説明

保護されたイソシアネート基を有する粒子を含有する塗料

本発明の対象は、
a)反応性基を有する被膜形成樹脂(L)を固体含量に対して20〜90質量%、b)塗料の硬化の際に被膜形成樹脂(L)の反応性基と熱処理で反応する反応性官能基を有する塗料硬化剤(H)を固体含量に対して1〜90質量%、c)熱処理の際に保護基の分解下にイソシアネート官能基を遊離する少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を粒子(P)の表面上に有する粒子(P)を固体含量に対して0.1〜15質量%、この場合この粒子(P)は、コロイド状の金属酸化物ゾルまたは酸化珪素ゾルと、このコロイド状の金属酸化物ゾルまたは酸化珪素ゾルに対して反応性のシリル官能基および保護されたイソシアネート官能基を有するオルガノシラン(A)との反応によって得ることができ、d)溶剤または溶剤混合物を全部の塗料調製物(B)に対して0〜90質量%およびe)場合によっては他の塗料成分および添加剤を含有する塗料調製物(B)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の表面上に保護されたイソシアネート基を有する粒子を含有する塗料調製物、殊にトップコート材料およびクリアコート材料に関する。
【0002】
粒子、殊にナノ粒子を含有する塗装系は、公知技術水準である。相応する塗料は、例えば欧州特許第1249470号明細書、WO 03/16370、米国特許第20030194550号明細書または米国特許第20030162015号明細書中に記載されている。この場合、粒子は、殊に耐引掻性ならびに場合によっては耐化学薬品性に関連する相応する塗料の性質の改善を導く。
【0003】
有機塗装系中での一般に無機の粒子を使用する際にしばしば起こる問題は、粒子と塗料材料マトリックスとの多くの場合に不十分な相容性にある。これは、粒子が十分に良好には塗料材料マトリックス中に分散されないことをまねきうる。その上、良好に分散された粒子であっても長い放置時間または貯蔵時間で沈殿する可能性があり、この場合には、場合により大きな凝集体または凝集塊が形成され、これら凝集体または凝集塊は、再分散の場合でも元来の粒子に分離することが不可能であるかまたは困難である。このような不均一系の加工は、全ての場合に極めて困難であり、むしろしばしば不可能である。こうして、塗料の塗布および硬化後に平滑面を有する塗料は、一般に製造することができないかまたは極めて費用をかけてのみ製造することができる。
【0004】
従って、塗料材料マトリックスとの良好な相容性を生じる有機基を表面上に有する粒子を使用することは、有利である。こうして、無機粒子は、有機シェルによって"マスク"されることになる。その上、この場合には、特に好ましい塗料の性質は、粒子表面上の有機官能基が塗料材料マトリックスに対してなお反応性であり、したがってこの有機官能基が相応する塗料のそれぞれの硬化条件下でマトリックスと反応しうる場合に達成されることができる。即ち、粒子が塗料の硬化中に化学的にマトリックス中に組み込まれることが達成され、このことは、結果としてしばしば特に良好な機械的性質を生じ、しかも、改善された耐化学薬品性も生じる。この種の系は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10247359号明細書A1、欧州特許出願公開第832947号明細書または欧州特許出願公開第0872500号明細書A1中に記載されている。前記刊行物中に記載された系の欠点は、一般に塗料の全固体含量に対する比較的高価なナノ粒子の含量が比較的高いことである。
【0005】
更に、ナノ粒子で変性された結合剤を含有する塗料を使用することは、公知である。この塗料は、反応性官能価を備えた粒子を補足的機能を有する結合剤と反応させることにより製造されることができる。即ち、この場合には、有機官能性粒子は、塗料の硬化の際に初めて化学的に塗料材料マトリックス中に組み込まれるのではなく、結合剤の製造の際に既に化学的に塗料材料マトリックス中に組み込まれている。この種の系は、例えば欧州特許出願公開第1187885号明細書またはWO 01/05897中に記載されている。しかし、この種の系は、この種の系の製造の際に比較的に費用がかかるという欠点を有し、このことは、高い製造費をまねく。
【0006】
特に重要な塗料タイプの場合には、ヒドロキシ官能性プレポリマーからなる被膜形成樹脂が使用され、この被膜形成樹脂は、塗料の硬化の際にイソシアネート官能性硬化剤と反応される。このポリウレタン塗料は、特に良好な性質、例えば卓越した耐化学薬品性を示し、これとは異なり、殊に前記系の耐引掻性の場合には、なお改善が必要とされる。典型的には、このポリウレタン塗料は、特に価値が高く要求の多い使用分野において、例えば自動車産業および乗物産業におけるOEM塗装におけるクリアコート材料またはトップコート材料として使用される。同様に、自動車修復のための多くの場合のトップコート材料もこの種のイソシアネート硬化系からなる。
【0007】
典型的には、2つの異なるポリウレタン塗料系、所謂2K系と1Kとは、区別される。第1のポリウレタン塗料系は、本質的にイソシアネート硬化剤からなる2つの成分からなり、一方で、イソシアネート反応性基を有する被膜形成樹脂は、第2の成分中含有されている。この場合、2つの成分は、別々に貯蔵および運搬されなければならないし、加工の直前で初めて混合されてよい。それというのも、完成された混合物は、著しく制限された可使時間だけを有するからである。従って、被膜形成樹脂と共に、保護されたイソシアネート基を有する硬化剤が存在する1つの成分だけからなる所謂1K系は、有利である。1Kは、熱的に硬化され、イソシアネート単位の保護基は、分離され、引続き脱保護されたイソシアネートは、被膜形成樹脂と反応することができる。この種の1K塗料の典型的な焼付け温度は、120〜160℃である。
【0008】
殊に、この価値の高い塗料の場合には、さらなる性質の改善が望まれている。これは、殊に乗物の塗装に云えることである。即ち、なかんずく従来の自動車塗装の達成可能な耐引掻性は、なお不十分であり、したがって例えば洗浄通路内で洗浄水中の粒子による塗料の目立った引掻き傷が生じる。それによって、塗料の光沢は、いつまでも持続的に損なわれる。この場合には、よりいっそう良好な耐引掻性を達成することができる配合物が望まれる。
【0009】
この課題を解決するための特に好ましい方法は、粒子の表面上に保護されたイソシアネート官能基を有する粒子を使用することである。この種の粒子が1Kポリウレタン塗料中に使用される場合には、塗料の硬化の際にイソシアネート官能基が粒子表面上で遊離され、この粒子は、化学的に塗料中に組み込まれる。その上、保護されたイソシアネート官能基は、粒子と塗料材料マトリックスとの相容性を改善する。
【0010】
保護されたイソシアネート官能基を含有するこの種の粒子は、原理的に既に公知である。典型的には、前記の粒子は、遊離珪素官能基または金属水酸化物官能基を有する粒子を、有機基が保護されたイソシアネート官能基を有するようなアルコキシシリル官能性有機珪素化合物と縮合させることにより製造される。この種のマスクされたイソシアネート基を有する有機珪素化合物は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第3424534号明細書、欧州特許第0212058号明細書B1、特開平08−291186号公報または特開平10−067787号公報中に既に記載されている。保護されたイソシアネート官能基を有する粒子それ自体ならびに該粒子の塗料中への使用は、欧州特許出願公開第0872500号明細書中に記載されている。
【0011】
実際に、塗料の耐引掻性は、この種の粒子を組み込むことによって著しく上昇させることができる。しかし、公知技術水準に記載された全ての方法の場合、この粒子を使用する場合には、なお最適な結果は、達成されていない。殊に、欧州特許出願公開第0872500号明細書中に記載の系は、この種の塗料の使用が大型の量産塗装において既に専ら費用の理由から実現させるのが困難であるように高い粒子含量を有する。
【0012】
従って、本願の課題は、公知技術水準に相応する欠点を克服する塗料系を開発することであった。
【0013】
本発明の対象は、
a)反応性基を有する被膜形成樹脂(L)を固体含量に対して20〜90質量%、
b)塗料の硬化の際に被膜形成樹脂(L)の反応性基と熱処理で反応する反応性官能基を有する塗料硬化剤(H)を固体含量に対して1〜90質量%、
c)熱処理の際に保護基の分解下にイソシアネート官能基を遊離する少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を粒子(P)の表面上に有する粒子(P)を固体含量に対して0.1〜15質量%、この場合この粒子(P)は、コロイド状の金属酸化物ゾルまたは酸化珪素ゾルと、このコロイド状の金属酸化物ゾルまたは酸化珪素ゾルに対して反応性のシリル官能基および保護されたイソシアネート官能基を有するオルガノシラン(A)との反応によって得ることができ、
d)溶剤または溶剤混合物を全部の塗料調製物(B)に対して0〜90質量%および
e)場合によっては他の塗料成分および添加剤を含有する塗料調製物(B)である。
【0014】
この場合、固体含量は、塗料の硬化の際に塗料中に残留する塗料成分を含む。
【0015】
本発明は、粒子(P)を塗料系中で使用する際に生じる塗料の耐引掻性が使用される粒子の濃度に比例して変化しないことを見出したことに基づく。即ち、それどころかクリアコート材料の耐引掻性の明らかな改善を達成するためには、既に記載された、粒子(P)の小さな含量または極めて小さな含量で十分であるが、他方、部分的には、粒子(P)の明らかに高い含量によっても耐引掻性のさらなる著しい向上は、もはや達成することができない。
【0016】
この場合、比較的高価な粒子(P)の小さな含量は、一面で高度に耐引掻性の塗料の比較的安価な製造を可能にし、他面、低い粒子含量は、別の塗料の性質、例えば塗料の弾性または透明度および表面平滑度に対する粒子の影響を減少させる。従って、粒子含量が低いことは、公知技術水準と比較して大きな利点である。
【0017】
本発明の好ましい実施態様において、塗料調製物(B)は、ヒドロキシル官能性被膜形成樹脂(L)を含有する。
【0018】
更に、塗料硬化剤(H)がメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を含有する塗料調製物(B)は、好ましい。しかし、特に好ましいのは、粒子(P)と同様に、熱処理の際に保護基の分解下にイソシアネート官能基を遊離する保護されたイソシアネート基を有する塗料硬化剤(H)を含有する塗料調製物(B)である。
【0019】
この場合、粒子(P)は、有利にコロイド状の金属酸化物ゾルまたは酸化珪素ゾルを一般式(I)
(R1O)3-n(R2nSi−A−NH−C(O)−X (I)
〔式中、
1は、水素、それぞれ1〜6個のC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表わし、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNR3基によって中断されていてよく、
2は、それぞれ1〜12個のC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基を表わし、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNR3基によって中断されていてよく、
3は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アミノアルキル基またはアスパラギン酸エステル基を表わし、
Xは、60〜300℃の温度でHXの形で脱離される保護基であり、その際、イソシアネート官能基が遊離され、
Aは、1〜10個の炭素原子を有する2価の置換されていてよいアルキレン基、シクロアルキレン基またはアリーレン基を表わし、および
nは、0、1または2の値を取ることができる〕で示されるオルガノシラン(A)と反応させることによって得ることができる。
【0020】
一般式(I)中の基R1は、好ましくはメチル基またはエチル基である。基R2は、遊離にメチル基、イソプロピル基またはフェニル基である。R3は、特に最大で10個の炭素原子、殊に最大で4個の炭素原子を有する。Aは、有利にハロゲン原子および/またはアルキル側鎖で置換されていてよい、1〜6個の炭素原子を有する二官能性の炭素鎖である。特に好ましくは、Aは、(CH23基またはCH2基である。
【0021】
保護基、殊にHXの好ましい脱離温度は、80〜200℃、特に有利に100〜170℃である。保護基HXとしては、第2アルコールまたは第3アルコール、例えばイソプロパノールまたは第三ブタノール、CH酸性化合物、例えばマロン酸ジエチルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルエステル、オキシム、例えばホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、ブタンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシムまたはジエチレングリオキシム、ラクタム、例えばカプロラクタム、バレロラクタム、ブチロラクタム、フェノール、例えばフェノール、o−メチルフェノール、N−アルキルアミド、例えばN−メチルアセトアミド、イミド、例えばフタルイミド、第2アミン、例えばジイソプロピルアミン、イミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾールが使用されてよい。
【0022】
この場合には、特に保護基、例えばブタンオキシム、3,5−ジメチルピラゾール、カプロラクタム、マロン酸ジエチルエステル、マロン酸ジメチルエステル、アセト酢酸エステル、ジイソプロピルアミン、ピロリドン、1,2,4−トリアゾール、イミダゾールおよび2−イソプロピルイミダゾールが使用される。特に好ましくは、低い焼付け温度を可能にする保護基、例えばマロン酸ジエチルエステル、マロン酸ジメチルエステル、ブタンオキシム、ジイソピルアミン、3,5−ジメチルピラゾールおよび2−イソプロピルイミダゾールが使用される。
【0023】
本発明の好ましい実施態様において、塗料調製物(B)中で50%を上廻る、好ましくは少なくとも70%または殊に好ましい少なくとも90%の粒子(P)の保護されたイソシアネート基には、ブタンオキシムよりも低い脱離温度を有する保護基が備えられている。特に有利には、塗料調製物(B)中の粒子(P)の全部の保護されたイソシアネート基の保護基は、ブタンオキシムよりも低い脱離温度を有する。
【0024】
この場合には、保護されたイソシアネート基の少なくとも50%、有利に少なくとも70%または殊に有利に90%、特に有利に100%がジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾールまたは2−イソプロピルイミダゾールで保護されている粒子を含有する塗料調製物(B)が特に好ましい。
【0025】
更に、本発明の好ましい実施態様において、本発明による塗料調製物(B)は、50%を上廻る、有利に少なくとも70%または殊に有利に少なくとも90%の粒子(P)の保護されたイソシアネート基が、硬化剤(H)の保護されたイソシアネート基の保護基の少なくとも55%、有利に少なくとも70%、特に有利に少なくとも90%よりも低い脱離温度を有する保護基を備えていることを示す。この場合には、殊に塗料調製物(B)中の粒子(P)の全ての保護されたイソシアネート基の保護基が硬化剤(H)の保護されたイソシアネート基の全部の保護基よりも低い脱離温度を有するような塗料調製物が好ましい。
【0026】
この場合には、30分内に相応するタイプの保護基の少なくとも80%が遊離イソシアネート基の放出下に脱離されるようにするために少なくとも必要とされる温度が脱離温度として定義される。この場合、脱離温度は、例えば熱重量分析法によって測定されることができる。この場合、粒子(P)に対するイソシアネート保護基の脱離温度の測定は、粒子(P)自体の測定によって行なわれるのではなく、シラン前駆体(A)の測定によって行なわれる。即ち、この場合に得られる脱離温度は、粒子(P)に対するイソシアネート保護基の脱離温度として定義される。この方法は、好ましい。それというのも、粒子(P)は、しばしば単離することができないかまたは単離するのが困難であり、溶解された状態でのみ安定性であるからである。
【0027】
粒子(P)を製造する場合には、一般に水性溶剤中または非水性溶剤中にサブミクロンの大きさで相応する酸化物粒子の分散液として存在するコロイド状の酸化珪素または金属酸化物から出発する。この場合には、なかんずく金属、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、ハフニウムおよび錫の酸化物が使用されてよい。好ましくは、コロイド状の酸化珪素が使用される。この場合には、一般に水性溶剤中または非水性溶剤中の二酸化珪素粒子の分散液が重要であり、その際、コロイド状のシリカゾルの有機溶液が特に好ましい。一般に、シリカゾルは、1〜50%の溶液、有利に20〜40%の溶液である。この場合、典型的な溶剤は、水と共に、なかんずくアルコール、殊に1〜6個の炭素原子を有するアルカノール、しばしばイソプロパノールであるが、しかし、別の大抵の低分子量のアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールおよび第三ブタノールでもあり、この場合二酸化珪素粒子の平均粒径は、1〜100nm、有利に5〜50nm、特に有利に8〜30nmである。
【0028】
コロイド状酸化珪素またはコロイド状金属酸化物からの粒子(P)の製造は、種々の方法により行なうことができる。しかし、好ましくは、シラン(A)を水性ゾルまたは有機ゾルに添加することによって行なわれる。このゾルは、場合によっては例えば塩酸またはトリフルオロ酢酸によって酸性に安定化されているかまたは例えばアンモニアによってアルカリ性に安定化されている。反応は、一般に0〜200℃、有利に20〜80℃、特に有利に20〜60℃の温度で行なわれる。反応時間は、典型的に5分間〜48時間、有利に1〜24時間である。選択的に、なお酸性、塩基性または重金属含有の触媒が添加されてもよい。好ましくは、前記触媒は、1000ppm未満の量で使用される。しかし、特に有利には、特殊な触媒の添加は省略される。
【0029】
コロイド状の酸化珪素ゾルまたは金属酸化物ゾルは、しばしば水性分散液またはアルコール性分散液中に存在するので、溶剤を粒子(P)の製造中または製造後に別の溶剤または別の溶剤混合物と交換することは、好ましい。これは、例えば元来の溶剤を蒸留により除去することによって行なうことができ、この場合には、新規の溶剤または溶剤混合物は、1工程または数工程で蒸留前に添加されてもよいし、蒸留中に添加されてもよいし、または蒸留後に初めて添加されてもよい。この場合、適当な溶剤は、例えば水、芳香族または脂肪族アルコール、但し、この場合脂肪族アルコール、殊に1〜6個の炭素原子を有する脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第三ブタノール、ペンタノールおよびヘキサノールの種々の領域異性体(Regioisomere))が好ましいものとし、エステル(例えば、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、ブチルジグリコールアセテート、メトロキシプロピルアセテート)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、第三ブチルメチルエーテル、THF)、芳香族溶剤(トルエン、キシレンの種々の領域異性体、しかも混合物でもよく、例えばソルベントナフサ)、ラクトン(例えば、ブチロラクトン等)またはラクタム(例えば、N−メチルピロリドン)であることができる。この場合には、非プロトン性溶剤が好ましいかまたは専らかまたは少なくとも部分的に非プロトン性溶剤からなる溶剤混合物が好ましい。非プロトン性溶剤は、場合による溶剤残基が塗料の硬化の際に保護基の脱離後にイソシアネート官能基に対して非反応性であるという利点を有する。粒子分散液の製造と共に、粒子を固体として単離することも好ましい。
【0030】
コロイド状の酸化珪素ゾルまたは金属酸化物ゾルとオルガノシラン(A)との反応は、好ましくは直接に反応成分を混合することで行なわれる。この場合、スペーサーAがCH2橋を表わすような一般式(I)のシラン(A)を使用することは、特に好ましい。それというのも、このシラン(A)は、金属酸化物粒子または酸化珪素粒子のヒドロキシル基に対して特に高い反応性を示し、したがってこの粒子の官能化は、前記のシランを用いて特に迅速に低い温度、殊に既に室温で実施可能であるからである。この場合、コロイド状の金属酸化物または酸化珪素は、水性または無水のプロトン性または非プロトン性溶剤中で官能化されることができる。
【0031】
この場合、モノアルコキシシリル官能基だけを有する一般式(I)のシラン(A)(即ち、nが2である一般式(I)のシラン)を使用する場合には、粒子(P)の製造の際に水の添加を省略することができる。それというのも、モノアルコキシシリル基は、直接にコロイド状の金属酸化物または酸化珪素粒子の表面上のヒドロキシル官能基と反応しうるからである。これとは異なり、ジアルコキシシリル基またはトリアルコキシシリル基を有するシラン(A)(即ち、nが0または1であるような一般式(I)のシラン)を使用する場合には、粒子(P)の製造の際の水の添加は、しばしば好ましい。それというのも、アルコキシシランは、この場合にはコロイド状の金属酸化物または酸化珪素のヒドロキシル基と反応しうるだけでなく、加水分解後にも互いに反応しうるからである。この場合には、互いに架橋されたシラン(A)からなるシェルを有する粒子(P)が生じる。
【0032】
粒子(P)の製造の場合には、表面変性のためにシラン(A)と共に、シラン(A)と別のシラン(S1)、シラザン(S2)またはシロキサン(S3)との任意の混合物が使用されてもよい。この場合、シラン(S1)は、ヒドロキシシリル基を有するかまたは加水分解可能なシリル官能基を有し、この場合には、このシリル官能基が好ましい。それと共に、このシランは、他の有機官能基を有することができるが、しかし、シラン(S1)は、他の有機官能基なしに使用することもできる。
【0033】
特に有利には、シラン(A)と一般式(II)
(R1O)4-a-b(R2aSiR4b (II)
〔式中、
1、R2およびR3は、一般式(I)で記載された意味を有し、
4は、ハロゲン原子、アミノ基、エーテル基、エステル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアネート基、メタクリル基または(ポリ)グリコール基で置換されていてよい、1〜18個の炭素原子を有する同一かまたは異なるSiC結合した炭化水素基を表わし、この場合この(ポリ)グリコール基は、オキシエチレン単位および/またはオキシプロピレン単位から構成されており、
aは、0、1、2または3を表わし、および
bは、0、1、2または3を表わす〕で示されるシラン(S1)との混合物が使用される。
【0034】
この場合、aは、有利に0、1または2を表わし、他方、bは、有利に0または1を表わす。
【0035】
シラザン(S2)またはシロキサン(S3)としては、特に有利にヘキサメチルジシラザンまたはヘキサメチルジシロキサンが使用される。
【0036】
本発明の1つの好ましい実施態様において、塗料調製物(B)は、
a)被膜形成樹脂(L)の1つを固体含量に対して30〜80質量%、
b)塗料硬化剤(H)の1つを固体含量に対して10〜60質量%、
c)粒子(P)を固体含量に対して0.1〜12質量%、
d)溶剤または溶剤混合物を全部の塗料調製物(B)に対して0〜80質量%および
e)場合によっては他の塗料成分および添加剤を含有する。
【0037】
特に有利には、塗料調製物(B)は、
a)被膜形成樹脂(L)の1つを固体含量に対して40〜70質量%、
b)塗料硬化剤(H)の1つを固体含量に対して15〜50質量%、
c)粒子(P)を固体含量に対して0.1〜10質量%、
d)溶剤または溶剤混合物を全部の塗料調製物(B1)または(B2)に対して20〜70質量%および
e)場合によっては他の塗料成分および添加剤を含有する。
【0038】
特に有利には、全部の塗料調製物(B)に対する単数または複数の溶剤の含量は、20〜60質量%である。
【0039】
粒子(P)の含量は、固体含量に対して有利に0.2〜10質量%、特に有利に0.3〜8質量%である。本発明の特に好ましい実施態様において、粒子(P)の含量は、固体含量に対して0.5〜5質量%、殊に0.8〜3質量%である。
【0040】
粒子(P)と共に本発明による塗料調製物(B)中に含有されている被膜形成樹脂(L)は、有利にヒドロキシル基含有プレポリマー、特に有利にヒドロキシル基含有ポリアクリレートまたはポリエステルからなる。塗料の製造に適したこの種のヒドロキシル基含有のポリアクリレートおよびポリエステルは、当業者に久しく公知であり、関連文献にしばしば記載されている。
【0041】
また、同様に、本発明による塗料調製物(B)中に含有されている塗料硬化剤(H)は、有利にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂であるか、または保護されたイソシアネート基を含有し、この保護されたイソシアネート基は、公知技術水準として十分に公知でありかつしばしば相応する刊行物中に記載されているように、熱処理の際に保護基を脱離しながらイソシアネート官能基を遊離する。この場合、特に好ましいのは、保護されたイソシアネート官能基を含有する硬化剤(H)である。この目的のために、多くの場合には、先にそれぞれ保護基を備えていてよい常用のジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートが使用される。この場合、保護基としては、一般式(I)ならびに一般式(I)に続く段落で保護基HXとして記載されているような化合物が適しているが、しかし、この場合には、粒子(P)および硬化剤(H)の保護基は、場合によっては本発明の記載された好ましい実施態様の記載に相応して互いに適合されていなければならない。イソシアネートとしては、原理的に刊行物中にしばしば記載されているような全ての常用のイソシアネートが使用されることができる。常用のイソシアネートは、例えば粗製または工業用MDIの形ならびに純粋な4,4′−異性体または2,4′−異性体またはその混合物の形のジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、種々の領域異性体の形のトリレンジイソシアネート(TDI)、ジイソシアナトナフタリン(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、過水素化MDI(H−MDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナト−4−メチルシクロヘキサンまたはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。ポリイソシアネートの例は、ポリマーMDI(P−MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートならびに上記のジイソシアネートの全部のイソシアヌレートトリマーまたはビウレットトリマーである。それと共に、さらに封鎖されたNCO基を有する上記のイソシアネートのオリゴマーが使用されてもよい。全部のジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートは、単独で使用されてもよいし、混合物で使用されてもよい。この場合、有利には、比較的にUV安定性の脂肪族イソシアネートのイソシアヌレートトリマーおよびビウレットトリマー、特に好ましくはHDIおよびIPDIのトリマーが使用される。
【0042】
硬化剤(H)および粒子(P)の封鎖されたイソシアネート基と被膜形成樹脂(L)のイソシアネート反応性基との比は、通常0.5〜2、有利に0.8〜1.5、特に有利に1.0〜1.2である。
【0043】
更に、塗料調製物(B)は、なお通常の溶剤ならびに塗料調製物において通常の添加剤および塗料成分を含有することができる。溶剤としては、例示的に芳香族炭化水素および脂肪族炭化水素、エステル、例えばブチルアセテート、ブチルジグリコールアセテート、エチルアセテートまたはメトキシプロピルアセテート、エーテル、アルコール、例えばイソプロパノールまたはイソブタノール、ケトン、例えばアセトンまたはブチルメチルケトンならびにヘテロ環式化合物、例えばラクトンまたはラクタムが挙げられる。更に、重要な溶剤は、水である。即ち、水性塗料は、殊に低いVOC含量(揮発性有機化合物)のために著しく重要である。この場合、添加剤としては、特にレベリング助剤、界面活性剤、付着助剤、光安定剤、例えばUV吸収剤および/またはラジカル捕捉剤、チキソトロピー剤ならびに他の固体を挙げることができる。塗料調製物(B)ならびに硬化された塗膜のそれぞれの望ましい特性プロフィールを形成させるために、この種の添加剤は、一般に省略することができない。同様に、塗料調製物(B)は、顔料を含有していてもよい。
【0044】
好ましい方法の場合、本発明による塗料調製物(B)は、粒子(P)を混合工程中に粉末または分散液として適当な溶剤中に添加することにより製造される。しかし、それと共に、なおもう1つの方法が好ましく、この場合には、粒子(P)および1つ以上の塗料成分から最初にマスターバッチが15%を上廻る、有利に25%を上廻る、特に有利に35%を上廻る粒子濃度で製造される。次に、本発明による塗料調製物(B)の製造の場合には、このマスターバッチは、他の塗料成分と混合される。マスターバッチの製造が粒子分散液から出発する場合には、粒子分散液の溶剤をマスターバッチの製造の経過中に、例えば蒸留処理により除去することが好ましいか、または別の溶剤または溶剤混合物と交換することが好ましい。
【0045】
得られた塗料調製物(B)は、耐引掻強さ、耐摩耗性または耐化学薬品性を改善するために任意の支持体の被覆に使用されてよい。好ましい支持体は、プラスチック、例えばポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンまたはポリ塩化ビニルならびに導入された工程で塗布された別の被覆である。
【0046】
同様に、この塗料調製物(B)は、耐引掻強さを有するクリヤー塗料または上塗り塗料として、例えば自動車工業において使用されてもよい。前記塗料の塗布は、任意の方法、例えば浸漬法、スプレー法、及び注型法により行なわれてよい。「ウェットインウェット」法による塗布も可能である。硬化は、封鎖されたイソシアネートに必要とされる条件下で加熱によって行なわれるが、しかし、触媒の添加によって促進されてもよい。
【0047】
上記の式の全ての記号はそれぞれ互いに無関係な意味を有する。全ての式において珪素原子は四価である。
【0048】
別記しない限りは全ての量および百分率の記載は、質量に対するものであり全ての圧力は0.10MPa(絶対)であり、全ての温度は20℃である。
【0049】
実施例:
合成例1:ジイソプロピルアミンにより保護されたイソシアネート基を有するアルコキシシラン(シラン1)の製造
ジイソプロピルアミン86.0gおよびBorch(登録商標)触媒0.12g(Borchers GmbH社の触媒VP 0244)を装入し、80℃に加熱する。1時間でイソシアナトメチルトリメトキシシラン15000gを滴加し、この混合物を60℃で1時間、攪拌する。1H−NMRおよびIR分光分析法は、イソシアナトシランが完全に反応されたことを示す。
【0050】
合成例2:
ジイソプロピルアミンにより保護されたイソシアネート基を有するアルコキシシラン(シラン2)の製造
ジイソプロピルアミン74.5gおよびBorch(登録商標)触媒0.12g(Borchers GmbH社の触媒VP 0244)を装入し、80℃に加熱する。1時間で3−イソシアナトメチルトリメトキシシラン15000gを滴加し、この混合物を60℃で1時間、攪拌する。1H−NMRおよびIR分光分析法は、イソシアナトシランが完全に反応されたことを示す。
【0051】
合成例3:
封鎖されたイソシアネート基で変性されたSiO2ナノゾル粒子の製造
合成例1により製造された、ジイソプロピルアミンにより保護されたイソシアナトシラン(シラン1)1.40gをイソプロパノール1.0g中に溶解した。次に、30分間でSiO2オルガノゾル20g(Nissan Chemicals社のIPA-ST、SiO230質量%、平均粒径12nm)を滴加し、pH値をトリフルオロ酢酸の添加によって3.5に調節する。得られた分散液を60℃で3時間攪拌し、引続き室温で18時間攪拌する。その後に、メトキシプロピルアセテート18.1gを添加する。数分間攪拌し、引続きイソプロパノールの大部分を70℃で留去する。即ち、ナノ粒子ゾルが29.4gに濃縮されるまで蒸留する。
【0052】
25.5%の固体含量を有する分散液が生じる。SiO2含量は、20.8%であり、分散液中の保護されたイソシアネート基の含量は、0.17mmol/gである。この分散液は、簡単に混濁され、ティンダル効果を示す。
【0053】
合成例4:
封鎖されたイソシアネート基で変性されたSiO2ナノゾル粒子の製造
合成例2により製造されたジイソプロピルアミンにより保護されたイソシアナトシラン1.54g(シラン2)を装入する。次に、30分間でSiO2オルガノゾル20g(Nissan Chemicals社のIPA-ST、SiO230質量%、平均粒径12nm)を滴加し、pH値をトリフルオロ酢酸の添加によって3.0に調節する。得られた分散液を60℃で3時間攪拌し、引続き室温で24時間攪拌する。
【0054】
生じる分散液は、35%の固体含量(粒子含量)を有し、SiO2含量は、27.9%であり、分散液中の保護されたイソシアネート基の含量は、0.23mmol/gである。この分散液は、簡単に混濁され、ティンダル効果を示す。
【0055】
例1〜8:
封鎖されたイソシアネート基で変性されているSiO2ナノゾル粒子を含有する1K塗料調製物の製造
本発明による塗料調製物を製造するために、52.4質量%の固体含量(溶剤:ソルベントナフサ、メトキシプロピルアセテート(10:1))、樹脂溶液1g当たり1.46mmol/gのヒドロキシ含量および10〜15mg KOH/gの酸価を有する、アクリレートをベースとする塗料ポリオールを、Bayer社のDesmodur(登録商標)BL 3175 SN(ブタンオキシムで封鎖されたポリイソシアネート、2.64mmol/gの封鎖されたNCO含量)と混合する。この場合に使用される、それぞれの成分の量は、第1表から確認することができる。引続き、第1表に記載された量の合成例3により製造された分散液を添加する。この場合には、1.1:1のそれぞれ保護されたイソシアネート官能基とヒドロキシル基とのモル比が達成される。更に、それぞれジブチル錫ジラウレート0.01gおよびイソプロパノール中のTEGO AG社の10%溶液のADDID(登録商標)100 0.03g(ポリジメチルシロキサンをベースとする流展助剤)を混入し、それによって約50%の固体含量を有する塗料調製物を得る。この最初になお弱く混濁している混合物を室温で48時間攪拌し、この場合には、澄明な塗料調製物が得られる。
【0056】
【表1】

【0057】
例10:封鎖されたイソシアネート基で変性されているSiO2ナノゾル粒子を含有する1K塗料調製物の製造
本発明による塗料調製物を製造するために、52.4質量%の固体含量(溶剤:ソルベントナフサ、メトキシプロピルアセテート(10:1))、樹脂溶液1g当たり1.46mmol/gのヒドロキシ含量および10〜15mg KOH/gの酸価を有する、アクリレートをベースとする塗料ポリオール4.50gを、Bayer社のDesmodur(登録商標)BL 3175 SN 2.71g(ブタンオキシムで封鎖されたポリイソシアネート、2.64mmol/gの封鎖されたNCO含量)と混合する。引続き、ジイソプロピルアミンにより保護されたイソシアネート基により保護されたSiO2ナノゾル粒子を含有する、合成例4により製造された分散液0.29gを添加する。これは、1.1:1の保護されたイソシアネート官能基対ヒドロキシル基のモル比に相当する。全部の固体含量に対する合成例4による粒子の含量は、2.2%である。更に、ジブチル錫ジラウレート0.01gおよびイソプロパノール中のTEGO AG社の10%溶液のADDID(登録商標)100 0.03g(ポリジメチルシロキサンをベースとする流展助剤)を混入し、それによって約50%の固体含量を有する塗料調製物を得る。この最初になお弱く混濁している混合物を室温で48時間攪拌し、この場合には、澄明な塗料調製物が得られる。
【0058】
例1〜10の塗料調製物からの塗膜の形成および評価
例1〜9からの塗装材料をそれぞれ120μmの間隙高さのナイフを備えたErichsen社の塗膜延伸機Coatmaster(登録商標)509 MCを用いてガラス板上にナイフ塗布する。引続き、得られた塗膜を空気循環乾燥箱中で70℃で30分間乾燥し、引続き150℃で30分間乾燥する。実施例の塗料調製物ならびに比較例の塗料調製物から、目視的に申し分のない平滑な塗膜を得ることができる。この塗膜の光沢をByk社の光沢測定器Micro gloss 20°で測定し、全ての塗料調製物の場合に159〜164光沢単位である。
【0059】
こうして形成され硬化された塗膜の耐引掻強さを、ピーター−ダーン(Peter-Dahn)による摩耗試験装置を用いて算出する。
【0060】
このために、面積45×45mm、質量500gの摩耗用フリースScotch Brite(登録商標)2297に負荷をかける。この負荷で塗膜試料を全部で40回のストロークで引っ掻く。この引掻試験の開始前ならびに終了後に、このそれぞれの塗膜の光沢を、Byk社の光沢測定装置Micro gloss 20゜を用いて測定する。それぞれの塗膜の耐引掻強さのための尺度として、光沢損失を出発値と比較して測定した:
【表2】

【0061】
結果は、本発明による粒子(P)の最少含量であっても相応する塗膜の耐引掻強さの明らかな上昇を生じることを示す。明らかに高い粒子含量を含有し、ひいては明らかに高価である、本発明によらない例7および8の塗料調製物は、本発明による塗膜と比較して耐引掻強さが殆んど改善されていない塗膜を生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)反応性基を有する被膜形成樹脂(L)を固体含量に対して20〜90質量%、
b)塗料の硬化の際に被膜形成樹脂(L)の反応性基と熱処理で反応する反応性官能基を有する塗料硬化剤(H)を固体含量に対して1〜90質量%、
c)熱処理の際に保護基の分解下にイソシアネート官能基を遊離する少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を粒子(P)の表面上に有する粒子(P)を固体含量に対して0.1〜15質量%、この場合この粒子(P)は、コロイド状の金属酸化物ゾルまたは酸化珪素ゾルと、このコロイド状の金属酸化物ゾルまたは酸化珪素ゾルに対して反応性のシリル官能基および保護されたイソシアネート官能基を有するオルガノシラン(A)との反応によって得ることができ、
d)溶剤または溶剤混合物を全部の塗料調製物(B)に対して0〜90質量%および
e)場合によっては他の塗料成分および添加剤を含有する塗料調製物(B)。
【請求項2】
ヒドロキシル官能性の被膜形成樹脂(L)がヒドロキシル官能性の被膜形成樹脂(L)である、請求項1記載の塗料調製物(B)。
【請求項3】
塗料硬化剤(H)がメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を含有する、請求項1または2記載の塗料調製物(B)。
【請求項4】
塗料硬化剤(H)が熱処理の際に保護基を脱離しながらイソシアネート官能基を遊離する保護されたイソシアネート基を含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の塗料調製物(B)。
【請求項5】
粒子(P)がコロイド状の酸化珪素ゾルまたは金属酸化物ゾルと一般式(I)
(R1O)3-n(R2nSi−A−NH−C(O)−X (I)
[式中、
1は、水素、それぞれ1〜6個のC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表わし、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素原子、硫黄原子またはNR3基によって中断されていてよく、
2は、それぞれ1〜12個のC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基を表わし、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素原子、硫黄原子またはNR3基によって中断されていてよく、
3は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アミノアルキル基またはアスパラギン酸エステル基を表わし、
Xは、60〜300℃の温度でHXの形で脱離される保護基であり、その際、イソシアネート官能基が遊離され、
Aは、1〜10個の炭素原子を有する2価の置換されていてよいアルキレン基、シクロアルキレン基またはアリーレン基を表わし、および
nは、0、1または2の値を取ることができる〕で示されるオルガノシラン(A)との反応によって得られたものである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の塗料調製物(B)。
【請求項6】
nは、2である、請求項5記載の塗料調製物(B)。
【請求項7】
粒子(P)の含量が固体含量に対して0.2〜12質量%である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の塗料調製物(B)。
【請求項8】
保護基の脱離温度が80〜200℃である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の塗料調製物(B)。
【請求項9】
50%を上廻る粒子(P)の保護されたイソシアネート基が、ブタンオキシムよりも低い脱離温度を有する保護基を備えている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の塗料調製物(B)。
【請求項10】
50%を上廻る粒子(P)の保護されたイソシアネート基が、硬化剤(H)の少なくとも55%の保護されたイソシアネート基よりも低い脱離温度を有する保護基を備えている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の塗料調製物(B)。
【請求項11】
a)被膜形成樹脂(L)を固体含量に対して30〜80質量%、
b)塗料硬化剤(H)を固体含量に対して10〜60質量%、
c)粒子(P)を固体含量に対して0.1〜12質量%、
d)溶剤または溶剤混合物を全部の塗料(B)に対して0〜80質量%および
e)場合によっては他の塗料成分および添加剤を含有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の塗料調製物(B)。
【請求項12】
被膜形成樹脂(L)がヒドロキシル基含有プレポリマーからなる、請求項1から11までのいずれか1項に記載の塗料調製物(B)。
【請求項13】
硬化剤(H)および粒子(P)の封鎖されたイソシアネート基と被膜形成樹脂(L)のイソシアネート反応性基との比が0.5〜2である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の塗料調製物(B)。
【請求項14】
耐引掻強さを有するクリヤーコート材料またはトップコート材料としての請求項1から13までのいずれか1項に記載の塗料調製物(B)の使用。

【公表番号】特表2008−530284(P2008−530284A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554491(P2007−554491)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001058
【国際公開番号】WO2006/084661
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】