説明

保護膜用樹脂組成物

本発明は2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、溶剤及び比表面積換算法により測定された平均粒子径が50nm以下であり、PHが6〜8であり、かつアルカリ金属分が5ppm以下のシリカ微粒子のコロイド状スラリーを含有する保護膜用樹脂組成物に関するもので、従来からの要求性能である密着性、可視光透過性を満足し、かつ基材表面が平坦化されていない場合であっても高い表面平滑性を有する保護膜を形成するとともに、該樹脂組成物は保存安定性が良く、液晶汚染性もなく、更に、該樹脂組成物から得られた硬化膜は高温耐性、特には耐ITO性に優れているので、該樹脂組成物は液晶表示用カラーフィルター着色樹脂膜の保護膜を形成するのに適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保護膜形成用に好適な樹脂組成物に関し、特にガラス基板等の表面に形成された着色膜(例えば着色樹脂膜)上に設けられる保護膜として耐熱性に優れた膜を与える、保存安定性の良好な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、その製造工程中に、溶剤、酸、アルカリ溶液等に浸漬され、又、ITO(Indium Tin Oxide)層形成時にスパッタリングにより素子表面が局部的に高温に曝される。このような過酷な条件から素子の劣化や損傷を防止するために、これらに対する耐性を有する保護膜の形成が一般的に行われている。このような保護膜は上記要求特性の他、液晶汚染度が低いこと、平滑性を有していること、保護膜を形成する基材及び保護膜上に形成される層に対する密着性が良好であること、液晶表示の明るさを低下させないために可視光透過率が高いこと、着色、白化、黄変等の経時変化のないこと、衝撃、歪などに耐えられる靭性を有すること等が要求されている。更に、生産性、取り扱い上の理由から、塗布時の、或いは長期間保存時の高い経時安定性が望まれている。
【0003】
従来保護膜用材料としては、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が提案されているが、特に、近年、配向膜形成やITOの蒸着温度の高温化に伴い、耐熱性に対する要求が強くなってきており、すべての要求特性を満足するというバランスのとれた材料は未だ見出せていないのが現状である。
例えば、メラミン樹脂は耐熱性は良いがガラス基板との密着性が極端に悪く、基板やフィルター上でハジキを生じやすいという問題点がある。ポリイミド樹脂は高い耐熱性を有する反面、透明性が不十分な上に樹脂の保存安定性に欠ける点や、溶解性が悪く使用できる有機溶剤がカラーフィルターを侵す恐れがある等の問題がある。アクリル樹脂は可視光透過率には優れているが耐熱性が不十分であり、高温下で膜表面にしわやクラックが生じるという問題点がある。このような問題を解決すべく、エポキシ樹脂で被覆された透明フィラーを用いた組成物が提案されているが、フィラーの純度や保存安定性の面で不十分である。(特許文献1参照。)又、エポキシ基を有するアクリル樹脂や、エポキシ樹脂とo−クレゾールノボラック系硬化剤を用いた保護膜(特許文献2,3参照。)も検討されているが、密着性が不十分であったり、或いは、やはりITO蒸着時の熱による膜の黄変、しわ、クラックのため光の透過率が低下するといった問題点がある。黄変性を克服すべく、硬化剤に酸無水物を使用する試みもなされているが、その反応性、吸湿性の点から保存安定性に問題があり、更に、溶解性の点で使用できる有機溶剤が限られている上、その溶剤の安全性に問題がある等の問題点が残されている。また、水や温水に長時間接触した場合の耐水性、透湿性を改善した傷の付きにくい保護膜を得るために、溶剤を実質的に含有しない、コロイダルシリカを含む特定なシリルアクレートの加水分解物、多官能アクリレートモノマー及び光重合開始剤を含む組成物で、カラーフィルター上に保護膜を形成させる方法が特許文献4に開示されている。該方法においては酸性のコロイダルシリカが好ましいとされ、また、二重の保護膜を形成させることが好ましい旨記載されている。この保護膜はITO耐性、耐水性、透湿性等に優れると思われるが、二重の保護膜を形成させるのは手数がかかること、また、樹脂組成物の保存安定性に触れられておらず、その点で問題がある可能性がある等の点で、更なる改良が望まれる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−315249号公報
【特許文献2】特開平5−140274号公報
【特許文献3】特開平5−140267号公報
【特許文献4】特開平11−231120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、2重の保護膜とすることなく、良好な耐熱性、耐水性と可視光透過性を有し、特に液晶表示用カラーフィルター着色樹脂膜の保護膜とした場合、高い表面平滑性を有し、ITO蒸着時の耐性に優れた保護膜を形成することができ、かつ保存安定性の良好な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、保護膜形成等においてフィラー等として配合されることのあるコロイド状シリカを、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂又は多官能性アクリル樹脂等の多官能性モノマー、特に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に配合して保護膜用の樹脂組成物として使用する場合、従来あまり問題とされていなかったコロイド状シリカにおけるアルカリ金属含量及びpHが保護膜の性質や保存安定性に大きな影響を及ぼすことを見出し本発明を完成した。即ち本発明は特定の物性(低アルカリ含量及びpH6〜8等)を有するシリカ微粒子を分散させたコロイド状スラリーを、多官能性モノマー特に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に配合して保護膜用樹脂組成物とすることにより、該樹脂組成物から良好なITO蒸着耐性を有する保護膜を得ることができ、かつ、該樹脂組成物は優れた保存安定性を有することを見出した。
即ち、本発明は、
【0007】
(1)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、溶剤及び比表面積換算法により測定された平均粒子径が50nm以下であり、PHが6〜8であり、かつアルカリ金属分が5ppm以下のシリカ微粒子のコロイド状スラリーを含有する保護膜用樹脂組成物、
(2)コロイド状スラリー中のシリカ微粒子(固形分)が、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤の総量100質量部に対して10〜150質量部である前項(1)に記載の樹脂組成物、
(3)硬化剤が環状テルペン骨格含有多価フェノールである前項(1)又は(2)に記載の樹脂組成物。
(4)環状テルペン骨格含有多価フェノールが、環状テルペン化合物一分子にフェノール類2分子を付加させた化合物及び/又はそれに酸性触媒の存在下にアルデヒド類及び/又はケトン類を縮合反応させて得られた化合物である前項(3)に記載の樹脂組成物、
(5)硬化促進剤が、イミダゾール系促進剤である前項(1)〜(4)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
(6)アクリル系樹脂、溶剤及びBET比表面積換算法により測定された一次平均粒子径が50nm以下であり、PHが6〜8であり、かつ含有金属分が5ppm以下のシリカ微粒子のコロイド状スラリーを含有する保護膜用樹脂組成物、
(7)保護膜用樹脂組成物を、膜厚1μmになるように成膜した時の透過率が、400nmにおいて95%以上である前項(1)〜(6)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
(8)カラーフィルターの保護膜用である前項(1)〜(7)項の何れか1項に記載の樹脂組成物、
(9)前項(1)〜(8)の何れか1項に記載の樹脂組成物を硬化させた実質的に透明な保護膜、
(10)前項(9)に記載の保護膜を有するカラーフィルターを備えた液晶表示装置、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の保護膜用樹脂組成物は、保存安定性に優れ、作業性も良好であるうえ、透明性に優れ、また、特に高いITO耐性、高い表面平滑性、高い耐水性等の優れた性質を有する硬化膜を形成することができるので、着色樹脂膜等の保護膜の形成に適している。従って該樹脂組成物をカラー液晶表示装置におけるカラーフィルター等の保護膜形成に用いるとき、該装置の信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下において「%」および「部」は、特記しない限りそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0010】
本発明の保護膜用樹脂組成物に用いられるシリカ微粒子のコロイド状スラリーは、保護膜としての高い透明性の維持、及びろ過工程時の目詰まり等を考慮すると、比表面積換算法により測定されたシリカ微粒子の平均粒子径が50nm以下、好ましくは45nm以下、より好ましくは35nm以下のものが適している。
【0011】
また、本発明者らの検討によれば、保護膜用樹脂組成物に用いられるシリカ微粒子のコロイド状スラリー中のアルカリ金属分(Na等)が、カラーフィルターの液晶表示装置の液晶を汚染するおそれがあることから、該汚染が起こりにくいよう、本発明の樹脂組成物に用いられるシリカ微粒子のコロイド状スラリー中のアルカリ金属分(Na等)の濃度は、5ppm以下、好ましくは3ppm以下、より好ましくは1ppm以下である。
【0012】
本発明の樹脂組成物に用いられるシリカ微粒子のコロイド状スラリーのpHは、樹脂成分の反応性及び該樹脂組成物の保存安定性等に対して影響あるので、その溶液のPHは6〜8、好ましくは6.5〜7.5、更に好ましくは7.0〜7.5の中性領域である。
【0013】
本発明の樹脂組成物に用いられるシリカ微粒子のコロイド状スラリーは、一般的には特開2004−91220号公報に記載の方法若しくはそれに準じて、珪酸エステルを加水分解することによって得ることもできるが、例えばクオートロン PLシリーズ(商品名、扶桑化学工業(株)製)として市販されているものを市場から容易に入手することが出来る。
【0014】
シリカ微粒子のコロイド状スラリーの配合量としては、組み合わせる樹脂成分により異なるが、シリカ微粒子固形分として、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤の総量(以下これら3成分を合わせて単に樹脂成分ともいう)100部に対し、通常10〜150部、好ましくは20〜100部、更に好ましくは25〜80部配合するのが良い。
【0015】
本発明の樹脂組成物に用いられる樹脂は、多官能性の硬化性樹脂であればいずれも使用しうるが、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂及び/またはアクリル系樹脂が好ましく、前者がより好ましい。
2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、例えばポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、脂環式多官能エポキシ樹脂、脂肪族系多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル系多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン系多官能エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化した多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0016】
ポリフェノール類化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル]プロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4'−ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4'−ビフェノール、ジメチル−4,4'−ビフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログリシノール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂が挙げられる。
【0017】
各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等のビスフェノール類、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
【0018】
脂環式多官能エポキシ樹脂としてはシクロヘキサン等の脂肪族環骨格を有する脂環式多官能エポキシ樹脂、脂肪族系多官能エポキシ樹脂としては1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのグリシジルエーテル類、複素環式多官能エポキシ樹脂としてはイソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂としてはヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸エステル類からなるエポキシ樹脂、グリシジルアミン系多官能エポキシ樹脂としてはアニリン、トルイジン等のアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としてはブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が挙げられる。
【0019】
これらのエポキシ樹脂のうち、耐熱性、透明性を考慮すると、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル]プロパン、ビスフェノールA、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、シクロヘキサン等の脂肪族環骨格を有する脂環式多官能エポキシ樹脂、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのグリシジルエーテル類が好ましい。最も好ましいのは2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル]プロパンである。
【0020】
本発明の樹脂組成物に用いられる硬化剤としては、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、カルボン酸系硬化剤、アミン系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤等が挙げられるが、経時安定性、耐湿性、溶剤溶解性の面から、フェノール系硬化剤、特に環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物が好ましい。該化合物を硬化剤として使用した場合、該樹脂組成物の硬化物は高温下での黄変がほとんど無い。
【0021】
該環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物としては、分子中に環状テルペン骨格とフェノール性水酸基を2以上有する化合物であれば特に制限はない。具体的には、例えば日本特許2572293号に詳細に記載されているように、環状テルペン化合物とフェノール類とを反応させて、環状テルペン化合物一分子にフェノール類が約2分子の割合で付加した環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物、またはそれを酸性触媒の存在下にアルデヒド類及びケトン類からなる群から選ばれる1種以上と縮合させて得られる化合物(高分子量化した環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物)等が挙げられる。
該環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物の水酸基当量は特に限定されないが、通常140〜190g/eq、好ましくは150〜180g/eq、より好ましくは155〜175g/eq程度のものが使用される。
該環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物の好ましいものの1つとして、ノボラック型環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物等の高分子量化した環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物が挙げられる。
【0022】
上記環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物の原料として使用される環状テルペン化合物としては、例えばリモネン(下記式(1))、リモネンの光学異性体であるジペンテン、α型ピネン(下記式(2))、β型ピネン(下記式(3))、α型テルピネン(下記式(4))、β型テルピネン(下記式(5))、γ型テルピネン(下記式(6))、3,8型メタンジエン(下記式(7))、2,4型メタンジエン(下記式(8))、テルピノーレン(下記式(9))等のモノテルペン化合物(イソプレン単位2個が生合成により環化結合した化合物)が挙げられる。
【0023】
【化1】

【0024】
環状テルペン化合物に付加させるフェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、2,6−キシレノール及びo−アリルフェノール等の非置換又は炭素数1〜3のアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基等で置換されたフェノールが挙げられる。これらの中でフェノール又はo−クレゾールが好ましく、フェノールが特に好ましい。
【0025】
また、高分子量化した環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物の製造に使用されるアルデヒド類又はケトン類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、アセトン、シクロヘキサノン等の炭素数1〜6の脂肪族アルデヒド若しくはケトン又はヒドロキシ基などの置換基を有してもよいベンズアルデヒドなどが挙げられる。
【0026】
環状テルペン化合物とフェノール類との反応には、通常芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類等の溶媒が使用され、またそれとアルデヒド類及びケトン類からなる群から選ばれる1種以上との縮合には、酸性触媒として、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、三フッ化ホウ素等が使用される。
【0027】
こうして得られた環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物は、リモネンとフェノールを反応させた化合物を例にとると下記式(I)と式(II)の化合物の混合物であると推定される。
【0028】
【化2】

【0029】
該環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物は本発明において硬化剤として作用し、通常単独で使用されるが場合により、他の硬化剤を組み合わせて用いてもよい。併用する場合には、得られる硬化物の耐熱耐黄変性、可視光透過率等の物性を低下させない範囲で、使用するのが好ましい。通常は硬化剤全量に対して0〜20%程度の範囲が好ましい。併用しうる硬化剤としては酸無水物系硬化剤、カルボン酸系硬化剤、アミン系硬化剤、上記環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物以外のフェノール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤等を挙げることができる。
【0030】
酸無水物系硬化剤としては、例えばフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸の無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物等の脂環式カルボン酸無水物が挙げられる。
【0031】
カルボン酸系硬化剤としては、例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの炭素数2〜22の脂肪族ポリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ナフタレンジ(又はテトラ)カルボン酸等の芳香族カルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の脂環式ポリカルボン酸等が挙げられる。
【0032】
アミン系硬化剤としては、例えばジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、m−キシリレンジアミン等の芳香族アミン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ポリエーテルジアミン等の脂肪族アミン、ジシアンジアミド、1−(o−トリル)ビグアニド等のグアニジン類が挙げられる。
【0033】
前記環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物以外のフェノール系硬化剤としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4'−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4'−ビフェノール、ジメチル−4,4'−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フラン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0034】
ヒドラジド系硬化剤としては、例えばカルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4'−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N'−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド系硬化剤、ピロメリット酸トリヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド等の多官能ヒドラジド系硬化剤が挙げられる。
【0035】
硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基に対する硬化剤の官能基の当量比において通常0.2〜1.8、好ましくは0.4〜1.4、更に好ましくは0.6〜1.2の範囲で用いられる。
【0036】
本発明においては、好ましい硬化促進剤として、イミダゾール系硬化促進剤が用いられるが、他にエポキシ樹脂の硬化を促進する触媒として知られている化合物、例えば第3級アミン類、ホスフィン類等を物性を阻害しない範囲内であれば併用して用いることが出来る。
【0037】
イミダゾール系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ−〔1,2−a〕ベンズイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2'−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−ウンデシルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−エチル,4−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール又は1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等の各種イミダゾール化合物が挙げられる。
【0038】
通常、エポキシ樹脂組成物に用いられる硬化促進剤の使用量としては、エポキシ樹脂100部に対し、0.1〜10部程度であるが、これらイミダゾール系硬化促進剤を使用する場合の使用量としては、エポキシ樹脂100部に対して通常0.1部以上、好ましくは0.3部以上、更に好ましくは0.5部以上であり、かつ7部以下、好ましくは5部以下、より好ましくは4部以下、更に好ましくは3.5部以下である。イミダゾール系硬化促進剤の使用量があまり少ない場合、充分な架橋反応が起こりにくく、保護膜の耐熱性に悪影響を及ぼし、又、多すぎる場合、経時安定性や硬化時の耐黄変性、耐液晶汚染性を低下させる可能性が有る。
【0039】
本発明の樹脂組成物に用いうるアクリル系樹脂としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)と多価カルボン酸化合物の酸無水物(例えば、無コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等)の反応物であるハーフエステル,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620、等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、モノ又はポリグリシジル化合物(例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリエトキシグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリエトキシポリグリシジルエーテル等と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール等と(メタ)アクリル酸との反応物、及びこれら化合物単独、もしくは2種以上組み合わせた化合物の付加重合体を挙げることができる。
【0040】
これらアクリル系樹脂を硬化するには、通常行われているように、光重合開始剤を配合し、紫外線を照射し硬化する光硬化法、または、過酸化物またはアゾ化合物等を配合し、加熱硬化を行えば良い。
【0041】
本発明の樹脂組成物に用いうる光重合開始剤の具体例としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等が挙げられる。これらの添加割合としては、樹脂組成物の固形分を100%としたとき、通常1〜30%、好ましくは、2〜25%である。
【0042】
本発明の樹脂組成物にアクリル系樹脂を用いる場合には、前記シリカ微粒子のコロイド状スラリーは、保護膜として透明性を維持させるために、BET比表面積法により測定されたシリカ微粒子の一次粒子径が50nm以下のものを用いる。
シリカ微粒子のコロイド状スラリーの配合量としては、組み合わせる樹脂成分により異なるが、シリカ微粒子固形分として、アクリル系樹脂成分(アクリル系樹脂、光重合開始剤)100部に対し、通常10〜100部、好ましくは20〜80部、更に好ましくは25〜70部配合するのが良い。100部より多いと、シリカ微粒子の分散状態が悪くなり、凝集を起こしやすく保存安定性が悪くなったり、また、樹脂成分のチクソ性が高くなり、平滑な塗膜を形成しにくくなる。また10部より少ない場合は、耐ITO性を付与することが困難になる恐れがある。
【0043】
また、本発明の樹脂組成物においては、場合により、エポキシ樹脂とアクリル系樹脂を併用することも出来る。エポキシ樹脂とアクリル系樹脂を併用する場合は、光重合開始剤を用いて光硬化を行った後、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤成分を熱硬化せしめるか、あるいはエポキシ樹脂と硬化剤、硬化促進剤の加熱硬化の際に、同時にアクリル基同士の熱重合を行う方法、もしくは過酸化物を用い、アクリル系樹脂を重合させれば良い。
本願発明の樹脂組成物において、エポキシ樹脂とアクリル系樹脂を併用する場合、シリカ微粒子のコロイド状スラリーは、保護膜として透明性を維持させるために、比表面積換算法により測定されたシリカ微粒子の一次粒子径が50nm以下のものを用いる。
シリカ微粒子のコロイド状スラリーの配合量は、組み合わせる樹脂成分により異なるが、シリカ微粒子固形分として、樹脂成分(2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、及び/又は、アクリル系樹脂、光重合開始剤)100部に対し、通常10〜150部、好ましくは20〜100部、更に好ましくは25〜80部配合するのが良い。100部より多いと、シリカ微粒子の分散状態が悪くなり、凝集を起こしやすく保存安定性が悪くなったり、また、樹脂成分のチクソ性が高くなり、平滑な塗膜を形成しにくくなる。また10部より少ない場合は、耐ITO性を付与することが困難になる恐れがある。
【0044】
本発明の樹脂組成物に使用される有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、好ましくは炭素数1〜4の低級アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3―メトキシブタノール、3―メチル―3―メトキシブタノール等のグリコールエーテル類、好ましくは炭素数1〜4のアルキレングリコールの炭素数1〜4の低級エーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3―メトキシブチルアセテート、3―メチル―3―メトキシブチルアセテート、エチルエトキシプロピオラート等のアルキレングリコールエーテルアセテート類、好ましくは炭素数1〜4のアルキレングリコールの炭素数1〜4の低級エーテルアセテート、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4―ヒドロキシ―4―メチル−2―ペンタノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸プロピル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸プロピル、3−エトキシプロピオン酸ブチル等のエステル類、好ましくヒドロキシ基又は/及び炭素数1〜4の低級アルコキシ基で置換されていてもよい炭素数2〜4の脂肪酸の炭素数1〜4のアルキルエステル又は/及びテトラヒドロフラン等の5〜6員環の環状エーテル類等が挙げられる。
【0045】
これらのうち、樹脂、硬化剤、硬化促進剤の溶解性、及び有機溶媒との反応性、揮発による濃度的な経時変化、人体に対する毒性等を考慮すると、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の炭素数2〜3のアルキレングリコールの炭素数1〜4の低級エーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、エステル類が好ましいが、コロイド状スラリー中のシリカ微粒子の単分散を破壊しないものを選択する必要がある。
【0046】
又、これら有機溶剤の使用量については特に限定はされず、所望膜厚、表面平滑性、成膜方法等に応じ、調節し、塗布適性を付与すればよい。
【0047】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、カップリング剤、界面活性剤、酸化安定剤、光安定剤、耐湿性向上剤、チキソトロピー付与剤、消泡剤、他の各種の樹脂、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を配合することもできる。
【0048】
用いうるカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤、Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニウムジルコニウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニウム、或いはアルミニウム系カップリング剤が挙げられる。これらの中でシラン系カップリング剤が好ましく、エポキシ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。カップリング剤を使用する事により基材との密着性が向上し、かつ耐湿信頼性に優れた保護膜が得られる。
【0049】
カップリング剤を用いる場合の使用量は樹脂、好ましくはエポキシ樹脂100部に対して、0.1〜5部、好ましくは0.5〜4部程度である。
【0050】
又、界面活性剤は保護膜用樹脂組成物の塗布適性を向上させるために用いることが出来る。例えばシリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が用いられ、用いる場合のその添加量としては、樹脂、好ましくはエポキシ樹脂100部に対し、通常0.001〜5部、好ましくは0.01〜4部、より好ましくは0.1〜3部、更には0.5部より多く、3部以下までである。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、シリカ微粒子のコロイド状スラリー、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂及び/またはアクリル系化合物、硬化剤、例えばイミダゾール系硬化促進剤、並びに必要に応じ各種添加剤を有機溶媒中に均一に溶解させることによりワニスとして得ることができる。この場合、通常、固形分濃度が10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上で、かつ50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下程度になるよう調製すればよい。これらの濃度は樹脂組成物により適宜調整すればよく、塗布などの効率化等を考えれば25℃における粘度が2〜30mPa・s、好ましくは4〜15mPa・sになるように調製するのがよい。
【0052】
このようにして得られる本発明の保護用樹脂組成物(ワニス)により形成される塗膜は、ガラス、木、金属、プラスチック等の種々の材料に対して優れた密着性を有し、平滑性、耐熱耐黄変性、透明性、靭性に優れていることから、例えば各種保護膜等として、特に有機EL素子やプラズマディスプレイパネルといった高可視光透過率を要求される箇所における塗膜(高可視光透過率塗膜)として有用である。本発明の樹脂組成物において、高可視光透過性を満たすものとしては、膜厚1μm、より好ましくは1.5μm、更に好ましくは2μmになるように成膜した時の光の透過率が、波長400nmの光において95%以上であるものが好ましい。また、更に本発明の樹脂組成物により形成される塗膜はITO成膜時の高温耐性に優れることより、液晶表示用カラーフィルター等の着色樹脂膜の上に保護膜を形成させる場合あるいは液晶表示用カラーフィルターの平滑層の形成に際し特に有用である。この場合、本発明の樹脂組成物を硬化して得られる透明薄膜はカラーフィルターから溶出するイオン性不純物が液晶を汚染するのを効果的に防ぐ機能がある。
【0053】
本発明の樹脂組成物(ワニス)をカラーフィルター保護膜等の保護膜として使用する場合は、通常カラーフィルター上に該樹脂組成物をスピンコート法により塗布する。 膜厚は通常、硬化後0.1〜10μmに、好ましくは0.5〜8μm、より好ましくは0.8〜5μm、更に好ましくは0.8〜3μmになるような条件で塗布される。この際、塗布作業を効率的に行うため、本発明の組成物の25℃における粘度を2mPa・s以上、好ましくは4mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上で、かつ、30mPa・s以下、好ましくは15mPa・s以下、より好ましくは13mPa・s以下になるように、通常有機溶剤の使用量で調整する。膜厚を薄くするときには粘度を10mPa・s以下、更には8mPa・s以下にする方が好ましい。塗布後の乾燥、硬化条件は組成物溶液中の成分割合、その配合比、溶剤の種類によって最適な条件を選択する必要があるが、通常、70〜100℃でプリベークを行い溶剤を除去した後、熱硬化の場合は、150〜250℃で10分〜1.5時間ポストベークを行い硬化させる。硬化温度は一定でなくても良く、例えば昇温させながら硬化を行ってもよい。プリベーク溶媒除去、及びポストベーク硬化はオーブン、ホットプレート等を用いて行うことができる。また、光硬化の場合は、通常、プリベークにより溶媒を除去した後、それ自体公知の露光機で照射、硬化せしめた後、ポストベークを行う。本発明の樹脂組成物を硬化して得られた保護膜は、実質的に透明である。
【0054】
上記のようにして本発明の実質的に透明な保護膜を形成したカラーフィルターは液晶表示装置等に好適に使用することができる。通常の液晶表示装置はカラーフィルター部(必要に応じてITO製膜、ITOパターニングが施される)、液晶部、バックライト部及び偏光フィルム部から構成されるので、そのカラーフィルター部に本発明の保護膜を施したカラーフィルターを使用することにより、本発明の液晶表示装置とすることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を以って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
表1の実施例1の欄に示す組成割合(数値は「部」)の組成物をプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解して、固形分濃度25%、粘度5.2mPa・s(R型粘度計、10rpmでの測定値)の本発明の樹脂組成物を調製した。次に厚さ0.7mmのガラス基板上に、前記組成物をスピンコーターを用いて、硬化後の厚さが1.5μmになるように塗布し、100℃、2分の条件でプリベークを行った後、220℃、20分の条件で硬化し、透明な本発明の保護膜を形成した。得られた保護膜の評価結果(評価方法は後述)を表2に示す。
【0057】
実施例2、比較例1〜2
表1の実施例2及び比較例1〜2の各欄に示す組成割合の組成物を用いた以外は実施例1と同様にして保護膜を作成した。これらの評価結果を表2に示した。
【0058】
実施例3及び4
実施例1及び2におけるガラス基板の代わりに、微細パターン化したカラーフィルター(ガラス基板の表面に着色樹脂膜が形成されたもの)を用いた以外は実施例1と同様にして、カラーフィルター上に保護膜を形成した。該保護膜につき評価した結果を表2に示した。
【0059】
【表1】

【0060】
表1中の各成分の詳細は、次のとおりである。
エポキシ樹脂A :2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル]プロパンのグリシジルエーテル化合物(商品名:VG3101、エポキシ当量:約211g/eq、三井化学工業株式会社製){該化合物は2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)エチル]フェニル]プロパンと思われる}
硬化剤A : ノボラック型テルペン骨格含有フェノール樹脂(水酸基当量:174g/eq、商品名:エピキュアMP402FPY、ジャパンエポキシレジン株式会社製)
促進剤A : 2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ−〔1,2−a〕ベンズイミダゾール(商品名キュアゾールTBZ、四国化成株式会社製)
添加剤A : フッ素系界面活性剤メガファックF470(大日本インキ株式会社製)
添加剤B : エポキシシラン系カップリング剤サイラエースS−510(株式会社チッソ製)
シリカ微粒子スラリーA: コロイド状シリカスラリー(Na濃度1ppm以下、シリカ微粒子の平均粒子径19nm、PH7.3)製品名 PL−2L−PGME(扶桑化学工業製)
シリカ微粒子スラリーB: コロイド状シリカスラリー(Na濃度1ppm以下、シリカ微粒子の平均粒子径33nm、PH7.2)製品名 PL−3L−PGME(扶桑化学工業製)
シリカ微粒子スラリーC:コロイド状シリカスラリー(Na濃度0.6wt%以下、シリカ微粒子の平均粒子径14nm、PH4.7)製品名 PGM−ST(日産化学工業製)
なお、シリカ微粒子スラリーの表中における数値はシリカ微粒子固形分の量を示す。
【0061】
【表2】

【0062】
表2において評価方法、及び判定基準は以下のとおりである。
1.ITO試験
ガラス基板上に各組成物を1.5μmの膜厚になるよう成膜し、200℃の条件でITOを1500Å膜厚、シート抵抗値20Ω/□になるようにスパッタした時の膜状態を観察し、外観変化のないものを○、部分的に皺、クラックの発生しているものを△、全体的に皺、クラックが発生し、白濁しているものを×とした。
2.保存安定性
25%固形分濃度の組成物溶液500gを1Lガラスコート瓶に入れ蓋を閉め、5℃雰囲気下に1ヶ月保管したあとの粘度変化を調べた。粘度変化が初期粘度の5%以内であるものを○、5%〜10%であるものを△、10%以上増粘しているものを×とした。
3.透明性
得られた透明薄膜を、分光光度計で測定し、1μm当たりの膜厚に換算した際の400nmの透過率が95%以上であるものを○、90〜95%のものを△、90%以下のものを×とした。
4.耐熱性試験
得られた保護膜を、250℃のオーブンにそれぞれ60分間放置し、保護膜の黄変性を目視により判定した。判定基準は、高温放置する前の塗膜に比較し、○がほとんど変化なし、△がやや黄変するもの、×が黄変し使用に耐えないものを示した。
【0063】
表2の結果より明らかなように、本発明の樹脂組成物は、保存安定性に優れているため作業性も良好であるうえ、透明性に優れ、また、耐熱性、特に高いITO耐性を有している。
【産業上の利用の可能性】
【0064】
本発明の保護膜用樹脂組成物は、保存安定性に優れ、作業性も良好であるうえ、透明性に優れ、また、特に高いITO耐性、高い表面平滑性、高い耐水性等の優れた性質を有する硬化膜を形成することができるので、優れた保護膜形成のための樹脂組成として利用できる。また、液晶等の汚染性も少ないので、着色樹脂膜等の保護膜の形成に適している。従って該樹脂組成物をカラー液晶表示装置におけるカラーフィルター等の保護膜形成に用いるとき、該装置の信頼性を向上することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、溶剤及び比表面積換算法により測定された平均粒子径が50nm以下であり、pHが6〜8であり、かつアルカリ金属分が5ppm以下のシリカ微粒子のコロイド状スラリーを含有する保護膜用樹脂組成物。
【請求項2】
コロイド状スラリー中のシリカ微粒子(固形分)が、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤の総量100質量部に対して10〜150質量部である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
硬化剤が環状テルペン骨格含有多価フェノールである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
環状テルペン骨格含有多価フェノールが、環状テルペン化合物一分子にフェノール類2分子を付加させた化合物及び/又はそれに、酸性触媒の存在下にさらにアルデヒド類及び/又はケトン類を縮合反応させて得られた化合物である請求項3に樹脂組成物。
【請求項5】
硬化促進剤が、イミダゾール系促進剤である請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
アクリル系樹脂、溶剤及びBET比表面積換算法により測定された一次平均粒子径が50nm以下であり、PHが6〜8であり、かつ含有金属分が5ppm以下のシリカ微粒子のコロイド状スラリーを含有する保護膜用樹脂組成物。
【請求項7】
保護膜用樹脂組成物を、膜厚1μmになるように成膜した時の透過率が、波長400nmの光において95%以上である請求項1〜4又は6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
カラーフィルターの保護膜用である請求項1〜4又は6項の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜4又は6の何れか1項に記載の樹脂組成物を硬化させた実質的に透明な保護膜。
【請求項10】
請求項9に記載の保護膜を有するカラーフィルターを備えた液晶表示装置。

【国際公開番号】WO2005/035654
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514584(P2005−514584)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014756
【国際出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】