説明

保護具の保持機構

【課題】狭い駐車場においても隣接して駐車した車両のドア開扉によるへこみ傷を防止可能な保護具の保持機構を提供する。
【解決手段】保護具を保持する保持部を有する保持具と、保持具に配設され、ドアハンドル等の車体突出部を受容する受容部と、受容部を開閉する開閉手段と、開閉手段の閉位置において開閉手段による受容部の開放を規制する施錠手段とする。開閉手段は一端部側が保持具に軸着され受容部を開閉する開閉アームとすることができる。施錠手段は開閉アームの軸着部よりも先端側に軸着した錠止アームと、錠止アームの先端側に設けた車体側錠止部と、保持具に配した係止部とすることができる。開閉アームの閉位置において錠止アームを係止部側に回動させて車体側錠止部を係止部に係止することにより開閉アームの回動を規制して車体突出部に保持具を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駐車中の車体保護を目的とした保護具の保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
日本における駐車場事情は、限られた敷地内に出来るだけ多くの駐車台数を確保しようとするため、一台分の駐車スペース幅が非常に狭く、従って、隣接して駐車した車両との間隔が充分に確保されない場合が多い。
【0003】
このため、隣接駐車した車両の乗員が乗降時にドアを開けたとき、その端部が自車のボディーにぶつかり、傷ないしへこみを付けられることがあり得る。このドア端部により付けられた直径数センチのへこみをエクボないしデントと言い、小さなものではあるが、実際にエクボを付けられた被害者にとっては、金銭的あるいは精神的な打撃等の深刻な問題が生じる。
【0004】
通常、自動車のボディー側面にはサイドモールと言われるプロテクタが装着されている。サイドモールは、保護効果を高める為に通常車体幅が最大である高さに於いて、自動車ドアを含めた車体側面上に固定されている。サイドモールは自動車ボディーに固定されその表面の一部を成しているから、審美的に悪影響を与えないものでなくてはならず、従って一本の幅の狭い、且つ厚みの薄い傷のつきにくい材料からなっている。
【0005】
上記のサイドモールは一本の幅の狭い且つ厚みの薄いプロテクタである為に、ぶつかってくる隣接して駐車した車両のドアが丁度最初にサイドモールで受け止められる場合のみ有効であり、隣接して駐車した車両のドアが最初にサイドモール以外の部分にぶつかる場合には有効でない。特にリアドアの端部突出部に対しては従来使用されてきたサイドモールでは位置が低すぎ用を成さない。また、自動車には種々の種類があって、隣に駐車している車、又は駐車するかもしれない車の高さは一定ではなく、高い場合も低い場合もあり、低背なサイドモールでは保護できない場合がある。
【0006】
この改善策として、特許文献1ではフック付きの紐で自動車ドアガラスから吊るされる棒状の発泡体のガード部材を自動車の側面に配置する技術が開示されているが、ガード部材が車体側に固定されておらず吊り下げられているに過ぎないため、風によるバタつきが発生したりガード部材が盗難されやすいという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−321320、図1乃至図3等。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記課題に基づき、本発明は自動車のドアアウターハンドル(以下、「ドアハンドル」と略。)等の車体突出部に簡単に取り付けして保護具を車体側部に配置し、狭い駐車場においても隣接して駐車した車両のドア開扉時の衝突によるへこみ傷を防止可能な、新規な保護具の保持機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による保護具の保持機構は以下のように構成される。
すなわち、本発明の第1構成は自動車の側部に保護具を配置するための保護具の保持機構であって、一方側に前記保護具を保持する保持部を有するとともに、他方側に車体突出部を受容する受容部を有する保持具と、前記受容部を開閉する開閉手段と、前記開閉手段の閉位置において前記開閉手段による前記受容部の開放を規制する施錠手段と、から構成したことを特徴とする。
【0010】
車体突出部としては、車体外部側に配置されたドアハンドルのグリップ部分、ドアミラーやフェンダーミラーなどの支柱など、受容部が受容可能な突出部を有していればよい。
受容部の開閉手段としては、受容部の一端側から他端側へ進退して受容部を開閉する直線状または湾曲状の棒状部材、受容部の一端側から他端側へ回動して受容部を開閉する腕状部材、受容部の一端側と他端側を連結するワイヤやチェーン等の線状部材などを採用可能である。
保護具は、棒状、管状または鎖状の軽量かつ弾力性に優れた材料、例えば合成樹脂を採用可能である。保護具は着色することが出来、蛍光色や黒黄の縦縞模様に着色して、隣接駐車した車両の乗員に注意を促すことも出来る。また逆にボディー同系色に着色あるいは透明な材料とし、目立ちにくくすることも出来る。
本発明による保護具の保持機構は、4ドア車であれば車体突出部としての前後のドアハンドル、2ドア車であってもドアハンドルとドアミラーやフェンダーミラーなどの支柱などを利用して保持具を取り付け、前後一対の保持具間に保護具を保持することができる。一方、ドアハンドルが車体突出部として利用できず、例えばドアミラー支柱しか車体突出部が存在しない場合は、本発明による保持機構により保護具の一方側をドアミラーの支柱に保持するとともに、保護具の他方側については磁石や吸盤などで車体側に取り付けた他の保持手段により保持することで本発明による保持機構を利用することができる。
【0011】
本発明の第2構成では第1構成における前記開閉手段を、一端部側が前記保持具に軸着されて受容部の一部を構成するとともに、回動により受容部を開閉可能な開閉アームとしたことを特徴とする。
本発明の第3構成では第2構成における前記施錠手段を、前記開閉アームの軸着部よりも先端側に軸着した錠止アームと、前記錠止アームの先端側に設けた車体側錠止部と、前記保持具に配した係止部と、から構成し、前記開閉アームの閉位置において前記錠止アームを保持具側に回動させて前記車体側錠止部を前記係止部に係止して前記保持具側に前記錠止アームを固定することにより、錠止アーム軸着部を介して接続される前記開閉アームの回動を規制する施錠手段としたことを特徴とする。すなわち、開閉アームの開閉アーム軸着部よりも先端側に錠止アーム軸着部が存在するために、係止部への車体側錠止部の係止により錠止アームが固定された状態では、開閉アームを回動しようとしても錠止アーム軸着部が固定されているために開閉アームの回動が阻止されて受容部が閉鎖状態となる。
本発明の第4構成では第1構成から第3構成における前記施錠手段が、前記開閉手段の閉位置において前記保持部に保持された前記保護具の離脱を規制する保護具側錠止部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による保護具の保持機構は自動車のドアハンドル等の車体突出部に簡単に取り付けして、保護具を車体側部に配置できるため、狭い駐車場でも隣接して駐車した車両のドア等によるへこみ傷を防止することができる。また、本保持機構を使用することで隣接駐車車両の使用者に対し、ドア開扉時の衝突により車体に損傷が生じる恐れがあると注意を促すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における保護具の保持機構の説明図である。
【図2】実施例1における保護具の保持機構の説明図である。
【図3】実施例1における保護具の保持機構の説明図である。
【図4】実施例1における保護具の保持機構の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による保護具の保持機構について図面に基づき詳細に説明するが、これにより本願発明の技術的範囲を実施例の図面に現された構造に限定するものでない。
【実施例1】
【0015】
図1から図3は実施例1における保護具の保持機構の説明図であり、図4は実施例1における保護具の保持機構の使用状態を示す説明図である。実施例1における保護具の保持機構Sは、保持具1、開閉手段2、施錠手段3とから構成している。
保持具1は合成樹脂などから成型しており、その一端側(図面における下側)には保護具Pを保持する開口を有する保持部10を配置しており、他端側(図面における上側)には自動車Cの車体突出部としてのドアハンドルhを受容する凹部状の受容部11を配置している。保持部10と受容部11との間には後述する車体側錠止部31の錠止板31aを係止する係止部12を配置している。
【0016】
開閉手段2は、開閉アーム軸着部20aを介して受容部11付近に回動自在に軸着した開閉アーム20として受容部11の一部を構成しており、その先端側は開口11a側に向けて湾曲状に形成している。
施錠手段3は、開閉アーム軸着部20aよりも先端側の開閉アーム20に設けた錠止アーム軸着部30aを介して回動自在に軸着した錠止アーム30としており、保持部10側に向けて配置している。
錠止アーム30にはシリンダー錠からなる車体側錠止部31を配置しており、車体側錠止部31の保持具1側には鍵による軸回転が可能な錠止板31aを配置している。
また、錠止アーム30の先端側は保持部10を幅方向に跨いで保持部10側に屈曲させた一対の保護具側錠止部32を形成しており、保護具側錠止部32の先端側は後述する保護具Pの係合部Paに嵌合する係止爪32aとしている。係止爪32aは車体側錠止部31が係止部12に係止した状態で保持部10の外縁よりも若干内側まで届く程度の長さを有している。
実施例1の保護具Pは、保持部10の内径より若干小さな外径を有する軟質樹脂製パイプとしており、その外周面には適宜長さを有する複数本の溝を周回状に配置して係合部Paを形成している。
【0017】
[実施例1の作用]
上記構成を有する実施例1の保護具の保持機構Sは以下のように作用する。
まず、保護具Pを保持部10に装着した状態で開閉アーム20を開閉アーム軸着部20a回りに回動させてドアハンドルhが通過可能となるまで受容部11の開口11aを開口し、ドアハンドルhを受容部11の開口11a内に収容した後、開閉アーム20を開閉アーム軸着部20a回りに回動させて開閉アーム20を閉じて閉位置とする。
次に、錠止アーム30を係止部12側へと回動させ、さらに車体側錠止部31の鍵操作により、鍵操作に連動する錠止板31aを係止部12に係止することで錠止アーム軸着部30aが固定され、これにより開閉アーム20が回動不能となって開放が規制されるため受容部11は施錠状態となる。
すなわち、開閉アーム20の開閉アーム軸着部20aよりも先端側に錠止アーム軸着部30aが存在するために、係止部12への車体側錠止部31の係止により錠止アーム30が固定された状態では、開閉アーム20を回動しようとしても開閉アーム20は錠止アーム軸着部30aで固定されているために開閉アーム20の回動が阻止されて受容部11が閉鎖状態となるから、ドアハンドルhは受容部11から離脱できなくなりドアハンドルhは施錠状態となる。
また、開閉アーム20の閉位置における錠止アーム30の固定に伴い、保護具Pに設けられた係合部Paには錠止アーム30の保護具側錠止部32の係止爪32aが嵌合することとなり、保護具Pは保持部10から離脱できなくなって保護具Pは施錠状態となる。
以上により、保持機構Sによる車体C側部への保護具Pの取り付けが完了する。
【符号の説明】
【0018】
S 保持機構
1 保持具
10 保持部
11 受容部
11a 開口
12 係止部
2 開閉手段
20 開閉アーム
20a 開閉アーム軸着部
3 施錠手段
30 錠止アーム
30a 錠止アーム軸着部
31 車体側錠止部
31a 錠止板
32 保護具側錠止部
32a 係止爪
C 自動車
d ドア側部
h ドアハンドル
P 保護具
Pa 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の側部に保護具を配置するための保護具の保持機構であって、一方側に前記保護具を保持する保持部を有するとともに、他方側に車体突出部を受容する受容部を有する保持具と、前記受容部を開閉する開閉手段と、前記開閉手段の閉位置において前記開閉手段による前記受容部の開放を規制する施錠手段と、から構成したことを特徴とする保護具の保持機構。
【請求項2】
前記開閉手段を、一端部側が前記保持具に軸着されて受容部の一部を構成するとともに、回動により受容部を開閉可能な開閉アームとしたことを特徴とする請求項1記載の保護具の保持機構。
【請求項3】
前記施錠手段を、前記開閉アームの軸着部よりも先端側に軸着した錠止アームと、前記錠止アームに設けた車体側錠止部と、前記保持部と前記受容部との間の前記保持具に配した係止部と、から構成し、前記開閉アームの閉位置において前記錠止アームを前記保持具側に回動させて前記車体側錠止部を前記係止部に係止して前記保持具側に前記錠止アームを固定することにより、錠止アーム軸着部を介して接続される前記開閉アームの回動を規制する施錠手段としたことを特徴とする請求項2記載の保護具の保持機構。
【請求項4】
前記施錠手段が、前記開閉手段の閉位置において前記保持部に保持された前記保護具の離脱を規制する保護具側錠止部を有することを特徴とする請求項1から請求項3記載の保護具の保持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−131786(P2011−131786A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294267(P2009−294267)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【特許番号】特許第4512925号(P4512925)
【特許公報発行日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(309008826)
【Fターム(参考)】