説明

保温編物または織物およびその製造方法

【課題】毛玉の発生を抑制し、起毛時に裏糸を傷つけなく、洗濯を重ねても、ストレッチ性を損わない保温性のよい保温編物や保温織物を提供する。
【解決手段】繊維糸2を起毛してこの起毛した繊維糸2を芯糸3にカバーリングした糸を用いて編成または織成した保温編物または織物であり、好ましくは、この起毛したカバーリングヤーン6を裏糸7とし、表糸とともに編組した靴下、肌着、手袋に使用される保温編物、あるいは、ワイシャツ、ズボン、敷布、枕カバー、タオルに使用される保温織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下、肌着、手袋等の保温編物または織物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、靴下や肌着に保温性を有する編物が提案され、市販されている。その多くは、合成繊維で編成した編地の裏側に起毛ブラシで起毛処理して保温性を有するように処理されている。
【0003】
しかし、起毛した編物は保温性がよいものの、編地の裏側から表糸を剛毛のブラシを押し当てて起毛しているため、毛玉の発生を高めるとともに、起毛時に裏糸を傷つけ、洗濯を重ねると、ストレッチ性を損ねるという課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、毛玉の発生を抑制し、起毛時に裏糸を傷つけなく、洗濯を重ねても、ストレッチ性を損わない保温性のよい保温編物や保温織物を開発することが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、繊維糸を起毛してこの起毛した繊維糸を芯糸にカバーリングして編物または織物を編成または織成したことをことを特徴とする保温編物または織物を提供するにある。
【0006】
また、繊維フィラメントの繊維糸を起毛してこの繊維フィラメントの繊維糸を芯糸にカバーリングしたカバーリングヤーンを裏糸とし、表糸とともに編組して靴下、肌着、手袋のいずれかを編成したことを特徴とする保温編物を提供するにある。
【0007】
さらに、繊維糸がポリエステルやポリプロピレン、ナイロンを含む合成繊維のマルチフィラメントで、芯糸がポリウレタン糸を含むモノフィラメントの弾性糸であることを特徴とする保温編物を提供するにある。
【0008】
またさらに、繊維糸を起毛して、この起毛した繊維糸を芯糸にカバーリングし、このカバーリングヤーンを編物機または織物機に供給して編成または織成して編物または織物を製造することを特徴とする保温編物または織物の製造方法を提供するにある。
【0009】
さらにまた、繊維フィラメントの繊維糸を起毛して、この起毛した繊維フィラメントの繊維糸を芯糸にカバーリングし、このカバーリングヤーンを裏糸として表糸とともに編機に供給して編成して靴下、肌着、手袋のいずれかの編物を製造することを特徴とする保温編物の製造方法を提供するにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあっては、請求項1のように、繊維糸を起毛してこの起毛した繊維糸を芯糸にカバーリングして編物または織物を編成または織成したことによって、編物または織物をその編地や織地の裏側を剛毛のブラシで起毛しなくて起毛を有する編物または織物を編成または織成でき、編物または織物を毛玉の発生がなく、良好な保温状態の編物または織物を得ることができる。
【0011】
また、請求項2のように、繊維フィラメントの繊維糸を起毛してこの繊維フィラメントの繊維糸を芯糸にカバーリングしたカバーリングヤーンを裏糸とし、表糸とともに編組して靴下、肌着、手袋のいずれかを編成したことによって、上記のように靴下、肌着、手袋の編物に起毛による毛玉の発生がなく、また起毛時に裏糸を傷つけるおそれがなく、洗濯を重ねてもストレッチ性を損わなずに、肌に接する内面側に起毛による多量の空気層を形成できて、良好な保温状態の靴下、肌着、手袋の編物を得ることができる。
【0012】
さらに、請求項3のように、繊維糸がポリエステルやポリプロピレン、ナイロンを含む合成繊維のマルチフィラメントで、芯糸がポリウレタン糸を含むモノフィラメントの弾性糸であることによって、上記のような良好な保温状態の靴下、肌着、手袋等の編物を保温状態よく、伸縮性よく、編成することができる。
【0013】
またさらに、請求項4のように、繊維糸を起毛して、この起毛した繊維糸を芯糸にカバーリングし、このカバーリングヤーンを編物機または織物機に供給して編成または織成して編物または織物を製造することによって、上記のように編物または織物をその編地や織地の裏側を剛毛のブラシで起毛しなくて起毛を有する編物または織物を編成または織成でき、編物または織物を毛玉の発生がなく、良好な保温状態の編物または織物を得ることができる。
【0014】
さらにまた、請求項5のように、繊維フィラメントの繊維糸を起毛して、この起毛した繊維フィラメントの繊維糸を芯糸にカバーリングし、このカバーリングヤーンを裏糸として表糸とともに編機に供給して編成して靴下、肌着、手袋のいずれかの編物を製造することによって、上記のように靴下、肌着、手袋の編物に起毛による毛玉の発生がなく、また起毛時に裏糸を傷つけるおそれがなく、洗濯を重ねてもストレッチ性を損わなずに、肌に接する内面側に起毛による多量の空気層を形成できて、良好な保温状態の靴下、肌着、手袋の編物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例の繊維糸の起毛説明図、
【図2】同上の起毛した繊維糸を芯糸にカバーリング状態の説明図、
【図3】同上の一実施例の靴下の側面図、
【図4】同上の編組織の拡大図、
【図5】同上の他の編組織の拡大図、
【図6】同上の他の実施例の編組織の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の保温編物または織物およびその製造方法は、繊維糸を起毛してこの起毛した繊維糸を芯糸にカバーリングして編物または織物を編成または織成することを特徴としている。
【0017】
保温編物1または織物は、図1のように繊維糸2を起毛して、図2のようにこの起毛した繊維糸2を芯糸3にカバーリングして図3のように靴下等の所要の編物または織物を編成または織成するようにしている。
【0018】
上記繊維糸2としては、16〜96本のマルチフィラメントの50〜150デニールのポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンを含む合成繊維フィラメントが利用するのが好ましく、芯糸3としてはモノフィラメントの20〜70デニールのポリウレタン糸を含む合成繊維の弾性糸を利用するのが好ましい。必要により、天然繊維糸を利用することもできる。
【0019】
上記マルチフィラメントの合成繊維糸2は、図1のように細径の筒状等の内周部に微少の引っ掻き突起や凸凹、ブラシ等を設けた起毛の起毛器4に供給して、この細径の筒状等の起毛器4に挿通してマルチフィラメントの合成繊維糸2を引っ掻くようにして起毛するようにしている。起毛5は、0.02〜0.5mm位、好ましくは0.3〜0.5mm位のできるだけ長く起毛するのが好ましく、合成繊維糸2のまわりに均一状に発生させるように図1のように繊維糸2を揺動回転させるようにして引き出したり、供給したりして起毛器4に挿通し、マルチフィラメントの繊維糸2に適宜の接触圧で接触させて起毛することができる。起毛器4に挿通するマルチフィラメントの繊維糸2の送り込みまたは引き出しの供給速度、接触角度、接触圧は、可変として所要の起毛5を得るようにできる。
【0020】
このように起毛した繊維フィラメントの繊維糸2は、図2のようにカバーリング装置(図外)に供給し、芯糸3のまわりに適宜の間隔で巻回していってカバーリングして、いわゆるFTYのカバーリングヤーン6を形成し、起毛のカバーリングヤーン6によって空気層を保有するようにして保温性を有するようにできる。上記繊維糸2としては、17〜96本のマルチフィラメントの合成繊維フィラメントが利用でき、マルチフィラメント数が多い程、起毛率が多くて保温性を高くできる。実用的には、24〜72本位のマルチフィラメント位が好ましい。
【0021】
そして、たとえば、図3のように靴下の保温編物1を編成するには、図4のように上記のようにして形成したカバーリングヤーン6を裏糸7とし、表糸8とともに丸編機等に給糸し、平編み、メッシュ編み、ゴム編みなどの所要の編組織として形成していくことができる。シャツ、ショーツ等の肌着、腹巻、手袋、帽子等の編物についても、所要の繊維糸を選別して同様に編成することができる。なお、公知や周知の模様編みやカラフルな色模様の編物とすることもできる。
【0022】
なお、図5のように表糸8と裏糸7にゴム糸9や所要の補助糸を併用し、平編み、メッシュ編み、ゴム編みなどの編組織として上記した編物を編成することもできる。これらは、特に適正な締め付け用に、靴下の履口部や長袖の手首部、タイツ等の胴回部や足首部に利用するのが好ましい。
【0023】
また、表糸8も上記したように起毛して、図6のように裏糸7とともに編組して靴下を編成することができ、表糸8を起毛することによって、さらに保温性を高めることができる。
【0024】
このように繊維糸2を起毛してこの起毛した繊維糸2を芯糸3にカバーリングして編物を編成するため、編物の編地の裏側を剛毛のブラシで起毛しなくて起毛を有する編物を編成でき、編物を毛玉の発生がなく、また起毛時に裏糸を傷つけるおそれがなく、洗濯を重ねてもストレッチ性を損わなずに、良好な保温状態の編物を得ることができる。
【0025】
特に、繊維フィラメントの繊維糸2を起毛してこの繊維フィラメントの繊維糸2を芯糸3にカバーリングしたカバーリングヤーン6を裏糸7とし、表糸8とともに編組して編成すると、肌に接する内面側に起毛5による多量の空気層を形成できて、良好な保温状態の靴下、肌着、手袋、腹巻、帽子の編物を得ることができる。
【0026】
また、繊維フィラメントの繊維糸2がポリエステルやポリプロピレン、ナイロンを含む合成繊維フィラメントで、芯糸3がポリウレタン糸を含む弾性糸とすると、起毛状態を密に形成できて、伸縮性よく編物を編成することができる。
【0027】
さらに、上記では、編物について説明したが、ワイシャツ、ズボン、敷布、枕カバー、タオル等の織物についても同様に織成することができる。
【実施例】
【0028】
図1〜図4は、本発明の一実施例を示すものである。保温編物1は靴下編成の一実施例で、繊維糸2を36束、75デニールのマルチフィラメントのポリエステル糸を図1のように起毛器4に給糸してマルチフィラメントのナイロン糸を引っ掻き部で引っ掻いて起毛し、この起毛した繊維糸2を図2のように30デニールのモノフィラメントのポリウレタン糸の弾性糸の芯糸3にカバーリング(いわゆるFTY)し、このFTYのカバーリングヤーン6によって保温性を保有するようにしている。
【0029】
そして、図4のように上記カバーリングヤーン6を裏糸7とし、綿アクリル混紡の40番手の表糸8とともに所要の丸編機に給糸して、たとえば爪先から足首まで平編みの編組織として編成し、図3のように靴下の保温編物1を形成している。編成して所要の縫製処理をした後、所要のヒートセット処理して製品化するものである。
【0030】
なお、靴下の履口部に、図5のように表糸8と裏糸7の間にゴム糸9を給糸して挿入し、適宜な締め付けの編組織とするなど、適正な締め付け力に編成することができる。
【0031】
また、図6のように表糸8を上記したように起毛して、起毛した表糸8を上記したように裏糸7とともに給糸して靴下を編成することもできる。表糸8を起毛することによって、さらに保温性を高めることができる。
【0032】
繊維フィラメントの繊維糸2を起毛してこの起毛した繊維糸2を芯糸3にカバーリングして靴下を編成するため、編地の裏側を剛毛のブラシで起毛しなくて毛玉の発生がなく、また起毛時に裏糸を傷つけるおそれがなく、洗濯を重ねてもストレッチ性を損わなずに、良好な保温状態の靴下を得ることができる。特に、肌に接する内面側に起毛による多量の空気層を形成できて、良好な保温状態の靴下を得ることができるものである。
【0033】
また、繊維糸2をマルチフィラメントとして、起毛状態を密に形成でき、芯糸3にカバーリングして編成するため、多量の空気層を形成できて、良好な保温状態の靴下を得ることができる。
【0034】
なお、上記マルチフィラメントの合成繊維糸2は、図1のように細径の筒状やローラ等の起毛器4に送給してマルチフィラメントの合成繊維糸2を引っ掻くようにして起毛するようにしたが、マルチフィラメントの合成繊維糸2を毛羽立つようにする起毛器等を利用して行うことも可能である。
【0035】
上記では、靴下の編物について説明したが、シャツ、ショーツ等の肌着や、手袋、腹巻、帽子等の編物についても、所要の繊維糸を選別して同様に編成することができ、さらにワイシャツ、ズボン、敷布、枕カバー、タオル等の織物についても同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、靴下、ショーツ、シャツ、タイツ等の肌着、腹巻、手袋、帽子等の編物や、ワイシャツ、ズボン、敷布、枕カバー、タオル等の織物の保温を要する編物や織物に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…保温編物 2…繊維糸 3…芯糸 4…起毛 5…カバーリングヤーン 7…裏糸 8…表糸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】実用新案登録第3071873号公報
【特許文献2】実用新案登録第3079280号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維糸を起毛してこの起毛した繊維糸を芯糸にカバーリングして編物または織物を編成または織成したことを特徴とする保温編物または織物。
【請求項2】
繊維フィラメントの繊維糸を起毛してこの繊維フィラメントの繊維糸を芯糸にカバーリングしたカバーリングヤーンを裏糸とし、表糸とともに編組して靴下、肌着、手袋のいずれかを編成した請求項1に記載の保温編物。
【請求項3】
繊維糸がポリエステルやポリプロピレン、ナイロンを含む合成繊維のマルチフィラメントで、芯糸がポリウレタン糸を含むモノフィラメントの弾性糸である請求項1または2に記載の保温編物。
【請求項4】
繊維糸を起毛して、この起毛した繊維糸を芯糸にカバーリングし、このカバーリングヤーンを編物機または織物機に供給して編成または織成して編物または織物を製造することを特徴とする保温編物または織物の製造方法。
【請求項5】
繊維フィラメントの繊維糸を起毛して、この起毛した繊維フィラメントの繊維糸を芯糸にカバーリングし、このカバーリングヤーンを裏糸として表糸とともに編機に供給して編成して靴下、肌着、手袋のいずれかの編物を製造する請求項1に記載の保温編物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−64210(P2013−64210A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203995(P2011−203995)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(399117349)日本編物株式会社 (1)
【Fターム(参考)】