説明

保護シールド、及びそのようなシールドと収納箱とを含む保護具

煙から目を保護するための保護シールド(1)であって、目の周りでユーザの顔の上部に取り付けられるようになっている。シールド(1)は、航空機の飛行乗務員に呼吸ガスを供給するためのマスクのようなフェイスマスク(3)に自身を一時的に固定するのに適当なロック手段(2)を含んでいる。シールド(1)は、それで顔を覆われたユーザが視野内で情報、特に飛行の支援のために提供される情報を見られるようにしたディスプレイ装置(5)も含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、航空機の飛行乗務員のための設備、すなわち、保護シールド、フェイスマスク、及び、それらシールドやマスクのための収納箱のような設備に関連している。
【0002】
より詳しくは、一つの側面において、本発明は、煙から目を守るための保護シールドであって、目の周りのユーザの顔の上部に装着するのに適し、フェイスマスクに一時的に保護シールドを固定するのに適当なロック手段を含むものに関連している。前記フェイスマスクは、航空機の飛行乗務員に呼吸ガスを供給するためのマスクのようなものである。
【背景技術】
【0003】
米国特許5,630,412号公報には、前述のようなマスクとシールドからなる設備の例について記載されている。その設備では、シールドは、特にマスクがユーザの顔に既に装着されている場合に、マスクに速やかに且つ取り外し可能にマウントすることができるようになっている。航空では、例えば、輸送機の操縦士と副操縦士に対し、特定の飛行条件下、とりわけ、非常に高い高度にいるときやコックピット内に一人の操縦士しかいないときには、酸欠を防止するための設備を継続して着用することが規則により要求されることがある。煙や有毒或いは催涙性のガスが目に触れるのを防止するためには、場合によっては、ユーザは既に装着されているマスクに加えてシールドを着用する必要もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に煙のある状態では、コックピット内の視界は縮小され、一般にコントロールパネル上に表示される飛行乗務員に有用な情報はもはや視認できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特段の目的は、情報、特に飛行を支援する情報へのアクセスを可能にすることにある。
【0006】
このため、本発明は、次のようなシールドを提供する。このシールドは、前述のような特徴に加えて、シールドで顔を覆われたユーザが視野内で情報、特に飛行の支援のために提供される情報を見られるようにしたディスプレイ装置を含むという特徴も有している。
【0007】
これらの性質により、ユーザは、コントロールパネル上のディスプレイ装置はもはや見えないときでも、一つの動作で且つ数秒で、煙に対して保護効果のあるシールド、及び、ユーザがユーザの活動を継続するために必要とされる情報を見ることができる装置の両方を身につけることができる。
【0008】
また、本発明の実施の形態では、状況に応じて以下に説明する性質の一つ以上を備えてもよい。
・ディスプレイ装置は、シールドがユーザの顔をカバーしているとき、シールドの外側に取り付けられる。シールドに取り外し可能にマウントされるディスプレイ装置が必要なとき、この性質は特に有利である。したがって、煙が発生した場合や煙が濃くなった場合、既にマスクとシールドからなる保護具(例えば、有毒ガスに対して保護効果のあるもの)を装着しているユーザは、その保護具を取り外すことなくディスプレイ装置を身につけることができる。同様に、一度ディスプレイ装置の使用を必要とした煙が散逸した場合、既にディスプレイ装置を取り付けられたシールドとマスクからなる保護具を装着しているユーザは、その保護具を取り外すことなくシールドからディスプレイ装置を離すことができる。
・ディスプレイ装置は、シールドがユーザの顔をカバーしているときシールドの中に配置される光伝送手段を含んでいる。周囲の煙からディスプレイ装置を保護する必要があるとき、この性質は特に有用である。シールドの下に存在する呼吸ガスの僅かな正圧により、また、シールド下の空間の容積が呼吸ガスにより掃気されることにより、ディスプレイ装置及びより特にその光学要素は、少しの汚染物質の沈着もなく、非常に清浄度の優れた状態に保持される。
・ディスプレイ装置は、ユーザの網膜に光信号を投影するための装置である。
【0009】
もう一つの側面において、本発明は、頭部の保護具、特に航空機の飛行乗務員のための頭部保護具に関連している。この保護具は、以下のものを備えている。
・鼻と口の周りでユーザの顔の下部に取り付けられて使用され、ユーザに呼吸ガスを供給するようになっているフェイスマスク。
・目を保護するためのものであり、目の周りでユーザの顔の上部に付けられるようになっており、自身をフェイスマスクに一時的に固定するのに適当なロック手段を含む保護シールド。
【0010】
この保護具は、シールドで顔を覆われたユーザが視野内で情報、特に飛行の支援のために提供される情報を見られるようにしたディスプレイ装置を含むという特徴を有している。
【0011】
この保護具は、マスクからディスプレイ装置まで情報を伝える接続手段を状況に応じてさらに備える。
【0012】
さらに別の側面では、本発明は前述のような保護シールド、すなわち、情報を表示するための装置を装着されたシールドを受け取る収納箱に関連している。
【0013】
本発明の収納箱の実施の形態では、状況に応じて以下に説明する性質の一つ以上を備えてもよい。
・収納箱は光伝送システムを含んでいる。光伝送システムは、ディスプレイ装置からの光信号を収納箱の外に伝えるようになっており、それにより、ユーザがシールドを収納箱から取り出すことを必要とせずに見ることのできる光信号を構成する。
・収納箱は、マスクがユーザの顔に付けられたとき、ディスプレイ装置が収納箱からシールド或いはフェイスマスクに情報を伝えるための接続手段を含んでいる。
【0014】
本発明のその他の側面、目的、及び利点は、以下に説明する本発明の様々な実施の形態に関連する記述によって明らかとなるであろう。
【0015】
また、本発明は図面の助けを借りることでも理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
各図面では、同一或いは同様の要素を指定するのに同じ符号が使用されている。
【0017】
本発明の第1の実施の形態では、図1に示されるように、本発明は煙や有毒或いは刺激性のガスからユーザの目を保護するための保護シールド1に関連している。
【0018】
このシールド1は、自身をフェイスマスク3に一時的に固定するのに適当なロック手段2を備えている。
【0019】
シールド1とフェイスマスク3は保護具4を構成している。このタイプの保護具4は、特に航空機の飛行乗務員用に使用することができる。
【0020】
シールド1、フェイスマスク3及びロック手段2は、仏国特許出願94/01159及び仏国特許出願02/07090で特に説明されているように、既知の一般的な構造のものである。
【0021】
本発明によれば、保護シールド1は飛行支援情報のような情報を表示する装置5を備えている。
【0022】
第1の保護具では、ユーザの顔の上にシールドが装着されたとき、ディスプレイ装置5はシールド1の外側に取り付けられる。
【0023】
一例として、ディスプレイ装置5は、米国ワシントン州のボセルに拠点があるサプライヤー、マイクロビジョン社によって販売されたものの一つのような既知の装置でもよい。こうした状況では、ディスプレイ装置5は、鏡及び/又は他の光学部品のような光伝送手段6によって光信号の形でユーザの網膜に情報を映し出す。
【0024】
ディスプレイ装置5はシールド1に取り外し可能に取り付けられてもよい。こうした状況では、シールド1の如何にかかわらずフェイスマスク3を使用することができるだけではなく、ディスプレイ装置5の如何にかかわらずシールド1とフェイスマスク3を使用することもできる。
【0025】
図1では、ディスプレイ装置は、図示しないビデオ装置によって供給された画像がディスプレイ装置5に送信されることを可能にする接続手段9を持って示されている。
【0026】
図示しない変形では、接続手段はシールドのフレーム7を経由して、シールド1上に配置されたコネクタに通じている。このコネクタは、フェイスマスク3上に配置された補足的なコネクタと協働する。フェイスマスク3は、フェイスマスク3に呼吸ガスを供給する供給パイプ8に接続されたケーブルを経由してビデオシステムに接続されている。
【0027】
さらに別の変形では、ディスプレイ装置5は独立して作動し、接続手段9は必要とされない。
【0028】
したがって、後者の2つの変形では、ユーザはフェイスマスク3が作動することができるために要求されるものに加えてケーブルが邪魔になることがない。
【0029】
本発明の第2の実施の形態では、図2に示されるように、シールド1はディスプレイ装置5を備えている。このディスプレイ装置5では、シールド1がユーザの顔を覆っているとき、光伝送手段6はシールド1の内部に配置される。第1の実施の形態と同じ特徴及び同じ変形は、この第2の実施の形態にも適用することができる。
【0030】
図3はフェイスマスク3とシールド1を含む保護具4を示している。フェイスマスク3は、その上にロック手段2によって取り外し可能にシールド1をマウントされている。また、シールド1それ自体がディスプレイ装置5を含んでいる。
【0031】
図4に示されるように、シールド1はスタンド箱10の中に収納することができる。このタイプの箱は、仏国特許出願02/16582において既に説明されている。このように、シールド1は、ディスプレイ装置5を接続した状態でスタンド箱10の中に、手に届くところに収納することができる。ディスプレイ装置5は、例えば、ヒンジ12に接点を設けることによって、単にドア11を開けるだけでスイッチが入るようにしてもよい。
【0032】
ロック手段は備えるがディスプレイ装置は備えないシールド1を受け取るための、別のスタンド箱を備えてもよい。したがって、ユーザは、ディスプレイ装置のあるなしにかかわらず取り外し可能なシールドを選ぶことができる。
【0033】
図5に示されるように、保護具4はその全体を収納箱13の中に収納することができる。この箱13は2つのドア11を備えている。各ドア11は切込み14を含んでいる。この切込み14は、もう片方のドアの切込みと位置が一致する。これらの切込み14は、フェイスマスク3のグリップの表面15が箱13の外に突出するのを可能にしている。箱13に収納された保護具4のディスプレイ装置5は既に接続されている。それは、ドア11を開けたときの接触によってスイッチを入れることができる。ドア11のうちの1つの外側面に、テストボタン16を配置することもできる。テストボタン16は、ディスプレイ装置5のスイッチを一時的に入れることができる。その結果、光信号17がディスプレイ装置5によって放射され、この光信号17は光導波路18を照らし出す。光導波路18は、ディスプレイ装置5によって生成された光の少なくとも一部を末端まで伝える。光導波路18の末端はディスプレイ19を構成している。ディスプレイ19は、ドア11のうちの1つ開口部を通ってそれと同じ平面上に位置している。したがって、箱13から保護具4を引き出すことなく、ユーザは、ディスプレイ装置5の動作をテストすることができる。
【0034】
前述の本発明の実施の形態の種々の変形を、本発明の範囲を逸脱することなく構想することが可能である。したがって、図5を参照して説明したディスプレイ装置5の動作テストのための手段は、図4を参照して説明したようなスタンド箱10に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の保護具であって、シールドがユーザの顔を覆っているときディスプレイ装置はシールドの外側に取り付けられるものの斜視図である。
【図2】本発明の保護シールドであって、シールド内に配置される光伝送手段を含むディスプレイ装置を備えているものの斜視図である。
【図3】図1に示すような本発明の保護具であって、保護シールドがフェイスマスクに取り付けられるものの斜視図である。
【図4】図1乃至図3に示すような保護シールドを受け取るのに適した収納箱の斜視図である。
【図5】図3に示すような保護具のための収納箱の一部を切り取った斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙から目を保護するための保護シールド(1)であって、目の周りでユーザの顔の上部に取り付けられるようになっており、且つ、航空機の飛行乗務員に呼吸ガスを供給するためのマスクのようなフェイスマスク(3)に自身を一時的に固定するのに適当なロック手段(2)を含むものにおいて、
シールド(1)で顔を覆われたユーザが視野内で情報を見られるようにしたディスプレイ装置(5)を含み、
前記情報は特に飛行の支援のために提供されることを特徴とする保護シールド。
【請求項2】
ディスプレイ装置(5)は、シールド(1)がユーザの顔を覆っているときにはシールド(1)の外側に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の保護シールド。
【請求項3】
ディスプレイ装置(5)は、シールド(1)がユーザの顔を覆っているときにシールド(1)の中に配置される光伝送手段(6)を含むことを特徴とする請求項1記載の保護シールド。
【請求項4】
ディスプレイ装置(5)は、光信号を網膜に投影するための装置であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の保護シールド。
【請求項5】
ディスプレイ装置(5)は、取り外し可能にマウントされていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の保護シールド。
【請求項6】
頭部の保護具、特に航空機の飛行乗務員のための保護具において、
鼻と口の周りでユーザの顔の下部に取り付けられて使用され、ユーザに呼吸ガスを供給するようになっているフェイスマスク(3)と、
目を保護するためのものであって目の周りでユーザの顔の上部に付けられるようになっており、且つ、自身をフェイスマスク(3)に一時的に固定するのに適当なロック手段(2)を含む保護シールド(1)とを備え、
シールド(1)で顔を覆われたユーザが視野内で情報、特に飛行の支援のために提供される情報を見られるようにしたディスプレイ装置(5)を含むことを特徴とする保護具。
【請求項7】
マスクからディスプレイ装置(5)まで情報を伝える接続手段(9)をさらに備えることを特徴とする請求項6記載の保護具。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の保護シールド(1)が情報ディスプレイ装置(5)を備えるときに、保護シールド(1)を受け取るようになっていることを特徴とする収納箱。
【請求項9】
ディスプレイ装置(5)からの光信号(17)を収納箱(13)の外に伝えるようになっており、それにより、ユーザがシールド(1)を収納箱(13)から取り出すことを必要とせずに見ることのできる光信号を構成する光伝送システム(18)を含むことを特徴とする請求項8記載の収納箱。
【請求項10】
マスクがユーザの顔に付けられたとき、ディスプレイ装置(5)が収納箱からシールド(1)或いはフェイスマスク(3)に情報を伝えるための接続手段(9)を含むことを特徴とする請求項8又は9記載の収納箱。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙から目を保護するための保護シールド(1)であって、目の周りでユーザの顔の上部に取り付けられるようになっており、且つ、航空機の飛行乗務員に呼吸ガスを供給するためのマスクのようなフェイスマスク(3)に自身を一時的に固定するのに適当なロック手段(2)を含むものにおいて、
シールド(1)で顔を覆われたユーザが視野内で情報を見られるようにしたディスプレイ装置(5)を含み、
さらに前記ディスプレイ装置はディスプレイ装置(5)に画像を供給できるようにする接続手段(9)を備え、
前記情報は特に飛行の支援のために提供されることを特徴とする保護シールド。
【請求項2】
ディスプレイ装置(5)は、シールド(1)がユーザの顔を覆っているときにはシールド(1)の外側に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の保護シールド。
【請求項3】
ディスプレイ装置(5)は、シールド(1)がユーザの顔を覆っているときにシールド(1)の中に配置される光伝送手段(6)を含むことを特徴とする請求項1記載の保護シールド。
【請求項4】
ディスプレイ装置(5)は、光信号を網膜に投影するための装置であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の保護シールド。
【請求項5】
ディスプレイ装置(5)は、取り外し可能にマウントされていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の保護シールド。
【請求項6】
頭部の保護具、特に航空機の飛行乗務員のための保護具において、
鼻と口の周りでユーザの顔の下部に取り付けられて使用され、ユーザに呼吸ガスを供給するようになっているフェイスマスク(3)と、
目を保護するためのものであって目の周りでユーザの顔の上部に付けられるようになっており、且つ、自身をフェイスマスク(3)に一時的に固定するのに適当なロック手段(2)を含む保護シールド(1)とを備え、
シールド(1)で顔を覆われたユーザが視野内で情報、特に飛行の支援のために提供される情報を見られるようにしたディスプレイ装置(5)を含み、
前記ディスプレイ装置(5)に前記マスクの供給パイプ(8)を介して画像を供給できるようにする接続手段(9)をさらに備えることを特徴とする保護具。
【請求項7】
マスクからディスプレイ装置(5)まで情報を伝える接続手段(9)をさらに備えることを特徴とする請求項6記載の保護具。
【請求項8】
煙から目を保護するための保護シールド(1)であって、目の周りでユーザの顔の上部に取り付けられるようになっており、且つ、航空機の飛行乗務員に呼吸ガスを供給するためのマスクのようなフェイスマスク(3)に自身を一時的に固定するのに適当なロック手段(2)を含み、さらにシールド(1)で顔を覆われたユーザが視野内で情報を見られるようにしたディスプレイ装置(5)を含むものを受け取るようになっている収納箱であって、
ディスプレイ装置(5)からの光信号(17)を収納箱(13)の外に伝えるようになっており、それにより、ユーザがシールド(1)を収納箱(13)から取り出すことを必要とせずに見ることのできる光信号を構成する光伝送システム(18)をさらに備えることを特徴とする収納箱。
【請求項9】
前記保護シールド(1)とともに前記フェイスマスク(3)を受け取るようにもなっていることを特徴とする請求項8記載の収納箱。
【請求項10】
マスクがユーザの顔に付けられたとき、ディスプレイ装置(5)が収納箱からシールド(1)或いはフェイスマスク(3)に情報を伝えるための接続手段(9)を含むことを特徴とする請求項8又は9記載の収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−522631(P2006−522631A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505227(P2006−505227)
【出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004261
【国際公開番号】WO2004/089473
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(591264636)インターテクニーク (5)
【Fターム(参考)】