説明

保護カバー及び保護カバーを備えた動力工具

【課題】壁際での切断作業を好適に行える保護カバー及び保護カバーを備えた動力工具の提供。
【解決手段】床と当接して床上を摺動するガイド面11Aを有するベース部11と、ベース部11上に担持され、本体2に取り付けられると共に、本体2から延出される回転軸部に装着された回転刃9を収容するカバー部12と、を有し、ベース部11は、回転刃9がガイド面11Aより突出するようにカバー部12を担持すると共に、回転刃9よりも本体2側のみに配置され、カバー部12は、回転刃9の外周を覆う周壁部14及び本体2側の側面を覆う側壁部13から構成されると共に、周壁部14の反本体2側の端部14Aは、回転刃9の反本体2側と略同一平面上若しくは端縁14Aが回転刃9の反本体2側に向けて突出している保護カバー10及び保護カバー10を備えた動力工具1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保護カバー及び保護カバーを備えた動力工具に関し、特に回転刃による切削によって発生する粉塵に対する保護をする保護カバー及び保護カバーを備えた動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯切断機用集塵カバーは、特許文献1に示されるように、コンクリート材等の被削材を切断・切削するために用いられる携帯切断機に回転刃を覆うように装着されている。この集塵カバーには吸引装置から延びるホースが接続されるホース取付口(ダクト)があり、回転刃で被削材を切断することにより発生する粉塵を吸引することが可能である。この集塵カバーにおいては、粉塵を外部に噴出させないために、被削材と当接する面以外の回転刃周囲に壁を設けて気密性を保っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−38645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の集塵カバーを装着した携帯切断機で、例えば壁間際の位置に溝を切削しようとすると、保護カバーが邪魔になり、回転刃を壁際に近づけることが難しかった。また集塵カバーを装着した携帯用切断機においては、保護カバーに対する携帯切断機の装着方向が一方向になるため、保護カバーを装着した携帯用切断機で切り進むと、携帯用切断機の本体部分が壁と当接して切り進めない場合があった。
【0005】
よって本発明は、壁際での切断作業を好適に行える保護カバー及び保護カバーを備えた動力工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、被削材と当接して該被削材上を摺動するガイド面を有するベース部と、該ベース部上に担持され、工具本体に取り付けられると共に、該工具本体から延出される回転軸部に装着された回転刃を収容するカバー部と、を有し、該ベース部は、該回転刃が該ガイド面より突出するように該カバー部を担持すると共に、該回転刃よりも該工具本体側のみに配置され、該カバー部は、該回転刃の外周及び該工具本体側側面を覆う壁から構成されると共に、該回転刃の外周を覆う壁の反工具本体側の端縁は、該回転刃の該反工具本体側と略同一平面上若しくは該回転刃の該反工具本体側から反工具本体側に向けて突出している保護カバーを提供する。
【0007】
また上記課題を解決するために本発明は、ハウジングと、該ハウジングから延出され回転刃が装着される回転軸部と、該回転軸部周りに配置される被取付部と、該被取付部に取り付けられて該回転刃を覆う上記の保護カバーと、を備えた動力工具を提供する。
【0008】
この様な構成によると、保護カバーの延出方向端部位置と略等しい位置で回転刃により切削を行うことができる。よって、例えば壁際の床面に溝を形成する場合においても、保護カバーの延出方向端部を壁に沿わせて作業を行うことにより、壁際ぎりぎりの位置に溝を形成することができる。また壁際の床面を切削する際には、カバー部と壁とにより保護カバー内の空間を閉塞した状態に保つことができるため、粉塵等が保護カバー外に噴出することが抑制される。
【0009】
上記構成の保護カバー及び動力工具において、該カバー部に対し該回転刃の反工具本体側側面を覆う側面カバー部が着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0010】
これらの様な構成によると、壁際以外の箇所で切削作業をする際は側面カバーをカバー部に装着することによって、カバー部と共に保護カバー内の空間を閉塞した状態に保つことができるため、粉塵等が保護カバー外に噴出することが抑制される。
【0011】
また該ベース部と該カバー部とは、該回転刃の該ガイド面からの突出量を変更可能な切断深さ調整機構を介して接続されていることが好ましい。この様な構成によると、所望の切削深さの溝を形成することができる。
【0012】
また該カバー部において、該回転刃の外周を覆う壁の該端縁若しくは該端縁近傍位置には、先端が該端縁から反工具本体側に向けて突出するブラシが装着されていることが好ましい。
【0013】
この様な構成によると、上述のように壁際の床面を切削する際に、カバー部と壁との間にブラシが介在する。カバー部は剛性の観点から硬質材料より構成されるため、特に凹凸を有する壁に対する追従性が劣る傾向があるが、ブラシを介在させることにより、壁に対する追従性を高め、保護カバーと壁との間に隙間が形成されることが抑制される。またカバー部が直接壁に当接することが抑制されるため、カバー部による壁への傷を抑制することができる。
【0014】
該カバー部には、吸引装置と接続されてカバー部内を吸引するダクトが装着されていることが好ましい。
【0015】
この様な構成によると、カバー部内で発生する粉塵を吸引することができ、カバー部外へと噴出する粉塵を低減することができる。
【0016】
また上記構成の動力工具において、該回転刃は、装着治具を介して該回転軸部に装着され、該装着治具は、該回転軸部の延出方向において、該回転刃の反ハウジング側側面よりもハウジング側に位置していることが好ましい。
【0017】
この様な構成によると、回転刃から反ハウジング側へと突出する部材が無いため、より壁際で床面を切削することができる。
【0018】
また上記課題を解決するために本発明は、工具本体から延出される回転軸部に装着される回転刃を収容すると共に該工具本体の該回転軸部周りに設けられた被取付部に取り付けられるカバー部を有し、該カバー部には、該工具本体に接続される取付部と、該工具本体に装着された状態で該回転軸部の軸を中心とする周回りに配列され、選択的に吸引装置と接続される複数のダクトと、を備え、該取付部は、該回転軸部の半径方向において、少なくとも第一半径方向を向いた状態と第二半径方向を向いた状態とのそれぞれで選択的に該被取付部に取り付けられる保護カバーを提供する。
【0019】
上記構成の保護カバーにおいて、該複数のダクトは、該取付部を挟んで一方側と他方側とにそれぞれ設けられた第一ダクトと第二ダクトとから構成され、該取付部が該第一半径方向を向いて該被取付部に装着された状態で、該第一ダクトは該吸引装置が装着不能に該工具本体で塞がれると共に第二ダクトは該吸引装置が装着可能であり、該取付部が該第一半径方向を向いて該被取付部に装着された状態で、該第一ダクトは該吸引装置が装着可能であると共に該第二ダクトは該吸引装置が装着不能に該工具本体で塞がれることが好ましい。
【0020】
また上記課題を解決するために本発明は、ハウジングと、該ハウジングから延出され回転刃が装着される回転軸部と、該回転軸部周りに配置される被取付部と、該被取付部に取り付けられて該回転刃を覆う上記の保護カバーと、を、備えた動力工具を提供する。
【0021】
これらの様な構成によると、切削方向を反転させる場合に、取付部と被取付部との位置関係に基づき保護カバーに対して工具本体の向きを変えることにより、容易に切削方向を反転させることができる。またダクトに吸引装置を接続することにより保護カバー内の粉塵を吸引することができるが、保護カバーに対する工具本体の向きを変えた場合でも、複数あるダクトを切り換えて使用することにより、切削方向に関係なく好適に粉塵を吸引することができる。
【0022】
上記構成の保護カバー及び動力工具において、該被削材と当接して該被削材上を摺動するガイド面を有するベース部を備え、該カバー部は該ベース部上に担持されていることが好ましい。
【0023】
この様な構成によると、ベース部のガイド面により被削材と保護カバーとが当接するため、保護カバーが装着された工具が被削材上を好適に摺動することができる。
【0024】
また該カバー部は、該回転刃の外周及び該反延出方向側側面のみを覆う壁から構成されると共に、該回転軸部が延出される方向における該回転刃の外周を覆う壁の端縁は、該回転刃の該延出方向における端部と略同一位置若しくは該端縁が該端部より突出していることが好ましい。
【0025】
この様な構成によると、保護カバーの延出方向端部位置と略等しい位置で回転刃により切削を行うことができる。よって、例えば壁際の床面に溝を形成する場合においても、保護カバーの延出方向端部を壁に沿わせて作業を行うことにより、壁際ぎりぎりの位置に溝を形成することができる。また壁際の床面を切削する際には、カバー部と壁とにより保護カバー内の空間を閉塞した状態に保つことができるため、粉塵等が保護カバー外に噴出することが抑制される。
【0026】
また該複数のダクトは、いずれも開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか一に記載の保護カバー。
【0027】
この様な構成によると、使用しないダクトから粉塵が噴出したり、また使用しないダクトから、外気が吸引されることが抑制される。
【0028】
上記構成の動力工具において、該ハウジングに装着されるサブハンドルを更に備え、該ハウジングは、該回転軸部の半径方向に延び該回転軸部の周方向で互いに離間する一方の側面と他方の側面とを有し、該サブハンドルは、該一方の側面と、該他方の側面とに選択的に装着されることが好ましい。
【0029】
この様な構成によると、切削方向に関わらず、安定して動力工具を保持することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の保護カバー及び保護カバーを備えた動力工具によれば、壁際での切断作業を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態にかかる保護カバー及び保護カバーが装着された動力工具の側面図。
【図2】本発明の実施の形態にかかる保護カバー及び保護カバーが装着された動力工具の分解正面断面図。
【図3】本発明の実施の形態にかかる保護カバーの側面図(工具本体側)。
【図4】本発明の実施の形態にかかる保護カバーのダクトへのキャップの装着状態を示す断面図。
【図5】本発明の実施の形態にかかる保護カバーの側面図(反工具本体側)。
【図6】本発明の実施の形態にかかる保護カバーのブラシ近傍を示す断面図。
【図7】本発明の実施の形態にかかる保護カバーが装着された動力工具で被削材を切削する状態を示す正面断面図。
【図8】本発明の実施の形態にかかる保護カバーが装着された動力工具で回転刃の突出量の変更を示す側面図。
【図9】本発明の実施の形態にかかる保護カバーが装着された動力工具で保護カバーの動力工具に対する位置を変更した状態を示す側面図。
【図10】本発明の実施の形態にかかる保護カバーが装着された動力工具で側面カバーの装着を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態に係る保護カバー及び保護カバーを備えた動力工具について、図1乃至図10に基づき説明する。図1に示される動力工具である携帯用切断機1は、回転刃9が装着可能に構成されていると共に、回転刃9を覆う保護カバー10が装着可能に構成されている。
【0033】
携帯用切断機1は、本体2と、本体2から延出される出力軸部3(図2)とから主に構成されている。本体2は、内部に図示せぬモータ等を内蔵すると共に把持される部分となる第一ハウジング21と、図示せぬモータの出力を出力軸部3に伝達する図示せぬギヤ機構等を内蔵する第二ハウジング22とから主に構成されている。図2に示されるように、第二ハウジング22において、出力軸部3の周囲となる位置に保護カバー10が取り付けられる被取付部である装着部23が設けられている。装着部23は、出力軸部3の軸方向と直交する断面における外周の輪郭が略円形に構成され、この外周部分に保護カバー10が取り付けられる。また第二ハウジング22においては、出力軸部3の半径方向に延び出力軸部3の周方向で互いに離間する一方の側面と他方の側面とを有しており、この両側面にそれぞれサブハンドル4が装着される台座22A、台座22Bが設けられている。
【0034】
出力軸部3は、第二ハウジング22に配置され本体2の長手方向(図1において第一ハウジング21と第二ハウジング22とが並列する方向)と直交する方向に延出されており、図示せぬモータの出力が伝達されて回転するように構成されている。また出力軸部3には、上述の回転刃9が取付治具であるフランジ5により同軸一体回転するように固定されている。回転刃9は、中央に出力軸部3が貫通する孔9aが形成されており、孔9a近傍位置が本体2側にオフセットするように構成されている。よってフランジ5によって回転刃9が出力軸部3に装着された際に、回転刃9の反本体2側側面からフランジ5が突出することは防がれる。
【0035】
保護カバー10は、図1に示されるようにカバー部12とベース部11とから主に構成されている。ベース部11は、アルミ等の金属板が切断・折曲加工されて構成されており、後述の切断深さ調整機構を介してカバー部12を担持している。ベース部11において平板状に構成される部分に後述の床と当接するガイド面11Aが規定されており、ガイド面11Aから回転刃9の周縁の一部が露出している。ガイド面11Aで床と当接することにより、携帯用切断機1が床面上を好適に摺動することができる。また図7に示されるように、保護カバー10においてベース部11は、回転刃9より本体2側に位置するように配置されている。
【0036】
カバー部12は、図2に示されるように、本体2に取り付けられた状態で回転刃9の本体2側側面を覆う側壁部13と、回転刃9の外周を覆う周壁部14とから主に構成されており、回転刃9の反本体2側の側面が開放された構成を採っている。
【0037】
図3に示されるように、側壁部13には、中央部分に装着部23に取り付けられる取付部であるアダプタ15が設けられてアダプタ15位置に出力軸部3が挿通される挿通孔13aが形成されている。このアダプタ15は、側壁部13に固定され円弧形状部分を備える第一枠15Aに、円弧形状部分を備える第二枠15Bが、ネジ15Cによって螺合されて構成されている。第一枠15Aの円弧形状部分と第二枠15Bの円弧形状部分のとの間に装着部23(図2)を挿入した状態でネジ15Cを螺進させることにより、保護カバー10を本体2に固定することができる。
【0038】
装着部23(図2)は上述のように外周が円形を成しており、アダプタ15は円弧部分で装着部23を固定するため、アダプタ15(保護カバー10)で装着部23(本体2)を固定する際の位置関係を、出力軸部3の半径方向において任意の位置とすることができる。よってアダプタ15(保護カバー10)と装着部23(本体2)とを固定する際の位置を保護カバー10に対して本体2が後述の第一半径方向を向いた状態と第二半径方向を向いた状態とにすることができる。
【0039】
側壁部13において、アダプタ15を挟んだ両隣には、それぞれ同形状の第一孔13b(図4)、第二孔13cが形成されたそれぞれ同形状の第一ダクト13B、第二ダクト13Cが設けられている。図4(a)に示されるように、第一ダクト13Bには第一孔13bを閉止するキャップ16が装着され、第二ダクト13Cには、図示せぬ吸引装置から延出されたノズル17が装着される。ノズル17を装着すると共にキャップ16を装着することにより、ノズル17でカバー部12内を吸引した際に、第一孔13bから外気がカバー部12内に流入することが抑制される。第一ダクト13Bと第二ダクト13Cとは同形状であるため、図4(b)に示されるように、第一ダクト13Bにノズル17を装着すると共に第二ダクト13Cにキャップ16を装着してカバー部12内を吸引することも可能である。
【0040】
また側壁部13において挿通孔13aから第一孔13bに向かう方向を第一半径方向と定義し、挿通孔13aから第二孔13cに向かう方向を第二半径方向と定義する。
【0041】
周壁部14は、保護カバー10が本体2に装着された状態で、図6に示されるように、反本体2側となる端部14Aが、回転刃9の反本体2側の側面より僅かに突出する様に構成されている。回転刃9を出力軸部3に固定するフランジ5(図2)は、回転刃9の反本体2側の側面より本体2側に位置しているため、フランジ5(図2)が端部14Aから突出することは防がれている。また周壁部14には、図5に示されるように、カバー部12内部となる位置に、周壁部14にそって一連のブラシ18が装着されている。ブラシ18は三箇所のフック18Aにより周壁部14に装着されており、図6に示されるように、端部14A付近に配置されて、その先端が端部14Aより僅かに反本体2側に突出するように構成されている。
【0042】
図8に示されるように、ベース部11とカバー部12との間には、切断深さ調整機構である固定ボルト19Aと、リンク19Bと、蝶ネジ19Cとが介在している。固定ボルト19Aは、ベース部11及びカバー部12の、第一ダクト13Bから第二ダクト13Cに向かう方向における端部(以下第二端部)に出力軸部3と平行に配置されており、ベース部11に形成された図示せぬ孔を貫通してカバー部12に螺合している。よってカバー部12はベース部11に対して固定ボルト19Aを中心軸として固定ボルト19A回りを回動することができる。リンク19Bはベース部11の第二ダクト13Cから第一ダクト13Bに向かう方向における端部(以下第一端部)から、周壁部14の内面に沿うようにベース部11側に向かって延出されている。蝶ネジ19Cは、周壁部14に形成された図示せぬ孔を貫通してリンク19Bと螺合している。リンク19Bは、蝶ネジ19Cが緩んでいる状態では、蝶ネジ19Cに対して周壁部14の周方向に沿った方向に移動可能であり、蝶ネジ19Cが締結されている状態では、周壁部14に対して移動不能に固定される。よって蝶ネジ19Cをゆるめた状態で、ベース部11に対してカバー部12を固定ボルト19A回りに回動させることにより、ベース部11とカバー部12との間の距離を変化させることができる。カバー部12には、回転刃9を支持する本体2が取り付けられるため、カバー部12とベース部11との間の距離を変化させることにより、ガイド面11Aからの回転刃9の突出量tを変化させることができ、所望の切削深さを得ることができる。
【0043】
上記構成の保護カバー10を本体2に装着するには、保護カバー10に対して本体2が第一半径方向を向くように装着部23にアダプタ15を固定する。この様な配置を採ることにより第一ダクト13Bのみ本体2で覆われるので、第二ダクト13Cへのノズル17の装着が本体2等により阻害されることはない。またノズル17が側壁部13から延出される構成を採るため、ノズル17から延出される図示せぬホースが作業の邪魔になることが抑制され好適に切削作業を行うことができる。
【0044】
図7に示されるように、本体2に保護カバー10が装着された携帯用切断機1において壁際の床面に溝を切削する際には、端部14Aを壁に沿わせるように配置して第一ハウジング21(図1)及びサブハンドル4を把持した状態で切削作業を行う。回転刃9は、上述のように保護カバー10の端部14A位置と略等しい位置に配置されているため、壁際の床面に溝を形成する場合に、端部14Aを壁に沿わせて作業を行うことにより、壁際ぎりぎりの位置に溝を形成することができる。また壁際の床面を切削する際には、カバー部12と壁とにより保護カバー10内の空間を閉塞した状態に保つことができる。よって回転刃9で床が切削されて生じる粉塵等が保護カバー10外に噴出することが抑制される。
【0045】
端部14Aからはブラシ18が突出しているため、ブラシ18が壁に接触し、端部14Aが壁に接触することは抑制される。カバー部12は剛性の観点から硬質プラスチック等の硬質材料より構成されるため、特に凹凸を有する壁に対する追従性が劣る傾向があるが、ブラシ18を介在させることにより、壁に対する追従性を高め、保護カバー10と壁との間に隙間が形成されることが抑制される。また端部14Aが直接壁に当接することが抑制されるため、端部14Aによる壁への傷を抑制することができる。
【0046】
また第二ダクト13Cに装着されたノズル17を介して図示せぬ吸引装置により粉塵を吸引しているので、保護カバー10外に粉塵が噴出することは抑制される。吸引時に第一ダクト13B(図3)はキャップ16(図3)により閉止されているため、第一ダクト13Bからカバー部12内に外気が流入することはなく、好適に粉塵をノズル17から吸引することができる。
【0047】
上述の携帯用切断機1において、上述の第一端部側へと切り進んで行く場合は、保護カバー10の第一端部が切り進む方向の先にある壁に当接するまで切削することができる。よって切り進む方向の先にある壁の壁際位置まで切削することができる。これに対して、上述の第二端部側へと切り進んでいく場合には、図9(a)に示されるように、本体2が邪魔になり、切り進む方向の先にある壁の壁際位置まで切削することができない。よってこの場合は、保護カバー10に対して本体2が第二半径方向を向くように装着部23にアダプタ15を固定する。この時に、第二ダクト13Cをキャップ16(図3)で閉止すると共に第一ダクト13Bにノズル17(図2)を接続する。これにより保護カバー10の第二端部が切り進む方向の先にある壁に当接するまで切削することができる。また保護カバー10に対する本体2の向きを変えた場合でも、第一ダクト13Bと第二ダクト13Cとを切り換えて使用することにより、切削方向に関係なく好適に粉塵を吸引することができる。尚、本体2の装着する方向を第二半径方向に変更する際には、サブハンドル4が固定される部分を台座22Aから台座22Bに変更することにより、好適にサブハンドル4及び第一ハウジング21を保持して携帯用切断機1を操作することができる。
【0048】
上記構成の携帯用切断機1において、壁際以外の箇所で切削作業をする場合、カバー部12の開口部分から粉塵が保護カバー10外部に噴出する。これを抑制するために、図10に示されるように、端部14Aと当接してカバー部12の開口部分を覆う側面カバー部20を装着する。この様な構成を採ることにより、壁際以外の箇所で切削作業をする場合においても、粉塵が保護カバー10外に排出されることが抑制される。
【0049】
本発明の保護カバー及び保護カバーを備えた動力工具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の改良や変形が可能である。例えば、実施の形態においては装着部23を円形に構成することにより本体2の装着方向の自由度を増したがこれに限らず、上述の第一半径方向及び第二半径方向のみを採れるような凹凸嵌合形状を採ってもよい。また保護カバー10に対する本体2の方向は第一半径方向と第二半径方向との二方向としたが、これに限らず第一半径方向、第二半径方向とは異なる第三半径方向を備えてもよい。これに応じてダクトも第三ダクトを備えていてもよい。また本実施の形態ではダクトにキャップを装着することによって閉止したがこれに限らず、予めダクトに切り込みが入ったゴム膜等の閉止材を配置し、ノズルを装着した場合のみダクトが貫通し、それ以外ではゴム膜等によりダクトが閉止されるような構成を採ってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1・・携帯用切断機 2・・本体 3・・出力軸部 4・・サブハンドル
5・・フランジ 9・・回転刃 9a・・孔 10・・保護カバー 11・・ベース部
11A・・ガイド面 12・・カバー部 13・・側壁部 13B・・第一ダクト
13C・・第二ダクト 13a・・挿通孔 13b・・第一孔 13c・・第二孔
14・・周壁部 14A・・端部 15・・アダプタ 15A・・第一枠
15B・・第二枠 15C・・ネジ 16・・キャップ 17・・ノズル
18・・ブラシ 18A・・フック 19A・・固定ボルト 19B・・リンク
19C・・蝶ネジ 20・・側面カバー 21・・第一ハウジング
22・・第二ハウジング 22A、22B・・台座 23・・装着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被削材と当接して該被削材上を摺動するガイド面を有するベース部と、
該ベース部上に担持され、工具本体に取り付けられると共に、該工具本体から延出される回転軸部に装着された回転刃を収容するカバー部と、を有し、
該ベース部は、該回転刃が該ガイド面より突出するように該カバー部を担持すると共に、該回転刃よりも該工具本体側のみに配置され、
該カバー部は、該回転刃の外周及び該工具本体側側面を覆う壁から構成されると共に、該回転刃の外周を覆う壁の反工具本体側の端縁は、該回転刃の該反工具本体側と略同一平面上若しくは該回転刃の該反工具本体側から反工具本体側に向けて突出していることを特徴とする保護カバー。
【請求項2】
該カバー部に対し該回転刃の反工具本体側側面を覆う側面カバー部が着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の保護カバー。
【請求項3】
該ベース部と該カバー部とは、該回転刃の該ガイド面からの突出量を変更可能な切断深さ調整機構を介して接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の保護カバー。
【請求項4】
該カバー部において、該回転刃の外周を覆う壁の該端縁若しくは該端縁近傍位置には、先端が該端縁から反工具本体側に向けて突出するブラシが装着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の保護カバー。
【請求項5】
該カバー部には、吸引装置と接続されてカバー部内を吸引するダクトが装着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の保護カバー。
【請求項6】
ハウジングと、
該ハウジングから延出され回転刃が装着される回転軸部と、
該回転軸部周りに配置される被取付部と、
該被取付部に取り付けられて該回転刃を覆う請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載された保護カバーと、を備えたことを特徴とする動力工具。
【請求項7】
該回転刃は、装着治具を介して該回転軸部に装着され、
該装着治具は、該回転軸部の延出方向において、該回転刃の反ハウジング側側面よりもハウジング側に位置していることを特徴とする請求項6に記載の動力工具。
【請求項8】
工具本体から延出される回転軸部に装着される回転刃を収容すると共に該工具本体の該回転軸部周りに設けられた被取付部に取り付けられるカバー部を有し、
該カバー部には、該工具本体に接続される取付部と、該工具本体に装着された状態で該回転軸部の軸を中心とする周回りに配列され、選択的に吸引装置と接続される複数のダクトと、を備え、
該取付部は、該回転軸部の半径方向において、少なくとも第一半径方向を向いた状態と第二半径方向を向いた状態とのそれぞれで選択的に該被取付部に取り付けられることを特徴とする保護カバー。
【請求項9】
該複数のダクトは、該取付部を挟んで一方側と他方側とにそれぞれ設けられた第一ダクトと第二ダクトとから構成され、
該取付部が該第一半径方向を向いて該被取付部に装着された状態で、該第一ダクトは該吸引装置が装着不能に該工具本体で塞がれると共に第二ダクトは該吸引装置が装着可能であり、
該取付部が該第二半径方向を向いて該被取付部に装着された状態で、該第一ダクトは該吸引装置が装着可能であると共に該第二ダクトは該吸引装置が装着不能に該工具本体で塞がれることを特徴とする請求項8に記載の保護カバー。
【請求項10】
該被削材と当接して該被削材上を摺動するガイド面を有するベース部を備え、
該カバー部は該ベース部上に担持されていることを特徴とする請求項8又は請求項9のいずれかに記載の保護カバー。
【請求項11】
該カバー部は、該回転刃の外周及び該反延出方向側側面のみを覆う壁から構成されると共に、該回転軸部が延出される方向における該回転刃の外周を覆う壁の端縁は、該回転刃の該延出方向における端部と略同一位置若しくは該端縁が該端部より突出していることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか一に記載の保護カバー。
【請求項12】
該複数のダクトは、いずれも開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか一に記載の保護カバー。
【請求項13】
ハウジングと、
該ハウジングから延出され回転刃が装着される回転軸部と、
該回転軸部周りに配置される被取付部と、
該被取付部に取り付けられて該回転刃を覆う請求項8乃至請求項12のいずれか一に記載された保護カバーと、を、備えたことを特徴とする動力工具。
【請求項14】
該ハウジングに装着されるサブハンドルを更に備え、
該ハウジングは、該回転軸部の半径方向に延び該回転軸部の周方向で互いに離間する一方の側面と他方の側面とを有し、
該サブハンドルは、該一方の側面と、該他方の側面とに選択的に装着されることを特徴とする請求項13に記載の動力工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−201513(P2010−201513A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46428(P2009−46428)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】