを敷設面積として1日に5000m2生産すると、必要な廃棄物(長石キラ)原料は、180ton/日であり、廃棄物の有効利用効果は極めて大きい。
【0113】
以下、上記配合の多孔質セラミックスが保水性及び蒸散性に優れていることを示す実験結果について説明する。下記の実験例1〜5は本発明の好ましい組成を用いた多孔質セラミックスであり、実験例6〜10はそれ以外の組成の多孔質セラミックスである。
【0114】
なお、以下の実験例で用いた原料は次の通りである。
【0115】
カリ長石:愛知県瀬戸産 長石
8号珪砂:勝野窯業製
長石キラ:愛知県瀬戸産 長石
吸水性ポリマー:三洋化成株式会社製
(篩によって粒径20μmアンダー(吸水性ポリマーA)、粒径
20〜50μm(吸水性ポリマーB)、粒径50〜100μm
(吸水性ポリマーC)に分級した。)
アルミナセメント:ラファージュ株式会社製
炭酸リチウム:試薬特級
CuO:試薬特級
【0116】
[実験例1〜10]
水以外の原料を表1の割合で秤量し、ミキサ(ホソカワミクロン製ナウタミキサ)で乾式にて攪拌混合した。次いで、水を表1の割合でこの混合粉末に添加し、混練した。これを直径70mm、最大厚さ15mmの略円盤形状に成形し、80℃にて24時間乾燥した。乾燥した成形体に対してドリルを用いて厚さ方向に直径10mmの通気孔を開けた。これをローラーハースキルン(最高焼成温度は表1に示す通り。炉通過時間は60分)にて焼成し、多孔質セラミックスを製造した。
【0117】
各多孔質セラミックスについて成分分析を行うと共に特性測定を行った。結果を表1、表2に示す。
【0118】
なお、気孔率(通気孔の容積は含まない。)は、水銀ポロシメータ(Quantachrome株式会社製)を用いて測定した。気孔の孔径分布を第9図及び第10図に示す。
【0119】
保水量は、次のようにして測定した。
【0120】
多孔質セラミックスを105℃で乾燥した後、放冷し、秤量し、重量(W1)を求める。次いで、20℃の水中に24時間浸漬した後、引き上げ、表面水を湿った布で拭き取り、飽水状態とする。この試料を秤量し、重量(W2)を求める。また、この飽水状態の多孔質セラミックスをメスシリンダー中の水中に投入し、体積(V)を求める。保水量(g/cm3)を(W2−W1)/Vにより算出する。
【0121】
強度は10cm×10cm×0.5cmのサンプルを作り3点曲げ試験(JTトーシ株式会社、50kNデジタル曲げ試験機)によって測定した。
【0122】
凍結融解性能は、上記飽水状態の多孔質セラミックスを−20℃に75分保持して凍結させた後、30℃に90分保持して融解させる凍結・融解サイクルを200サイクル繰り返し、破損の程度を観察することによって調べ、非常に良好(◎)、良好(○)、やや不良(△)、不良(×)で評価した。
【0123】
蒸散性能は、水を深さ5mmに張った平たい容器内に、乾燥した多孔質セラミックスを置き、30分吸水させた後、引き上げ、この30分間の吸水量を上記保水量の測定方法と同様にして求める。体積については保水量測定時の体積を用いる。この30分間の吸水量(g/cm3)を蒸散性能とする。
【0124】
蒸散効果持続日数は、蒸発の潜熱による冷却効果の持続日数であり、次のようにして測定した。
【0125】
第8図に示す通り、厚さ150mmの再生ポリプロピレン樹脂製パレット1の上に、厚さ100mmの発泡スチロール板よりなる正方形状の囲枠2を載せ、容器とする。この容器の一辺は1000mm、深さは830mmである。容器の外周面にアルミ箔を張ってある。
【0126】
この容器内に厚さ500mmに発泡スチロール板3を敷き詰め、その上面の5箇所に温度センサT1〜T5を配置する。
【0127】
この発泡スチロール板3の上に厚さ180mm、比重2.2のコンクリート板4を載せる。このコンクリート板4の上に飽水状態の多孔質セラミックス5(第8図(b)にのみ図示)を50kg堆積させる。堆積厚さは約10cm程度である。以上の作業は、気温20℃、湿度60%RHの屋内で行う。この容器を35℃、60%RHの恒温恒湿室中に放置し、温度センサの検出温度が35℃に上昇するまでの日数を測定する。これを蒸散効果持続日数とする。
【0128】
また、各実験例で得られた多孔質セラミックスについて、吸水性を調べるために、第17図に示すように、5個の多孔質セラミックス51〜55を用意し、水をはったパレット50上に、最下段の多孔質セラミックス55がその底部から1mm程度水に浸かるようにして、5段積み重ね、この状態で1時間放置した後、最上段の多孔質セラミックス51の重量変化から、この多孔質セラミックス51の吸水率(吸水前の多孔質セラミックスの重量に対する吸水した水の重量の割合)を算出した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
[考察]
表1の通り、上記の好ましい組成よりなる実験例1〜5の多孔質セラミックスは、蒸発性能及び蒸発効果持続日数に優れ、耐凍結融解性能、吸水性も良好である。
【0132】
これに対し、上記の好ましい組成に属さない、実験例6〜10のうち実験例6は、気孔の孔径が過大であるため、蒸発性能及び蒸発効果持続日数、吸水性に劣る。
【0133】
実験例7は、気孔の孔径が過度に小さいため、凍結融解性能、吸水性に劣る。
【0134】
実験例8は、気孔率が80%と過度に大きいため、凍結融解性能、吸水性に劣る。
【0135】
実験例9,10は、保水量が低いため、蒸発効果持続日数が短く、吸水性も悪い。
【符号の説明】
【0136】
1,50 パレット
2 囲枠
3 発泡スチロール板
4 コンクリート板
5,13,51,52,53,54,55 多孔質セラミックス
11 断熱材
12 コンクリートスラブ
14 温度センサ
20,22,24,26,28 保水用セラミックス
21,23,25,27,29 通気孔
40 地表又は建造物
41 スペーサ
42 通気板
43 通気スペース
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水性に優れ、また保水した水が蒸発し易い保水用セラミックスと、この保水用セラミックスを用いた保水構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質セラミックスよりなるブロックの壁体に水を掛け、蒸発潜熱によって打ち水の如き冷却効果を得るようにした冷却壁体が特開2003−184199に記載されている。同号公報の0026〜0027段落には、焼成時におけるバーミキュライトの発泡作用を利用して製造した多孔質セラミックスが記載されている。しかしながら、このような発泡セラミックス焼結体は、気孔が粗大であり、保水性が高くない。
【0003】
特開平8−73282の0005段落には、粘土、吸水性ポリマー及び水を混練し、成形した後、電子レンジで乾燥し、次いで1100℃で2時間焼成する多孔質セラミックスの製造方法が記載されている。同号公報には、吸水した吸水性ポリマーの粒径が0.1〜2.0mmであると記載されている(請求項4)。このように、吸水性ポリマーの粒径が大きいと、多孔質セラミックスの気孔も粗大となり、多孔質セラミックスの保水性は高くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−184199
【特許文献2】特開平8−73282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、保水性が高く、また包蔵した水の蒸発性が良好であり、水の蒸発潜熱による冷却効果が高い保水用セラミックスと、この保水用セラミックスを用いた保水構造体とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の保水用セラミックスは、焼結された多孔質セラミックスよりなる保水用セラミックスにおいて、内径1mm以上の通気孔を有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の保水用セラミックスは、請求項1において、該保水用セラミックスの全体積の53〜70%が孔径1〜100μmの気孔よりなることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の保水用セラミックスは、請求項1又は2において、前記通気孔が複数本、略平行に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の保水用セラミックスは、請求項1又は2において、異なる方向に延在した通気孔が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の保水用セラミックスは、請求項4において、少なくとも一部の延在方向の異なる通気孔同士が交わっていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6の保水用セラミックスは、請求項1ないし5のいずれか1項において、該保水用セラミックスは柱軸方向に延在した柱形であり、前記通気孔は柱軸方向に延在していることを特徴とするものである。
【0012】
請求項7の保水用セラミックスは、請求項1ないし5のいずれか1項において、該保水用セラミックスは柱軸方向に延在した柱形であり、前記通気孔は柱軸方向と交差方向に延在していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項8の保水構造体は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の保水用セラミックスが建造物又は地表に配材されてなるものである。
【0014】
請求項9の保水構造体は、請求項8において、少なくとも一部の前記通気孔が上下方向を指向していることを特徴とするものである。
【0015】
請求項10の保水構造体は、請求項8において、少なくとも一部の前記通気孔が横方向を指向していることを特徴とするものである。
【0016】
請求項11の保水構造体は、請求項10において、複数の保水用セラミックスの通気孔が一直線状に連なるように保水用セラミックスが配列されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項12の保水構造体は、請求項9ないし11のいずれか1項において、建造物又は地表との間に通気間隙をあけて通気板が配置され、該通気板の上に前記保水用セラミックスが配材されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の保水用セラミックスは、多孔質セラミックスよりなり、包蔵した水の蒸発潜熱によって冷却効果を発揮する。本発明では、保水用セラミックスに内径1mm以上の通気孔が設けられているので、保水用セラミックスの深奥部まで水が浸透し易く、また保水用セラミックスの深奥部に包蔵された水も蒸発し易い。従って、水の吸収速さ及び蒸発速さが大きい。
【0019】
本発明の一態様にあっては、保水用セラミックスは、全体積の53〜70%が孔径1〜100μmの気孔よりなる。このように比較的微細な気孔を多量に有する保水用セラミックスは保水性が高いと共に、表面の比表面積も大きく、水の蒸発性がよい。従って、降雨や散水によって素早く多量の水を吸水し、都市型洪水を防止することができる。また、この孔径の気孔は、超微細というものではなく、凍結するときには、気孔内の水が凍結時の水の体積膨張に伴って保水用セラミックス外に速やかに押し出されるので、凍結融解が繰り返されても、割れるおそれが殆どない。
【0020】
保水した本発明の保水用セラミックスからは、上記の通り、水の蒸発により大きな潜熱が奪われる。そのため、この保水用セラミックスを建物の屋上や庭などに敷き詰めた本発明の保水構造体は、建物や庭などの冷却効果に優れる。
【0021】
本発明において、通気孔を複数本略平行に設けたり、異なる方向に延在させたりすることにより、上記の効果が高くなる。
【0022】
異なる方向に延在した通気孔を交わらせることにより、保水用セラミックス内部で気化した蒸気が複数方向に流れて保水用セラミックス外に流出するので、蒸散効率が高いものとなる。
【0023】
通気孔が上下方向を指向するように保水用セラミックスを敷き詰めた場合、降雨や散水の水が通気孔を流れ下って保水用セラミックスの深奥部に速やかに到達するようになる。
【0024】
通気孔が横方向を指向するように保水用セラミックスを敷き詰めた場合には、保水用セラミックス深奥部の水分から気化した蒸気が横方向に流れて保水用セラミックス外に流出する。この場合、複数の保水用セラミックスの通気孔を一直線状に連ねることにより、蒸散効率が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態に係る保水用セラミックスの斜視図である。
【図2】別の実施の形態に係る保水用セラミックスの斜視図である。
【図3】(a)図はさらに別の実施の形態に係る保水用セラミックスの斜視図である。(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【図4】異なる実施の形態に係る保水用セラミックスの斜視図である。
【図5】さらに別の実施の形態に係る保水用セラミックスの水平断面図である。
【図6】実施の形態に係る保水構造体を示す断面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】実施例及び比較例における試験方法の説明図であり、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【図9】実験例1〜5の保水用セラミックスの気孔の孔径分布図である。
【図10】実験例6〜10の保水用セラミックスの気孔の孔径分布図である。
【図11】(a)図は、試験体1を示す模式的な断面図、(b)図は試験体1〜3のスラブ下温度の経時変化を示すグラフである。
【図12】試験体1,3のスラブ表面温度の経時変化を示すグラフである。
【図13】(a)図は試験体4を示す模式的な断面図、(b)図は試験体4,5の上方大気温度の経時変化を示すグラフである。
【図14】ケース1〜3の初期及び維持費用を比較するグラフである。
【図15】保水用セラミックスと芝生の試験期間内の蒸散・吸水量を対比して示すグラフである。
【図16】保水用セラミックスと芝生の蒸散量と吸水量の累計を対比して示すグラフである。
【図17】実験例における試験方法の説明図であり、パレット上の保水用セラミックスの積重状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0027】
[保水用セラミックスの形状]
まず、第1図〜第5図を参照して保水用セラミックスの形状例について説明する。
【0028】
本発明の保水用セラミックスは、焼結された多孔質セラミックスよりなり、外部に連通した内径1mm以上の通気孔を有する。
【0029】
第1図の保水用セラミックス20は、円柱形状であり、柱軸心部を柱軸方向に貫通した通気孔21を有する。この保水用セラミックス20の高さHは10〜300mm特に20〜100mm程度が好ましい。保水用セラミックス20の直径(外径)D0は10〜300mm特に20〜100mm程度が好ましい。通気孔21の内径D1は1〜200mm特に5〜50mm程度が好ましい。通気孔21の内周面と保水用セラミックス20の外周面との間の肉厚Wは3〜50mm特に5〜30mm程度が好ましい。
【0030】
第1図の保水用セラミックス20では通気孔21が1本だけ設けられているが、2本以上設けられてもよい。第2図は多数の通気孔23を設けることによりハニカム状とされた保水用セラミックス22を示している。この保水用セラミックス22の直径、高さの好ましい範囲は保水用セラミックス20と同様である。2本以上の通気孔を柱軸方向に貫設する場合、保水用セラミックスの柱軸と直交方向の断面において通気孔の合計の断面積が保水用セラミックスの断面積の10〜90%特に30〜70%程度であることが好ましい。
【0031】
第1,2図では、通気孔は柱軸方向に延設されているが、柱軸方向と交差方向、例えば直交方向に設けられてもよい。第3図の保水用セラミックス24では、柱軸方向と直交方向に2本の通気孔25が設けられている。この実施の形態では通気孔25は互いに平行である。この保水用セラミックス24の直径及び高さの好ましい範囲は保水用セラミックス20と同様である。
【0032】
この通気孔25の内径D5は保水用セラミックス24の直径D4の5〜90%特に10〜60%程度が好ましい。
【0033】
通気孔25同士の距離は2〜100mm特に6〜30mm程度が好ましい。
【0034】
保水用セラミックス20の上端面又は下端面と、直近の通気孔25までの距離は2〜100mm特に6〜30mm程度が好ましい。
【0035】
第3図では、通気孔25は互いに平行であるが、第4図の保水用セラミックス26のように、設置高さの異なる複数の通気孔27がそれぞれ指向方向を異ならせて設けられてもよい。第4図の保水用セラミックス26の好ましい直径、高さ、通気孔の内径及びその位置は第3図の場合と同様である。
【0036】
第3,4図では、2本の横方向の通気孔25が設けられているが、1本又は3本以上の横方向の通気孔25が設けられてもよい。
【0037】
2本以上の通気孔25を設ける場合、各々の指向方向は任意である。また、通気孔25は柱軸と斜交方向に延在してもよい。すなわち、柱軸方向を鉛直方向とした場合に傾斜した通気孔であってもよい。
【0038】
本発明の保水用セラミックスでは、第5図の保水用セラミックス28のように放射4方向に延在する十字形にクロスする横孔よりなる通気孔29を設けてもよい。
【0039】
このような放射状の通気孔は、放射3方向に延在してもよく、5方向以上に延在してもよい。
【0040】
また、図示は省略するが、柱軸方向に延在する通気孔と、横方向や傾斜方向に延在する通気孔とを設けてもよい。例えば、保水用セラミックス20の外形と保水用セラミックス24の外形とが同一だとしたときに、保水用セラミックス20に設けられた通気孔21と同形状の通気孔を保水用セラミックス24の柱軸心部を柱軸方向に貫通するよう設けてもよい。また、保水用セラミックス20の外形と保水用セラミックス24の外形とが同一だとしたときに、保水用セラミックス20に設けられた通気孔21と同形状の通気孔を保水用セラミックス26の柱軸心部を柱軸方向に貫通するよう設けてもよい。
【0041】
上記実施の形態では保水用セラミックスはいずれも円柱形であるが、楕円柱形や、三角柱形、五角柱形又はそれ以上の多角柱形であってもよい。また、柱状以外の形状、例えば球状、楕円球状、立方体、錐体、円盤形状などとされてもよい。
【0042】
円柱形以外の形状の保水用セラミックスの場合、容積は上記円柱形保水用セラミックスと同程度であることが好ましい。
【0043】
[保水構造体]
次に、本発明の保水構造体について説明する。
【0044】
この保水構造体は、建造物又は地表に本発明の保水用セラミックスを配材したものである。
【0045】
建造物のうちでも屋上に保水用セラミックスを配材するのが好ましい。保水用セラミックスは建造物又は地表に直に配材されてもよく、建造物の上面や地表との間に間隔をあけて通気板を設置し、この通気板の上に保水用セラミックスを配材してもよい。このようにすれば、通気板の下側のスペースに空気が流れるので、保水用セラミックスの下側からも水蒸気が蒸散するようになり、冷却効果が向上する。
【0046】
第6図はこの保水構造体の一例を示す縦断面図であり、建造物又は地表40の上方にスペーサ41を介して通気板42が設置されている。通気板42の下側が通気スペース43となっている。通気板42の設置高さは1〜300mm特に5〜150mm程度が好ましい。
【0047】
通気板42としてはパンチングメタル、網状体、グレーチング、すのこ状部材など多種のものを用いることができる。なお、スペーサ41間に梁を架設し、その上に通気板42を設置してもよい。
【0048】
この通気板42の上に保水用セラミックスをランダムに敷き詰めてもよく、規則的に配列してもよい。
【0049】
第6図では、第3図に示した保水用セラミックス24を、保水用セラミックス24の柱軸方向が上下方向となるように配列している。また、各保水用セラミックス24の通気孔25が一直線状に揃うように、保水用セラミックス24の側面を突き合わせて密に配列している。このように通気孔25を連通させることにより、各保水用セラミックス24から通気孔25内に蒸散した水がスムーズに保水構造体外に流出するようになり、冷却効果が向上する。
【0050】
第6図では保水用セラミックス24を通気板42の上に1段だけ配材しているが、2段以上配材してもよい。第3図以外の保水用セラミックス24,26,28を用いてもよい。
【0051】
この保水構造体によれば、急激な降雨や一時的に多量の散水が行われたときでも、水を十分に保水することができる。従って、保水用セラミックスを都市の多くの建物や庭、空地等に敷き詰めることにより、都市型洪水を防止することも可能となる。
【0052】
また、この保水用セラミックスから、水が蒸発するときの蒸発潜熱により冷却が行われるので、保水用セラミックスを都市の多くの建物や庭、空地等に敷き詰めることにより、ヒートアイランド現象を防止することが可能となる。
【0053】
次に、この保水用セラミックスを構成する多孔質セラミックスの好適な気孔径、材料、組成及び製造方法等について説明する。
【0054】
[保水用セラミックスの気孔径]
本発明で用いる保水用セラミックスは、その保水用セラミックスの全体積(通気孔の容積は含まないものとする)の53〜70%好ましくは55〜68%が、孔径1〜100μm、好ましくは15〜40μmの微細気孔よりなることが好ましい。上述の通り、このように微細な気孔を多量に含むことにより、保水用セラミックスの保水性及び水の蒸発性が良好となる。
【0055】
より好ましくは、この孔径1〜100μmの気孔の60%以上、例えば70〜95%が孔径10〜50μm、好ましくは15〜40μmの気孔よりなる。
特に、本発明で用いる保水用セラミックスは、その保水用セラミックスの全体積の10〜70%、特には15〜50%が孔径15〜40μmの微細気孔よりなることが好ましい。
【0056】
この保水用セラミックスの全気孔率は、55〜80%であることが好ましい。保水用セラミックスの全気孔率が55%未満では、全体積の53〜70%が孔径1〜100μmの微細気孔の保水用セラミックスの実現し得ず、80%よりも大きいと、強度が不足し、敷設材料としての実用性が損なわれる。
【0057】
なお、本発明では、気孔の孔径の測定は、水銀ポロシメータを用い、JIS R 1655に従って行われる。
【0058】
上記孔径の気孔内の水は、凍結時に保水用セラミックス外に押し出され易く、凍結融解作用を繰り返し受けても、保水用セラミックスが割れることは殆どない。
【0059】
[セラミックスの組成]
この保水用セラミックスを構成するセラミックスの組成は
SiO2:50〜80wt%とりわけ55〜70wt%
Al2O3:10〜30wt%とりわけ15〜25wt%
Na2O及びK2Oの合計:1〜10wt%とりわけ3〜7wt%
であることが好ましい。
【0060】
かかるソーダ・カリを多く含むアルミノ珪酸塩系セラミックスは、親水性であり、保水用セラミックスの保水性及び水の蒸発性が良好となる。
【0061】
なお、湿潤状態にある保水用セラミックスに藻が発生することを防止するために、CuOを保水用セラミックス中に0.1〜1.5wt%程度配合してもよい。
【0062】
本発明で用いる保水用セラミックスには、その一部又は全面に光触媒コーティング液を塗布して光触媒効果を付与してもよく、これにより、光触媒による浄化作用で、保水用セラミックスの耐汚染性を高めることができる。
【0063】
[保水用セラミックスの製造方法]
次に保水用セラミックスの好適な製造方法について説明する。
【0064】
この保水用セラミックスを製造するには、窯業系原料、アルミナセメント及び粉末状吸水性ポリマー並びに好ましくは更に炭酸リチウムを乾式混合し、次いで水を添加して混合し、その後、成形、乾燥及び焼成する。この際の配合割合は、好ましくは、
窯業系原料:75〜95wt%、特に80〜95wt%
アルミナセメント:3〜15wt%、特に5〜15wt%
吸水性ポリマー:0.5〜10wt%、特に1〜5wt%
炭酸リチウム:10wt%以下、特に1〜10wt%、とりわけ1〜5wt%
である。
【0065】
なお、水の混合割合は、水以外の全原料の合計重量に対して130〜170wt%程度であって、吸水性ポリマーに対して80〜150倍程度とすることが、取り扱い性、成形性、吸水性ポリマーの吸水膨張性、その後の乾燥、焼成効率の面から好ましい。
【0066】
窯業系原料としては、カリ長石、粘土、珪砂などの1種又は2種以上を用いることができるが、これに限定されない。これらの窯業系原料をSiO2、Al2O3、Na2O+K2Oの割合が前述となるように選択して用いる。
【0067】
アルミナセメントとしては、JISに定めるものを用いることができる。
【0068】
このアルミナセメントは、硬化が速いので、水を添加して混合し、成形すると、短時間のうちにハンドリングできる程度の成形体が得られる。
【0069】
粉末状吸水性ポリマーとしては、粒径10〜50μm特に20〜30μm程度のものが好適である。
【0070】
吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸塩系、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体ケン化物、でんぷん・アクリル酸グラフト共重合体など、各種のものを1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0071】
この混合物を成形するには、定量充填機、鋳込成型機、押出成形機、ハニカム成形機などを用いることができるが、これに限定されない。通気孔を開ける方法としては、成形の際に型などを用いて開ける等の方法が例示される。例えば押し出し成形をする場合は、中玉を設けて成形し、成形と同時に孔を開けることができる。また、成形した後の成形体に対して、管状の金型で孔をくりぬいて開けることができる。また、乾燥体や焼成体に対してドリルを用いて孔を開けることもできる。
【0072】
この成形体を好ましくは80〜250℃で5〜40時間特に6〜12時間加熱して乾燥した後、好ましくは1050〜1200℃特に1100〜1150℃で0.2〜20時間特に0.3〜2時間焼成して焼結体とする。この焼成には、ローラーハースキルン、トンネルキルン、シャトルキルン等を用いることができる。
【0073】
[保水用セラミックスの応用例及びその効果]
保水用セラミックスは、気孔径及びその割合が厳密に制御された多孔質セラミックスであり、雨水を吸水することにより治水し、また、吸水した水を日射によって蒸散させる性能を有する。
【0074】
従って、保水用セラミックスを、ビル屋上や個人住宅又は公共施設の通路、広場、庭等に敷設することにより、以下のA,Bのような環境対策を図ることができる。
【0075】
A.個別ビルの環境対策
A−1.ビルの省エネ・CO2削減:
保水用セラミックスをビル屋上に敷設することにより、保水用セラミックスによる雨水の治水・蒸散で、屋上スラブ温度を下げ、階下の空調の使用電力量を減らすことができる。
【0076】
また、屋上に設置された空調室外機の周辺温度を下げ、全階の空調の運転効率を向上させ、使用電力量を減らすこともできる。特に、屋上階の夏場の空調の使用電力量を大きく低減することができる。
【0077】
この結果、CO2の排出量の削減も可能となる。
【0078】
A−2.ビルの屋上緑化の代替:
保水用セラミックスは、芝生等の植物と同様の保水、冷却の性能を有すると共に、高耐久・長寿命かつ自然降雨を利用する維持管理不要な材料であるため、屋上緑化代替の有力候補となる。
【0079】
現状の屋上緑化は維持に手間が掛かり、管理費も高いが、保水用セラミックスによれば、この問題を解決できる。
【0080】
A−3.ビルの屋上防水層のメンテナンス経費削減:
保水用セラミックスは、熱伝導率が0.2W/m・K程度の低熱伝導性で断熱性が高いので、これをビル屋上に敷設することにより、屋上スラブ温度を一定に保つことができる。また、紫外線も防ぐことができる。
【0081】
現状では10年程度で防水層の補修が必要とされるが、保水用セラミックスを適用することにより、このメンテナンス頻度を低減できる。
【0082】
B.都市の環境対策
B−1.ヒートアイランド対策:
保水用セラミックスは、ビル屋上を占有する各種機器(室外機・熱源など)の下にも敷設できるので、本発明の保水用セラミックスを各所に敷設することにより、都市の蒸散面積を増やし、街区全体の温度をより一層低減することができる。
【0083】
また、保水用セラミックスは、芝生と比較して高い蒸散能力があるので、芝生に比べて単位面積当たりの温度低減効果も高い。
【0084】
B−2.ゲリラ豪雨対策:
保水用セラミックスは、芝生と比較して高い治水能力があるので、ビル屋上に可能な限り敷設すれば、ゲリラ豪雨のピークカットが期待できる。
【0085】
B−3.資源の再利用
保水用セラミックスは、従来、廃棄物とされていた長石キラを主原料(例えば原料の90%)として製造することができる。長石キラはタイル原料の長石を採掘する時の副産物であり、従来は廃棄物とされていたものである。
【0086】
以下に、上記の保水用セラミックスを構成する多孔質セラミックスによる上記A,Bの効果を示す実験例ないしは試算例を挙げる。
【0087】
<A−1.ビルの省エネ・CO2削減>
第11図(a)に示すように、底部及び4側面が断熱材11で構成された箱型容器内にコンクリートスラブ12を敷設し、その上に、多孔質セラミックス(例えば、後掲の実験例2と同様にして製造された多孔質セラミックス)13を厚さ10cmに敷設し、試験体1とした。多孔質セラミックスの敷設面積は1m2である。なお、底部断熱材11とコンクリートスラブ12との間には、温度センサ14を設けた。
【0088】
別に、この多孔質セラミックスの代りに芝生を植えたものを試験体2とし、多孔質セラミックスを敷設しなかったものを試験体3とした。
【0089】
これらの試験体1〜3を並べて置き、気温と、各試験体の温度センサ14の測定温度の経時変化を調べ、結果を第11図(b)に示した。
【0090】
なお、第11図(b)のグラフ中、吸水期間は、降雨のあった期間であり、それ以外は、曇ないし晴天であった。
【0091】
第11図(b)より明らかなように、多孔質セラミックスを敷設した試験体1は、敷設なしの試験体3に対してスラブ下温度で最大−8℃の温度低減効果があった。しかも、試験体1の蒸散効果は、芝生を植えた試験体2よりも大きいものであった。
【0092】
この結果から、多孔質セラミックスによる雨水の治水・蒸散で、屋上スラブ温度を下げ、階下の空調の使用電力量を減らすことができることが分かる。
【0093】
次に、第11図(a)に示すと同様に多孔質セラミックス13を敷設すると共に温度センサ14を設けた試験体1と、多孔質セラミックスを敷設していない試験体3により、屋上スラブ表面温度の変化を模擬するものとして、1日24時間の温度センサ14の測定温度を調べ、結果を第12図に示した。
【0094】
なお、多孔質セラミックス、コンクリートスラブ及び土の一般的な熱伝導率は以下に示す通りである。
【0095】
多孔質セラミックス :0.20W/m・K
コンクリートスラブ :0.15W/m・K
土 :0.63W/m・K
【0096】
第12図より明らかなように、屋上スラブの表面温度の一日の変化量は、多孔質セラミックスを敷設した試験体1では2℃であるのに対して、敷設していない試験体3では15℃だった。この結果から、多孔質セラミックスを敷設することにより、日射によるスラブへの熱負荷が軽減されることが分かる。
【0097】
次に、第13図(a)に示すように、底部及び4側面が断熱材11で構成された箱型容器内にコンクリートスラブ12を敷設し、その上に、多孔質セラミックス(例えば、後掲の実験例2と同様にして製造された多孔質セラミックス)13を厚さ10cmに敷設し、試験体4とした。多孔質セラミックスの敷設面積は1m2である。多孔質セラミックスの敷設面の上方1cmの位置に温度センサ14を設けた。
【0098】
別に、多孔質セラミックスを敷設しなかったものを試験体5とした。この試験体5ではコンクリートスラブ12の上方1cmの位置に温度センサ14を設けた。
【0099】
これらの試験体4,5を並べて置き、1日24時間の温度センサ14の測定温度の変化を調べ、結果を第13図(b)に示した。
【0100】
第13図(b)より明らかなように、多孔質セラミックスを敷設した試験体4と敷設していない試験体5とでは、1cm上方の大気温度として、最大5℃の差があった。
【0101】
この結果から、多孔質セラミックスを敷設することにより、屋上に設置された空調室外機の周辺温度を下げ、全階の空調の運転効率を向上させ、使用電力量を減らすことができることが分かる。
【0102】
<A−2.ビルの屋上緑化の代替及びA−3.ビルの屋上防水層のメンテナンス経費削減>
多孔質セラミックスをビル屋上に敷設した場合(ケース1)と、これを敷設していない従来仕様(ケース2)と、芝生や低木を植えた屋上緑化の場合(ケース3)とで、単位面積当たりの初期費用(敷設ないし植栽費用)と20年間の維持(メンテナンス)費用を試算し、その比較結果を第14図に示した。
【0103】
第14図に示されるように、多孔質セラミックスは初期費用のみでその後の維持管理は殆ど不要である。一方、多孔質セラミックスを敷設しない従来仕様のケース2では、防水層の補修等の維持費がかかり、結果として、本発明品と同等である。
【0104】
屋上緑化のケース3では、初期費用に加えて、剪定、刈込み、芝刈り、施肥、除草、病害虫防除、灌漑装置の点検、その他の総合点検等の維持費用がかさみ、第14図に示す費用以外にも灌漑設備による散水のための運転に必要な電気代及び水道代がかかる。
【0105】
これらの結果から、前述の如く、多孔質セラミックスは、治水・蒸散において、芝生等植物の性能と同等であると共に、高耐久・長寿命かつ自然降雨を利用した維持管理不要なものである上に、屋上緑化に比較して、初期費用は1/2、維持費用も格段に安く、屋上緑化代替の有力候補となることが分かる。
【0106】
<B−1.ヒートアイランド対策>
東京都23区内のビル屋上全てに多孔質セラミックスを敷設すると、治水・蒸散に機能する都市の蒸散面積を10%増加させることができる。
【0107】
現在、ビルの屋上には機器類(室外機・熱源など)が設置されているが、多孔質セラミックスは、ビル屋上の各種機器の下にも敷設できるので、都市の蒸散面積を増やし、街区全体の温度を大幅に低減することができる。
【0108】
多孔質セラミックスと芝生の治水・蒸散の繰り返し試験結果を示す第16図から明らかなように、多孔質セラミックスは、芝生の約2倍の蒸散能力があるため、上記の10%の都市の蒸散面積の増加は、芝生に替算すれば、2倍の20%の都市の蒸散面積の増加となり、更なる有効性が明らかである。
【0109】
<B−2・ゲリラ豪雨対策>
多孔質セラミックスと芝生について、10月2日〜10月16日の15日間にわたる期間の単位体積当たりの蒸散量と吸水量の累計を比較した第15図より明らかなように、多孔質セラミックスは芝生よりも2倍以上の吸水・蒸散量を有する。
【0110】
ビル屋上には多孔質セラミックスを10cmの厚さで50km2の面積に敷設すると180万m3もの治水ができ、東京都23区で3mm/hrのゲリラ豪雨のピークカットを図ることができる。
【0111】
<B−3.資源の再利用>
多孔質セラミックスは、例えば、従来廃棄物とされていた長石キラ90重量%と、その他の材料10重量%で製造することができる。単位面積当たりの多孔質セラミックスの重量を40kg/m2とすると、5000m2の敷設に必要となる長石キラの量は、
5000(m2)×40(kg/m2)×0.9÷1000=180ton
となる。
【0112】
即ち、多孔質セラミックスを敷設面積として1日に5000m2生産すると、必要な廃棄物(長石キラ)原料は、180ton/日であり、廃棄物の有効利用効果は極めて大きい。
【0113】
以下、上記配合の多孔質セラミックスが保水性及び蒸散性に優れていることを示す実験結果について説明する。下記の実験例1〜5は本発明の好ましい組成を用いた多孔質セラミックスであり、実験例6〜10はそれ以外の組成の多孔質セラミックスである。
【0114】
なお、以下の実験例で用いた原料は次の通りである。
【0115】
カリ長石:愛知県瀬戸産 長石
8号珪砂:勝野窯業製
長石キラ:愛知県瀬戸産 長石
吸水性ポリマー:三洋化成株式会社製
(篩によって粒径20μmアンダー(吸水性ポリマーA)、粒径
20〜50μm(吸水性ポリマーB)、粒径50〜100μm
(吸水性ポリマーC)に分級した。)
アルミナセメント:ラファージュ株式会社製
炭酸リチウム:試薬特級
CuO:試薬特級
【0116】
[実験例1〜10]
水以外の原料を表1の割合で秤量し、ミキサ(ホソカワミクロン製ナウタミキサ)で乾式にて攪拌混合した。次いで、水を表1の割合でこの混合粉末に添加し、混練した。これを直径70mm、最大厚さ15mmの略円盤形状に成形し、80℃にて24時間乾燥した。乾燥した成形体に対してドリルを用いて厚さ方向に直径10mmの通気孔を開けた。これをローラーハースキルン(最高焼成温度は表1に示す通り。炉通過時間は60分)にて焼成し、多孔質セラミックスを製造した。
【0117】
各多孔質セラミックスについて成分分析を行うと共に特性測定を行った。結果を表1、表2に示す。
【0118】
なお、気孔率(通気孔の容積は含まない。)は、水銀ポロシメータ(Quantachrome株式会社製)を用いて測定した。気孔の孔径分布を第9図及び第10図に示す。
【0119】
保水量は、次のようにして測定した。
【0120】
多孔質セラミックスを105℃で乾燥した後、放冷し、秤量し、重量(W1)を求める。次いで、20℃の水中に24時間浸漬した後、引き上げ、表面水を湿った布で拭き取り、飽水状態とする。この試料を秤量し、重量(W2)を求める。また、この飽水状態の多孔質セラミックスをメスシリンダー中の水中に投入し、体積(V)を求める。保水量(g/cm3)を(W2−W1)/Vにより算出する。
【0121】
強度は10cm×10cm×0.5cmのサンプルを作り3点曲げ試験(JTトーシ株式会社、50kNデジタル曲げ試験機)によって測定した。
【0122】
凍結融解性能は、上記飽水状態の多孔質セラミックスを−20℃に75分保持して凍結させた後、30℃に90分保持して融解させる凍結・融解サイクルを200サイクル繰り返し、破損の程度を観察することによって調べ、非常に良好(◎)、良好(○)、やや不良(△)、不良(×)で評価した。
【0123】
蒸散性能は、水を深さ5mmに張った平たい容器内に、乾燥した多孔質セラミックスを置き、30分吸水させた後、引き上げ、この30分間の吸水量を上記保水量の測定方法と同様にして求める。体積については保水量測定時の体積を用いる。この30分間の吸水量(g/cm3)を蒸散性能とする。
【0124】
蒸散効果持続日数は、蒸発の潜熱による冷却効果の持続日数であり、次のようにして測定した。
【0125】
第8図に示す通り、厚さ150mmの再生ポリプロピレン樹脂製パレット1の上に、厚さ100mmの発泡スチロール板よりなる正方形状の囲枠2を載せ、容器とする。この容器の一辺は1000mm、深さは830mmである。容器の外周面にアルミ箔を張ってある。
【0126】
この容器内に厚さ500mmに発泡スチロール板3を敷き詰め、その上面の5箇所に温度センサT1〜T5を配置する。
【0127】
この発泡スチロール板3の上に厚さ180mm、比重2.2のコンクリート板4を載せる。このコンクリート板4の上に飽水状態の多孔質セラミックス5(第8図(b)にのみ図示)を50kg堆積させる。堆積厚さは約10cm程度である。以上の作業は、気温20℃、湿度60%RHの屋内で行う。この容器を35℃、60%RHの恒温恒湿室中に放置し、温度センサの検出温度が35℃に上昇するまでの日数を測定する。これを蒸散効果持続日数とする。
【0128】
また、各実験例で得られた多孔質セラミックスについて、吸水性を調べるために、第17図に示すように、5個の多孔質セラミックス51〜55を用意し、水をはったパレット50上に、最下段の多孔質セラミックス55がその底部から1mm程度水に浸かるようにして、5段積み重ね、この状態で1時間放置した後、最上段の多孔質セラミックス51の重量変化から、この多孔質セラミックス51の吸水率(吸水前の多孔質セラミックスの重量に対する吸水した水の重量の割合)を算出した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
[考察]
表1の通り、上記の好ましい組成よりなる実験例1〜5の多孔質セラミックスは、蒸発性能及び蒸発効果持続日数に優れ、耐凍結融解性能、吸水性も良好である。
【0132】
これに対し、上記の好ましい組成に属さない、実験例6〜10のうち実験例6は、気孔の孔径が過大であるため、蒸発性能及び蒸発効果持続日数、吸水性に劣る。
【0133】
実験例7は、気孔の孔径が過度に小さいため、凍結融解性能、吸水性に劣る。
【0134】
実験例8は、気孔率が80%と過度に大きいため、凍結融解性能、吸水性に劣る。
【0135】
実験例9,10は、保水量が低いため、蒸発効果持続日数が短く、吸水性も悪い。
【符号の説明】
【0136】
1,50 パレット
2 囲枠
3 発泡スチロール板
4 コンクリート板
5,13,51,52,53,54,55 多孔質セラミックス
11 断熱材
12 コンクリートスラブ
14 温度センサ
20,22,24,26,28 保水用セラミックス
21,23,25,27,29 通気孔
40 地表又は建造物
41 スペーサ
42 通気板
43 通気スペース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結された多孔質セラミックスよりなる保水用セラミックスにおいて、
内径1mm以上の通気孔を有することを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項2】
請求項1において、該保水用セラミックスの全体積の53〜70%が孔径1〜100μmの気孔よりなることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記通気孔が複数本、略平行に設けられていることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項4】
請求項1又は2において、異なる方向に延在した通気孔が設けられていることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項5】
請求項4において、少なくとも一部の延在方向の異なる通気孔同士が交わっていることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該保水用セラミックスは柱軸方向に延在した柱形であり、前記通気孔は柱軸方向に延在していることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該保水用セラミックスは柱軸方向に延在した柱形であり、前記通気孔は柱軸方向と交差方向に延在していることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の保水用セラミックスが建造物又は地表に配材されてなる保水構造体。
【請求項9】
請求項8において、少なくとも一部の前記通気孔が上下方向を指向していることを特徴とする保水構造体。
【請求項10】
請求項8において、少なくとも一部の前記通気孔が横方向を指向していることを特徴とする保水構造体。
【請求項11】
請求項10において、複数の保水用セラミックスの通気孔が一直線状に連なるように保水用セラミックスが配列されていることを特徴とする保水構造体。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれか1項において、建造物又は地表との間に通気間隙をあけて通気板が配置され、該通気板の上に前記保水用セラミックスが配材されていることを特徴とする保水構造体。
【請求項1】
焼結された多孔質セラミックスよりなる保水用セラミックスにおいて、
内径1mm以上の通気孔を有することを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項2】
請求項1において、該保水用セラミックスの全体積の53〜70%が孔径1〜100μmの気孔よりなることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記通気孔が複数本、略平行に設けられていることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項4】
請求項1又は2において、異なる方向に延在した通気孔が設けられていることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項5】
請求項4において、少なくとも一部の延在方向の異なる通気孔同士が交わっていることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該保水用セラミックスは柱軸方向に延在した柱形であり、前記通気孔は柱軸方向に延在していることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該保水用セラミックスは柱軸方向に延在した柱形であり、前記通気孔は柱軸方向と交差方向に延在していることを特徴とする保水用セラミックス。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の保水用セラミックスが建造物又は地表に配材されてなる保水構造体。
【請求項9】
請求項8において、少なくとも一部の前記通気孔が上下方向を指向していることを特徴とする保水構造体。
【請求項10】
請求項8において、少なくとも一部の前記通気孔が横方向を指向していることを特徴とする保水構造体。
【請求項11】
請求項10において、複数の保水用セラミックスの通気孔が一直線状に連なるように保水用セラミックスが配列されていることを特徴とする保水構造体。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれか1項において、建造物又は地表との間に通気間隙をあけて通気板が配置され、該通気板の上に前記保水用セラミックスが配材されていることを特徴とする保水構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−280553(P2010−280553A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137401(P2009−137401)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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