説明

保護ポリマー組成物

【課題】微細構造を有する装置の製造における加工、移動工程において保護層として利用でき、利用後は加熱除去できる保護ポリマー組成物を提供する。
【解決手段】保護ポリマー組成物は、窒素雰囲気下において熱重量分析により測定される重量減少率が(a)100℃で30分経過した際の重量減少率が10%以下であり、(b)25℃から10℃/分で昇温させる場合において、測定開始から20分後の重量減少率が80%以上である。ただし、前記重量減少率にはポリマー中に含まれる溶媒成分の揮発による重量減少は含まれないものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物に関する。特に、半導体等の微小構造を有する装置の製造プロセス中における加工、移動工程で基板に塗布することで保護層として利用でき、利用後は加熱除去できる保護ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなど、微小構造を有する基材を加工(例:ダイシング、裏面研削)や移動(例:ある装置から装置への基材の移動工程)するに際して、基材の表面もしくは裏面に不要なダメージを及ぼさないようにしたり、洗浄や切削により生ずる脱落物や塵が微小構造に付着しないよう、該面を保護する必要性がある。加工プロセスにおいては、フォトレジストを用いてある表面を反応性ガスや反応性プラズマから保護した後に非保護表面の加工を行うプロセスが広範に行われている。ここで保護膜として利用されるフォトレジストは、アルカリ可溶のノボラック樹脂やアクリル樹脂、ポリヒドロキシ樹脂等の他、感光剤などが添加された有機溶媒可溶の組成物である。これらフォトレジストは、組成物中のFe、Na、K等の元素含有率が好ましくは100ppbという特徴を有するため、保護膜除去後の基材上への残留メタル成分がほとんど無く、半導体保護樹脂組成物として有効である。
【0003】
フォトレジストを保護膜として利用した際の除去法は、本来のフォトレジストの除去法と同じく、フォトレジストを酸素や水素のプラズマでアッシングするドライクリーニングやアルカリ性の現像液と有機溶媒によりウェットクリーニング、これらを併用する方法が採用されている。フォトレジストを保護膜として利用する場合、これら除去プロセスの負荷が大きい点が課題としてあり、基材にダメージを与えない温度、例えば150〜200℃程度の比較的低温度で容易に熱分解除去できる保護膜組成物が望まれている。しかし、フォトレジスト中に含まれる樹脂は感光後のプラズマエッチ工程でのマスク等にも利用されるため、加熱による熱分解を防ぐ必要があり、250℃を超える分解点や熱軟化による基材ダメージを抑えるための熱架橋構造を付与されている。そのため、基材へのダメージを抑えられる200℃以下でこれらのフォトレジストを熱分解し除去することはできない。
【0004】
加熱により除去可能な組成物又はプロセスとして、特許文献1には、スチレンモノマー単位30〜90重量部とα−メチルスチレンモノマー単位70〜10重量部よりなり、減圧下に385℃で30分間放置した時の熱分解性(熱処理により重量が減少した割合を%で表わしたものが99%以上である熱分解性スチレン系共重合体が開示されている。
【0005】
特許文献2には、微小構造を有する装置の製造において、該微小構造を形成した一主面に、常温・常圧下において固体の昇華性物質の融液被膜を形成し、その後、該融液被膜を冷却して少なくとも固相を有する構造の保護膜を形成し、しかる後に該保護膜を気化、除去する工程を含む製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−41241号公報
【特許文献2】特開昭63−41855号公報
【0007】
特許文献1の共重合体は加熱して成形加工することを前提として設計されている。この共重合体の分解温度は、実施例において200℃でのメルトフローインデックスを測定していることからも明らかな通り200℃以上であり、200℃以下で加熱のみにより速やかに分解除去することはできない。
【0008】
特許文献2には、昇華性物質としてナフタレンを用いた例が開示されている。ナフタレンのような低分子量化合物を溶媒に溶かして溶液として用いる場合、対象物に溶液を塗布した後溶媒を除去する段階において化合物の結晶化や凝集が生じ、均一で欠陥のない膜を形成することは困難であるという問題がある。特許文献1は溶媒を用いる代わりに対象物をナフタレンの融点以上沸点未満に加熱し、融解したナフタレンによって表面を被覆する工程を開示しているが、対象物の温度を適切な範囲に加熱して再度冷却しなければならず、また、この方法においてもナフタレンの結晶化を完全に防ぐことはできない。なお、特許文献2には従来技術として保護材にワックスを用いる例も紹介されているが、同文献の[0003]にも記載されている通り、ワックスは均一な皮膜の形成には適しているものの、特に微小構造を有する面に塗布された場合、後工程での洗浄が極めて困難であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、常温、例えば25℃付近で塗布することにより対象物表面に容易に形成でき、半導体製造プロセスにおける基材の加工及び移動の際に、基材表面もしくは裏面に対し保護層として利用でき、なおかつ利用後は基材にダメージを与えない低温加熱処理によって基材から分解除去することができる保護層を形成可能なポリマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る保護ポリマー組成物は、窒素雰囲気下において熱重量分析により測定される重量減少率が下記(a)及び(b)を満たすポリマーを含み、半導体装置の製造プロセスにおいて用いられる。
(a)100℃で30分経過した際の重量減少率が10%以下
(b)25℃から10℃/分で昇温させる場合において、測定開始から20分後の重量減少率が80%以上(ただし、前記重量減少率にはポリマー中に含まれる溶媒成分の揮発による重量減少は含まれないものとする)。ポリマーの重量減少はポリマーの分解を伴うものであって、該ポリマーの分解生成物の分解開始温度における蒸気圧は2.7kPa以上であることが好ましく、101.3kPa以上であることがより好ましい。なお、ここで前記ポリマーの分解開始温度とは、窒素雰囲気下における熱重量分析で試料温度を25℃から10℃/分で昇温させた際に重量減少率が5%に達する温度をいう。該ポリマーとしては、ポリアセタール構造を有するものを使用することができる。中でも、下記式(1)で表される繰り返し単位を有することが好ましく、下記式(2)で表される繰り返し単位を有することが特に好ましい。さらに、該ポリマーは下記式(3)で表される末端構造を有していてもよい。保護ポリマー組成物が溶媒を含む場合において、該溶媒は101.3kPaにおける沸点が25〜250℃である成分を90質量%以上含有することが好ましい。
【0011】
【化1】

(上記式(1)中、X,Xはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択される1以上の原子又は置換基を表す。X,Xは互いに連結して1以上の環を形成する、合計炭素数が1〜15の原子団を表す。ここで、各炭化水素基及び前記原子団上の水素原子はそれぞれ独立に、ハロゲン原子及び炭素数1〜10のアルコキシ基からなる群から選択される原子又は置換基によって置換されていてもよい。)
【0012】
【化2】

(上記式(2)中、Rはハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜20の炭化水素基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選択される1以上の原子または置換基を表し、mは0〜4の整数を表し、nは5〜1000の整数を表す。ここで、nは前記繰り返し単位の繰り返し数を表す。mが2以上の場合、Rは互いに同一であってもよく、また異なっていてもよい。)
−CO−Z・・・(3)
(上記式(3)中、Zは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシル基、カルボニル基、エステル基及びホルミル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、イソシアネート基、アミド基、ニトロ基及びシアノ基、並びに窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む複素環式基、からなる群より選択される置換基を表す。ここで、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、エステル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環式基、アミド基上の水素原子はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボニル基、炭素数1〜20の炭化水素基及び炭素数1〜10のアルコキシ基からなる群より選択される1種以上により置換されていてもよい。)
【0013】
本発明の第2の観点に係る微小構造を有する装置の製造方法は、微小構造が形成された基板の該微小構造が形成されている一の面に本発明の第1の観点に係る保護ポリマー組成物を塗布する工程と、基板を30〜150℃に加熱して該微小構造を覆うように皮膜を形成する工程と、基板を、皮膜を形成する工程における加熱温度よりも50℃以上高くかつ300℃を超えない温度に加熱して皮膜を除去する工程と、を備える。
【0014】
本発明の第3の観点に係るポリマー組成物は、(A)窒素雰囲気下において熱重量分析により測定される重量減少率が下記(a)及び(b)を満たすポリマー:
(a)100℃で30分経過した際の重量減少率が10%以下;
(b)25℃から10℃/分で昇温させる場合において、測定開始から20分後の重量減少率が80%以上;及び
(B)気化温度が前記ポリマー(A)の分解開始温度より高くかつ200℃以下である化合物;
を含む。ここでポリマー(A)の分解開始温度とは、窒素雰囲気下における熱重量分析で試料温度を25℃から10℃/分で昇温させた際に重量減少率が5%に達する温度をいう。ただし、前記重量減少率にはポリマー中に含まれる溶媒成分の揮発による重量減少は含まれないものとする。(B)化合物は、ポリマー(A)の分解開始温度において固体であることが好ましい。(A)ポリマーはフタルアルデヒド(共)重合体、α−メチルスチレン重合体及び(メタ)アクリレート/α−メチルスチレン共重合体からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、(B)化合物は芳香環上の水素原子のうち1以上がヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖または分岐または環状の構造を含む炭化水素基、構造中に酸素を含む炭素数1〜10の芳香環上の水素原子のうち1以上がヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシル基、カルボニル基、エステル基、ホルミル基、イソシアネート基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、及び窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む複素環式基からなる群より選択される1種以上により置換されていてもよい安息香酸並びにその類縁体、水素原子のうち1以上がヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシル基、カルボニル基、エステル基、ホルミル基、イソシアネート基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、及び窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む複素環式基からなる群より選択される1種以上により置換されていてもよいアダマンタン並びにその類縁体、並びに水素原子のうち1以上がヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシル基、カルボニル基、エステル基、ホルミル基、イソシアネート基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、及び窒素原子、酸素原子又は硫黄を含む複素環式基からなる群より選択される1種以上により置換されていてもよいカンファー並びにその類縁体、からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。該ポリマー組成物が(C)溶媒を含む場合において、(C)溶媒は101.3kPaにおける沸点が25〜250℃である成分を90質量%以上含有することが好ましい。
【0015】
本発明の第4の観点に係る微小構造を有する装置の製造方法は、微小構造が形成された基板の該微小構造が形成されている一の面に本発明の第3の観点に係るポリマー組成物を塗布する工程と、基板を30〜150℃に加熱して該微小構造を覆うように皮膜を形成する工程と、基板を、皮膜を形成する工程における加熱温度よりも50℃以上高くかつ300℃を超えない温度に加熱して皮膜を除去する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の保護ポリマー組成物によれば、常温、例えば25℃付近で塗布することにより対象物表面に容易に形成でき、かつ加熱によって容易に除去可能な皮膜を形成することができる。該ポリマー組成物は、微小構造を有する装置、特に半導体装置の製造プロセスにおいて用いられる保護ポリマーとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】製造例1において得られたポリマーの昇温過程における熱重量変化をTG−DTAを用いて測定した結果を示す図である。
【図2】製造例1において得られたポリマーの恒温過程における熱重量変化をTG−DTAを用いて測定した結果を示す図である。
【図3】実施例1に係るポリマー組成物を用いて作成された、表面に樹脂膜を有するシリコン基板をSEMを用いて観察した図である。
【図4】図3に示した表面に樹脂膜を有するシリコン基板を20Torr×180℃で加熱処理したものをSEMを用いて観察した図である。
【図5】実施例2に係るポリマー組成物を用いて作成された、表面に樹脂膜を有するシリコン基板をSEMを用いて観察した図である。
【図6】図5に示した表面に樹脂膜を有するシリコン基板を20Torr×180℃で加熱処理したものをSEMを用いて観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るポリマー組成物は、窒素雰囲気下において熱重量分析を行った場合に(a)100℃で30分経過した際の重量減少率が10%以下であり、(b)25℃から10℃/分で昇温させる場合において、測定開始から20分後の重量減少率が80%以上であるポリマーを含む。このようなポリマーを例えば有機溶媒に溶かして溶液とし、保護対象物の表面に塗布し液膜を形成する。その後液膜から有機溶媒を除去することで、対象物の表面に該ポリマーの皮膜が形成される。この際、例えば100℃程度まで加熱したり、液膜が形成された対象物を減圧下に置いたりすることによって、有機溶媒の除去を促進してもよい。塗膜を該ポリマーで形成することにより、ナフタレン等の低分子量化合物で生じる溶媒除去時の結晶化、凝集等を抑制し、均一な皮膜を形成することができる。該ポリマーは100℃で30分経過した際の重量減少率が10%以下であるため、形成された皮膜は溶媒の除去やその後のプロセスにおいて100℃程度まで加熱しても安定である。このため、プロセスの選択の幅が広くなる。さらに、該ポリマーは高温下では短時間で分解する性質を有するため、該ポリマーにより形成された皮膜はワックスのように有機溶媒等による洗浄を必須とせず、単純な加熱処理のみで対象物表面から除去できる。このため、例えば半導体装置の製造プロセス等において、処理対象面以外の部分を一時的に保護するための保護材として好適に用いることができる。プロセス適合性の観点から、100℃における重量減少率は小さい方が好ましい。100℃で30分経過した際のポリマーの重量減少率は10%以下であれば使用可能であるが、5%以下がより好ましく、3%以下が特に好ましい。重量減少率が10%を超える場合、膜を形成する際やその後の加工プロセスで膜減りが生じやすくなり、膜が薄くなったり、欠陥が生じたりする場合がある。なお、ここでいう重量減少率は原則としてポリマーそのものの分解による重量減少をいい、その他ポリマーに添加される成分及び/又は不可避的に含まれる不純物は除かれる。具体的には、溶媒、残存モノマー、その他低分子量成分等、大気圧(101.3kPa)において100℃で揮発するような成分(本発明に係るポリマーの分解により生じた生成物を除く)はここでいう重量減少率の算出からは除外される。
【0019】
上記条件を満たすポリマーとしては、ホルムアルデヒド(共)重合体、フタルアルデヒド(共)重合体等のポリアセタール構造を有する重合体や、α−メチルスチレン重合体及び(メタ)アクリレート/α−メチルスチレン共重合体等が挙げられる。この中ではポリアセタール構造を有する重合体が好ましく、環構造と2つのアルデヒド基とを有するモノマーから得られるポリアセタール(共)重合体がさらに好ましい。このようなポリマーは、一般式では例えば下記式(1)で表すことができる。
【0020】
【化3】

(上記式(1)中、X,Xはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択される1以上の原子又は置換基を表す。X,Xは互いに連結して1以上の環を形成する、合計炭素数が1〜15の原子団を表す。ここで、各炭化水素基及び原子団上の水素原子はそれぞれ独立に、ハロゲン原子及び炭素数1〜10のアルコキシ基からなる群から選択される原子又は置換基によって置換されていてもよい。)
,Xは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基であることが特に好ましい(なお、本明細書において炭化水素基とは特に断りのない限り、直鎖若しくは分岐のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を含む概念である。)。X,Xから構成される合計炭素数が1〜15の原子団としては、メチレン基(この場合、ポリマー鎖上の1つの酸素原子及びこれに隣接する2つの炭素原子と該エチレン基とは五員環を構成する。)のほか、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基や、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルカジエニル基、アリーレン基等が挙げられる。ポリマーの得やすさや安定性、分解温度等の観点から、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルカジエニル基、アリーレン基等が好ましく、アリーレン基が特に好ましい。特に好ましくは、下記式(2)で表されるポリフタルアルデヒドが選択される。
【0021】
【化4】

(上記式(2)中、Rはハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜20の炭化水素基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選択される1以上の原子または置換基を表し、mは0〜4の整数を表し、nは5〜1000の整数を表す。ここで、nは前記繰り返し単位の繰り返し数を表す。mが2以上の場合、Rは互いに同一であってもよく、また異なっていてもよい。)
【0022】
ポリアセタール構造を有するポリマーを選択する場合、解重合を防ぐため、末端にいわゆるエンドキャップ処理を施すことが好ましい。末端構造は−OH基をキャップ可能なものであれば特に限定されないが、例えば下記式(3)で表される構造を選択することができる。
−CO−Z・・・(3)
(上記式(3)中、Zは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシル基、カルボニル基、エステル基及びホルミル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、イソシアネート基、アミド基、ニトロ基及びシアノ基、並びに窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む複素環式基、からなる群より選択される置換基を表す。ここで、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、エステル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環式基、アミド基上の水素原子はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボニル基、炭素数1〜20の炭化水素基及び炭素数1〜10のアルコキシ基からなる群より選択される1種以上により置換されていてもよい。)
上記の中ではZが炭化水素基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環式基であるものが好ましく、特に炭化水素基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基が好ましい。
【0023】
上記ポリマーの重量減少率、重量減少速度等の分解挙動は上記の範囲内であれば本発明の目的を達成でき、上記範囲内において任意に選択可能であるが、特に、ポリマーの分解生成物の2.7kPaにおける沸点が、該ポリマーの分解開始温度以下であることが好ましい。このようなポリマーを特に選択することにより、皮膜を対象物表面から速やかに除去することが可能となる。さらに、該ポリマーの分解開始温度において、該ポリマーの分解生成物の蒸気圧が101.3kPa以上であることが好ましい。このようなポリマーを特に選択することにより、常圧(大気圧)下でも皮膜を対象物表面から速やかに除去することが可能となる。なお、本明細書中においてポリマーの分解開始温度とは、特に断りのない限り、窒素雰囲気下で熱重量分析を行い25℃から10℃/分で昇温させた場合に試料の重量減少率が5%に達する点の温度として定義される。
【0024】
上記ポリマーの分子量は目的や用途に応じて選択され、上記の条件を満たすものである限り特に限定されないが、製膜性及び取り扱い性の観点から、重量平均分子量が1,000〜100,000の範囲のものが好ましい。重量平均分子量が100,000超の場合、粘度の増大に伴い取り扱いの負荷が増加する場合がある。なお、ポリマーの重量平均分子量は、後述する通り、分子量既知の標準ポリスチレンを標準試料として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。
【0025】
さらに上記ポリマーは、熱重量分析において観測される分解開始温度以下に、ガラス転移温度を有しないことが好ましい。ガラス転移温度は示差走査熱量測定装置(DSC)等の公知の装置により測定した値を用いることができる。又はより簡便に、熱重量分析により分解開始温度を特定する際に合わせて示差熱分析を行い、分解開始温度以下の温度領域において有意な重量減少を伴わない吸熱ピークが検出されたか否かによって判断することもできる。すなわち、分解開始温度以下にこのような吸熱ピークが検出されなければ、そのポリマーは分解開始温度以下にガラス転移温度を有しないものであると言うことができる。
【0026】
上記ポリマーには、前記ポリマー(A)の分解開始温度において固体である低分子量化合物(以下、単に「固体化合物」と略記する場合がある。)を配合することができる。このような固体化合物を配合することで、高分子量のポリマーのネットワークに伴い発生する膜中の空隙に対し、低分子量の固体化合物が入り込む形状を取ることができ、緻密な膜を形成することが可能となる。また、低温加熱処理可能なポリマーとの組成物であるため、処理条件の変更によってポリマー膜のみを残したり、固体化合物の膜を残したりすることが可能となり、多様なプロセスに適用することが可能となる。さらに、耐酸性や耐アルカリ性、および耐水性などの機能を付与する際に、配合する固体化合物として要求される機能に最適な化合物を選択することで膜に対し容易に機能付与することが可能になる。
【0027】
このような固体化合物としては、該ポリマーの分解開始温度よりも高くかつ200℃以下の気化温度を有するものが好ましく、該温度範囲において昇華性を示す化合物が特に好ましい。例として、安息香酸、安息香酸メチル、ベンゾイン、没食子酸、没食酸メチル、没食子酸エチル、没食酸プロピル等の安息香酸及びその誘導体;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタルイミド、N−ヒドロキシフタルイミド等のフタル及びその誘導体;ニコチン酸、ニコチン酸アミド、イソニコチン酸等のニコチン酸及びその誘導体;アダマンタン、1,3−アダマンタンジオ−ル、1,3,5−アダマンタントリオール、1,3−アダマンタン二酢酸、2−アダマンタノール、1−アダマンタノール、2−アダマンタノン、2−メチル−2−アダマンタノール、1−アダマンタンカルボン酸等のアダマンタン及びその誘導体;カンファー、ボルネオール等のカンファー及びその誘導体;アントラセン、アントラキノン、ヒドロキシアントラキノン、アミノアントラキノン等のアントラセン及びその誘導体;
が挙げられる。なお、本発明において、気化温度が200℃以下であるとは、上記ポリマーにより形成された皮膜を除去する際の条件下で該固体化合物が昇華及び/または蒸発により気化する温度が200℃以下であることをいう。例えば、皮膜の除去が常圧(大気圧)下で行われる場合は、常圧(大気圧)下における気化温度が200℃以下であればよい。一方、皮膜の除去が減圧下で行われる場合は、その圧力において気化温度が200℃以下であればよい。例えば皮膜の除去が20Torrで行われる場合は、20Torrにおける気化温度が200℃以下であればよい。気化温度や速度は要求特性において選択されるが、上記条件を満たし、かつポリマーと同様の重量減少特性を有することが好ましい。すなわち、(a)100℃で30分経過した際の重量減少率が10%以下であり、(b)25℃から10℃/分で昇温させる場合において、測定開始から20分後の重量減少率が80%以上である、ことが特に好ましい。
【0028】
本発明の実施の形態に係るポリマー組成物は、さらに有機溶媒を含有してもよい。有機溶媒は特に限定されないが。例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、その他の極性溶媒又はハロゲン系溶媒等を用いることができる。
上記アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等の1個の水酸基を有するアルコール系溶媒;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の2個以上の水酸基を有する多価アルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどの、2個以上の水酸基を有するアルコールを部分的にエーテル化してなる多価アルコール部分エーテル系溶媒が例示される。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶媒が例示される。上記炭化水素溶媒としては、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、シクロオクタン、デカン、シクロデカン、ジシクロペンタジエンの水素化物、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−ブチルキシレン、ドデシルベンゼン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワラン等が例示される。上記エーテル溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、フェントール、2−メチルフェントール、3−メチルフェントール、4−メチルフェントール、ベラトロール、2−エトキシアニソール、1,4−ジメトキシベンゼン等が例示される。ハロゲン系溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム等が例示される。これらの有機溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。本発明に係るポリマー組成物が溶媒を含む場合において、該溶媒は101.3kPaにおける沸点が25〜250℃である成分を90質量%以上含有することが好ましい。
【0029】
本発明の実施の形態に係るポリマー組成物中、ポリマーの濃度は特に限定されないが、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは1〜20質量%である。
【0030】
ポリマー組成物の調製方法は、特に限定されない。例えば、カチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合、開環重合、配位重合、縮重合により得られたポリマーから溶媒を除去し、別途所望の溶媒に溶解してもよく、また所望の溶媒中で重合を行い、これをそのまま、又は濾過して用いてもよい。
【0031】
本発明に係るポリマー組成物は、用途に応じて添加剤を含むことができる。例えば、界面活性剤(レベリング剤)、濡れ性改良剤、消泡剤等を含んでもよい。さらに、ポリマーの分解を促進するための分解促進剤を含んでもよい。
【0032】
界面活性剤としては、ポリマーの分解条件において除去可能なものであれば特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステリアルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系レベリング剤・界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ)、メガファックF171、F172、F173(大日本インキ化学工業)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム)、アサヒガードAG710、サーフロンS−381、S−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106、サーフィノールE1004、KH−10、KH−20、KH−30、KH−40(旭硝子)、フタージェント 250、251、222F、FTX−218(ネオス)等のフッ素系レベリング剤・界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341、X−70−092、X−70−093(信越化学工業)、SH8400(東レ・ダウコーニング)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75、No.77、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業)を挙げることができる。これらを単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、フッ素系レベリング剤・界面活性剤が特に好ましい。界面活性剤(レベリング剤)の配合量は、樹脂溶液中、通常50〜1000ppmが好ましく、より好ましくは70〜800ppmである。50ppm未満の場合は段差基板上への均一塗布性が悪化し、1000ppmを超える場合は現像時や硬化後の密着性が低下する。
【0033】
分解促進剤としては、例えば過蟻酸等の過酸又はその誘導体、ハイドロキノン等のキノン系化合物等が挙げられる。これらの中ではキノン系化合物が好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、特に断りのない限り、以下の実施例において%は質量%を、部は質量部を表す。また、試薬のうち特に断りのないものについては、市販品を精製することなくそのまま用いた。
【0035】
(分析条件)
各種分析の方法及び用いた装置を以下に示す。
[GPC測定条件]
測定機器:HLC−8320(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離液流量:0.35mL/分
測定温度:40℃
サンプル濃度:0.1%
標準試料:ポリスチレン標準試料 Easical PS−1(アジレント・テクノロジー社製)
【0036】
[TG/DTA測定条件]
測定機器:THERMO PLUS2 TG8120型(リガク社製)
サンプル量:約5mg
容器:アルミニウム製深型パン(5mm径、2mm深さ)
参照試料:サンプル未秤量のアルミニウム製パン
昇温条件:25℃→10℃/分→600℃(実施例2)
25℃→10℃/分→100℃→100℃で30分加熱(実施例3)
ガス:窒素 200mL/分
【0037】
[製膜条件]
製膜装置:1H−DX2(ミカサ社製)
回転数:1400rpm
製膜温度:25℃
ベーク温度:80℃/1分
製膜・ベーク雰囲気:大気下
【0038】
[分解除去条件]
加熱装置:フラッシュアニール炉 RHL−P610CP(ULVAC SINKU RIKO社製)
加熱条件:25℃→1分→180℃→180℃で3分間加熱
加熱雰囲気:窒素、20torr
【0039】
(製造例1)
(1)ポリマーの調製
窒素雰囲気下において、100mLの三口フラスコにo−フタルアルデヒド5gを市販の脱水グレードの塩化メチレン30mLに溶解させ、ドライアイス/アセトン浴にて−78℃冷却した所に三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.35mLを添加し重合を開始した。そのまま−78℃で3時間撹拌した後、重合末端の封止剤としてイソシアン酸フェニル0.36mLを添加し、引き続き−78℃で1.5時間撹拌した。合成後のポリマーは大量の冷メタノール(0℃)中に再沈殿させ、メタノールで洗浄した後、白色の固体を回収した。回収したポリマーについてGPC(東ソー製 HLC−8320)を用いて溶離液(テトラヒドロフラン)流量0.35mL/分、測定温度40℃の条件で分子量測定を行った結果、ポリスチレン標準試料(アジレント・テクノロジー製 Easical PS−1)を基準とした重量平均分子量Mwは12,000だった。
【0040】
(2)熱分解性の評価
(1)において得られたポリマーの熱重量変化をTG−DTA(リガク製 THERMO PLUS2 TG8120型)により測定した。ポリマー粉末をアルミパン中に秤量し、大気圧下、0.2L/分の窒素ガス環境下で25℃から10℃/分の等速昇温により測定した結果、5%重量減少温度は155℃であり、測定開始20分後の225℃では95%重量減少し、良好な熱分解性を示した。測定チャートを図1に示す。
【0041】
(3)熱安定性の評価
(1)において得られたポリマーの、100℃における重量減少率を測定した。用いた装置、器具は実施例2と同様とした。大気圧下、0.2L/分の窒素ガス環境下で100℃、30分加熱した後の重量減少率は2%であった。(図3)
【0042】
(実施例1:樹脂膜の作製と熱分解除去)
シクロヘキサノンを溶媒として、製造例1の(1)において得られたポリマーを10%に希釈した溶液を調製した。この溶液をスピンコーターによりシリコン基板上に、大気圧下、室温で塗布した後、同様の環境下においてホットプレート上で基板を80℃で1分間加熱し、製膜した。製膜後の基板には樹脂膜が形成され、その膜厚は300nmであった。この樹脂膜はムラなどの無い均質な膜を形成していることがSEM観察よりわかった(図4)。得られた樹脂膜に対し、フラッシュアニール炉(ULVAC SINKU RIKO製 RHL−P610CP)で20torrの減圧度に制御された窒素ガス環境下にて1分間で25℃から180℃まで昇温し、そのまま3分間180℃で減圧加熱処理した。加熱処理後の基板をSEMで観察した所、樹脂膜の残渣は確認されず樹脂膜が熱分解除去されている事が確認できた。
【0043】
(製造例2)
(1)固体化合物配合組成物の調製
製造例1のポリマー100部に対し、昇華性固体である没食子酸・水和物(融点=250℃)を100部混合した後、溶媒としてシクロヘキサノンで10%に希釈して樹脂組成物の均一溶液を調製した。
【0044】
(実施例2:固体化合物配合組成物膜の作製と熱分解除去)
製造例2で調製した樹脂組成物溶液を実施例1と同様の方法にて製膜した。製膜後の基板には樹脂と昇華性固体の組成物の膜が形成された。この樹脂組成物は、表面に凹凸のある膜を形成していることがSEM観察よりわかった(図5)。実施例4と同様に、得られた樹脂組成物の膜に対し、フラッシュアニール炉で20torrの減圧度に制御された窒素ガス環境下にて1分間で25℃から昇華性固体の融点以下である180℃まで昇温し、そのまま3分間180℃で減圧加熱処理した。加熱処理後の基板をSEMで観察したところ、樹脂や昇華性固体の残渣は確認されず、実施例4と同様に樹脂と昇華性固体の組成物の膜も加熱により除去できる事が確認できた。
【0045】
(実施例3:低抵抗基板上に形成された樹脂膜の熱分解除去)
基板を低抵抗基板に代えた他は実施例1と同様にして、樹脂膜を有する基板を作製し、加熱した。加熱分解除去前後におけるシート抵抗値を四端子法により測定した。樹脂膜が形成された面のシート抵抗値は1.5×10Ω/□を示し、基板上に絶縁性の膜が存在することが確認できた。一方、樹脂膜を加熱分解除去した後の基板の抵抗値は3.9×10−2Ω/□を示し、加熱により絶縁性の樹脂膜が分解除去された事が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るポリマー組成物は、100℃では安定でありながら200℃以下という比較的低温の条件、例えば150〜180℃ですみやかに分解し除去されるため、半導体装置の製造プロセスにおいて用いられる保護材として好適に用いることができる。例えば、基板の一の面に本発明に係るポリマー組成物を塗布して皮膜を形成することにより、他の面を洗浄又は加工する際に該面が損傷したり汚染されたりするのを防ぐことができる。特に、表面に微細なパターンが形成された基板の保護等に適している。また本発明に係るポリマー組成物は、加熱により容易に除去できるため、基板を一時的に固定するための仮止め材としても使用できる。例えば、支持体との接触面に対し本発明に係るポリマー組成物を塗布することにより、加工時や加工プロセス間を移動する際に用いる支持体に対し基板を仮止めし、加工および移動後は容易に加熱分解除去できる材料として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素雰囲気下において熱重量分析により測定される重量減少率が下記(a)及び(b)を満たすポリマーを含む、半導体装置の製造プロセスにおいて用いられる保護ポリマー組成物。
(a)100℃で30分経過した際の重量減少率が10%以下
(b)25℃から10℃/分で昇温させる場合において、測定開始から20分後の重量減少率が80%以上
ただし、前記重量減少率にはポリマー中に含まれる溶媒成分の揮発による重量減少は含まれないものとする。
【請求項2】
請求項1において、ポリマーの重量減少は前記ポリマーの分解を伴うものであり、前記ポリマーの分解生成物の分解開始温度における蒸気圧が2.7kPa以上である、請求項1の保護ポリマー組成物。
ここで前記ポリマーの分解開始温度とは、窒素雰囲気下における熱重量分析で試料温度を25℃から10℃/分で昇温させた際に重量減少率が5%に達する温度をいう。
【請求項3】
前記分解生成物の蒸気圧は前記ポリマーの分解開始温度において101.3kPa以上である、請求項2の保護ポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリマーはポリアセタール構造を有する、請求項1〜3のいずれか1項の保護ポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマーは下記式(1)で表される繰り返し単位を有する、請求項4の保護ポリマー組成物。
【化1】

(上記式(1)中、X,Xはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択される1以上の原子又は置換基を表す。X,Xは互いに連結して1以上の環を形成する、合計炭素数が1〜15の原子団を表す。ここで、各炭化水素基及び前記原子団上の水素原子はそれぞれ独立に、ハロゲン原子及び炭素数1〜10のアルコキシ基からなる群から選択される原子又は置換基によって置換されていてもよい。)
【請求項6】
前記ポリマーは下記式(2)で表される繰り返し単位を有する、請求項5の保護ポリマー組成物。
【化2】

(上記式(2)中、Rはハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜20の炭化水素基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選択される1以上の原子または置換基を表し、mは0〜4の整数を表し、nは5〜1000の整数を表す。ここで、nは前記繰り返し単位の繰り返し数を表す。mが2以上の場合、Rは互いに同一であってもよく、また異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記ポリマーは下記式(3)で表される末端構造を有する、請求項5又は6の保護ポリマー組成物。
−CO−Z・・・(3)
(上記式(3)中、Zは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシル基、カルボニル基、エステル基及びホルミル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、イソシアネート基、アミド基、ニトロ基及びシアノ基、並びに窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む複素環式基、からなる群より選択される置換基を表す。ここで、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、エステル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環式基、アミド基上の水素原子はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボニル基、炭素数1〜20の炭化水素基及び炭素数1〜10のアルコキシ基からなる群より選択される1種以上により置換されていてもよい。)
【請求項8】
前記保護ポリマー組成物が溶媒を含む場合において、該溶媒は101.3kPaにおける沸点が25〜250℃である成分を90質量%以上含有する、請求項1〜7のいずれか1項の保護ポリマー組成物。
【請求項9】
微小構造が形成された基板の該微小構造が形成されている一の面に請求項1〜8のいずれか1項の保護ポリマー組成物を塗布する工程と、
前記基板を30〜150℃に加熱して前記微小構造を覆うように皮膜を形成する工程と、
前記基板を、前記皮膜を形成する工程における加熱温度よりも50℃以上高くかつ300℃を超えない温度に加熱して前記皮膜を除去する工程と、
を備える、微小構造を有する装置の製造方法。
【請求項10】
下記成分(A)及び(B)を含むポリマー組成物。
(A)窒素雰囲気下において熱重量分析により測定される重量減少率が下記(a)及び(b)を満たすポリマー:
(a)100℃で30分経過した際の重量減少率が10%以下;
(b)25℃から10℃/分で昇温させる場合において、測定開始から20分後の重量減少率が80%以上;及び
(B)気化温度が前記ポリマー(A)の分解開始温度より高くかつ200℃以下である化合物;
ここで前記ポリマー(A)の分解開始温度とは、窒素雰囲気下における熱重量分析で試料温度を25℃から10℃/分で昇温させた際に重量減少率が5%に達する温度をいう。ただし、前記重量減少率にはポリマー中に含まれる溶媒成分の揮発による重量減少は含まれないものとする。
【請求項11】
前記化合物(B)は前記ポリマー(A)の分解開始温度において固体である、請求項10のポリマー組成物。
【請求項12】
前記(A)ポリマーはフタルアルデヒド(共)重合体、α−メチルスチレン重合体及び(メタ)アクリレート/α−メチルスチレン共重合体からなる群から選択される1種以上であり、前記(B)化合物は芳香環上の水素原子のうち1以上がヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシル基、カルボニル基、エステル基、ホルミル基、イソシアネート基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、及び窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む複素環式基からなる群より選択される1種以上により置換されていてもよい安息香酸並びにその類縁体、水素原子のうち1以上がヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシル基、カルボニル基、エステル基、ホルミル基、イソシアネート基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、及び窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む複素環式基からなる群より選択される1種以上により置換されていてもよいアダマンタン並びにその類縁体、並びに水素原子のうち1以上がヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシル基、カルボニル基、エステル基、ホルミル基、イソシアネート基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、及び窒素原子、酸素原子又は硫黄を含む複素環式基からなる群より選択される1種以上により置換されていてもよいカンファー並びにその類縁体、からなる群から選択される1種以上である、請求項10又は11のポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリマー組成物が(C)溶媒を含む場合において、(C)溶媒は101.3kPaにおける沸点が25〜250℃である成分を90質量%以上含有する、請求項10〜12のいずれか1項のポリマー組成物。
【請求項14】
微小構造が形成された基板の該微小構造が形成されている一の面に請求項10〜13のいずれか1項の保護ポリマー組成物を塗布する工程と、
前記基板を30〜150℃に加熱して前記微小構造を覆うように皮膜を形成する工程と、
前記基板を、前記皮膜を形成する工程における加熱温度よりも50℃以上高くかつ300℃を超えない温度に加熱して前記皮膜を除去する工程と、
を備える、微小構造を有する装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43934(P2013−43934A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182217(P2011−182217)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】