説明

保護シート材の製造方法と保護袋体の製造方法および保護袋体

【課題】フィルム面に薬剤層を形成し、用途に応じてさらに別途フィルム材等を積層することにより機能性を高めることができる保護シート材およびそのシート材により形成される袋体を提供する。
【解決手段】インフレーション成形法により形成される筒状フィルムを幅方向に折畳んで巻き取る過程もしくは一旦巻き取られたものを引き出して、その表面の一部または全面に、薬剤含有樹脂液を塗布して、前記フィルム表面に薬剤層を形成する。また、前記加工済みの筒状フィルムを所要長さに切断して薬剤層が内側になるように反転させ、一方の開口部を閉じて製袋して、保護袋を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として合成樹脂フィルムに防虫・防黴剤などの薬剤層を塗布形成されてなる保護シート材の製造方法と保護袋体の製造方法および保護袋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クリーニングされた衣服や毛布などの寝具は、プラスチックフィルム製の袋で包装して利用者が受け取りに来るまで保管し、そのままの状態で利用者に手渡している。このようないわゆるクリーニング袋は、その利用者がクリーニング済みの衣料を袋内に収めたままでクローゼットなどに吊り掛けて保存するというような利用手段を講じる場合が多い。そのために、保存中における虫害を防ぐことを目的として防虫剤などを混入したフィルムを用いてクリーニング袋や保存袋を形成したものが、例えば特許文献1および2などによって提案されている。また、同様に防虫剤や防黴剤など薬剤を練り込んだプラスチックフィルムで衣料を覆うものが特許文献3によって知られている。
【0003】
また、前記防虫剤などを練り込んだプラスチックフィルムで袋体を形成するほかに、フィルムの片面に防虫剤・防黴剤・抗菌剤などを混入した印刷インキを用いて印刷したものを使用した保存袋については、特許文献4によって知られている。
【0004】
また、防錆あるいは防黴などを必要とする物品の包装体としてその機能を備えるシートを利用した包装体についても特許文献5あるいは6によって知られている。そのほかに、プラスチックフィルム形成材に化学製剤を混入して、例えば農業用フィルムとして遮光性や防曇性などの機能性を所有させたフィルム材についても、既に多くのものが知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−170267号公報
【特許文献2】特開2002−320544号公報
【特許文献3】特開2001−72142号公報
【特許文献4】特許第2926726号公報
【特許文献5】特開2006−200658号公報
【特許文献6】特開2003−73864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1〜3などで知られる先行技術による衣類などの保存袋あるいは保護シートは、防虫・防黴などの成分を有する薬剤をプラスチックに混入して練り上げた材料で形成されたフィルムを使用して製作されている。したがって、そのフィルムによって所要の袋体を得ることは、製品の均一性が確保できる反面、コストダウンを図るために多量生産が要求されるという問題点がある。また、効力を高めるにはフィルム形成材料に薬剤を多く混入する必要がある。このようなことから、例えば特許文献2に開示されるように、不織布シートと通常のフィルムを組合わせるなどの工夫がなされている。
【0007】
また、特許文献4で知られるように、薬剤の混入されたフィルムを用いることなく、薬剤入りの印刷インキを用いて印刷されたプラスチックフィルムで保存袋を形成されるものでは、その手法上フィルム面に付着する薬剤成分を含む層の膜厚が薄くなることから有効成分の付着量が微量になるので、性能の有効期間について問題がある。
【0008】
また、特許文献5,6などで知られる防黴あるいは防錆などの機能を備える包装体としては、防錆剤あるいは防黴剤を混入したシートが採用されている。そのほか含浸させたシートと別途シートとを組合わせて製袋された包装体が用いられている。これらの包装体では利便性が高いが、被包装物が大きくなるとコストアップする。
【0009】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、薬剤成分を含有する液材をフィルム面に塗工することで、フィルム面に薬剤層を形成し、用途に応じてさらに別途フィルム材等を積層することにより機能性を高めることができる保護シート材の製造方法と保護袋体の製造方法および保護袋体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、第1発明による保護シート材の製造方法は、
インフレーション成形法により形成される筒状フィルムを幅方向に折畳んで巻き取る過程もしくは一旦巻き取られたものを引き出す過程で、その表面の一部または全面に、薬剤含有樹脂液を塗布して、前記フィルム表面に薬剤層を形成することを特徴とするものである。
【0011】
前記発明において、前記薬剤層の表面には気孔を備える被膜材が積層形成されるのがよい(第2発明)。また、前記薬剤層の表面には被膜材が部分的に剥離可能に積層形成されるのがよい(第3発明)。
【0012】
また、第4発明による保護袋体の製造方法は、
インフレーション成形法により形成される筒状フィルム表面の一部または全面に薬剤層が塗布形成されたものを用い、その筒状フィルムを所要長さに切断して薬剤層が内側になるように反転させ、一方の開口部を閉じて製袋することを特徴とするものである。
【0013】
また、前記第4発明において、前記筒状フィルムはその半周表面にのみ薬剤層が塗布形成され、所要長さに切断した前記筒状フィルムを反転して製袋されるのが好ましい(第5発明)。
【0014】
第6発明による保護袋体の製造方法は、
インフレーション成形法により形成される筒状フィルム表面の一部または全面に薬剤層が塗布形成されたものを用い、その筒状フィルムを幅方向に二つ折りして、その幅方向の一方の側辺を切断して薬剤層が内側になるように反転させ前記側辺を閉合させた後、所要長さに切断して一方の開口部を閉合して製袋することを特徴とするものである。
【0015】
また、前記第6発明において、前記筒状フィルムはその半周表面にのみ薬剤層が塗布形成されたものを用いるのが好ましい(第7発明)。
【0016】
さらに、第8発明による保護袋体は、
インフレーション成形法により形成される筒状フィルム表面の一部または全面に薬剤層が塗布形成されたもので、薬剤層が内側になるように反転して一方の開口部が閉じられて製袋されていることを特徴とするものである。
【0017】
前記第8発明において、袋体内面の薬剤層上には、気孔を備える被膜材もしくは部分的に剥離可能な被覆材が積層されているのがよい(第9発明)。
【発明の効果】
【0018】
第1発明によれば、インフレーション成形法により筒状に形成されたフィルムを、そのまま平たく折畳んだ状態で、その全面または一部に機能性を所有させる物質を混入された薬剤液を塗工することにより、一挙に所望膜厚の薬剤層を積層させた保護シート材を得ることができる。前記薬剤層を塗工によって形成するので、用途に応じてその薬剤層の厚みを任意に設定することができる。また、塗工に際してローラ塗布する場合、全面以外に部分塗布することができるので、用途に応じて薬剤液の塗着量を加減することも可能である。さらに、筒状のフィルムを幅方向に畳んでその上下面に対して薬剤液の塗工を行うから、上下いずれか一方の面のみに薬剤層を形成することが簡単に行い得る、などの効果を奏する。
【0019】
また、第2発明によれば、前記筒状フィルムの表面に薬剤層を塗工する工程の後で、気孔を備える被膜材(フィルムあるいは不織布など)を接着して積層することで、薬剤層の機能を制御できる保護シート材を容易に得ることができる。また第3発明によれば、部分的に剥離可能にした被覆材を前記薬剤層の塗工後に積層することで、使用時に薬剤機能を発揮させたい、あるいは機能を規制するために、使用時部分的に薬剤層を露出させるようにすることができる保護シート材を簡単に作成することができる。
【0020】
また、第4発明によれば、成形された筒状フィルムの表面に、その全面あるいは一部に薬剤層を塗工形成したものを、製袋時に反転させて一方の開口部を接合すれば、簡単に保護袋体を作成することができるので、機能性を備えた包装袋が安価に提供することができるという効果を奏する。なお、この場合、薬剤層の塗工工程で平らに畳まれた筒状フィルムの上下一方の面(半周面)にのみ薬剤層を塗布形成したものを反転させて製袋すれば、袋内面の片面にのみ薬剤層を備えるものが、至極簡単に製作でき、コストダウンを図ることができる。
【0021】
さらに、第6発明によれば、前記筒状フィルムの表面に、その全面あるいは一部に薬剤層を塗工形成したものを、製袋時に前記筒状フィルムを幅方向に二つ折りして、その幅方向の一方の側辺で切開いて薬剤層が内側になるように反転させた後に、側辺の開放部を閉じ合わせ、かつ所要長さ寸法に切断してその長さ方向の一端を閉合して製袋すれば、連続して製袋することができるので、作業性が向上してコストダウンを図ることができるという効果を奏する。なお、筒状フィルムの半周面にのみ薬剤層を形成したものでは、製袋操作が簡便に行えて効果的である。
【0022】
第8発明によれば、製袋する際に筒状フィルムの一部のみを接合して内面に薬剤層を備えた機能性を有する収容物の保護袋を簡単に形成でき、安価に提供することができるという効果を奏する。第9発明による構成が付加されると、さらに有用な保護袋体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明による保護シート材の製造方法と保護袋体の製造方法および保護袋体につき、具体的な実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1には第1発明に係る保護シート材の製造過程を表わす第1手段の概要図(a)と第2手段の概要図(b)が示されている。図2(a)には第1手段における他の実施形態を表わす概要図が、(b)には第2手段における他の実施形態を表わす概要図が、それぞれ示されている。
【0025】
この実施形態による保護シート材の製造方法の第1手段は、図1(a)によって説明すると、インフレーション成形機1により所要の折径(幅方向に畳んだときの幅寸法)となるように設定されてダイ2のスリットから噴出される樹脂フィルムをその内部に吹き込まれる空気によって膨出させるとともに頂部に設けられるピンチローラ3,3とガイド板4とによる協働作用で延伸させて所要の肉厚の筒状フィルムに成形される。この筒状フィルムは、前記ピンチローラ3,3によって平たく畳まれて複数のガイドローラ5にて案内され緊張状態を保たれて塗工装置10に送られる。なお、図中符号6は冷却用エアの噴き付けリングである。以下、説明の都合上、前記畳まれた筒状フィルム7を「加工シート7」ということにする。
【0026】
塗工装置10は、ドクタ式塗布手段11(たとえば、特開2004−195369号公報に記載のもの参照)とローラ式塗布手段12とが所要の間隔で配設され、薬剤含有樹脂液(以下、「薬剤液」という。)を塗布された後乾燥手段14により乾燥されて巻取り機15に巻き取られるようにされている。
【0027】
この塗工装置10においては、供給される加工シート7に対して、まずドクタ式塗布手段11で上表面に薬剤液を塗布する。この際、薬剤液の塗膜厚は、ドクタの塗工面に対する上下方向変位量により設定される。こうして上表面に薬剤液の塗工が行われた後、その下流側の上部に配置される乾燥手段13によって塗布された薬剤液を乾燥させる。この乾燥手段13としては、電熱ヒータもしくはホットエアの噴き付け機構が選択的に採用される。
【0028】
次いで、加工シート7の下表面に対するローラ式塗布手段12により薬剤液が塗布される。このローラ式塗布手段12では、液溜め槽12aからローラ12bに付着させて持上げられる薬剤液をドクタ12cによって所要付着量に制限され、中間の移しローラ12dを介して塗布ローラ12eに移し替え、均等膜厚となるようにして加工シート7に塗布される。したがって、加工シート7に対する塗膜厚は前記移しローラ12d手前でドクタ12cによって設定される。なお、前記塗布ローラ12eは、加工シート7を挟んで上側に受ローラ12fが配置されて、塗布ローラ12eと同調回転させて確実に塗工ができるようにされている。
【0029】
こうして加工シート7は、その上表面と下表面とに薬剤液の塗工がなされ、次の工程で乾燥手段14により塗工面を乾燥させ、巻取りが可能なようにされる。この乾燥手段14は、前述の上表面に対する乾燥手段13と同様にして上下から電熱ヒータもしくはホットエアの噴き付け機構でもって行われる。こうして、塗工面が乾燥状態となれば、巻取り機15によって巻き取られ、二次加工工程に送られるようにされる。
【0030】
次に、保護シート材の製造方法の第2手段は、図1(b)によって示されるように、インフレーション成形機1によって得られた所要折径の加工シート7を一旦巻取り、この巻き取られた加工シート7に対して塗工処理を行う。なお、前記第1手段と同一もしくは同様の構成については、同一の符号を付している。
【0031】
所要量巻き取られた加工シート7は、繰り出し機16からテンションローラ8,8により所要の張力を加えられて塗工装置10に送込まれる。この塗工装置10は、前述のものと同様であるから、詳細な説明については省略する。まず、加工シート7の上表面に対してドクタ式塗布手段11で薬剤液が塗布される。次いで乾燥手段13によって塗布された薬剤液を乾燥させる。その後に加工シート7の下表面に対してローラ式塗布手段12により薬剤液が塗布される。その後に乾燥手段14によって上下両表面の薬剤液塗工面を乾燥させ、巻取り機15′によって巻き取られ、二次工程に供給できるようにする。
【0032】
前記第1手段および第2手段のいずれにおいても、塗工装置10で加工シート7に対して上表面に対する塗布手段と下表面に対する塗布手段との使用を選択することにより、上下いずれか一方の面にのみ薬剤液の塗布を行うことができる。また、ドクタ式塗布手段11においてそのドクタを幅方向に断続して配置すれば、縞状に薬剤液の塗布を行うことができる。また、ローラ式塗布手段12においては、その塗布ローラ12e表面に塗布操作面と非塗布面とを設けたものを使用することで不連続な塗布が行える。なお、前記ドクタ式塗布手段11に代えてローラ式塗布手段12を用いるようにしてもよい。
【0033】
次に、図2(a)によって示されるように、前記第1手段において、加工シート7の上下両表面に対する薬剤液の塗布工程が終った段階で、別途被膜材17を前記塗工面に対して積層付着するものである。なお、薬剤液の塗工工程は前述の通りであるので、前記実施形態と同一もしくは同様の部分については、前記実施形態と同一の符号を付して表わし、当該工程の説明については省略し、被膜材17の積層工程について説明する。
【0034】
この製造方法では、塗工装置10の後段に被膜材17の積層手段20を配置し、薬剤液の塗工が終った時点でその積層手段20によって、別途被膜材17を加工シート7の薬剤液塗布面に供給して積層させる。この被膜材17は予めロール巻17aして準備されたものから繰り出し、ガイドローラ18により張力を与えて塗工装置10から送り出された薬剤液の加工済みシート7′の表面に沿わせ重ね合わせる。次いで押えローラ21,21により加工済みシート7′に対して被膜材17を密着させて一体化する。その後に乾燥手段14を通過させて乾燥し、巻取り機15′に掛けて巻取り、次の二次工程に供給できるようにされる。なお、片面にのみ被膜材17を積層する場合は、その積層面に対応する側の被膜材17を供給することにより形成される。この被膜材17を積層するに際しては、薬剤液に接着機能を備える薬剤を含有させておくのが好ましい。また、上表面に対する塗工操作後の乾燥操作は付着薬剤の表層に薄い被膜が形成される程度で移行させるのが好ましい。
【0035】
第2手段により被膜材17を積層する場合は、図2(b)によって示されるように、加工シート7の上下両表面に薬剤液の塗工が施されたものに対し、別途準備された被膜材17をガイドローラ18によって張力を加えながら供給して重ね合わせる。その後に押えローラ21,21によって薬剤塗布面に押圧して接着し、乾燥手段14によって乾燥させて一体に積層形成する。こうして積層された製品は巻取り機15′に掛けて巻き取られ、二次工程に供給される。なお、片面にのみ被膜材17を積層する場合は、前記第1手段と同様である。
【0036】
また、前記被膜材17を積層するに際して、その一部を剥離できるようにする場合は、加工シート7に対して積層する被膜材17の片面に剥離材を塗布形成したものを用いることにより、製品として使用する場合に、その被覆材17の一部もしくは全部を剥離して目的用途に対応させることができる。
【0037】
ここで加工シート7に塗布形成される薬剤層としては、得られる加工済みシート7′としての使用目的に応じた薬剤が使用される。例えば、周知の防虫剤、防黴剤、抗菌剤あるいは防錆剤などを樹脂液中に混入して塗布される。また、加工シート7としては、インフレーション成形が容易であるプラスチック(例えば、低密度ポリエチレン、中高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなど)のうち塗布する薬剤などと調和が取れる材料が選択使用される。また、被膜材17としては、目的用途に応じて、例えば気孔率の高いフィルムや不織布、あるいは薄手の織布などが採用できる。また、被膜材の積層付着面に予め離形剤を塗布したものを使用することにより、使用開始までの間薬剤の気化などによる性能の低下を防止することができる。そして、その離形剤の付着状態を部分的に設けるようにするとともに、剥ぎ取る部分が連続シートから分離容易なように、予め切り線を付しておくようにすれば、局部的に被膜材17を剥離して加工シート7上に塗布されている薬剤層を露出させることができるシートが得られる。
【0038】
次に、第4発明による保護袋体の製造方法を、その実施形態について説明する。図3には保護袋体の一実施形態を表わす一部切欠き斜視図が示されている。図4には保護袋体の製袋課程を表わす図が、図5には薬剤層の表面に被膜材を積層した保護袋体の断面図が、それぞれ示されている。
【0039】
この保護袋体30は、前記実施形態で説明した加工シート7(第1発明の保護シート材に対応)を用いて製袋されるものであり、まず、表面(幅方向に畳まれた加工シート7の上下面に)薬剤層9が形成された加工済みシート7′を目的とする袋体の長さ寸法に切断する(a)。得られた平たくなっているこのシート材7aを筒状に戻し(b)、その表面側を内向きに反転させる(c)。反転されたシート材7aを再び平坦に折畳む(d)。折畳まれたシート材7aの一方の開口部7a′を閉合する(e)。この閉じ合わせは例えばウエルダー(またはヒートシール)によって溶着する。こうすると、図3に示されるような内面に薬剤層9が形成されている保護袋体30が形成できるのである。
【0040】
このようにして形成される保護袋体30は、加工済みシート7′の表面に、その全面に薬剤層9が形成されたものである場合、製袋された保護袋体30の内面が全体にわたり薬剤層9を備えることになる。また、加工済みシート7′の半周面のみに薬剤層9が積層されている場合は、その半周面分を内側の一方の面に位置するようにして製袋することにより片面に薬剤層9が他方の面は通常のシートによるものが得られる。
【0041】
ここで、例えば薬剤層9が内側の片面に防虫剤や防黴剤を混入した薬剤で形成した保護袋体30にして、その閉じ合わせた部分の中央部に小孔が形成されるようにすれば、その小孔にハンガーのフックを通すことで洗濯物をハンガーに吊り掛けて収容するいわゆるクリーニング袋として防虫・防黴機能を備えた物を提供することができる。もちろん、一方を閉じ合わせた袋体とすれば、衣料などの収納袋として防虫・防黴機能を備えたものが得られる。なお、このような衣料の収納袋とするときは、防虫剤・防黴剤に常温揮発性の薬剤と常温非揮発性の薬剤とを混ぜ合わせて使用すれば、長期間効能を発揮させることができる。
【0042】
一方、前記加工済みシート7′における薬剤層9の上面に前記被膜材17を積層したものを使用して、前記要領で製袋すれば、図5に示されるように、その被膜材17として使用した材料によって種々の機能を発揮できる保護袋体30Aを得ることができる。例えば加工シート7として耐バリア性のフィルムを使用して、薬剤層9に防黴剤・防錆剤などを混入した薬剤液を塗工して、その表面に気孔性の高い被膜材17を積層した加工済みシート7′を使用し製袋すれば、機械部品など防錆が必要な物品の包装袋として使用できる。この場合被膜材17が気孔率の高い材料で薬剤層9をカバーした状態になっているので、一挙に前記薬剤が蒸散せず持続させることができる。また、前述の防虫・防黴による薬剤層9を備える衣料などの収納袋において、気孔率の高い被膜材17を積層した加工済みシート7′を使用すれば、薬剤が衣料などに直接触れずに機能を発揮させる袋体とすることができる。
【0043】
次に、図6には第4発明による保護袋体の製造方法による製袋課程を表わす図が示されている。この実施形態では、前述の表面に薬剤層を形成された加工済みシート7′あるいは薬剤層の表面に被膜材を積層した加工済みのシート(以下、両者を合わせて「加工済みシート7′」という。)から製袋するようにされている。なお、図6では内容を明瞭にするために加工済みシート7′にはその半周面にのみ薬剤層9が塗布されたもので表わすとともに、膨らませた状態の断面を模式的に示している。
【0044】
まず、加工済みシート7′を所要長さ寸法に切断する(a)。こうして得られたシート材7aを幅方向の一方の側辺7bを刃物40(これに限定されない)で切断して切開く(c)。その後に、切開かれたシート材7aを薬剤層9が内側となるように反転させる(d)。そして、二つ折りして切開き部7b′を閉じ合わせ(e)、ウエルダーで閉じ合わせ部分を接合する(f)。この閉じ合わせ接合操作時に、長軸方向で一方の開口部7cを接合して保護袋体30が形成される。
【0045】
以上の製袋方法では、1袋ごとに製袋する手段を説明したが、連続的に加工するには、例えば連続する加工済みシート7′の一側辺を刃物で切断して切開き、次の工程で反転操作を行い、しかる後平坦に畳んで切開部を閉じ合わせ、その後所要寸法に切断して一端部を接合するという手順で行えば、連続的に製袋することができる。したがって、この連続的製袋方法によれば、能率が向上してコストダウンを図ることができる。
【0046】
上述した製袋方法では、薬剤層のみが形成されたものについて記載しているが、被膜材を積層した加工済みシート7′でもって製袋する場合も同様にして実施することができる。なお、必要に応じて気孔を備える被覆材の上に剥離可能なシート材を積層して、使用時に剥離可能なシート材を剥がして使用するようにすることもできる。
【0047】
また、上述の保護シート材は、それを用いて保護袋体を製袋形成することに限らず、筒状シート材を一側辺で切開いて連続帯状にすれば、所要寸法に切断することで薬剤層(薬剤層+被膜材の積層)を備えた機能性シートとして、包装材や被覆シートあるいは農業用のシートとして安価に提供することができる。
【0048】
以上の説明では、特定された形状のものについて記載されているが、これに限定されるものではなく、用途に応じて任意変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】保護シート材の製造過程を表わす第1手段の概要図(a)と第2手段の概要図(b)
【図2】保護シート材の製造過程を表わす第1手段における他の実施形態を表わす概要図(a)と、第2手段における他の実施形態を表わす概要図(b)
【図3】保護袋体の一実施形態を表わす一部切欠き斜視図
【図4】保護袋体の製袋課程を表わす図
【図5】薬剤層の表面に被膜材を積層した保護袋体の断面図
【図6】保護袋体の他の製袋課程を表わす図
【符号の説明】
【0050】
1 インフレーション成形機
7 加工シート
7′ 加工済みシート
7a シート材
9 薬剤層
10 塗工装置
11 ドクタ式塗布手段
12 ローラ式塗布手段
13,14 乾燥手段
15,15′ 巻取り機
17 被膜材
20 積層手段
30,30A 保護袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレーション成形法により形成される筒状フィルムを幅方向に折畳んで巻き取る過程もしくは一旦巻き取られたものを引き出す過程で、その表面の一部または全面に、薬剤含有樹脂液を塗布して、前記フィルム表面に薬剤層を形成することを特徴とする保護シート材の製造方法。
【請求項2】
前記薬剤層の表面には気孔を備える被膜材が積層形成される請求項1に記載の保護シート材の製造方法。
【請求項3】
前記薬剤層の表面には被膜材が部分的に剥離可能に積層形成される請求項1または2に記載の保護シート材の製造方法。
【請求項4】
インフレーション成形法により形成される筒状フィルム表面の一部または全面に薬剤層が塗布形成されたものを用い、その筒状フィルムを所要長さに切断して薬剤層が内側になるように反転させ、一方の開口部を閉じて製袋することを特徴とする保護袋体の製造方法。
【請求項5】
前記筒状フィルムはその半周表面にのみ薬剤層が塗布形成され、所要長さに切断した前記筒状フィルムを反転して製袋されることを特徴とする請求項4に記載の保護袋体の製造方法。
【請求項6】
インフレーション成形法により形成される筒状フィルム表面の一部または全面に薬剤層が塗布形成されたものを用い、その筒状フィルムを幅方向に二つ折りして、その幅方向の一方の側辺を切断して薬剤層が内側になるように反転させ前記側辺を閉合させた後、所要長さに切断して一方の開口部を閉合して製袋することを特徴とする保護袋体の製造方法。
【請求項7】
前記筒状フィルムはその半周表面にのみ薬剤層が塗布形成されたものを用いる請求項6に記載の保護袋体の製造方法。
【請求項8】
インフレーション成形法により形成される筒状フィルム表面の一部または全面に薬剤層が塗布形成されたもので、薬剤層が内側になるように反転して一方の開口部が閉じられて製袋されていることを特徴とする保護袋体。
【請求項9】
袋体内面の薬剤層上には、気孔を備える被膜材もしくは部分的に剥離可能な被覆材が積層されている請求項8に記載の保護袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−50039(P2008−50039A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229098(P2006−229098)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(592117483)
【Fターム(参考)】