説明

保護層転写シート

【課題】 保護層の転写された印画物において、虹状の干渉ムラの発生を防止でき、また保護層としての耐久性に優れ、さらに保護層の熱転写の際に、箔切れ性も良好である保護層転写シートを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の保護層転写シート1は、基材シート2上に、剥離層3、接着層4を順次積層した構成で、剥離層がポリアミドイミド樹脂を含有し、また、接着層が剥離層に含有するポリアミドイミド樹脂の屈折率と差がほとんどない樹脂(ポリエステル系樹脂等)を含有させることで、保護層の転写された印画物において、剥離層と接着層との界面において、反射光による虹状の干渉ムラが無く、また保護層としての耐久性に優れ、さらに保護層の熱転写の際の箔切れ性も良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護層転写シートに関し、特に熱転写画像等を有する被転写体に保護層を転写し、被転写体に対して優れた耐久性を付与でき、また保護層の転写された印画物において外観上、反射して表面にムラ(虹状のムラ)が生じないようにした保護層転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を形成する種々プリント方法として、感熱により色材層中の染料が昇華拡散して染料が受像シートに移行する感熱昇華転写、加熱によって色材層が溶融軟化して、色材層自身が受像シートに転写する感熱溶融転写、インクジェット、電子写真が広く用いられている。この中で、感熱昇華転写は、記録材として用いる昇華転写染料をバインダー樹脂に溶融あるいは分散させた染料層をポリエステルフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートと、昇華染料で染着可能な被転写材、例えば、紙やプラスチックフィルム等に受容層を形成した受像シートを重ね合わせ、昇華染料を熱転写し、各種のフルカラー画像を形成する方法が提案されている。この場合には、加熱手段として、プリンターのサーマルヘッドが使用され、極めて短時間の加熱によって3色又は4色の多数の加熱量が調整された色ドットを受像シートに転移させ、該多色の色ドットにより原稿のフルカラーを再現するものである。
【0003】
このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから、非常に鮮明であり、且つ透明性に優れているため、得られる画像は中間色の再現性や階調性に優れ、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同様であり、且つフルカラー写真画像に匹敵する高品質画像の形成が可能である。現在、簡単な印刷方法として熱転写記録方法が広く使用されている。熱転写記録方法は、各種画像を簡便に形成できるため、印刷枚数が比較的少なくてもよい印刷物、例えばIDカードの作成や、営業写真、或いはパーソナルコンピュータのプリンタやビデオプリンタ等において、利用されている。
【0004】
上記の感熱昇華転写方式は、熱転写シートに印加するエネルギー量によって、ドット単位で染料の移行量を制御出来るため、階調性画像の形成に優れているが、形成された画像は通常の印刷インキによるものとは異なり、色材が顔料でなく、比較的低分子量の染料であり、且つビヒクルが存在しないため、耐光性、耐候性、耐摩耗性等の耐久性に劣ると言う欠点がある。これに対して、昇華染料の熱転写によって得られた画像上に、熱転写性樹脂層を有する保護層熱転写シートを重ね合わせ、サーマルヘッドや加熱ロール等を用いて熱転写性樹脂層を転写させ、画像上に保護層を形成する方法が知られている。
【0005】
保護層転写シートとして、例えば、特許文献1にあるように、基材シート上に離型層、主保護層、接着層を積層した構成で、主保護層と、接着層が基材シートから剥離して、被転写体へ転写されるものがある。また、特許文献2には、基材シート上に剥離層、接着層を積層した保護層転写シートにおいて、熱転写の際、基材シートから、剥離層と接着層が剥離して、被転写体の転写された保護層の最表面が剥離層となることが記載されている。
【0006】
上記のような保護層転写シートを使用して、熱転写により画像形成された印画物の画像上に、保護層を転写した場合、蛍光灯等の下で観察すると、多層構成の保護層の境界の界面で、反射光の光路差によって生じる虹状の干渉縞(ムラ)が生じて、印画物の品位を低下させる問題がある。これに対して、基材シート上に剥離層、接着層を積層した構成で、剥離層の屈折率を接着層の屈折率に近づけるために、剥離層の構成する樹脂として、アクリル樹脂にスチレンモノマーを共重合させる等、剥離層の屈折率を高める工夫をしたが、上記の虹状の干渉ムラの発生は防止できるが、耐可塑剤性等の耐久性が低下して、保護層としての機能に満足できるものがない。
【0007】
【特許文献1】特開平11−151867号公報
【特許文献2】特開2004−175035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上記のような課題を解決するために、本発明は、保護層の転写された印画物において、虹状の干渉ムラの発生を防止でき、また保護層としての耐久性に優れ、さらに保護層の熱転写の際に、箔切れ性も良好である保護層転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基材シート上に、剥離層、接着層を順次積層した保護層転写シートにおいて、剥離層がポリアミドイミド樹脂を含有することを特徴とする。また、請求項2に記載の発明は、前記の基材シート上の剥離層、接着層を順次積層した保護層と、同一基材シート上で保護層の設けられていない箇所に、染料層及び/または熱溶融性インキ層を、面順次に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の保護層転写シートは、基材シート上に、剥離層、接着層を順次積層した構成で、剥離層がポリアミドイミド樹脂を含有し、また、接着層が剥離層に含有するポリアミドイミド樹脂の屈折率と差がほとんどない樹脂(ポリエステル系樹脂等)を含有させることで、保護層の転写された印画物において、剥離層と接着層との界面において、反射光による虹状の干渉ムラが無く、また保護層としての耐久性に優れ、さらに保護層の熱転写の際の箔切れ性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の保護層転写シート1の一つの実施形態を示す概略図であり、基材シート2上に、剥離層3、接着層4が積層された構成であり、剥離層3にはポリアミドイミド樹脂が含有されている。また、基材シート2の他方の面に、サーマルヘッドの熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止するために、耐熱滑性層5が設けられている。この保護層転写シート1では、熱転写により剥離層3と接着層4が基材シート2から剥離して、被転写体へ保護層6として転写されるものである。また図2は、本発明の保護層転写シート1の他の実施形態を示す概略図であり、基材シート上に、イエロー染料層(Y)、マゼンタ染料層(M)、シアン染料層(C)、ブラックの熱溶融性インキ層(BK)と、剥離層、接着層を順次積層した保護層6が、同一基材シート上に、面順次に、繰り返し形成されたものである。また、図3は、本発明の保護層転写シート1の他の実施形態を示す概略図であり、基材シート上に、イエロー染料層(Y)、マゼンタ染料層(M)、シアン染料層(C)と、剥離層、接着層を順次積層した保護層6が、同一基材シート上に、面順次に、繰り返し形成されたものである。図示したものに限らず、同一基材シート上に、ブラック等の熱溶融性インキ層と、剥離層、接着層を順次積層した保護層を面順次に、繰り返し形成したり、各種色相の染料層及び/または熱溶融性インキ層と、剥離層、接着層を順次積層した保護層とを、面順次に設けることができる。
【0012】
以下に本発明で使用する保護層転写シートを構成する各層の説明を行う。
(基材シート)
本発明の保護層転写シートに用いられている基材シート2としては、従来の熱転写シートに使用されているものと同じ基材をそのまま用いることができるとともに、シートの表面に易接着処理がしてあるものや、その他のものも使用することができ、特に制限はされない。但し、易接着処理がなされている基材シートを用いる場合、基材シートと剥離層との間に、離型層を設けることが望ましい。
【0013】
好ましい基材シートの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートを始めとするポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ボリ塩化ビニル、ポリスチレン、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマーなどのプラスチックフィルム、セロファンなどがあり、また、これらの2種以上を積層した複合フィルムなども使用できる。これらの基材シートの厚さは、その強度および耐熱性が適切になるように材料に応じて適宜変更するが、通常は2.5〜10μm程度が好ましい。
【0014】
(離型層)
基材シート上には、その上に形成する保護層の転写性を適当にする離型層を設けることができる。特に、基材シートに易接着処理がなされている場合に、基材シートと剥離層との間に離型層を形成することが望ましい。離型層を形成する樹脂としては、従来公知の離型性に優れた樹脂がいずれも使用でき、例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、熱架橋性エポキシ−アミノ樹脂および熱架橋性アルキッド−アミノ樹脂などが挙げられる。これらの離型性樹脂は単独でも混合物としても使用できる。
【0015】
離型層は、上記の如き離型性樹脂材料に各種のフィラーを添加することができる。使用するフィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク等の公知の無機フィラー、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ワックスなどからなるプラスチックピグメントが挙げられる。離型層を形成するには、上記の如き樹脂と、必要に応じてフィラー、架橋剤または触媒を加え、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコールなどの汎用溶剤に、溶解、あるいは分散させた塗布液を調製し、該塗布液を基材上に、従来公知のグラビアコート、グラビアリバースコートなどの方法で厚み(乾燥基準)0.5〜5μm程度になるように塗布および乾燥して形成する。
【0016】
(剥離層)
本発明の剥離層3は、ポリアミドイミド樹脂を含有することを特徴とするものである。そのポリアミドイミド樹脂は、イソシアネート法又は酸クロリド法など公知の方法で合成され、イソシアネート法ではトリメリット酸無水物及びジイソシアネートより得られ、酸クロリド法では無水トリメリット酸クロリド及びジアミンより得ることができる。工業的にはイソシアネート法が有利である。用い得る有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスファミド等のアミド系有機溶媒、N−メチル−カプロラクタム等のラクタム系有機溶媒、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチル尿素等の尿素系有機溶媒、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2−(2−メトキシエトキシ)エタン〕等の炭化水素系有機溶媒、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル系有機溶媒、γ−ブチロラクトン等のエステル系有機溶媒、ピリジン、ピコリン等のピリジン系有機溶媒、ジメチルスルフォキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等のイオウ系有機溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ系有機溶媒、アセトニトリル等のニトリル系有機溶媒等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。又、これらの有機溶媒は単独でも2種以上の混合系でも用いることができる。反応温度は、通常50〜200℃が好ましく、又、反応はイソシアネートと活性水素化合物の反応に対する触媒、例えば、3級アミン類、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、或いは、コバルト、チタニウム、すず、亜鉛などの金属、半金属化合物などの存在下に行ってもよい。
【0017】
無水トリメリット酸に加えて、溶剤に対する溶解性あるいは重合性等を賦与するために加えてもよい酸成分として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、5−tert−ブチル−1,3−ベンゼンジカルボン酸、テレフタル酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸、1,2−ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ジフェニルエタン−2,4’−ジカルボン酸、1,2−ジフェニルエタン−3,4’−ジカルボン酸、1,2−ジフェニルエタン−3,3’−ジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2−(2−カルボキシフェニル)2−(4−カルボキシフェニル)プロパン、2−(3−カルボキシフェニル)2−(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、ジフェニルエーテル−4,4−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,4−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3−ジカルボン酸、ジフェニルスルフィド−4,4−ジカルボン酸、ジフェニルスルフィド−2,4−ジカルボン酸、ジフェニルスルフィド−3,4−ジカルボン酸、ジフェニルスルフィド−3,3−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−2,4−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,4−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−2,4−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−3,4−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−3,3−ジカルボン酸、1,1,3−トリメチル−5−カルボキシ−3−(p−カルボキシフェニル)インダン、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ビス〔(4−カルボキシ)フタルイミド〕−4,4’−ジフェニルエーテル、ビス〔(4−カルボキシ)フタルイミド〕−α,α’−メタキシレン等の芳香族ジカルボン酸、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸およびこれらの無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸(ピロメット酸)、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ビフェニル−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)およびこれらの二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上の混合物として用いられる。共重合してもよい酸成分は、本発明の目的効果が達成しうる範囲で使用されるが、通常全酸成分中、60モル%以下、好ましくは30モル%以下の範囲で使用される。
【0018】
ジアミン成分としては、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−〔1,3-フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスアニリン、3,3’−〔1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスアニリン等を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0019】
さらにアミン(イソシアネート)成分として、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−フェニレン、p−フェニレンジアミン、オキシジアニリン、メチレンジアニリン、a,a’−ジアミノ−m−キシレン、a,a’−ジアミノ−p−キシレン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、イソホロンジアミン、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3’−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、イソプロピリデンジアニリン、4,4’−ジアミノシクロヘキシル、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−〔1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスアニリン、4,4’−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスアニリン、3,3’−〔1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスアニリン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、あるいはこれらに対応するジイソシアネート等を単独あるいは2種以上の混合物として共重合してもよい。共重合してもよいアミンあるいはイソシアネートは、本発明のポリアミドイミドの特性を落とさない範囲で使用されるが、通常全アミン(イソシアネート)成分中、60モル%以下、好ましくは30モル%以下で使用される。
【0020】
本発明の剥離層に含有させるポリアミドイミド樹脂として、下記の一般式で表される単位を繰り返し単位として分子鎖中に含有するものである。
【化1】

但し、上記式中、Rは2価の芳香族及び/または脂肪族基を示す。
【0021】
このようなポリアミドイミド樹脂は、分子量は約5000〜30,000のものが好ましく、ガラス転移温度は、200〜350℃程度のものが好ましく用いられる。東洋紡績株式会社製の商品名バイロマックスのHR11NN、HR12N2、HR13NX、HR14ET、HR15ET、HR16NN等で、市場から入手できる。上記のガラス転移温度が高すぎると、溶剤に対する溶解性が悪くなり、塗工しにくくなる。一方、ガラス転移温度が低すぎると、耐可塑剤性等の耐久性が悪くなる。また、そのポリアミドイミド樹脂を含有する剥離層は、保護層として印画物に転写されて使用されるため、無色、透明性が要求されるので、特に商品名バイロマックスのHR14ET、HR15ETが好ましく用いられる。
【0022】
本発明では、上記のポリアミドイミド樹脂において、特に、屈折率が、1.52〜1.59程度になるものを使用する。本発明における屈折率は、全てJIS K 7150に記載されている方法に準じて、測定したものである。上記のような光学特性を有する剥離層に含有するポリアミドイミド樹脂の屈折率と差がほとんどない、或いはポリアミドイミド樹脂の屈折率よりもやや低い屈折率をもつ樹脂(ポリエステル系樹脂等)を接着層に含有させることで、保護層の転写された印画物において、剥離層と接着層との界面において、反射光による虹状の干渉ムラを無くすることができる。剥離層は、上記のポリアミドイミド樹脂を主体に構成されるが、必要に応じて屈折率等がポリアミドイミド樹脂と同等であり、剥離層の機能を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂を加えることができる。
【0023】
剥離層を形成するには、上記の如き樹脂を、トルエン、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの汎用溶剤、又はジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのようなアミド系溶剤、γ−ブチロラクトンのような高沸点溶剤を併用して、溶解あるいは分散して、また必要に応じて、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、無機あるいは有機のフィラー成分、界面活性剤、離型剤等を添加し、塗布液を調製し、該塗布液を、従来公知のグラビアコート、グラビアリバースコートなどの方法で厚み(乾燥基準)0.3〜10μm、さらに望ましくは0.5〜5.0μmになるように塗布および乾燥して形成する。剥離層の厚さが、上記の範囲が好ましく、薄すぎる場合は保護層としての耐久性能が充分に発揮できなくなる。また、その厚さが厚すぎる場合は、保護層の熱転写時に、尾引き等の転写不良が生じやすい。
【0024】
(接着層)
本発明では、保護層転写シートにおいて、基材シート上に、剥離層、接着層を順次積層した構成をとる。この接着層4は、保護層転写シートにおける保護層(剥離層と接着層を合わせたもの)の転写と、転写後の保護層の印画物に対する密着性を向上させるために設けられる。この接着層は、従来公知の感熱接着剤がいずれも使用できるが、ガラス転移温度が50〜100℃の熱可塑性樹脂から形成することがより好ましく、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂などの如く熱時接着性の良好な樹脂から、屈折率が1.52〜1.59程度のもので、また適当なガラス転移温度を有するものを選択する。本発明では、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂のポリエステル系樹脂を用いた接着層が、特に剥離層との相溶性も高く、好ましく用いられる。
【0025】
接着層に紫外線吸収剤を含有させることによって、転写された後に保護層により覆われる被転写体の熱転写画像等の耐光性、耐候性等をより向上させることができる。その紫外線吸収剤としては、従来公知の有機系紫外線吸収剤であるサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系等を挙げることができる。尚、これらの紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいはアルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入した高分子材料が紫外線吸収性樹脂であり、この紫外線吸収性樹脂から接着層を構成することもできる。
【0026】
接着層を形成するには、上記の如き樹脂を、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコールなどの汎用溶剤に、溶解あるいは分散して、また必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、無機あるいは有機のフィラー成分、界面活性剤、離型剤等を添加し、塗布液を調製し、該塗布液を、従来公知のグラビアコート、グラビアリバースコートなどの方法で厚み(乾燥基準)0.5〜10μm、さらに望ましくは0.7〜5.0μmになるように塗布および乾燥して形成する。接着層の厚さが少なすぎると、保護層の印画物への密着性が低下してくる。また接着層の厚さが多すぎると、保護層転写の際の熱感度が低下してくる。
【0027】
(耐熱滑性層)
保護層転写シートは、基材シートの裏面、すなわち、保護層の設けてある面と反対面に、サーマルヘッドの熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止するため、耐熱滑性層5を設けることが好ましい。その耐熱滑性層の厚さは、固形分で0.1〜2μm程度である。
【0028】
昇華性染料や熱溶融性インキが転写されて画像形成された印画物の画像上に、本発明の保護層転写シートを用いて、保護層が転写される。その画像形成のために使用される熱転写シートは、基材上に昇華性染料を含有する染料層や、有色の顔料や染料の着色剤と、ワックスや、樹脂のバインダーから構成される熱溶融性インキ層を形成したものである。本発明では、上記の保護層転写シートと、染料層、熱溶融性インキ層を有する熱転写シートを別々に用意して、使用したり、あるいは同一基材シート上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の各色相を有する染料層及び/または熱溶融性インキ層と、保護層を、面順次に設けたものを用いて、同一のサーマルヘッドで、熱転写画像と保護層をそれぞれを熱転写シートを交換せずに、連続的に熱転写して、効率的に使用することができる。
【0029】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。尚、文中、部または%とあるのは特に断りのない限り質量基準とする。
【実施例1】
【0030】
厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材シートの一方の面に固形分で1μmの耐熱滑性層を設けておき、その基材シートの他方の面に、下記組成の剥離層塗工液を使用して、グラビアコートにより、乾燥時で1μmの厚さになるように塗工し、乾燥させて、剥離層を形成した。さらに、その剥離層の上に、下記組成の接着層塗工液を使用して、グラビアコートにより、乾燥時で1.5μmの厚さになるように塗工し、乾燥させて、接着層を形成して、実施例1の保護層転写シートを作製した。
【0031】
(剥離層塗工液)
ポリアミドイミド樹脂溶液 100部
(東洋紡績(株)製、バイロマックスHR15ET、平均分子量10,000、ガラス転移温度260℃、固形分20%、屈折率1.55)
【0032】
(樹脂組成物の調製)
下記の成分からなるポリエステル樹脂Aを定法により調製した。
(ポリエステル樹脂A:Tg=92℃、粘度平均分子量=5,000、屈折率1.55)
エチレングリコール 10モル%
トリシクロデカンジメタノール 90モル%
テレフタル酸 50モル%
イソフタル酸 50モル%
【0033】
(接着層塗工液)
ポリエステル樹脂A(上記の調整した樹脂組成物) 16部
ベンゾフェノン系紫外線吸収樹脂 4部
(BASFジャパン社製、UVA635L)
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 2部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、TINUVIN900)
メチルエチルケトン 39部
トルエン 39部
【実施例2】
【0034】
実施例1で使用した接着層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の保護層転写シートを作製した。
(接着層塗工液)
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂 10部
(日信化学工業(株)製、ソルバインCNL、屈折率1.53)
ベンゾフェノン系紫外線吸収樹脂 10部
(BASFジャパン社製、UVA635L)
メチルエチルケトン 40部
トルエン 40部
【0035】
(比較例1)
実施例1で使用した剥離層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の保護層転写シートを作製した。
(剥離層塗工液)
ポリメチルメタクリレート樹脂 20部
(三菱レイヨン(株)製、ダイヤナールBR−87、屈折率1.49)
メチルエチルケトン 40部
トルエン 40部
【0036】
(比較例2)
実施例1で使用した剥離層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の保護層転写シートを作製した。
(剥離層塗工液)
スチレン変性メチルメタクリレート樹脂 20部
(三菱レイヨン(株)製、ダイヤナールBR−50、屈折率1.56)
メチルエチルケトン 40部
トルエン 40部
【0037】
(使用する熱転写受像シートと保護層転写シート)
キヤノン(株)製昇華転写プリンタ(コンパクトフォトプリンター)CP−200専用受像紙とインクリボン(熱転写シート)を使用した。但し、インクリボンのオーバーコート部には、上記の実施例及び比較例で示した条件の保護層転写シートを、貼り込んで変更した。
【0038】
(印画条件)
キヤノン(株)製昇華転写プリンタCP−200を使用して、上記の熱転写受像シートと熱転写シートを用いて、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のベタ印画による黒ベタ画像を形成し、さらにその画像全面に保護層を転写して、印画物を形成した。
【0039】
(外観)
上記の保護層の転写された各印画物を、三波長形蛍光灯の下で観察し、反射光による虹状の干渉縞(ムラ)が生じているかどうか、肉眼で調べ、以下の判断基準で評価した。
○;外観上、虹状の干渉縞(ムラ)が認められなく、表面光沢性が高く、印画物の品位が良好である。
×;外観上、虹状の干渉縞(ムラ)が生じていて、印画物の品位が低いものである。
【0040】
(耐可塑剤性)
可塑剤入り軟質塩化ビニルシート(三菱化学(株)製アルトロン#480、厚み400μm))と印画物の保護層転写面を重ね合わせ、40g/cm2の荷重をかけて50℃環境下に60時間保存し、可塑剤による画像の劣化状態を目視により観察し、下記基準で保護層の耐可塑剤性を評価した。
○;可塑剤の影響を全く受けず、画像が良好である
△;可塑剤の影響を受け、一部画像が劣化する
×;画像全面に劣化が生じる
【0041】
上記の外観評価、耐可塑剤性の評価の結果を表1に示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の保護層転写シートの一つの実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1 保護層転写シート
2 基材シート
3 剥離層
4 接着層
5 耐熱滑性層
6 保護層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に、剥離層、接着層を順次積層した保護層転写シートにおいて、剥離層がポリアミドイミド樹脂を含有することを特徴とする保護層転写シート。
【請求項2】
前記の基材シート上の剥離層、接着層を順次積層した保護層と、同一基材シート上で保護層の設けられていない箇所に、染料層及び/または熱溶融性インキ層を、面順次に設けたことを特徴とする請求項1に記載する保護層転写シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−272927(P2006−272927A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100052(P2005−100052)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】