説明

保護回路モジュール

【課題】 小型でかつ耐衝撃性や耐曲げ強度特性などの機械的強度特性に優れた保護回路モジュールを提供すること。
【解決手段】 2次電池に接続され、その2次電池の充電回路または放電回路の少なくとも1つを遮断する機能を有する保護回路モジュールであって、その上面に凹部11を有し凹部11の底部に単層または多層の配線2を有する絶縁支持基板1と、絶縁支持基板1の凹部11の内部に実装された半導体素子7,8とパッシブ素子9などの電子部品とにより構成されている。上記電子部品は絶縁物である樹脂16によって埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次電池の過充電、過放電、過電流等の充放電を制御することができる保護回路モジュールに関し、特にその実装方法を改善した保護回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型の電子機器の小型軽量化はますます進展し、これらの機器に使用される2次電池に対しても小型化が要求されている。それに伴って2次電池に内蔵される保護回路モジュールも小型化が要求されており、特許文献1および2にそのような目的の保護回路モジュールの構成例が示されている。保護回路モジュールの部品実装は、パッケージ型のディスクリート半導体素子を使ったものから、ベアチップを回路基板に実装しワイヤボンディング配線後に全体を樹脂で封止するCOB(Chip on Board)構造へと進展し、さらに小型化が進み、ワイヤボンディングスペースを不要としたCSP(Chip Size Package)、フリップチップ実装の構造が主流となりつつある。
【0003】
図5は従来の2次電池の保護回路モジュールの構成の一例を示す図であり、図5(a)は斜視図、図5(b)は側断面図である。従来の2次電池の保護回路モジュールは、図5に示すように、単層または多層の配線52を形成した絶縁支持基板51に2次電池と接続するための電極プレート53、2次電池のプラス出力端子54,TH端子55,マイナス出力端子56を有し、配線52上に過充電、過放電、過電流検出機能を有するCSP(Chip Size Package)構造の半導体素子7、電池出力をオンオフするためのCSP構造の半導体素子8、及び半導体素子7,8と保護回路を構成するパッシブ素子9などから構成される。
【0004】
半導体素子7としては電池用保護ICが、半導体素子8としては大電流をオンオフするためにFET等のパワートランジスタが、パッシブ素子9としてはコンデンサ、抵抗、ダイオード等がそれぞれ使用される。
【0005】
ここで実装されている半導体素子7,8はBGA(Ball Grid Array)構造のCSP素子であり、絶縁支持基板51の配線52とサイズ0.1〜0.3mmφ程度の半田ボールにより半田接続されている。この構成により保護回路モジュールの大幅な小型化が達成できる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−4783号公報
【特許文献2】特開2003−86159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし上記のBGA構造の素子により実装された保護回路モジュールは、従来のパッケージ型の半導体素子を実装したものに比べて実装部分の耐曲げ強度、剪断強度がきわめて弱い構造となっており、落下等による衝撃や振動により故障を生じやすい。また、半導体素子の実装と反対面は、シリコン基板が露出した構造であり、僅かな衝撃で劈開する恐れを有している。
【0008】
そこで、特許文献1などに示されるように回路基板上に実装された電子部品を樹脂でモールドすることにより耐曲げ強度や耐剪断強度、耐衝撃性能などを向上させている。このような実装構造の一例を図6に示す。図5のように実装された半導体素子7,8およびパッシブ素子9の周囲を樹脂10等でモールドしたものであるが、基板に曲げ応力が加わった際に、絶縁支持基板51と樹脂10との界面端部18では、絶縁支持基板51と樹脂10の硬度が異なっていることにより剥離が発生し易く、剥離が発生した場合、樹脂10と一緒に実装された半導体素子7,8およびパッシブ素子9に絶縁支持基板51から剥離される方向に応力が働き、素子剥離或いは素子破損が発生し易いという問題がある。
【0009】
また、特許文献2では、凹型構造の絶縁ケース及び蓋の両面に保護回路を構成する素子を実装し、それらを簡単に接合一体化できるように形成して組み合わせ、保護回路部品をケース内部に組み込んだ立体構造のものが提案されている。しかし、パッケージ型のディスクリート半導体素子を搭載しており、また二つのケースを積み重ねた構造であることから小型化には限界がある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、これらの欠点を除去し、小型でかつ耐衝撃性や耐曲げ強度特性などの機械的強度特性に優れた保護回路モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の保護回路モジュールは、2次電池に接続され、前記2次電池の所定値以上の過電圧、過放電、過電流の少なくとも1つを検出して前記2次電池の充電回路または放電回路の少なくとも1つを遮断する機能を有する保護回路モジュールであって、上面に凹部を有し該凹部の底部に単層または多層の配線部分を有する絶縁支持体と、該絶縁支持体の前記凹部の内部に実装された電子部品とにより構成されることを特徴とする。
【0012】
また、前記電子部品が絶縁物に埋め込まれていてもよい。
【0013】
また、前記凹部の側壁と底面とが交わる部分において、前記側壁の少なくとも一部に窪みを設け、前記絶縁物が前記窪みにも充填されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明においては保護回路モジュールを構成する半導体素子などの電子部品を絶縁性支持体に設けた凹部内に収納することにより形状の小型化および取り扱い上の不備による電子部品の機械的損傷の可能性を低減し、さらに、それを樹脂などの絶縁物でモールドして埋め込むことにより機械的強度を向上し、さらにはその凹部の側壁に窪みを設けそこに絶縁物を充填することにより電子部品の剥離強度などを向上させることができる。
【0015】
よって本発明により、小型でかつ耐衝撃性や耐曲げ強度特性などの機械的強度特性に優れた保護回路モジュールを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は本発明による保護回路モジュールの第1の実施の形態の構成を示す図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は側断面図である。また、図2は本実施の形態の保護回路モジュールに使用する絶縁性支持基板の構造を示す図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は側断面図である。
【0018】
図1において、本実施の形態の保護回路モジュールは、その上面に凹部11を有し凹部11の底部に単層または多層の配線2を有する絶縁支持基板1と、絶縁支持基板1の凹部11の内部に実装された電子部品とにより構成されている。
【0019】
ここで、絶縁支持基板1は図2に示すように、その上面の中央部に凹部11が設けられ、その底部の基板内には単層または多層の配線2が配置されている。また、2次電池と接続するための電極用配線12が絶縁支持基板1の上面の凹部以外の部分に設けられ、絶縁支持基板1の凹部の底部基板の下面には2次電池のプラス出力端子4、TH出力端子5、マイナス出力端子6が設けられている。また、絶縁性支持基板1の凹部の底面15にも、保護回路を構成する電子部品を実装するための配線を配している。
【0020】
さらに、凹部11の側壁17と底面15とが交わる部分において、側壁17に窪み13を設けている。
【0021】
図1に示すように、絶縁性支持基板1の凹部11の底面15の配線上に、図5と同様な過充電、過放電、過電流検出機能を有するCSP構造の半導体素子7、電池出力をオンオフするための半導体素子8、及び半導体素子7,8と保護回路を構成するパッシブ素子9が設置され、電極用配線12上に2次電池と接続するための電極プレート3が実装される。実装は、実装部に半田クリームを塗布し、その上に電子部品を搭載し、リフロー等の加熱で半田実装するものとする。
【0022】
半導体素子7としては電池用保護ICが、半導体素子8としては大電流をオンオフするためにFET等のパワートランジスタが、パッシブ素子9としてはコンデンサ、抵抗、ダイオード等がそれぞれ使用される。半導体素子7,8はサイズ0.1〜0.3mmφ程度の半田ボールを有しており、その厚さは半田ボールを含めて0.3〜0.5mm程度である。ただし、厚さはこれ限るものではなく、任意の厚みに対応可能である。パッシブ素子9としては、1005サイズ(1.0mm×0.5mm)、0603サイズ(0.6mm×0.3mm)、0402サイズ(0.4mm×0.2mm)等のサイズを用いることができる。
【0023】
絶縁支持基板1としては、一般的なガラスエポキシ基板を使用することができ、凹部11の底部の厚さは0.5〜0.8mm程度、凹部11の周辺の部分の厚さは1.0〜1.5mm程度である。凹部11の深さは、凹部11に埋め込まれる電子部品の高さと実装するための半田等の厚さを重ね合わせた厚さと同等以上とすることが望ましい。実装された電子部品の高さを絶縁支持基板1の凹部11の周囲より低くすることにより、電子部品が外部との衝突により損傷を受けることを防止することが出来る。
【0024】
図3は本発明による保護回路モジュールの第2の実施の形態の構成を示す図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は側断面図である。本実施の形態の保護回路モジュールは絶縁支持基板1やその凹部11などの形状、凹部11に実装される半導体素子7,8などの電子部品、その凹部11の底面15上の配線への半田による実装方法などは図1の実施の形態と同じである。
【0025】
但し、本実施の形態においては、半導体素子7,8とパッシブ素子9などが絶縁物である樹脂16によって埋め込まれている。この時の凹部11にモールドされる樹脂16の上面は絶縁支持基板1と同一平面になることが望ましい。樹脂16としてはエポキシ等の樹脂を使用でき、ポッティングや金型成形で形成できる。この時、流し込まれた樹脂16は、絶縁支持基板1の凹部11内の窪み13にも充填されて成形される。
【0026】
これにより、保護回路を構成する半導体素子7,8とパッシブ素子9は、絶縁支持基板1の凹部11に樹脂16により完全に埋め込まれた構造となる。樹脂16により電子部品が保護されており外部からの耐衝性が向上する。また、保護回路モジュールに曲げ応力が加わった場合でも、樹脂16が窪み13に流れ込んでおり、曲げ応力に対して、窪み上部14が窪み13に流れ込んだ部分の樹脂16を押さえるため、絶縁支持基板1と樹脂16の界面剥離強度が著しく向上している。
【0027】
図4は本発明による保護回路モジュールの第3の実施の形態の構成を示す図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は側断面図である。本実施の形態の保護回路モジュールは絶縁支持基板1やその凹部11などの形状、凹部11に実装される半導体素子7,8などの電子部品、その凹部11の底面15上の配線への半田による実装方法、樹脂16による凹部11のモールド方法などは図3の実施の形態と同じである。
【0028】
但し、図3の実施の形態においては絶縁支持基板1の上に設けられた電極用配線12上に2次電池と接続するための電極プレート3が絶縁支持基板1の面より飛び出して実装されているが、本実施の形態においては、電極プレート3が設置される部分の絶縁支持基板1の表面が電極プレート3の厚さ分だけ窪んでおり、電極プレート3が設置された状態で樹脂16の上面、絶縁支持基板1、電極プレート3が同一平面となるように形成されている。これにより保護回路モジュールがさらに取扱い易くなり、外部との衝突により損傷を受ける可能性をさらに低減することが出来る。
【0029】
以上のように、本発明により、小型でかつ耐衝撃性や耐曲げ強度特性などの機械的強度特性に優れた保護回路モジュールを得ることができる。
【0030】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではないことは言うまでもなく、例えば、絶縁支持基板やそこに形成される凹部などの形状、実装される電子部品などは目的に合わせて最適な構成に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による保護回路モジュールの第1の実施の形態の構成を示す図、図1(a)は斜視図、図1(b)は側断面図。
【図2】本発明の実施の形態の保護回路モジュールに使用する絶縁性支持基板の構造を示す図、図2(a)は斜視図、図2(b)は側断面図。
【図3】本発明による保護回路モジュールの第2の実施の形態の構成を示す図、図3(a)は斜視図、図3(b)は側断面図。
【図4】本発明による保護回路モジュールの第3の実施の形態の構成を示す図、図4(a)は斜視図、図4(b)は側断面図。
【図5】従来の2次電池の保護回路モジュールの構成の一例を示す図、図5(a)は斜視図、図5(b)は側断面図。
【図6】回路基板上に実装された電子部品を樹脂でモールドする従来の実装構造の一例を示す図、図6(a)は斜視図、図6(b)は側断面図。
【符号の説明】
【0032】
1,51 絶縁支持基板
2,52 配線
3,53 電極プレート
4,54 プラス出力端子
5,55 TH出力端子
6,56 マイナス出力端子
7,8 半導体素子
9 パッシブ素子
10,16 樹脂
11 凹部
12 電極用配線
13 窪み
14 窪み上部
15 底面
17 側壁
18 界面端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次電池に接続され、前記2次電池の所定値以上の過電圧、過放電、過電流の少なくとも1つを検出して前記2次電池の充電回路または放電回路の少なくとも1つを遮断する機能を有する保護回路モジュールであって、上面に凹部を有し該凹部の底部に単層または多層の配線部分を有する絶縁支持体と、該絶縁支持体の前記凹部の内部に実装された電子部品とにより構成されることを特徴とする保護回路モジュール。
【請求項2】
前記電子部品が絶縁物に埋め込まれていることを特徴とする請求項1記載の保護回路モジュール。
【請求項3】
前記凹部の側壁と底面とが交わる部分において、前記側壁の少なくとも一部に窪みを設け、前記絶縁物が前記窪みにも充填されていることを特徴とする請求項2に記載の保護回路モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−192413(P2008−192413A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24226(P2007−24226)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】