説明

保湿材およびこれを用いた衣類

【課題】
肌に対する優れた保湿効果を有し、その保湿効果が長期間維持される保湿材およびこれを用いた衣類を提供する。
【解決手段】
保湿材は、繊維層1と、繊維層1の一面に積層される樹脂層2と、を備え、樹脂層2はヒアルロン酸を含有する。
衣類は、保湿材を少なくとも一部に含む靴下、手袋、サポーターおよびインナーからなる群より選ばれる衣類であって、保湿材は樹脂層2が肌側に配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌を保湿するための保湿材およびこれを用いた衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
肌荒れを防止し、または肌荒れを改善するために、スクワラン、セラミド、コラーゲンまたはヒアルロン酸等の保湿成分を含有する液体、ゲル剤または軟膏等の皮膚外用剤が用いられている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、上記皮膚外用剤の保湿効果は時間とともに減少し、その効果は数時間程度しか持続しない。そのため、皮膚外用剤を頻繁に塗布し直さなければならず、手間がかかる。
一方、足裏部分や踵部分を保湿するため、ヒアルロン酸等を含有する繊維により形成した靴下が提供されている。しかし、使用による摩耗や洗濯等により保湿効果が低下し、保湿効果が長期間持続しないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−145037号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、肌に対する優れた保湿効果を有し、その保湿効果が長期間維持される保湿材およびこれを用いた衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の保湿材は、繊維層と、繊維層の一面に積層される樹脂層と、を備え、前記樹脂層はヒアルロン酸を含有することを特徴とする。
ここで、ヒアルロン酸とは、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体およびこれらの塩のことを指す。
【0006】
請求項2記載の保湿材は、前記繊維層と前記樹脂層との間に、前記樹脂層の樹脂より融点が低く、かつ、前記樹脂層と同系の樹脂からなる接着フィルムを介在させ、前記接着フィルムの樹脂の融点以上であって前記樹脂層の樹脂の融点未満の加熱温度で前記樹脂層を前記繊維層に加熱圧着することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の保湿材は、前記樹脂層が、ヒアルロン酸を10〜50重量%含有することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の保湿材は、前記樹脂層が、ポリウレタン樹脂からなることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の衣類は、請求項1、2、3または4記載の保湿材を少なくとも一部に含む靴下、手袋、サポーターおよびインナーからなる群より選ばれる衣類であって、前記保湿材は前記樹脂層が肌側に配されることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の衣類は、前記靴下が、足裏部分および踵部分のうちの一部に前記保湿材を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によると、樹脂層にヒアルロン酸が含まれているため、樹脂層を肌に当接させると、肌が十分に潤い、肌が良好に保湿される。そのため、本発明は、肌荒れの防止や改善に優れた効果を発揮する。上記保湿効果は、時間が経過しても低下せず、また樹脂層の摩耗や保湿材の洗濯によっても低下しないので、上記保湿効果が長期間維持される。そのため、本発明の保湿材は、皮膚外用剤を頻繁に塗布するといった手間が掛からず、洗濯をしながら衛生性を保ちつつ繰り返し何度も使用することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によると、繊維層と樹脂層との密着性を高めることができる。また、樹脂層におけるピンホールの発生を抑えることができるので、樹脂層の肌触りや見栄えが良くなる。
【0013】
請求項3記載の発明によると、保湿効果および樹脂層の強度を十分に確保することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によると、樹脂層がポリウレタン樹脂であるため、樹脂層の耐摩耗性および強度がより一層向上する。
【0015】
請求項5記載の発明によると、肌のうち、樹脂層が当接する部分を十分に保湿することができるので、当該部分の肌荒れを確実に防止し、または改善することができる。
【0016】
請求項6記載の発明によると、足裏部分および踵部分のうち、樹脂層が当接する部分を十分に保湿することができるので、肌荒れしやすい当該部分の肌荒れを確実に防止し、または改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る保湿材の積層状態を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る保湿材を用いた靴下を示す概略断面図であり、(a)はつま先部を有する靴下を示し、(b)はつま先部がない靴下を示す。
【図3】本発明に係る保湿材を用いた手袋を示す一部破断正面図である。
【図4】本発明に係る保湿材を用いたサポーターを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
本発明に係る保湿材は、図1に示すように、繊維層1と、繊維層1の一面に積層される樹脂層2と、により構成される。
【0019】
繊維層1としては、編物、織物または不織布などを用いることができる。
編物または織物を構成する繊維は、例えば、綿、絹、羊毛、麻、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリオレフィン繊維等を用いることができる。
編物の組織は、例えば、たて編、よこ編またはこれらの組み合わせとすることができる。
織物の組織は、平織、斜子織、格子織、朱子織及び綾織等やこれらの組み合わせとすることができる。
不織布を構成する繊維は、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリオレフィン繊維等を用いることができる。
不織布の製法は、例えば、スパンボンド法、メルトブローン法、ケミカルボンド法、およびサーマルボンド法等を用いることができる。
以上繊維層1について説明をしたが、繊維層1は、身体に対する保湿材の追随性の観点からは、伸縮性を有するものを用いることが好ましい。
【0020】
樹脂層2は、ヒアルロン酸を含有する層状の樹脂により構成される。
樹脂は、天然樹脂であってもよいし、合成樹脂であってもよく、例えば、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、天然ゴムなどを用いることができる。樹脂層2をポリウレタン樹脂とすると、樹脂がはく脱し難くなり、樹脂層2の強度が向上する。
【0021】
本発明においてヒアルロン酸とは、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体およびこれらの塩のことを指す。
ヒアルロン酸は、脊椎動物等より抽出した天然ヒアルロン酸や、乳酸菌等の発酵法により精製したバイオヒアルロン酸等を用いることができる。
ヒアルロン酸誘導体は、エステル化ヒアルロン酸誘導体等を用いることができる。
ヒアルロン酸およびヒアルロン酸誘導体の塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等を用いることができる。
ヒアルロン酸の分子量は特に限定されるものではなく、皮膚に対する保湿性や保湿の持続性等に応じて適宜選択すればよい。
樹脂層2におけるヒアルロンサンの含有割合については、ヒアルロン酸を10〜50重量%含有することが好ましい。さらに好ましくは、ヒアルロン酸を25〜35重量%含有させるとよい。このように混合すると、樹脂層2の強度と皮膚に対する保湿性を十分に確保することができる。
【0022】
保湿材の製造について説明する。まず、樹脂とヒアルロン酸とを混合し、この混合物より層状の樹脂層2を形成する。混合の方法については、例えば、樹脂溶液とヒアルロン酸溶液との混合が挙げられる。
次いで、繊維層1に樹脂層2を積層する。積層は、繊維層1と樹脂層2との間に、樹脂層2の樹脂より融点の低い樹脂で形成したフィルム接着剤を介在させ、フィルム接着剤の樹脂の融点以上であって樹脂層2の樹脂の融点未満の温度で加熱・圧着する。これによると、繊維層1と樹脂層2との密着性を高められる。さらに、繊維層に樹脂層を加熱・圧着する場合にはピンホールが発生し、樹脂層2の肌触りや見栄えが悪くなるが、この製法によればその発生を抑えることができるので、樹脂層2の肌触りや見栄えが良くなる。
フィルム接着剤については、樹脂層2に用いられる樹脂と同系の樹脂で形成したフィルム接着剤を用いると、上記効果がより良好なものとなる。特に、樹脂層2およびフィルム接着剤の樹脂としてポリウレタン樹脂を用いると、上記効果に加え樹脂層2の強度が向上する。
樹脂層2に用いられる樹脂の融点は、特に限定されるものではないが、加熱の際、繊維層1を傷めないようにするために、200℃以下であることが好ましく、例えば160〜200℃の範囲であることが好ましい。フィルム接着剤の樹脂の融点は、これも特に限定されるものではないが、樹脂層2の融解を防止するため、樹脂層2の樹脂の融点より40℃以上低いことが好ましい。
樹脂層2の層厚については、積層後の層厚を、例えば300〜1000μm程度とすると、樹脂層2の肌触りがより一層良くなり、樹脂層2の伸縮性も良くなる。併せて、伸縮性を有する繊維層1を用いると、保湿材全体の伸縮性が良くなる。その結果、保湿材の身体に対する追随性も良くなる。
【0023】
本発明の保湿材は、靴下、手袋、サポーターおよびインナー等の衣類に用いることができる。この場合、保湿材は樹脂層が肌側に配されるように用いる。
【0024】
保湿材の使用については、貼付のように、肌のうち対象となる部位に、樹脂層2側を当接させて使用することができる。また、保湿材を用いた靴下、手袋、サポーターおよびインナー等の衣類を体に着用して使用することもできる。
【0025】
本発明の保湿材によると、樹脂層2にヒアルロン酸が含まれているため、樹脂層2を肌に当接させると、肌が十分に潤い、肌が良好に保湿される。そのため、本発明は、肌荒れの防止や改善に優れた効果を発揮する。上記保湿効果は、時間が経過しても低下せず、また樹脂層2の摩耗や保湿材の洗濯によっても低下しないので、上記保湿効果が長期間維持される。そのため、本発明の保湿材は、皮膚外用剤を頻繁に塗布するといった手間が掛からず、洗濯をしながら衛生性を保ちつつ繰り返し何度も使用することができる。
本発明の保湿材を用いた衣類によると、肌のうち、樹脂層2が当接する部分を十分に保湿することができので、当該部分の肌荒れを確実に防止し、または改善することができる。
【実施例】
【0026】
〔実施例1〕
実施例1は、図2に示すように、繊維を編成した公知の靴下を繊維層1とするものであり、靴下の肌側の足裏部分および踵部分に樹脂層2を設けたものである。樹脂層2の樹脂にはヒアルロン酸を含有する融点が約180℃であるポリウレタン樹脂を用いる。樹脂層2におけるヒアルロン酸の含有割合は、ヒアルロン酸を30重量%含有させている。フィルム接着剤は、融点が約130℃のポリウレタン樹脂製のフィルムを用いる。
靴下への樹脂層2の積層については、靴下内側の足裏部分と樹脂層2との間に、融点が130℃であるポリウレタン樹脂製のフィルム接着剤を介在させた状態で、約135℃の過熱温度で加熱・圧着する。
なお、靴下は、図2(a)に示すように、つま先部を有するものであってもよいし、図2(b)に示すように、つま先部を有しないものであってもよい。また、靴下において樹脂層2を設ける範囲は任意に設定してよい。
【0027】
〔実施例2〕
実施例2は、図4に示すように、繊維を編成した公知の手袋を繊維層1とするものであり、手袋の肌側に層状の樹脂層2を設けたものである。基本的な構成等は、実施例1のものと同様である。
【0028】
〔実施例3〕
実施例3は、図5に示すように、繊維を筒状に編成した公知のサポーターを繊維層1とするものであり、サポーターの肌側に樹脂層2を設けたものである。基本的な構成等は、実施例1のものと同様である。
【0029】
なお、本発明は、上記実施例の以外にも、例えば、樹脂層2を肌側に設けたインナーなど、様々な衣類に適用できる。
【0030】
以上に示した実施の形態および実施例は本発明の例示であり、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 繊維層
2 樹脂層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維層と、繊維層の一面に積層される樹脂層と、を備え、前記樹脂層はヒアルロン酸を含有することを特徴とする保湿材。
【請求項2】
前記繊維層と前記樹脂層との間に、前記樹脂層の樹脂より融点が低く、かつ、前記樹脂層と同系の樹脂からなる接着フィルムを介在させ、前記接着フィルムの樹脂の融点以上であって前記樹脂層の樹脂の融点未満の加熱温度で前記樹脂層を前記繊維層に加熱圧着することを特徴とする請求項1記載の保湿材。
【請求項3】
前記樹脂層は、ヒアルロン酸を10〜50重量%含有することを特徴とする請求項1または2記載の保湿材。
【請求項4】
前記樹脂層は、ポリウレタン樹脂からなることを特徴とする請求項1、2または3記載の保湿材。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の保湿材を少なくとも一部に含む靴下、手袋、サポーターおよびインナーからなる群より選ばれる衣類であって、前記保湿材は前記樹脂層が肌側に配されることを特徴とする衣類。
【請求項6】
前記靴下は、足裏部分および踵部分のうちの一部に前記保湿材を含むことを特徴とする請求項5記載の衣類。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−60682(P2013−60682A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199789(P2011−199789)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(304048584)丸和ケミカル株式会社 (6)
【Fターム(参考)】