説明

保護チューブの取り付け構造

【課題】接着テープ等を用いることなく、ワイヤハーネスのターミナル近傍を保護すると共にメンテナンスも容易なものとする。
【解決手段】円管状でワイヤハーネス20のターミナル22近傍の露出が必要な部分以外の部分を覆うメイン保護チューブ30に円管状でワイヤハーネス20のターミナル22近傍における露出部分の長さより若干短いサブ保護チューブ32を重ねた状態でターミナル22をコネクタ10に接続し、メイン保護チューブ30との重なりが完全に解除するまでサブ保護チューブ32をターミナル22側にスライドさせ、その状態でメイン保護チューブ30とサブ保護チューブ32とが所定角θ以上の角度で折れ曲がってメイン保護チューブ30の端部がサブ保護チューブ32の端部の内側に嵌合した状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護チューブの取り付け構造に関し、詳しくは、ワイヤハーネス用の保護チューブの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の保護チューブの取り付け構造としては、ワイヤハーネスの先端のターミナル近傍以外の部分を覆うコルゲートチューブとコルゲートチューブの内側に重ねるように配置された可撓性を有する共用チューブと有し、ワイヤハーネスのターミナルをコネクタに取り付けた後に、共用チューブをその一部がコルゲートチューブに重なっている状態を保持してターミナル近傍までスライドさせた状態とするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この取り付け構造では、メンテナンス時には共用チューブをコルゲートチューブ側にスライドさせることにより、ターミナルのコネクタからの取り外しを容易なものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−037349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の保護チューブの取り付け構造では、メンテナンス時以外の時にも共用チューブがコルゲートチューブ内にスライドし、ターミナル近傍のワイヤハーネスが露出し、ワイヤハーネスの保護が十分ではない場合が生じる。この場合、共用チューブがスライドしないように接着テープなどによって固定することも考えられるが、自動車のトランスミッションケースに使用するワイヤハーネスの場合には、接着テープに高い耐熱性や耐油性が必要となり、そのような接着テープを用いることが困難となる。
【0005】
本発明の保護チューブの取り付け構造は、接着テープ等を用いることなく、ワイヤハーネスのターミナル近傍を保護すると共にメンテナンスも容易なものとすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の保護チューブの取り付け構造は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の保護チューブの取り付け構造は、
ワイヤハーネス用の保護チューブの取り付け構造において、
ワイヤハーネスのうち端部に取り付けられたターミナルをコネクタに取り付けるのに露出が必要なターミナル近傍露出部以外の部分を覆う円管状のメイン保護チューブと、
円管状で前記ターミナル近傍露出部より若干短く且つ前記メイン保護チューブと重ねることができるサブ保護チューブと、
を備え、
前記メイン保護チューブに前記サブ保護チューブを重ねた状態で前記ターミナルを前記コネクタに取り付け、該取り付け後に前記サブ保護チューブを前記ターミナル近傍露出部側にスライドさせて前記メイン保護チューブとの重なりを解除し、前記メイン保護チューブと前記サブ保護チューブとが角度をもって一方の端部が他方の端部に嵌合した状態とする、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明の保護チューブの取り付け構造では、メイン保護チューブにサブ保護チューブを重ねた状態でワイヤハーネスの端部に取り付けられたターミナルをコネクタに取り付け、取り付け後にサブ保護チューブをターミナル近傍露出部側にスライドさせてメイン保護チューブとの重ねなりを解除する。そして、メイン保護チューブとサブ保護チューブとが角度をもって一方の端部と他方の端部とが嵌合した状態とする。メイン保護チューブとサブ保護チューブは、角度をもって一方の端部と他方の端部とが嵌合して状態となっているから、サブ保護チューブはメイン保護チューブ側にスライドすることができない。この結果、接着テープを用いることなく、サブ保護チューブがメイン保護チューブ側にスライドするのを抑止することができ、ワイヤハーネスのターミナル近傍を保護することができる。また、メンテナンス時には、メイン保護チューブとサブ保護チューブとの嵌合を解除すると共に前記メイン保護チューブと前記サブ保護チューブとの角度も解除することにより、サブ保護チューブをメイン保護チューブ側にスライドさせてメイン保護チューブに重ねることができる。この結果、メンテナンスも容易なものとすることができる。ここで、「一方の端部と他方の端部とが嵌合した状態」は、一方の端部の一隅が他方の端部内に入り込んで一方の端部と他方の端部とが当接している状態を意味している。この場合、一方の端部の方が他方の端部より外径が大きくても小さくてもいずれでもよい。なお、ワイヤハーネスは、自動車のトランスミッションケース内に使用するものとしたり、その他のものとすることもできる。
【0009】
ここで、本発明の保護チューブの取り付け構造において、前記メイン保護チューブと前記サブ保護チューブのうちの外径が大きい方の端部を前記一方の端部とすると共に前記メイン保護チューブと前記サブ保護チューブのうちの外径が小さい方の端部を前記他方の端部とし、前記一方の端部に前記他方の端部を嵌合させたときには、前記メイン保護チューブと前記サブ保護チューブの角度は、前記一方の端部の内径をD1、前記他方の端部の外径をD2としたときに、D2・cosθ<D1を満たすθである、ことを特徴とするものとすることもできる。こうした角度θを用いれば、外径が大きい方の端部(一方の端部)に外径が小さい方の端部(他方の端部)を嵌合させても外径の小さい方の端部(他方の端部)が外径の大きい方の端部(一方の端部)内にスライドすることはない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としてのワイヤハーネス用の保護チューブの取り付けの様子を説明する説明図である。
【図2】メイン保護チューブ30とサブ保護チューブ32とが嵌合している様子の一例を示す説明図である。
【図3】変形例のメイン保護チューブ30Bとサブ保護チューブ32Bとが嵌合している様子の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としてのワイヤハーネス用の保護チューブの取り付けの様子を説明する説明図である。図中の矢印は、取り付けの際の動作を示す。ワイヤハーネス用の保護チューブは、図1の最上段に示すように、円管状でワイヤハーネス20のうち先端に取り付けられたターミナル22をコネクタ10に取り付けるのに露出が必要な部分以外の部分を覆う長さに形成されたメイン保護チューブ30と、円管状でワイヤハーネス20のターミナル22近傍における露出部分の長さより若干短く形成されメイン保護チューブ30の外周側にメイン保護チューブ30に重なるように配置されたサブ保護チューブ32と、を備える。メイン保護チューブ30もサブ保護チューブ32も、可撓性を有するよう例えば樹脂により形成されている。
【0013】
実施例のワイヤハーネス用の保護チューブの取り付けは、図1の最上段および上から2段目に示すように、サブ保護チューブ32をメイン保護チューブ30に重ねた状態としてターミナル22をコネクタ10に接続する。そして、図1の上から2段目および3段目に示すように、メイン保護チューブ30との重なりが完全に解除するまでサブ保護チューブ32をターミナル22側にスライドさせる。そして、図1の上から3段目および最下段に示すように、メイン保護チューブ30とサブ保護チューブ32とが予め定めた所定角θ以上の角度で折れ曲がってメイン保護チューブ30の端部がサブ保護チューブ32の端部の内側に嵌合した状態とする。従って、実施例の保護チューブの取り付け構造は、図1の最下段の構造となる。
【0014】
ここで、所定角θは、図2に示すように、メイン保護チューブ30の外径をD11とし、サブ保護チューブ32の内径をD22とすると、次式(1)を満たすものとして定めることができる。このように、所定角θ以上の角度とすることにより、メイン保護チューブ30とサブ保護チューブ32との嵌合により、サブ保護チューブ32はメイン保護チューブ30に重なることができないようにすることができる。
【0015】
D22・cosθ<D11 (1)
【0016】
以上説明した実施例の保護チューブの取り付け構造によれば、円管状でワイヤハーネス20のターミナル22近傍の露出が必要な部分以外の部分を覆うメイン保護チューブ30に円管状でワイヤハーネス20のターミナル22近傍における露出部分の長さより若干短いサブ保護チューブ32を重ねた状態でターミナル22をコネクタ10に接続し、メイン保護チューブ30との重なりが完全に解除するまでサブ保護チューブ32をターミナル22側にスライドさせ、その状態でメイン保護チューブ30とサブ保護チューブ32とが所定角θ以上の角度で折れ曲がってメイン保護チューブ30の端部がサブ保護チューブ32の端部の内側に嵌合した状態とすることにより、接着テープを用いることなく、サブ保護チューブ32がメイン保護チューブ30側にスライドして重なるのを抑止することができ、サブ保護チューブ32によりワイヤハーネス20のターミナル22の近傍を保護することができる。また、メンテナンス時には、メイン保護チューブ30とサブ保護チューブ32との嵌合を解除して折れ曲がりを解除することにより、サブ保護チューブ32をメイン保護チューブ30側にスライドして重ねることができるから、メンテナンスも容易なものとすることができる。
【0017】
こうした実施例の保護チューブの取り付け構造は、自動車のトランスミッションケース内のワイヤハーネスの取り出しに用いることができる。この場合、接着テープを用いないから、メイン保護チューブ30やサブ保護チューブ32の耐熱性や耐油性を確保すればよい。
【0018】
実施例の保護チューブの取り付け構造では、 メイン保護チューブ30とサブ保護チューブ32とが所定角θ以上の角度で折れ曲がってメイン保護チューブ30の端部がサブ保護チューブ32の端部の内側に嵌合した状態としたが、メイン保護チューブ30の端部の内側にサブ保護チューブ32の端部が嵌合した状態、即ち、サブ保護チューブ32の端部の一隅がメイン保護チューブ30の端部の内側に入り込んでいる状態としてもよい。この場合、所定角θは、上述の式(1)の関係を満たす必要がない。
【0019】
実施例では、サブ保護チューブ32がメイン保護チューブ30の外周側に重なるものとして説明したが、サブ保護チューブがメイン保護チューブ30の内周側に重なるものとしてもよい。この場合、所定角θは、図3に示すように、メイン保護チューブ30Bの内径をD12とし、サブ保護チューブ32Bの外径をD21とすると、次式(2)を満たすものとして定めることができる。このように、所定角θ以上の角度とすることにより、メイン保護チューブ30Bとサブ保護チューブ32Bとの嵌合により、サブ保護チューブ32Bはメイン保護チューブ30Bに重なることができないようにすることができる。
【0020】
D12・cosθ<D21 (2)
【0021】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、自動車や機械製品の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 コネクタ、20 ワイヤハーネス、22 ターミナル、30 メイン保護チューブ、32 サブ保護チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネス用の保護チューブの取り付け構造において、
ワイヤハーネスのうち端部に取り付けられたターミナルをコネクタに取り付けるのに露出が必要なターミナル近傍露出部以外の部分を覆う円管状のメイン保護チューブと、
円管状で前記ターミナル近傍露出部より若干短く且つ前記メイン保護チューブと重ねることができるサブ保護チューブと、
を備え、
前記メイン保護チューブに前記サブ保護チューブを重ねた状態で前記ターミナルを前記コネクタに取り付け、該取り付け後に前記サブ保護チューブを前記ターミナル近傍露出部側にスライドさせて前記メイン保護チューブとの重なりを解除し、前記メイン保護チューブと前記サブ保護チューブとが角度をもって一方の端部と他方の端部とが嵌合した状態とする、
ことを特徴とする保護チューブの取り付け構造。
【請求項2】
請求項1記載の保護チューブの取り付け構造において、
前記メイン保護チューブと前記サブ保護チューブのうちの外径が大きい方の端部を前記一方の端部とすると共に前記メイン保護チューブと前記サブ保護チューブのうちの外径が小さい方の端部を前記他方の端部とし、前記一方の端部に前記他方の端部を嵌合させたときには、前記メイン保護チューブと前記サブ保護チューブの角度は、前記一方の端部の内径をD1、前記他方の端部の外径をD2としたときに、D2・cosθ<D1を満たすθである、
ことを特徴とする保護チューブの取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−110828(P2013−110828A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252978(P2011−252978)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】