説明

保温シート

【課題】
保温に優れた繊維構造体からなる保温シートを提供する。
【解決手段】
主に合成繊維から構成され、空隙率90〜99体積%、密度0.01〜0.2g/cm3、かつ厚み2mm以上の繊維構造体からなる保温シートであって、該繊維構造体の保水率が800%以上である保温シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温性および放水性に優れた繊維構造体からなる保温シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康ブームの中で、各種健康法が推奨かつ実施されている。このうち、身近な健康法として、入浴健康法がある。この入浴健康法は、血行を良くし、発汗作用を促し、老廃物を外部に排出することで、新陳代謝を高めることができるなどの効用があることはよく知られている。
入浴健康法には、全身浴と、半身浴とがあり、特に、近年、身体に優しい入浴方法として、半身浴が注目を浴びるようになってきている。しかし、半身浴は、1ヶ月、2ヶ月というように、継続して行なわなければ効用は現れにくいが、特に冬場等では、上半身が寒く感じがちとなり、目標時間、お湯につかっていることができず、途中で止めてしまうことが多く、継続して半身浴を行なう面での障害となっていた。
また、半身浴のような入浴法では浴室内の温度が低いときはなかなか上半身が温まらず、発汗するまでに時間がかかるため、従来はお湯に浸からない上半身にバスタオルをはおったりしていた(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、特許文献1のバスタオルは吸水性のある綿などの素材を使用しているため、お湯を吸ってしまった場合にその濡れた部分が外気によって冷やされ不快に感じるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−342808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、保温に優れた繊維構造体からなる保温シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定範囲の空隙率、密度、厚み、および吸水率を有する繊維構造体からなるシートが以下の1)〜5)の特長を有するがために保温性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
1)構成繊維が合成繊維なので繊維自身が吸水しない
2)濡れても柔らかくなり難いが、ドレープ性があるので、身体に沿って密着する。
3)繊維構造体内の空間の隙間は保水し易く、かつ放水もし易いため、お湯が入れ替わり易く冷め難い。
4)濡れても厚み変化は小さく、表面の断熱効果も維持される。
5)全面で保水、密着性もあるが、お湯の移行性が速く放水し易いため、気化熱により冷め難い。
【0006】
すなわち、本発明は主に合成繊維から構成され、空隙率90〜99体積%、かつ密度0.01〜0.2g/cm3、かつ厚み2mm以上の繊維構造体からなる保温シートであって、該繊維構造体の吸水率が800%以上である保温シートであり、好ましくは前記繊維構造体の放水率が40%以上である前記の保温シートである。
【0007】
また本発明は、好ましくは前記合成繊維が主として湿熱接着繊維、ポリエステル系繊維、エチレンービニルアルコール系共重合体で構成される繊維のいずれかからなる上記の保温シートであり、さらに好ましくは前記合成繊維がポリエステル系繊維と50/50〜90/10の比率で混綿されてなる上記の保温シートであり、より好ましくは前記ポリエステル系繊維が潜在捲縮性からなる上記の保温シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は特定の構造を有する繊維構造体とすることにより、得られるシートは保温性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の保温シートを構成する繊維構造体の形態は例えば織編物、織布、不織布、発泡体などが挙げられるが、後述する所定範囲の空隙率、密度、厚み、および吸水率を有していれば形態は限定されない。
【0010】
本発明の保温シートを構成する繊維構造体の空隙率は90〜99体積%であることが必要である。繊維構造体の空隙率が90体積%未満であると、繊維構造体内に進入したお湯が繊維構造体外へ放出しにくいため、さらにお湯をかけても繊維構造体に保持されたお湯が冷えてしまい、満足する保温性が得られない。一方、99体積%を越えると、繊維構造体内へ進入するお湯は増えるが、繊維構造体にお湯が保持されないままに放出してしまうため、繊維構造体が温まり難い問題がある。好ましくは92〜99体積%、より好ましくは94〜98%である。
【0011】
次に本発明の保温シートを構成する繊維構造体の密度は0.01〜0.2g/cmであることが必要である。繊維構造体の密度が0.01g/cm未満であると、繊維構造体として形態安定性が悪くなり、シートの変形や取扱い性に問題があり、一方、0.2g/cmより大きいと繊維構造体としての形態安定性は良いが、硬くドレープ性が無くなり身体に沿い難くなる問題がある。好ましくは0.02〜0.1g/cmであり、より好ましくは0.03〜0.08g/cmである。
【0012】
さらに本発明の保温シートを構成する繊維構造体の厚みは2mm以上であることが必要である。繊維構造体の厚みが2mm未満であると、繊維構造体表面の断熱効果が低くなる。好ましくは2.5mm以上であり、より好ましくは3mm以上10mm未満である。
【0013】
そして本発明の保温シートを構成する繊維構造体の吸水率は800%であることが必要である。繊維構造体の吸水率が800%未満であると繊維構造体内に進入したお湯が少ないため、満足する保温性が得られない。好ましくは900%以上、より好ましくは1000%以上3000%未満である。
【0014】
また本発明の保温シートを構成する繊維構造体の放水率は40%以上であることが好ましい。繊維構造体の放水率が40%未満であると、繊維構造体に保持され、冷えたお湯が放出されにくいため、満足する保温性が得られない。より好ましくは40%以上75%未満である。
【0015】
本発明の保温シートを構成する繊維構造体は主として合成繊維から構成されている必要がある。合成繊維としては、ポリオレフィン系繊維、(メタ)アクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、塩化ビニル系繊維、スチレン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリウレタン系繊維などが挙げられる。これらの繊維のうち、ポリエステル系繊維が好適に用いられる。
【0016】
ポリエステル系繊維を構成するポリエステル系樹脂としては、ポリC2−4アルキレンアリレート系樹脂などの芳香族ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、特に、PETなどのポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、エチレンテレフタレート単位の他に、他のジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など)やジオール(例えば、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)で構成された単位を20モル%以下程度の割合で含んでいてもよい。
【0017】
特に、本発明では、前記織繊維構造体の中でも、バインダー成分(特に、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系などの熱接着性樹脂で構成された熱接着性繊維で構成されたバインダー繊維)の融着により固定された繊維構造体が好ましく、保水性と放水性とを両立できる点から、湿熱接着性繊維を含み、かつこの湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された構造体が特に好ましい。本発明では、湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された構造体は、高温(過熱又は加熱)水蒸気を利用して接着するために、厚み方向で均一に接着されており、繊維構造を保持しながら、嵩高性を確保できる。
【0018】
前記繊維構造体において、湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂で構成されている。湿熱接着性樹脂は、高温水蒸気によって容易に実現可能な温度において、流動又は容易に変形して接着機能を発現可能であればよい。具体的には、熱水(例えば、90〜130℃、特に95〜120℃程度)で軟化して自己接着又は他の繊維に接着可能な熱可塑性樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系重合体、ポリ乳酸などのポリ乳酸系樹脂、(メタ)アクリルアミド単位を含む(メタ)アクリル系共重合体などが挙げられる。さらに、高温水蒸気により容易に流動又は変形して接着可能なエラストマー(例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマーなど)などであってもよい。これらの湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、特に、エチレンやプロピレンなどのα−C2−10オレフィン単位を含むビニルアルコール系重合体、特に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が好ましい。
【0019】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体において、エチレン単位の含有量(共重合割合)は、例えば、5〜65モル%(例えば、10〜65モル%)、好ましくは20〜55モル%、さらに好ましくは30〜50モル%程度である。エチレン単位がこの範囲にあることにより、湿熱接着性を有するが、熱水溶解性はないという特異な性質が得られる。エチレン単位の割合が少なすぎると、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が、低温の蒸気(水)で容易に膨潤又はゲル化し、水に一度濡れただけで形態が変化し易い。一方、エチレン単位の割合が多すぎると、吸湿性が低下し、湿熱による繊維融着が発現し難くなるため、実用性のある強度の確保が困難となる。エチレン単位の割合が、特に30〜50モル%の範囲にあると、シートへの加工性が特に優れる。
【0020】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体におけるビニルアルコール単位のケン化度は、例えば、90〜99.99モル%程度であり、好ましくは95〜99.98モル%、さらに好ましくは96〜99.97モル%程度である。ケン化度が小さすぎると、熱安定性が低下し、熱分解やゲル化によって安定性が低下する。一方、ケン化度が大きすぎると、繊維自体の製造が困難となる。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は、必要に応じて選択できるが、例えば、200〜2500、好ましくは300〜2000、さらに好ましくは400〜1500程度である。重合度がこの範囲にあると、紡糸性と湿熱接着性とのバランスに優れる。
【0021】
さらに本発明の保温シートを構成する繊維構造体は、前記ポリエステル系繊維とエチレン−ビニルアルコール系共重合体などの湿熱接着性繊維とが混綿されていることが好ましく、それらの混綿比率は50/50〜90/10であることが好ましい。ポリエステル系繊維の混綿比率が50質量%未満であるとシートの風合いが硬くなり、身体に沿いにくい問題がある。
【0022】
また、これら繊維の繊度は繊維構造体の形態安定性の点から、0.5dtex〜20dtexの範囲であることが好ましいが、より好ましくは、1.0dtex〜10dtexの範囲である。
【0023】
また、繊維構造体に用いられる前記ポリエステル系繊維は潜在捲縮性繊維であることが好ましく、特に熱収縮率の異なる複数の樹脂が相構造を形成した潜在捲縮性複合繊維であることが好ましい。潜在捲縮性複合繊維は、複数の樹脂の熱収縮率(又は熱膨張率)の違いに起因して、加熱により捲縮を生じる非対称又は層状(いわゆるバイメタル)構造を有する繊維である。複数の樹脂は、通常、軟化点又は融点が異なる。
潜在捲縮性を有するポリエステル系繊維としては、ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)と、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)との組み合わせであってもよい。特に、本発明の繊維構造体に用いる場合は好適な形態は不織布であるが、ウェブ形成後に捲縮を発現するタイプが好ましく、この点からも前記組み合わせが好ましい。
ウェブ形成後に捲縮が発現することにより、効率良く繊維同士が交絡し、より少ない融着点数でウェブの形態保持が可能となるため、高い柔軟性を実現できる。
【0024】
ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)は、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸などの対称型芳香族ジカルボン酸など)とアルカンジオール成分(エチレングリコールやブチレングリコールなどC2−4アルカンジオールなど)との単独重合体であってもよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2−4アルキレンテレフタレート系樹脂などが使用され、通常、固有粘度0.6〜0.7の一般的なPET繊維に用いられるPETが使用される。
【0025】
一方、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)では、前記ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)の融点又は軟化点、結晶化度を低下させる共重合成分、例えば、非対称型芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸成分や、ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)のアルカンジオールよりも鎖長の長いアルカンジオール成分及び/又はエーテル結合含有ジオール成分が使用できる。これらの共重合成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの成分のうち、ジカルボン酸成分として、非対称型芳香族カルボン酸(イソフタル酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など)、脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸などのC6−12脂肪族ジカルボン酸)などが汎用され、ジオール成分として、アルカンジオール(1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどC6−12アルカンジオールなど)、(ポリ)オキシアルキレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシC2−4アルキレングリコールなど)などが汎用される。これらのうち、イソフタル酸などの非対称型芳香族ジカルボン酸、ジエチレングリコールなどのポリオキシC2−4アルキレングリコールなどが好ましい。さらに、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)は、C2−4アルキレンアリレート(エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートなど)をハードセグメントとし、(ポリ)オキシアルキレングリコールなどをソフトセグメントとするエラストマーであってもよい。
【0026】
変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)において、ジカルボン酸成分として、融点又は軟化点を低下させるためのジカルボン酸成分(例えば、イソフタル酸など)の割合は、ジカルボン酸成分の全量に対して、例えば、1〜50モル%、好ましくは5〜50モル%、さらに好ましくは15〜40モル%である。ジオール成分として、融点又は軟化点を低下させるためのジオール成分(例えば、ジエチレングリコールなど)の割合は、ジオール成分の全量に対して、例えば、30モル%以下、好ましくは10モル%以下(例えば、0.1〜10モル%)である。共重合成分の割合が低すぎると、充分な捲縮が発現せず、捲縮発現後の布帛の形態安定性と伸縮性とが低下する。一方、共重合成分の割合が高すぎると、捲縮発現性能は高くなるが、安定に紡糸することが困難となる。
【0027】
変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)は、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸成分、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオール成分などを併用して分岐させてもよい。
【0028】
捲縮性複合繊維の横断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、一般的な中実断面形状である丸型断面や異型断面[偏平状、楕円状、多角形状、3〜14葉状、T字状、H字状、V字状、ドッグボーン(I字状)など]に限定されず、中空断面状などであってもよいが、通常、丸型断面である。
【0029】
捲縮性複合繊維の横断面構造としては、複数の樹脂に形成された相構造、例えば、芯鞘型、海島型、ブレンド型、並列型(サイドバイサイド型又は多層貼合型)、放射型(放射状貼合型)、中空放射型、ブロック型、ランダム複合型などの構造が挙げられる。これらの横断面構造のうち、加熱により自発捲縮を発現させ易い点から、相部分が隣り合う構造(いわゆるバイメタル構造)や、相構造が非対称である構造、例えば、偏芯芯鞘型、並列型構造が好ましい。
【0030】
潜在捲縮性複合繊維の平均繊度は、例えば、0.1〜50dtexの範囲から選択でき、好ましくは0.5〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtex(特に1.5〜3dtex)である。繊度が細すぎると、繊維そのものが製造し難くなることに加え、繊維強度を確保し難い。また、捲縮を発現させる工程において、綺麗なコイル状捲縮を発現させ難くなる。一方、繊度が太すぎると、繊維が剛直となり、十分な捲縮を発現し難くなる。
【0031】
本発明で用いられる潜在捲縮性複合繊維は、熱処理を施すことにより、捲縮が発現(顕在化)し、略コイル状(螺旋状又はつるまきバネ状)の立体捲縮を有する繊維となる。
加熱前の捲縮数(機械捲縮数)は、例えば、0〜30個/25mm、好ましくは1〜25個/25mm、さらに好ましくは5〜20個/25mmである。加熱後の捲縮数は、例えば、30個/25mm以上(例えば、30〜200個/25mm)であり、好ましくは35〜150個/25mm、さらに好ましくは40〜120個/25mmであり、45〜120個/25mm(特に50〜100個/25mm)であってもよい。
【0032】
以下に実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例により何等限定されるものではない。なお本発明における繊維構造体の物性、および保温性評価は以下の方法により測定されたものを意味する。
【0033】
[繊維構造体の目付(g/m2)]
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」を参考に、全てのサンプルについて幅17cm×長さ33cmのサイズに切断し測定し、この値から目付を算出した。
目付=測定重量/測定面積 (g/m2
【0034】
[繊維構造体の厚さ(mm)、見掛け密度(g/cm3)]
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」を参考に、全てのサンプルについて押え圧;12g/m2、押え板;1インチφの測定器で厚さを測定し、この値と目付の値とから見掛け密度を算出した。
見掛け密度=目付/厚み (g/cm3
【0035】
[繊維構造体の空隙率(体積%)]
下記式から空隙率を算出した。
空隙率=(1−(見掛け密度/繊維比重))×100 (体積%)
【0036】
[繊維構造体の吸水率(%)]
JIS L1907「吸水率」に準じて測定した。5cm×5cm角サイズに切り出し、質量(成形体質量)を測定する。このサンプルを水中に30秒間沈めておき、その後引き上げて、空気中に1つの角を上にした状態で1分間吊して表面の水を切った後、質量(吸水後質量)を測定し、以下の式に基づいて算出した。
吸水率=(吸水後質量−成形体質量)/成形体質量×100 (%)
【0037】
[繊維構造体の放水率(%)]
吸水率を測定したサンプルを、5分間吊して表面の水を切った後、質量(吸水後質量)を測定し、前記保水率と同様に算出、5分後と1分後の保水率の割合を以下の式に基づいて算出した。
放出率=(1−(1分後吸水率/5分後吸水率))×100 (%)
【0038】
[繊維構造体の保温性評価]
繊維構造体を前腕皮膚の上に被せ、42℃のお湯をかけた後、1分間での保温状態を官能的に評価した。保温性評価は、以下の様な皮膚感覚で評価した。また、自着性については、繊維構造体が重なり合った時に互いの面間で自着性(その全面が互いに係絡性)が感じられるか、前腕にシートを1周半巻きつけた時に自着性があるか官能的に評価した。

・保温性 皮膚感覚 ◎;非常に温かい
○;温かい
△;どちらともいえない
×;温かくない

・自着性 捲った感覚 ○;ある
×;なし
【0039】
[実施例1]
湿熱接着性繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含有量44モル%、鹸化度98.4モル%)である芯鞘型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「ソフィスタ」、繊度3dtex、繊維長51mm、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm、捲縮率13.5%)を準備した。
一方、潜在捲縮性繊維として、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂(A成分)と、イソフタル酸20モル%及びジエチレングリコール5モル%を共重合した変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B成分)とで構成されたサイドバイサイド型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「PN−780」、1.7dtex×51mm長、機械捲縮数12個/25mm、130℃×1分熱処理後における捲縮数62個/25mm)を準備した。前記芯鞘型複合ステープル繊維(湿熱接着性繊維)と、前記サイドバイサイド型複合ステープル繊維(潜在捲縮性複合繊維)とを、質量比で、潜在捲縮性複合繊維/湿熱接着性繊維=70/30の割合で混綿した後、カード法により目付約130g/m2のカードウェブをシートとして作製し、次いで、50メッシュ、幅500mmのステンレス製エンドレス金網を装備したベルトコンベアに移送した。尚、このベルトコンベアの金網の上部には同じ金網を有するベルトコンベアが装備されており、それぞれが同じ速度で同方向に回転し、これら両金網の間隔を任意に調整可能なベルトコンベアを使用した。
次いで、下側のベルトコンベアに備えられた水蒸気噴射装置ヘカードウェブを導入し、この装置から0.2MPaの高温水蒸気をカードウェブの厚さ方向に向けて通過するように(垂直に)噴出して水蒸気処理を施し、目付130g/m、厚み3.6mmの不織布状の繊維構造体を作製し、評価を行なった。
結果を表1に示す。
【0040】
[実施例2]
実施例1と同様に、一般的なフリース生地( ポリエステル100% サイズ 幅約17cm×長さ約33cm )を用いて、実施例1と同様な評価を行なった。
結果を表1に示す。
【0041】
[実施例3]
実施例1と同様に、一般的なキルト芯( ポリエステル100% サイズ 幅約17cm×長さ約33cm )を用いて、実施例1と同様な評価を行なった。
結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
実施例1と同様に、従来の綿タオルとして、市販のフェイスタオル( 綿100% サイズ 幅約17cm×長さ約33cm )を用いて、実施例1と同様な評価を行なった。
結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1からわかるように、合成繊維で構成され、空隙率90〜99体積%、密度0.01〜0.2g/cm、厚み2mm以上の条件を全て満足し、かつ吸水率が800%以上である実施例1〜3の繊維構造体は保温性が優れたものとなる。
一方、吸水率が800%未満(711%)である比較例1の繊維構造体は保温性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の保温シートは、半身浴に該保温シートを上半身に装着すれば、長時間お湯につかっていても、適切な体温調整がなされるため、特に、冬場等、上半身が冷めて浴槽内のお湯をかけたり、シャワーをかける等の面倒な体温調整が不要となり、季節や風呂場内の温度変動等に左右されることが軽減される。
このような本発明の保温シートは介護用、半身浴用、シャワー浴用など幅広い用途に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に合成繊維から構成され、空隙率90〜99体積%、密度0.01〜0.2g/cm3、かつ厚み2mm以上の繊維構造体からなる保温シートであって、該繊維構造体の保水率が800%以上である保温シート。
【請求項2】
前記繊維構造体の放水率40%以上である請求項1に記載の保温シート。
【請求項3】
前記合成繊維が主としてポリエステル系繊維からなる請求項1または2に記載の保温シート。
【請求項4】
前記ポリエステル系繊維が潜在捲縮性である請求項3に記載の保温シート。
【請求項5】
前記合成繊維が主として湿熱接着繊維からなる請求項1または2に記載の保温シート。
【請求項6】
湿熱接着繊維が主としてエチレンービニルアルコール系共重合体系繊維からなる請求項5に記載の保温シート。
【請求項7】
前記合成繊維がポリエステル系繊維と湿熱接着繊維との混綿であり、混綿比率(質量比)が50/50〜90/10からなる請求項1〜6のいずれかに記載の保温シート。