説明

信号ケーブル

【課題】ねじれを解消することができ、断線回避と敷設・撤去作業の効率化を図ることの可能な信号ケーブルを提供する。
【解決手段】軸線Pに沿って延びる並設された二つの導線10と、これらの導線10全体を外側から覆うシールド線12と、シールド線12をさらに外側から覆う形状記憶合金板11と、これら全てを外側から覆うカバー13とを備えており、形状記憶合金板11は、軸線P回りの相対回転を規制可能に導線10及びシールド線12を内側に保持しているとともに、カバー13との間の相対回転も規制可能としており、軸線Pの周方向一方側にねじれた際に、軸線Pの周方向他方側に向かって導線10、シールド線12、カバー13の全てに一体として復元力を作用させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にガスタービンや蒸気タービン等において各種計測を実施する際に使用する信号ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンや蒸気タービン等の装置を新規製造した際、一定期間運転後のメンテナンス作業の際、又はトラブル発生の際には、例えばひずみゲージによるクラックの有無確認の計測を行ない、装置の安全性や信頼性の向上を図っている。また、ガスタービン運転時における加速度センサによる振動測定や、ガスタービンの燃焼器における圧力センサによる燃焼圧測定等の各種計測も実施されている。
【0003】
このような各種計測を行なう際には、計測用の各種信号ケーブルを使用することになる。この信号ケーブルは、耐熱性を有する等で高価なものとなることが多く、使い捨てにはできず、レンタル品の利用や、再利用を行なうことでコストを抑制している。
【0004】
上述のように、これら信号ケーブルは複数回使用されるため、計測が終了した際にはケーブルリール等へ巻き取ることになる。しかし、信号ケーブル敷設時には信号ケーブルにねじれが発生してしまい、このようなねじれが発生したまま巻き取りを行なうと、ケーブルが折れ曲がる等して断線してしまうおそれがあった。また、巻き取りの際に信号ケーブルが絡まってしまい、このような信号ケーブルを再度使用する場合には、一度信号ケーブル全てをケーブルリールから引き出す必要があり、この作業に時間を要していた。
【0005】
ここで、特許文献1には、信号を伝送する導体線とともに形状記憶合金によるワイヤーが通されている信号伝送ケーブルが開示されている。この特許文献1の技術によれば、例えば信号伝送ケーブルを束ねたり巻いたりしても、形状記憶合金のワイヤーの記憶形状に基づいて、自然にもとの直線状に戻ることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−6635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の信号ケーブル(信号伝送ケーブル)では、形状記憶合金と導線(導体線)との間で相対回転が発生することは避けられず、依然として信号ケーブルのねじれを解消することができなかった。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、ねじれを解消することができ、断線回避と敷設撤去作業の効率化を図ることの可能な信号ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る信号ケーブルは、軸線に沿って延びる導線と、前記導線の前記軸線回りの相対回転を規制可能に該導線を内側に保持するとともに、前記軸線の周方向一方側にねじれた際に周方向他方側に復元力を生じるねじれ防止部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
このような信号ケーブルによると、ねじれ防止部材と導線との間での相対回転が規制されており、ねじれ防止部材によって、ねじれが発生した際にねじれをもとに戻すように復元力が働くため、ねじれ防止部材と導線とが一体として、自動的にねじれが解消される。
【0011】
また、前記ねじれ防止部材は、前記軸線に沿って延びる形状記憶合金であってもよい。
【0012】
このような形状記憶合金によって、ねじれ防止部材と導線との間での相対回転が規制され、さらに、予め形状記憶合金に記憶された形状、例えば直線状態に自然に戻るように、信号ケーブルに復元力が作用する。このため、ねじれ防止部材と導線とが一体として、確実にねじれを解消することが可能となり、信号ケーブルの断線回避と敷設撤去作業の効率化を図ることができる。
【0013】
さらに、前記ねじれ防止部材は、前記軸線の方向に向かうに従って周方向に捩れる螺旋状に配置されるシールド部材であってもよい。
【0014】
このようなシールド部材がねじりコイルバネのように作用し、ねじれに対する復元力が信号ケーブル全体に作用するため、確実にねじれを解消することが可能となり、信号ケーブルの断線回避と敷設撤去作業の効率化を図ることができる。
【0015】
また、前記ねじれ防止部材は、前記軸線に沿って延びる線部材であってもよい。
【0016】
このような線部材の弾性変形による復元力によって、自動的にねじれを解消することができ、信号ケーブルの断線回避と敷設撤去作業の効率化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の信号ケーブルによれば、ねじれ部材と導体とが一体として、ねじれ防止部材による復元力が作用し、自動的にねじれを解消できる。その結果、断線回避と敷設・撤去作業の効率化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る信号ケーブルを示す概略断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る信号ケーブルにおいて、形状記憶合金の配置が異なる場合を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る信号ケーブルを示す概略断面図であって、(a)は全体断面図、(b)は(a)の矢視Aを示すものである。
【図4】本発明の第三実施形態に係る信号ケーブルを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る信号ケーブル1Aについて説明する。
信号ケーブル1Aは、例えばガスタービンや蒸気タービンにおける圧力測定や振動測定等の各種計測器に用いられる計測用ケーブルである。
【0020】
図1に示すように、信号ケーブル1Aは、信号を伝送する二つの導線10と、二つの導線10全体を外側から覆うシールド線12と、シールド線12をさらに外側から覆う形状記憶合金板(ねじれ防止部材)11と、これら全てを外側から覆うカバー13とを備えている。
【0021】
導線10は、軸線Pに沿って延在する銅等よりなる断面円形状をなす伝送線であって、上記の各種計測機器において、信号伝送を行なうものである。なお、本実施形態では二つの導線10が並設された2芯ケーブルとなっている。
【0022】
シールド線12は、細い導線10を網状に編み込んだもの、または金属箔等よりなり、二つの導線10の全体を外側から覆う部材であって、外部からの静電気によって導線10に発生する静電誘導を防止する静電シールドである。そして、このシールド線12は、断面円形の二つの導線10を軸線Pの径方向外側から覆うことで、断面楕円形となっている。
【0023】
カバー13は、ポリ塩化ビニルやフッ素樹脂等よりなり、シールド線12との間に形状記憶合金板11を軸線Pの径方向外側から覆うことで保持するように、信号ケーブル1Aの最も外側に配置されるものである。またこのカバー13は、カバー13と形状記憶合金板11との間の相対回転を規制するように設けられている。
【0024】
次に、形状記憶合金板11について説明する。
形状記憶合金板11は、変形が加えられた際に予め記憶された形状に自然に戻る性質を有する合金材料よりなる板状の部材であって、シールド線12の外側、即ち、シールド線12における軸線Pの径方向外側に配置され、軸線P方向に延在している。
【0025】
また、形状記憶合金板11は、本実施形態では軸線Pを挟んで上下左右対称に計四つが設けられている。そして、これら形状記憶合金板11を軸線P方向から見た場合には、四つの形状記憶合金板11が四角形を形成し、この四角形の各辺それぞれが断面楕円形状のシールド線12の円周に接して配置されてシールド線12と形状記憶合金板11との間の相対回転を規制可能としている。
【0026】
このような信号ケーブル1Aによると、シールド線12が断面楕円形となっており、形状記憶合金板11のそれぞれの辺にシールド線12の円周が接することによって、形状記憶合金板11と導線10との間での相対回転が規制される。さらに、カバー13と形状記憶合金板11との間でも相対回転が規制され、即ち、導線10、シールド線12、形状記憶合金板11、カバー13それぞれの間での相対回転が規制される。
【0027】
従って、信号ケーブル1Aにねじれが生じてしまった際には、導線10、シールド線12、形状記憶合金板11、カバー13の全体に一体として、予め形状記憶合金板11に記憶された形状、例えば直線状態に自然に戻るように復元力が作用して、ねじれを自動的に解消することが可能となる。
【0028】
本実施形態の信号ケーブル1Aにおいては、導線10、シールド線12、形状記憶合金板11、カバー13を一体としてねじれを解消でき、ねじれによって発生する信号ケーブル1Aの断線の回避ができる。また、信号ケーブル1Aをケーブルリールに巻き取る際に、信号ケーブル1Aが絡まってしまうことを防止でき、ケーブルの敷設・撤去作業時の効率化を図ることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、形状記憶合金板11は軸線Pを挟んで上下左右対称に四つが設けているが、数量は四つに限定されず、例えば、相対回転を規制するように一つをシールド線12に接着固定して用いてもよいし、周方向に隣り合う二つのみを設置してもよい。また、図2に示すように、軸線P方向から見た際に、形状記憶合金板11が三角形を形成してシールド線12を覆うように三つを設けてもよい。例えば、4芯ケーブルで、これら4芯が予めねじれてスパイラル状に配置されるようなケーブルでは、このような三つの形状記憶合金板11によって保持する方が効果的と考えられる。
【0030】
また、形状記憶合金板11は板状をなす場合を説明したが、例えばブロック状であってもよく、シールド線12との間の相対回転を規制可能であれば形状は限定されない。
【0031】
さらに、カバー13と形状記憶合金板11との間に樹脂等を充填して、形状記憶合金板11をカバー13の内側に確実に固定して保持してもよい。
【0032】
また、形状記憶合金板11をシールド線12の外周に接着等によって確実に固定してもよい。
【0033】
次に、第二実施形態に係る信号ケーブル1Bについて説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する
図3に示すように、本実施形態の信号ケーブル1Bは、第一実施形態の形状記憶合金板11に代えて、外側シールド線(ねじれ防止部材)21を備えている。
【0034】
外側シールド線21は、シールド線12と同様に複数の細い導線よりなるシールド部材であり、これら細い導線が軸線P方向に向かうに従って周方向一方側から他方側へ捩れるように螺旋状に形成されることで、シールド線12を軸線Pの径方向外側から覆っている。この外側シールド線21は、シールド線12に比べて厚さが大きくなっている。
【0035】
また、外側シールド線21は、シールド線12に密着して、これらの間の相対回転を規制するとともに、カバー13によって外側から支持されて、カバー13との間の相対回転も規制されている。
【0036】
このような信号ケーブル1Bによると、信号ケーブル1Bを使用することによって、ねじれが生じる。この際、外側シールド線21が周方向一方側から他方側に向かって螺旋状に形成されていることによって、外側シールド線21がコイルバネのように作用し、周方向一方側から他方側へのねじれ、又は周方向他方側から一方側へのねじれに対して、信号ケーブル1Bに復元力が作用する。そして、導線10、シールド線12、外側シールド線21、カバー13それぞれの間での相対回転が規制されるため、この復元力は信号ケーブル1B全体に作用し、信号ケーブル1Bのねじれを自動的に解消することが可能となる。
【0037】
本実施形態の信号ケーブル1Bにおいては、外側シールド線21による復元力によって、導線10、シールド線12、外側シールド線21、カバー13を一体としてねじれを自動的に解消でき、ねじれによって発生する信号ケーブル1Bの断線回避と、信号ケーブル1Bの敷設・撤去作業時の効率化とを達成できる。
【0038】
次に、第三実施形態に係る信号ケーブル1Cについて説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する
図4に示すように、本実施形態の信号ケーブル1Cは、第一実施形態の形状記憶合金板11に代えて、ピアノ線(ねじれ防止部材)31を備えている。
【0039】
ピアノ線31は、軸線P方向にそって延在する線部材であり、カバー13の外周にカバー13の周方向に一定の間隔を空けて四つが設けられている。そして、このピアノ線31は軸線P方向に一定の間隔を空けてカバー13の外周上に固着されて、カバー13との間での相対回転を規制している。
【0040】
このような信号ケーブル1Cによると、導線10、シールド線12、カバー13、ピアノ線31それぞれの間での相対回転が防止されることによって、ピアノ線31の弾性変形による復元力を信号ケーブル1C全体に及ぼすことができ、ねじれを自動的に解消することが可能となる。
【0041】
本実施形態の信号ケーブル1Cにおいては、ピアノ線31の弾性変形による復元力によって、導線10、シールド線12、カバー13、ピアノ線31を一体としてねじれを自動的に解消でき、ねじれによって発生する信号ケーブル1Cの断線回避と、信号ケーブル1Cの敷設・撤去作業時の効率化とを達成できる。
【0042】
なお、ピアノ線31の太さ、本数等については、信号ケーブル1Cの太さ等に応じて適宜変更可能である。
【0043】
また、ピアノ線31に代えて形状記憶合金ワイヤー等の金属ワイヤーや、別の線状の部材を用いてもよいが、この場合、ねじりが発生した際にこの部材が断線してしまわないように、部材の弾性と剛性とのバランスを考慮して、部材を選択する必要がある。
【0044】
以上、本発明の実施形態についての詳細説明を行なったが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、上述の実施形態では信号ケーブル1Cは、ガスタービンや蒸気タービンにおける圧力測定や振動測定等の各種計測器に用いられる計測用ケーブルとして説明したが、例えば、ヘッドフォンやスピーカー等の音響機器に用いられるケーブルであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1A…信号ケーブル、10…導線、11…形状記憶合金板(ねじれ防止部材)、12…シールド線、13…カバー、1B…信号ケーブル、21…外側シールド線(ねじれ防止部材)、1C…信号ケーブル、31…ピアノ線(ねじれ防止部材)、P…軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びる導線と、
前記導線の前記軸線回りの相対回転を規制可能に該導線を内側に保持するとともに、前記軸線の周方向一方側にねじれた際に周方向他方側に復元力を生じるねじれ防止部材とを備えることを特徴とする信号ケーブル。
【請求項2】
前記ねじれ防止部材は、前記軸線に沿って延びる形状記憶合金であることを特徴とする請求項1に記載の信号ケーブル。
【請求項3】
前記ねじれ防止部材は、前記軸線の方向に向かうに従って周方向に捩れる螺旋状に配置されるシールド部材であることを特徴とする請求項1に記載の信号ケーブル。
【請求項4】
前記ねじれ防止部材は、前記軸線に沿って延びる線部材であることを特徴とする請求項1に記載の信号ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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