説明

保湿ティシュペーパー

【課題】本発明の課題は、趣向性が高く、高級感のある保湿ティシュペーパーを提供することにある。
【解決手段】ティシュペーパーの表層ティシュペーパー2と裏層ティシュペーパー3のうち、表層ティシュペーパー2のみに水性インクで印刷を施した後、インクを乾燥後、疎水性成分と親水性成分を成分とする保湿剤をティシュペーパーの非印刷面に塗布し、24時間以上置いて保湿剤を馴染ませた後、加工してティシュペーパーカートンへ充填された保湿ティシュペーパーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷が施され、且つ保湿剤を含有する保湿ティシュペーパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ティシュペーパーに図柄を印刷し、趣向性を高めたティシュペーパー商品がいろいろと開示されている。また、ティシュペーパーなどの薄葉紙に印刷するインクとして、毒性がなく印刷後も柔らかく、裏抜けやカールの発生しない水溶性インクが開示されている(特許文献1を参照)。
【0003】
また、保湿性のウェットティシュは、従来、不織布が広く使われており(特許文献2及び特許文献3を参照)、不織布にエンボス加工を施したり(特許文献2を参照)、三層構造として保湿性を高めたウェットティシュが開示されている(特許文献3を参照)。さらに、印刷インキと保湿液を混合したものをパターン状に塗布した薄葉紙も開示されている(特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−176487号公報
【特許文献2】特開2005−146451号公報
【特許文献3】特開2005−126834号公報
【特許文献4】特開2001−252214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、趣向性が高く、高級感のある保湿ティシュペーパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明者らは保湿剤を使用しても滲まない水溶性インクを使用し、印刷された保湿ティシュペーパーを発明した。本発明により以下の保湿ティシュペーパーが提供される。
【0007】
[1]ティシュペーパーが複数枚重ねられ、当該複数枚重ねのティシュペーパーのうち、表層ティシュペーパーに水溶性インクを用いて印刷が施されるとともに、裏層ティシュペーパーに保湿剤が塗布されている保湿ティシュペーパー。
【0008】
[2]前記水溶性インクが、バインダー樹脂としてエポキシ変性ポリアミド樹脂を含有する前記[1]に記載の保湿ティシュペーパー。
【0009】
[3]前記水溶性インクにより図柄及び色が1種類以上印刷された前記[1]又は[2]に記載の保湿ティシュペーパー。
【0010】
[4]前記保湿剤として疎水性物質及び親水性物質を含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載の保湿ティシュペーパー。
【0011】
[5]前記ティシュペーパー100質量部に対して前記保湿剤が7.6〜10.6質量部含有されている前記[4]に記載の保湿ティシュペーパー(但しこの比率は保湿剤重量/原紙重量を示す。)。
【発明の効果】
【0012】
ティシュペーパーに印刷を施し、保湿剤を含ませることで、趣向性を高め、高級感を出した保湿ティッシュペーパーが得られた。また、印刷にバインダーとしてエポキシ変性ポリアミド樹脂を含む水溶性インクを使用することにより、保湿剤を含ませても印刷が滲まないようにすることができ、保湿剤として疎水性物質と親水性物質を用いることで、保湿を保ちながらも印刷された図柄が滲まないようにすることができる。また、薄いティシュペーパーに保湿剤を含有させても、塗布する保湿剤の量を調節することにより、水分を含むことによる破れやすさを解消した、保湿ティシュペーパーが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の保湿ティシュペーパーの一例を示す図である。
【図2】本発明の保湿ティシュペーパーを製造する印刷保湿装置を示す模式図である。
【図3】本発明の保湿ティシュペーパーをティシュペーパーカートンに充填して使用した際の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0015】
図1に本発明の印刷された保湿ティシュペーパーの一例を示す。図1(a)は表層ティシュペーパー2と裏層ティシュペーパー3が重なった状態を示す。図1(b)に表層ティシュペーパー2と裏層ティシュペーパー3を離した図を示す。表層ティシュペーパー2と裏層ティシュペーパー3の二層からなり、表層ティシュペーパー2に図柄が施されている。
【0016】
ティシュペーパーは二枚重ねでもよいし、三枚以上重ねてもよい。三枚重ねにすれば、保湿剤を含んだときの強度がより強くなり、特に好ましい。
【0017】
使用するティシュペーパーは、保湿剤により水分を含んでも十分な強度を持つように、通常のティシュペーパーが11g/m程度であるのに対して、保湿ティシュペーパーは、それよりも坪量を高め、好ましくは、15g/m〜18g/mがよい。例えば、16.5g/mとすることにより強度も保ちつつ肌触りがさらに良好な保湿ティシュペーパーとなる。
【0018】
ティシュペーパーのソフトネスは、紙の横方向のソフトネスが好ましくは、10mN/10cm〜50mN/10cmであり、最適な条件は、30mN/10cmである。
【0019】
ティシュペーパーの引っ張り強度は、JIS P8113:1998で測定し、測定サンプルを25mm幅で測定したときに、縦方向2.0N〜4.0N、横方向0.5N〜1.5Nであるほうが好ましい。
【0020】
ティシュペーパーに使用する原料は、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)30〜50%、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)70〜50%であることが好ましい。
【0021】
印刷の図柄と色は利用者の趣向に合わせ、選択することができる。子供向けに各種キャラクターを印刷してもよいし、花柄、動物、植物やその他郷土玩具などいろいろな絵、イラスト、マーク、記号などが選択可能である。
【0022】
ティシュペーパーは、印刷を施すため、細かいクレープとして紙表面を滑らかにし、鮮明な印刷ができるようにされている。また、細かなクレープとすることで手触り感が向上されて高級感が出ている。
【0023】
印刷に用いるインクは、水溶性インクで顔料、水性ワニス(合成樹脂と水)、添加剤を含有し、溶剤としてエタノールを4%未満含有している。また、バインダー樹脂としてエポキシ変性ポリアミド樹脂を含有する。このエポキシ変性ポリアミド樹脂は、ポリアルキレンポリアミンを必須成分とするポリアミン成分とジカルボン酸成分とを、アミノ基が過剰に存在する条件のもとで反応させて生成されるポリアミドポリアミンに、更にエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ変性ポリアミド樹脂である。
【0024】
この水溶性インクを用いて、ティシュペーパーなどの薄紙に印刷を施せば、柔らかい風合いを損なわず、インクの裏抜けや紙のカールを起こすことなく印刷が行える。
【0025】
印刷は二枚重ねのティシュペーパーの表層のみに行うことにより、インク代の節約によるコストダウンと生産性の向上、資源の有効活用を図るとともに、用いる水溶性インクを選択することにより、印刷された図柄が早く乾燥するようにされている。
【0026】
保湿剤は、疎水性物質として抗菌剤又は消毒剤としての作用を持つパラベンを含み、且つ親水性物質として保湿性能を有するグリセリン、ソルビトールを含有する。また、保湿効果を強化するため、保湿性強化成分を10〜20%の割合で含有する。この保湿剤を用いることにより、ソルビトールが空気中の水分を吸収して保湿すると同時に、グリセリンがティシュペーパーからの水分の蒸発を抑え、適度な保湿性が保たれるようにされている。
【0027】
保湿剤は、ティシュペーパー100質量部に対して7.6〜10.6質量部含有するようにティシュペーパーに含まれている。すなわち二枚重ねのティシュペーパー16.5g/mに対して保湿剤を2.5〜3.5g/m塗布している。この範囲で保湿剤を塗布すれば、ティシュペーパーが水分を含み、強度が落ちても破れることはない。
【0028】
保湿剤の塗布量は、二枚重ねのティシュペーパー16.5g/mに対して2.5〜3.5g/mがよく、2.5g/m未満の塗布量では、保湿性が低下してしっとり感がなくなる。また、3.5g/mを超える塗布量では水分含量が多すぎてしまい、ティシュペーパーが破れてしまう。
【0029】
前記特徴を有するティシュペーパーを用いることと、前記特徴の水溶性インクを用いて印刷を行うことと、前記特徴の保湿剤をティシュペーパーに含ませることとで、インクが滲まずに保湿剤を含有したティシュペーパーが得られる。
【0030】
図2に印刷保湿装置の図を示し、本発明の保湿ティシュペーパーの製造方法を説明する。印刷保湿装置50は、上流から下流に向けて、裏層ティシュロール20、中層ティシュロール21、表層ティシュロール22、第一印刷部23、第二印刷部24、第三印刷部25、第四印刷部26、印刷の次には、印刷乾燥部27、保湿剤塗布部28、ティシュペーパー巻き取り部29で構成される。
【0031】
ティシュペーパーを供給する場合、二枚重ねの場合は裏層ティシュロール20と表層ティシュロール22の二つのロールを使い、三枚重ねとする場合は、裏層ティシュロール20と表層ティシュロール22の間に、中層ティシュロール21が配置され、三つのロールが使用される。
【0032】
印刷は、業界で既知のいずれの回転印刷塗布であってよい。これらには、石版印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、及び好ましくはフレキソ印刷が挙げられる。第一印刷部23、第二印刷部24、第三印刷部25及び第四印刷部26は、円周状に配置され、送られてくるティシュペーパーが第一印刷部23から第四印刷部26に印刷ドラム31上を移動していくと同時に、順次印刷が行われる。各印刷部は、印刷面とインクを供給するインクタンクから構成される。
【0033】
印刷乾燥部27は、ローラーでティシュペーパーを長く広げ、ティシュペーパーの印刷面が空気に触れるようにし、印刷したインクを乾燥させる構造となっている。印刷から保湿剤塗布までの時間は、少なくとも4秒程度とるのが望ましい。保湿剤塗布部28は、保湿剤塗布面と保湿剤タンクから構成される。また、ティシュペーパー巻き取り部29は、保湿されたティシュペーパーを、印刷時よりも若干速い速度で巻き取るように構成される。
【0034】
保湿ティシュペーパーの一連の工程を説明すると以下のような流れになる。裏層ティシュロール20、表層ティシュロール22の二層が重なり、第一印刷部23に入る。第一印刷部で一つ目の印刷を行い、第二印刷部24、第三印刷部25、第四印刷部26でそれぞれ異なる図柄や色でティシュペーパーに印刷が行われる。印刷後、ティシュペーパーは、印刷乾燥部27を通り、この間に印刷されたインクが乾燥される。印刷が乾燥した後に、保湿剤を塗布する保湿剤塗布部28を通り、印刷の滲みを防止するため、ティシュペーパーの非印刷面に保湿剤が塗布される。その後、ティシュペーパー巻取り部29で印刷と保湿を施したティシュペーパーが巻き取られる。
【0035】
好ましい印刷時のティシュペーパーの速度及び保湿後の巻き取り速度は、印刷時が202m/分に対し、巻き取り速度は、206m/分である。
【0036】
保湿剤塗布後の巻き取り時の速度を、ティシュペーパーの印刷速度より約2%速くすることにより、保湿剤の塗布により若干伸びたティシュペーパーが、しわが入らずに綺麗に巻き取られる。
【0037】
保湿剤を塗布後、巻き取ったティシュペーパーのロールを厚さ0.02mmのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどのプラスチック製フィルムの非透水性部材で密封し、少なくとも24時間置くことで、保湿剤を全体に馴染ませ、保湿ティシュペーパーの品質を高めている。この製造方法で製造された保湿ティシュペーパーのロールを、その後加工してティシュペーパーカートンに充填する。
【0038】
保湿ティシュロールの巻き取りの大きさは、幅1200mm、直径1100mmで、保湿剤を馴染ませるフィルムの巻き方は、巻き取ったティシュペーパーをパレットの上に立てた後、巻き取りの天面に四角い大き目のフィルムを置き、フィルムで胴巻きにする。保湿剤を馴染ませる保存方法は、フィルムを巻いた保湿ティシュロールをパレットに載せたまま、床面又は棚に保管して保湿剤を馴染ませる。
【0039】
図3に、本発明の保湿ティシュペーパー10をティシュペーパーカートン60に充填し、使用している状態の図を示す。保湿ティシュペーパー10がティシュペーパーカートン60からティシュペーパーの二枚重ねを一組として、一組ずつ取出せる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の印刷された保湿ティシュペーパーは、印刷する図柄が子供向けのキャラクターや花柄、郷土玩具の図柄などが選択でき、広い年齢層に対応した製品開発が可能であり、保湿されていることで、花粉症や鼻炎などにより、ティシュペーパーの利用頻度が高い人において、鼻周辺の皮膚を傷めることがなくなり、利用者の利便性が高まる。
【符号の説明】
【0041】
2:表層ティシュペーパー、3:裏層ティシュペーパー、10:保湿ティシュペーパー、20:裏層ティシュロール、21:中層ティシュロール、22:表層ティシュロール、23:第一印刷部、24:第二印刷部、25:第三印刷部、26:第四印刷部、27:印刷乾燥部、28:保湿剤塗布部、29:ティシュペーパー巻取り部、31:印刷ドラム、50:印刷保湿装置、60:ティシュペーパーカートン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティシュペーパーが複数枚重ねられ、当該複数枚重ねのティシュペーパーのうち、表層ティシュペーパーに水溶性インクを用いて印刷が施されるとともに、裏層ティシュペーパーに保湿剤が塗布されている保湿ティシュペーパー。
【請求項2】
前記水溶性インクが、バインダー樹脂としてエポキシ変性ポリアミド樹脂を含有する請求項1に記載の保湿ティシュペーパー。
【請求項3】
前記水溶性インクにより図柄及び色が1種類以上印刷された請求項1又は2に記載の保湿ティシュペーパー。
【請求項4】
前記保湿剤として疎水性物質及び親水性物質を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の保湿ティシュペーパー。
【請求項5】
前記ティシュペーパー100質量部に対して前記保湿剤が7.6〜10.6質量部含有されている請求項4に記載の保湿ティシュペーパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−196476(P2012−196476A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−123102(P2012−123102)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【分割の表示】特願2007−18139(P2007−18139)の分割
【原出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】