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保護膜の性能評価方法および保護膜の性能評価装置
説明

保護膜の性能評価方法および保護膜の性能評価装置

【課題】金属材料をはじめ種々の導電性材料に形成させて用いられる保護膜について、定量的に精度よく保護性能を評価する方法および評価装置を提供する。
【解決手段】導電性材料の表面に保護膜を形成し、導電性液体中で前記導電性材料の自然浸漬電位の経時変化を測定する。この方法によれば、形成された保護膜が前記導電性液体と前記導電性材料を絶縁している期間(時間)を測定することで、定量的に精度よく保護性能を評価できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の導電性材料の表面に形成される保護膜の性能評価方法および当該保護膜の性能評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防錆油の防錆性(防錆効果発揮期間)は、鋼板に塗布した後、需要家の実環境あるいは軒下や室内などに暴露して、さび始めるまでの日数とさびの程度を目視観察により評価している(例えば、非特許文献1参照)。目視観察の方法は、たとえば、JIS K2246 6.4の「さび発生度測定方法」に規定されている。具体的には、測定面に当る部分に、幅約0.5mmの刻み線で、一辺が5mmの正方形の碁盤目を100個刻んだ測定板を試験片に重ね合わせ、肉眼で1点以上のさびが発生している碁盤目の数を数える方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】出光トライボレビュー No.27 P1685〜1688
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載されているような目視観察は定性的であり個人による判定誤差が大きい。また、小さな試験片では、目視観察自体が困難である。
一方、Fe-Cu-C焼結鋼等の鉄系金属材料は腐食しやすいため、表面を保護する防錆油についてはその性能を定量的に評価する必要があるが、上述した従来の方法では、保護性能を定量的に精度よく評価することは困難である。
【0005】
本発明は、金属材料をはじめ種々の導電性材料に形成させて用いられる保護膜について、定量的に精度よく保護性能を評価する方法および評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、油剤を塗布した金属材料の表面に水膜を形成して自然浸漬電位の経時変化を測定することにより、金属材料を保護している油剤の防錆効果発揮期間を定量的に評価できることを見いだした。本発明は、この知見をもとに完成されたものであり、以下に示すような保護膜の性能評価方法および保護膜の性能評価装置を提供するものである。
【0007】
(1)導電性材料の表面に形成された保護膜の性能を評価する方法であって、導電性液体中で前記導電性材料の自然浸漬電位の経時変化を測定することを特徴とする保護膜の性能評価方法。
(2)上述の(1)に記載の保護膜の性能評価方法において、自然浸漬電位を測定するための回路における照合電極用導電性溶液に浸漬した電極と前記導電性材料との間には、電気抵抗を有する抵抗部材が備えられ、前記抵抗部材の電気抵抗値が、電位計の内部電気抵抗値とブリッジ側の電気抵抗値との間の値であることを特徴とする保護膜の性能評価方法。
(3)上述の(1)または(2)に記載の保護膜の性能評価方法において、前記導電性材料が金属材料であることを特徴とする保護膜の性能評価方法。
(4)上述の(1)から(3)までのいずれか1つに記載の保護膜の性能評価方法において、前記保護膜が油剤であることを特徴とする保護膜の性能評価方法。
(5)上述の(4)に記載の保護膜の性能評価方法において、前記油剤が防錆油であることを特徴とする保護膜の性能評価方法。
(6)上述の(1)から(5)までのいずれか1項に記載の保護膜の性能評価方法において、前記導電性液体が水溶液であることを特徴とする保護膜の性能評価方法。
(7)上述の(6)に記載の保護膜の性能評価方法において、前記水溶液が前記保護膜の上に形成された水膜であることを特徴とする保護膜の性能評価方法。
(8)導電性材料の表面に形成された保護膜の性能を評価する装置であって、導電性液体中で前記導電性材料の自然浸漬電位の経時変化を測定する自然浸漬電位測定回路を備え、前記自然浸漬電位測定回路は、照合電極用導電性溶液に浸漬した電極と前記導電性材料との間に、電気抵抗を有する抵抗部材を有し、前記抵抗部材の電気抵抗値が、電位計の内部電気抵抗値とブリッジ側の電気抵抗値との間の値であることを特徴とする保護膜の性能評価装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属材料をはじめ種々の導電性材料に形成させて用いられる保護膜について、定量的に精度よく保護性能を評価する方法および評価装置を提供することができる。例えば、種々の金属材料に塗布して用いられる防錆油について、定量的に精度よく防錆性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態および実施例における自然浸漬電位測定回路を示す概略図。
【図2】実施例において、試験油塗布後の自然浸漬電位の経時変化を示す図(無塗布状態との比較)。
【図3】実施例において、試験油塗布後の自然浸漬電位の経時変化を示す図(市販油との比較)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、導電性材料として金属材料を用い、評価の対象としての保護膜は油剤を塗布して形成した。また、保護性能としては防錆性を評価した。
図1に、本発明を実施するための、自然浸漬電位測定回路を示す。ここで、自然浸漬電位とは、腐食電位ともいうが、対象とする金属を導電性液体に浸漬した電位と照合電極(基準電極)の電位との電位差である。
【0011】
防錆試験の対象となる金属材料は、上下動が可能なようにラボジャッキの上に乗せられており、金属材料の上には、評価対象となる油剤(試験油)が塗布されている。試験油の上には所定厚みの水膜が形成されている。
水膜は、キャピラリーにより、所定濃度のNaCl水溶液にブリッジを介して接続されている。また、このNaCl水溶液は、塩橋を介して飽和KCl水溶液(照合電極用導電性溶液)に電気的に接続されている。一方、金属材料は、電位計(本実施形態では、ポテンショスタット)の内部電気抵抗値(例えば10GΩ以上の高抵抗値)とブリッジ側の電気抵抗値(例えば10kΩ未満の低抵抗値)との間の電気抵抗値(例えば10kΩ以上10GΩ未満の中抵抗)を有する抵抗部材を介して飽和KCl水溶液中に浸漬した電極(Pt、Au等の貴金属電極あるいは炭素電極)に接続されている。そして、飽和KCl水溶液における照合電極は、ポテンショスタットを介して金属材料に接続されている。
なお、図1では、試験油が塗布された金属表面を水平にしてその上に水膜を形成しているが、試験油が塗布された金属材料をNaCl水溶液にどぶ付けしてもよい。
【0012】
上述した自然浸漬電位測定回路により、自然浸漬電位を連続して測定すると(水膜試験)、金属材料とNaCl水溶液との間に試験油が存在して導通がない場合は、抵抗部材(中抵抗)を介して、飽和KCl水溶液中に浸漬した電極(Pt、Au等の貴金属電極あるいは炭素電極)の電位を測定することになる。この場合には、ほぼ0Vが測定される。
一方、試験油の防錆性がなくなると、金属材料とNaCl水溶液との間の試験油が油膜切れを起こし、金属材料とNaCl水溶液が局部的に直接接触する。その場合、金属材料の自然浸漬電位を測定することになる。ちなみに、防錆の対象となる金属材料は、自然浸漬電位が低いため、金属材料とNaCl水溶液が直接接触する場合には、測定される電位は大きく低下する。
【0013】
結局、試験油が、金属材料とNaCl水溶液との間の導通を遮断している場合は、ほぼ0Vを示し、逆に金属材料とNaCl水溶液が一部でも接触している場合は、金属材料の自然浸漬電位を測定することになる。
それ故、本実施形態における評価方法および評価装置により、試験油の防錆性(防錆効果発揮期間)を定量的に精度よく評価できることになる。特に、飽和KCl水溶液(照合電極用導電性溶液)と金属材料が所定の電気抵抗値を有する抵抗部材(例えば10kΩ以上10GΩ未満の中抵抗)で接続されていると、試験油により、金属材料とNaCl水溶液との間に導通がない場合でも安定してほぼ0Vが測定される。そのため、油膜切れ状態でのみ示される低い自然浸漬電位を0Vと区別して示すことができる。
また、電位計としては、市販のテスターも使用可能であるが、ポテンショスタットを用いることで、極めて精度よく電位を測定できる。
【0014】
上述した本実施形態における評価方法および評価装置は、特に、鉄を含有しているため腐食しやすい金属材料や焼結金属材料に使用される防錆油の性能を評価する際に有効である。また、種々の形状に対しても柔軟に適用可能であり、鋼板だけでなく、精密機械部品の歯車など小さな部品にも適用できる。それ故、汎用性が極めて高い。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本発明は、金属材料に限らず、導電性材料であれば適用可能である。また、保護膜は、防錆油のような油剤に限定されず、固体や粘弾性体であってもよい。保護性能としては防錆性に限らない。
【実施例】
【0015】
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0016】
[実施例]
〔試料の選定〕
Fe-Cu-C焼結鋼は、粉末冶金を利用して複雑形状に容易に成形でき、しかも焼結による体積収縮をコントロールできる特徴を持ち、その工業的需要は大きい。しかしながら化学成分にはCおよびCuを含み、電気化学的にはカソードサイトが多く存在するため腐食しやすい。そこで腐食を防止するため、防錆油が用いられているが、ベタ付きによる作業性の低下と防錆性には相反する特性がある。ベタ付きによる作業性低下と防錆性を両立させるためには防錆油の開発が急務であるが、従来の方法では、防錆性を簡便にかつ定量的に評価する方法は確立されていない。
そこで、本実施例では、Fe-Cu-C焼結鋼を試料として選定し、本発明の方法(水膜試験法)を用いて各試験油の防錆性を定量的に評価することを試みた。
【0017】
〔試料の前処理〕
本実験では、実際の量産品であるFe-Cu-C焼結鋼製の歯車を試料として用いた。この試料にリード線を付けて樹脂埋めし、試料電極とした。試料の平面部をエメリー紙で発熱に注意して2000番まで順次乾式研磨し、アセトンで脱脂後、乾燥させた。続いて試験油に浸潰し、そのまま真空デシケータ内に保持し、0.9ks間減圧し、試験油を含浸させた。
【0018】
〔試験油〕
(1)市販防錆油A
(2)市販防錆油B
【0019】
〔水膜試験〕
図1の自然浸漬電位測定回路を用いて水膜試験を行った。具体的には、以下の通りである。
防錆試験の対象となる試料(金属材料)は、上下動が可能なようにラボジャッキの上に載せられており、試料の上には、評価対象となる試験油が塗布されている。試験油の上には水膜が形成されており、この水膜は、キャピラリーにより、0.35質量%のNaCl水溶液にブリッジを介して接続されている。また、このNaCl水溶液は、塩橋を介して飽和KCl水溶液に電気的に接続されている。また、飽和KCl水溶液は、金属材料に対し、3.3MΩの中抵抗で接続されている。そして、飽和KCl水溶液における照合電極(Ag/AgCl/3.33kmol/mKCl)(堀場製作所製2660A−10T)は、ポテンショスタット(北斗電工製HA−301)を介して金属材料に接続されている。
上述した回路を用いて試料とNaCl水溶液間の接続状況を調べた。
【0020】
[評価結果]
図2には、水膜試験法による試験油の影響を明らかにするために、試験油(市販防錆油A)を塗布した場合と試験油を塗布しない場合(油無)の結果を比較して示した。
図2に示すように、試験油を塗布しない場合、試験開始直後では、電位が0.01Vを示したが時間の経過にともない急に低下して―0.58Vで安定した。これに対して、試験油を塗布した場合では、試験開始後ではほぼ0Vを示し、瞬間的に低い電位を示したが、すぐに0Vに回復した。時間の経過にともない低い電位を示す頻度が多くなり、132ks経過以降は−0.58Vを連続的に示すこと、および水膜内に微量な赤さびが観察され始めることから、防錆性は失われたと判定し、この場合の油膜の保護期間は132ksと言える。このように、本発明の方法(装置)によれば、試験油の防錆性を定量的に評価できることがわかる。
また、図3は、市販防錆油Aと市販防錆油Bの結果を比較して示したものである。市販防錆油Bの防錆性(防錆効果発揮期間)は、6.75ksであり、市販防錆油Aのそれより劣る。また、市販防錆油Aと市販防錆油Bの防錆性にどの程度の差があるかも定量的に推定できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、例えば、各種の鋼板や精密機械部品などに塗布して用いられる油剤の防錆性評価方法として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料の表面に形成された保護膜の性能を評価する方法であって、
導電性液体中で前記導電性材料の自然浸漬電位の経時変化を測定する
ことを特徴とする保護膜の性能評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の保護膜の性能評価方法において、
自然浸漬電位を測定するための回路における照合電極用導電性溶液に浸漬した電極と前記導電性材料との間には、電気抵抗を有する抵抗部材が備えられ、
前記抵抗部材の電気抵抗値が、電位計の内部電気抵抗値とブリッジ側の電気抵抗値との間の値である
ことを特徴とする保護膜の性能評価方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保護膜の性能評価方法において、
前記導電性材料が金属材料である
ことを特徴とする保護膜の性能評価方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の保護膜の性能評価方法において、
前記保護膜が油剤である
ことを特徴とする保護膜の性能評価方法。
【請求項5】
請求項4に記載の保護膜の性能評価方法において、
前記油剤が防錆油である
ことを特徴とする保護膜の性能評価方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の保護膜の性能評価方法において、
前記導電性液体が水溶液である
ことを特徴とする保護膜の性能評価方法。
【請求項7】
請求項6に記載の保護膜の性能評価方法において、
前記水溶液が前記保護膜の上に形成された水膜である
ことを特徴とする保護膜の性能評価方法。
【請求項8】
導電性材料の表面に形成された保護膜の性能を評価する装置であって、
導電性液体中で前記導電性材料の自然浸漬電位の経時変化を測定する自然浸漬電位測定回路を備え、
前記自然浸漬電位測定回路は、照合電極用導電性溶液に浸漬した電極と前記導電性材料との間に、電気抵抗を有する抵抗部材を有し、
前記抵抗部材の電気抵抗値が、電位計の内部電気抵抗値とブリッジ側の電気抵抗値との間の値である
ことを特徴とする保護膜の性能評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−72647(P2013−72647A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209547(P2011−209547)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【Fターム(参考)】