説明

保湿容器

【課題】保湿容器の密閉性を高めるとともに中身のウェットティッシュ等を片手で取り出しやすくする。
【解決手段】湿潤シート12を収納する容器本体と、この容器本体に設けられた湿潤シートの取出口2と、この取出口を開閉する容器本体にヒンジ結合された開閉蓋3とを具備する。容器本体に取出口より大きい開口部9が形成され、この開口部の略半分が弾性を有した軟質材製の膜体7aで覆われ、開口部の残りの部分が同様な膜体7bで覆われ、両膜体の隣接部分が合掌状に重ね合わされることにより取出口が形成される。これにより、湿潤シートを滑らかに取出口から引き出すことができ、しかもこの引き出し操作を片手で行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェットティッシュ等の湿潤シートを収納する保湿容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットティッシュ等の湿潤シートを収納する保湿容器は、湿潤シートを収納する容器本体と、この容器本体に形成された湿潤シートの取出口と、この取出口を開閉する容器本体にヒンジ結合された開閉蓋とを具備する。湿潤シートは、その多数のものがZ字状に折られ、隣り合うもの同士で折れ部が互いに他方の間に入り込むように積み重ねられた状態で容器本体内に収納され、あるいは連続状の湿潤シートが一定間隔で入れられた切取線上でジグザグ折りされた状態で容器本体内に収納され、あるいは切取線が所定間隔で設けられた連続シートがロール状に巻き取られた状態で容器本体内に収納される。最上位の湿潤シート又は始端側の湿潤シートを取出口から引き出すと、これに連なるように後続の湿潤シートの先端部分が取出口から引き出され、取出口の端に引っ掛かって停止する。以後同様にして湿潤シートが一枚ずつ取出口から取り出される。
【0003】
また、この種の保湿容器の開閉蓋は、湿潤シートに含浸したアルコール等の薬液、水等が蒸散しないように、湿潤シートの取出口の周辺部に密着するように、パッキン等のシール部材と共に設けられる(例えば、特許文献1,2,3,4,5参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−49206号公報
【特許文献2】特開2000−142842号公報
【特許文献3】特開2001−225879号公報
【特許文献4】特表2002−529322号公報
【特許文献5】特開2004−299768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェットティッシュ等の湿潤シートの先行するものが取出口から取り出されると、後続のものが先行するものに引きずられて取出口の縁に引っかかって停止し待機状態に保持される。ところが、取出口が大面積であるとか、円形等単純な形状であったりすると、後続の湿潤シートが容器本体内に落下し、次回の湿潤シートの取り出しが面倒になる。そのため、後続の湿潤シートの先端部が取出口に適正に保持されるように、従来の保湿容器の取出口は小面積に形成され(例えば、特許文献2参照。)、あるいは取出口の縁に湿潤シートの先端部を掛けるための突起等が形成される(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
ところが、従来の取出口は後続の湿潤シートを待機位置に保持することができるが、取出口が硬い材質で形成されており、湿潤シートが取出口を通過しやすいように、開口面積にゆとりを持たせてあるので、このゆとりが容器の密閉性を悪くし、湿潤シートの乾燥を速める原因となっている。
【0007】
また、開閉蓋による容器本体の密閉性を高めるためのシール部材等を保湿容器に設けるとすると、保湿容器の構造が複雑化し、部品点数や組立工数が増加するという問題がある。
【0008】
本発明はこのような問題を解消することができる保湿容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0010】
すなわち、請求項1に係る発明は、湿潤シート(12)を収納する容器本体(1)と、この容器本体(1)又は容器本体(1)の着脱部材(16a)に設けられた湿潤シート(12)の取出口(2)と、この取出口(2)を開閉する上記容器本体(1)又は上記着脱部材(16a)にヒンジ結合された開閉蓋(3)とを具備した保湿容器において、上記容器本体(1)又は上記着脱部材(16a)に上記取出口(2)より大きい開口部(9)が形成され、この開口部(9)の略半分が弾性を有した軟質材製の膜体(7a)で覆われ、開口部(9)の残りの部分が同様な膜体(7b)で覆われ、上記両膜体(7a,7b)の隣接部分が合掌状に重ね合わされることにより上記取出口(2)が形成されたことを特徴とする。
【0011】
上記保湿容器において、両膜体(7a,7b)の合掌状に重ね合わされた隣接部分の先端(11)を互いに反対側に反り返らすようにしてもよい。
【0012】
また、上記保湿容器において、着脱部材(16a)を、容器本体(16)に形成された湿潤シート(12)の重畳体又はロール(4)の挿入口を開閉する蓋体としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器本体(1)又は着脱部材(16a)に取出口(2)より大きい開口部(9)が形成され、この開口部(9)の略半分が弾性を有した軟質材製の膜体(7a)で覆われ、開口部(9)の残りの部分が同様な膜体(7b)で覆われ、両膜体(7a,7b)の隣接部分が合掌状に重ね合わされることにより取出口(2)が形成されたことから、湿潤シート(12)を滑らかに取出口(2)から引き出すことができ、しかもこの引き出し操作を片手で行うことが可能となる。また、この後続の湿潤シート(12)を取り出す際にその先端部(12a)を指で摘みやすくなる。さらに、湿潤シート(12)に含浸したアルコール等の薬液、水等の蒸散を適正に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
<実施の形態1>
図1乃至図3に示すように、この保湿容器は、湿潤シートを収納する容器本体1と、この容器本体1に形成された湿潤シートの取出口2と、この取出口2を開閉する容器本体1に連結された開閉蓋3とを具備する。
【0016】
容器本体1は、たとえば合成樹脂により略直方体の殻体として形成される。容器本体1の底壁1aは容器本体1の周壁に対し凹凸縁1bを介して着脱自在に嵌合する。凹凸縁1bの嵌合により、容器本体1内が密封状態に保たれる。凹凸縁1bの嵌合を解除してこの底壁1aを外すことにより、容器本体1内に湿潤シートを収納することができる。
【0017】
湿潤シートは、従来と同様にその多数のものがZ字状に折られ、隣り合うもの同士で折れ部が互いに他方の間に入り込むように積み重ねられる。あるいは、長尺の湿潤シートがミシン線でジグザグ折りされ積み重ねられる。この湿潤シートの積み重なったものの全体には、アルコール等の薬液、水等が含浸している。この湿潤シートの積み重なったものは当初袋4内に詰められた状態で保湿容器の容器本体1内に収納される。湿潤シートを保湿容器から一枚ずつ取り出す際に袋4が容器本体1から取り出され、開封された後に中味の湿潤シートのみ又は開封された袋4とともに容器本体1内に戻される。
【0018】
上記容器本体の天壁1cには、上記取出口より大きい開口部9が形成される。開口部9は、この実施の形態1では円形に形成されるが、その他楕円形、長方形等の所望の形状に形成することが可能である。開口部9の面積、形状は、望ましくは少なくとも親指と人差指の二本の指が入る程度とされる。このようにすると湿潤シートの使い始めの場合や、湿潤シートの先端部が容器本体1内に落下した場合に、容器本体1内に指を差し込み湿潤シートの先端部を摘んで引き出すうえで便宜である。
【0019】
開閉蓋3は、容器本体1の天壁1cを上記開口部9の上から覆うように設けられる。天壁1cの開口部9の周辺は凹部として形成され、この凹部内に開閉蓋3が閉状態となって入り込むと、開閉蓋3の表面と容器本体1の表面とが同一面化する。開閉蓋3は概ね長方形に形成され、その後部が天壁1cの後部すなわち容器本体1の後部にヒンジピン5を介して連結される。開閉蓋3はこのヒンジピン5を介して上下方向に回動可能であり、このヒンジピン5を支点に回動することにより取出口2を開閉する。
【0020】
また、図3および図4に示すように、開閉蓋3の後部と天壁1cの後部との間には、開閉蓋3を常時開方向に付勢するバネ部材6が介装される。バネ部材6としては、金属製のコイルバネ、板バネ等を用いることができるが、望ましくはシリコンゴム製の板バネが用いられる。このバネ部材6がヒンジピン5よりやや前側で開閉蓋3と天壁1cとの間に屈曲状態で介装される。バネ部材6の作用により、開閉蓋3はヒンジピン5を支点にして常時上方向に回動しようとする。
【0021】
一方、開閉蓋3の前端部に対応して天壁1cの前端部にはロック手段としてのロック片8が設けられる。図4及び図5に示すように、ロック片8は、天壁1cに対し枢ピン8aを介して上下に回動自在に支持される。ロック片8の枢ピン8aより開閉蓋3側に寄った箇所には、開閉蓋3の前端に設けられた突起3aが引っ掛かるロック部8bが設けられ、枢ピン8aよりも容器本体1の前側には、開閉蓋3の開閉操作をする際に指で押さえる指掛け部8cと、指掛け部8cの押圧により変形するバネ片8dとが設けられる。開閉蓋3が閉まった状態では、開閉蓋3の突起3aがロック片8のロック部8bに引っ掛かって、ロック片8が枢ピン8aの回りを反時計方向に付勢されている。指掛け部8cをバネ片8dが変形するように押圧すると、ロック片8が枢ピン8aの回りを反時計方向に回動し、ロック部8bが突起3aから離反し、これにより、開閉蓋3はロック片8から解放され、バネ部材6の弾性作用によりヒンジピン5の回りを上方向に回動し、開口部上の取出口2を開放する。
【0022】
図1乃至図5に示すように、上記開口部9はその容器前側の略半分が弾性を有した軟質材製の膜体7aで覆われ、開口部9の容器後側の残り部分が同様な膜体7bで覆われ、両膜体7a,7bの隣接部分が合掌状に重ね合わされることにより上記取出口2が形成される。取出口2は開口部9の面積内にその容器左右方向に平行な直径方向に伸びるスリットとなって現れる。スリットは両膜体7a,7bの合掌状に重なった重畳部で閉じられるので、容器本体1内は密封状態に保持される。
【0023】
軟質材としては、シリコンゴム、エラストマー等を用いることができ、望ましくはガスバリア性、水蒸気バリア性のある材料が使用される。
【0024】
両膜体7a,7bは、容器本体1の天壁1cに開口部9を遮蔽するように被せられ、所定の固定手段により容器本体1の天壁1cに固定される。具体的には、図1乃至図5に示すように、各膜体7a,7bは半月状に形成され、その円弧状の周縁に嵌合突起10がリム状に形成される。一方、天壁1cの開口部9の回りには環状凹溝9aが形成される。この環状凹溝9aに嵌合突起10が嵌め込まれることにより、両膜体7a,7bが天壁1cに開口部9を塞いだ状態で固定される。また、図1及び図2に示すように、両膜体7a,7bの重畳部の両側は天壁1cから突出する掛け止め片1dにより厚さ方向に挟持される。
【0025】
上述したように、膜体7a,7bは弾性のある軟質材で作られていることから、図5に示すように、取出口2は容易に拡開して湿潤シート12の通り抜けを許容し、湿潤シート12が通過した後は、図4に示すように、直ちに口を閉じて容器本体1内を密閉する。膜体7a,7bの弾性変形により生じる力は弱いので、湿潤シート12を引く力によって容器本体1が持ち上げられるようなことはなく、湿潤シート12は円滑に取出口2を天壁1cの上方へと通過する。また、湿潤シート12が取出口2を上方へ通過する際、両膜体7a,7bの先端で扱かれ、これにより余剰のアルコール等の含浸液が容器本体1内に戻される。先行する湿潤シート12が取出口2から取り出されると、後続する湿潤シート12の先端部12aが取出口2のやや先の待機位置まで引き出されて取出口2に挟まれた状態で停止し、容器本体1内に落下しないように保持される。また、取出口2が後続する湿潤シート12の先端部12aを挟んだまま閉じるので、湿潤シート12の含浸液の揮散が防止される。
【0026】
上記両膜体7a,7bの重畳部は単に膜体7a,7b同士を合掌状に重ねることのみによって形成してもよいが、図4及び図5に示すように、望ましくは両膜体7a,7bの合掌状に重ね合わされた隣接部分の先端11が互いに反対側に反り返るように形成される。このように両膜体7a,7bの隣接部分の先端11が反り返っていると、容器本体1内に湿潤シート12が落下した場合に指を容器本体1内に差し込みやすくなり、容易に湿潤シート12を引き出すことができる。
【0027】
次に、上記構成の保湿容器の作用について説明する。
【0028】
湿潤シート12は当初多数枚積み重ねられた状態で袋4内に詰められ、保湿容器の容器本体1内に収納された状態で販売される。
【0029】
使用者は、購入当初容器本体1の底壁1aを外して袋を取り出し、袋4を開いて湿潤シート12の重畳体又はロールを取り出し、この重畳体又はロールを容器本体1内に収納し、湿潤シート12の先端部12aを取出口2から容器本体1外へと引き出し、再び底壁1aで容器本体1を閉じ、開閉蓋3を閉じる。
【0030】
湿潤シート12を使用する場合、ロック片8に指を掛けて開閉蓋3のロックを解除する。開閉蓋3はバネ部材6の復元力により自動的に上方に回動し、膜体7a,7bの上方を開放する。
【0031】
使用者は、膜体7a,7b間の取出口2から覗く湿潤シート12の先端部12aを指で摘んで取出口2から容器本体1外に引き出す。
【0032】
湿潤シート12は膜体7a,7b間の取出口2から引き出されつつ、膜体7a,7bにより扱かれる。これにより、アルコール等の余剰の含浸液が容器本体1内に戻される。また、取出口2を形成する膜体7a,7bは弾性を有する軟質材で形成されているので、湿潤シート12の取り出しの際、容易に変形する。この膜体7a,7bの弾性変形により生じる力は湿潤シート12を引っ張る力に比べて極めて小さいので、湿潤シート12を引く力によって容器本体1が持ち上げられるようなことはなく、湿潤シート12は円滑に取出口2外に引き出される。
【0033】
この先行する湿潤シート12が引き出されると、後続する湿潤シート12の先端部12aが取出口2を少しばかり過ぎた待機位置まで引き出されて停止する。これにより、湿潤シート12の先端部12aは膜体7a,7b間の取出口2の縁に保持され、容器本体1内への落下が防止される。
【0034】
湿潤シート12がそれ以上必要でない場合は、使用者により開閉蓋3が閉じられる。使用者が開閉蓋3をバネ部材6の付勢力に抗して閉じると、開閉蓋3の突起3aが容器本体1のロック部8bに引っ掛かり、これにより開閉蓋3が閉状態に保持される。
【0035】
開閉蓋3が閉じると、図4に示すように、取出口2の回りが密封され、湿潤シート12の含浸液の揮散が防止され、さらには取出口2からの容器本体1内における湿潤シート12の含浸液の揮散が防止される。
【0036】
<実施の形態2>
図6に示すように、この実施の形態2では、実施の形態1の場合と異なり、容器本体16が筒状に形成され、この筒状の容器本体16に着脱部材16aが取り付けられる。この容器本体16内には枚葉状の湿潤シート12(図4、図5参照)を積み重ねた重畳体又はミシン目が等間隔で入れられた長尺の湿潤シートを巻き取ったロールが収納される。
【0037】
着脱部材16aは、具体的には容器本体16に形成された湿潤シート12の重畳体又はロールの挿入口を開閉するための蓋体である。この場合、この蓋体は容器本体16にネジ、凹凸嵌合等の適宜手段により取り付けられている。
【0038】
なお、この実施の形態2において実施の形態1のものと同じ部分には同一符号を付して示すこととし、重複した説明を省略する。
【0039】
本発明は以上説明したように構成されるが、上記実施の形態1,2に限定されるものではない。例えば、実施の形態では膜体は二枚に分割されているが、一枚物として一体化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1に係る保湿容器を開閉蓋の一部を切欠して示す平面である。
【図2】図1中、II−II線矢視断面図である。
【図3】図1中、III−III線矢視断面図である。
【図4】図3中、要部の拡大図である。
【図5】図4中、開閉蓋を開いた状態で示す拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る保湿容器を開閉蓋の閉じた状態で示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1…容器本体
2…取出口
3…開閉蓋
7a,7b…膜体
9…開口部
11…先端
12…湿潤シート
16a…着脱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤シートを収納する容器本体と、この容器本体又は容器本体の着脱部材に設けられた湿潤シートの取出口と、この取出口を開閉する上記容器本体又は上記着脱部材にヒンジ結合された開閉蓋とを具備した保湿容器において、上記容器本体又は上記着脱部材に上記取出口より大きい開口部が形成され、この開口部の略半分が弾性を有した軟質材製の膜体で覆われ、開口部の残りの部分が同様な膜体で覆われ、上記両膜体の隣接部分が合掌状に重ね合わされることにより上記取出口が形成されたことを特徴とする保湿容器。
【請求項2】
請求項1に記載の保湿容器において、上記両膜体の合掌状に重ね合わされた隣接部分の先端が互いに反対側に反り返っていることを特徴とする保湿容器。
【請求項3】
請求項1に記載の保湿容器において、上記着脱部材が、上記容器本体に形成された湿潤シートの重畳体又はロールの挿入口を開閉する蓋体であることを特徴とする保湿容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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