説明

保管運搬用梱包装置

【課題】従来のような廃棄物となるクッション材を使わなくても、同種のものが各段で重ねられ、各段毎に大小異形の物品が並列されても各段毎で均一高さとなして梱包でき、折り畳み式等のコンテナと組み合わせることで繰り返し使用できるようにする。
【解決手段】複数の物品Pをシート状物を介して多段的に積み重ね、さらに梱包覆いシート状物で全体を包み込み可能とした梱包シート構成体1を備える。梱包シート構成体1は、矩形状の底部2の一方の対辺に延設した梱包覆い部7,8と、底部2の他方の対辺に延設した上段覆い部5,6と、梱包覆い部7,8の各連設部位若しくは上段覆い部5,6の各連設部位からそれぞれ付設した下段・中段覆い部3,4と、下段・中段覆い部3,4同士を固定する中段部固定手段11と、上段覆い部5,6同士を固定する上段部固定手段13と、梱包覆い部7,8同士を固定する梱包固定手段14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば皿、茶碗、急須、コップその他の食器類等の破損し易い物品を折り畳み式のコンテナに梱包状態で纏めて収納できるようにし、例えば製造後の梱包、販売場所までの輸送、そこでの保管、商品棚等への移動・陳列等の一連の物流経路で使用されるもので、使用後では折り畳まれて回収され、繰り返し使用されるようにした、いわば循環型の保管運搬用梱包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皿、茶碗、急須、コップ等の食器類等の各種販売物品を輸送して販売店等に納品する場合には、折り畳み式のコンテナ等に収納する等して運搬される。すなわち、これらの販売物品は、例えば1個ずつ紙や発泡シート等のクッション材で包み込まれてから例えば段ボール箱内に収容され、隙間がある部分には更にクッション材が詰め込まれた後、当該段ボール箱をテープで閉止する等していた。
【0003】
このような梱包に使用される段ボール箱類やクッション材は、使用後には廃棄物となるため、それが適切に廃棄されない場合には環境汚染の問題となる。そこで、例えば特許文献1に開示されているように、梱包体の一部である天板部を被梱包物としての食器類を載せる食卓用のトレーとして利用することのできる梱包体および梱包体セットがある。この特許文献1では、梱包体の内部に例えば段ボール材により形成されている凸状の緩衝材が配置され、この緩衝材により内部空間を仕切るようになっている。
【0004】
また、例えば特許文献2に開示されているように、食器を包装する多大な時間および包装による一切のゴミを排除し、食器に何ら悪影響を与えず、さらに包装されている食器を一見して識別することが可能な被運搬物の梱包装置がある。すなわち、この梱包装置には、密封可能で且つ圧力変化により変形自在な袋状の透明な入れ物と、入れ物の中に介在させた基板とを有し、さらに入れ物の中を減圧する減圧手段が設けられている。この減圧手段による圧力変化でもって被運搬物の略全表面に入れ物の内面を密着させることにより、被運搬物を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−168797号公報
【特許文献2】特開平10−338274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1では、内部空間を仕切るための緩衝材を使用する等の手間が掛かる複雑な構成となっており、しかもその分だけ収容スペースが狭小限定されてしまう。しかも、被運搬物の大小に応じて緩衝材の配置を予め設定しておかなければならず、使用する上でも非常に面倒である。
【0007】
また、上記した特許文献2では、入れ物の中を減圧する減圧手段を設ける等の機器、設備等を必要とする構成となっており、そのために費用も嵩む。しかも、食器は透明な袋状の入れ物内の減圧のみで密着梱包されているため、外部からの衝撃等によってダメージを受け易く、しかも入れ物自体が破損した場合には、減圧低下によって密着性が失われるばかりでなく、入れ物内部におけるズレは食器を破損させる虞もある。
【0008】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、従来のような廃棄物となる段ボール材、クッション材等を使わなくても、重ね合わせた多数の食器類を各段毎で同一高さとなるように並列配置して、各段毎に区分け収納することで多段的に纏めて梱包できるようにし、しかも折り畳み式等のコンテナと組み合わせることで繰り返し使用でき、さらには輸送による販売店への納品、一時的なストックヤードでの保管、使用後の例えば製造所等への回付という循環型でエコにもつながる梱包装置としても使用することができる保管運搬用梱包装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、食器類の如き物品Pを保管、運搬するよう梱包するものであって、物品Pを下段・中段覆いシート(3,4)を介して多段的に積み重ねて、梱包覆いシート(5,6,7,8)で全体を包み込み可能とした梱包シート構成体1を備えたものとする。
梱包シート構成体1は、その展開形状において、矩形状の底部2と、該底部2の一方の対辺に延設された梱包覆い部7,8と、該底部2の他方の対辺に延設された上段覆い部5,6と、梱包覆い部7,8の各連設部位若しくは上段覆い部5,6の各連設部位からそれぞれ付設された下段・中段覆い部3,4と、下段・中段覆い部3,4同士を固定する中段部固定手段11と、上段覆い部5,6同士を固定する上段部固定手段13と、梱包覆い部7,8同士を固定する梱包固定手段14とを備え、底部2に載置された下段位の物品Pを下段覆い部3で覆い、下段覆い部3の上に載置した中段位の物品Pを中段覆い部4で覆って中段部固定手段11で固定可能とし、中段覆い部4の上に載置した上段位の物品Pを上段覆い部5,6で包み込んで上段部固定手段13で固定可能とし、さらに上段覆い部5,6の上から梱包覆い部7,8で包み込んで梱包固定手段14で固定可能として成る構成とすることができる。
中段部固定手段11は、中段覆い部4を固定させるよう当該中段覆い部4が付設された底部2一端側に対向している底部2他端側に延設された中段保持ベルト12を備え、該中段保持ベルト12は、中段覆い部4上に面ファスナ17,18によって接合可能とすることができる。
上段部固定手段13は、上段覆い部5,6同士を重ね合わせて固定させるよう当該上段覆い部5,6それぞれに付設された面ファスナ19,20によって接合可能とすることができる。
梱包固定手段14は、梱包覆い部7,8同士を重ね合わせて固定させるよう当該梱包覆い部7,8のいずれか一方に延設された梱包保持ベルト15を備え、該梱包保持ベルト15は、梱包覆い部7,8のいずれか他方に対して面ファスナ21,22によって接合可能とすることができる。
底部2、上段覆い部5,6、梱包覆い部7,8における少なくとも物品Pの側方部位には、クッション材を内包して構成することができる。
底部2、梱包覆い部7,8、上段覆い部5,6、下段・中段覆い部3,4それぞれの物品Pに接触する面側には、滑り止め加工処理が施されているものとできる。
【0010】
以上のように構成された本発明に係る保管運搬用梱包装置にあって、梱包シート構成体1の展開形状において底部2に、大小異形であっても複数の物品P、例えば食器等を略均一な高さに重ねて並列載置し、これらの物品Pを下段覆い部3で覆うことによって、底部2上に載置した下段位の物品Pを上方から押さえ、保持させる。
下段覆い部3の上にさらに大小異形であっても複数の物品Pを略均一な高さに重ねて並列載置して中段覆い部4で覆って、中段部固定手段11による中段保持ベルト12を中段覆い部4に面ファスナ17,18によって固定させる。こうすることで、底部2上の下段位の物品Pと、下段覆い部3上に載置して中断覆い部4にて覆った中段位の物品Pとを上方から押さえ、保持させる。
そして、中段覆い部4の上に複数の物品Pを載置して上段覆い部5,6で包み込んで、上段部固定手段13たる面ファスナ19,20によって固定させることで、上段位の物品Pを上方から押さえ、下段位、中段位の物品P等と共に上下方向で段重ね状にして保持させる。
さらに上段覆い部5,6の上から梱包覆い部7,8で包み込み、梱包固定手段14の梱包保持ベルト15の面ファスナ21,22による固定は、全ての物品Pの最終梱包とさせ、底部2上に上、中、下段位それぞれの物品P全体を底部2の四囲から外部とはクッション性ある状態で囲み、物品Pを保護させる。
滑り止め加工処理は、底部2、梱包覆い部7,8、上段覆い部5,6、下段・中段覆い部3,4それぞれの物品Pに接触する面側での物品Pのズレを防止させる。
全体の梱包後は、例えば折り畳み式コンテナ容器内に収納し、これと共に運搬、保管、移動させ、また開梱して物品Pを取り出した後は折り畳まれることでコンパクトになり、、繰り返し使用させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来のような廃棄物となる段ボール材、クッション材等を使わなくても、同種の物品P、例えば食器類が重ねられ、これらが各段毎に大小異形であっても、並列されて各段毎に均一高さとなすことで梱包することができ、折り畳み式等のコンテナQと組み合わせることで、例えば物品Pの製造後の梱包、その輸送、販売場所での保管、陳列等を一連に処理でき、使用後ではコンパクトに折り畳み、再度繰り返し使用でき、循環型でエコにもつながる梱包装置として使用することができる。
【0012】
すなわち、これは本発明に係る保管運搬用梱包装置が、食器類の如き物品Pを保管、運搬するよう梱包するものであって、物品Pを下段・中段覆いシート(3,4)を介して多段的に積み重ねて、梱包覆いシート(5,6,7,8)で全体を包み込み可能とした梱包シート構成体1を備えたからであり、これにより、物品Pの梱包作業を容易に行えると共に、各段の物品Pは下段覆い部3、中段覆い部4、上段覆い部5,6によってしっかりと保持されるものとなる。しかも、折り畳み式等のコンテナQと組み合わせることで、輸送時の物品Pの破損等を生じることなく、また保管、陳列時の開梱も円滑にし、しかも梱包シート構成体1の繰り返し使用も可能で経済的でもある。
【0013】
梱包シート構成体1は、その展開形状において、矩形状の底部2と、該底部2の一方の対辺に延設された梱包覆い部7,8と、該底部2の他方の対辺に延設された上段覆い部5,6と、梱包覆い部7,8の各連設部位若しくは上段覆い部5,6の各連設部位からそれぞれ付設された下段・中段覆い部3,4と、下段・中段覆い部3,4同士を固定する中段部固定手段11と、上段覆い部5,6同士を固定する上段部固定手段13と、梱包覆い部7,8同士を固定する梱包固定手段14とを備え、底部2に載置された下段位の物品Pを下段覆い部3で覆い、下段覆い部3の上に載置した中段位の物品Pを中段覆い部4で覆って中段部固定手段11で固定可能とし、さらに中段覆い部4の上に載置した上段位の物品Pを上段覆い部5,6で包み込んで上段部固定手段13で固定可能とし、さらに上段覆い部5,6の上から梱包覆い部7,8で包み込んで梱包部固定手段13で固定可能としたので、底部2、下段・中段覆い部3,4、上段覆い部5,6、梱包覆い部7,8それぞれによって大小異形の物品Pであっても、各段毎に同一高さとなるように重ね合わせてそれらを並置させることで多段状に梱包することができ、例えば輸送による販売店への納品、一時的なストックヤードでの保管、さらには陳列時の開梱等に際しても、物品Pを破損させることなく、いわゆる上流から下流に至るまでの流通経路で一連にして使用できる。
【0014】
中段部固定手段11は、中段覆い部4を固定させるよう当該中段覆い部4が付設された底部2一端側に対向している底部2他端側に延設された中段保持ベルト12を備え、該中段保持ベルト12は、中段覆い部4上に面ファスナ17,18によって接合可能として成るので、下段覆い部3によって保持される下段位の物品P、下段覆い部3に載置されて中段覆い部4によって保持される中段位の物品Pそれぞれを中段保持ベルト12でしっかりと固定することができる。
【0015】
上段部固定手段13は、上段覆い部5,6同士を重ね合わせて固定させるよう当該上段覆い部5,6それぞれに付設された面ファスナ19,20によって接合可能として成るので、上段覆い部5,6によって上段位の物品Pをしっかりと固定することができる。
【0016】
梱包固定手段14は、梱包覆い部7,8同士を重ね合わせて固定させるよう当該梱包覆い部7,8のいずれか一方に延設された梱包保持ベルト15を備え、該梱包保持ベルト15は、梱包覆い部7,8のいずれか他方に対して面ファスナ21,22によって接合可能として成るので、梱包覆い部7,8によって下段、中段、上段の各物品Pを梱包保持ベルト15でしっかりと固定することができる。
【0017】
底部2、梱包覆い部7,8、上段覆い部5,6、下段・中段覆い部3,4それぞれの物品Pに接触する面側には、滑り止め加工処理が施されているので、梱包シート構成体1によって各段位それぞれで梱包されている物品P間の相互のズレを未然に防止し、ひいては物品Pの破損等も生じさせない。
【0018】
特に、本発明に係る保管運搬用梱包装置は、物流用具として使用され、例えば物品Pの梱包、その輸送、保管、さらに陳列場所での開梱による取り出し等の一連の物品Pの流通をコンパクトに纏めた状態で行なえるのである。例えば、食器等の製造所の段階で物品Pを梱包シート構成体1によって梱包し、折り畳み式のコンテナQに収納した状態で輸送することで販売店舗に納品され、一時的にストックヤードに保管される。そして、商品としての物品Pが販売され、陳列棚が空いたときの商品補充時等ではそのまま移動され、開放される本発明梱包装置から物品Pが取り出されて陳列展示され、その後では、折り畳まれて、例えば製造所に回付されるという循環型物流用のものとして使用される。これにより、例えば食器等の割れやすい物品Pを循環型使用の梱包装置にて梱包することで物流費が節約でき、商品単価を低減化することにも役立つものとなる。
【0019】
また、本発明に係る保管運搬用梱包装置は上述したような物流用品として使用されるばかりでなく、各種物品の多段的梱包による保管、さらには移転・引っ越し時における日用品その他の梱包器材としての使用も可能である。
【0020】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項それぞれにおいて付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付したもので、図面中の符号によって示された構造・形状に本発明が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を実施するための一形態における一部切欠の展開状態の斜視図である。
【図2】使用例を説明するもので、展開した状態の底部に下段位の物品を載せた状態の斜視図である。
【図3】同じく下段位の物品を下段覆い部で覆った状態の斜視図である。
【図4】同じく下段覆い部の上に中段位の物品を載せて中段覆い部で覆ってから中段部固定手段で固定し、さらに上段位の物品を載置する状態の斜視図である。
【図5】同じく上段位の物品を上段覆い部で覆ってから上段部固定手段で固定した状態の斜視図である。
【図6】同じく梱包覆い部で覆い、梱包固定手段で固定した状態の斜視図である。
【図7】下段、中段、上段位それぞれで物品を梱包し、コンテナ内に収納した物品の最終梱包状態の断面図である。
【図8】折り畳み式のコンテナと共に折り畳まれた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を詳細に説明すると、図において示される符号1は、本発明に係る保管運搬用梱包装置を構成する物品梱包用の梱包シート構成体であり、主に例えば製造された物品をそのまま梱包し、輸送し、陳列のために開梱されるまでの一連の物流用具として使用される。すなわち、製造所の段階で例えば食器等の物品Pを梱包した梱包シート構成体1を折り畳み式のコンテナQに収納し、輸送することで当該物品Pが販売店に納品される。そして、場合によっては一時的にストックヤードに置かれた後に、商品陳列棚に運ばれ、開梱した梱包シート体1から物品Pが取り出され、商品陳列棚に並べられた後、空になった梱包シート構成体1およびコンテナQが折り畳まれて、再度、例えば製造所に回付されるという循環型の、繰り返し使用される物流用のものとして使用される。
【0023】
尚、以下の説明においては、梱包シート構成体1により梱包される商品販売用の物品Pとして、例えば皿、茶碗等の食器類を例にして説明するが、本発明によった梱包使用に係る物品Pは食器に限定されるものではなく、その他、割れ易い陶器や置物類等、その他の販売商品でも良い。
【0024】
梱包シート構成体1は、例えば上、中、下に区別して多段状に梱包したときの底側部、周側部、上側部等では外部からの衝撃その他から物品Pを保護するように、クッション材を内包している例えば合成樹脂製シート材等によって形成されている。これの展開された状態では、図1に示すように、大小異形であっても複数の物品Pを縦・横方向で並列載置できるよう、一辺長さが例えば約50〜60cm程度である矩形シート状の底部2における一方の対辺それぞれに矩形シート状の梱包覆い部7,8が対状となるようそれぞれ連設され、さらに底部2における他方の対辺それぞれに矩形シート状の上段覆い部5,6が対状となるようそれぞれ連設されて平面略十文字状となって形成されている。
【0025】
また、底部2上に各段毎に載置された物品Pを最終的に上段覆い部5,6、梱包覆い部7,8によって周囲の四方向から、また下方、上方から覆うのであり、底部2では全域で、上段覆い部5,6ではそのいずれか一方は全域で、いずれか他方は少なくとも段状に重ねられて梱包される物品Pの側方位に配置されて側方を覆う部位域である側方部5aで、梱包覆い部7,8では同様に物品Pの側方を覆う側方部7a,8a部分でクッション材9が内包されている。尚、これらの上段覆い部5,6、梱包覆い部7,8の側方部7a,8aは、物品Pを梱包したときの最外面部位に存するものとなり、クッション材9自体は、内部梱包の物品Pに対する外部からの衝撃その他に対する緩衝作用が発揮できる素材が選定され、またその厚さが設定されている。こうすることで、段状に重ね合わせられた物品Pが梱包されたときには、上下面、周囲面の全域がクッション材9によって覆われることになり、外部からの衝撃その他が梱包された物品Pに付与されないようにして、物品Pを保護するようになっている。
【0026】
また、底部2に連設された上段覆い部5,6の各連設部位にはそれぞれ下段覆い部3および中段覆い部4が、上段覆い部5,6上に重ね合わせられるように対向状に付設されている。これら下段覆い部3および中段覆い部4は、上段覆い部5,6それぞれの長さよりも若干長く形成されている。すなわち下段覆い部3は、底部2に置かれた下段位の物品Pを上方から覆って梱包するよう、下段位の物品Pの側面高さと当該物品Pの上面幅とを覆うに足りる長さ・幅を有し、中段覆い部4は、下段覆い部3上に置かれた中段位の物品Pを上方から覆って梱包するよう、下段位の物品P、中段位の物品Pの合計側面高さと、中段位の物品Pの上面幅とを覆うに足りる長さ・幅を有している。
【0027】
さらに下段覆い部3の底部2側寄りには下段位の物品Pの積み重ね高さを制限するための目印となる、例えば色付き糸の縫い込み等による高さ設定ライン16が表示されており、底部2上面に物品Pが積み重ね状に載せられる際に、下段覆い部3を垂直に立てた状態で物品Pの積み重ね高さをこの高さ設定ライン16に至らないように以下にすることによって、底部2に並置された下段位の複数の物品P全体の過大な積み重ねを未然に防止でき、下段覆い部3で覆った際に、当該下段覆い部3上面を略水平とするのに役立つ。これにより、下段覆い部3上に並置される中段位の複数の物品Pも安定して載せられるものとできるようにする(図3参照)。
【0028】
図2、図3に示すように、下段覆い部3が底部2側に折り返されて、中段覆い部4が中段位の物品Pを介在させて下段覆い部3の上に重ねられて相互間で固定されるものとなっている。すなわち、下段位および中段位の物品Pの梱包に際し、底部2上に載置された下段位の物品Pを下段覆い部3で覆い、下段覆い部3の上に中段位のさらに他の物品Pを載置して中段覆い部4で覆ってから中段部固定手段11で固定されるものとなっている。この中段部固定手段11は、下段覆い部3と前記一方の上段覆い部5との間において、底部2他端側から例えば3列状にした中段保持ベルト12が下段覆い部3と上段覆い部5とに沿った方向に延設されている。この中段保持ベルト12には面ファスナ17が付設されており、中段覆い部4の折り返し上面に当該中段覆い部4に沿った方向に例えば3列状となって付設されている面ファスナ18それぞれと、雌雄面相互によって接合可能としている。これによって、下段位および中段位の2段分の物品Pが中段部固定手段11によって上方から同時に固定される(図4参照)。
【0029】
また、図4に示すように、中段部固定手段11によって固定された中段覆い部4上には、上段位の物品Pが、例えば同種の物品が重ねられた状態で、大小異形であっても縦・横方向で適当に並置されて、全体が同一高さとなるように載置されるようになっている。
【0030】
そして、図5に示すように、他方の上段覆い部6が上段位の物品Pを覆うように底部2側に折り返されて、前記一方の上段覆い部5が他方の上段覆い部6の上に重ね合わせられた際には上段覆い部5,6同士は相互間で上段部固定手段13によって固定されるものとなっている。この上段部固定手段13は、上段覆い部5の折り返し下面の当該上段覆い部5の先端縁部に沿った方向に面ファスナ19が付設され、該面ファスナ19は、上段覆い部6の折り返し上面に当該上段覆い部6に沿った方向に例えば3列状となって付設されている面ファスナ20それぞれに跨らせるように、雌雄面相互によって接合可能としてある。これによって、下段位および中段位および上段位の3段分の物品Pが上段部固定手段13によって同時に固定される。
【0031】
このように、下段位、中段位、上段位におけるそれぞれの物品Pが、いずれも底部2の一方の対辺相互間で対向状に設けられている下段覆い部3、中段覆い部4、さらには上段覆い部5,6によって多段的にそれぞれで固定保持されるものとされる。尚、他方の上段覆い部6上面3列の面ファスナ20それぞれに、一方の上段覆い部5下面の1個の面ファスナー19が跨がって接合することで、上段覆い部5,6相互の位置合わせ、接合後のズレ防止を図ることができる。
【0032】
また、図5,図6に示すように、底部2の他方の対辺相互間で対向状に設けられている前記梱包覆い部7,8によって、下段覆い部3、中段覆い部4、上段覆い部5,6では覆われていない各段位の物品Pの側方を覆い、固定することで全体をしっかり梱包するようになっている。すなわち、図6に示すように、一方の梱包覆い部7が上段覆い部5に重ねられるように底部2側に折り返され、この一方の梱包覆い部7の上に他方の梱包覆い部8が重ねられるもので、重ねられた梱包覆い部7,8同士は梱包固定手段14で固定されるものとなっている。この梱包固定手段14は、一方の梱包覆い部7の端部側から当該梱包覆い部7に沿った方向に例えば3列状にした梱包保持ベルト15が延設されていて、該梱包保持ベルト15それぞれには面ファスナ21が付設されており、他方の梱包覆い部8の折り返し上面に当該梱包覆い部8に沿った方向に例えば3列となって付設されている面ファスナ22それぞれに雌雄面相互によって接合可能となっている。
【0033】
底部2、梱包覆い部7,8、上段覆い部5,6、下段・中段覆い部3,4それぞれの物品Pに接触する面側には、滑り止め加工処理が施されている。このうち梱包覆い部7,8側の滑り止め加工処理の面積は、当該梱包覆い部7,8の各長さの約半分の領域である前記側方部7a,8aをもって足りるものとなっている。これら滑り止め加工処理は、梱包シート構成体1により物品Pが梱包された際には、底部2と下段覆い部3との間に挟まれた空間内部での下段位の物品Pの滑りが防止され、さらに下段覆い部3と中段覆い部4との間に挟まれた空間内部での中段位の物品Pの滑りが防止される(図7参照)。また、下段位、中段位、上段位それぞれの物品Pにおいて、下段覆い部3、中段覆い部4および上段覆い部5,6相互によっては覆われない物品Pの側方面部分を梱包覆い部7,8の側方部7a,8aがその滑り止め処理面にて覆うものとなして、物品Pの滑りを一層防止している。
【0034】
また、梱包覆い部7の滑り止め加工処理部分と先端縁との間には梱包保持ベルト15に対して直角方向に沿って配される1列の面ファスナ23が付設されており、梱包覆い部8の折り返し上面に付設されている前記した3列の面ファスナ22それぞれに跨って同時に雌雄面相互によって接合されるものとしてある。これにより、梱包覆い部7,8相互間の接合を確実、安定したものとし、各段位の物品Pの保持、梱包を一層確実にする。
【0035】
次に、以上のように構成された形態についての使用の一例について説明すると、先ず、図2に示すように、上記した梱包シート構成体1を展開形状にしておいて、例えば食器等である場合、それらの大小、形状が異なる物品Pであっても、同種の物品Pを重ねておき、これらを底部2上に縦横方向で適当数にして並列載置する。このとき、下段覆い部3を垂直に立てた状態で高さ設定ライン16以下となるように物品Pの積み重ね高さ枚数を予め調整しておく。これにより、下段位となる積み重ね状の物品Pが縦横方向で均等な高さとなるように底部2上に配置する。
【0036】
図3に示すように、底部2の一方の対辺側で設けた下段覆い部3を底部2側に折り返し、底部2上の下段位の物品Pを当該下段覆い部3で覆う。そして、下段覆い部3の上にさらに中段位となる物品Pを同様に高さ調整して積み重ねて、これらを縦横方向に並列載置する。
【0037】
図4に示すように、同じく中段覆い部4を底部2側に折り返し、下段覆い部3上の中段位の物品Pを当該中段覆い部4で覆ってから、中段部固定手段11である中段保持ベルト12の面ファスナ17を中段覆い部4上面の面ファスナ18に接合して固定させる。そして、中段覆い部4の上に上段位となる物品Pを同様に高さが略合うようにそれぞれ積み重ねて、これらを縦横方向に並列載置する。
【0038】
図5に示すように、さらに同じく上段覆い部5,6それぞれを底部2側に折り返して、上段覆い部5,6相互間を上段部固定手段13である一方の上段覆い部5の面ファスナ19を他方の上段覆い部6の面ファスナ20に接合してしっかりと固定させる。
【0039】
図6に示すように、底部2の他方の対辺側で対向して設けた一方の梱包覆い部7を底部2側に折り返し、次に他方の梱包覆い部8を底部2側に折り返して、梱包固定手段14である梱包保持ベルト15の面ファスナ21を梱包覆い部8の面ファスナ22に接合してしっかりと固定させることで、全ての物品Pの最終梱包状態となる。
【0040】
こうして梱包シート構成体1により物品Pが梱包された際には、図7に示すように、底部2と下段覆い部3との間に挟まれた空間内部に積み重ね状となった下段位の複数の物品Pが滑りが防止された状態で保持され、さらに下段覆い部3と中段覆い部4との間に挟まれた空間内部に積み重ね状となった中段位の複数の物品Pが滑りが防止された状態で保持され、またさらに中段覆い部4と相互に重ね合わせた上段覆い部5,6との間に挟まれた空間内部に積み重ね状となった上段位の複数の物品Pが滑りが防止された状態で保持される。
【0041】
そして、下段、中段、上段のそれぞれの物品Pが梱包された後の梱包シート構成体1を、例えば折り畳み式等のコンテナQに収納することで保持され、この状態で輸送・運搬される。例えば輸送先の販売店舗等で物品Pを商品陳列棚等に陳列する際には、商品陳列棚位置までコンテナQごと運び込み、コンテナQ内から物品Pを梱包している梱包シート構成体1を取り出し、図5に示すように、梱包保持ベルト15の面ファスナ22から一方の梱包覆い部7の面ファスナ21を取り外して梱包覆い部7,8を開放する。次いで図4に示すように、面ファスナ19,20相互を剥がし、上段覆い部5,6を開放し、中段覆い部4上にある上段位の物品Pを取り出す。また、図3に示すように、面ファスナ17,18相互を剥がし、中段覆い部4を開放し、下段覆い部3上にある中段位の物品Pを取り出す。最後に、図2に示すように、下段覆い部3を開放し、底部2上にある下段位の物品Pを取り出す。
【0042】
全ての物品Pを取り出したら、図8に示すように梱包シート構成体1を、下段・中段覆い部3,4、上段覆い部5,6、梱包覆い部7,8の順に折り畳んで、コンパクトにし、コンテナQと共に例えば所定の発送元もしくは製造元に返還する。これによって、梱包シート構成体1の繰り返し利用が可能となり、エコにもつながるものとなる。
【符号の説明】
【0043】
P…物品 Q…コンテナ
1…梱包シート構成体 2…底部
3…下段覆い部 4…中段覆い部
5,6…上段覆い部 7,8…梱包覆い部
5a,7a,8a…側方部 9…クッション材
11…中段部固定手段 12…中段保持ベルト
13…上段部固定手段 14…梱包固定手段
15…梱包保持ベルト 16…高さ設定ライン
17,18、19,20,21,22,23…面ファスナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器類の如き物品を保管、運搬するよう梱包する保管運搬用梱包装置であって、物品を下段・中段覆いシートを介して多段的に積み重ねて、梱包覆いシートで全体を包み込み可能とした梱包シート構成体を備えたことを特徴とする保管運搬用梱包装置。
【請求項2】
梱包シート構成体は、その展開形状において、矩形状の底部と、該底部の一方の対辺に延設された梱包覆い部と、該底部の他方の対辺に延設された上段覆い部と、梱包覆い部の各連設部位若しくは上段覆い部の各連設部位からそれぞれ付設された下段・中段覆い部と、下段・中段覆い部同士を固定する中段部固定手段と、上段覆い部同士を固定する上段部固定手段と、梱包覆い部同士を固定する梱包固定手段とを備え、底部に載置された下段位の物品を下段覆い部で覆い、下段覆い部の上に載置した中段位の物品を中段覆い部で覆って中段部固定手段で固定可能とし、中段覆い部の上に載置した上段位の物品を上段覆い部で包み込んで上段部固定手段で固定可能とし、さらに上段覆い部の上から梱包覆い部で包み込んで梱包固定手段で固定可能として成る請求項1記載の保管運搬用梱包装置。
【請求項3】
中段部固定手段は、中段覆い部を固定させるよう当該中段覆い部が付設された底部一端側に対向している底部他端側に延設された中段保持ベルトを備え、該中段保持ベルトは、中段覆い部に対して面ファスナによって接合可能として成る請求項2記載の保管運搬用梱包装置。
【請求項4】
上段部固定手段は、上段覆い部同士を重ね合わせて固定させるよう当該上段覆い部それぞれに付設された面ファスナによって接合可能として成る請求項2または3記載の保管運搬用梱包装置。
【請求項5】
梱包固定手段は、梱包覆い部同士を重ね合わせて固定させるよう当該梱包覆い部のいずれか一方に延設された梱包保持ベルトを備え、該梱包保持ベルトは、梱包覆い部のいずれか他方に対して面ファスナによって接合可能として成る請求項2乃至4のいずれか記載の保管運搬用梱包装置。
【請求項6】
底部,上段覆い部、梱包覆い部における少なくとも物品の側方部位にはクッション材を内包して成る請求項2乃至5のいずれか記載の保管運搬用梱包装置。
【請求項7】
底部、梱包覆い部、上段覆い部、下段・中段覆い部それぞれの物品に接触する面側には、滑り止め加工処理が施されている請求項2乃至6のいずれか記載の保管運搬用梱包装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−32173(P2013−32173A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169027(P2011−169027)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(592075079)株式会社アサヒ (6)
【出願人】(502022896)株式会社エコシステム (4)
【Fターム(参考)】