説明

保護キャップ

【課題】複数のフェルールを備えた光コネクタに対して、一括して各フェルールの先端を保護する部分を取付可能な保護キャップの提供。
【解決手段】本発明の保護キャップ1は、複数のフェルール4と、各フェルール4の周囲にそれぞれ空間22が形成されるようにフェルール4を包囲する収容部211とを備える光コネクタ2に対して取り付けられるものであり、フェルール4の先端と対向すると共に収容部211の先端に宛がわれる蓋部11と、収容部211の外側に被せられた状態で収容部211に取り付けられると共に、蓋部11に延設された筒状の外側キャップ部12と、各空間22内にそれぞれ挿入された状態で各フェルール4の先端を包囲すると共に、外側キャップ12よりも内側に配された状態で蓋部11に延設された筒状をなす複数の内側キャップ部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタに取り付けられる保護キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、光ファイバの端末を保持するフェルールが先端から突出した光コネクタが知られている。この種の光コネクタは、相手側の光コネクタに対して取り付けられて使用される。
【0003】
前記光コネクタが備えている前記フェルールの先端面からは、前記光ファイバの端面が露出している。光ファイバの端面は非常に小さいため、前記端面に微細な異物(塵埃)が付着しただけで、前記光ファイバにおいて通信不良が発生してしまう。
【0004】
そのため、相手側の光コネクタに取り付けられる前の状態等の光コネクタに対して、特許文献1に示されるような、前記フェルールの端面を塵埃等の異物から保護するキャップが取り付けられている。前記キャップは、フェルールの先端側に被せられる筒状の内側部分と、前記フェルールを囲むハウジングに被せられる筒状の外側部分とからなり、前記内側部分が前記フェルールと接触しないように前記光コネクタに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−119163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光コネクタとしては、複数のフェルールを備えるものがある。このような光コネクタに対して、各フェルールを個別に保護すると共に、一括して取り付けられるキャップは、提案されておらず、問題となっていた。
【0007】
本発明の目的は、複数のフェルールを備えた光コネクタに対して、一括して各フェルールの先端を保護する部分を取付可能な保護キャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る保護キャップは、互いに平行に並ぶ複数のフェルールと、各フェルールの周囲にそれぞれ空間が形成されるように前記フェルールを包囲する収容部とを備える光コネクタに対して取り付けられる保護キャップであって、前記フェルールの先端と対向すると共に、前記収容部の先端に宛がわれる蓋部と、前記収容部の外側に被せられた状態で前記収容部に取り付けられると共に、前記蓋部に延設された筒状の外側キャップ部と、各空間内にそれぞれ挿入された状態で各フェルールの先端を包囲すると共に、前記外側キャップよりも内側に配された状態で前記蓋部に延設された筒状をなす複数の内側キャップ部と、を備える。
【0009】
前記保護キャップにおいて、前記外側キャップ部の内側に、前記収容部の外側に突設された係合突起と係合すると共に、前記外側キャップ部を前記収容部に着脱可能に固定するための被係合突起を有してもよい。
【0010】
前記保護キャップにおいて、前記蓋部は、前記外側キャップ部と前記内側キャップ部との間に形成される空間と外部とを連通する孔部を有してもよい。
【0011】
前記保護キャップにおいて、前記保護キャップは、金型を利用して合成樹脂を所定形状に成形したものからなり、前記孔部は、前記保護キャップの前後方向に沿って前記被係合突起と共に一列に配されると共に、前記保護キャップの型開き時に、前記被係合突起を形成するための金型を前記保護キャップ内から前記保護キャップの前後方向に沿って引き抜くための出口として利用されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のフェルールを備えた光コネクタに対して、一括して各フェルールの先端を保護する部分を取付可能な保護キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】保護キャップが取り付けられた光コネクタの断面図
【図2】光コネクタの上面図
【図3】光コネクタの先端側を上面に平行な面で切断した状態を示す断面図
【図4】光コネクタの底面図
【図5】ハウジングの本体部分から後方部分の底を取り外した状態の光コネクタの底面図
【図6】ハウジングの本体部に対して、底を取り付ける工程を示す説明図
【図7】ハウジングの本体部に底が取り付けられた状態の光コネクタの断面図
【図8】保護キャプの上面図
【図9】図8のA−A’線断面図
【図10】保護キャップの側面図
【図11】B−B’線断面図
【図12】保護キャップの背面図
【図13】保護キャップの正面図
【図14】図13のC−C’線断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
(保護キャップ付き光コネクタ)
以下、本発明の実施形態1を、図1乃至図14を参照しつつ説明する。図1は、保護キャップ1が取り付けられた光コネクタ2の断面図である。本実施形態の保護ギャップ1は、光コネクタ2の先端部分に嵌合する形で取り付けられている。なお、以下の説明においては、保護ギャップ1及び光コネクタ2の嵌合側を、それぞれの先側(前方)とし、前記嵌合側の反対側を、それぞれの後側(後方)とする。また、上下方向については、図1の上側を保護キャプ2等の上側とし、図1の下側を保護キャップ1等の下側とする。ここで、先ず図2乃至図7を参照しつつ光コネクタ2について説明する。
【0015】
(光コネクタ2)
図2は、光コネクタ2の上面図であり、図3は、光コネクタ2の先端側を上面に平行な面で切断した状態を示す断面図であり、図4は、光コネクタ2の底面図である。光コネクタ2は、自動車に装備されている各種電装品の光通信用コネクタとして用いられるものである。光コネクタ2は、所謂、雄型であり、相手側の雌型光コネクタ(不図示)に対して挿し込まれる形で嵌合される。光コネクタ2は、端末がフェルール4で保持されている2本の光ファイバ31を収納しており、また、相手側の光コネクタも、同様な他の2本の光ファイバを収納している。光コネクタ2が相手側の光コネクタに対して嵌合すると、互いのフェルールが突き合わせられて、互いの光ファイバが光学的に接続されることになる。光コネクタ2は、主として、ハウジング21と、フェルール4と、フランジ部5と、バネ6と、光ファイバ31を備えた光ケーブル30とを備えている。
【0016】
ハウジング21は、合成樹脂製であり、全体として、前後方向に貫通した孔を有する扁平な筒状をなしている。ハウジング21の前方部分は、主として、光ファイバ31の端末を保持したフェルール4を収容する部分となっている。これに対して、ハウジング21の後方部分は、主として、光ファイバ31の後方(根元側)にある光ケーブル30の端部を収容する部分となっている。また、ハウジング21は、2部品から構成されており、ハウジング21の後方部分の底21Bが、それ以外の本体部分21Aから取り外せるように構成されている。なお、図5は、ハウジング21の本体部分21Aから後方部分の底21Bを取り外した状態の光コネクタ2の底面図である。
【0017】
図3に示されるように、ハウジング21(本体部21A)の前方部分(以下、収容部211と称する)は、2本のフェルール4(4A,4B)を収容している。各フェルール4(4A,4B)は、互いに平行に並んだ状態で、収容部211内に収容されている。各フェルール4(4A,4B)は、壁状の収容部211によってそれぞれ囲まれている。本実施形態の場合、フェルール4Aとフェルール4Bとの間にも、壁状の収容部211の一部が形成されている。そのため、各フェルール4A,4Bは、それぞれ筒状の壁で個別に囲まれた状態となっている。なお、フェルール4の外面は、収容部211の内面に対して直に接触しておらず、それらの間には隙間がある。そのため、各フェルール4(4A,4B)の周囲には、それぞれ前記収容部211で囲まれた空間22(22A,22B)が形成されている。本実施形態の場合、各フェルール4の外面と収容部211の内面との距離(間隔)は、略一定に設定されている。
【0018】
フェルール4は、細長く延びた棒状(円柱状)をなしており、その軸線上に沿って貫通した孔からなる保持部(不図示)を備えている。フェルール4は、この保持部内に光ファイバ31の端末が挿し込まれた状態で、ハウジング21(収容部211)内に収容されている。収容部211内において、各フェルール4(4A,4B)の先端位置は、収容部211(ハウジング21)の先端位置よりも、後方に設定されている。各フェルール4(4A,4B)の後端には、各フランジ部5(5A,5B)がそれぞれ取り付けられている。フランジ部5は、フェルール4よりも外側に張り出した形状をなしており、その先端側が、ハウジング21の内側部分で係止される。また、各フランジ部5(5A,5B)の後端側には、螺旋状をなす各バネ6(6A,6B)の一端がそれぞれ宛がわれている。各バネ6(6A,6B)の弾性力によって、各フェルール4(4A,4B)は前方に向かって付勢されている。
【0019】
光ファイバ31(31A,31B)は、光信号を伝搬させる部材からなり、内側のコアと、このコアの外側に形成されるクラッドとから構成される公知の光ファイバ(例えば、マルチモード光ファイバ)からなる。光ファイバ31(31A,31B)は、その外周がシース32(32A,32B)で覆われてなる光ケーブル30(30A,30B)の一部である。光ファイバ31の端末は、光ケーブル30(シース32)の端部から露出した部分からなる。図5に示されるように、各光ケーブル30の端部には、それぞれ環状の係合部材33(33A,33B)が外嵌されており、各光ケーブル30の端部は、各係合部材33(33A,33B)を介して、ハウジング21の後方部分に取り付けられている。
【0020】
ハウジング21の後方部分のうち、上側の本体部21A側には、係合突起24が設けられており、下側の底21B側には、係合突起24と係合する環状(枠状)の被係合部25が設けられている。図6は、ハウジング21の本体部21Aに対して、底21Bを取り付ける工程を示す説明図であり、図7は、ハウジング21の本体部21Aに底21Bが取り付けられた状態の光コネクタ2の断面図である。図6に示されるように、ハウジング21の本体部21Aに対して、底21Bを取り付ける際、底21Bの先端部分が本体部21Aの底側の後端部分に宛がわれ、そして、前記先端部分を支点として底21Bを本体部21A側に向かって移動させると共に、係合突起24に被係合部25を係合させることによって、底21Bが本体部21Aに取り付けられる。なお、底21Bが本体部21Aに取り付けられると、本体部21A内に収容されているバネ6が、底21Bの上側に突設されている受け部26によって押し縮められる。
【0021】
なお、図7に示されるように、ハウジング21の上側には、保護キャップ1が備える被係合突起(後述)と係合させるための係合突起23が設けられている。本実施形態の場合、ハウジング21(本体部21A)の上側には、先端側から後方に向かって延びた板ばね状のロックアーム部27が設けられており、このロックアーム部27の途中に、前記係合突起23が上側に突出する形で設けられている。係合突起23は、光コネクタ2が相手側の光コネクタに嵌合された際に、相手側のハウジングに設けられている被係合突起と係合される部分である。ロックアーム部27が外力によって下方に押し下げられると、ロックアーム部27が下方に撓んで、係合突起23の位置が下方へ移動される。そして、前記外力が無くなると、ロックアーム部27は、弾性力によって復元して、係合突起23が元の位置まで戻される。
【0022】
(保護キャップ1)
次いで、図8乃至図14を参照しつつ、本実施形態の保護キャップ1について説明する。図8は、保護キャップ1の上面図であり、図9は、図8のA−A’線断面図であり、図10は、保護キャップ1の側面図であり、図11は、図10のB−B’線断面図である。保護キャップ1は、合成樹脂製であり、全体として、前後方向に延びた有底の角筒状をなしている。保護キャップ1は、主として、後端に設けられている板状の蓋部11と、この蓋部11から前方に向かって延びた筒状の外側キャップ部12と、蓋部11から前方に向かって延びると共に外側キャップ部12の内側に収容される筒状をなした2つの内側キャップ部13(13A,13B)とを備えている。
【0023】
蓋部11は、保護キャップ1が光コネクタ2に取り付けられた際に、光コネクタ2の先端面に宛がわれる部分である。蓋部11は、上下方向に広がった板状をなしており、光コネクタ2のハウジング21の先端部分よりも、大きく設定されている。また、蓋部11は、保護キャップ1が光コネクタ2に取り付けられた際に、フェルール4の先端と対向する部分でもある。蓋部11には、上述したように、外側キャップ部12と、2つの内側キャップ部13(13A,13B)が設けられている。
【0024】
外側キャップ部12は、全体的には、概ね前後方向に延びた角筒状をなしている。外側キャップ部12は、ハウジング21の先端部分である収容部211の外側に被せられた状態で、前記収容部211に取り付けられる部分である。外側キャップ部12の内側には、前記収容部211を収容するための空間12cが備えられている。この空間12cは、前後方向に沿って延びており、前方が後方よりも若干、広く設定されている。つまり、外側キャップ部12の両側壁は、後方側が前方側よりも内側に向かって迫り出した形となっている。外側キャップ部12の内側形状は、ハウジング21の収容部211の外側形状に概ね倣ったものとなっている。なお、外側キャップ部12の両側壁の後方部分には、所謂、肉抜き用の溝12bがそれぞれ設けられている。この溝12bが設けられることによって、外側キャップ部12を構成する壁状の部分の厚み(肉厚)が略均一に設定されている。外側キャップ部12の上側にある壁状の部分には、前後方向に沿って延びると共に空間12cに向かって突出した2本のガイド部12aが設けられている。
【0025】
内側キャップ部13は、全体的には、概ね前後方向に延びた筒状(円筒状)をなしている。内側キャップ部13の内側には、前後方向に細長く延びた孔13aが設けられており、保護キャップ1が光コネクタ2に取り付けられた際に、この孔13aに、フェルール4の先端部分が挿入される。内側キャップ部13の蓋部11からの長さは、外側キャップ部12の蓋部11からの長さよりも、短くなるように設定されている。更に、内側キャップ部13の前記長さは、保護キャップ1が光コネクタ2に取り付けられた際に、内側キャップ部13の先端部分が、ハウジング21の収容部211の内壁と接触しないように設定されている。また、内側キャップ部13の内径は、フェルール4の直径よりも若干、大きく設定されている。そして、保護キャップ1が光コネクタ2に取り付けられた際に、内側キャッ部部13の内面が、フェルール4の外面と接触しないように、内側キャップ部13の形状が設定されている。
【0026】
図11に示されるように、2つの内側キャップ部13(13A,13B)が、左右方向(図11の上下方向)において、互いに平行に並んだ状態で蓋部11に形成されている。各内側キャップ部13(13A,13B)と、外側キャップ部12との間には隙間が形成されている。また、隣り合った内側キャップ部13(13A,13B)との間にも隙間が形成されている。これらの隙間は、ハウジング21の収容部211の先端部分が入り込めるように設定されている。
【0027】
図12は、保護キャップ1の背面図であり、図13は、保護キャップ1の正面図であり、図14は、図13のC−C’線断面図である。図12には、後端側から見た状態の保護キャップ1が示されている。図12に示されるように、概ね矩形状をなした蓋部11のうち、上側寄りの部分に、孔部15が形成されている。この孔部15は、蓋部11を貫通しており、外部と保護キャップ1(外側キャップ部13)の内側にある空間12cとを連通している。図14に示されるように、孔部15は、蓋部11において、外側キャップ部1よりも内側であり、かつ内側キャップ部12よりも外側の部分に、設けられている。
【0028】
外側キャップ部12の開口端12dにおける上側の内面上には、下方に向かって突出した形状をなす被係合突起14が設けられている。この被係合突起14は、保護キャップ1が光コネクタ2に被せられると、ハウジング21の上側に設けられている係合突起23と係合することによって、保護キャップ1が光コネクタ2に対して、所定の位置で固定される。なお、本実施形態の場合、被係合突起14は、図14に示されるように、保護キャップ1の前後方向に沿って、上述した孔部15と共に一列に配されている。
【0029】
以上のような構成を備えた保護キャップ1は、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン等の公知の熱可塑性樹脂(合成樹脂)を材料とすると共に、所定形状の金型を利用して、一体的に成形(射出成型)される。本実施形態の場合、互いに向かい合う一対の金型同士は、保護キャップ1を前後方向で挟むように設定される。つまり、金型間のパーティングラインが、保護キャップ1を左右方向に横切るように設定される。また、被係合突起14を形成するための専用の金型が、保護キャップ1の後方から前方に向かって、前記金型内に外部から挿し込まれる。この専用の金型は、概ね前後方向に沿って細長く延びた板状をなしており、保護キャップ1の蓋部11を前後方向に貫通する形で、前記金型内に外部から挿し込まれる。そして、前記専用の金型が挿し込まれた状態で、射出成型を行うと、保護キャップ1の蓋部11に、前記専用の金型の根元部分の形状を象った孔部15が形成される。そして、成形後の型開き時に、前記専用の金型が、保護キャップ1内から前後方向に沿いつつ外側に向かって引き抜かれる。その際、蓋部11に形成された孔部15は、前記専用の金型を外部へ引き抜くための出口として利用される。このように、保護キャップ1が、金型を利用して合成樹脂を所定形状に成形したものからなる場合、被係合突起14を形成するための専用の金型を利用して、蓋部11に孔部15を形成することが好ましい。そして、この孔部15は、更に、前記専用の金型を引き抜く際の出口として利用されるものであることが好ましい。このような方法によれば、1つの前記専用の金型を利用して、被係合突起14のみならず、蓋部11に所定の孔部15をも形成することができ、被係合突起14と孔部15とをそれぞれ別個に形成する場合と比べて、生産効率に優れる。また、保護キャップ1を製造するための金型も設計し易くなる。
【0030】
保護キャップ1は、その内側にある空間12c内に、光コネクタ2のハウジング21の先端部分を収容する形で、前記ハウジング21に取り付けられる。その際、保護キャップ1の外側キャップ部12は、ハウジング21の収容部211を包囲するように前記収容部211に取り付けられる。また、2つの内側キャップ部13(13A,13B)は、それぞれ収容部211内に収容されている2つのフェルール4(4A,4B)に対して、それぞれ被せられる。
【0031】
保護キャプ11の先端側の開口端(つまり、外側キャップ部12の開口端)12dに、ハウジング21の先端部分(つまり、収容部211の先端部分)を宛がうと、保護キャップ1が、概ね、光コネクタ2の前後方向(フェルール24の軸線方向)に沿った状態となる。そして、保護キャップ1がハウジング21の収容部211に取り付けられる際、外側キャップ部12の内側に設けられているガイド部12aが、収容部211の上側の形状(ロックアーム部27の形状)を伝うことによって、保護キャップ1が収容部211に対して近付くように、前後方向(フェルール4の軸線方向)に沿って真っ直ぐに進むことができる。保護キャップ1が収容部211に対して真っ直ぐに進むと、内側キャップ部13が、フェルール4の周囲にある空間22内に進入すると共に、フェルール4の先端が内側キャップ部13内の孔13aに進入する。その際、フェルール4は、内側キャップ部13の内面に対して接触することなく、蓋部11側に向かって進行する。なお、本実施形態の場合、一方の内側キャップ部13Aが、一方のフェルール4Aの先端を包囲し、他方の内側キャップ部13Bが、他方のフェルール4Bの先端を包囲するように設定されている。
【0032】
保護キャップ1は、その内側にある被係合突起14が、ハウジング21のロックアーム部27に設けられている係合突起23と係合するまで、光コネクタ2に対して近付けられる。被係合突起14が係合突起23を乗り越えて、被係合突起14と係合突起23とが互いに係わり合って係止すると、保護キャップ1が、光コネクタ2の収容部211に対して、所定位置で固定された状態となる。光コネクタ2に保護キャップ1が固定されると、蓋部11は、光コネクタ2の先端部(つまり、収容部211の先端部)に対して宛がわれた(接触した)状態となる。その際、内側キャップ部13の先端は、収容部211の底状の内壁と接触しない状態となっている。また、内側キャップ部13はフェルール4と接触しないように、内側キャップ部13とフェルール4の外面との間には、若干の隙間が保たれている。更に、内側キャップ部13の後端側の底状の部分(蓋部11の一部)と、フェルール4の先端との間には隙間があるため、保護キャップ1が光コネクタ2に取り付けられた際に、前記底状の部分(蓋部11の一部)と、フェルール4の先端とが接触することが防止されている。以上のようにして、保護キャップ1を、光コネクタ2の収容部211に対して取り付けることができる。なお、保護キャップ1を光コネクタ2から取り外す際は、ロックアーム部27を押し下げて、保護キャップ1の被係合突起14と光コネクタ2の係合突起23との係合を解除した後に、保護キャップ1を光コネクタ2から後退させればよい。このように、本実施形態の保護キャップ1は、光コネクタ2に対して着脱可能な構成となっている。
【0033】
保護キャップ1は、その被係合突起14を、光コネクタ2の係合突起23に係合させることによって、光コネクタ2の所定位置に容易に取り付けることができる。なお、光コネクタ2の係合突起23は、相手側の光コネクタのハウジングに設けられている被合突起と係合させるためのものである。本実施形態の保護キャップ1は、光コネクタ2の係合突起23を、光コネクタ2に固定する際も利用するものである。そのため、本実施形態の場合、光コネクタ2に対して保護キャップ1を固定するための専用の突起を別途、設ける必要がないという利点を有する。
【0034】
保護キャップ1は、1つの筒状の外側キャップ部12内に、2つの筒状の内側キャップ部13(13A,13B)が設けられている。そのため、保護キャップ1を光コネクタ2の収容部211に取り付けることによって、収容部211内の各フェルール4(4A,4B)の先端に、一括して内側キャップ部13(13A,13B)を被せることができる。フェルール4の先端面からは、光ファイバ31の端面が露出しているため、このように内側キャップ部13を被せることによって、フェルール4の先端面及びその付近(つまり、フェルール4の先端部)に、塵埃等の異物が付着することが防止される。
【0035】
本実施形態の場合、フェルール4は、筒状をなした収容部211の内側に収容されている。内側キャップ部13は、前記収容部211内に収納された状態で、フェルール4に被せられている。つまり、フェルール4は、保護キャップ1内において、内側キャップ部13と収容部211とによって、2重に覆われた構造となっている。そのため、本実施形態の保護キャップ1のように、蓋部11の所定位置に、外部と保護キャップ1の内側の空間12cとを連通する孔部15が形成されていても、たとえ、孔部15から保護キャップ1内に塵埃等の異物が入り込んでも、フェルール4の先端までは容易に到達できない構成となっている。したがって、蓋部11に孔部15が設けられていても、保護キャップ1によってフェルール4の先端を塵埃等の異物から保護することができる。
【0036】
ところで、使用環境によっては、光コネクタに取り付けられた従来の(孔部15が設けられていない)保護キャップ内には、結露が生じることがあり、問題となっていた。例えば、高温多湿の状態から、低温の外気又は冷房による冷気等によって急激に温度が変化した場合、特に、保護キャップ内に結露が生じる。このように結露が付着した保護キャップが光コネクタから取り外されると、保護キャップ内に塵埃等の異物が付着し易くなる。また、前記異物は、往々にして、結露(湿気)によって保護キャップの内壁にへばり付いてしまうため、外部へ取り除くことが難しくなっている。
【0037】
これに対して、本実施形態の保護キャップ1の蓋部11には、上述したように外部と内部とを連通させる孔部15が設けられており、この孔部15によって、外部の空気と保護キャップ1内の空気とが入れ替わって、保護キャップ1内の湿度が調整される。したがって、本実施形態においては、孔部15を備えているために、保護キャプ1内(内側キャップ部13内、及び外側キャップ部12内)に結露が生じること、及びその結露によって塵埃等の異物が付着してしまうこと等が抑制される。
【0038】
なお、孔部15は、上述したように被係合突起14を、専用の金型を利用して成形する際に、その金型を利用して蓋部11の所定位置に形成してもよい。このようにすれば、所定形状の保護キャップ1を効率的に製造できる。
【0039】
また、本実施形態の保護キャップ1は、蓋部11の所定位置から外側キャップ部12内に亘って、溝12bが形成されている。この溝12bは、フェルール4を収容する筒状の内側キャップ部13の軸線方向に沿って形成されている。このように、溝12bを形成することによって、内側キャップ部13を囲む部分の外側キャップ部12の肉厚を略均一にすることによって、ヒケ等の成形収縮による前記部分の変形が抑制されると共に、各内側キャップ部13(13A,13B)の蓋部11からの突出方向が、各フェルール4(4A,4B)の各軸線方向に対して位置ずれすることが抑制される。
【0040】
蓋部11は、筒状の外側キャップ部12よりも、外側に広がった形をなしている。そのため、保護キャップ1を光コネクタ2から取り外す際等において、作業者が蓋部11の縁を指等で摘むことにより、保護キャップ1を取り扱い易くなっている。
【0041】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
(1)上記実施形態1では、保護キャップ1の蓋部11に、孔部15が形成されていたが、他の実施形態においては、孔部15が形成されていない蓋部11であってもよい。
【0043】
(2)上記実施形態1では、保護キャップ1の蓋部11に、孔部15が1つ形成されていたが、他の実施形態においては、孔部15が2個以上蓋部11に形成されていてもよい。
【0044】
(3)上記実施形態1では、蓋部11の孔部15と、外側キャップ部12の内側にある被係合突起14とが保護キャップ1の前後方向に沿って一列に並んでいたが、他の実施形態においては、これらが一列に並んでいなくてもよい。
【0045】
(4)上記実施形態1では、保護キャップ1は、光コネクタ2の収容部211に対して、被係合突起14と係合突起23との係合(所謂、ロック機構)によって、固定されていたが、他の実施形態においては、これ以外の方向によって、固定されてもよい。例えば、保護キャップ1が光コネクタ2の収容部211に対して締め付けるように働く弾性力によって、保護キャップ1を収容部211に固定してもよい。
【0046】
(5)上記実施形態1では、光コネクタ2は、2つのフェルール4を備えるものであったが、他の実施形態においては、3つ以上のフェルールを備える構成であってもよい。その場合、保護キャップ1には、フェルールの個数に対応した(同じ数の)内側キャップ部13が設けられることになる。
【0047】
(6)上記実施形態1では、光コネクタ2は、自動車に搭載されて使用されるものであったが、それ以外の他の用途で使用されてもよい。
【0048】
(7)上記実施形態1では、蓋部11の形状は、略平坦な板状であったが、他の実施形態においては、光コネクタ2の先端形状に応じて、適宜、
【0049】
(8)上記実施形態1では、保護キャップ1の前後方向に成型用の金型が移動するように設定されていたが、他の実施形態においては、金型の移動方向(型締め方向及び型開き方向)は、保護キャップの形状に応じて、適宜、設定される。
【0050】
(9)上記実施形態1では、保護キャップ1は、全体的に、概ね角筒状をなしていたが、他の実施形態においては、円筒状等の他の筒型状をなすものであってもよい。
【0051】
(10)上記実施形態1では、保護キャップ1内にガイド12aが設けられていたが、このガイド部12aは必須の構成ではなく、光コネクタ2の形状等に応じて適宜、形成される。
【符号の説明】
【0052】
1…保護キャップ
11…蓋部
12…外側キャップ部
13…内側キャップ部
14…被係合突起
15…孔部
2…光コネクタ(雄型)
21…ハウジング
21A…ハウジングの本体部
21B…ハウジングの後方の底
211…収容部
22…空間
23…係合突起
27…ロックアーム部
31…光ファイバ
4…フェルール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に並ぶ複数のフェルールと、各フェルールの周囲にそれぞれ空間が形成されるように前記フェルールを包囲する収容部とを備える光コネクタに対して取り付けられる保護キャップであって、
前記フェルールの先端と対向すると共に、前記収容部の先端に宛がわれる蓋部と、
前記収容部の外側に被せられた状態で前記収容部に取り付けられると共に、前記蓋部に延設された筒状の外側キャップ部と、
各空間内にそれぞれ挿入された状態で各フェルールの先端を包囲すると共に、前記外側キャップよりも内側に配された状態で前記蓋部に延設された筒状をなす複数の内側キャップ部と、を備える保護キャップ。
【請求項2】
前記外側キャップ部の内側に、前記収容部の外側に突設された係合突起と係合すると共に、前記外側キャップ部を前記収容部に着脱可能に固定するための被係合突起を有する請求項1に記載の保護キャップ。
【請求項3】
前記蓋部は、前記外側キャップ部と前記内側キャップ部との間に形成される空間と外部とを連通する孔部を有する請求項1又は請求項2に記載の保護キャップ。
【請求項4】
前記保護キャップは、金型を利用して合成樹脂を所定形状に成形したものからなり、
前記孔部は、前記保護キャップの前後方向に沿って前記被係合突起と共に一列に配されると共に、前記保護キャップの型開き時に、前記被係合突起を形成するための金型を前記保護キャップ内から前記保護キャップの前後方向に沿って引き抜くための出口として利用される請求項3に記載の保護キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−88464(P2013−88464A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225789(P2011−225789)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】