信号処理システムおよび方法
本発明は、信号処理システムと、それによって情報の処理を行うための方法を提供する。この信号処理システムは、感知システムと共に使用するために設計され、この感知システムでは、符号化信号がテストサンプルに向けられ、結果として生じる信号が収集されて符号化信号と相関され、これにより、テストサンプルの送信信号への応答の検出を可能にし、このことは、測定されるテストサンプルの理解を可能にすることができる。信号処理システムは、テストサンプルに送信される信号のフォーマットおよびこの送信の結果として生じるテストサンプルから受信される信号の両方の検出と、その後のこれらの相関とを制御するための制御信号を、感知システムに供給する。送信および検出信号の両方を制御することにより、信号処理システムは、検出能力を向上させるためにこの情報を相関させることができ、これにより、テストサンプルを分析する改善された手段を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理の分野に関し、特に、感知システムと共に使用して、その制御および強化された信号検出を可能にするための信号処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
先に送信された入射信号に基づく、標的からの結果として生じる信号の検出は、これらの標的の材料の識別および合成を可能にするために広く用いられてきた。多くの場合、反射された、または結果として生じる信号は、入射信号の周波数および信号の種類などの特性を保持する。他の場合では、結果として生じる信号は、入射周波数の他に、例えば追加的な周波数を含むことがある。これらの追加的な周波数は、入射信号と共に、標的物質の組成に関する情報を提供することがあり、この情報は、物質を形成する元素の濃度を含むかもしれない。
【0003】
感知システムの具体的な実施形態は、分光計であり、反射および蛍光に鑑みると、入射信号と同じ周波数を有して反射される信号の検出は、通常、他の周波数を有して生成される、例えば蛍光よりも容易である。蛍光は、入射周波数と同じ周波数で反射される信号よりも著しく低い振幅レベルで、広い周波数範囲にわたって送信することができる。物質により放出される蛍光信号の強さは、システムの雑音レベルよりも低い場合があり、したがって、識別または評価することができない可能性があり、この雑音は、システム内の周囲雑音および/または電気雑音である場合がある。
【0004】
米国特許第6,002,477号(特許文献1)は、分光光度計装置を述べており、この装置は、検出されたスペクトルサインへの雑音の影響を減少するための手段を提供し、この減少は、物質から検出されるエネルギーの検出に与えるその影響を減少させるために、システム内の雑音レベルの決定に依存している。分光光度計は、光の各バーストにより生成された光ビームの強度を、このビームがサンプルに相互作用した後に測定する。このような光ビームはそれぞれ、サンプルとの相互作用の前に、第1および第2部分に分割することができ、光システムは、第1部分をサンプルに向け、第2部分を基準測定を行うための第2検出器に向けて配置される。暗信号測定を、光の各バーストの直前または直後に行ってもよい。このように、システム内の雑音を決定する基準信号を有することにより、受信信号を分離するための手段が提供される。しかしながら、この雑音補償の形は、基本的に、所望の信号を識別するために信号の減算を行うが、この種の技術は、結果として所望の信号を除去する場合がある。
【0005】
よって、検出システム内の雑音のために容易に検出されない、物質からの低レベルの放射を検出することを可能にし、検出される放出は、所定の種類の電磁気放射との相互作用の結果である、新たな信号処理システムおよび技術の必要性がある。
【0006】
この背景情報は、本出願者が信じる既知の情報を、本発明と関連付けるために提供される。どの認識も、先の情報のいずれかが本発明に対抗する従来技術を構成することを、意図するものではなく、またはそのように解釈されるべきではない。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,002,477号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、信号処理システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、雑音が存在する状態での信号の検出を可能にする、感知システムを制御するための信号処理システムであって、前記感知システムは、入射信号を生成するためのエネルギーソースと、前記入射信号をテストサンプルに向けるための放出処理システムと、前記入射信号に反応した前記テストサンプルからの1つまたは複数の結果として生じる信号を収集するための受信信号処理システムと、前記1つまたは複数の結果として生じる信号を電気信号に変換するための検出器とを含むものである、信号処理システムにおいて、前記エネルギーソースおよび前記受信信号処理システムに操作可能に接続された放出制御システムであって、前記放出制御システムは、第1制御信号を前記エネルギーソースに送信し、前記エネルギーソースは、これにより、符号化入射信号をパルスフォーマットで生成し、前記放出制御システムは、第2制御信号を前記受信信号処理システムに送り、前記1つまたは複数の結果として生じる信号の前記収集を、その後の前記検出器による電気信号への変換のために制御する、放出制御システムと、前記検出器からの前記電気信号を、前記符号化入射信号と整合相関し、これにより、雑音が存在する状態で送信された前記入射信号に対する前記テストサンプルの反応を分離することを可能にするための、DSP受信信号処理システムとを備える信号処理システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
定義
【0011】
「弱信号の検出」という表現は、サンプルからの低強度放出放射の測定を可能にするために用いられる技術を指す。任意の信号対雑音比に対して、情報の転送に用いられる帯域幅を増加させることにより、情報誤り率を下げることができる。信号の帯域幅は、雑音のあるチャンネルにおいて送信される前に広げられ、次いで、受信の前に狭められる。このプロセスは、結果として処理利得と呼ばれるものを生じる。
【0012】
「信号を広げる」という表現は、信号を広げるいくつかの手段を指し、これは、線形周波数変調(Linear Frequency Modulation)(時にはチャープ変調(Chirp Modulation)とも呼ばれる)および直接シーケンス(Direct Sequence)法ならびに他の技術を含む。
【0013】
「信号を狭める」という表現は、相関レシーバ(Correlation Receiver)または整合フィルタ(Matched Filter)レシーバ技術を用いて、受信信号を、類似した局部基準信号と相関させることにより、達成される処理を指す。2つの信号が整合される場合、広げられた信号は、広げられる前の元の帯域幅に縮められ、一方で、整合しない信号はいずれも、局部基準によって、基本的に送信帯域幅まで広げられる。このフィルタは、次に、所望の信号以外をすべて除外する。したがって、その干渉(例えば検出システムにおける熱雑音、周辺システム誘発雑音、ACライン雑音)内にある所望の信号を最適化するために、整合フィルタレシーバが、信号を強化し、一方で、雑音を含むすべての他の入力の影響を抑制する。
【0014】
他に定義されない限り、ここで用いられるすべての技術および科学的表現は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。
【0015】
本発明は、信号処理システムと、それによって情報の処理を行うための方法を提供する。この信号処理システムは、感知システムと共に使用するために設計され、この感知システムでは、符号化信号が、テストサンプルに向けられ、結果として生じる信号が収集されて符号化信号と相関され、これにより、テストサンプルの送信信号への応答の検出を可能にし、この検出は、測定されるテストサンプルの理解を可能にすることができる。このような信号は、電磁気または音響であってもよく、これらは例えば、分光計、光音響感知システム、X線システムのような感知システム、または当業者に容易に理解されるような電磁気放射を方向付けおよび検出するための他の感知システムを含む。信号処理システムは、テストサンプルに送信される信号のフォーマットおよびこの送信の結果として生じるテストサンプルから受信される信号の両方の検出と、その後のこれらの相関とを制御するための制御信号を、感知システムに供給する。送信および検出信号の両方を制御することにより、信号処理システムは、この情報を相関させることができ、検出能力を向上させ、これにより、テストサンプルを分析する改善された手段を提供する。
【0016】
図1には、例として、信号処理システム5と感知システム7との相互接続性が示されている。感知システムは、信号処理システム5(具体的にはエミッタ制御電子回路10)により制御され、1つまたは複数の入射信号22を放出するエネルギーソース15と、信号処理システム5(具体的にはエミッタ制御電子回路10)により制御され、エネルギーソース15から入射信号を受け取り、かつ、入射信号のうちの1つまたは複数を、符号化されたフォーマットでテストサンプル25に供給する放出処理手段20とを備える。一実施形態において、放出処理手段20は、1つまたは複数の照明波長を分離する手段と、照明波長をテストサンプル25に向けて収束させるエミッタ手段とを備えることができる。エネルギーソースが電磁照明ソースである一実施形態においては、照明とテストサンプルの間のこの相互作用は、反射された電磁気放射と、テストサンプルの性質の結果として生成される蛍光放射の形を取ることができる。いくつかのケースでは、これらの電磁気サインは、テストサンプル内の主要な要素またはテストサンプル内に存在するいくつかの材料の結果として生じる。例えば、テストサンプルが水である場合、電磁気サインは、例えば、水それ自体および/または水サンプル内の浮遊固体または溶解組成物の結果として生じることができる。
【0017】
感知システムは、受信信号処理手段30をさらに備え、受信信号処理手段30は、信号処理システム5(具体的にはエミッタ制御電子回路10)により制御され、先に送信された入射信号による、テストサンプル25からの1つまたは複数の結果として生じる信号27を収集し分離する。受信信号処理手段30は、テストサンプル25から結果として生じる信号を収集するための検出器システムと、結果として生じる信号の1つまたは複数を分離するための手段とを備えることができる。その上、感知システムは、受信信号処理手段30によって送信される結果として生じる信号を感知して電気信号に変換するための検出器35と、信号処理システム5の構成要素であり、検出器35の出力に整合フィルタリング(より具体的には整合相関)を行うDSP受信信号処理手段40とを備える。結果として生じる信号の整合フィルタリングは、検出器35からの受信電気信号および入射信号の符号化フォーマットを表すエミッタ制御電子回路10からの制御パラメータに基づいて行われる。一実施形態においては、信号の強さの推定値を、信号の強さの現在値に基づくリアルタイム決定を含むタスクを行うことができる制御ブロック500に渡すことができ、かつ/または、後の送信のためにさらに通信ブロック510に渡す。
【0018】
さらに図1を参照すると、雑音または干渉が感知システム7および信号処理システム5に入るためのさまざまな位置があり、この干渉は、符号化入射信号を送信することによりテストサンプルから受信された信号を検出する能力を下げることが可能である。例えば、周囲雑音が、受信信号処理手段30を介して感知システムに入ることができ、電気雑音が、DSP受信信号処理手段40を介して信号処理システムに入ることができる。信号処理システムは、入射信号を符号化するための手段と、符号化入射信号に関連する、結果として生じる信号の整合フィルタリング(または相関)とを提供することができる。このようにして、信号処理システムは、符号化入射信号をテストサンプルに送信することの結果として生じる信号の検出の改善を可能にする。この改善された検出能力は、雑音抑制および信号強化の結果であり、これは、入射信号をコード化波形と共にテストサンプルに送信し、テストサンプルからの結果として生じる信号を、送信波形のレプリカと相関して、相関出力を生成することにより達成され、この相関出力は、入射信号とテストサンプルの相互作用の結果として生じる信号の度合いに比例する。一例において、テストサンプルは、エネルギーソースにより照らされ、相関出力は、照明がテストサンプルと相互作用した結果として生じる反射および/または蛍光の度合いに比例する。
【0019】
特に蛍光を考慮すると、これは、サンプルが波長λ0のエネルギーで照らされると、これのエネルギーはサンプルに吸収され、波長λ1の放射が、サンプルにより放出され、ここでλ1>λ0となる現象である。放出が、励起段階の間または励起の後の非常に短い期間内に起こる場合、このプロセスは、一般に蛍光と呼ばれ、時間定数は、通常、10〜8秒未満である。励起パルスの持続時間が、非常に短い場合、蛍光放出の強度は、指数関数的な時間減衰プロファイルを示し、ここで蛍光減衰tdの時間定数は、励起されるサンプルの特性である。指数関数的な減衰の末尾は、放出波長e-(t/τd)で減衰し、ここでτdは、照らされるサンプルの減衰時間定数である。照らされる単一原子または分子サンプルのための指数関数項は、励起エネルギーを加えた後のいくらかの時間τdに、放出光子が放出される可能性に比例する。サンプルは、非常に大きな数の原子または分子成分を含み、放出特性は、全サンプルの全体的平均となる。この場合、励起が加えられ、続いてこの強度が減衰した後、時間的に継続する蛍光放射の光強度が、ある期間にわたって実際に見られる。コード化された照明の励起を、テストサンプルに加える場合、上述したものと同じ全体的平均減衰特性を、観察することができる。この場合、蛍光減衰定数τdよりもずっと長いコード化パルスを用いて、励起放射を「変調」することができ、以下に述べるパルス圧縮技術を用いて、放出放射によって生成される信号を圧縮することができる。この場合のパルス圧縮技術の使用は、通常、励起されるテストサンプルが、蛍光を助長する非常に大きな数の原子または分子成分を含む場合にのみ有効である。
【0020】
信号処理システム
【0021】
信号処理システムを用いて、エネルギーソース、放出処理手段、および受信信号処理手段またはこれらの任意の組み合わせを制御することができる。信号処理システムにより提供されるこの制御は、テストサンプルに送信される1つまたは複数の入射信号と関連する、1つまたは複数の結果として生じる信号の検出を可能にし、ここで、この検出は、システムへの雑音の導入が存在する状態で行うことができる。信号処理システムは、エミッタ制御電子回路を備え、この回路は、送信された入射信号(放出処理システム)と、受信信号処理システムとを制御するための手段を提供する。その上、信号処理システムは、受信信号処理手段を備え、この手段は、信号処理システムが、結果として生じる信号を、最初に送信された入射信号と相関させることを可能にする。例として、本発明の信号処理システムは、所定の波長の光で照らすことによるテストサンプルからの反射および蛍光を識別するための手段を提供することができ、この例で制御される感知システムは、分光計の形態とすることができる。
【0022】
以下の説明は、本発明に係る信号処理システムの、例えば分光計などの光感知システムとの統合への直接の適用により説明される。当業者は、信号処理システムを統合して他の感知システムを制御する方法を、容易に理解するであろう。他の感知システムには、当業者には容易に理解されるように、光音響感知システムまたはX線感知システムあるいは他の形態の感知システムが含まれる。
【0023】
一実施形態において、照明放射を制御するエミッタ制御電子回路は、電力を供給し、かつ、回路を駆動して、電気エネルギーを照明エネルギーに変換すること、信号ソースのパルスの振幅およびタイミングを制御すること、照明放射をフィルタ、収束、または機械的にパルスする、例えばフィルタ、モノクロメータ、コリメータ、および/またはチョッパなどのデバイスを制御すること、を含むタスクを行う。加えて、エミッタ制御電子回路は、受信信号処理手段を制御するための手段を提供し、照らされることによるテストサンプルからの反射および蛍光信号波長の分離を可能にする。例えば、モノクロメータを、受信信号処理手段に組み込むことにより、所望の波長を分離するための手段を提供することができる。モノクロメータの機能は、受信信号処理システムによって制御することができる。
【0024】
コーディング機能の形態を、エミッタ制御電子回路によって使用して、テストサンプルと相互作用する前に照明信号を符号化することができ、このコーディング機能は、任意の数の信号変調技術により提供することができる。例えば、パルスコードソフトウェアを用いて、信号制御デバイス周波数の直接変調(パルス周波数変調、PFM(pulse frequency modulation))のために同期パルスを生成することができる。PFMにより、パルスの周波数を変調して、所望の情報を符号化する。パルスコードソフトウェアを用いて、信号制御デバイス振幅の直接変調(パルス振幅変調、PAM(pulse amplitude modulation))のための同期パルスを生成することができ、PAMにより、パルスの振幅を変調して、所望の情報を符号化する。加えて、パルスコードソフトウェアを用いて、信号制御デバイスパルス幅の直接変調(パルス幅変調、PWM(pulse width modulation))のために同期パルスを生成することができる。PWMにより、パルスの幅を変調して、所望の変調を符号化する。最終的に、固定同期パルスを生成してパルスレートおよび振幅の変調を可能にする関数発生器を、例えばチョッパ、シャッタ、ガルボミラー等の間接的な信号変調器のための同期パルスを生成する機械的エンコーダドライバに加えて使用して、照明信号を符号化してもよい。
【0025】
本発明の一実施形態において、エミッタ制御電子回路によって使用されるコーディング機能は、BPSK(binary phase shift keying)であり、これは、デジタル変調フォーマットである。BPSKは、弱信号の受信に対して非常に効果的となり得る変調技術である。BPSK変調を用いて、搬送波信号の位相が、デジタルビットストリームに従って180°シフトされる。BPSKのデジタルコーディング方法は、次の通りである。「1」が、搬送波信号の位相遷移(180°)を起こさせ、「0」は、位相遷移を起こさせない。この変調技術を使用して、レシーバは、差分コヒーレント検出プロセスを行い、このプロセスでは、各ビットの位相が、続くビットの位相と比較される。BPSK変調の使用は、例えばオンオフキーイングなどの他の変調技術と比較した場合、改善された信号対雑音利点を提供することができる。
【0026】
本発明の一実施形態において、DSP受信信号処理手段は、検出器から受信された電気信号と、放出制御電子回路によって定義された対応する期間の、整合フィルタ相関を可能にする。送信および受信信号の間のこの相関は、感知システムまたは信号処理システムに入り得る雑音(例えば周囲雑音および/または電気雑音)に対し、強化された受信信号の識別のための手段を提供することができる。放出パルスシーケンスと同期され整合された、受信信号のフィルタリングと時間平均化は、信号対雑音比(SNR:signal-to-noise ratio)を強化することができ、当該の波長でのサンプル反応の測定の信頼性を向上させることができる。
【0027】
整合フィルタは、当該の信号の正確なコピーまたは基準である。基準は、入力信号と相関され、この手順は、基本的に、フィルタの全持続時間にわたる、基準によって乗算された信号の積の合計である。この手順は、図4に示されている。基準信号と当該の信号が整合した場合、相関(回旋(convolution))の合計は、通常、不整合の合計に比例してピークに到達し、感知システムおよび信号処理システム内の外部雑音に対し、信号を識別するための手段を提供する。本発明の一実施形態においては、整合フィルタリングの形態を、パルスレートの間隔に中心が合わされた狭帯域フィルタのバンクによって提供することができ、このバンクは、パルススペクトルからより多くの高調波を捉えることができ、これにより、改善された信号パルスエネルギー推定と、検出された波長のその後の識別のための手段を提供することができる。これは、受信された信号におけるエネルギーのより多くが、相関の決定に使用される、ということの結果である。
【0028】
本発明の一実施形態においては、時間領域拡散関数が、F(ω)で表され、受信信号が、H(ω)で表された場合、整合フィルタレシーバの出力は、次のデジタル信号プロセッサを用いて得ることができる。
【0029】
【数1】
【0030】
ここで、ω=2πfである。
【0031】
この式において、F(ω)は、入力信号f(t)のフーリエ変換であり、H(ω)は、レシーバ線形フィルタh(t)のフーリエ変換である。整合フィルタにおいて、レシーバ線形フィルタH(ω)は、レシーバ出力s(t)の、特定の入力信号f(t)に対する、ピーク信号対雑音比を最適化するように調整される。
【0032】
【数2】
【0033】
レシーバ線形フィルタ反応H(ω)が、上記の式で与えられる場合、出力信号対雑音比が最大化され、レシーバフィルタ反応H(ω)が、入力信号f(t)に整合され、ここで、f(t)は、フーリエ変換F(ω)を有する。上記の2つの式は、「情報送信、変調および雑音、通信システム向けの統一された手法(Information Transmission, Modulation and Noise, A Unified Approach to Communication System)」、シュワルツ(Schwartz)、ミーシャ(Mischa)、第3版、から取られたものである。整合フィルタレシーバは、検出が望まれる出力信号s(t)の信号対雑音比を、潜在的に最大化することを可能にする。よって、整合フィルタレシーバは、出力信号の最適な検出を提供することができる。整合フィルタレシーバは、線形のシステムであるため、s(t)は、反射の強さおよび検出器への蛍光照明に正比例する。整合フィルタの使用は、雑音(システムの外部および内部雑音)が存在する状態での、他のシステムを用いて検出できないかもしれない弱信号の検出を可能にすることができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、信号処理システムは、アナログフロントエンドおよびデジタルバックエンドタスクの両方を行う。一般的に、アナログ処理タスクは、小さなセンサ信号を修復し、非常に選択的なフィルタリング動作を加えること、に関係する。デジタル領域タスクは、エネルギー検出およびデータ出力に関するさらなる信号フィルタリングおよび分析機能に関係する。干渉を潜在的に最小化し、散弾雑音に対する耐性を提供するために、照明信号を、典型的には数百Hzの周波数によって変調することができる。アナログセクションは、検出出力を高利得増幅およびプリフィルタして、変調周波数を修復するように、設計することができる。これらの信号を使用して、狭帯域追跡フィルタが、変調信号修復に対する高い感度を提供することができる。増幅後の狭帯域フィルタの出力は、アナログ/デジタル変換され、DSPに入力され、DSPは、リアルタイムで、フィルタリング、エネルギー検出、結果の平均化および使用可能なデータへの変換のバックエンドタスクを行うことができる。フィルタリングは、アナログ処理の最後段に導入される可能性があるa/c雑音および高調波歪みの排除を、さらに強化することができる。フィルタリングの後には、平均化エネルギー検出器を置くことができ、この検出器は、センサ信号のエネルギーに比例する値を出力する。これらの値は、例えばコンピュータなどのホスト装置に、短い間隔で送ることができ、この装置で保存し、さらなる分析のために処理することができる。
【0035】
本発明の他の実施形態において、信号処理システムは、図2に示されるように設計することができる。最初に、パルスシーケンス発生器450が、基準信号をパルスコード相関器480に送信し、生成されたシーケンスを定義するデジタル信号をデジタル−アナログ変換器460にさらに送信する。結果として生じるアナログパルスが、アナログ低域通過フィルタ470を通過すると、照明ソースに送られ、照明ソースは、その後、これらのパルスに基づいてテストサンプルを照らす。照らすことによりテストサンプルから放出された放射を収集および検出すると、放射検出の結果として検出器により生成されたパルスが、アナログ低域通過フィルタ(LPF:analog low pass filter)400に入力され、このフィルタは、フィルタされた情報を、アナログ−デジタル変換器(ADC:analog to digital converter)410に送信する。アナログLPFは、fs/2を超える周波数を抑えることができ、ここでfsは、例えば、ADCのサンプリングレートであり、これにより、アンチエイリアシングフィルタリングを提供する。このデジタル化された情報は、狭帯域デジタルフィルタ420のバンクに送られ、ここで、各フィルタが、パルスシーケンススペクトル(入力信号パルス)のラインのうちの1つと整合され、その後、合計モジュール420に送信される。各フィルタは、n*fsに中心が合わされ、ここで、nは1〜Nの整数であり、Nはフィルタの最大数である。図3は、パルスコード信号の時間領域表現を示している。これらは、しばしば、擬似ランダム2値シーケンスと称され、「コードワード」800を定めるn個のランダムビットを含む。コードワードを形成するnビットのそれぞれは、「シンボル」と称され、持続時間Tsを有し、この持続時間は、しばしばシンボル期間と称される。シンボルレートFsは、シンボルが送信されるレートであり、Fs=1/Tsで与えられる。このような方法は、受信信号のレプリカとの整合、または、基準コード化波形の整合を可能にして、システム内の外部雑音に対して信号を識別するものであり、整合フィルタリングと呼ぶことができる。
【0036】
狭帯域デジタルフィルタ420のバンクにおいて実施される個別フィルタは、実質的に、基本周波数成分および基準パルスの高調波周波数成分をフィルタし、これらは、信号の個別のスペクトル成分を得るために合計モジュール430にて合計され、これにより、フィルタされた受信信号の出力のほとんどが、テストサンプルに送信されたコード化照明信号の結果となる。合計モジュール430からの合計は、フィルタ−パルス周期バッファ440に格納され、送信信号とパルスコード相関器480にて相関され、その結果は、相関バッファ520に格納される。図4は、パルスコード相関器において使用することができる時間領域相関モデルの模式的な描写を示しているが、当業者に容易に理解されるように、他の相関モデルを使用してもよい。信号強さ検出器490と、品質評価器530は、相関バッファ520内の情報に基づいて信号強さ評価値と品質指標データを計算することができ、その後、信号強さ評価値と品質指標データを、信号処理システムの制御ロジック500に送ることができる。制御ロジック500は、信号処理システムのスケジューリング制御と構成制御を行う手段を提供する。制御ロジック500は、また、感知システムと信号処理システムの現在の状態に基づいたリアルタイムの決定を行うことができる。信号強さ評価値および品質指標データは、その後、例えば通信ブロック510または他の手段を介して、パーソナルコンピュータ内に位置する計算デバイスまたは中央コントローラに送信することができ、使用可能かつ提供可能なフォーマットに編成され、例えば、集められた情報のグラフィック表現を生成し、かつ/またはデータをデータベースに格納する。
【0037】
さらに図4を参照すると、時間サンプリングされた入力信号Xm(t)850が、長さnのサンプルのシフトレジスタに格納され、シフトレジスタは、最近のサンプルx1(t)と、最後のn−1個のサンプルとを含むため、「タップ遅延ライン(tapped delay line)」と称することができる。「タップ遅延ライン」内のn個のサンプルは、送信されたパルスシーケンスを表す相関基準関数のn個のサンプルを含む整合基準関数レジスタY860にて、対応するサンプルによって乗算される。「タップ遅延ライン」内の対応するサンプルの積、すなわちその都度サンプリングされた入力信号×対応する整合基準関数が、合計される。この合計は、この時点での「タップ遅延ライン」内のサンプルデータのための相関出力信号C(t)870を表す。この相関の形態は、パルスコード送信方法を実施する本発明の実施形態において、または例えば「線形周波数変調」などの他のコーディング手段と共に使用することができる。整合基準関数は、基本的に、テストサンプルの照明を制御するために生成された信号の時間サンプリングされたレプリカである。
【0038】
さらに図4を参照すると、次のサンプルデータ値x0が、「タップ遅延ライン」に配置され、これは結果として、「タップ遅延ライン」内の前のサンプルを、図4の右側へとシフトさせる。具体的には、新しいサンプルx0がx1(t)となり、サンプルx1(t)がサンプルx2(t)となり、以下同様に続き、サンプルxnが、「タップ遅延ライン」から捨てられる。「タップ遅延ライン」内の対応するサンプル、すなわちその都度サンプリングされる入力信号と、対応する整合基準関数が、再度乗算および合計され、次の相関結果を提供する。このプロセスは、新しいサンプルが「タップ遅延ライン」に加えられるまで続けられ、その結果が、時間サンプリングされた相関結果となる。
【0039】
本発明の一実施形態において、信号処理システムの機能は、1つまたは複数の動作をアラーム設定の起動により行うことが可能な、アラーム設定をさらに含むことができる。例えば、信号処理システムは、常に、処理データに対して相関および統計的分析を行うことができ、ひとたび受信信号の変化が所定レベルに達すると、信号処理システムは、アラーム設定を起動することができる。アラーム設定の起動は、結果として、感知システムおよび信号処理システムを監視している作業員に、例えば警告灯、ブザー、電子メール、携帯電話メッセージまたは電話へのボイスコールなどの形態で送られるメッセージを生成してもよく、あるいは、例えばサンプル抽出などの他の手順を起動させてもよい。
【0040】
一実施形態において、デジタル信号処理アルゴリズムを、信号処理システムに統合された標準のデジタル信号処理チップ内で実施することができ、これにより、本発明の信号処理システムを統合するデバイスの全体的なコストを、比較的低くすることを可能にする。
信号処理システムは、計算デバイスにインストールすることができる回路板の形態で、コンピュータシステムに組み込むことができ、ここで例えば、コンピュータは、整合フィルタリングの後に受信情報を操作し、例えばシステムの操作者が容易に理解できるフォーマットに編成するための手段を提供することができる。あるいは、信号処理システムは、信号処理システムが独立して機能するための手段を提供する独立型のハードウェアを備えることができる。
【0041】
独立型の信号処理システム
【0042】
本発明の一実施形態において、信号処理システムは、独立型の構成で設計することができる。この種の独立型構成においては、信号処理システムは、例えばインターネットなどのグローバル通信システムと相互接続したり、ローカルエリアネットワーク(LAN)内でネットワーキングする能力をさらに含むことができる。通信ネットワークとのこの種の相互接続は、複数のテストサイトからの情報を、中央ステーションによって収集することを可能にすることができ、これにより、このテストデータを集めるために必要とされる作業員を、潜在的に減少させる。
【0043】
当業者に知られるように、システムからの情報を送信する通信システム(LAN、WAN、インターネット)と、情報に対して望まれるセキュリティの所望のレベルに応じて、データを暗号化するレベルを変化させることが、必要とされかつ実施されるかもしれない。
【0044】
本実施形態において、独立型の信号処理システムは、DSPブロックと、トランスミッタおよびレシーバブロックと、マイクロコントローラブロック(MCU)と、通信ブロックと、デジタルおよびアナログ電源ブロックとを備える。
【0045】
本実施形態において、DSPブロックは、デジタル信号処理チップと、外部メモリとを備える。DSPブロックは、検出器から送信される信号の高速リアルタイム処理のための計算アルゴリズムを実行する。このブロックは、また、エネルギーソースを変調することが可能な信号を生成し、この変調信号は、必要に応じて複数のエネルギーソースに対して多重伝送することができる。しかしながら、検出器は、2つ以上ある場合、それぞれ、受信信号に関する情報を送信するための、DSPブロックへの個別のチャンネルを有する。加えて、DSPブロックは、照明の放射を機械的にパルスする例えばチョッパなどのデバイスを制御することができる。当業者に知られるように、DSPチップに要求される処理速度は、処理される入力データの推定量および周波数によって決定することができる。このようにして、適切なチップを、その処理速度、例えばDSPが動作するヘルツ数、40Hz、60Hz等に基づいて決定することができる。
【0046】
本実施形態によると、トランスミッタおよびレシーバブロックは、アナログ−デジタル変換器(ADC)と、デジタル−アナログ変換器(DAC)と、低域通過フィルタとを備え、これらのフィルタは、受信信号のアンチエイリアシングを可能にする。一実施形態において、複数の発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオードを用いて、感知システム用のエネルギーソースとすることもできる。本実施形態において、トランスミッタおよびレシーバブロックは、マルチプレキサと、高出力増幅器とをさらに備え、マルチプレキサは、複数のエネルギーソースを個別に起動するための信号の送信を可能にし、高出力増幅器は、十分なエネルギーを供給してこれらのエネルギーソースを起動し、これらの最大電力出力を得るための手段を提供する。本発明の一実施形態において、2つのテキサスインスツルメンツ(Texas Instruments)のCODEC(コーダ/デコーダ(coder/decoder))、TLV320AIC20が、アナログ−デジタル変換器として用いられる。この例では、TLV320AIC20は、2つのアナログ−デジタル変換器と、2つのデジタル−アナログ変換器とを備える。したがって、これら2つのCODECを、独立型の信号処理システムに組み込むことによって、4つの独立入力チャンネルと、マルチプレキサを使用することによる任意の数の出力チャンネルが供給される。
【0047】
独立型の信号処理システムの通信ブロックの例は、例えばイーサネットチップ(イーサネットは登録商標)、ワイヤレスネットワークチップ、および/またはUSBチップなどのマルチプルネットワークコントローラカードを備え、これは、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)、例えばワイドエリアネットワーク(WAN)、GSM/GPRSまたはCDMA、あるいはローカルワイヤレスネットワーク(例えばBluetoothTMまたはIEEE802.11)などの、独立型の信号処理システムから通信ネットワークへの相互接続を可能にする。当業者は、所望のネットワーク接続に要求されるチップまたはカードのフォーマットおよび種類を、容易に理解するであろう。加えて、ネットワークブロックは、例えばRS−232ポートなどのシリアルインターフェイスを、さらに備えることができ、これは、例えばコンピュータまたはシリアルモデム、例えばダイヤルアップまたはワイヤレスタイプモデムあるいはモノクロメータへのシリアル接続などの、他のコンポーネントまたはシステムへのシリアルインターフェイスを提供することができる。通信ブロックは、したがって、リモートコンピューティングシステムまたはローカルコンピューティングシステムが、信号処理システムで動作するアルゴリズムの補正または置換に加え、構成データに加えて信号処理システムによって集められた情報にアクセスするための手段を提供することができる。例えば、独立型の信号処理システムが、遠隔地に配置されている場合、インターネットによる相互接続を介して、作業員が、例えば遠隔でのデータアクセスに加えて、信号処理システムの動作を修正することもできる。
【0048】
さらに、この独立型の実施形態においては、マイクロコントローラユニット(MCU)ブロックは、MCUチップと、外部メモリとを備え、MCUチップは、例えば8ビット、16ビット、または32ビットチップとしてもよい。MCUブロックは、DSPブロックおよび通信ブロックを管理し、ここで、MCUブロックは、DSPブロックから処理データを集め、この情報を、通信ブロックに転送する。照明放射および受信信号をフィルタおよび/または収束する、例えば信号フィルタまたはモノクロメータなどのデバイスを、MCUブロックにより制御することができる。MCUブロックは、データへの統計的分析を追加的に行うことができ、アラーム設定を起動することが可能である。例えば、テストサンプルの混濁レベルが所定レベルを超えた場合に、アラーム設定を起動してもよく、このアラーム起動は、さらに詳細な分析のためのサンプルの収集、または作業員へのアラーム起動の通知を含んでもよい。例えば整合フィルタリング手順の修正など、DSPブロックへのソフトウェア更新が要求される場合は、MCUブロックは、例えばDSPコードのリモートソフトウェア更新を管理することができる。MCUブロックに組み込まれるMCUチップの種類は、処理される情報の量に応じて、例えば当業者に知られるように、異なってもよい。一実施形態において、MCUチップは、2つの高精度のバイポーラDCモータを制御することを可能にするインターフェイスを有し、モータインターフェイスは、MCUチップのピンから、光学的に分離することができ、例えば、MCUチップに損傷を与える可能性を制限する。他の実施形態においては、MCUチップは、複数の一般出力ピンを有することができ、これらのピンは、信号処理システムにより制御される感知システムの外部の、例えば制御バルブ、温度センサ、または他の形態のセンサなどの、追加的なデバイス用に使用することができる。一実施形態において、MCUチップのプログラミングは、ISPインターフェイスによって提供することができ、このインターフェイスは、上述したように、通信ブロックによって提供することができる。本発明のさらなる実施形態においては、MCUブロックは、FPGA(field programmable gate array)チップおよび/またはCPLD(complex programmable logic device)チップと、リアルタイムクロックと、リセットチップとをさらに備え、FPGA/CPLDは、再プログラム可能な集積回路であり、アドレス復号ロジック、ボードリセットロジックおよび/または特殊アルゴリズムなどの、システムへの追加的な機能を提供する。
【0049】
独立型の信号処理システムのデジタルおよびアナログ電源ブロックは、調整されたDC電力を、独立型の信号処理システムの構成要素によって要求されるレベルに応じて、さまざまなレベルで供給することができる。一例において、この独立型システムへの入力電力は、例えば壁コンセントなどの、未調整または変化する電源によって供給してもよい。デジタルおよびアナログ電源ブロックは、入力電力を調整して、その後に独立型の信号処理システムの各構成要素に要求されるアナログおよびデジタル電圧レベルを生成できる要素を備える。例として、入力電力の調整を可能にする要素は、当業者に知られるように、変圧器、AC−DC変換器または他の任意の電力調整要素を含む。デジタルおよびアナログ電源ブロックは、また、バッテリバックアップ回路および電源異常検出回路を提供することができる。
【0050】
独立型の信号処理システムは、その内部で動作するバラエティソフトウェアを有し、このソフトウェアは、典型的には、ファームウェアと呼ばれ、独立型のシステムに、その機能を有効にさせる。当業者には、特定の種類のファームウェアは、独立型の信号処理システムのいずれか1つの構成において、存在してもよく、または存在しなくてもよいものであり、要求されるファームウェアは、特定の独立型の信号処理システムの所望の機能に基づいて決定されることが、容易に理解されるであろう。例えば、独立型のシステムにて実行することができるファームウェアの機能は、例えばBPSK原理などの所望のコーディング機能に基づく信号送信および検出と、受信された信号エネルギーのコード化パルスの初期クリーンアップを行うために用いられるデジタルフィルタリングと、受信されたコード化パルスの第2のクリーンアップを行う自動相関と、自動相関結果に基づく信号対雑音評価と、マイクロコントローラ/DSP通信インターフェイスソフトウェアと、マイクロコントローラ/シリアルポート通信インターフェイスソフトウェアと、コーデック用のソフトウェアドライバと、16進ファイルを読み込み、DSPに例えばその機能に関する指示などの内容をロードするように設計されたマイクロコントローラのローディングソフトウェアと、グルーロジック(glue-logic)を生成し、マイクロコントローラ、マルチプルネットワークコントローラ、および外部メモリチップとインターフェイスするように設計されたFPGA/CPLDソフトウェアと、ダイヤルアップおよび/またはワイヤレスモデムの動作を可能にするマイクロコントローラのドライバと、からなる群から選択することができる。
【0051】
本発明の一実施形態において、独立型の信号処理システムの概要が、図5に示される。この信号処理システムは、DPSブロック1010と、トランスミッタおよびレシーバブロック1000と、マイクロコントローラブロック(MCU)1020と、通信ブロック1030とを備える。DSPブロックは、検出器から受信された信号のためのアナログ低域通過フィルタと、アナログ−デジタル変換器と、デジタル−アナログ変換器と、エネルギーソースに送られる制御信号のためのアナログローパスフィルタとを含む要素を備える。DSPブロックは、狭帯域デジタルフィルタのバンクと、合計モジュールと、フィルタパルス周期バッファと、パルスコード相関器と、信号強さ検出器とを含む要素を備える。この独立型信号処理システムにおけるこれらの要素の相互関係は、例えば、図2に示されているものと同様とすることができる。
【0052】
弱信号の検出
【0053】
弱信号の検出を、本発明に係る信号処理システムの光感知システムとの相互接続の観点から説明する。弱信号の検出のためのこれらの技術は、例えば光音響感知システムまたはX線感知システムなどの代わりの感知システムと相互接続されている信号処理システムに対して、等しく適用可能とすることができる。当業者は、これらの弱信号検出技術を信号処理技術に統合して、代わりの感知システムと共に使用する方法を、容易に理解するであろう。
【0054】
一実施形態において、その基本的な簡潔さと、複雑さに比例して適度な雑音抑制をもたらすという事実により、トーン符号化方法を、信号符号化に用いる。この実施形態では、重要な考察は、1つの測定を得るのに必要な時間である。これは、1)基本的にサンプルレートにより分割された必要なサンプルの数である、周波数領域転送のためのサンプルを得るのに必要な時間、および2)基本的にフィルタの帯域の逆数である、帯域通過フィルタ技術の場合におけるフィルタ帯域幅、によって決定される。
【0055】
電気信号帯域幅とのトレードオフは、観察時間対雑音である。帯域幅が増加し、観察時間が減少すると、雑音電力が帯域幅に比例して増加する。雑音のどのような増加も、検出器の感度を減少させる。当該の領域をスキャンする合計処理時間は、T=Nτで決定することができ、ここでτは、1波長における1測定のための時間である。観察時間における2つの基本変数は、センサフィルタ帯域幅と、電気フィルタ帯域幅である。
【0056】
Tの概算の一次計算の例は、1)250nm〜800nmの範囲にわたる光スペクトルの分解、2)10nmの光分解能帯域幅、および3)10Hzの電気的帯域通過フィルタBW、の推定により行うことができ、したがって、τ=0.10秒である。これらの推定を用いることにより、スキャニング時間は、151.25秒、すなわち約2.5分である。
【0057】
多くの実施形態において、反応的な放射特性の周波数の検出が、主要な目的である。これらの反応的な放射特性は、入射信号とは異なるテストから発せられる周波数である。例えば、蛍光は、反応的な放射である。このような反応的な放射は、一般に、反射光よりもずっと弱い。感知システムのスペクトル分解能は、反射と蛍光波長を区別することが可能でなくてはならない。これは、プリズムの使用および/または浮遊放射を抑制する可変アパーチャを有する格子モノクロメータを与えることを通じて達成することができる。
【0058】
光サインを十分に分解するために、信号処理システムは、検出器によって検出される光放射の結果として生じる微弱信号を検出できなければならない。最終的な目的は、電気雑音、光背景放射、およびテストサンプルからの帯域外の放出(分光計のスペクトル分解能による)などに起因する、雑音の背景の中で、微弱信号を検出できることである。
【0059】
スペクトルサインの測定における他の変数は、a)テストサンプルが照らされる継続時間、b)テストサンプル第1面における照明の振幅、c)雑音変数の振幅、d)照明器における経時的なスペクトルシフト、およびe)テストサンプルの照明が中断された後にテストサンプルにより放出される蛍光の減衰、を含む。様々な検出方式の性能を比較するために、これらの変数を処理する必要がある。
【0060】
本発明の一実施形態において、テストサンプルの照明が中断される際に、テストサンプルから放出される蛍光の減衰する強度の検出を、受信光の適応フィルタリングによって可能にしてもよい。照明の中断は、エネルギーの伝送の完全な終了、または特定の照明波長の中断、であってもよい。本発明に係る信号処理システムにより制御される感知システムを使用した、テストサンプルにより放出される蛍光の減衰の測定は、テストサンプルの識別のための手段を提供することもできる。
【0061】
この状況に加えられるパルス振幅変調技術は、照明のオン−オフキーイングであってもよい。検出は、周囲雑音における信号の存在を検出する能力に基づく。信号検出能力は、信号を雑音から区別する能力に依存することがあり、一般に、雑音(典型的には>10dB)よりもずっと大きい信号電力を必要とする。オン−オフキーされた信号の例が、図6に示されている。この場合の信号対雑音(SNR)比は、0dBであり、信号プラス雑音を構成している部分から、信号の雑音部分を区別することはできない。
【0062】
周波数領域検出メカニズムは、一定周波数変調による信号の周波数変調に基づいた検出手段である。これは、オン−オフキーイングなどの時間領域検出手段に対する大きな利点を有する。信号および雑音のRMS振幅が等しい場合(SNR=0dB)があるにもかかわらず、変調信号の電力スペクトル密度は、通常、広帯域雑音の電力スペクトル密度よりもずっと大きい。搬送波は、a)DFTまたはFFTなどのスペクトル測定技術、およびb)変調周波数の位置にあるフィルタの中央周波数による狭帯域フィルタリング、を含む複数の手段によって、雑音から分離することができる。
【0063】
このことの例が、図7に示されている。この場合、第1信号のRMS振幅と雑音は等しい(SNR=0dB)。それぞれ0.50および0.1の第1信号に大きさが比例する2つの他の信号が、加えられた。時間領域信号は、偶然にも、図6に示されるものとまったく同じに見える。しかしながら、周波数領域において、第1および第2信号のピークが、明確である。この信号のサインは、雑音に埋没し、分解することができない。この検出技術は、実際に、実施が比較的容易であり、弱信号検出システムとの使用に適合することができる。
【0064】
パルスコーディング技術(2値、線形、強化)は、検出の代わりの手段である。パルスコーディング技術は、しばしば、雑音が存在する状態のでの、微弱信号の検出に用いられる。これらは、トーン検出やパルス振幅検出などの従来の技術よりも複雑となり得るが、これらは時折、検出される信号の振幅が雑音に対して弱く、パルスコーディングの他に信号対雑音比を増加するための利用可能な手段がない場合の選択肢となる。2つの可能なパルスコード化技術は、2値パルスコーディングおよび線形周波数変調(FM:Frequency Modulation)コーディングである。これらの技術の両方が、パルス圧縮および拡散スペクトルの範囲に分類され、バートン(Barton),DK(1978)、レーダーズボリューム3(Radars Volume 3):パルス圧縮(Pulse Compression)、アーテックハウス社(Artech House Inc.)を含む、数多くの参考文献に述べられている。
【0065】
2値パルスコーディングは、例として、均一乱数発生器を使用し、このデータから2値シーケンスを構築することにより作成することができる、1000ビットシンクワード(synchword)を使用する。パルスは、時間領域の特定の位置において生成され、相対振幅が測定される。時間領域相関出力の結果は、図8に示されている。振幅プロットにおいて、3つのパルスのすべてを検出することができる。3番目の最小の信号パルスが、雑音のみから区別できる。
【0066】
線形FMパルス圧縮(Linear FM Pulse Compression)方式は、レーダーシステムにおいて、送信信号の全体のピーク電力を減少する一方で、大きな検出範囲を達成するために、従来より使用されている。これらはまた、空中および宇宙空間での映像レーダーのための合成アパーチャレーダー(Synthetic Aperture Radar)処理において、顕著に現れている。このコーディングの形態は、搬送波信号を、持続時間τにわたってf1からf2に線形に掃引する(Δfの掃引帯域に対して)ことによって、達成される。一般的に、線形FMコード化信号の「出力電力」は、秒単位のパルス持続時間とヘルツ単位の掃引帯域幅の積である、時間帯域幅積(TBP:Time Bandwidth Product)Δfτによって増加される。検出プロセスは、基本的に、整合フィルタ検出器であり、これは、線形FM送信パルスと整合される。全体的なプロセスは、図9に示されている。信号s(t)は、ディラックのデルタ関数(Dirac Delta function)とすることができ、この関数は、実際には、持続時間τおよび帯域幅Δfを有する線形FMコード化パルス(またはチャープ(Chirp))である、送信信号U(τ,Δf)を生成するエンコーダh(t)のためのトリガパルスである。これは、テストサンプルを照らすためにエミッタを駆動する信号である。雑音n(t)が、システムと電子回路の両方において、コード化信号に加えられる。この信号は、検出器によって検出され、この検出器の電気出力信号は、実際の当該の信号と、システムの背景雑音と、検出器および電子回路内の電気雑音とを含む。整合フィルタ検出器が、続いて、この電気信号を処理する。当該の信号は、信号の3つの成分のうちで唯一、整合フィルタに整合するものであるため、これは、線形FMパルスコーディングによる利得を得る唯一の成分である。システムおよび電気雑音成分は、コード化信号に比例してほとんどが抑制される。これは、このような方式の利点である。線形FMチャープの出力は、図10に示されている。振幅プロットにおいて、最大の2つのパルスだけが検出可能であり、3番目は、ほとんどが雑音に埋没している。この例は、線形FMパルス圧縮技術によって提示されるコーディング利得を図によって示している。
【0067】
強化パルスコーディング技術(Enhanced Pulse Coding Technique)は、時間帯域幅積を増加させることによりより大きなコーディング利得が達成できることを利用する。この技術を用いて、最も弱い時間領域パルスが見えるようになった。
【0068】
TBPが200である元のケースのプロットが、図11に示されており、TBPが800である新しいケースが、図12に示されている。時間帯域幅積の増加が、コーディング利得を十分に増加させており、ここで、3番目のもっとも弱いパルスを、雑音フロアの上で見ることができる。コーディング利得は、23.0dBから29.0dBに増加され、または全体が6.0dB増加している。両方のプロットにおいて、電力は、サンプル100に位置するピークで基準化されている。200から800のTBPに動く際の雑音フロアの降下が、容易に見て取れる。
【0069】
この点をさらに示すために、2250のTBPのケースのプロットが、図13に示されている。この高い時間帯域幅積の検出方式を、他のコーディング技術と比べるために、検出器の振幅がプロットされた時間領域の大きさのプロットが、図14に示されている。雑音振幅は、√2250すなわち約47.4によって抑制されるであろう。パルス1のピーク振幅は、2505であり、パルス2は1252であり、パルス3は、250である。雑音の大きさは、ピーク1の信号の大きさと同じであり、したがって、雑音の大きさは、ほぼ52のレベルまで抑制されるであろう。図14に見られるように、これはほとんど、そのようなケースである。達成される高レベルの雑音抑制によって、パルス3の信号は、雑音背景に比べてよく見える。これは、パルス3が見えない図10のTBP=375のケースを、パルス3が見える図14のTBP=2250のケースと比べた場合に、容易に見て取れる。
【0070】
より高い時間帯域幅の積(Higher Time Bandwidth Products)を用いて、より高いコーディング利得を達成できるが、これらは、信号コーディングを達成するために用いられる手段に応じて限定される場合がある。機械的なチョッパは、線形FMコードをチョッパホイール(chopper wheel)に複製する能力によって、限定され、一方で、音響光変調器は、ずっと高いTBPを達成できるであろうが、費用がずっと高くなる。
【実施例1】
【0071】
実施例I:光システムと統合された信号処理システム
【0072】
この実施例では、本発明に係る信号処理システムが、光システムと統合される。結合された感知および信号処理システムは、前記信号処理システムに制御されて380〜500ナノメートルの範囲に及ぶ放射帯域幅を放出する照明光ソースとしての発光ダイオード(LED)と、b)前記信号処理システムにより制御され、照明デバイスから光を受け取り、かつ、パルスシーケンス内の第N波長を供給する、ステッパモータ制御格子モノクロメータと、c)コリメーティングおよび収束素子を有し、第N波長をテストサンプルに供給するモノクロメータに結合され、照明光学素子を、収集光学素子の集合と互いに一定の角度となるように配向する集合に配置された、光ファイバプローブと、d)結果として生じる第N波長の放射を集め、波長分離するために信号処理システムによっても制御されるステッパモータ制御格子検出モノクロメータに結合された集光レンズおよびファイバを介して情報を供給するための、収集手段と、e)Ga−As集積化フォトダイオードおよび増幅器などの光検出器とを備える。
【0073】
信号処理システムは、照明のパルスコーディングに32ビット線形FMパルスコーディング技術を用いた照明変調コーディング信号の生成を、さらに可能にする。検出パルスコーディングは、時間帯域幅の積を、使用されるコーディング技術に整合された整合相関レシーバにより分解し、放射の特定の振幅の検出が、信号処理システムに、特定の信号応答特性をテストするための特定ルーチンを実行するよう促すことができる。例えば、蛍光および反射を、照明の波長の制限に応じて測定する。
【0074】
本発明の信号処理システムを光感知システムと統合するこの実施例は、特定の波長で照らすことによるテストサンプルからの反射および蛍光の検出を、可能にすることができる。
【実施例2】
【0075】
実施例II:流体サンプルを分析するために光システムと統合された信号処理システム
【0076】
本発明に係る信号処理システムの他の実施例は、例えば流水サンプル内の混濁および/または生物量を検出するために、流体サンプルの分析を行うように設計された光システムと統合される。この信号処理システムおよび光システムの形態は、例えば石油サンプルの分析に使用してもよい。光システムの本実施例において、テストサンプルのスペクトル性質における変化が、検出および評価される。
【0077】
図15は、水分析を対照とした本実施例に係る統合システムを示している。統合システムは、信号処理システム600と、LED制御システム610と、照明システム620と、光プローブ700を配置することができるサンプルチャンバまたは水流630と、検出光学素子640と、光検出器650と、光検出器電子回路660と、信号処理システム600が接続されるネットワーク670とを備える。流水に入れることができる光プローブ700は、照明システム620と検出光学素子640の両方を備えることができ、これらは、照明を当てることにより水サンプルによって放出される放射の検出を最大化するように配置することができる。
【0078】
信号処理システム600は、信号処理、データ処理、システム制御を含むタスクを、制御ロジックの使用および例えばインターネットまたはローカルエリアネットワーク(LAN)などの外部ネットワークとの通信を介して行うことを可能にするために互いに統合された、ソフトウェアおよびハードウェアを備える。信号処理システムによって行われる信号処理は、照明信号(放射)の符号化を可能にする信号発生器の動作を含む。その上、信号処理システムによって可能となる信号処理は、FIR整合フィルタリングと、受信光信号(水サンプルにより放出された、検出された放射)の相関フィルタリングとを含む。信号処理システムにより行われるデータ処理は、集められたデータの収集、処理および分析を含むことができる。例えば検出された放射の特定レベルの戻り期間を決定するために、データの統計的分析を、信号処理システムによって行ってもよい。水流からサンプルをサンプルチャンバに引き出すためのバルブの制御と、LEDスイッチの制御によるLEDの作動の制御は、両方とも、信号処理システムに組み込まれた制御ロジックによって提供される。制御ロジックは、追加的に、光ワイパを制御してもよく、光ワイパは、光プローブに集積し成長する可能性がある付着生物の除去に使用することができる。光ワイパを含むことにより、プローブをサンプルチャンバまたは水流から取り出してクリーニングする頻度を少なくすることができる。信号処理システムは、ネットワークとの接続を可能する通信システムをさらに備え、これにより、作業員がテスト場所を訪れてデータを回収する必要なしに、集められた情報を他の場所に送信することが可能となる。本実施形態において、この通信は、イーサネット(Eithernet)リンクを構成することを可能にするソフトウェアおよびハードウェアによって提供される。
【0079】
LED制御610は、LEDスイッチと、高電流増幅器とを含み、LEDスイッチは、所望のLEDを作動させ、高電流増幅器は、利用可能な供給電力を、所望の輝度レベルへのLEDの作動に適合するレベルに変換する。
【0080】
光プローブ700は、照明システム620と検出光学素子640の両方を備え、このプローブは、直接水流に、または水流から抽出された水を含むサンプルチャンバに入れることができる。プローブが、動いている水流に入れられる場合、プローブの形状は、水流の乱れを最小にするよう設計されるべきである。照明システムは、LEDアレイと、LEDアレイにより生成されたフォトニクス放射を収束するためのLED光学素子とを備える。LEDアレイは、単一のダイオードまたは集積されたダイオードとしてもよく、これにより、波長の所定の帯域を測る。一実施形態において、緑色および青色発光ダイオードが、光システムにおいて使用される。検出光学素子は、放射が光検出器650により検出され、検出された放射が電子信号に変換される前に、集められた放射をプリフィルタするための光帯域通過フィルタに加えて、水サンプルにより放出される放射を集めるためのレンズを備える。
【0081】
光検出器電子回路660は、例えば水サンプル照明に関連して集められた情報の整合フィルタリングなどの、信号処理システムによる処理の前に、集められた情報をプリフィルタする集積されたフィルタを備える。
【0082】
本発明の本実施形態において、信号処理システムは、独立型のシステムであり、例えば信号処理システムを壁コンセントなどの標準的なAC電源に接続するための、内部電源または電力変換器を含んでもよい。加えて、この独立型の信号処理システムは、この統合システムを、例えば給水システムにおける様々な位置などの、複数の場所に配置することを可能にする。この統合システムの集まりを、例えばインターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークに相互接続することによって、これらの統合システムにより集められ処理された情報を、作業員が各テスト場所を訪れて情報を集める必要なしに、中央サイトに送信することができる。この種の統合システムは、給水システムを効率的かつ高い費用効率で評価するための手段を提供することができる。
【0083】
この統合システムは、反射および蛍光を検出することが可能であり、反射は、水サンプルの混濁度を示し、蛍光は、水サンプルに含まれる生体物質を示す。当業者には、生体物質が、照明を当てられると蛍光を発し、蛍光の強度を検出することで、水システム内の生体物質のレベルの決定を潜在的に可能にできる、ということが知られている。この統合システムの実施形態は、水流内の反射および蛍光の変化を評価し、これにより、特に関連し得る状況を識別することが潜在的に可能となる。このようにして、水流の光サイン内に特定レベルの変化を検出した際に、信号処理システムは、サンプリング手順を起動することが可能であってもよく、ここで、水流のサンプルは、研究室での分析のために収集される。この種のほぼ一定なテストおよび選択的な研究室分析は、給水システムを監視するコストを潜在的に減少させ、潜在的な問題の識別を増加させることができる。
【実施例3】
【0084】
実施例III:光音響感知システムと統合された信号処理システム
【0085】
さらなる実施例は、本発明の信号処理システムを、光音響感知システムと統合し、光信号の変調およびテストサンプルを照らすことの結果として生じる音響信号の復調を可能にする。この信号処理システムの統合は、例えば光反応の評価など、他の技術を使用して検出することができない選択された電磁放射への音響反応に基づいて、テストサンプルの特性を識別するための手段を提供することができる。
【実施例4】
【0086】
実施例IV:X線感知システムと統合された信号処理システム
【0087】
他の実施例は、X線感知システムと統合された信号処理システムの使用であり、これにより、X線または他の高エネルギー電磁信号を、例えば原子構造または他の特性の評価に使用することができる。このような種類の電磁放射は、長年にわたって、広範囲の有機および非有機物質の分析に使用されている。本発明の信号処理システムの統合により、X線感知デバイスの検出特性の強化を実現することができる。
【0088】
非常に小さな波長および原子のスケールで寸法を区別する現在の能力にもかかわらず、DSPシステムを使用したX線信号の変調および復調は、X線分析システムの性能を改善する機会を提示する。これらのX線検出システムは、X線反射と、X線吸収と、X線蛍光システムとを備える。
【0089】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらは、多くの方法で変更可能であることは明白である。このような変更は、本発明の趣旨および範囲からの逸脱とはみなされず、すべてのこのような修正は、当業者に明らかなように、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態に係る信号処理システムを組み込んだシステムの概要である。
【図2】本発明の一実施形態に係る信号処理システムに統合された信号パルス処理システムの概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る、図2の狭帯域デジタルフィルタのバンクに統合するためのシンボルレート(Fs)を示す。
【図4】本発明の一実施形態に係る、図2のパルスコード相関器において用いることができる時間領域相関モデルの概略描写である。
【図5】本発明の一実施形態に係る、独立型のシステムの一部として動作するように構成されている信号処理システムの概要である。
【図6】0dBの信号対雑音比を有する、パルス振幅変調検出を用いてオンオフキーされた信号を示している。
【図7】周波数領域検出を用いた信号検出を示している。
【図8】2値パルスコーディング信号検出からの時間領域相関出力の結果を示している。
【図9】パルスコーディングチャンネルモデルの概略的描写である。
【図10】幅が125ミリセカンドの長方形の関数であり、500Hzから3500Hzまで掃引され、8000サンプル/秒でサンプリングされた線形のFMチャープ(FM Chirp)を用いた検出器出力を示している。
【図11】パルス持続時間が0.125秒に残され、200の時間帯域幅積(TBP)に対し帯域幅が1600Hzである、線形のFMパルスコーディング技術の使用を示している。検出器のログスケールは、Sを整合フィルタの時間領域出力とする、P=20×logSとして計算された。
【図12】800のTBPに対する図11での線形FMパルスコーディング技術の使用を示している。
【図13】2250のTBPに対する図11での線形FMパルスコーディング技術の使用を示している。
【図14】2250のTBPの場合の、検出器振幅がプロットされた時間領域プロットである。
【図15】統合された本発明に係る信号処理システムを有する光システムを示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理の分野に関し、特に、感知システムと共に使用して、その制御および強化された信号検出を可能にするための信号処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
先に送信された入射信号に基づく、標的からの結果として生じる信号の検出は、これらの標的の材料の識別および合成を可能にするために広く用いられてきた。多くの場合、反射された、または結果として生じる信号は、入射信号の周波数および信号の種類などの特性を保持する。他の場合では、結果として生じる信号は、入射周波数の他に、例えば追加的な周波数を含むことがある。これらの追加的な周波数は、入射信号と共に、標的物質の組成に関する情報を提供することがあり、この情報は、物質を形成する元素の濃度を含むかもしれない。
【0003】
感知システムの具体的な実施形態は、分光計であり、反射および蛍光に鑑みると、入射信号と同じ周波数を有して反射される信号の検出は、通常、他の周波数を有して生成される、例えば蛍光よりも容易である。蛍光は、入射周波数と同じ周波数で反射される信号よりも著しく低い振幅レベルで、広い周波数範囲にわたって送信することができる。物質により放出される蛍光信号の強さは、システムの雑音レベルよりも低い場合があり、したがって、識別または評価することができない可能性があり、この雑音は、システム内の周囲雑音および/または電気雑音である場合がある。
【0004】
米国特許第6,002,477号(特許文献1)は、分光光度計装置を述べており、この装置は、検出されたスペクトルサインへの雑音の影響を減少するための手段を提供し、この減少は、物質から検出されるエネルギーの検出に与えるその影響を減少させるために、システム内の雑音レベルの決定に依存している。分光光度計は、光の各バーストにより生成された光ビームの強度を、このビームがサンプルに相互作用した後に測定する。このような光ビームはそれぞれ、サンプルとの相互作用の前に、第1および第2部分に分割することができ、光システムは、第1部分をサンプルに向け、第2部分を基準測定を行うための第2検出器に向けて配置される。暗信号測定を、光の各バーストの直前または直後に行ってもよい。このように、システム内の雑音を決定する基準信号を有することにより、受信信号を分離するための手段が提供される。しかしながら、この雑音補償の形は、基本的に、所望の信号を識別するために信号の減算を行うが、この種の技術は、結果として所望の信号を除去する場合がある。
【0005】
よって、検出システム内の雑音のために容易に検出されない、物質からの低レベルの放射を検出することを可能にし、検出される放出は、所定の種類の電磁気放射との相互作用の結果である、新たな信号処理システムおよび技術の必要性がある。
【0006】
この背景情報は、本出願者が信じる既知の情報を、本発明と関連付けるために提供される。どの認識も、先の情報のいずれかが本発明に対抗する従来技術を構成することを、意図するものではなく、またはそのように解釈されるべきではない。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,002,477号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、信号処理システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、雑音が存在する状態での信号の検出を可能にする、感知システムを制御するための信号処理システムであって、前記感知システムは、入射信号を生成するためのエネルギーソースと、前記入射信号をテストサンプルに向けるための放出処理システムと、前記入射信号に反応した前記テストサンプルからの1つまたは複数の結果として生じる信号を収集するための受信信号処理システムと、前記1つまたは複数の結果として生じる信号を電気信号に変換するための検出器とを含むものである、信号処理システムにおいて、前記エネルギーソースおよび前記受信信号処理システムに操作可能に接続された放出制御システムであって、前記放出制御システムは、第1制御信号を前記エネルギーソースに送信し、前記エネルギーソースは、これにより、符号化入射信号をパルスフォーマットで生成し、前記放出制御システムは、第2制御信号を前記受信信号処理システムに送り、前記1つまたは複数の結果として生じる信号の前記収集を、その後の前記検出器による電気信号への変換のために制御する、放出制御システムと、前記検出器からの前記電気信号を、前記符号化入射信号と整合相関し、これにより、雑音が存在する状態で送信された前記入射信号に対する前記テストサンプルの反応を分離することを可能にするための、DSP受信信号処理システムとを備える信号処理システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
定義
【0011】
「弱信号の検出」という表現は、サンプルからの低強度放出放射の測定を可能にするために用いられる技術を指す。任意の信号対雑音比に対して、情報の転送に用いられる帯域幅を増加させることにより、情報誤り率を下げることができる。信号の帯域幅は、雑音のあるチャンネルにおいて送信される前に広げられ、次いで、受信の前に狭められる。このプロセスは、結果として処理利得と呼ばれるものを生じる。
【0012】
「信号を広げる」という表現は、信号を広げるいくつかの手段を指し、これは、線形周波数変調(Linear Frequency Modulation)(時にはチャープ変調(Chirp Modulation)とも呼ばれる)および直接シーケンス(Direct Sequence)法ならびに他の技術を含む。
【0013】
「信号を狭める」という表現は、相関レシーバ(Correlation Receiver)または整合フィルタ(Matched Filter)レシーバ技術を用いて、受信信号を、類似した局部基準信号と相関させることにより、達成される処理を指す。2つの信号が整合される場合、広げられた信号は、広げられる前の元の帯域幅に縮められ、一方で、整合しない信号はいずれも、局部基準によって、基本的に送信帯域幅まで広げられる。このフィルタは、次に、所望の信号以外をすべて除外する。したがって、その干渉(例えば検出システムにおける熱雑音、周辺システム誘発雑音、ACライン雑音)内にある所望の信号を最適化するために、整合フィルタレシーバが、信号を強化し、一方で、雑音を含むすべての他の入力の影響を抑制する。
【0014】
他に定義されない限り、ここで用いられるすべての技術および科学的表現は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。
【0015】
本発明は、信号処理システムと、それによって情報の処理を行うための方法を提供する。この信号処理システムは、感知システムと共に使用するために設計され、この感知システムでは、符号化信号が、テストサンプルに向けられ、結果として生じる信号が収集されて符号化信号と相関され、これにより、テストサンプルの送信信号への応答の検出を可能にし、この検出は、測定されるテストサンプルの理解を可能にすることができる。このような信号は、電磁気または音響であってもよく、これらは例えば、分光計、光音響感知システム、X線システムのような感知システム、または当業者に容易に理解されるような電磁気放射を方向付けおよび検出するための他の感知システムを含む。信号処理システムは、テストサンプルに送信される信号のフォーマットおよびこの送信の結果として生じるテストサンプルから受信される信号の両方の検出と、その後のこれらの相関とを制御するための制御信号を、感知システムに供給する。送信および検出信号の両方を制御することにより、信号処理システムは、この情報を相関させることができ、検出能力を向上させ、これにより、テストサンプルを分析する改善された手段を提供する。
【0016】
図1には、例として、信号処理システム5と感知システム7との相互接続性が示されている。感知システムは、信号処理システム5(具体的にはエミッタ制御電子回路10)により制御され、1つまたは複数の入射信号22を放出するエネルギーソース15と、信号処理システム5(具体的にはエミッタ制御電子回路10)により制御され、エネルギーソース15から入射信号を受け取り、かつ、入射信号のうちの1つまたは複数を、符号化されたフォーマットでテストサンプル25に供給する放出処理手段20とを備える。一実施形態において、放出処理手段20は、1つまたは複数の照明波長を分離する手段と、照明波長をテストサンプル25に向けて収束させるエミッタ手段とを備えることができる。エネルギーソースが電磁照明ソースである一実施形態においては、照明とテストサンプルの間のこの相互作用は、反射された電磁気放射と、テストサンプルの性質の結果として生成される蛍光放射の形を取ることができる。いくつかのケースでは、これらの電磁気サインは、テストサンプル内の主要な要素またはテストサンプル内に存在するいくつかの材料の結果として生じる。例えば、テストサンプルが水である場合、電磁気サインは、例えば、水それ自体および/または水サンプル内の浮遊固体または溶解組成物の結果として生じることができる。
【0017】
感知システムは、受信信号処理手段30をさらに備え、受信信号処理手段30は、信号処理システム5(具体的にはエミッタ制御電子回路10)により制御され、先に送信された入射信号による、テストサンプル25からの1つまたは複数の結果として生じる信号27を収集し分離する。受信信号処理手段30は、テストサンプル25から結果として生じる信号を収集するための検出器システムと、結果として生じる信号の1つまたは複数を分離するための手段とを備えることができる。その上、感知システムは、受信信号処理手段30によって送信される結果として生じる信号を感知して電気信号に変換するための検出器35と、信号処理システム5の構成要素であり、検出器35の出力に整合フィルタリング(より具体的には整合相関)を行うDSP受信信号処理手段40とを備える。結果として生じる信号の整合フィルタリングは、検出器35からの受信電気信号および入射信号の符号化フォーマットを表すエミッタ制御電子回路10からの制御パラメータに基づいて行われる。一実施形態においては、信号の強さの推定値を、信号の強さの現在値に基づくリアルタイム決定を含むタスクを行うことができる制御ブロック500に渡すことができ、かつ/または、後の送信のためにさらに通信ブロック510に渡す。
【0018】
さらに図1を参照すると、雑音または干渉が感知システム7および信号処理システム5に入るためのさまざまな位置があり、この干渉は、符号化入射信号を送信することによりテストサンプルから受信された信号を検出する能力を下げることが可能である。例えば、周囲雑音が、受信信号処理手段30を介して感知システムに入ることができ、電気雑音が、DSP受信信号処理手段40を介して信号処理システムに入ることができる。信号処理システムは、入射信号を符号化するための手段と、符号化入射信号に関連する、結果として生じる信号の整合フィルタリング(または相関)とを提供することができる。このようにして、信号処理システムは、符号化入射信号をテストサンプルに送信することの結果として生じる信号の検出の改善を可能にする。この改善された検出能力は、雑音抑制および信号強化の結果であり、これは、入射信号をコード化波形と共にテストサンプルに送信し、テストサンプルからの結果として生じる信号を、送信波形のレプリカと相関して、相関出力を生成することにより達成され、この相関出力は、入射信号とテストサンプルの相互作用の結果として生じる信号の度合いに比例する。一例において、テストサンプルは、エネルギーソースにより照らされ、相関出力は、照明がテストサンプルと相互作用した結果として生じる反射および/または蛍光の度合いに比例する。
【0019】
特に蛍光を考慮すると、これは、サンプルが波長λ0のエネルギーで照らされると、これのエネルギーはサンプルに吸収され、波長λ1の放射が、サンプルにより放出され、ここでλ1>λ0となる現象である。放出が、励起段階の間または励起の後の非常に短い期間内に起こる場合、このプロセスは、一般に蛍光と呼ばれ、時間定数は、通常、10〜8秒未満である。励起パルスの持続時間が、非常に短い場合、蛍光放出の強度は、指数関数的な時間減衰プロファイルを示し、ここで蛍光減衰tdの時間定数は、励起されるサンプルの特性である。指数関数的な減衰の末尾は、放出波長e-(t/τd)で減衰し、ここでτdは、照らされるサンプルの減衰時間定数である。照らされる単一原子または分子サンプルのための指数関数項は、励起エネルギーを加えた後のいくらかの時間τdに、放出光子が放出される可能性に比例する。サンプルは、非常に大きな数の原子または分子成分を含み、放出特性は、全サンプルの全体的平均となる。この場合、励起が加えられ、続いてこの強度が減衰した後、時間的に継続する蛍光放射の光強度が、ある期間にわたって実際に見られる。コード化された照明の励起を、テストサンプルに加える場合、上述したものと同じ全体的平均減衰特性を、観察することができる。この場合、蛍光減衰定数τdよりもずっと長いコード化パルスを用いて、励起放射を「変調」することができ、以下に述べるパルス圧縮技術を用いて、放出放射によって生成される信号を圧縮することができる。この場合のパルス圧縮技術の使用は、通常、励起されるテストサンプルが、蛍光を助長する非常に大きな数の原子または分子成分を含む場合にのみ有効である。
【0020】
信号処理システム
【0021】
信号処理システムを用いて、エネルギーソース、放出処理手段、および受信信号処理手段またはこれらの任意の組み合わせを制御することができる。信号処理システムにより提供されるこの制御は、テストサンプルに送信される1つまたは複数の入射信号と関連する、1つまたは複数の結果として生じる信号の検出を可能にし、ここで、この検出は、システムへの雑音の導入が存在する状態で行うことができる。信号処理システムは、エミッタ制御電子回路を備え、この回路は、送信された入射信号(放出処理システム)と、受信信号処理システムとを制御するための手段を提供する。その上、信号処理システムは、受信信号処理手段を備え、この手段は、信号処理システムが、結果として生じる信号を、最初に送信された入射信号と相関させることを可能にする。例として、本発明の信号処理システムは、所定の波長の光で照らすことによるテストサンプルからの反射および蛍光を識別するための手段を提供することができ、この例で制御される感知システムは、分光計の形態とすることができる。
【0022】
以下の説明は、本発明に係る信号処理システムの、例えば分光計などの光感知システムとの統合への直接の適用により説明される。当業者は、信号処理システムを統合して他の感知システムを制御する方法を、容易に理解するであろう。他の感知システムには、当業者には容易に理解されるように、光音響感知システムまたはX線感知システムあるいは他の形態の感知システムが含まれる。
【0023】
一実施形態において、照明放射を制御するエミッタ制御電子回路は、電力を供給し、かつ、回路を駆動して、電気エネルギーを照明エネルギーに変換すること、信号ソースのパルスの振幅およびタイミングを制御すること、照明放射をフィルタ、収束、または機械的にパルスする、例えばフィルタ、モノクロメータ、コリメータ、および/またはチョッパなどのデバイスを制御すること、を含むタスクを行う。加えて、エミッタ制御電子回路は、受信信号処理手段を制御するための手段を提供し、照らされることによるテストサンプルからの反射および蛍光信号波長の分離を可能にする。例えば、モノクロメータを、受信信号処理手段に組み込むことにより、所望の波長を分離するための手段を提供することができる。モノクロメータの機能は、受信信号処理システムによって制御することができる。
【0024】
コーディング機能の形態を、エミッタ制御電子回路によって使用して、テストサンプルと相互作用する前に照明信号を符号化することができ、このコーディング機能は、任意の数の信号変調技術により提供することができる。例えば、パルスコードソフトウェアを用いて、信号制御デバイス周波数の直接変調(パルス周波数変調、PFM(pulse frequency modulation))のために同期パルスを生成することができる。PFMにより、パルスの周波数を変調して、所望の情報を符号化する。パルスコードソフトウェアを用いて、信号制御デバイス振幅の直接変調(パルス振幅変調、PAM(pulse amplitude modulation))のための同期パルスを生成することができ、PAMにより、パルスの振幅を変調して、所望の情報を符号化する。加えて、パルスコードソフトウェアを用いて、信号制御デバイスパルス幅の直接変調(パルス幅変調、PWM(pulse width modulation))のために同期パルスを生成することができる。PWMにより、パルスの幅を変調して、所望の変調を符号化する。最終的に、固定同期パルスを生成してパルスレートおよび振幅の変調を可能にする関数発生器を、例えばチョッパ、シャッタ、ガルボミラー等の間接的な信号変調器のための同期パルスを生成する機械的エンコーダドライバに加えて使用して、照明信号を符号化してもよい。
【0025】
本発明の一実施形態において、エミッタ制御電子回路によって使用されるコーディング機能は、BPSK(binary phase shift keying)であり、これは、デジタル変調フォーマットである。BPSKは、弱信号の受信に対して非常に効果的となり得る変調技術である。BPSK変調を用いて、搬送波信号の位相が、デジタルビットストリームに従って180°シフトされる。BPSKのデジタルコーディング方法は、次の通りである。「1」が、搬送波信号の位相遷移(180°)を起こさせ、「0」は、位相遷移を起こさせない。この変調技術を使用して、レシーバは、差分コヒーレント検出プロセスを行い、このプロセスでは、各ビットの位相が、続くビットの位相と比較される。BPSK変調の使用は、例えばオンオフキーイングなどの他の変調技術と比較した場合、改善された信号対雑音利点を提供することができる。
【0026】
本発明の一実施形態において、DSP受信信号処理手段は、検出器から受信された電気信号と、放出制御電子回路によって定義された対応する期間の、整合フィルタ相関を可能にする。送信および受信信号の間のこの相関は、感知システムまたは信号処理システムに入り得る雑音(例えば周囲雑音および/または電気雑音)に対し、強化された受信信号の識別のための手段を提供することができる。放出パルスシーケンスと同期され整合された、受信信号のフィルタリングと時間平均化は、信号対雑音比(SNR:signal-to-noise ratio)を強化することができ、当該の波長でのサンプル反応の測定の信頼性を向上させることができる。
【0027】
整合フィルタは、当該の信号の正確なコピーまたは基準である。基準は、入力信号と相関され、この手順は、基本的に、フィルタの全持続時間にわたる、基準によって乗算された信号の積の合計である。この手順は、図4に示されている。基準信号と当該の信号が整合した場合、相関(回旋(convolution))の合計は、通常、不整合の合計に比例してピークに到達し、感知システムおよび信号処理システム内の外部雑音に対し、信号を識別するための手段を提供する。本発明の一実施形態においては、整合フィルタリングの形態を、パルスレートの間隔に中心が合わされた狭帯域フィルタのバンクによって提供することができ、このバンクは、パルススペクトルからより多くの高調波を捉えることができ、これにより、改善された信号パルスエネルギー推定と、検出された波長のその後の識別のための手段を提供することができる。これは、受信された信号におけるエネルギーのより多くが、相関の決定に使用される、ということの結果である。
【0028】
本発明の一実施形態においては、時間領域拡散関数が、F(ω)で表され、受信信号が、H(ω)で表された場合、整合フィルタレシーバの出力は、次のデジタル信号プロセッサを用いて得ることができる。
【0029】
【数1】
【0030】
ここで、ω=2πfである。
【0031】
この式において、F(ω)は、入力信号f(t)のフーリエ変換であり、H(ω)は、レシーバ線形フィルタh(t)のフーリエ変換である。整合フィルタにおいて、レシーバ線形フィルタH(ω)は、レシーバ出力s(t)の、特定の入力信号f(t)に対する、ピーク信号対雑音比を最適化するように調整される。
【0032】
【数2】
【0033】
レシーバ線形フィルタ反応H(ω)が、上記の式で与えられる場合、出力信号対雑音比が最大化され、レシーバフィルタ反応H(ω)が、入力信号f(t)に整合され、ここで、f(t)は、フーリエ変換F(ω)を有する。上記の2つの式は、「情報送信、変調および雑音、通信システム向けの統一された手法(Information Transmission, Modulation and Noise, A Unified Approach to Communication System)」、シュワルツ(Schwartz)、ミーシャ(Mischa)、第3版、から取られたものである。整合フィルタレシーバは、検出が望まれる出力信号s(t)の信号対雑音比を、潜在的に最大化することを可能にする。よって、整合フィルタレシーバは、出力信号の最適な検出を提供することができる。整合フィルタレシーバは、線形のシステムであるため、s(t)は、反射の強さおよび検出器への蛍光照明に正比例する。整合フィルタの使用は、雑音(システムの外部および内部雑音)が存在する状態での、他のシステムを用いて検出できないかもしれない弱信号の検出を可能にすることができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、信号処理システムは、アナログフロントエンドおよびデジタルバックエンドタスクの両方を行う。一般的に、アナログ処理タスクは、小さなセンサ信号を修復し、非常に選択的なフィルタリング動作を加えること、に関係する。デジタル領域タスクは、エネルギー検出およびデータ出力に関するさらなる信号フィルタリングおよび分析機能に関係する。干渉を潜在的に最小化し、散弾雑音に対する耐性を提供するために、照明信号を、典型的には数百Hzの周波数によって変調することができる。アナログセクションは、検出出力を高利得増幅およびプリフィルタして、変調周波数を修復するように、設計することができる。これらの信号を使用して、狭帯域追跡フィルタが、変調信号修復に対する高い感度を提供することができる。増幅後の狭帯域フィルタの出力は、アナログ/デジタル変換され、DSPに入力され、DSPは、リアルタイムで、フィルタリング、エネルギー検出、結果の平均化および使用可能なデータへの変換のバックエンドタスクを行うことができる。フィルタリングは、アナログ処理の最後段に導入される可能性があるa/c雑音および高調波歪みの排除を、さらに強化することができる。フィルタリングの後には、平均化エネルギー検出器を置くことができ、この検出器は、センサ信号のエネルギーに比例する値を出力する。これらの値は、例えばコンピュータなどのホスト装置に、短い間隔で送ることができ、この装置で保存し、さらなる分析のために処理することができる。
【0035】
本発明の他の実施形態において、信号処理システムは、図2に示されるように設計することができる。最初に、パルスシーケンス発生器450が、基準信号をパルスコード相関器480に送信し、生成されたシーケンスを定義するデジタル信号をデジタル−アナログ変換器460にさらに送信する。結果として生じるアナログパルスが、アナログ低域通過フィルタ470を通過すると、照明ソースに送られ、照明ソースは、その後、これらのパルスに基づいてテストサンプルを照らす。照らすことによりテストサンプルから放出された放射を収集および検出すると、放射検出の結果として検出器により生成されたパルスが、アナログ低域通過フィルタ(LPF:analog low pass filter)400に入力され、このフィルタは、フィルタされた情報を、アナログ−デジタル変換器(ADC:analog to digital converter)410に送信する。アナログLPFは、fs/2を超える周波数を抑えることができ、ここでfsは、例えば、ADCのサンプリングレートであり、これにより、アンチエイリアシングフィルタリングを提供する。このデジタル化された情報は、狭帯域デジタルフィルタ420のバンクに送られ、ここで、各フィルタが、パルスシーケンススペクトル(入力信号パルス)のラインのうちの1つと整合され、その後、合計モジュール420に送信される。各フィルタは、n*fsに中心が合わされ、ここで、nは1〜Nの整数であり、Nはフィルタの最大数である。図3は、パルスコード信号の時間領域表現を示している。これらは、しばしば、擬似ランダム2値シーケンスと称され、「コードワード」800を定めるn個のランダムビットを含む。コードワードを形成するnビットのそれぞれは、「シンボル」と称され、持続時間Tsを有し、この持続時間は、しばしばシンボル期間と称される。シンボルレートFsは、シンボルが送信されるレートであり、Fs=1/Tsで与えられる。このような方法は、受信信号のレプリカとの整合、または、基準コード化波形の整合を可能にして、システム内の外部雑音に対して信号を識別するものであり、整合フィルタリングと呼ぶことができる。
【0036】
狭帯域デジタルフィルタ420のバンクにおいて実施される個別フィルタは、実質的に、基本周波数成分および基準パルスの高調波周波数成分をフィルタし、これらは、信号の個別のスペクトル成分を得るために合計モジュール430にて合計され、これにより、フィルタされた受信信号の出力のほとんどが、テストサンプルに送信されたコード化照明信号の結果となる。合計モジュール430からの合計は、フィルタ−パルス周期バッファ440に格納され、送信信号とパルスコード相関器480にて相関され、その結果は、相関バッファ520に格納される。図4は、パルスコード相関器において使用することができる時間領域相関モデルの模式的な描写を示しているが、当業者に容易に理解されるように、他の相関モデルを使用してもよい。信号強さ検出器490と、品質評価器530は、相関バッファ520内の情報に基づいて信号強さ評価値と品質指標データを計算することができ、その後、信号強さ評価値と品質指標データを、信号処理システムの制御ロジック500に送ることができる。制御ロジック500は、信号処理システムのスケジューリング制御と構成制御を行う手段を提供する。制御ロジック500は、また、感知システムと信号処理システムの現在の状態に基づいたリアルタイムの決定を行うことができる。信号強さ評価値および品質指標データは、その後、例えば通信ブロック510または他の手段を介して、パーソナルコンピュータ内に位置する計算デバイスまたは中央コントローラに送信することができ、使用可能かつ提供可能なフォーマットに編成され、例えば、集められた情報のグラフィック表現を生成し、かつ/またはデータをデータベースに格納する。
【0037】
さらに図4を参照すると、時間サンプリングされた入力信号Xm(t)850が、長さnのサンプルのシフトレジスタに格納され、シフトレジスタは、最近のサンプルx1(t)と、最後のn−1個のサンプルとを含むため、「タップ遅延ライン(tapped delay line)」と称することができる。「タップ遅延ライン」内のn個のサンプルは、送信されたパルスシーケンスを表す相関基準関数のn個のサンプルを含む整合基準関数レジスタY860にて、対応するサンプルによって乗算される。「タップ遅延ライン」内の対応するサンプルの積、すなわちその都度サンプリングされた入力信号×対応する整合基準関数が、合計される。この合計は、この時点での「タップ遅延ライン」内のサンプルデータのための相関出力信号C(t)870を表す。この相関の形態は、パルスコード送信方法を実施する本発明の実施形態において、または例えば「線形周波数変調」などの他のコーディング手段と共に使用することができる。整合基準関数は、基本的に、テストサンプルの照明を制御するために生成された信号の時間サンプリングされたレプリカである。
【0038】
さらに図4を参照すると、次のサンプルデータ値x0が、「タップ遅延ライン」に配置され、これは結果として、「タップ遅延ライン」内の前のサンプルを、図4の右側へとシフトさせる。具体的には、新しいサンプルx0がx1(t)となり、サンプルx1(t)がサンプルx2(t)となり、以下同様に続き、サンプルxnが、「タップ遅延ライン」から捨てられる。「タップ遅延ライン」内の対応するサンプル、すなわちその都度サンプリングされる入力信号と、対応する整合基準関数が、再度乗算および合計され、次の相関結果を提供する。このプロセスは、新しいサンプルが「タップ遅延ライン」に加えられるまで続けられ、その結果が、時間サンプリングされた相関結果となる。
【0039】
本発明の一実施形態において、信号処理システムの機能は、1つまたは複数の動作をアラーム設定の起動により行うことが可能な、アラーム設定をさらに含むことができる。例えば、信号処理システムは、常に、処理データに対して相関および統計的分析を行うことができ、ひとたび受信信号の変化が所定レベルに達すると、信号処理システムは、アラーム設定を起動することができる。アラーム設定の起動は、結果として、感知システムおよび信号処理システムを監視している作業員に、例えば警告灯、ブザー、電子メール、携帯電話メッセージまたは電話へのボイスコールなどの形態で送られるメッセージを生成してもよく、あるいは、例えばサンプル抽出などの他の手順を起動させてもよい。
【0040】
一実施形態において、デジタル信号処理アルゴリズムを、信号処理システムに統合された標準のデジタル信号処理チップ内で実施することができ、これにより、本発明の信号処理システムを統合するデバイスの全体的なコストを、比較的低くすることを可能にする。
信号処理システムは、計算デバイスにインストールすることができる回路板の形態で、コンピュータシステムに組み込むことができ、ここで例えば、コンピュータは、整合フィルタリングの後に受信情報を操作し、例えばシステムの操作者が容易に理解できるフォーマットに編成するための手段を提供することができる。あるいは、信号処理システムは、信号処理システムが独立して機能するための手段を提供する独立型のハードウェアを備えることができる。
【0041】
独立型の信号処理システム
【0042】
本発明の一実施形態において、信号処理システムは、独立型の構成で設計することができる。この種の独立型構成においては、信号処理システムは、例えばインターネットなどのグローバル通信システムと相互接続したり、ローカルエリアネットワーク(LAN)内でネットワーキングする能力をさらに含むことができる。通信ネットワークとのこの種の相互接続は、複数のテストサイトからの情報を、中央ステーションによって収集することを可能にすることができ、これにより、このテストデータを集めるために必要とされる作業員を、潜在的に減少させる。
【0043】
当業者に知られるように、システムからの情報を送信する通信システム(LAN、WAN、インターネット)と、情報に対して望まれるセキュリティの所望のレベルに応じて、データを暗号化するレベルを変化させることが、必要とされかつ実施されるかもしれない。
【0044】
本実施形態において、独立型の信号処理システムは、DSPブロックと、トランスミッタおよびレシーバブロックと、マイクロコントローラブロック(MCU)と、通信ブロックと、デジタルおよびアナログ電源ブロックとを備える。
【0045】
本実施形態において、DSPブロックは、デジタル信号処理チップと、外部メモリとを備える。DSPブロックは、検出器から送信される信号の高速リアルタイム処理のための計算アルゴリズムを実行する。このブロックは、また、エネルギーソースを変調することが可能な信号を生成し、この変調信号は、必要に応じて複数のエネルギーソースに対して多重伝送することができる。しかしながら、検出器は、2つ以上ある場合、それぞれ、受信信号に関する情報を送信するための、DSPブロックへの個別のチャンネルを有する。加えて、DSPブロックは、照明の放射を機械的にパルスする例えばチョッパなどのデバイスを制御することができる。当業者に知られるように、DSPチップに要求される処理速度は、処理される入力データの推定量および周波数によって決定することができる。このようにして、適切なチップを、その処理速度、例えばDSPが動作するヘルツ数、40Hz、60Hz等に基づいて決定することができる。
【0046】
本実施形態によると、トランスミッタおよびレシーバブロックは、アナログ−デジタル変換器(ADC)と、デジタル−アナログ変換器(DAC)と、低域通過フィルタとを備え、これらのフィルタは、受信信号のアンチエイリアシングを可能にする。一実施形態において、複数の発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオードを用いて、感知システム用のエネルギーソースとすることもできる。本実施形態において、トランスミッタおよびレシーバブロックは、マルチプレキサと、高出力増幅器とをさらに備え、マルチプレキサは、複数のエネルギーソースを個別に起動するための信号の送信を可能にし、高出力増幅器は、十分なエネルギーを供給してこれらのエネルギーソースを起動し、これらの最大電力出力を得るための手段を提供する。本発明の一実施形態において、2つのテキサスインスツルメンツ(Texas Instruments)のCODEC(コーダ/デコーダ(coder/decoder))、TLV320AIC20が、アナログ−デジタル変換器として用いられる。この例では、TLV320AIC20は、2つのアナログ−デジタル変換器と、2つのデジタル−アナログ変換器とを備える。したがって、これら2つのCODECを、独立型の信号処理システムに組み込むことによって、4つの独立入力チャンネルと、マルチプレキサを使用することによる任意の数の出力チャンネルが供給される。
【0047】
独立型の信号処理システムの通信ブロックの例は、例えばイーサネットチップ(イーサネットは登録商標)、ワイヤレスネットワークチップ、および/またはUSBチップなどのマルチプルネットワークコントローラカードを備え、これは、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)、例えばワイドエリアネットワーク(WAN)、GSM/GPRSまたはCDMA、あるいはローカルワイヤレスネットワーク(例えばBluetoothTMまたはIEEE802.11)などの、独立型の信号処理システムから通信ネットワークへの相互接続を可能にする。当業者は、所望のネットワーク接続に要求されるチップまたはカードのフォーマットおよび種類を、容易に理解するであろう。加えて、ネットワークブロックは、例えばRS−232ポートなどのシリアルインターフェイスを、さらに備えることができ、これは、例えばコンピュータまたはシリアルモデム、例えばダイヤルアップまたはワイヤレスタイプモデムあるいはモノクロメータへのシリアル接続などの、他のコンポーネントまたはシステムへのシリアルインターフェイスを提供することができる。通信ブロックは、したがって、リモートコンピューティングシステムまたはローカルコンピューティングシステムが、信号処理システムで動作するアルゴリズムの補正または置換に加え、構成データに加えて信号処理システムによって集められた情報にアクセスするための手段を提供することができる。例えば、独立型の信号処理システムが、遠隔地に配置されている場合、インターネットによる相互接続を介して、作業員が、例えば遠隔でのデータアクセスに加えて、信号処理システムの動作を修正することもできる。
【0048】
さらに、この独立型の実施形態においては、マイクロコントローラユニット(MCU)ブロックは、MCUチップと、外部メモリとを備え、MCUチップは、例えば8ビット、16ビット、または32ビットチップとしてもよい。MCUブロックは、DSPブロックおよび通信ブロックを管理し、ここで、MCUブロックは、DSPブロックから処理データを集め、この情報を、通信ブロックに転送する。照明放射および受信信号をフィルタおよび/または収束する、例えば信号フィルタまたはモノクロメータなどのデバイスを、MCUブロックにより制御することができる。MCUブロックは、データへの統計的分析を追加的に行うことができ、アラーム設定を起動することが可能である。例えば、テストサンプルの混濁レベルが所定レベルを超えた場合に、アラーム設定を起動してもよく、このアラーム起動は、さらに詳細な分析のためのサンプルの収集、または作業員へのアラーム起動の通知を含んでもよい。例えば整合フィルタリング手順の修正など、DSPブロックへのソフトウェア更新が要求される場合は、MCUブロックは、例えばDSPコードのリモートソフトウェア更新を管理することができる。MCUブロックに組み込まれるMCUチップの種類は、処理される情報の量に応じて、例えば当業者に知られるように、異なってもよい。一実施形態において、MCUチップは、2つの高精度のバイポーラDCモータを制御することを可能にするインターフェイスを有し、モータインターフェイスは、MCUチップのピンから、光学的に分離することができ、例えば、MCUチップに損傷を与える可能性を制限する。他の実施形態においては、MCUチップは、複数の一般出力ピンを有することができ、これらのピンは、信号処理システムにより制御される感知システムの外部の、例えば制御バルブ、温度センサ、または他の形態のセンサなどの、追加的なデバイス用に使用することができる。一実施形態において、MCUチップのプログラミングは、ISPインターフェイスによって提供することができ、このインターフェイスは、上述したように、通信ブロックによって提供することができる。本発明のさらなる実施形態においては、MCUブロックは、FPGA(field programmable gate array)チップおよび/またはCPLD(complex programmable logic device)チップと、リアルタイムクロックと、リセットチップとをさらに備え、FPGA/CPLDは、再プログラム可能な集積回路であり、アドレス復号ロジック、ボードリセットロジックおよび/または特殊アルゴリズムなどの、システムへの追加的な機能を提供する。
【0049】
独立型の信号処理システムのデジタルおよびアナログ電源ブロックは、調整されたDC電力を、独立型の信号処理システムの構成要素によって要求されるレベルに応じて、さまざまなレベルで供給することができる。一例において、この独立型システムへの入力電力は、例えば壁コンセントなどの、未調整または変化する電源によって供給してもよい。デジタルおよびアナログ電源ブロックは、入力電力を調整して、その後に独立型の信号処理システムの各構成要素に要求されるアナログおよびデジタル電圧レベルを生成できる要素を備える。例として、入力電力の調整を可能にする要素は、当業者に知られるように、変圧器、AC−DC変換器または他の任意の電力調整要素を含む。デジタルおよびアナログ電源ブロックは、また、バッテリバックアップ回路および電源異常検出回路を提供することができる。
【0050】
独立型の信号処理システムは、その内部で動作するバラエティソフトウェアを有し、このソフトウェアは、典型的には、ファームウェアと呼ばれ、独立型のシステムに、その機能を有効にさせる。当業者には、特定の種類のファームウェアは、独立型の信号処理システムのいずれか1つの構成において、存在してもよく、または存在しなくてもよいものであり、要求されるファームウェアは、特定の独立型の信号処理システムの所望の機能に基づいて決定されることが、容易に理解されるであろう。例えば、独立型のシステムにて実行することができるファームウェアの機能は、例えばBPSK原理などの所望のコーディング機能に基づく信号送信および検出と、受信された信号エネルギーのコード化パルスの初期クリーンアップを行うために用いられるデジタルフィルタリングと、受信されたコード化パルスの第2のクリーンアップを行う自動相関と、自動相関結果に基づく信号対雑音評価と、マイクロコントローラ/DSP通信インターフェイスソフトウェアと、マイクロコントローラ/シリアルポート通信インターフェイスソフトウェアと、コーデック用のソフトウェアドライバと、16進ファイルを読み込み、DSPに例えばその機能に関する指示などの内容をロードするように設計されたマイクロコントローラのローディングソフトウェアと、グルーロジック(glue-logic)を生成し、マイクロコントローラ、マルチプルネットワークコントローラ、および外部メモリチップとインターフェイスするように設計されたFPGA/CPLDソフトウェアと、ダイヤルアップおよび/またはワイヤレスモデムの動作を可能にするマイクロコントローラのドライバと、からなる群から選択することができる。
【0051】
本発明の一実施形態において、独立型の信号処理システムの概要が、図5に示される。この信号処理システムは、DPSブロック1010と、トランスミッタおよびレシーバブロック1000と、マイクロコントローラブロック(MCU)1020と、通信ブロック1030とを備える。DSPブロックは、検出器から受信された信号のためのアナログ低域通過フィルタと、アナログ−デジタル変換器と、デジタル−アナログ変換器と、エネルギーソースに送られる制御信号のためのアナログローパスフィルタとを含む要素を備える。DSPブロックは、狭帯域デジタルフィルタのバンクと、合計モジュールと、フィルタパルス周期バッファと、パルスコード相関器と、信号強さ検出器とを含む要素を備える。この独立型信号処理システムにおけるこれらの要素の相互関係は、例えば、図2に示されているものと同様とすることができる。
【0052】
弱信号の検出
【0053】
弱信号の検出を、本発明に係る信号処理システムの光感知システムとの相互接続の観点から説明する。弱信号の検出のためのこれらの技術は、例えば光音響感知システムまたはX線感知システムなどの代わりの感知システムと相互接続されている信号処理システムに対して、等しく適用可能とすることができる。当業者は、これらの弱信号検出技術を信号処理技術に統合して、代わりの感知システムと共に使用する方法を、容易に理解するであろう。
【0054】
一実施形態において、その基本的な簡潔さと、複雑さに比例して適度な雑音抑制をもたらすという事実により、トーン符号化方法を、信号符号化に用いる。この実施形態では、重要な考察は、1つの測定を得るのに必要な時間である。これは、1)基本的にサンプルレートにより分割された必要なサンプルの数である、周波数領域転送のためのサンプルを得るのに必要な時間、および2)基本的にフィルタの帯域の逆数である、帯域通過フィルタ技術の場合におけるフィルタ帯域幅、によって決定される。
【0055】
電気信号帯域幅とのトレードオフは、観察時間対雑音である。帯域幅が増加し、観察時間が減少すると、雑音電力が帯域幅に比例して増加する。雑音のどのような増加も、検出器の感度を減少させる。当該の領域をスキャンする合計処理時間は、T=Nτで決定することができ、ここでτは、1波長における1測定のための時間である。観察時間における2つの基本変数は、センサフィルタ帯域幅と、電気フィルタ帯域幅である。
【0056】
Tの概算の一次計算の例は、1)250nm〜800nmの範囲にわたる光スペクトルの分解、2)10nmの光分解能帯域幅、および3)10Hzの電気的帯域通過フィルタBW、の推定により行うことができ、したがって、τ=0.10秒である。これらの推定を用いることにより、スキャニング時間は、151.25秒、すなわち約2.5分である。
【0057】
多くの実施形態において、反応的な放射特性の周波数の検出が、主要な目的である。これらの反応的な放射特性は、入射信号とは異なるテストから発せられる周波数である。例えば、蛍光は、反応的な放射である。このような反応的な放射は、一般に、反射光よりもずっと弱い。感知システムのスペクトル分解能は、反射と蛍光波長を区別することが可能でなくてはならない。これは、プリズムの使用および/または浮遊放射を抑制する可変アパーチャを有する格子モノクロメータを与えることを通じて達成することができる。
【0058】
光サインを十分に分解するために、信号処理システムは、検出器によって検出される光放射の結果として生じる微弱信号を検出できなければならない。最終的な目的は、電気雑音、光背景放射、およびテストサンプルからの帯域外の放出(分光計のスペクトル分解能による)などに起因する、雑音の背景の中で、微弱信号を検出できることである。
【0059】
スペクトルサインの測定における他の変数は、a)テストサンプルが照らされる継続時間、b)テストサンプル第1面における照明の振幅、c)雑音変数の振幅、d)照明器における経時的なスペクトルシフト、およびe)テストサンプルの照明が中断された後にテストサンプルにより放出される蛍光の減衰、を含む。様々な検出方式の性能を比較するために、これらの変数を処理する必要がある。
【0060】
本発明の一実施形態において、テストサンプルの照明が中断される際に、テストサンプルから放出される蛍光の減衰する強度の検出を、受信光の適応フィルタリングによって可能にしてもよい。照明の中断は、エネルギーの伝送の完全な終了、または特定の照明波長の中断、であってもよい。本発明に係る信号処理システムにより制御される感知システムを使用した、テストサンプルにより放出される蛍光の減衰の測定は、テストサンプルの識別のための手段を提供することもできる。
【0061】
この状況に加えられるパルス振幅変調技術は、照明のオン−オフキーイングであってもよい。検出は、周囲雑音における信号の存在を検出する能力に基づく。信号検出能力は、信号を雑音から区別する能力に依存することがあり、一般に、雑音(典型的には>10dB)よりもずっと大きい信号電力を必要とする。オン−オフキーされた信号の例が、図6に示されている。この場合の信号対雑音(SNR)比は、0dBであり、信号プラス雑音を構成している部分から、信号の雑音部分を区別することはできない。
【0062】
周波数領域検出メカニズムは、一定周波数変調による信号の周波数変調に基づいた検出手段である。これは、オン−オフキーイングなどの時間領域検出手段に対する大きな利点を有する。信号および雑音のRMS振幅が等しい場合(SNR=0dB)があるにもかかわらず、変調信号の電力スペクトル密度は、通常、広帯域雑音の電力スペクトル密度よりもずっと大きい。搬送波は、a)DFTまたはFFTなどのスペクトル測定技術、およびb)変調周波数の位置にあるフィルタの中央周波数による狭帯域フィルタリング、を含む複数の手段によって、雑音から分離することができる。
【0063】
このことの例が、図7に示されている。この場合、第1信号のRMS振幅と雑音は等しい(SNR=0dB)。それぞれ0.50および0.1の第1信号に大きさが比例する2つの他の信号が、加えられた。時間領域信号は、偶然にも、図6に示されるものとまったく同じに見える。しかしながら、周波数領域において、第1および第2信号のピークが、明確である。この信号のサインは、雑音に埋没し、分解することができない。この検出技術は、実際に、実施が比較的容易であり、弱信号検出システムとの使用に適合することができる。
【0064】
パルスコーディング技術(2値、線形、強化)は、検出の代わりの手段である。パルスコーディング技術は、しばしば、雑音が存在する状態のでの、微弱信号の検出に用いられる。これらは、トーン検出やパルス振幅検出などの従来の技術よりも複雑となり得るが、これらは時折、検出される信号の振幅が雑音に対して弱く、パルスコーディングの他に信号対雑音比を増加するための利用可能な手段がない場合の選択肢となる。2つの可能なパルスコード化技術は、2値パルスコーディングおよび線形周波数変調(FM:Frequency Modulation)コーディングである。これらの技術の両方が、パルス圧縮および拡散スペクトルの範囲に分類され、バートン(Barton),DK(1978)、レーダーズボリューム3(Radars Volume 3):パルス圧縮(Pulse Compression)、アーテックハウス社(Artech House Inc.)を含む、数多くの参考文献に述べられている。
【0065】
2値パルスコーディングは、例として、均一乱数発生器を使用し、このデータから2値シーケンスを構築することにより作成することができる、1000ビットシンクワード(synchword)を使用する。パルスは、時間領域の特定の位置において生成され、相対振幅が測定される。時間領域相関出力の結果は、図8に示されている。振幅プロットにおいて、3つのパルスのすべてを検出することができる。3番目の最小の信号パルスが、雑音のみから区別できる。
【0066】
線形FMパルス圧縮(Linear FM Pulse Compression)方式は、レーダーシステムにおいて、送信信号の全体のピーク電力を減少する一方で、大きな検出範囲を達成するために、従来より使用されている。これらはまた、空中および宇宙空間での映像レーダーのための合成アパーチャレーダー(Synthetic Aperture Radar)処理において、顕著に現れている。このコーディングの形態は、搬送波信号を、持続時間τにわたってf1からf2に線形に掃引する(Δfの掃引帯域に対して)ことによって、達成される。一般的に、線形FMコード化信号の「出力電力」は、秒単位のパルス持続時間とヘルツ単位の掃引帯域幅の積である、時間帯域幅積(TBP:Time Bandwidth Product)Δfτによって増加される。検出プロセスは、基本的に、整合フィルタ検出器であり、これは、線形FM送信パルスと整合される。全体的なプロセスは、図9に示されている。信号s(t)は、ディラックのデルタ関数(Dirac Delta function)とすることができ、この関数は、実際には、持続時間τおよび帯域幅Δfを有する線形FMコード化パルス(またはチャープ(Chirp))である、送信信号U(τ,Δf)を生成するエンコーダh(t)のためのトリガパルスである。これは、テストサンプルを照らすためにエミッタを駆動する信号である。雑音n(t)が、システムと電子回路の両方において、コード化信号に加えられる。この信号は、検出器によって検出され、この検出器の電気出力信号は、実際の当該の信号と、システムの背景雑音と、検出器および電子回路内の電気雑音とを含む。整合フィルタ検出器が、続いて、この電気信号を処理する。当該の信号は、信号の3つの成分のうちで唯一、整合フィルタに整合するものであるため、これは、線形FMパルスコーディングによる利得を得る唯一の成分である。システムおよび電気雑音成分は、コード化信号に比例してほとんどが抑制される。これは、このような方式の利点である。線形FMチャープの出力は、図10に示されている。振幅プロットにおいて、最大の2つのパルスだけが検出可能であり、3番目は、ほとんどが雑音に埋没している。この例は、線形FMパルス圧縮技術によって提示されるコーディング利得を図によって示している。
【0067】
強化パルスコーディング技術(Enhanced Pulse Coding Technique)は、時間帯域幅積を増加させることによりより大きなコーディング利得が達成できることを利用する。この技術を用いて、最も弱い時間領域パルスが見えるようになった。
【0068】
TBPが200である元のケースのプロットが、図11に示されており、TBPが800である新しいケースが、図12に示されている。時間帯域幅積の増加が、コーディング利得を十分に増加させており、ここで、3番目のもっとも弱いパルスを、雑音フロアの上で見ることができる。コーディング利得は、23.0dBから29.0dBに増加され、または全体が6.0dB増加している。両方のプロットにおいて、電力は、サンプル100に位置するピークで基準化されている。200から800のTBPに動く際の雑音フロアの降下が、容易に見て取れる。
【0069】
この点をさらに示すために、2250のTBPのケースのプロットが、図13に示されている。この高い時間帯域幅積の検出方式を、他のコーディング技術と比べるために、検出器の振幅がプロットされた時間領域の大きさのプロットが、図14に示されている。雑音振幅は、√2250すなわち約47.4によって抑制されるであろう。パルス1のピーク振幅は、2505であり、パルス2は1252であり、パルス3は、250である。雑音の大きさは、ピーク1の信号の大きさと同じであり、したがって、雑音の大きさは、ほぼ52のレベルまで抑制されるであろう。図14に見られるように、これはほとんど、そのようなケースである。達成される高レベルの雑音抑制によって、パルス3の信号は、雑音背景に比べてよく見える。これは、パルス3が見えない図10のTBP=375のケースを、パルス3が見える図14のTBP=2250のケースと比べた場合に、容易に見て取れる。
【0070】
より高い時間帯域幅の積(Higher Time Bandwidth Products)を用いて、より高いコーディング利得を達成できるが、これらは、信号コーディングを達成するために用いられる手段に応じて限定される場合がある。機械的なチョッパは、線形FMコードをチョッパホイール(chopper wheel)に複製する能力によって、限定され、一方で、音響光変調器は、ずっと高いTBPを達成できるであろうが、費用がずっと高くなる。
【実施例1】
【0071】
実施例I:光システムと統合された信号処理システム
【0072】
この実施例では、本発明に係る信号処理システムが、光システムと統合される。結合された感知および信号処理システムは、前記信号処理システムに制御されて380〜500ナノメートルの範囲に及ぶ放射帯域幅を放出する照明光ソースとしての発光ダイオード(LED)と、b)前記信号処理システムにより制御され、照明デバイスから光を受け取り、かつ、パルスシーケンス内の第N波長を供給する、ステッパモータ制御格子モノクロメータと、c)コリメーティングおよび収束素子を有し、第N波長をテストサンプルに供給するモノクロメータに結合され、照明光学素子を、収集光学素子の集合と互いに一定の角度となるように配向する集合に配置された、光ファイバプローブと、d)結果として生じる第N波長の放射を集め、波長分離するために信号処理システムによっても制御されるステッパモータ制御格子検出モノクロメータに結合された集光レンズおよびファイバを介して情報を供給するための、収集手段と、e)Ga−As集積化フォトダイオードおよび増幅器などの光検出器とを備える。
【0073】
信号処理システムは、照明のパルスコーディングに32ビット線形FMパルスコーディング技術を用いた照明変調コーディング信号の生成を、さらに可能にする。検出パルスコーディングは、時間帯域幅の積を、使用されるコーディング技術に整合された整合相関レシーバにより分解し、放射の特定の振幅の検出が、信号処理システムに、特定の信号応答特性をテストするための特定ルーチンを実行するよう促すことができる。例えば、蛍光および反射を、照明の波長の制限に応じて測定する。
【0074】
本発明の信号処理システムを光感知システムと統合するこの実施例は、特定の波長で照らすことによるテストサンプルからの反射および蛍光の検出を、可能にすることができる。
【実施例2】
【0075】
実施例II:流体サンプルを分析するために光システムと統合された信号処理システム
【0076】
本発明に係る信号処理システムの他の実施例は、例えば流水サンプル内の混濁および/または生物量を検出するために、流体サンプルの分析を行うように設計された光システムと統合される。この信号処理システムおよび光システムの形態は、例えば石油サンプルの分析に使用してもよい。光システムの本実施例において、テストサンプルのスペクトル性質における変化が、検出および評価される。
【0077】
図15は、水分析を対照とした本実施例に係る統合システムを示している。統合システムは、信号処理システム600と、LED制御システム610と、照明システム620と、光プローブ700を配置することができるサンプルチャンバまたは水流630と、検出光学素子640と、光検出器650と、光検出器電子回路660と、信号処理システム600が接続されるネットワーク670とを備える。流水に入れることができる光プローブ700は、照明システム620と検出光学素子640の両方を備えることができ、これらは、照明を当てることにより水サンプルによって放出される放射の検出を最大化するように配置することができる。
【0078】
信号処理システム600は、信号処理、データ処理、システム制御を含むタスクを、制御ロジックの使用および例えばインターネットまたはローカルエリアネットワーク(LAN)などの外部ネットワークとの通信を介して行うことを可能にするために互いに統合された、ソフトウェアおよびハードウェアを備える。信号処理システムによって行われる信号処理は、照明信号(放射)の符号化を可能にする信号発生器の動作を含む。その上、信号処理システムによって可能となる信号処理は、FIR整合フィルタリングと、受信光信号(水サンプルにより放出された、検出された放射)の相関フィルタリングとを含む。信号処理システムにより行われるデータ処理は、集められたデータの収集、処理および分析を含むことができる。例えば検出された放射の特定レベルの戻り期間を決定するために、データの統計的分析を、信号処理システムによって行ってもよい。水流からサンプルをサンプルチャンバに引き出すためのバルブの制御と、LEDスイッチの制御によるLEDの作動の制御は、両方とも、信号処理システムに組み込まれた制御ロジックによって提供される。制御ロジックは、追加的に、光ワイパを制御してもよく、光ワイパは、光プローブに集積し成長する可能性がある付着生物の除去に使用することができる。光ワイパを含むことにより、プローブをサンプルチャンバまたは水流から取り出してクリーニングする頻度を少なくすることができる。信号処理システムは、ネットワークとの接続を可能する通信システムをさらに備え、これにより、作業員がテスト場所を訪れてデータを回収する必要なしに、集められた情報を他の場所に送信することが可能となる。本実施形態において、この通信は、イーサネット(Eithernet)リンクを構成することを可能にするソフトウェアおよびハードウェアによって提供される。
【0079】
LED制御610は、LEDスイッチと、高電流増幅器とを含み、LEDスイッチは、所望のLEDを作動させ、高電流増幅器は、利用可能な供給電力を、所望の輝度レベルへのLEDの作動に適合するレベルに変換する。
【0080】
光プローブ700は、照明システム620と検出光学素子640の両方を備え、このプローブは、直接水流に、または水流から抽出された水を含むサンプルチャンバに入れることができる。プローブが、動いている水流に入れられる場合、プローブの形状は、水流の乱れを最小にするよう設計されるべきである。照明システムは、LEDアレイと、LEDアレイにより生成されたフォトニクス放射を収束するためのLED光学素子とを備える。LEDアレイは、単一のダイオードまたは集積されたダイオードとしてもよく、これにより、波長の所定の帯域を測る。一実施形態において、緑色および青色発光ダイオードが、光システムにおいて使用される。検出光学素子は、放射が光検出器650により検出され、検出された放射が電子信号に変換される前に、集められた放射をプリフィルタするための光帯域通過フィルタに加えて、水サンプルにより放出される放射を集めるためのレンズを備える。
【0081】
光検出器電子回路660は、例えば水サンプル照明に関連して集められた情報の整合フィルタリングなどの、信号処理システムによる処理の前に、集められた情報をプリフィルタする集積されたフィルタを備える。
【0082】
本発明の本実施形態において、信号処理システムは、独立型のシステムであり、例えば信号処理システムを壁コンセントなどの標準的なAC電源に接続するための、内部電源または電力変換器を含んでもよい。加えて、この独立型の信号処理システムは、この統合システムを、例えば給水システムにおける様々な位置などの、複数の場所に配置することを可能にする。この統合システムの集まりを、例えばインターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークに相互接続することによって、これらの統合システムにより集められ処理された情報を、作業員が各テスト場所を訪れて情報を集める必要なしに、中央サイトに送信することができる。この種の統合システムは、給水システムを効率的かつ高い費用効率で評価するための手段を提供することができる。
【0083】
この統合システムは、反射および蛍光を検出することが可能であり、反射は、水サンプルの混濁度を示し、蛍光は、水サンプルに含まれる生体物質を示す。当業者には、生体物質が、照明を当てられると蛍光を発し、蛍光の強度を検出することで、水システム内の生体物質のレベルの決定を潜在的に可能にできる、ということが知られている。この統合システムの実施形態は、水流内の反射および蛍光の変化を評価し、これにより、特に関連し得る状況を識別することが潜在的に可能となる。このようにして、水流の光サイン内に特定レベルの変化を検出した際に、信号処理システムは、サンプリング手順を起動することが可能であってもよく、ここで、水流のサンプルは、研究室での分析のために収集される。この種のほぼ一定なテストおよび選択的な研究室分析は、給水システムを監視するコストを潜在的に減少させ、潜在的な問題の識別を増加させることができる。
【実施例3】
【0084】
実施例III:光音響感知システムと統合された信号処理システム
【0085】
さらなる実施例は、本発明の信号処理システムを、光音響感知システムと統合し、光信号の変調およびテストサンプルを照らすことの結果として生じる音響信号の復調を可能にする。この信号処理システムの統合は、例えば光反応の評価など、他の技術を使用して検出することができない選択された電磁放射への音響反応に基づいて、テストサンプルの特性を識別するための手段を提供することができる。
【実施例4】
【0086】
実施例IV:X線感知システムと統合された信号処理システム
【0087】
他の実施例は、X線感知システムと統合された信号処理システムの使用であり、これにより、X線または他の高エネルギー電磁信号を、例えば原子構造または他の特性の評価に使用することができる。このような種類の電磁放射は、長年にわたって、広範囲の有機および非有機物質の分析に使用されている。本発明の信号処理システムの統合により、X線感知デバイスの検出特性の強化を実現することができる。
【0088】
非常に小さな波長および原子のスケールで寸法を区別する現在の能力にもかかわらず、DSPシステムを使用したX線信号の変調および復調は、X線分析システムの性能を改善する機会を提示する。これらのX線検出システムは、X線反射と、X線吸収と、X線蛍光システムとを備える。
【0089】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらは、多くの方法で変更可能であることは明白である。このような変更は、本発明の趣旨および範囲からの逸脱とはみなされず、すべてのこのような修正は、当業者に明らかなように、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態に係る信号処理システムを組み込んだシステムの概要である。
【図2】本発明の一実施形態に係る信号処理システムに統合された信号パルス処理システムの概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る、図2の狭帯域デジタルフィルタのバンクに統合するためのシンボルレート(Fs)を示す。
【図4】本発明の一実施形態に係る、図2のパルスコード相関器において用いることができる時間領域相関モデルの概略描写である。
【図5】本発明の一実施形態に係る、独立型のシステムの一部として動作するように構成されている信号処理システムの概要である。
【図6】0dBの信号対雑音比を有する、パルス振幅変調検出を用いてオンオフキーされた信号を示している。
【図7】周波数領域検出を用いた信号検出を示している。
【図8】2値パルスコーディング信号検出からの時間領域相関出力の結果を示している。
【図9】パルスコーディングチャンネルモデルの概略的描写である。
【図10】幅が125ミリセカンドの長方形の関数であり、500Hzから3500Hzまで掃引され、8000サンプル/秒でサンプリングされた線形のFMチャープ(FM Chirp)を用いた検出器出力を示している。
【図11】パルス持続時間が0.125秒に残され、200の時間帯域幅積(TBP)に対し帯域幅が1600Hzである、線形のFMパルスコーディング技術の使用を示している。検出器のログスケールは、Sを整合フィルタの時間領域出力とする、P=20×logSとして計算された。
【図12】800のTBPに対する図11での線形FMパルスコーディング技術の使用を示している。
【図13】2250のTBPに対する図11での線形FMパルスコーディング技術の使用を示している。
【図14】2250のTBPの場合の、検出器振幅がプロットされた時間領域プロットである。
【図15】統合された本発明に係る信号処理システムを有する光システムを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雑音が存在する状態での信号の検出を可能にする、感知システムを制御するための信号処理システムであって、前記感知システムは、入射信号を生成するためのエネルギーソースと、前記入射信号をテストサンプルに向けるための放出処理システムと、前記入射信号に反応した前記テストサンプルからの1つまたは複数の結果として生じる信号を収集するための受信信号処理システムと、前記1つまたは複数の結果として生じる信号を電気信号に変換するための検出器とを含むものである、信号処理システムにおいて、
a)前記エネルギーソースおよび前記受信信号処理システムに操作可能に接続された放出制御システムであって、前記放出制御システムは、第1制御信号を前記エネルギーソースに送信し、前記エネルギーソースは、これにより、符号化入射信号をコード化フォーマットで生成し、前記放出制御システムは、第2制御信号を前記受信信号処理システムに送り、前記1つまたは複数の結果として生じる信号の前記収集を、その後の前記検出器による電気信号への変換のために制御する、放出制御システムと、
b)前記検出器からの前記電気信号を、前記符号化入射信号と整合相関し、これにより、雑音が存在する状態で送信された前記入射信号に対する前記テストサンプルの反応を分離することを可能にするための、DSP受信信号処理システムと
を備えることを特徴とする信号処理システム。
【請求項2】
前記符号化入射信号は、パルス振幅変調、パルス周波数変調、パルス幅変調、2進位相変調、関数発生器または機械的方法の変調を含む群から選択される変調技術を用いてコード化されることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項3】
前記整合相関は、狭帯域フィルタのバンクと、合計モジュールとを用いて行われることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項4】
通信ネットワークとの相互接続を可能にする統合された通信ブロックをさらに備え、前記通信ネットワークは、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、ワイヤレスネットワーク、インターネットまたはイーサネットを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項5】
前記感知システムは、低周波からX線、音響信号および音響信号を含む電磁信号を含む信号を感知することが可能であることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項6】
前記テストサンプルは、流体サンプル、または生物サンプルであることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項7】
前記テストサンプルは動いていることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項8】
前記結果として生じる信号は、前記テストサンプルによる前記入射信号の反射であり、または、前記結果として生じる信号は、前記テストサンプルと前記入射信号の間の相互作用の結果として生じる蛍光であることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項1】
雑音が存在する状態での信号の検出を可能にする、感知システムを制御するための信号処理システムであって、前記感知システムは、入射信号を生成するためのエネルギーソースと、前記入射信号をテストサンプルに向けるための放出処理システムと、前記入射信号に反応した前記テストサンプルからの1つまたは複数の結果として生じる信号を収集するための受信信号処理システムと、前記1つまたは複数の結果として生じる信号を電気信号に変換するための検出器とを含むものである、信号処理システムにおいて、
a)前記エネルギーソースおよび前記受信信号処理システムに操作可能に接続された放出制御システムであって、前記放出制御システムは、第1制御信号を前記エネルギーソースに送信し、前記エネルギーソースは、これにより、符号化入射信号をコード化フォーマットで生成し、前記放出制御システムは、第2制御信号を前記受信信号処理システムに送り、前記1つまたは複数の結果として生じる信号の前記収集を、その後の前記検出器による電気信号への変換のために制御する、放出制御システムと、
b)前記検出器からの前記電気信号を、前記符号化入射信号と整合相関し、これにより、雑音が存在する状態で送信された前記入射信号に対する前記テストサンプルの反応を分離することを可能にするための、DSP受信信号処理システムと
を備えることを特徴とする信号処理システム。
【請求項2】
前記符号化入射信号は、パルス振幅変調、パルス周波数変調、パルス幅変調、2進位相変調、関数発生器または機械的方法の変調を含む群から選択される変調技術を用いてコード化されることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項3】
前記整合相関は、狭帯域フィルタのバンクと、合計モジュールとを用いて行われることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項4】
通信ネットワークとの相互接続を可能にする統合された通信ブロックをさらに備え、前記通信ネットワークは、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、ワイヤレスネットワーク、インターネットまたはイーサネットを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項5】
前記感知システムは、低周波からX線、音響信号および音響信号を含む電磁信号を含む信号を感知することが可能であることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項6】
前記テストサンプルは、流体サンプル、または生物サンプルであることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項7】
前記テストサンプルは動いていることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【請求項8】
前記結果として生じる信号は、前記テストサンプルによる前記入射信号の反射であり、または、前記結果として生じる信号は、前記テストサンプルと前記入射信号の間の相互作用の結果として生じる蛍光であることを特徴とする、請求項1に記載の感知システムを制御するための信号処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2007−501941(P2007−501941A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529478(P2006−529478)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000363
【国際公開番号】WO2004/102137
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504106516)ジュール マイクロシステムズ カナダ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000363
【国際公開番号】WO2004/102137
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504106516)ジュール マイクロシステムズ カナダ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]