説明

信号処理パラメータ解析装置及びレーダ装置

【課題】レーダ装置との距離にかかわらず且つ作業者による作業を必要とせずに、レーダ装置における最適化された受信信号処理を行うための種々のパラメータを決定する信号処理パラメータ解析装置及び当該信号処理パラメータ解析装置により決定されたパラメータを使用するレーダ装置を提供する。
【解決手段】外部のレーダ装置(ASR装置1)により出力されたデジタルIQ信号に基づく受信信号データを保持するデータ保持部12と、所定のタイミングでデータ保持部12により保持された受信信号データを用いてレーダ装置(ASR装置1)において行われる信号処理に必要なパラメータを算出するパラメータ算出部(係数決定部13)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置において受信する受信信号を処理する際に必要なパラメータを解析決定するための信号処理パラメータ解析装置及び決定したパラメータを使用するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダ装置は、電波を放射して目標からの反射信号を検出し、検出した信号に基づいて目標の有無や距離、方向、速度等の情報を得る装置であり、使用用途によって取得情報の選択を行う。レーダ装置の例として、例えば、舶用レーダ、気象レーダ、及び空港監視レーダ等が挙げられる。
【0003】
空港監視レーダ(ASR:Airport Surveillance Radar)は、航空管制用のレーダ装置であり、飛行中の航空機に対し電波を送信し、当該航空機からの反射波を受信検波することにより、航空機の飛行位置等を検出することができる。
【0004】
ここで、受信機からの出力には,目標信号のみならず不要波が混在しているため,これら不要信号を抑圧して目標信号を抽出することが必要であり、不要信号の抑圧手法としてCFAR(Constant False Alarm Rate)等の手法が採用されている。CFARは、入力信号に対して信号検出のためのしきい値を決定し、決定したしきい値を基準として一定の誤警報確率を保つように判定を行う手法であり、非特許文献1等に記載されている。
【0005】
特許文献1には、テストセルに対して複数の他目標信号、時間方向に拡がっているクラッタ、干渉信号等が平均化セル内に入る程度に近接して存在する場合であっても、テストセルの振幅値を低下させず、目標検出率の低下を回避可能なレーダ信号処理装置及びそれに用いるCFAR処理方法が記載されている。
【0006】
このレーダ信号処理装置は、受信信号中に含まれるクラッタ等の時間方向に拡がっている信号を抑圧する第1のCFAR処理手段と、第1のCFAR処理手段から出力される受信信号と所定のしきい値TH1とを比較してしきい値TH1を越える信号のセル情報を検出する大信号検出手段と、大信号検出手段で検出されたのしきい値TH1を越える信号のセル情報を基に受信信号から該当するセルを除去して第2のCFAR処理手段へ出力する大信号セル除去手段と、大信号セル除去手段から出力された受信信号の平均化処理を行った後に処理前の受信信号を平均化された信号で除算する第2のCFAR処理手段と、第2のCFAR処理手段の除算結果を所定のしきい値TH2と比較してしきい値TH2を越えた信号を目標信号として出力する目標検出手段とを備えている。
【0007】
このレーダ信号処理装置によれば、第1のCFAR処理手段において時間方向に拡がっているクラッタ信号を抑圧した後、大信号検出手段において時間方向に拡がっていない大信号を目標検出手段におけるしきい値TH2よりも低い所定のしきい値TH1で検出し、検出した大信号のセル情報を基に時間方向に拡がっていない大信号を大信号セル除去手段において除去した受信信号に対して平均化処理を行っている。
【0008】
これによって、特許文献1のレーダ信号処理装置では、平均化セルでの平均値がノイズのみの場合に比べて増大することが回避されるので、CFAR処理において、テストセルに対して複数の他目標信号、時間方向に拡がっているクラッタ、干渉信号等が平均化セル内に入る程度に近接して存在する場合であっても、テストセルの振幅値を低下させず、目標検出率の低下を回避することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−292597号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】関根、“レーダ信号処理技術”、電子情報通信学会、pp.96−106(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のASR装置等のレーダ装置においては、受信データをアナログビデオで処理しているため、デジタルIQデータの収集機能を有しておらず、CFAR処理に必要なしきい値決定のための解析が困難であり、作業者は、実際のターゲット検出結果を参照する際にビデオの映像等を確認し、手作業で調整しながらしきい値を決定するといった手間のかかる作業を行う必要がある。
【0012】
このような従来のレーダ装置は、上述したCFAR処理を行う上でのしきい値決定のみならず、静止物からの不要反射波であるF0クラッタや干渉波を除去する際のしきい値を決定する必要があるものも存在し、同様に作業者によるしきい値決定作業が必要である。
【0013】
また、レーダ装置を適切に使用するにはある程度以上の熟練が必要であり、CFAR処理やF0クラッタ、干渉波等の除去処理が適切に行われるように、熟練した作業者が実際にASR装置の設置場所に出向いて細かな調整を行う必要がある。
【0014】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、レーダ装置との距離にかかわらず且つ作業者による作業を必要とせずに、レーダ装置における最適化された受信信号処理を行うための種々のパラメータを決定する信号処理パラメータ解析装置及び当該信号処理パラメータ解析装置により決定されたパラメータを使用するレーダ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る信号処理パラメータ解析装置は、上記課題を解決するために、外部のレーダ装置により出力されたデジタルIQ信号に基づく受信信号データを保持するデータ保持部と、所定のタイミングで前記データ保持部により保持された受信信号データを用いて前記レーダ装置において行われる信号処理に必要なパラメータを算出するパラメータ算出部とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るレーダ装置は、上記課題を解決するために、送信信号を送信波として空間に放射するとともに、前記送信波の反射波を受信して受信信号を生成する送受信アンテナと、前記送受信アンテナにより生成された受信信号の周波数変換を行う変換部と、前記変換部により周波数変換された受信信号をデジタルIQ信号にA/D変換して外部に出力するとともに、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された信号処理パラメータ解析装置により算出されたパラメータを用いて前記デジタルIQ信号の信号処理を行う信号処理部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レーダ装置との距離にかかわらず且つ作業者による作業を必要とせずに、レーダ装置における最適化された受信信号処理を行うための種々のパラメータを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1の形態の信号処理パラメータ解析装置及びレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の信号処理パラメータ解析装置及びレーダ装置の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例1の信号処理パラメータ解析装置及びレーダ装置の構成を示すブロック図である。ただし、図1に示すASR装置1及びアンテナ2は、本発明のレーダ装置に対応する。また、図1に示すしきい値解析装置10は、本発明の信号処理パラメータ解析装置に対応する。
【0021】
まず、本実施の形態の構成を説明する。本実施例のASR装置1は、図1に示すように、受信部3、信号処理部4、表示部5、及び送信部6で構成されており、受信部3と送信部6が外部のアンテナ2に接続されている。ただし、アンテナ2は、ASR装置1に含まれるものとしてもよい。また、本実施例のしきい値解析装置10は、図1に示すように、入力部11、データ保持部12、係数決定部13、及び出力部14で構成されている。
【0022】
まずASR装置1について説明する。アンテナ2は、本発明の送受信アンテナに対応し、送信信号を送信波として空間に放射するとともに、送信波の反射波を受信して受信信号を生成する。このアンテナ2は、送信信号を送信波として空間に放射する際に、例えば所定速度で且つ水平面内で回転駆動し、送信波を周囲に放射する。
【0023】
受信部3は、本発明の変換部に対応し、アンテナ2により生成された受信信号の周波数変換を行う。例えば、受信部3は、2GHzの受信信号を60MHzの受信信号に周波数変換して出力する。
【0024】
信号処理部4は、従来のレーダ装置と同様に、受信部3により周波数変換された受信信号に対して信号処理を行い、目標検出を行った後に検出結果を出力する。その際に、信号処理部4は、本発明特有の動作として、受信部3により周波数変換された受信信号をデジタルIQ信号にA/D変換して外部に出力する。このデジタルIQ信号は、互いに90度の位相差を持つI成分及びQ成分を有する。具体的には、信号処理部4は、デジタルIQ信号を外部のしきい値解析装置10内の入力部11に出力する。なお、しきい値解析装置10の詳細については後述する。
【0025】
さらに、信号処理部4は、信号処理を行う際に、しきい値解析装置10により算出されたパラメータを用いてデジタルIQ信号の信号処理を行う。本実施例において、信号処理部4は、しきい値解析装置10によりパラメータとして算出されたしきい値を用いて、CFAR処理を行う。これにより、信号処理部4は、誤警報確率を一定水準以下に抑圧することができる。なお、信号処理部4は、しきい値解析装置10により算出されたパラメータ(しきい値)を記憶するテーブルを有しており、しきい値解析装置10によってテーブルに記憶するしきい値が更新されると、最新のしきい値を用いてCFAR処理を行う。
【0026】
また、信号処理部4は、デジタルの送信信号を生成し、D/A変換して出力する。送信部6は、信号処理部4により生成された送信信号を増幅するとともに、周波数変換を行ってアンテナ2に出力する。例えば、送信部6は、60MHzの送信信号を2GHzの送信信号に周波数変換して出力する。
【0027】
表示部5は、信号処理部4による目標検出結果に基づいた映像を表示する。
【0028】
次に、しきい値解析装置10について説明する。入力部11は、信号処理部4により出力されたデジタルIQ信号を収集し、受信信号データとしてデータ保持部12に保持させる。ここで、入力部11と信号処理部4とは、どのような形態で接続されていてもよく、例えばLAN(Local Area Network)等を利用することが考えられるが、情報の授受を行うことができればよく、有線/無線の別も問わない。後述する出力部14と信号処理部4との間も同様である。
【0029】
データ保持部12は、外部のレーダ装置であるASR装置1により出力されたデジタルIQ信号に基づく受信信号データを保持する。
【0030】
係数決定部13は、本発明のパラメータ算出部に対応し、所定のタイミングでデータ保持部12により保持された受信信号データを用いてASR装置1において行われる信号処理に必要なパラメータを算出する。本実施例において、係数決定部13は、ASR装置1が受信信号に対してCFAR処理を行う際に必要なしきい値をパラメータとして算出するものとする。
【0031】
なお、係数決定部13は、パラメータを算出するのに必要な受信信号データがデータ保持部12に蓄積された「所定のタイミング」に、パラメータの算出処理を行う。アンテナ2が360°回転して送信/受信することを1スキャンとすると、係数決定部13は、例えば、ASR装置1としきい値解析装置10とが接続されてデータ保持部12に10スキャン分の受信信号データが蓄積されたタイミングを「所定のタイミング」として、パラメータの算出処理を行う。
【0032】
その他の例として、係数決定部13は、作業者がボタン等を押すことによる外部入力のタイミングを「所定のタイミング」として、パラメータの算出処理を行ってもよい。また、係数決定部13は、定期的にパラメータの算出処理を行う構成でもよいし、信号処理部4における何らかの異常等を検知してパラメータの算出処理を行う構成でもよい。
【0033】
出力部14は、係数決定部13により算出されたパラメータを外部のレーダ装置であるASR装置1に出力する。
【0034】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。最初に、ASR装置1の動作について説明する。まず信号処理部4は、デジタルの送信信号を生成し、D/A変換して送信部6に出力する。送信部6は、信号処理部4により生成された送信信号を増幅するとともに、周波数変換を行ってアンテナ2に出力する。
【0035】
アンテナ2は、例えば所定速度で且つ水平面内で回転駆動し、送信部6により出力された送信信号を送信波として空間に放射する。この送信波は、アンテナ2の周囲に存在する目標物を含む物体等により反射される。アンテナ2は、送信波の反射波を受信して受信信号を生成する。
【0036】
受信部3は、アンテナ2により生成された受信信号の周波数変換を行った後、変換後の受信信号を信号処理部4に出力する。
【0037】
信号処理部4は、受信部3により周波数変換された受信信号をデジタルIQ信号にA/D変換し、デジタルIQ信号に対してCFAR処理等の信号処理を行い、目標検出を行った後に検出結果を表示部5に出力する。ここで、信号処理部4は、CFAR処理によって誤警報確率を一定水準以下に抑圧するために、自己が有するテーブルに記憶されたしきい値を用いて処理を行う。
【0038】
すなわち、テーブルに記憶されたしきい値がしきい値解析装置により算出された値である場合には、信号処理部4は、しきい値解析装置10によりパラメータとして算出されたしきい値を用いて、CFAR処理を行うことになる。換言すれば、信号処理部4は、信号処理を行う際に、しきい値解析装置10により算出されたパラメータを用いてデジタルIQ信号の信号処理を行う。
【0039】
また、信号処理部4は、しきい値解析装置10によってテーブルに記憶するしきい値が更新されると、最新のしきい値を用いてCFAR処理を行う。
【0040】
表示部5は、信号処理部4による目標検出結果に基づき、目標までの距離等の情報を示す映像を表示する。
【0041】
なお、信号処理部4のテーブルに記憶された「しきい値」は、しきい値解析装置10により値が入力される以前の初期状態においては、予め何らかの値が入れられていてもよいし、従来のように作業者が外部入力により値を決定して入れてもよい。すなわち、ASR装置1は、必ずしもしきい値解析装置10を必須とする装置ではなく、従来のように単独で動作することも可能である。
【0042】
また、信号処理部4は、受信部3により周波数変換された受信信号をデジタルIQ信号にA/D変換して外部に出力する。具体的には、信号処理部4は、ASR装置1としきい値解析装置10とがLAN等を介して接続されることにより、デジタルIQ信号を外部のしきい値解析装置10内の入力部11に出力する。
【0043】
なお、信号処理部4によるデジタルIQ信号の出力タイミングは様々な形態が考えられる。例えば、信号処理部4は、デジタルIQ信号を常に出力しているとしてもよいし、設置時においてASR装置1としきい値解析装置10とが接続されたときにデジタルIQ信号を出力するとしてもよいし、定期的に出力するとしてもよいし、作業者がボタン等を押したタイミングで出力するとしてもよい。
【0044】
また、本実施例においては、ASR装置1としきい値解析装置10とは、図1に示すように通信線等を介して接続されているものとしているが、CD−ROM等の記憶媒体を介すものとしてもよい。その場合には、ASR装置1としきい値解析装置10とは直接接続されている必要が無く、しきい値解析装置10は、オフラインで単独動作が可能である。信号処理部4は、デジタルIQ信号を例えばCD−ROMに記憶させる。作業者は、デジタルIQ信号の情報が記憶されたCD−ROMをしきい値解析装置10に入れて、当該情報を入力部11に読み出させる。
【0045】
次に、しきい値解析装置10の動作について説明する。入力部11は、LANあるいはCD−ROM等の記憶媒体を介して、信号処理部4により出力されたデジタルIQ信号を収集し、受信信号データとしてデータ保持部12に保持させる。
【0046】
データ保持部12は、外部のレーダ装置であるASR装置1により出力されたデジタルIQ信号に基づく受信信号データを保持する。このデータ保持部12が入力部11から入力された受信信号データを適宜蓄積するので、係数決定部13は、パラメータ算出に必要なデータ量がデータ保持部12に蓄積されるのを待って、適切なタイミングでパラメータの算出処理を行うことができる。
【0047】
係数決定部13は、所定のタイミングでデータ保持部12により保持された受信信号データを用いてASR装置1において行われる信号処理に必要なパラメータを算出する。本実施例において、係数決定部13は、ASR装置1が受信信号に対してCFAR処理を行う際に必要なしきい値をパラメータとして算出し、出力部14に出力する。なお、係数決定部13によるしきい値の算出方法は、どのようなものでもよく、例えば公知の方法を用いて受信信号データに基づき信号レベルに対するしきい値を決定すればよい。
【0048】
出力部14は、係数決定部13により算出されたパラメータを外部のレーダ装置であるASR装置1に出力する。しきい値解析装置10がオフラインで単独動作している場合には、出力部14は、例えばCD−ROM等の記憶媒体にパラメータを出力し、記憶させる。作業者は、パラメータが記憶されたCD−ROMをASR装置1に入れて、当該パラメータを信号処理部4に読み出させる。
【0049】
なお、しきい値解析装置10は、係数決定部13により算出されたパラメータ等の情報を表示する表示部を備えていてもよい。
【0050】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る信号処理パラメータ解析装置及びレーダ装置によれば、レーダ装置との距離にかかわらず且つ作業者による作業を必要とせずに、レーダ装置における最適化された受信信号処理を行うための種々のパラメータを決定することができる。
【0051】
すなわち、本発明のレーダ装置であるASR装置1は、受信部3により周波数変換された受信信号をデジタルIQ信号にA/D変換して外部に出力するので、CFAR処理に必要なしきい値決定のための解析を外部のしきい値解析装置10に任せることができ、従来のように作業者がビデオの映像等を確認して手作業で調整しながらしきい値を決定するといった作業が不要である。
【0052】
したがって、熟練した作業者が実際にASR装置1の設置場所に出向いて細かな調整を行う必要が無く、ASR装置1をしきい値解析装置10に接続することで、迅速且つ適切にパラメータを決定し、決定したパラメータをASR装置1における信号処理に用いることができる。
【0053】
また、ASR装置1としきい値解析装置10とは情報の授受を行うことができればよいため、必ずしも互いに近くに設置する必要は無く、たとえ地球の裏側にASR装置1が設置されているとしても、しきい値解析装置10は適切にパラメータを決定し、ネットワーク等を介してASR装置1に提供することができる。
【0054】
また、しきい値解析装置10は、必ずしもCFAR処理を行う際に必要なしきい値のみを算出するものではなく、当然のことながら他のパラメータを算出することも可能であり、F0クラッタの抑圧処理に必要なしきい値や干渉波の除去処理に必要なしきい値を決定することもできる。
【0055】
前者の場合には、しきい値解析装置10内の係数決定部13は、ASR装置1が受信信号に対して静止物の不要反射波であるF0クラッタの抑圧処理を行う際に必要なしきい値をパラメータとして算出する。この場合には、ASR装置1内の信号処理部4は、デジタルIQ信号の信号処理を行う際に、しきい値解析装置10により算出されたしきい値を用いてF0クラッタの抑圧処理を行う。
【0056】
後者の場合には、しきい値解析装置10内の係数決定部13は、ASR装置1が受信信号に対して干渉波の除去処理を行う際に必要なしきい値をパラメータとして算出する。この場合には、ASR装置1内の信号処理部4は、デジタルIQ信号の信号処理を行う際に、しきい値解析装置10により算出されたしきい値を用いて干渉波の除去処理を行う。
【0057】
上述したASR装置1及びしきい値解析装置10によれば、CFAR処理のみならず、静止物からの不要反射波であるF0クラッタや干渉波の除去処理の際のしきい値決定も作業者によるしきい値決定作業を不要とするので、手間もかからずに迅速且つ適切なパラメータ決定が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る信号処理パラメータ解析装置及びレーダ装置は、レーダ装置において受信する受信信号を処理する際に必要なパラメータを解析決定するための信号処理パラメータ解析装置及び決定したパラメータを使用するレーダ装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ASR装置
2 アンテナ
3 受信部
4 信号処理部
5 表示部
6 送信部
10 しきい値解析装置
11 入力部
12 データ保持部
13 係数決定部
14 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のレーダ装置により出力されたデジタルIQ信号に基づく受信信号データを保持するデータ保持部と、
所定のタイミングで前記データ保持部により保持された受信信号データを用いて前記レーダ装置において行われる信号処理に必要なパラメータを算出するパラメータ算出部と、
を備えることを特徴とする信号処理パラメータ解析装置。
【請求項2】
前記パラメータ算出部は、前記レーダ装置が受信信号に対してCFAR処理を行う際に必要なしきい値を前記パラメータとして算出することを特徴とする請求項1記載の信号処理パラメータ解析装置。
【請求項3】
前記パラメータ算出部は、前記レーダ装置が受信信号に対して静止物の不要反射波であるF0クラッタの抑圧処理を行う際に必要なしきい値を前記パラメータとして算出することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の信号処理パラメータ解析装置。
【請求項4】
前記パラメータ算出部は、前記レーダ装置が受信信号に対して干渉波の除去処理を行う際に必要なしきい値を前記パラメータとして算出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の信号処理パラメータ解析装置。
【請求項5】
送信信号を送信波として空間に放射するとともに、前記送信波の反射波を受信して受信信号を生成する送受信アンテナと、
前記送受信アンテナにより生成された受信信号の周波数変換を行う変換部と、
前記変換部により周波数変換された受信信号をデジタルIQ信号にA/D変換して外部に出力するとともに、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された信号処理パラメータ解析装置により算出されたパラメータを用いて前記デジタルIQ信号の信号処理を行う信号処理部と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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