説明

保温具

【課題】使用感が良好で、足の出し入れが容易な保温具を提供する。
【解決手段】保温具10は、上部に足を出し入れ可能な上開口部22が設けられた筒状の収容部12を備え、該上開口部22を介して収容部12に収容した足を温めるものであって、前記収容部12は、可撓性を有する軟質ウレタンフォーム16の表面および裏面に表地布帛18および裏地布帛20をフレームラミネートにより接合した板状の保温材14で構成され、前記保温材14は、前記表地布帛18および裏地布帛20における収容部12の上下方向に沿う引張荷重が、前記軟質ウレタンフォーム16における収容部12の上下方向に沿う引張荷重より大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足を収容して保温する保温具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保温性のある生地で足を被覆して、足を保温するものとして、ハイソックス等の靴下やブーツ等の靴がある。これらは、足にフィットさせた生地で体からの放熱を抑えている。しかし、足と生地とが当接するため、熱気がこもり蒸れ易い。また、生地が体表面から放出された汗を吸収し、この汗の気化熱でかえって冷えることもある。
【0003】
足との間に空間を設けて足を被覆して保温する保温具としては、保温性のある生地を袋状に形成したものがある。例えば、特許文献1では、中綿入りのキルティング生地や起毛生地で袋状に形成された本体の上部に足入れ用の開口部が設けられている。開口部は、両足を出し入れし得る程度にゴム紐で窄められている。また、特許文献2の保温具は、表地および裏地を上方に開口する略足形に縫い合わせた外郭と、外郭の内部に設けられた銀繊維で織った発熱布地とを有している。そして、外郭と発熱布地との間には板材が設けられ、保温具の形状を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−159917号公報
【特許文献2】特開2008−237356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1の保温具では、保温具の形状を保持する構成がないため、自重によって本体が変形してしまい足入れ用の開口部の位置および形状が定まらない。このため、スムーズに足を開口部から出し入れすることは困難である。引用文献2の保温具では、外郭と発熱布地との間に設けられた板材で形状を保持するため、足を出し入れする開口は所定の位置および形状に保たれている。しかし、硬質で剛性の大きい板材が用いられているため、板材に足の動きの自由度が制限されて使用感が悪い、という問題がある。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、使用感が良好で、足の出し入れが容易な保温具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る保温具は、
上部に足を出し入れ可能な開口部が設けられた筒状の収容部を備え、開口部を介して収容部に収容した足を温める保温具であって、
前記収容部は、可撓性を有する軟質ウレタンフォームの表面および裏面に布帛を接合した板状の保温材で構成され、
前記保温材は、前記布帛における収容部の上下方向に沿う引張荷重が、前記軟質ウレタンフォームにおける収容部の上下方向に沿う引張荷重より大きく設定されたことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、断熱性のある軟質ウレタンフォームの表面および裏面に布帛が接合された保温材で収容部が形成されるから、保温具の保温性を確保することができる。また、軟質ウレタンフォームにおける収容部の上下方向に沿った引張荷重よりも布帛における収容部の上下方向に沿った引張荷重が大きいため、軟質ウレタンフォームに貼り付けられた布帛によって軟質ウレタンフォームを上下方向に補強することになるから、収容部を自立させることができる。これにより、足を出し入れする開口部の位置および形状が保たれ易く、足の出し入れがスムーズとなる。また、収容部を構成する保温材が、軟質ウレタンフォームの両面に接合された布帛で構成されるため、布帛が軟質ウレタンフォームの可撓性を損ない難いから、収容部が可撓性を有している。このため、収容部に収容される足の動きの自由度が増すから、使用感を向上し得る。更に、芯材として硬質部材を設ける必要がないから、硬質部材による足の動作の制限を避け得る。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記保温材は、前記布帛における前記収容部の周方向に沿う引張荷重が、前記布帛における前記収容部の上下方向に沿う引張荷重より小さく設定されたことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、布帛における収容部の周方向に沿う引張荷重が、上下方向に沿う引張荷重より小さいため、収容部の上下方向に比べて、収容部における周方向の変形が許容されるから、収容部に入れた足の動きの自由度が増して、使用感を更に向上し得る。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記収容部は、1枚の前記保温材を筒状に成形して形成されたことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、収容部が、連続した1枚の保温材を筒状に成形して形成されたものであるためバランスがとり易く、収容部の形状がより保持され易い。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記保温材は、前記軟質ウレタンフォームの表側および裏側にフレームラミネートにより布帛を貼り付けたことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、フレームラミネートにより軟質ウレタンフォームの両面に布帛を直接張り合わせるため、接着剤や両面テープ等の接着層により、使用感が阻害されない。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る保温具によれば、使用感が良く、形状が保持され易い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例に係る保温具を、一部破断した状態で示す斜視図である。
【図2】実施例に係る保温具の使用状態を示す側面図である。
【図3】図1の保温具のX−X線断面図である。
【図4】実施例に係る保温具の背面図であって、(a)は開閉部が閉じた状態を示し、(b)は開閉部が開いた状態を示す。
【図5】別実施例の保温具を示す斜視図である。
【図6】別実施例の保温具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る保温具につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」とは、使用者が保温具に足を収容した状態を基準として指称するものとする。すなわち、足を出し入れする側が上側であり、収容された足の裏に接する側が下側である。また、使用者のつま先が収容される側が前側で、使用者の踵が収容される側が後側で、使用者の右足側が右側で、使用者の左足側が左側である。
【0014】
(実施例)
実施例では、図2に示すように、椅子等に座った状態の使用者Mの両足(膝下)を収容して温める保温具10を例に挙げて説明する。図1に示すように、保温具10は、上部に足を出し入れ可能な上開口部22(開口部)が設けられた中空筒状の収容部12を備えている。収容部12の内部が、使用者の足を前後左右から囲繞して収容する収容空間24となっている。また、収容部12の下部には、平板状の底部26が設けられている。すなわち、保温具10は、収容部12と底部26とからバケット状に形成されている。
【0015】
前記収容部12は、断面が角の丸い略四角形の筒状であって、上面および下面の開放した略四角柱形状となっている。収容部12は、可撓性を有する板状の軟質ウレタンフォーム16の表面および裏面に布帛18,20を接合した板状の保温材14で構成されている。そして、収容部12は、1枚の保温材14を筒状に曲げて、合わせ目28を接合し形成される。すなわち、収容部12の前面、右面、後面および左面は、1枚の保温材14で構成される。
【0016】
図1に示すように、前記保温材14は、収容部12の内側(収容空間24側)を構成する裏地布帛20と、収容部12の外側を構成する表地布帛18とで軟質ウレタンフォーム16を挟んだサンドイッチ構造となっている。保温材14は、熱可塑性の軟質ウレタンフォーム16の表面を熱溶融して、織物または編物からなる表地布帛18および裏地布帛20を接着させた、所謂フレームラミネートによって積層される。そして、布帛18,20における収容部12の上下方向(縦方向)に沿う引張荷重が、前記軟質ウレタンフォーム16における収容部12の上下方向に沿う引張荷重より大きく設定されて、布帛18,20が軟質ウレタンフォーム16に比べて上下方向に伸縮し難くなっている。また、布帛18,20における収容部12の周方向(横方向)に沿う引張荷重が、布帛18,20における上下方向に沿う引張荷重より小さく設定されて、布帛18,20が上下方向より周方向に伸縮し易くなっている。なお、実施例の保温具10の引張荷重(JIS L1096:2010 A法(ストリップ法)に準拠して、試験片幅30mm、つかみ具間距離100mm、試験速度150mm/分の条件で、30%伸び時の荷重を測定)は、軟質ウレタンフォーム16が8.4N、表地布帛18における収容部12の上下方向に沿った方向が35.8N、表地布帛18における収容部12の周方向に沿う方向が3.0N、裏地布帛20における収容部12の上下方向に沿った方向が17.8N、裏地布帛20における収容部12の周方向に沿う方向が1.2Nとなっている。
【0017】
図1および図4に示すように、収容部12における保温材14の前記合わせ目28は、収容部12における後面の左右方向の略中央位置に上下に亘って設けられている。保温材14の合わせ目28では、内側における周方向の端部である内側端部30と、外側における周方向の端部である外側端部32とが、前後に重なる状態で接合されている。すなわち、右側から延出する内側端部30と、左側から延出する外側端部32とが、内側端部30の後面と外側端部32の前面とを当接した状態で接合されている。保温具10では、収容部12における合わせ目28の下端から、上下方向の3分の1程度が縫合されて(図1および図4の折れ線は縫い目を示す)、内側端部30と外側端部32とが接合されている。そして、収容部12における合わせ目28の上端から上下方向の略3分の2は縫合されず、内側端部30と外側端部32とが開閉可能な開閉部34となっている。すなわち、収容部12の後面上部に上下方向に切れ目が設けられている。開閉部34は、内側端部30の後面と外側端部32の前面とが約40mm幅を当接させて重なっている。開閉部34は、接合されていないため、下方の接合部分を支点として左右方向に互いに離れるように開いたり、互いに重ね合わせて切れ目を閉じるようになっている。
【0018】
収容部12における使用者Mの足首付近の高さには、内側にくびれたくびれ部36が設けられている(図2参照)。保温具10では、保温材14を摘んで縫い込むことで収容部12の前面における下端から上方約100mmの部分が、前方から後方に向かってくびれている。このため、収容部12におけるくびれ部36の下方に、前方に張り出した張出部38が設けられると共に、収容空間24の下部に前方に張り出した張出空間40が設けられる。該張出空間40は、使用者Mのつま先に対応している。
【0019】
前記底部26は、収容部12における下部の開口を下側から覆うように形成される(図3参照)。底部26は、収容部12の下縁に縫製されて、収容部12の下部開口を封止する底部布帛25と、収容部12の下部開口に合わせて形成されて、底部布帛25に載置されると共に収容部12の下部に嵌合される底板27とから構成される。底部布帛25は、織物や編物であれば特に限定されないが、収容部12を形成する保温材14よりも柔軟で通気性を有することが好ましい。底板27は、防水性のある合成樹脂で形成されて、収容部12および底部布帛25に対して着脱可能に設けられている。防水性のある合成樹脂としては、断熱性の高い独立気泡樹脂発泡体が好ましく、ポリオレフィン系フォームを採用することができ、例えば10mm程度の厚みを有するポリエチレンフォームや、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)フォーム等を採用し得る。
【0020】
前記保温材14の軟質ウレタンフォーム16は、発泡倍率が約10〜60倍、見かけ密度が16〜100kg/m程度に設定されており、柔らかくて復元性がある(塑性変形しない)。軟質ウレタンフォーム16は、気泡が連続する連続気泡構造であるが、断熱性の観点から通気性の低いものが好ましい。軟質ウレタンフォーム16は、厚み3〜30mmが好ましく、6〜20mmがより好ましい。また、収容部12の高さ(上下寸法)に対する軟質ウレタンフォーム16の厚み比率は、1/100〜1/20が好ましい。軟質ウレタンフォーム16の硬さ(JIS K6400−2 D法)は、40〜200Nが好ましく、70〜150Nがより好ましい。軟質ウレタンフォーム16の伸び率(JIS K6400−5 3)は、30〜350%が好ましく、50〜200%がより好ましい。軟質ウレタンフォーム16の引張荷重(JIS L1096:2010 A法(ストリップ法)に準拠して、試験片幅30mm、つかみ具間距離100mm、試験速度150mm/分の条件で、30%伸び時の荷重を測定)は、4〜40Nが好ましく、8〜30Nがより好ましい。なお、保温具10は、軟質ウレタンフォーム16が、硬さ(JIS K6400−2 D法)70N以上で、厚み3mm以上かつ収容部12の高さに対して1/100以上となるよう構成することで、自重によって撓むことを抑制して形状を保持し易くできる。また、保温具10は、軟質ウレタンフォーム16が硬さ(JIS K6400−2 D法)200N以下で厚みが30mm以下となるよう構成することで、折りたたみ易く、運搬時や未使用時の扱いを容易にし得る。
【0021】
表地布帛18および裏地布帛20としては、編物や織物で以下の特性を有するものを採用し得る。例えば、保温具10では表地布帛18として、スエード調のポリエステル起毛品を採用し、裏地布帛20として、短毛ボア生地を採用する。また、表地布帛18および裏地布帛20は、通気性に関わらず採用し得るが、軟質ウレタンフォーム16より通気性の低い布帛18,20を用いることで、軟質ウレタンフォーム16を通気性の低い布帛18,20で挟むことになるから、軟質ウレタンフォーム16に気体が保持され易くなり保温具10の保温作用を向上し得る。軟質ウレタンフォーム16より通気性の低い裏地布帛20を採用することで、収容空間24の気体の熱が外部に放出されるのを抑制し得る。表地布帛18の収容部12における上下方向に沿う伸び率は、50〜130%が好ましく、70〜110%がより好ましい。表地布帛18の収容部12における周方向に沿う伸び率は、140〜230%が好ましく、160〜210%がより好ましい。表地布帛18の収容部12における周方向に沿う伸び率は、収容部12における上下方向に沿う伸び率よりも大きいことが好ましい。また、表地布帛18の収容部12における上下方向に沿う引張荷重は、20〜60Nが好ましく、25〜45Nがより好ましい。表地布帛18の収容部12における周方向に沿う引張荷重は、0.5N〜40Nが好ましく、1〜30Nがより好ましい。裏地布帛20の収容部12における上下方向に沿う伸び率は、10〜100%が好ましく、30〜70%がより好ましい。裏地布帛20の収容部12における周方向に沿う伸び率は、50〜150%が好ましく、80〜120%がより好ましい。裏地布帛20の収容部12における周方向に沿う伸び率は、収容部12における上下方向に沿う伸び率よりも大きいことが好ましい。また、裏地布帛20の収容部12における上下方向に沿う引張荷重は、10〜50Nが好ましく、15〜45Nがより好ましい。裏地布帛20の収容部12における周方向に沿う引張荷重は、0.5N〜40Nが好ましく、1〜30Nがより好ましい。なお、表地布帛18および裏地布帛20の引張荷重は、JIS L1096:2010 A法(ストリップ法)に準拠して、試験片幅30mm、つかみ具間距離100mm、試験速度150mm/分の条件で、30%伸び時の荷重を測定している。伸び率は、引張荷重と同様の条件で、最大荷重時における伸び率を測定している。
【0022】
(実施例の作用)
保温材14の収容部12を形成する保温材14が、連続気泡を有する軟質ウレタンフォーム16の両面に表地布帛18および裏地布帛20を接合して構成されるため、保温具10の保温性を確保することができる。また、軟質ウレタンフォーム16の引張荷重よりも、表地布帛18および裏地布帛20における収容部12の上下方向に沿った引張荷重が大きいため、軟質ウレタンフォーム16に貼り付けられた表地布帛18および裏地布帛20によって軟質ウレタンフォーム16を上下方向に補強することになる。すなわち、表地布帛18および裏地布帛20の弾力によって収容部12を自立させることができる。これにより、自重による収容部12の変形を抑制することができ、足を出し入れする上開口部22の位置および形状が保持され易く、足の出し入れがスムーズになる。また、軟質ウレタンフォーム16に張り合わせられた表地布帛18および裏地布帛20がある程度の伸縮性および柔軟性を有しているので、軟質ウレタンフォーム16の可撓性を損ない難いから、保温具10(収容部12)が全体として可撓性を残している。このため、収容された足が収容部12に当接した際に収容部12が柔軟性を備えて変形可能であるから、足の触れた感触がソフトであると共に足の動きの自由度が増して使用感を向上させ得る。更に、保温具10の形状を保持させるために硬質な板材等を設ける必要がなく、板材が用いられることで足の可動範囲が制限されない。
【0023】
保温具10は、表地布帛18および裏地布帛20における収容部12の周方向に沿う引張荷重が、上下方向に沿う引張荷重より小さいため、収容部12の形状保持性を確保しつつ収容部12における周方向の変形が許容されるから、収容部12に収容した足の自由度が増して使用感を更に向上させ得る。また、収容部12が1枚の保温材14を筒状に曲げて形成されているため、収容部12のつり合いがとり易く保温具10をより自立させ易い。更に、軟質ウレタンフォーム16にフレームラミネートによって表地布帛18および裏地布帛20が張り合わせられているため、接着剤や両面テープ等の接着層により、使用感が阻害されない。
【0024】
保温具10は、両足を収容空間24に収容し、足と収容部12とが密着しないので、熱気がこもり難く蒸れを抑制し得る。また、放出された汗が収容部12に吸収され難いので、収容部12が吸収した汗の気化熱による冷えを抑制し得る。また、収容部12の後面に開閉部34が設けられているため、足を出し入れする際に開閉部34が開くことで上開口部22が広がって足の出し入れが容易となる(図4(b)参照)。収容部12が形状保持性を有しているため、開閉部34として内側端部30と外側端部32とを縫合しない切れ目を収容部12に設けても、該切れ目が自重で撓み難いから開閉部34の閉じた形状を保持し易い。開閉部34は内側端部30と外側端部32とが互いに重なり合っているので、上開口部22が広がって開閉部34が左右に開いた際に、開閉部34における収容空間24と外部との連通を抑制することができる(図4(b)参照)。このため、足の出し入れをし易くしつつ保温具10の保温性を確保し得る。
【0025】
保温具10は、収容部12における使用者Mの足首付近に設けられたくびれ部36によって、くびれ部36の下方に形成された使用者Mのつま先に対応する張出空間40の空気が外部に流出するのを抑制することができるから、保温性を向上し得る。また、底板27が収容部12に対して着脱可能に設けられているため、汚れた際に取り外して交換または洗浄することができる。更に、底板27が防水性のある合成樹脂で着脱可能に形成されているため、泥が付着したり湿ったりした状態の靴を履いたまま使用しても、底板27を取り外して簡単に洗浄することができる。底部布帛25は、収容部12を形成する保温材14よりも柔軟で通気性を有するようにすれば、底板27を取り外した保温具10の洗濯が容易となる。更に、メッシュ状の底部布帛25を採用すれば、洗濯後の乾燥が一層容易となる。
【0026】
(別実施例)
次に、別実施例に係る保温具50について説明する。なお、別実施例の説明では、実施例と相違する部分についてのみ説明を行い、実施例と同じ部分については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0027】
図5に示すように別実施例に係る保温具50の収容部12は、断面形状が略円形の筒状であって、上面および下面の開放した略円柱形状となっている。収容部12の下部には、縫製によって前方に張り出した張出部38が形成されている。図6に示すように、保温具50の収容部12は、後面の上端部が前面の上端部に比べ低く設定されている。
【0028】
収容部12の後面には、開閉部34を固定する固定部52が設けられている。該固定部52は、外側端部32(保温具50では、外側端部32は右側から延出し、内側端部30は左側から延出する)の縁から周方向に延在した舌状ベルト54と、収容部12における舌状ベルト54と対応する位置に設けられたベルト通56とから構成される。舌状ベルト54は、収容部12の保温材14を延出させて収容部12と一体となっており、縁部がパイピングにより補強されている。ベルト通56は、舌状ベルト54の上下で収容部12に接合されたアーチ状に形成さている。舌状ベルト54をベルト通56に差し込むことで開閉部34が固定される。
【0029】
(別実施例の作用)
保温具50における収容部12の後面上端が、前面上端より低く設定されているため、後方から足を出し入れし易い。これにより、収容部12の高さを高くしてより保温性の高い保温具50とすることができる。また、開閉部34を固定する固定部52が設けられているため、開閉部34の内側端部30および外側端部32を所望の位置関係で固定することができるから、開閉部34からの外気の流入を抑制して保温具50の保温性を向上し得る。また、舌状ベルト54とベルト通56とから固定部52が構成されるから、固定部52を簡単な構成とし得る。更に、舌状ベルト54を収容部12から延在する保温材14で形成したことで、保温材14の弾力により、舌状ベルト54を容易にベルト通56に挿入し得る。舌状ベルト54の縁部がパイピングにより補強されているため、舌状ベルト54をベルト通56に更に容易に挿入し得る。
【0030】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、以下のように変更することもできる。
(1)実施例では、両足を収容する保温具を例に挙げたが、片足を収容して保温する保温具であってもよい。
(2)実施例では、断面が略四角形および略円形の筒状の収容部を採用するが、収容部は足を収容可能な筒状であればよい。
(3)実施例では、1枚の保温具を筒状に曲げて構成される収容部を採用するが、保温材で筒状に形成されていればよく、保温材で形成された複数のパーツを接合して筒状に形成してもよい。
(4)実施例では、表地布帛の引張荷重が、裏地布帛の引張荷重より大きい保温材を採用するが、表地布帛の引張荷重が裏地布帛の引張荷重より小さい保温材を採用してもよい。布帛における収容部の周方向に沿う引張荷重が、布帛における上下方向に沿う引張荷重より大きく設定されているが、周方向の引張荷重が上下方向の引張荷重より小さくてもよい。また、実施例では、表地布帛と裏地布帛とを異なる布帛で構成したが、同じ布帛を用いてもよい。
(5)実施例では、収容部における保温材の合わせ目を、前側端部と後側端部とを前後に重ねて縫合しているが、前側端部と後側端部とを左右に当接させて接着剤等で接合してもよい。
(6)実施例では、収容部における保温材の合わせ目に開閉部を設けているが、合わせ目とは異なる位置に開閉部を設けてもよく、複数設けてもよい。開閉部の切れ目の大きさは、上下方向の3分の1に限られず、収容部の形状が保持されていればよく、例えば上下方向の略2分の1であってもよい。また、開閉部を設けない構成であってもよい。
(7)実施例では、収容部の全体を同程度の硬さの軟質ウレタンフォームを有する保温材で構成するが、収容部における後面の全面または上部を、他の部分と比べて柔らかい軟質ウレタンフォームを有する保温材で形成してもよい。収容部における後面がより変形し易くなるから、足の出し入れが容易となる。この場合、他の部分と比べて柔らかい軟質ウレタンフォームの硬さ(JIS K6400−2 D法)は、15〜40Nが好ましい。このような柔らかい軟質ウレタンフォームを、収容部における後面上端の内側縁部に沿って取り付けてもよく、収容空間への外気の流入を抑制することができる。
(8)実施例では、開閉部における内側端部と外側端部とが40mm幅で重なる構成を採用するが、開閉部における収容空間と外部との連通を抑制できればよく、30〜100mm幅で重なる構成とするのが好ましい。
(9)実施例では、くびれ部が設けられた収容部を採用するが、くびれ部を設けない収容部であってもよい。また、実施例では縫合でくびれ部を形成しているが、足首付近が内側にくびれていればよく、例えば紐で結んでもよい。
(10)実施例では、底部布帛として、保温材より柔軟で通気性を有する布帛を採用するが、保温材と同じ布帛を用いてもよい。実施例では、収容部に対して着脱可能に設けられた底板を採用するが、底板は取り外しできない構成であってもよく、底板がない構成であってもよい。底部を保温材で形成してもよく、底部が収容部と一体に形成されていてもよい。また、保温具の底部がない構成であってもよい。
(11)実施例では、舌状ベルトを収容部から延在した保温材で形成するが、舌状ベルトを別部材で形成してもよい。また、実施例では、固定部として舌状ベルトとベルト通を採用するが、固定部は開閉部を固定することができればよく、例えば面ファスナーや、磁石で固定するものであってもよい。
(12)実施例では、収容部の後面に開閉部が設けられているが、収容部の左面や右面に設けられていてもよい。特に別実施例のように、開閉部に舌状ベルトおよびベルト通からなる固定部を設ける場合には、左面または右面に開閉部を設けると舌状ベルトをベルト通に差し込み易い。
(13)収容部を上方に向かうにつれて内側(収容空間側)に傾斜させて構成することで、上開口部を撓み難くし得る。
【符号の説明】
【0031】
10 保温具,12 収容部,14 保温材,16 軟質ウレタンフォーム
18 表地布帛(布帛),20 裏地布帛(布帛),22 上開口部(開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に足を出し入れ可能な開口部が設けられた筒状の収容部を備え、開口部を介して収容部に収容した足を温める保温具であって、
前記収容部は、可撓性を有する軟質ウレタンフォームの表面および裏面に布帛を接合した板状の保温材で構成され、
前記保温材は、前記布帛における収容部の上下方向に沿う引張荷重が、前記軟質ウレタンフォームにおける収容部の上下方向に沿う引張荷重より大きく設定された
ことを特徴とする保温具。
【請求項2】
前記保温材は、前記布帛における前記収容部の周方向に沿う引張荷重が、前記布帛における前記収容部の上下方向に沿う引張荷重より小さく設定された請求項1記載の保温具。
【請求項3】
前記収容部は、1枚の前記保温材を筒状に成形して形成された請求項1または2記載の保温具。
【請求項4】
前記保温材は、前記軟質ウレタンフォームの表側および裏側にフレームラミネートにより布帛を貼り付けた請求項1〜3の何れか一項に記載の保温具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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