説明

保湿ペーパーの製造装置及び保湿ペーパーの製造方法

【課題】保湿ペーパーに塗布された印刷インクの固化の影響により保湿ペーパーの肌触りが悪くなることを防止し,かつ,印刷インクの滲みが少ない保湿ペーパーの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】基本的に,保湿ペーパーに印刷を施した後,当該保湿ペーパーの印刷面1aに保湿剤を塗布することにより,印刷インクが固化した場合であっても保湿ペーパー全体の肌触りが劣化することを防止し,しかも印刷インクの滲みを低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,保湿ペーパーの製造装置及び保湿ペーパーの製造方法に関する。具体的に説明すると,本発明は,例えば文字,図形,又は模様の印刷が施された保湿ペーパーの製造装置及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,保湿剤を含有した保湿ペーパーが知られている。この保湿ペーパー,例えば,ティシュペーパーやトイレットペーパーのような衛生用紙として用いられる。また,従来から,保湿ペーパーに,例えば文字や,図形,模様の印刷を施すことが知られている(特許文献1,特許文献2)。
【0003】
特許文献1には,印刷インキとローション薬液を混合したものを薄葉紙に塗布して,印刷が施された保湿ペーパーを得ることが記載されている。
【0004】
また,特許文献2には,ティシュペーパーに印刷を施した後,ティシュペーパーの非印刷面に保湿剤を塗布することにより,印刷が施された保湿ペーパーを得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−252214号公報
【特許文献2】特開2008−183127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,ペーパーにインクを塗布して印刷を施すと,通常,インクの乾燥に伴ってインクの固化が進行し,インクが塗布された印刷面の肌触りが悪くなるという不具合が生じていた。
【0007】
この点,特許文献1に開示された技術は,印刷インキとローション薬液を混合したものを薄葉紙に塗布することとしているが,この混合液に含まれる印刷インキが固化すると,ペーパー全体の肌触りが悪くなるという問題を有している。さらに,特許文献1の技術は,印刷インキとローション薬液を混合して薄葉紙に塗布するものであるため,印刷インキが薄葉紙に付着した際に,インキの滲みが生じ,印刷部分の外観が悪くなるという問題がある。
【0008】
また,特許文献2に開示された技術は,ティシュペーパーの非印刷面に保湿剤を塗布することとしているが,ティシュペーパーの印刷面が使用者の肌に接した場合,良好でない肌触りを与える恐れがある。
【0009】
このため,現在では,保湿ペーパーに塗布された印刷インクの固化の影響により保湿ペーパーの肌触りが悪くなることを防止し,かつ,印刷インクの滲みが少ない保湿ペーパーの製造装置及び製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで,本発明の発明者は,上記の従来発明の問題点を解決する手段について鋭意検討した結果,保湿ペーパーに印刷を施した後,当該保湿ペーパーの印刷面に保湿剤を塗布することにより,印刷インクが固化した場合であっても保湿ペーパー全体の肌触りが悪くなることを防止し,しかも印刷インクの滲みを低減させることができるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。
具体的に本発明は,以下の構成を有する。
【0011】
本発明の第1の側面は,保湿ペーパーを製造するための製造装置に関するものである。
本発明の製造装置は,印刷部21と保湿剤塗布部22を備える。
印刷部21は,保湿ペーパーの原紙に印刷を施すための手段である。
保湿剤塗布部は,印刷部21により印刷が施された原紙の印刷面に,保湿剤を塗布するための手段である。
これにより,本発明は,印刷が施された保湿ペーパーを製造することができる。
なお,保湿ペーパーの原紙は,一枚のペーパーにより構成されるものであってもよいし,ペーパーを2枚以上重ね合わせることにより形成されるものであってもよい。
【0012】
上記構成のように,原紙に印刷を施した後,その印刷面に,保湿剤を塗布することにより,インクの固化に伴い,保湿ペーパーの肌触りが悪くなるという従来の問題を解決することができる。また,本発明では,インクと保湿剤を同時又は混合して原紙に塗布するのではなく,インクの塗布後に,保湿剤を塗布するものであるため,インクが保湿剤に溶け出してインクの滲みが生じるという不具合を解消することができる。
【0013】
本発明の製造装置は,印刷部21により印刷が施された原紙に,張力を付加する第1の張力付加部23を,さらに備えることが好ましい。
【0014】
通常,ペーパーにインクを塗布して印刷を施した場合,ペーパーに塗布されたインクが固化することにより,ペーパーの印刷部分に皺が生じ,外観の見栄えが悪くなるという問題があった。また,複数枚のペーパーを重ね合わせて一組の保湿ペーパーを形成する場合,印刷が施されたペーパーに皺が生じると,この皺が原因となり,複数のペーパーの間に空隙が生じる恐れがある。複数のペーパーの間に空隙が生じると,保湿剤を塗布した際に,複数のペーパーの全てに保湿剤が効果的に浸透せず,保湿剤の含浸ムラが生じるという問題があった。この点,上記構成のように,印刷部21により印刷が施された原紙に張力を付加して,印刷皺を引き延ばすことにより,保湿ペーパーの外観を見栄え良くすることができる。また,保湿ペーパーが複数枚のペーパーを重ね合わせて形成されたものであっても,全てのペーパーに保湿剤を効果的に浸透させることができる。
【0015】
本発明の製造装置は,保湿剤塗布部22により保湿剤が塗布された原紙に,張力を付加する第2の張力付加部24を,さらに備えることが好ましい。
【0016】
上記構成のように,保湿剤塗布部22によって保湿剤を塗布した後に,原紙に対して張力を付加することにより,例えば原紙が複数枚のペーパーを積層させて形成されたものであっても,保湿剤を原紙全体に満遍なく浸透させることができる。
【0017】
本発明の製造装置は,印刷部21により印刷が施された原紙を乾燥させる乾燥部25を,さらに備えることが好ましい。乾燥部25は,原紙を自然乾燥させるものであってもよいし,例えばドライヤーのような空気乾燥装置を用いて原紙を乾燥させるものであってもよい。
【0018】
通常,原紙に塗布されたインクが完全に乾燥していない状態で,その印刷面に保湿剤を塗布すると,インクが保湿剤に溶け出して,滲む可能性がある。この点,上記構成のように,印刷部21により印刷が施された原紙を,一旦乾燥させてから,保湿剤を塗布することにより,インクの滲みをより効果的に解消することができる。また,乾燥部25において原紙全体を乾燥状態としておくことにより,原紙に塗布される保湿剤が,原紙全体に浸透し易くなる。従って,保湿ペーパーを見栄え良く美麗に仕上げることができるとともに,保湿剤を効率良く原紙全体に浸透させることが可能になる。
【0019】
本発明の製造装置は,さらに,折畳加工部26と,カートン詰め部27を備えることが好ましい。折畳加工部26は,保湿剤が塗布された原紙を,所定幅に切断し,折り畳んだ後に,所定長さに切断するための手段である。また,カートン詰め部27は,折り畳まれるとともに所定長さに切断された保湿ペーパー10を,カートンに詰め込むための手段である。
【0020】
保湿ペーパーが,例えばティシュペーパーのようなカートン詰めされる衛生用紙として使用される場合,その製造工程においては,複数のペーパーを重ね合わせた後,巻き取りロールによって巻き取り,他の装置へ搬送することが一般的である。一方,上記構成のように,複数のペーパーを重ね合わせた後,その下流において,折り畳み加工を施し,カートンに詰める作業を一連の製造装置で行うことにより,製造工程を省略することができ,結果として製造コストを低減させることが可能になる。
【0021】
本発明の第2の側面は,保湿ペーパーを製造するための製造方法に関する。
本発明の製造方法は,印刷工程と,保湿剤塗布工程を含む。
印刷工程は,保湿ペーパーの原紙に印刷を施す工程である。
保湿剤塗布工程は,印刷工程において印刷が施された原紙の印刷面に,保湿剤を塗布する工程である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば,保湿ペーパーに塗布された印刷インクの固化の影響により保湿ペーパーの肌触りが悪くなることを防止し,かつ,印刷インクの滲みが少ない保湿ペーパーの製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は,本発明の第1の実施形態に係る製造装置の概略側面図である。
【図2】図2は,本発明の第2の実施形態に係る製造装置の概略側面図である。
【図3】図3は,2枚のペーパーが積層した保湿ペーパーの例を示す斜視図である。図3(a)は,2枚のペーパーを積層した状態を示している。図3(b)は,2枚のペーパーを分離した状態を示している。
【図4】図4は,3枚のペーパーが積層した保湿ペーパーの例を示す斜視図である。図4(a)は,3枚のペーパーを積層した状態を示している。図4(b)は,3枚のペーパーを分離した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
なお,本明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味している。
【0025】
(1) 第1の実施形態
図1は,本発明の第1の実施形態に関する製造装置20の全体構成を示す概略側面図である。第1の実施形態の製造装置20は,複数のペーパーを重ね合わせて保湿ペーパーを形成するための装置である。例えば,保湿ペーパーは,第1のペーパー1と第2のペーパー2を重ね合わせて形成することが好ましく,さらに,第3のペーパー3を重ね合わせて形成されるものであってもよい。
【0026】
図1に示されるように,製造装置20は,その上流側に,第1の巻出しローラ31と第2の巻出しローラ32が配置されている。第1の巻出しローラ31からは第1のペーパー1が送り出され,第2の巻出しローラ32からは第2のペーパー2が送り出される。第1のペーパー1及び第2のペーパー2は,重ね合わせ部35において,互いに重ね合わされて,保湿ペーパーの原紙となる。重ね合わせ部35の下流側には印刷部21が配置されており,印刷部21は,原紙に対して印刷を施す。印刷部21の下流側には乾燥部25が配置されており,乾燥部25は,印刷が施された原紙を乾燥させる。また,乾燥部25の下流側には第1の張力付加部23が配置されており,張力付加部23は,原紙に対して張力を与え,印刷皺を引き延ばす。第1の張力付加部23の下流側には,保湿剤塗布部22が配置されており,保湿剤塗布部22は,原紙のうち,印刷が施された印刷面に対して保湿剤を塗布する。さらに,保湿剤塗布部22の下流側には第2の張力付加部24が配置されており,第2の張力付加部24は,原紙に塗布された保湿剤を満遍なく浸透させるために,原紙に対して張力を付加する。そして,第2の張力付加部24を通過した原紙は,巻き取りローラ36により巻き取られる。その後,巻き取りローラ36により巻き取られた原紙は,ロール状のまま他の周知の加工装置にセットされ,保湿ペーパーとして成形される。
【0027】
図1に示されるように,第1のペーパー1及び第2のペーパー2が重ね合わされた原紙は,重ね合わせ部35の下流に位置するピンチローラ34を経て,さらに下流側へ搬送される。原紙は,上述したように,最終的に巻き取りローラ36によって巻き取られる。このため,原紙は,第1の巻出しローラ31及び第2の巻出しローラ32から,巻き取りローラ36まで繋がっている。原紙は,製造装置20の適所に存在するピンチローラ34や,補助ローラ37,巻き取りローラ36などによって,搬送方向(ペーパーの長手方向)に一定の張力が与えられ,弛まずに搬送される。
【0028】
(1−1.巻出しローラ,原紙)
図1に示されるように,製造装置20の上流側には,第1の巻出しローラ31と,第2の巻出しローラ32が位置している。第1の巻出しローラ31には第1のペーパー1が保持されており,第2の巻出しローラ32には第2のペーパー2が保持されている。第1のペーパー1及び第2のペーパー2は,重ね合わせ部35において重ね合わされて,保湿ペーパーの原紙となる。
【0029】
本発明において,保湿ペーパーの原紙として使用される第1のペーパー1及び第2のペーパー2の種類は,特に限定されるものでなく,例えば衛生用紙の原紙として使用されている公知のものを広く採用することができる。衛生用紙の例は,ティシュペーパー,ちり紙,ペーパータオル,キッチンタオル,キッチンシート,あくとりシート,又はトイレットペーパーである。
【0030】
本発明の製造装置20において使用される原紙には,保湿剤が塗布されるため,保湿剤が塗布されても破断しにくい強度を持つものを採用することが好ましい。原紙の原料としては,例えば,針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を混合したものを採用することができる。原紙は,例えば,NBKPを30%〜90%含み,LBKPを10%〜70%含むものであることが好ましい。また,ペーパー一枚あたりの坪量は,例えば,11g/m〜19g/mや,13g/m〜18g/mであることが好ましく,15g/m〜17g/mであることが特に好ましい。
【0031】
また,本発明の製造装置20において使用される原紙には,印刷が施されるため,クレープが細かく紙表面が滑らかであるものを採用することが好ましい。また,原紙のヤンキードライヤーへの接触面を印刷面とすることが好ましい。これにより,印刷が鮮明になるとともに,手触りが良くなる。
【0032】
また,本発明の製造装置20において,第1のペーパー1として使用する紙の種類と,第2のペーパー2として使用する紙の種類は,異なるものとしてもよい。例えば,第1のペーパー1は印刷が施されるため,印刷インクを鮮明にするために,坪量を,例えば10g/m〜14g/mとすることが好ましい。一方,印刷が施されない第2のペーパー2は,保湿剤を豊富に含むことができるように,坪量を,例えば15g/m〜19g/mとすることが好ましい。
【0033】
(1−2.印刷部)
重ね合わせ部35の下流側には,印刷部21が位置している。印刷部21は,原紙に対して,印刷を施す機能を持つ。特に,図3に示された実施形態において,印刷部21は,第1のペーパー1に対して,印刷を施すものである。原紙の面のうち,印刷が施された面が,印刷面1aとなる。印刷部21としては,例えば,公知の回転印刷塗布装置を採用できる。例えば,印刷部21は,円筒状の印刷ドラム211と,印刷ドラム211の円周に配置された複数のプリンタ212を有する。そして,印刷部21は,印刷ドラム211に原紙を巻きつけながら,複数のプリンタ212によって,搬送されてくる原紙に対して,順次印刷インクを塗布していく。
【0034】
印刷部21により施される印刷の図柄や色は,利用者の趣向に合せて適宜変更可能である。例えば,複数のプリンタ212に印刷インクを供給するインクタンクには,それぞれ異なる色の印刷インクを充填しておくことにより,様々な色で印刷を施すことができる。これにより,利用者の趣向に合わせて,各種キャラクタや,花柄,動物柄,植物柄のような模様や,文字,記号,図形を描くよう自由に設定できる。
【0035】
印刷に用いられるインクは,油性又は水性を問わず,公知となっている種々のインクを用いることができる。印刷に用いられるインクには,例えば,水溶性インクであって,顔料,水性ワニス(合成樹脂と水),及び添加物を含有しており,溶剤としてエタノールを含有したものを用いることが好ましい。また,インクは,バインダー樹脂としてエポキシ変性ポリアミド樹脂を含有することが好ましい。エポキシ変性ポリアミド樹脂は,ポリアルキレンポリアミンを必須成分とするポリアミン成分とジカルボン酸成分を,アミノ基が過剰に存在する条件のもとで反応させて生成されるポリアミドポリアミンに,更にエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ変性ポリアミド樹脂である。このような水溶性インクを用いて,ペーパー印刷を施せば,柔らかい風合いを損なわず,かつインクの裏抜けや紙の縮れを抑制して印刷を行うことができる。
【0036】
(1−3.乾燥部)
印刷部21の下流側には,乾燥部25が位置している。乾燥部25は,原紙に塗布された印刷インクを乾燥させる機能を持つ。図1に示された例において,乾燥部25は,原紙を自然乾燥させるものである。乾燥部25は,ローラで原紙を長く広げて,原紙の印刷面1aが空気に触れるようにして搬送することにより,印刷したインクを乾燥させることができる構造になっている。
【0037】
乾燥部25は,印刷部21と第1の張力付加部23の間に位置しており,印刷部21から第1の張力付加部23までの間の乾燥時間は,例えば,4秒〜30秒,5秒〜20秒,又は6秒〜10秒であることが好ましい。原紙の印刷面1aに塗布された印刷インクは,4秒程度の時間で,確実に乾燥させることができる。
【0038】
また,乾燥部25としては,温風,冷風,又は常温風を原紙に対して送風するドライヤーを採用することもできる。原紙に対して機械的に風を送り込むことにより,印刷インクの乾燥を迅速に行うことができるとともに,印刷インクの発色も良好になる。
【0039】
(1−4.第1の張力付加部)
乾燥部25の下流側には,第1の張力付加部23が位置している。第1の張力付加部23は,印刷インクの固化により生じた皺を引き延ばす目的で,原紙に対して張力を付加する機能を有している。第1の張力付加部23としては,例えば,原紙をその搬送方向と直交する方向(直交方向)に押圧するロール状のテンションコントローラを採用できる。テンションコントローラは,原紙の搬送方向と直交する方向に上下駆動し,原紙の搬送方向に回転可能な構成を有しており,原紙に加えられる張力を調整することができる。これにより,原紙に対して張力を付加することができ,印刷インクが固化することにより生じた皺が引き延ばされる。
【0040】
第1の張力付加部23は,原紙の直交方向の破断荷重に対して,10%〜90%,20%〜80%,30%〜70%,又は40%〜60%の張力を付加することが好ましい。例えば,原紙の直交方向の破断荷重が100mm幅あたり60Nである場合,第1の張力付加部23により付加される張力は,100mm幅あたり6N〜54Nであることが好ましい。これにより,原紙を破断させずに,印刷インクの固化により生じた皺のみを引き延ばすことができる。
【0041】
第1の張力付加部23は,原紙のうち,印刷が施された第1のペーパー1側及び印刷が施されていない第2のペーパー側のいずれの方向から,原紙を押圧するものであってもよい。ただし,第1の張力付加部23が,第2のペーパー2側を押圧するように配置されることにより,張力を付加するに際し,第1のペーパーに塗布された印刷インクが滲んだり霞んだりするという不具合を防止できる。
【0042】
また,第1の張力付加部23は,原紙の両面から押圧ローラ(図示省略)で挟み込むことにより,原紙に対して張力を付加するものであってもよい。このような構造によっても,上記構造と同様に,原紙に生じた印刷皺を引き延ばすことが可能である。
【0043】
(1−5.保湿剤塗布部)
第1の張力付加部23の下流側には,保湿剤塗布部22が位置している。保湿剤塗布部22は,例えば保湿剤タンクと塗布部を有しており,原紙の印刷面1aに対して,保湿剤を塗布する機能を持つ。保湿剤塗布部22としては,例えば,ノズル式噴霧器や,ローター式噴霧器を採用することができる。ノズル式噴霧器は,ノズル内にて保湿剤に圧力を掛け,先細となった開口部から霧状の保湿剤を噴霧するタイプの噴霧器である。また,ローター式噴霧器は,ローターに複数枚のフィンが付設されており,ローターを高速回転させ,その遠心力によりフィンに付着した保湿剤を霧状に噴霧するタイプの噴霧器である。ただし,保湿剤塗布部22として使用される機器は,これらのものに限定されず,原紙の印刷面1aに対して保湿剤を塗布可能な機器であればよく,例えば,転写ローラを用いて原紙に対して保湿剤を塗布する機器や,その他公知の機器も採用可能である。保湿剤は,これらの機器によって,原紙の印刷面1aの全面に塗布されるものであることが好ましい。
【0044】
保湿剤塗布部22が塗布する保湿剤としては,一般的な保湿ペーパーに用いられる各種の液体を用いることができる。保湿剤としては,例えば,グリセリン,ジグリセリン,プロピレングリコール,1.3−ブチレングリコール,ポリエチレングリコール等の多価アルコール;ソルビトール,グルコース,キシリトール,マルトース,マルチトール,マンニトール,トレハロース等の糖類;グルコール酸系薬剤及びその誘導体;セタノール,ステアリルアルコール,オレイルアルコール等の高級アルコール;流動パラフィン等の中の一種又は二種以上の成分を含む液体(溶液であってもよい)を用いることができる。また,保湿剤塗布部22は,上記保湿剤に加えて,消毒剤,薬効成分を含む薬液,香料や着色剤を含む液体を,ペーパーに対して塗布することとしてもよい。
【0045】
保湿剤塗布部22により塗布される液体(保湿剤,その他液体を含む)の量は,最終的な製品である保湿ペーパー全体の質量のうち,保湿ペーパーに付着した液体の量が,例えば2〜30質量%,3〜25質量%,又は4〜20質量%となることが好ましい。液体の量を2重量%以上とすることで,保湿ペーパーにしっとり感を確実に発現させることが可能になる。また,液体の量を30重量%以下とすることで,液体の量が多すぎて紙力が弱くなり,紙切れ等が発生するという不具合を効果的に防止できる。
【0046】
(1−6.第2の張力付加部)
保湿剤塗布部22の下流側には,第2の張力付加部24が配置されている。第2の張力付加部24は,原紙の印刷面1aに塗布された保湿剤を,原紙全体に満遍なく浸透させる目的で,原紙に対して所定の張力を付加する。第2の張力付加部24は,上述した第1の張力付加部23と同様の構成を採用することができる。すなわち,第2の張力付加部24としては,原紙をその搬送方向と直交する方向(直交方向)に押圧するロール状のテンションコントローラを採用することが好ましい。テンションコントローラは,原紙の搬送方向と直交する方向に上下駆動し,原紙の搬送方向に回転可能な構成を有しており,原紙に加えられる張力を調整することができる。このようにして,原紙全体に張力を与えることで,原紙の印刷面1aに塗布された保湿剤が,原紙全体に浸透することを促進できる
【0047】
(1−7.巻き取りローラ)
第2の張力付加部24の下流側には,巻き取りローラ36が位置している。巻き取りローラ36は,保湿剤が塗布された原紙を巻き取り,ロール状に保持する。巻き取りローラ36によって,原紙を一定時間ロール状に保持することで,保湿剤の浸透がさらに均一化する。巻き取りローラ36により巻き取られた原紙は,ロール状のまま他の加工装置にセットされる。加工装置としては,トイレットペーパーに加工する周知のシートロール加工装置や,ティシュペーパーに加工するティシュペーパー加工装置等が採用される。例えば,ティシュペーパー加工装置では,折畳加工部及びカートン詰め部が設けられ,折畳加工部によって原紙を折り畳むとともに切断してカートン詰めに適したサイズと枚数のペーパー群を形成し,その後,カートン詰め部によって,折畳加工部により形成されたペーパー群を,カートンに詰める作業を行う。カートン詰め部は,別ラインで製造されたカートンを開き,その内部空間にペーパー群を押し込む。そして,例えばカートン内フラップと外フラップを張り合わせることにより,ペーパー群を内部空間に封入する。これにより,保湿ペーパーをカートン内に詰めることができる。折畳加工部としては,例えば,公知の折板式加工機やロータリーシリンダー式加工機を採用することができ,カートン詰め部としては,公知の装置を採用することができる。これにより,ティシュペーパーやトイレットロールのような衛生用紙に保湿剤が塗布された保湿ペーパー製品が製造される。
【0048】
巻き取りローラ36により巻き取られた原紙は,パレットの上に立てた後,ポリエチレン,ポリプロピレン,又はポリエステル等のプラスチック製のフィルムによって密封することが好ましい。プラスチック製のフィルムによって原紙を密封し,24時間程度の時間を置くことで,保湿剤を原紙全体に馴染ませることができる。
【0049】
(1−8.第3の巻出しローラ)
第1の実施形態の製造装置20は,第1のペーパー1と第2のペーパー2の他に,第3のペーパー3をさらに重ね合わせた保湿ペーパーを製造することも可能である。すなわち,第1の実施形態の製造装置20は,第3のペーパー3を巻き出すための第3の巻出しローラ33を備えるものであってもよい。例えば,図1に示されるように,第3のペーパー3に第2のペーパー2を重ね合わせ,その後,第2のペーパー2に第1のペーパー1を重ね合わせたものを原紙とすることとしてもよい。これにより,ペーパーが3層となった保湿ペーパーを製造することができる。ペーパーが3層に重なることにより,保湿剤を含んだ保湿ペーパーの強度を向上させることができる。
【0050】
(2) 第2の実施形態
次に,図2を参酌して,本発明の第2の実施形態に係る製造装置20について説明する。本発明の第2の実施形態に関し,上述した第1の実施形態と同じ構成を有する点については説明を省略する。すなわち,第2の実施形態は,保湿ペーパーの原紙に対し,印刷を施し,保湿剤を塗布する点までは,第1の実施形態と同じ構成を有している。ただし,第2の実施形態は,保湿剤を塗布した原紙を巻きとるための巻き取りローラを有しておらず,その代わりに,折畳加工部26及びカートン詰め部27を有する。第2の実施形態は,一連の製造装置において,保湿ペーパーの形成,保湿ペーパーの折畳加工,及び保湿ペーパーのカートン詰め作業を行う。このため,第2の実施形態に係る製造装置20は,例えばティシュペーパーのようなカートンに詰めて販売される衛生用紙の製造装置として好適に用いることができる。
【0051】
(2−1) 折畳加工部
折畳加工部26は,第2の張力付加部24の下流側に配置され,保湿剤が浸透した原紙を切断して折り畳み,カートン詰めに適したサイズと枚数のペーパー群を形成する機能を持つ。折畳加工部26としては,例えば,公知の折板式加工機やロータリーシリンダー式加工機を採用することができる。
【0052】
また,本発明の製造装置は,複数のペーパーが積層された保湿ペーパーを製造するためのものであるため,折畳加工に際し,複数のペーパーをエンボス加工により相互に接合することが好ましい。これにより,複数のペーパーが,使用に際して離れ難くなる。
【0053】
例えば,折畳加工部26は,第2の張力付加部24を通過した原紙を,その流れ方向に沿って所定幅に切断する。その後,折畳加工部26は,所定幅となった複数の原紙を,折り機によって,適宜Z状に折り畳みながら積み重ねる。そして,折畳加工部26は,折り畳まれ積層され原紙を,その流れ方向と直交する方向に沿って所定長さに切断する。これにより,カートン詰めに適した所定幅及び所定長さを有する保湿ペーパー群が形成される。
【0054】
また,本発明の製造装置のように,液体が含浸され強度が低い保湿ペーパーを製造する装置においては,折畳加工部26として,ロータリーシリンダー式加工機を用いることが好ましい。ロータリーシリンダー式加工機は,バイス(つかみ)とタッカー(押し込み)を備えたシリンダー2本から構成された加工機であり,供給される2枚の長尺ペーパーを,シリンダーを回転させながら,交互に折り重ねた後カットする動作を繰り返していくことにより,ペーパーの折り畳みを行うことができる。このため,保湿ペーパーに過剰な負荷を掛けずに,折畳加工を達成できる。
【0055】
(2−2) カートン詰め部
カートン詰め部27は,折畳加工部26の下流側に位置し,折畳加工部26により形成された保湿ペーパー群を,カートンに詰める作業を行う。カートン詰め部27は,別ラインで製造されたカートンを開き,その内部空間にペーパー群を押し込む。そして,例えばカートン内フラップと外フラップを張り合わせることにより,ペーパー群を内部空間に封入する。これにより,保湿ペーパーをカートン内に詰めることができる。カートン詰め部27としては,公知の装置を採用することができる。
【0056】
(3) 保湿ペーパーの製造方法
次に,保湿ペーパーの製造方法について説明する。本発明に係る保湿ペーパーの製造方法は,基本的に,上述した保湿ペーパーの製造装置20を用いて行われる。保湿ペーパーの製造方法は,印刷工程と,乾燥工程と,第1の張力付加工程と,保湿剤塗布工程と,第2の張力付加工程を含む。まず,印刷工程において,保湿ペーパーの原紙に対して印刷を施し,印刷面1aを形成する。次に,乾燥工程において,印刷が施された原紙を乾燥させる。また,第1の張力付加工程において,乾燥後の原紙に張力を付加し,印刷皺を引き延ばす。続いて,保湿剤塗布工程において,皺が引き延ばされた原紙のうち,その印刷面1aに対し,保湿剤を塗布する。このとき,保湿剤塗布工程では,原紙の印刷面1aの全面に,保湿剤が塗布されることが好ましい。さらに,第2の張力付加工程において,原紙に対して張力を付加して,原紙に塗布された保湿剤を全体的に浸透させる。そして,原紙は,巻きとりローラによって巻き取られる。その後,原紙は,折畳加工部により折畳加工され,カートン詰め部によってカートンに詰め込まれるものであってもよい。
【0057】
(4) 保湿ペーパー
図3及び図4は,本発明の製造装置及び製造方法により,製造された保湿ペーパー10の例を示す斜視図である。
【0058】
図3には,2枚のペーパーが積層された保湿ペーパー10の例が示されている。
図3(a)は,2枚のペーパーが積層した状態の例を示している。また,図3(b)は,2枚のペーパーが分離した状態を示している。
図3に示されるように,本発明によれば,第1のペーパー1の片面に印刷が施されており,当該片面が印刷面1aとなる。また,第1のペーパー1の印刷面1a側から,保湿剤が塗布されている。一方,第1のペーパーの非印刷面1b側には,第2のペーパー2が重ね合わされる。第1のペーパー1に塗布された保湿剤は,第1のペーパー1から第2のペーパーに浸透するため,結果として,保湿ペーパー10全体が湿潤状態となる。また,第1のペーパー1の印刷面1a側には,保湿剤が塗布されているため,印刷インクの固化によって保湿ペーパー10の肌触りが悪くなることがなく,良好な肌触りが維持される。
【0059】
図4には,3枚のペーパーが積層された保湿ペーパー10の例が示されている。
図4(a)に示されるように,本発明によれば,第1のペーパー1及び第2のペーパー2の他,第3のペーパー3が積層した保湿ペーパー10を得ることができる。保湿ペーパー10は,図2(b)に示されるように,第1のペーパー1の印刷面1aが,保湿ペーパー10の外表面に位置する。一方,第1のペーパー1の非印刷面1bには,第2のペーパー2が重ね合わされている。また,第2のペーパー2のうち,第1のペーパー1に接する面を接触面2aとし,第1のペーパー1に接しない面を非接触面2bとした場合に,第2のペーパー2の非接触面2bには,第3のペーパー3が重ね合わされる。このように,保湿ペーパー10を形成するにあたり,3枚のペーパーを積層させることにより,強度が強く,印刷を施したり保湿剤を塗布しても破れにくい保湿ペーパーを得ることができる。
【0060】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。例えば,上記実施形態では,2枚以上のペーパーを積層して保湿ペーパーを製造する例を中心に説明したが,1枚のペーパーのみによって保湿ペーパーを製造することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は,印刷が施された保湿ペーパーの製造装置及び製造方法に関するものである。従って,本発明は,例えばティシュペーパーやトイレットペーパーのような衛生用紙の製造産業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0062】
1 第1のペーパー
1a 印刷面
1b 非印刷面
2 第2のペーパー
2a 接触面
2b 非接触面
3 第3のペーパー
10 保湿ペーパー
20 製造装置
21 印刷部
211 印刷ドラム
212 プリンタ
22 保湿剤塗布部
23 第1の張力付加部
24 第2の張力付加部
25 乾燥部
26 折畳加工部
27 カートン詰め部
31 第1の巻出しローラ
32 第2の巻出しローラ
33 第3の巻出しローラ
34 ピンチローラ
35 重ね合わせ部
36 巻き取りローラ
37 補助ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿ペーパーを製造するための製造装置であって,
前記保湿ペーパーの原紙に印刷を施す印刷部(21)と,
前記印刷部(21)により印刷が施された前記原紙の印刷面に,保湿剤を塗布する保湿剤塗布部(22)を有する
保湿ペーパーの製造装置。

【請求項2】
前記印刷部(21)により印刷が施された前記原紙に,張力を付加する第1の張力付加部(23)を,さらに備える
請求項1に記載の保湿ペーパーの製造装置。

【請求項3】
前記保湿剤塗布部(22)により保湿剤が塗布された前記原紙に,張力を付加する第2の張力付加部(24)を,さらに備える
請求項1又は請求項2に記載の保湿ペーパーの製造装置。

【請求項4】
前記印刷部(21)により印刷が施された前記原紙を乾燥させる乾燥部(25)を,さらに備える
請求項1から請求項3のいずれかに記載の保湿ペーパーの製造装置。

【請求項5】
前記保湿剤塗布部(22)により保湿剤が塗布された前記原紙を,切断して折り畳む折畳加工部(26)と,
前記折畳加工部(26)により折り畳まれた前記原紙を,カートンに詰め込むカートン詰め部(27)を,さらに備える
請求項1から請求項4のいずれかに記載の保湿ペーパーの製造装置。

【請求項6】
保湿ペーパーを製造するための製造方法であって,
前記保湿ペーパーの原紙に印刷を施す印刷工程と,
前記印刷工程において印刷が施された前記原紙の印刷面に,保湿剤を塗布する保湿剤塗布工程を有する
保湿ペーパーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−90851(P2013−90851A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235497(P2011−235497)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(312013310)王子ネピア株式会社 (21)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】