説明

保管装置

【課題】容器の集積率を低下させることなく、試料の観察を迅速に行うことが可能な保管装置を提供する。
【解決手段】試料を収容する複数の凹部を有する容器30を制御された温度や湿度などの環境下において高集積率で保管する保管棚20を有する保管装置において、保管棚20から特定の容器30を取り出す取り出しロボット10を有し、取り出しロボット10は、特定の容器30を保管棚20から取り出した状態で、容器30に収容された試料を撮影するカメラ13を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創薬研究の分野で細菌や動植物の細胞を高度に制御された温度・湿度環境下において培養したり、構造ゲノム科学などの分野で蛋白質などの結晶の生成(結晶化)を観察する際に使用される保管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、創薬研究や構造ゲノム科学の分野で使用される保管装置において、試料の状態変化を観察する手段を装備した保管装置が知られている。そのような保管装置としては、保管装置内の保管棚に収容された容器の隣接する上下の容器との隙間にスキャナを装着したり、CCDカメラを挿入して、試料の観察を行うものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、観察の対象となる容器を移載ロボットを用いて取り出し、観察エリアまで運搬し、観察エリアにおいてビデオカメラ等で撮影し、試料の観察を行うことも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−85054号公報
【特許文献2】特開2004−3917号公報
【特許文献3】特開2002−125697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の保管棚に収容された容器の隣接する上下の容器との隙間にCCDカメラやスキャナを装着する保管装置では、容器の集積率が低くなり、大量の容器を保管するには不向きであった。また、複数のスキャナやカメラ等の撮像手段を必要とするため、装置が高額になるという課題があった。
【0005】
一方、観察の対象となる容器を移載ロボットを用いて取り出し、観察エリアまで運搬し、観察エリアにおいてビデオカメラ等で撮影し、試料の観察を行う装置では、複数の容器を観察する場合、保管棚と観察エリアの間を移載ロボットが何度も往復する必要があり、観察のリードタイムが長時間になるという課題があった。また、容器の移動距離が長くなるため、容器の移動中に異物が混入したり、移動中の振動により、試料の状態が変化してしまう等の課題も指摘されている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、容器の集積率を低下させることなく、試料の観察を迅速に行うことが可能な保管装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、試料を収容する複数の凹部を有する容器を制御された温度や湿度などの環境下において高集積率で保管する保管棚を有する保管装置において、前記保管棚から特定の容器を取り出す取り出しロボットを有し、前記取り出しロボットは、前記特定の容器を前記保管棚から取り出した状態で、前記容器に収容された試料を撮影するカメラを有している。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、試料を収容する複数の凹部を有する容器を制御された温度や湿度などの環境下において高集積率で保管する保管棚を有する保管装置において、前記保管棚から特定の容器を取り出す取り出しロボットを有し、前記取り出しロボットは、前記特定の容器を前記保管棚から取り出した状態で、前記容器に収容された試料の状態を撮影するカメラを有しているため、保管棚に縦列保持される容器間の隙間は、取り出しロボットの取り出しプレートが挿入できるだけの僅かな隙間でよく、容器の集積率を高めることができる。
【0009】
さらに、取り出しロボットにより容器を保管棚から取り出した状態でカメラで撮影し、撮影後すぐに保管棚の元の位置に容器を格納することができるため、観察のリードタイムを短縮することができる。また、観察対象になる容器の移動が僅かであるため、容器に振動を与える危険が減少でき、サンプルが振動により破壊される危険を低減できる。しかも、容器を保管棚から抜き出してすぐカメラで撮影するため、保管環境、すなわち保管棚における温度・湿度と撮影環境、すなわち撮影場所における温度・湿度をほぼ同じにすることができ、精度の高い観察が可能になる。したがって、保管棚に仕切りを設けて、各棚毎に温度条件を変えて保管する場合においても、素早く観察が行われるので、観察を行う時の環境変化を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2に基づいて説明する。図1(a)は、本発明による保管装置であって、取り出しロボット10の取り出しプレートが、保管棚20に縦列保持された容器間の隙間に挿入された状態を示した概略斜視図である。また、図1(b)は、図1(a)に示した取り出しロボット10を拡大して示した拡大斜視図である。一方、図2(a)は、本発明による保管装置であって、取り出しロボット10が1つの容器30を保管棚20から引き出した状態を示した概略斜視図である。また、図2(b)は、図2(a)に示した取り出しロボット10を拡大して示した拡大斜視図である。
【0011】
取り出しロボット10は、ロボット支持板12上を前後にスライドする。また、ロボット支持板12は、2本の支柱によって支えられており、そのうちの1本の支柱がボールネジ14になっており、このボールネジ14が正逆回転することによって、ロボット支持板12が上下に移動可能になっている。取り出しロボット10の左右の移動は、図示はされていないが、ガイドレールに沿って、取り出しロボットの台18をリニアアクチュエータで押し引きする動力伝達機構により駆動している。又、別の方法としては、取り出しロボットの台18を歯付きベルトとプーリーからなる動力伝達機構により駆動することも可能である。
【0012】
また、ロボット支持板12には、L字アングル15により、カメラ13が取り付けられている。そして、取り出しロボット10が保管棚20から容器30を取り出した時に、カメラ13の真下に容器30が来るようにカメラ13の取り付け位置が調整されている。カメラ13は、別の記録装置に接続されている。その際、取り出しロボットの移動をよりスムーズにするためにカメラの出力を無線伝送することも可能である。なお、本実施例では、カメラ13を観察対象の容器30の真上に来るように設置しているが、観察対象によっては、容器の下側から撮影することも可能である。
【0013】
また、撮影用の照明としては、透過光照明、同軸光照明、拡散光照明あるいは暗視野など、様々な照明・透光方法をとることができる。観察対象の容器30を保管棚20から引き出して撮影するため、各棚毎に照明装置を設置する必要がないので低コストである上に、照明装置の設置位置の自由度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による保管装置の概略斜視図である(取り出しロボット挿入時)。
【図2】本発明による保管装置の概略斜視図である(容器引き出し時)。
【符号の説明】
【0015】
10 ・・・ 取り出しロボット
12 ・・・ ロボット支持板
13 ・・・ カメラ
14 ・・・ 支柱(ボールネジ)
16 ・・・ 支柱
18 ・・・ 台
20 ・・・ 保管棚
30 ・・・ 容器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容する複数の凹部を有する容器を制御された温度や湿度などの環境下において高集積率で保管する保管棚を有する保管装置において、
前記保管棚から特定の容器を取り出す取り出しロボットを有し、
前記取り出しロボットは、前記特定の容器を前記保管棚から取り出した状態で、前記容器に収容された試料を撮影するカメラを有していること
を特徴とする保管装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−10394(P2006−10394A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185008(P2004−185008)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】