説明

保護材およびそれを用いた樹脂凸版の現像方法

【課題】長期間の使用によるセッターと樹脂凸版との粘着力低下を抑制し、長期間安定して現像することのできる保護材およびそれを用いた現像方法を提供すること。
【解決手段】現像機に樹脂凸版を保持するセッターに貼り付けられる保護材であって、セッターの樹脂凸版を保持していない部分の少なくとも一部に貼り付けられる、厚みが0.05mm以上である保護材およびそれを用いた樹脂凸版の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像機に樹脂凸版を保持するセッターに貼り付けられる保護材およびそれを用いた樹脂凸版の現像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物を印刷用版材として使用することは一般的に行われ、樹脂凸版、平版、凹版、フレキソ版印刷の各分野において主流となっている。樹脂凸版は、樹脂層に潜像を形成した後、現像によりレリーフ像を形成して印刷版として使用するものである。例えば、感光性樹脂層に潜像を形成する方法として、ネガティブまたはポジティブの原画フィルムを感光性樹脂層に密着させ、原画フィルムを通して活性光線を照射する方法や、コンピューター上で処理された情報をレーザーにより感光性樹脂層上に直接画像マスクを形成する、いわゆるCTP(computer to plate)方式により画像マスク形成後、活性光線を照射する方法が挙げられ、これらの方法により、樹脂層中に、溶剤に溶解する部分と溶解しない部分、もしくは硬化した部分と硬化しない部分とからなる潜像を形成する。また、樹脂凸版の現像方法としては、圧搾空気等を用いて未露光部を吹き飛ばす方法や、現像液を一定圧力によりスプレー状に噴射して未露光部を除去する方法や、現像液中に樹脂凸版を浸漬させ、または現像液を樹脂凸版面にシャワー状に噴射しながらブラシ等で未露光部をこすりだす方法が行われている。
【0003】
現像液中に樹脂凸版を浸漬させ、または現像液を樹脂凸版面にシャワー状に噴射しながらブラシ等で未露光部をこすりだす方法においては、ブラシでこすりだすために樹脂凸版を保持しなければならず、そのためセッターと呼ばれる板に樹脂凸版を貼付する方法がとられている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−133626号公報
【特許文献2】特開2003−241398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来公知のセッターは、表面に粘着層を有し、樹脂凸版の基板をセッターに貼付、剥離することが可能となっている。一般的に使用されるセッターは、保持される樹脂凸版よりも大きい面積を有しており、現像工程において、露出したセッター表面にブラシや現像液が接触することとなる。そのため、長期間使用すると樹脂凸版との粘着力が低下し、樹脂凸版を保持する能力が低下する課題があった。そこで、発明の目的は、上記課題に鑑み、長期間の使用によるセッターと樹脂凸版との粘着力低下を抑制し、長期間安定して現像することのできる保護材およびそれを用いた現像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、主として以下の特徴を有する保護材およびそれを用いた現像方法である。すなわち、現像機に樹脂凸版を保持するセッターに貼り付けられる保護材であって、セッターの樹脂凸版を保持していない部分の少なくとも一部に貼り付けられる、厚みが0.05mm以上である保護材およびそれを用いた現像方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の保護材により、長期間の使用によるセッターと樹脂凸版との粘着力の低下を抑制し、セッターの交換頻度を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の保護材の一態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
本発明は、現像機に樹脂凸版を保持するセッターに貼り付けられる保護材であって、セッターの樹脂凸版を保持していない部分の少なくとも一部に貼り付けられる保護材およびそれを用いた現像方法である。現像機は樹脂凸版を搬送しながら現像する形式であっても、樹脂凸版を固定して現像する形式であってもかまわない。一般的に、セッター表面には樹脂凸版を保持するために、粘着性のあるシリコーンゴム、ウレタンゴム、塩化ビニルやこれらの混合物などのシートが用いられている。
【0011】
本発明の保護材は、セッターの樹脂凸版を保持していない部分の少なくとも一部に貼り付けられ、セッター表面と、現像ブラシや現像液が直接に接触することを防止する役割を持つ。すなわち、現像ブラシがセッター表面に直接に接触することによるセッター表面の削れを抑制する効果を奏する。また、現像液がセッター表面に直接に接触することを防止することにより、現像液に溶解している樹脂凸版の成分がセッター表面上で硬化したりセッター表面と反応したりすることによる粘着性の劣化を抑制する効果を奏する。
【0012】
本発明の保護材は、セッターに貼り付けることができるよう平らな表面形状を持つフィルムや板であることが望ましく、アルミニウムやスチール、ステンレスなどの金属のフィルムや板、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂のフィルムや板などを用いることができる。これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。セッターへの貼付と剥離が容易であること、かつ現像工程で膨潤や抽出などによる変形が生じにくいことから、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。また、保護材表面にケミカルエッチングなどの表面処理が施されていてもよい。
【0013】
本発明において、保護材の形状はセッターの樹脂凸版を保持していない部分の少なくとも一部を覆うことができれば特に限定されず、例えば、外形がセッター形状と等しく、樹脂凸版相当部分をくり抜いた中抜長方形や、外形をブラシの回転位置にあわせた中抜楕円形などの形状が挙げられる。また、樹脂凸版の大きさや形状に応じて、帯状や短冊状の保護材を必要箇所に貼り付けることもできる。本発明の効果をより効果的に奏するために、セッターの樹脂凸版が保持されている箇所を除く全ての部分を覆うことが好ましい。
【0014】
本発明において、保護材の厚みは0.05mm以上であり、0.10mm以上が好ましい。厚みが0.05mm未満の場合、現像ブラシの圧力により保護材にしわが入り、保護材がセッターから剥離する場合がある。一方、現像性の観点から、保護材の厚みは、セッターに同時に貼付される樹脂凸版の厚み以下とすることが好ましい。保護材の厚みが樹脂凸版の厚み以下であれば、現像機のブラシから樹脂凸版により効果的に圧力を与えることができ、現像不良を抑制することができる。さらに、保護材の厚みと樹脂凸版の厚みとの差はより小さいことが好ましい。保護材の厚みと樹脂凸版の厚みとの差が小さい場合、現像機のブラシから樹脂凸版に与えられる圧力が保護材にも分散され、再現されるレリーフにかかる圧力が樹脂凸版端部までより均一化され、網点ハイライトのような小点の再現性が向上する傾向がある。
【0015】
図1に、本発明の保護材の一態様の概略図を示す。上段はセッターに樹脂凸版および保護材を貼り付けた上面図であり、下段はA−A’断面図である。長方形のセッター1に、セッター1よりも面積の小さい長方形の樹脂凸版2が貼り付けられ、セッター1の樹脂凸版2を保持していない部分全面に保護材3が貼り付けられている。
【0016】
保護材は、金属や熱可塑性樹脂を所望の形状に成形することにより作製される。金属板や熱可塑性樹脂フィルムを所望の形状に裁断して作製してもよいし、金属や熱可塑性樹脂を直接所望の形状に成形して作製してもよい。また、2層以上の板やフィルムを貼り合わせてもよいし、2以上の保護材の部材を組み合わせて所望の形状を得ることもできる。
【0017】
本発明の保護材とともに用いることができる樹脂凸版は、公知の樹脂凸版であれば制限はなく、基板上に接着層を介して樹脂層を有する樹脂凸版を挙げることができる。一般的には、厚み0.30mm〜2.0mm程度の樹脂凸版が好ましく用いられる。
【0018】
次に、上記の保護材を利用した樹脂凸版の現像方法について説明する。本発明の樹脂凸版の現像方法は、潜像を形成した樹脂凸版をセッターに保持する工程、セッターの樹脂凸版を保持しない部分の少なくとも一部に本発明の保護材を貼り付ける工程および現像液により可溶部を除去してレリーフ像を形成する工程を少なくとも含むものである。
【0019】
まず、樹脂凸版に潜像を形成する工程について説明する。樹脂凸版としてアナログ版を用いる場合は、原稿となるネガフィルムを樹脂凸版に真空密着し、適当量の紫外線を照射して絵柄を焼き付けることにより、樹脂凸版に潜像を形成する。また、樹脂凸版としてCTP版を用いる場合は、原稿を樹脂凸版に描画したのち、適当量の紫外線を照射して絵柄を焼き付けることにより、樹脂凸版に潜像を形成する。
【0020】
次に、潜像を形成した樹脂凸版をセッターの表面に保持する工程について説明する。表面に粘着力を持ったセッターに、潜像を形成した樹脂凸版を貼り付ける。例えば、基板上に樹脂層を有する樹脂凸版の場合、基板側がセッター表面に接触するように貼り付ける。
【0021】
次に、上記の保護材をセッターに貼り付ける工程により、上記保護材を樹脂凸版が保持されていないセッター表面の少なくとも一部にセッターからはみださないように貼り付ける。セッターの樹脂凸版が保持されている箇所を除く全ての部分を覆うことが好ましい。セッター表面は粘着性を有するため、保護材をセッター表面にのせて軽く抑えることにより貼り付けることができる。空気溜まりの発生を抑制するために、保護材の端部から順に、空気を押し出すように貼り付けることが好ましい。なお、潜像を形成した樹脂凸版をセッターの表面に保持する工程と、保護材をセッターに貼り付ける工程との順序は特に制限されず、保護材をセッターに貼り付けた後に、潜像を形成した樹脂凸版をセッター表面に貼り付けてもよい。
【0022】
その後、現像液により樹脂凸版の可溶部を除去してレリーフ像を形成する。現像には公知の現像機を用いることができ、セッターの搬送方式や樹脂凸版の可溶部除去方式は問わない。また、現像液としては、アルコールやその水溶液、水などの公知の現像液を用いることができる。また、現像液は界面活性剤などの添加剤を含有してもよい。現像時の現像液温は特に限定されず、10℃〜50℃の範囲で現像することが一般的である。
【実施例】
【0023】
以下に実施例により本発明を詳しく説明する。なお、各実施例および比較例における評価方法は以下のとおりである。
【0024】
1.現像性評価
(1)現像安定性
自動現像機を用いた実施例および比較例については、現像中のセッターを目視観察し、現像安定性を評価した。セッターがブラシの動きと連動して搬送方向で前後動することなく正常に搬送することができた場合には安定、セッターがブラシの動きと連動して搬送方向に対して前後に動いた場合には不安定と評価した。また、バッチ式現像機を用いた実施例および比較例については、現像後にセッターを目視観察し、現像安定性を評価した。樹脂凸版や保護材が剥離せず現像が終了した場合は安定、それらが剥離した場合は不安定と評価した。
(2)現像不良
現像処理後の樹脂凸版を25倍ルーペを用いて観察し、現像不良を評価した。樹脂凸版のレリーフ上や基板上に可溶樹脂が残存していた場合には現像不良ありと評価した。
(3)現像水侵入
現像処理後のセッターから保護材を取り外し、保護材が貼付されていた部分のセッター表面を目視観察し、現像水の浸入有無を評価した。
【0025】
2.セッター表面粘着力評価
セッターと樹脂凸版との粘着力の指標として、セッターの粘着力を以下の方法で測定した。
【0026】
300gの分銅の下面に積水化学(株)製「フィットライトテープNo.738」を5.0cm×5.0cmの大きさで貼付し、該テープ面がセッターの表面に当たるように置き、分銅を7.5cm/秒の速度でセッター表面を滑らせたときの抵抗力を(株)エー・アンド・デイ製のデジタルフォースゲージ「AD−4932−50N」を用いて測定した。
【0027】
3.画像再現性評価
各実施例および比較例により得られた樹脂凸版の網点部を25倍ルーペを用いて観察し、175線3%の網点300個中の網点再現個数を数えた。
【0028】
(実施例1)
東レ(株)製の感光性樹脂凸版「富士トレリーフ WF95DII」(以下、「WF95DII」)と記載する)に原稿となるネガフィルム(175線3%の網点300個を含む)を真空密着し、20Wケミカル灯を用いて紫外線を1400mJ/cm照射して絵柄を焼き付け、潜像を形成した。潜像を形成した「WF95DII」を東レ(株)製のセッター「FTP460ST−N」に貼り付け固定した後、「WF95DII」が貼り付けられていない部分に、保護材として、東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”(登録商標)の0.10mm厚を貼り付けた。なお、セッターの表面粘着力を測定したところ、508mN/cmであった。
【0029】
潜像を形成した「WF95DII」および保護材を貼り付けたセッターを、東レ(株)製自動現像機「FTP640IID」に通して現像処理を行った。現像水温度は40℃、現像メモリは65に設定した。その結果、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。その後、セッターから保護材を取り外し、保護材が貼付されていた部分のセッター表面を目視観察したところ、現像水の浸入は認められなかった。また、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力を測定したところ、510mN/cmであり、現像処理前と同等であった。また、画像再現性を評価したところ、175線3%の網点再現個数が18個であった。
【0030】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、現像性およびセッター表面粘着力を同様に評価したところ、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。現像処理を1800回、3000回、5000回行った後のいずれも現像水の浸入は認められなかった。また、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力を測定したところ、それぞれ510mN/cm、509mN/cm、505mN/cmであり、いずれも現像処理前と同等であった。
【0031】
(実施例2)
「WF95DII」に実施例1と同様にして絵柄を焼き付け、潜像を形成した。潜像を形成した「WF95DII」を(株)タカノ機械製作所製バッチ式現像機“DX−A3”のセッターに貼り付け固定した後、「WF95DII」が貼り付けられていない部分に、実施例1と同様の保護材を貼り付けた。なお、セッターの表面粘着力を測定したところ、470mN/cmであった。保護材とともにセッターに貼り付けられた潜像を形成した「WF95DII」を、“DX−A3”を用いて現像処理を行った。現像水温度は25℃、現像時間は2分間とした。その結果、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。その後、セッターから保護材を取り外し、実施例1と同様に評価したところ、現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力は469mN/cmであり、現像処理前と同等であった。また、画像再現性は、網点再現個数が35個であった。
【0032】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、実施例1と同様に評価したところ、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。また、保護材が貼付されていた部分に現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力はそれぞれ473mN/cm、474mN/cm、469mN/cmであり、現像処理前と同等であった。
【0033】
(実施例3)
セッターの保護材として厚さ0.05mmの東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”を用いた以外は実施例1と同様の手法で現像処理を行ったところ、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。なお、セッターの表面粘着力を測定したところ、510mN/cmであった。その後、実施例1と同様に評価したところ、現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力は、500mN/cmであり、現像処理前と同等であった。また、画像再現性は、網点再現個数が12個であった。
【0034】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、実施例1と同様に評価したところ、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。また、保護材が貼付されていた部分に現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力はそれぞれ510mN/cm、509mN/cm、505mN/cmであり、いずれも現像処理前と同等であった。
【0035】
(実施例4)
セッターの保護材として厚さ0.05mmの東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”を用いた以外は実施例2と同様の手法で現像処理を行ったところ、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。なお、セッターの表面粘着力を測定したところ、469mN/cmであった。その後、実施例1と同様に評価したところ、現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力は470mN/cmであり、現像処理前と同等であった。また、画像再現性は、網点再現個数が30個であった。
【0036】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、実施例1と同様に評価したところ、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。また、保護材が貼付されていた部分に現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力はそれぞれ473mN/cm、474mN/cm、469mN/cmであり、現像処理前と同等であった。
【0037】
(実施例5)
セッターの保護材として厚さ1.70mmのアクリル樹脂板を用いた以外は実施例1と同様の手法で現像処理を行ったところ、終始安定して現像することができたが、感光性樹脂凸版にかかるブラシ圧が低下し現像不良が発生する場合があった。なお、セッターの表面粘着力を測定したところ、501mN/cmであった。その後、セッターから保護材を取り外し、実施例1と同様に評価したところ、現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力は503mN/cmであり、現像処理前と同等であった。一方、現像不良が発生したため、画像再現性を評価することができなかった。
【0038】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、実施例1と同様に評価したところ、終始安定して現像することができたが、現像不良が発生する場合があった。また、保護材が貼付されていた部分に現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力はそれぞれ500mN/cm、504mN/cm、502mN/cmであり、いずれも現像処理前と同等であった。
【0039】
(実施例6)
セッターの保護材として厚さ1.70mmのアクリル樹脂板を用いた以外は実施例2と同様の手法で現像処理を行ったところ、終始安定して現像することができたが、感光性樹脂凸版にかかるブラシ圧が低下し現像不良が発生する場合があった。なお、セッターの表面粘着力を測定したところ、460mN/cmであった。その後、セッターから保護材を取り外し、実施例1と同様に評価したところ、現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力は463mN/cmであり、現像処理前と同等であった。一方、現像不良が発生したため、画像再現性を評価することができなかった。
【0040】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、実施例1と同様に評価したところ、終始安定して現像することができたが、現像不良が発生する場合があった。また、保護材が貼付されていた部分に現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力はそれぞれ465mN/cm、467mN/cm、459mN/cmであり、いずれも現像処理前と同等であった。
【0041】
(実施例7)
セッターの保護材として厚さ0.95mmの東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”を用いた以外は実施例1と同様の手法で現像処理を行ったところ、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。なお、セッターの表面粘着力を測定したところ、507mN/cmであった。その後、実施例1と同様に評価したところ、現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力は512mN/cmであり、現像処理前と同等であった。また、画像再現性は、網点再現個数が130個であった。
【0042】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、実施例1と同様に評価したところ、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。また、保護材が貼付されていた部分に現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力はそれぞれ509mN/cm、508mN/cm、504mN/cmであり、いずれも現像処理前と同等であった。
【0043】
(実施例8)
セッターの保護材として厚さ0.95mmの東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”を用いた以外は実施例2と同様の手法で現像処理を行ったところ、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。なお、セッターの表面粘着力を測定したところ、473mN/cmであった。その後、実施例1と同様に評価したところ、現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力は469mN/cmであり、現像処理前と同等であった。また、画像再現性は、網点再現個数が198個であった。
【0044】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、実施例1と同様に評価したところ、終始安定して現像することができ、現像不良は認められなかった。また、保護材が貼付されていた部分に現像水の浸入は認められず、保護材が貼付されていた部分のセッターの表面粘着力はそれぞれ470mN/cm、470mN/cm、472mN/cmであり、いずれも現像処理前と同等であった。
【0045】
(比較例1)
保護材を用いなかった以外は実施例1と同様にして現像処理を行ったところ、セッターの搬送が不安定となる場合があった。現像不良は認められなかった。なお、現像前のセッターの表面粘着力は508mN/cmであり、現像後のセッターの表面粘着力は510mN/cmであった。現像後のセッター表面には現像水が接触していた。また、画像再現性は、網点再現個数が15個であった。
【0046】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、実施例1と同様に評価したところ、安定して現像することができない場合があった。現像不良は認められなかった。また、セッターの表面粘着力はそれぞれ425mN/cm、65mN/cm、60mN/cmと現像処理前よりも低下しており、感光性樹脂凸版の保持力も低下していた。
【0047】
(比較例2)
保護材を用いなかった以外は実施例2と同様にして現像処理を行ったところ、終始安定して現像することができた。現像不良は認められなかった。なお、現像前のセッターの表面粘着力は470mN/cmで、現像後のセッターの表面粘着力は469mN/cmであった。現像後のセッター表面には現像水が接触していた。また、画像再現性は、網点再現個数が30個であった。
【0048】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、実施例2と同様に評価したところ、終始安定して現像することができた。現像不良は認められなかった。また、セッターの表面粘着力はそれぞれ404mN/cm、342mN/cm、277mN/cmと現像処理前よりも低下しており、感光性樹脂凸版の保持力も低下していた。
【0049】
(比較例3)
セッターの保護材として厚さ0.023mmの東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”を用いた以外は実施例1と同様の手法で現像処理を行ったところ、ブラシの圧力により保護材にしわが入り、セッターから保護材が剥離した。さらに、剥離した保護材が「WF95DII」上に重なり、現像不良が発生する場合が認められた。また、セッターがブラシの動きと連動して搬送方向に前後動し、安定して現像することができない場合があった。その後、セッター表面を目視観察したところ、現像水が接触していた。なお、現像前のセッターの表面粘着力は508mN/cmであり、現像後のセッターの表面粘着力は507mN/cmであった。一方、現像不良が発生したため、画像再現性を評価することができなかった。
【0050】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、実施例1と同様に評価したところ、剥離した保護材が「WF95DII」上に重なり、現像不良が発生する場合が認められた。また、セッターがブラシの動きと連動して搬送方向に前後動し、安定して現像することができない場合があった。セッター表面には現像水が接触していた。また、セッターの表面粘着力はそれぞれ430mN/cm、67mN/cm、60mN/cmと現像処理前よりも低下しており、感光性樹脂凸版の保持力も低下していた。
【0051】
(比較例4)
セッターの保護材として厚さ0.023mmの東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”を用いた以外は実施例2と同様の手法で現像処理を行ったところ、ブラシの圧力により保護材にしわが入り、セッターから保護材が剥離したため、現像安定性は不安定であった。さらに剥離した保護材が「WF95DII」上に重なり、現像不良が発生する場合が認められた。その後、セッター表面を目視観察したところ、現像水が接触していた。なお、現像前のセッターの表面粘着力は470mN/cmであり、現像後のセッターの表面粘着力は469mN/cmであった。一方、現像不良が発生したため、画像再現性を評価することができなかった。
【0052】
さらに上記現像処理を1800回、3000回、5000回と繰り返し、実施例1と同様に評価したところ、セッターから保護材が剥離したため、現像安定性は不安定であった。また、剥離した保護材が「WF95DII」上に重なり、現像不良が発生する場合が認められた。セッター表面には現像水が接触していた。また、セッターの表面粘着力はそれぞれ410mN/cm、350mN/cm、281mN/cmと現像処理前よりも低下しており、感光性樹脂凸版の保持力も低下していた。
【0053】
各実施例および比較例の評価結果をまとめて表1に示す。
【0054】
【表1】

【符号の説明】
【0055】
1 セッター
2 樹脂凸版
3 保護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像機に樹脂凸版を保持するセッターに貼り付けられる保護材であって、セッターの樹脂凸版を保持していない部分の少なくとも一部に貼り付けられる、厚みが0.05mm以上である保護材。
【請求項2】
ポリエステルフィルムからなる請求項1記載の保護材。
【請求項3】
厚みが樹脂凸版の厚み以下である請求項1または2記載の保護材。
【請求項4】
潜像を形成した樹脂凸版をセッターに保持する工程、セッターの樹脂凸版を保持しない部分の少なくとも一部に請求項1〜3いずれか記載の保護材を貼り付ける工程および現像液により可溶部を除去してレリーフ像を形成する工程を少なくとも含む樹脂凸版の現像方法。

【図1】
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