説明

信号処理方法、及び信号処理装置

【課題】様々な入力信号に対応し、短時間で入力信号を処理することが可能な、信号処理方法、及び信号処理装置を提供すること。
【解決手段】サンプル画像に基づき生成された第1フィルタと該サンプル画像のパワースペクトルとを対応付けて格納する第1フィルタ格納部20と、サンプル画像に基づき生成された第2フィルタと該サンプル画像のSN比とを対応付けて格納する第2フィルタ格納部22と、入力画像のパワースペクトルに基づき第1フィルタを選択する第1フィルタ選択部30と、入力画像のSN比に基づき第2フィルタを選択する第2フィルタ選択部32と、第1フィルタと第2フィルタを加算して第3フィルタを生成する第3フィルタ生成部50と、入力画像に対して、生成された第3フィルタを用いてコンボリューション処理を行うコンボリューション処理部40とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理方法、及び信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラプラシアンフィルタやガウスフィルタといったコンボリューションフィルタを用いて、エッジ強調やぼかしの画像処理を行う手法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−79949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の手法では、任意の入力画像に対して的確に作用するフィルタはなく、入力画像を想定してパラメータが調整されたフィルタを使うしかなかった。また、入力画像を複数の解像度に展開するウェーブレットが知られているが、画素の1/2の級数で展開されるため、各解像度の差が粗く、きめ細かく画質を調整することができないといった問題点があった。また、ウェーブレットでは、入力画像を展開するため、大きな画像に対しては処理時間が膨大になるといった問題点があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、様々な入力信号に対応し、短時間で入力信号を処理することが可能な、信号処理方法、及び信号処理装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る信号処理方法は、
入力信号のパワースペクトルを算出し、第1フィルタ格納部に格納された複数のパワースペクトルのうち、算出されたパワースペクトルに近似するパワースペクトルを選択し、前記第1フィルタ格納部に格納された複数の第1フィルタのうち、選択されたパワースペクトルに対応する第1フィルタを選択する第1フィルタ選択工程と、
入力信号のSN比を算出し、第2フィルタ格納部に格納された複数のSN比のうち、算出されたSN比に近似するSN比を選択し、前記第2フィルタ格納部に格納された複数の第2フィルタのうち、選択されたSN比に対応する第2フィルタを選択する第2フィルタ選択工程と、
選択された第1フィルタと第2フィルタとを加算して第3フィルタを生成する第3フィルタ生成工程と、
入力信号に対して、生成された第3フィルタを用いてコンボリューション処理を行うコンボリューション処理工程とを含む。
【0007】
本発明によれば、入力信号のパワースペクトルに基づき選択した第1フィルタと入力信号のSN比に基づき選択した第2フィルタとを加算して生成した第3フィルタを用いて入力信号に対してコンボリューション処理を行うことで、短い処理時間で入力信号に適したフィルタを用いた信号処理を行うことができる。
【0008】
(2)本発明に係る信号処理方法では、
前記第1フィルタ格納部に格納されている第1フィルタは、サンプル入力信号に基づくフィルタ生成工程により生成され、且つ、該サンプル入力信号のパワースペクトルに対応付けられており、
前記第2フィルタ格納部に格納されている第2フィルタは、前記フィルタ生成工程により生成され、且つ、該サンプル入力信号のSN比に対応付けられており、
前記フィルタ生成工程において、
任意の分布関数Gであるフィルタを、2つの分布関数の差を展開フィルタとして級数的に任意の個数nの展開フィルタに展開し、各展開フィルタの係数を任意に設定して前記係数を掛けた各展開フィルタを加算することで、前記展開フィルタの個数n及び前記各展開フィルタの係数の関数である第1フィルタを生成し、前記任意の個数nの展開フィルタに展開した際に得られるn位の分布関数Gと、前記分布関数Gとを任意の重み係数で合成することで第2フィルタを生成し、サンプル入力信号に基づき前記nの値、前記各展開フィルタの係数及び前記重み係数を設定してもよい。
【0009】
本発明によれば、サンプル入力信号に基づき前記nの値及び前記各展開フィルタの係数を設定することで、サンプル入力信号に適した第1フィルタを生成することができ、且つ、サンプル入力信号に基づき前記nの値及び前記重み係数を設定することで、サンプル入力信号に適した第2フィルタを生成することができ、サンプル入力信号に基づき生成した複数の第1フィルタ及び複数の第2フィルタの中から入力信号のパワースペクトルに基づき選択した第1フィルタと入力信号のSN比に基づき選択した第2フィルタとを加算して生成した第3フィルタを用いて入力信号に対してコンボリューション処理を行うことで、短い処理時間で入力信号に適したフィルタを用いた信号処理を行うことができる。
【0010】
(3)本発明に係る信号処理方法では、
前記フィルタ生成工程において、
生成された第1フィルタ及び第2フィルタを用いてサンプル入力信号に対してコンボリューション処理を行うことによって得られる信号のSN比が最大となるように、前記nの値、前記各展開フィルタの係数及び前記重み係数を設定してもよい。
【0011】
本発明によれば、サンプル入力信号に適した第1フィルタ及び第2フィルタを生成することができる。
【0012】
(4)本発明に係る信号処理方法では、
前記分布関数は、ガウス関数でもよい。
【0013】
また、前記n位の分布関数Gを、ガウス関数とし、前記分布関数Gを、デルタ関数に近似する関数としてもよい。
【0014】
(5)本発明に係る信号処理装置は、
サンプル入力信号に基づき生成された第1フィルタと、該サンプル入力信号のパワースペクトルとを対応付けて格納する第1フィルタ格納部と、
サンプル入力信号に基づき生成された第2フィルタと、該サンプル入力信号のSN比とを対応付けて格納する第2フィルタ格納部と、
入力信号のパワースペクトルを算出し、前記第1フィルタ格納部に格納された複数のパワースペクトルのうち、算出されたパワースペクトルに近似するパワースペクトルを選択し、前記第1フィルタ格納部に格納された複数の第1フィルタのうち、選択されたパワースペクトルに対応する第1フィルタを選択する第1フィルタ選択部と、
入力信号のSN比を算出し、前記第2フィルタ格納部に格納された複数のSN比のうち、算出されたSN比に近似するSN比を選択し、前記第2フィルタ格納部に格納された複数の第2フィルタのうち、選択されたSN比に対応する第2フィルタを選択する第2フィルタ選択部と、
選択された第1フィルタと第2フィルタとを加算して第3フィルタを生成する第3フィルタ生成部と、
入力信号に対して、生成された第3フィルタを用いてコンボリューション処理を行うコンボリューション処理部とを含む。
【0015】
本発明によれば、入力信号のパワースペクトルに基づき選択した第1フィルタと入力信号のSN比に基づき選択した第2フィルタとを加算して生成した第3フィルタを用いて入力信号に対してコンボリューション処理を行うことで、短い処理時間で入力信号に適したフィルタを用いた信号処理を行うことができる。
【0016】
(6)本発明に係る信号処理装置では、
サンプル入力信号に基づき第1フィルタ及び第2フィルタを生成し、該サンプル入力信号のパワースペクトル及びSN比を算出するフィルタ生成部を更に含み、
前記フィルタ生成部が、
任意の分布関数Gであるフィルタを、2つの分布関数の差を展開フィルタとして級数的に任意の個数nの展開フィルタに展開し、各展開フィルタの係数を任意に設定して前記係数を掛けた各展開フィルタを加算することで、前記展開フィルタの個数n及び前記各展開フィルタの係数の関数である第1フィルタを生成し、前記任意の個数nの展開フィルタに展開した際に得られるn位の分布関数Gと、前記分布関数Gとを任意の重み係数で合成することで第2フィルタを生成し、サンプル入力信号に基づき前記nの値、前記各展開フィルタの係数及び前記重み係数を設定してもよい。
【0017】
本発明によれば、サンプル入力信号に基づき前記nの値及び前記各展開フィルタの係数を設定することで、サンプル入力信号に適した第1フィルタを生成することができ、且つ、サンプル入力信号に基づき前記nの値及び前記重み係数を設定することで、サンプル入力信号に適した第2フィルタを生成することができ、サンプル入力信号に基づき生成した複数の第1フィルタ及び複数の第2フィルタの中から入力信号のパワースペクトルに基づき選択した第1フィルタと入力信号のSN比に基づき選択した第2フィルタとを加算して生成した第3フィルタを用いて入力信号に対してコンボリューション処理を行うことで、短い処理時間で入力信号に適したフィルタを用いた信号処理を行うことができる。
【0018】
(7)本発明に係る信号処理装置では、
前記フィルタ生成部が、
生成された第1フィルタ及び第2フィルタを用いてサンプル入力信号に対してコンボリューション処理を行うことによって得られる信号のSN比が最大となるように、前記nの値、前記各展開フィルタの係数及び前記重み係数を設定してもよい。
【0019】
本発明によれば、サンプル入力信号に適した第1フィルタ及び第2フィルタを生成することができる。
【0020】
(8)本発明に係る信号処理装置では、
前記分布関数は、ガウス関数でもよい。
【0021】
また、前記n位の分布関数Gを、ガウス関数とし、前記分布関数Gを、デルタ関数に近似する関数としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る画像処理装置(信号処理装置)の機能ブロック図の一例を示す図。
【図2】フィルタ生成部の詳細な機能ブロック図の一例を示す図。
【図3】展開フィルタの一例を示す図。
【図4】展開フィルタの係数について説明するための図。
【図5】第2フィルタの一例を示す図。
【図6】中間フィルタの一例を示す図。
【図7】本実施形態の処理の一例を示すフローチャート図。
【図8】本実施形態の処理の一例を示すフローチャート図。
【図9】本実施形態の手法による画像処理例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0024】
1.構成
図1に、本実施形態に係る画像処理装置(信号処理装置の一例)の機能ブロック図の一例を示す。なお本実施形態の画像処理装置は図1の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。
【0025】
本実施形態の画像処理装置1は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮像された画像(SEM画像)を入力画像(入力信号の一例)として、入力画像の画質(分解能)を変えるための画像処理を行う装置であり、フィルタ生成部10、第1フィルタ格納部20、第2フィルタ格納部22、第1フィルタ選択部30、第2フィルタ選択部32、第3フィルタ生成部50、コンボリューション処理部40を含む。フィルタ生成部10、第1フィルタ選択部30、第2フィルタ選択部32、第3フィルタ生成部50、コンボリューション処理部40の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)や、プログラムにより実現することができ、第1フィルタ格納部20、第2フィルタ格納部22の機能は、RAMやハードディスクなどにより実現することができる。
【0026】
フィルタ生成部10は、サンプル画像(サンプル入力信号の一例)に基づき第1フィルタ及び第2フィルタを生成し、該サンプル画像のパワースペクトル及びSN比を算出し、生成した第1フィルタと算出したパワースペクトルを第1フィルタ格納部20に出力し、生成した第2フィルタと算出したSN比を第2フィルタ格納部22に出力する。
【0027】
また、フィルタ生成部10は、任意の分布関数G(例えば、デルタ関数に近似する関数)であるフィルタを、2つの分布関数(例えば、2次元ガウス関数)の差を展開フィルタとして級数的に任意の個数nの展開フィルタに展開し、各展開フィルタの係数を任意に設定し、前記係数を掛けた各展開フィルタを加算することで、前記展開フィルタの個数n及び前記各展開フィルタの係数の関数である第1フィルタを生成し、サンプル画像に基づき前記展開フィルタの個数n及び前記各展開フィルタの係数を設定する。また、フィルタ生成部10は、前記任意の個数nの展開フィルタに展開した際に得られるn位の分布関数Gと、前記分布関数Gとを任意の重み係数で合成することで第2フィルタを生成し、サンプル入力信号に基づき前記nの値及び前記重み係数を設定する。
【0028】
また、フィルタ生成部10は、生成された第1フィルタ及び第2フィルタを用いてサンプル画像に対してコンボリューション処理を行うことによって得られる信号のSN比が最大となるように、前記nの値、前記各展開フィルタの係数及び前記重み係数を設定する。
【0029】
第1フィルタ格納部20は、フィルタ生成部10によって、サンプル画像に基づき生成された第1フィルタと、該サンプル画像のパワースペクトルとを対応付けて格納(記憶)する。第2フィルタ格納部22は、フィルタ生成部10によって、サンプル画像に基づき生成された第2フィルタと、該サンプル画像のSN比とを対応付けて格納(記憶)する。なお、第1フィルタ格納部20及び第2フィルタ格納部22には、複数のサンプル画像から生成したそれぞれの第1フィルタとそれに対応するサンプル画像のパワースペクトルのセット、及び複数のサンプル画像から生成したそれぞれの第2フィルタとそれに対応するサンプル画像のSN比のセットを多数(例えば、それぞれ100セット程度)格納しておくことが望ましい。また、サンプル画像としては、様々な試料を撮像したSEM画像や、様々な自然物や人工物をデジタルカメラ等で撮像した画像等を用いることができる。本発明においては、このような第1フィルタとパワースペクトルのセット、及び第2フィルタとSN比のセットを多数それぞれ第1フィルタ格納部20及び第2フィルタ格納部22に予め格納しておく。
【0030】
そして、第1フィルタ選択部30は、処理対象となる入力画像(入力信号の一例)のパワースペクトルを算出し、第1フィルタ格納部20に格納された複数のパワースペクトルのうち、該入力画像に基づき算出されたパワースペクトルに近似するパワースペクトルを選択し、第1フィルタ格納部20に格納された複数の第1フィルタのうち、その選択されたパワースペクトルに対応する第1フィルタを選択(抽出)して、選択した第1フィルタを第3フィルタ生成部50に出力する。
【0031】
第2フィルタ選択部32は、当該入力画像(入力信号の一例)のSN比を算出し、第2フィルタ格納部22に格納された複数のSN比のうち、該入力画像に基づき算出されたSN比に近似するSN比を選択し、第2フィルタ格納部22に格納された複数の第2フィルタのうち、その選択されたSN比に対応する第2フィルタを選択(抽出)して、選択した第2フィルタを第3フィルタ生成部50に出力する。
【0032】
第3フィルタ生成部50は、このようにして選択された第1フィルタと第2フィルタとを加算して第3フィルタを生成し、生成した第3フィルタをコンボリューション処理部40に出力する。
【0033】
コンボリューション処理部40は、当該入力画像に対して、第3フィルタ生成部50で生成された第3フィルタを用いてコンボリューション処理を行う。また、コンボリューション処理部40は、図示しない画像サイズ拡張部によって空間サイズ(画像サイズ)が拡張された入力画像に対して、選択されたフィルタを用いてコンボリューション処理を行ってもよい。また図示しない空間サイズ復元部が、コンボリューション処理部40でコンボリューション処理が行われた出力画像の空間サイズを、入力画像の空間サイズに復元する処理を行ってもよい。
【0034】
2.本実施形態の手法
次に本実施形態の手法について図面を用いて説明する。
【0035】
2−1.第1及び第2フィルタの選択とコンボリューション処理
処理対象となる入力画像に対して分布関数であるフィルタを用いてコンボリューションすることによって、当該入力画像の画質を変えることができる。本実施形態のコンボリューション処理部40は、次式に示すコンボリューション処理を行う。
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、Iinは入力画像を示し、Ioutは出力画像を示し、Fは第3フィルタ生成部50で生成された第3フィルタを示す。式(1)は、次式のように表される。
【0038】
【数2】

【0039】
ここで、x、yは、入力画像のX座標、Y座標を示し、X、Yは、第3フィルタのX座標、Y座標を示す。入力画像は通常、離散値であるため、式(2)は、次式のように表される。
【0040】
【数3】

【0041】
ここで、nx、nyは、入力画像のX方向画素数、Y方向画像数を示し、NX、NYは、第3フィルタのX方向画素数、Y方向画像数を示す。
【0042】
本実施形態の第1フィルタ選択部30は、離散化画像である入力画像Iin{ij}を、次式により離散フーリエ変換する。
【0043】
【数4】

【0044】
ここで、J=√−1である。
【0045】
次に、第1フィルタ選択部30は、入力画像のパワースペクトルPSin(p,q)を、次式により算出する。
【0046】
【数5】

【0047】
次に、第1フィルタ選択部30は、入力画像のパワースペクトルPSin(p,q)と、第1フィルタ格納部20に格納されたパワースペクトルPS(p,q)との誤差errを、次式により算出する。
【0048】
【数6】

【0049】
そして、第1フィルタ選択部30は、第1フィルタ格納部20に格納された複数のパワースペクトルのうち、入力画像のパワースペクトルとの誤差errが最小となるパワースペクトルを選択し、第1フィルタ格納部20に格納された複数の第1フィルタのうち、選択されたパワースペクトルに対応する第1フィルタFexを選択して、第3フィルタ生成部50に出力する。
【0050】
また本実施形態の第2フィルタ選択部32は、入力画像IinのSN比SNinを、次式により算出する。
【0051】
【数7】

【0052】
ここで、次式に示すように、μsignalは、入力画像Iinの平均であり、σnoiseは、入力画像Iinの標準偏差である。
【0053】
【数8】

【0054】
次に、第2フィルタ選択部32は、入力画像のSN比SNinと、第2フィルタ格納部22に格納されたSN比SNとの誤差errを、次式により算出する。
【0055】
【数9】

【0056】
そして、第2フィルタ選択部32は、第2フィルタ格納部22に格納された複数のSN比のうち、入力画像のSN比との誤差errが最小となるSN比を選択し、第2フィルタ格納部22に格納された複数の第2フィルタのうち、選択されたSN比に対応する第2フィルタFcxを選択して、第3フィルタ生成部50に出力する。
【0057】
第3フィルタ生成部50は、選択された第1フィルタFexと第2フィルタFcxを加算して第3フィルタFを生成し、生成した第3フィルタFをコンボリューション処理部40に出力する。
【0058】
このように本実施形態によれば、処理対象となる入力画像のパワースペクトルと最も近似するパワースペクトルに対応する第1フィルタを選択し、さらに当該入力画像のSN比と最も近似するSN比に対応する第2フィルタを選択することで、当該入力画像に適したフィルタを生成する処理をその都度行うことなく、短い処理時間で入力画像に最適なフィルタを得ることができる。
【0059】
2−2.第1及び第2フィルタの生成
図2に、本実施形態のフィルタ生成部10の詳細な機能ブロック図の一例を示す。
【0060】
フィルタ生成部10は、フィルタ展開部11、展開フィルタ格納部13、係数生成部14、フィルタ再構成部15、コンボリューション部16、画質評価部17、パワースペクトル算出部18、SN比算出部19を含む。
【0061】
フィルタ展開部11は、任意の分布関数Gであるフィルタを、2つの分布関数の差を展開フィルタとして級数的に任意の個数nの展開フィルタに展開する。
【0062】
ある2次元分布関数をGとし、k(k=0,1,2‥nの整数)が大きくなるほど、分布関数Gの分散σが大きくなるものとする。ここでは、分布関数Gをk位の分布関数とする。例えば、分布関数Gを2次元ガウス関数とすると、分布関数Gとその分散σは、次式により表される。
【0063】
【数10】

【0064】
ここで、式(12)に示すように、k=0の場合、Gは、デルタ関数に近似するものとする(すなわち、Gの分散σは、0に近似する)。
【0065】
本実施形態では、このデルタ関数に近似する分布関数Gを、n位の分布関数Gとn個の展開フィルタ(2つの分布関数の差である分布関数)の和に級数的に展開する。ここでは、分布関数Gを、次式のように展開する。
【0066】
【数11】

【0067】
式(13)の第2項を、同様にしてn個に展開すると、次式のようになる。
【0068】
【数12】

【0069】
ここで、k個目の展開項を、k位の展開フィルタMとして、M=Gk−1−Gとすると、式(14)は、次式のように表される。
【0070】
【数13】

【0071】
式(15)に示すように、分布関数Gは、n位の分布関数Gと、k−1位の分布関数Gk−1とk位の分布関数Gの差であるn個の展開フィルタM(k=1〜n)に展開されたことになる。後述するように、n位の分布関数Gは、ノイズフィルタである第2フィルタを生成する際に用いられ、n個の展開フィルタMは、エッジ強調フィルタである第1フィルタを生成する際に用いられる。
【0072】
図3に、展開フィルタMの一例を示す。図3では、式(12)においてΔσ=0.5、σ=1.5とし、k=1,3,5の場合をそれぞれ示した。
【0073】
図3に示すように、各展開フィルタMは、差分フィルタとなり、入力画像のエッジをk位で強調するフィルタとなる。ここで、展開フィルタMは、kの値が大きくなるほどその分散が大きくなるため、kの値が小さい展開フィルタMは、入力画像の高周波成分に対応するエッジ強調フィルタとなり、kの値が大きい展開フィルタMは、入力画像の低周波成分に対応するエッジ強調フィルタとなる。
【0074】
図2に示す展開フィルタ格納部13は、分布関数Gと、フィルタ展開部11で生成されたn位の分布関数Gと、n個の展開フィルタMとを格納する。
【0075】
係数生成部14は、展開フィルタ格納部13に格納されたn個の展開フィルタMのそれぞれに掛ける係数ωを、例えば、次式により生成する。
【0076】
【数14】

【0077】
ここで、λは任意の実数であるが、0.5〜0.9位の正の実数が望ましい。本実施形態では、λを1未満の実数としているため、図4に示すように、kの値が大きな展開フィルタM(画像の低周波成分に対応する展開フィルタ)の係数ωは大きくなり、kの値が小さな展開フィルタM(画像の高周波成分に対応する展開フィルタ)の係数ωは小さくなる。すなわち、より高周波の成分に対応する展開フィルタMほどその係数ωの値が減衰するようにしている。これは、一般的に、入力画像のパワースペクトルを見ると低周波成分が多いためである。このようにすると、見た目の自然さを保ちつつ画像の分解能を向上させることができる。
【0078】
図4に示すように、λの値を変化させると係数ωの減衰の度合いが変化する。例えば、λの値を大きくするほど係数ωの減衰の度合いは小さくなり、画像の高周波成分に対応する展開フィルタMの係数ωを大きくすることができる。また、λの値を小さくするほど係数ωの減衰の度合いは大きくなり、画像の高周波成分に対応する展開フィルタMの係数ωを小さくすることができる。すなわち、λの値を変えることで、画像の各周波数成分に対応する各展開フィルタMの重み付けを変えることができる。なお、図4は、n=10とした場合の例である。
【0079】
また、入力画像における特定の周波数成分に対してのみエッジ強調等の画像処理を行いたい場合には、当該周波数成分に対応する展開フィルタMの係数ωを0でない実数に設定し、それ以外の展開フィルタMの係数ωを0に設定すればよい。
【0080】
図2に示すフィルタ再構成部15は、展開フィルタ格納部13に格納されたn個の展開フィルタM(k=1〜n)と、係数生成部14で生成された係数ω(k=1〜n)に基づき、展開フィルタの個数nと、係数ωを特徴付けるλとの関数である第1フィルタF(n,λ)を、次式により再構成する。
【0081】
【数15】

【0082】
ここで、Norm()は、正規化を示す。
【0083】
このように、λに基づく係数ωを掛けたn個の展開フィルタM(k=1〜n)を加算してエッジ強調フィルタである第1フィルタを再構成することで、λとnの値に応じて様々な特性をもった第1フィルタF(n,λ)を生成することができる。例えば、図4に示したように、λの値を大きくすることで、高周波成分に対応する展開フィルタMの重み付けを大きくした第1フィルタF(n,λ)を生成することができる。また、nの値を大きくすることで、より低周波の成分に対応する第1フィルタF(n,λ)を生成することができる。
【0084】
またフィルタ再構成部15は、展開フィルタ格納部13に格納された分布関数G(デルタ関数に近似する分布関数)とn位の分布関数Gとに基づき、第2フィルタF(n,α)を次式により再構成する。
【0085】
【数16】

【0086】
ここで、αは0〜1までの値をもつ重み係数である。このように、分布関数Gとn位の分布関数Gとを任意の重み係数αで合成してノイズフィルタである第2フィルタを再構成することで、nとαの値に応じて異なる特性をもった第2フィルタF(n,α)を生成することができる。
【0087】
図5に、第2フィルタF(n,α)の例を示す。図5に示すように、第2フィルタF(n,α)は、中心付近に強度の強い部分が分布し、ピークの裾野部分において強度の弱い部分が広い範囲に分布することを特徴とし、入力画像のノイズを除去するノイズフィルタ(ぼかしフィルタ)として作用する。
【0088】
また、図5に示すように、第2フィルタF(n,α)は、重み係数αの値を小さくするほどデルタ関数に近似する分布関数G(デルタ関数に近似する分布関数)に近い分布となり、重み係数αの値を大きくするほどガウス関数であるn位の分布関数Gに近い分布となる。すなわち、重み係数αの値を小さくすることで、第2フィルタF(n,α)のノイズフィルタとしての作用を小さくすることができ、重み係数αの値を大きくすることで、第2フィルタF(n,α)のノイズフィルタとしての作用を大きくすることができる。また、nの値が大きくなるほど分布関数Gの分散は大きな値となるため、nの値を小さくすることで、入力画像の高周波成分に対応する第2フィルタF(n,α)を生成することができ、nの値を大きくすることで、入力画像の低周波成分に対応する第2フィルタF(n,α)を生成することができる。
【0089】
なお、本実施形態の手法では、入力画像に比べて小さなサイズのフィルタ(例えば、9×9サイズのフィルタ)を展開して第1フィルタ及び第2フィルタを再構築するため、入力画像自体を展開するウェーブレット等の手法に比べて処理時間を極めて短くすることができる。
【0090】
次に、フィルタ再構成部15は、第1フィルタF(n,λ)と第2フィルタF(n,α)を加算して、評価用の中間フィルタM~(n,λ,α)を次式により生成する。
【0091】
【数17】

【0092】
図6に、中間フィルタM~(n,λ,α)の例を示す。なお、第3フィルタ生成部50で生成される第3フィルタFは、中間フィルタM~(n,λ,α)と同様のフィルタである。図6に示すように、中間フィルタM~(n,λ,α)は、入力画像のエッジを強調するエッジ強調フィルタとしての作用と、入力画像のノイズを除去するノイズフィルタとしての作用を併せ持つフィルタとなる。また、図6に示すように、中間フィルタM~(n,λ,α)は、重み係数αの値を小さくするほどエッジ強調フィルタとしての作用が大きくなり、重み係数αの値を大きくするほどノイズフィルタとしての作用が大きくなる。
【0093】
図2に示すコンボリューション部16は、フィルタ再構成部15で生成された中間フィルタM~(n,λ,α)を用いて、サンプル画像Iinに対して次式に示すコンボリューション処理を行うことで、画像Iを生成する。
【0094】
【数18】

【0095】
画質評価部17は、コンボリューション部16で生成された画像IのSN(SN比)を、式(7)により同様に算出する。
【0096】
コンボリューション部16は、中間フィルタM~(n,λ,α)のnとλとαの全ての組み合わせについて、サンプル画像に対して中間フィルタM~(n,λ,α)を用いたコンボリューション処理を行って画像Iを生成する。そして、画質評価部17は、生成された各画像IのSN比を算出して、次式により、SN比が最大となるnとλとαの組み合わせを求める。そして、SN比が最大となるnとλの組み合わせをもつ第1フィルタF(n,λ)を当該サンプル画像に最適な第1フィルタFとして第1フィルタ格納部20(図1参照)に出力し、SN比が最大となるnとαの組み合わせをもつ第2フィルタF(n,α)を当該サンプル画像に最適な第2フィルタFとして第2フィルタ格納部22(図1参照)に出力する。
【0097】
【数19】

【0098】
パワースペクトル算出部18は、サンプル画像のパワースペクトルPSを、式(5)と同様に算出して、第1フィルタ格納部20に出力する。第1フィルタ格納部20には、サンプル画像に基づき生成された最適な第1フィルタFと該サンプル画像のパワースペクトルPSとが対応付けられて格納される。
【0099】
SN比算出部19は、サンプル画像のSN比SNを、式(7)と同様に算出して、第2フィルタ格納部22に出力する。第2フィルタ格納部22には、サンプル画像に基づき生成された最適な第2フィルタFと該サンプル画像のSN比SNとが対応付けられて格納される。
【0100】
このように、サンプル画像から第1フィルタF及び第2フィルタFを生成して、該サンプル画像のパワースペクトルPS及びSN比SNを算出する処理を、複数の異なるサンプル画像のそれぞれについて行う。
【0101】
本実施形態によれば、λとnとαの値に応じて様々な特性をもった第1フィルタF(n,λ)及び第2フィルタF(n,α)のうち、各サンプル画像に最適な第1フィルタF及び第2フィルタFを生成することができる。
【0102】
また、各サンプル画像のパワースペクトルと対応付けて各サンプル画像に最適な第1フィルタFを格納しておくことで、サンプル画像のパワースペクトルに近似するパワースペクトルをもつ入力画像に適した第1フィルタ(エッジ強調フィルタ)を容易に選択することができる。また、各サンプル画像のSN比と対応付けて各サンプル画像に最適な第2フィルタFを格納しておくことで、サンプル画像のSN比に近似するSN比をもつ入力画像に適した第2フィルタ(ノイズフィルタ)を容易に選択することができる。更に、選択した第1フィルタと第2フィルタとを加算して生成した第3フィルタを用いて入力画像に対してコンボリューション処理を行うことで、エッジ強調フィルタとしての作用とノイズフィルタとしての作用を併せもつフィルタであって入力画像に最適なフィルタを用いた画像処理を行うことができる。
【0103】
例えば、高周波成分の多い入力画像に対しては、λの値が大きくnの値が小さな第1フィルタが最適な第1フィルタとして選択され、その結果、高周波成分により効果的に作用する第3フィルタが当該入力画像に最適なフィルタとして生成される。一方、低周波成分の多い入力画像に対しては、λの値が小さくnの値が大きな第1フィルタが最適な第1フィルタとして選択され、その結果、低周波成分により効果的に作用する第3フィルタが当該入力画像に最適なフィルタとして生成される。
【0104】
また、SN比の高い入力画像に対しては、αの値が小さな第2フィルタが最適な第2フィルタとして選択され、その結果、エッジ強調フィルタとしての作用が大きな第3フィルタ(図6参照)が当該入力画像に最適なフィルタとして生成される。一方、SN比の低い入力画像に対しては、αの値が大きな第2フィルタが最適な第2フィルタとして選択され、その結果、ノイズフィルタとしての作用が大きな第3フィルタ(図6参照)が当該入力画像に最適なフィルタとして生成される。
【0105】
3.処理
次に、本実施形態の処理の一例について図7、図8のフローチャートを用いて説明する。図7は、フィルタ選択処理及びコンボリューション処理の一例を示すフローチャート図である。
【0106】
まず、第1フィルタ選択部30は、式(5)により、入力画像Iinのパワースペクトルを算出する(ステップS10)。次に、式(6)により、入力画像Iinのパワースペクトルと、第1フィルタ格納部20に格納された各パワースペクトルとの誤差errを算出し(ステップS12)、第1フィルタ格納部20に格納された複数のパワースペクトルのうち、入力画像Iinのパワースペクトルとの誤差errが最小となるパワースペクトルに対応する第1フィルタFexを選択して第1フィルタ格納部20から読み出す(ステップS14)。
【0107】
次に、第2フィルタ選択部32は、式(7)により、上記入力画像IinのSN比を算出する(ステップS16)。次に、式(10)により、入力画像IinのSN比と、第2フィルタ格納部22に格納された各SN比との誤差errを算出し(ステップS18)、第2フィルタ格納部22に格納された複数のSN比のうち、入力画像IinのSN比との誤差errが最小となるSN比に対応する第2フィルタFcxを選択して第2フィルタ格納部22から読み出す(ステップS20)。
【0108】
次に、第3フィルタ生成部50は、ステップS14で選択した第1フィルタFexとステップS20で選択した第2フィルタFcxとを加算して第3フィルタFを生成する(ステップS22)。
【0109】
次に、コンボリューション処理部40は、入力画像Iinに対して、ステップS22で生成した第3フィルタFを用いてコンボリューション処理を行って出力画像Ioutを生成する(ステップS24)。
【0110】
図8は、フィルタ生成部10の処理の一例を示すフローチャート図である。
【0111】
まず、フィルタ生成部10は、式(15)により、デルタ関数に近似する分布関数であるフィルタGを、n位の分布関数Gと、k−1位の分布関数Gk−1とk位の分布関数Gの差であるn個の展開フィルタMに展開する(ステップS30)。
【0112】
次に、nに1を設定し、λに0.5を設定し、且つαにΔα(0<Δα<1、例えばΔα=0.1)を設定して(ステップS32)、式(16)により、各展開フィルタM(k=1〜n)の係数ωk(k=1〜n)を算出する(ステップS34)。
【0113】
次に、式(17)により、係数ωkを掛けたn個の展開フィルタMを加算して第1フィルタF(n,λ)を再構築する(ステップS36)。次に、式(18)により、n位の分布関数Gと分布関数Gを重み係数αで合成して第2フィルタF(n,α)を再構築する(ステップS38)。
【0114】
次に、式(19)により、第1フィルタF(n,λ)と第2フィルタF(n,α)を加算して中間フィルタM~(n,λ,α)を生成する(ステップS40)。
【0115】
次に、式(20)により、サンプル画像に対して中間フィルタM~(n,λ,α)を用いてコンボリューション処理を行って画像Iを生成し(ステップS42)、式(7)により、生成した画像のIのSN比を算出する(ステップS44)。
【0116】
次に、nの値が所定の最大値nmaxに達したか否かを判断し(ステップS46)、nmaxに達していない場合には、nの値を1だけ増加させ(ステップS48)、ステップS34の処理に進む。そして、nの値が最大値nmaxに達するまでステップ34以下の処理を繰り返す。
【0117】
ステップS46において、nの値が最大値nmaxに達したと判断した場合には、λの値が0.9に達したか否かを判断し(ステップS50)、0.9に達していない場合には、λの値をΔλだけ増加させ(ステップS52)、ステップS34の処理に進む。そして、λの値が0.9に達するまでステップ34以下の処理を繰り返す。
【0118】
ステップS50において、λの値が0.9に達したと判断した場合には、αの値が所定の最大値αmax(例えば、αmax=1)に達したか否かを判断し(ステップS54)、αmaxに達していない場合には、αの値をΔαだけ増加させ(ステップS56)、ステップS34の処理に進む。そして、αの値がαmaxに達するまでステップ34以下の処理を繰り返す。
【0119】
ステップS54において、αの値がαmaxに達した(nとλとαの全組み合わせについて画像IのSN比の算出が行われた)と判断した場合には、式(19)により、SN比が最大となるnとλの組み合わせをもつ第1フィルタF(n,λ)を最適な第1フィルタFとして第1フィルタ格納部20に出力し、SN比が最大となるnとαの組み合わせをもつ第2フィルタF(n,α)を最適な第2フィルタFとして第2フィルタ格納部22に出力する(ステップS58)。
【0120】
次に、式(5)によりサンプル画像のパワースペクトルを算出し、算出したパワースペクトルを第1フィルタ格納部20に出力し、式(7)によりサンプル画像のSN比を算出し、算出したSN比を第2フィルタ格納部22に出力する(ステップS60)。
【0121】
4.画像処理例
図9(A)は、SEM画像の一例であり、図9(B)は、図9(A)に示すSEM画像を入力画像として、本実施形態の手法による画像処理を施した出力画像である。図9(B)に示すように、本実施形態の手法によれば、入力画像に対して適度なエッジ強調処理及びノイズ除去処理を施すことができ、入力画像の画質(分解能)を向上させることができる。
【0122】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0123】
例えば、上記実施形態では、本発明を2次元画像に対する画像処理に適用した場合について説明したが、本発明を1次元の信号(例えば、音声信号)に対する信号処理に適用してもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 画像処理装置、10 フィルタ生成部、11 フィルタ展開部、13 展開フィルタ格納部、14 係数生成部、15 フィルタ再構成部、16 コンボリューション部、17 画質評価部、18 パワースペクトル算出部、19 SN比算出部、20 第1フィルタ格納部、22 第2フィルタ格納部、30 第1フィルタ選択部、32 第2フィルタ選択部、40 コンボリューション処理部、50 第3フィルタ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号のパワースペクトルを算出し、第1フィルタ格納部に格納された複数のパワースペクトルのうち、算出されたパワースペクトルに近似するパワースペクトルを選択し、前記第1フィルタ格納部に格納された複数の第1フィルタのうち、選択されたパワースペクトルに対応する第1フィルタを選択する第1フィルタ選択工程と、
入力信号のSN比を算出し、第2フィルタ格納部に格納された複数のSN比のうち、算出されたSN比に近似するSN比を選択し、前記第2フィルタ格納部に格納された複数の第2フィルタのうち、選択されたSN比に対応する第2フィルタを選択する第2フィルタ選択工程と、
選択された第1フィルタと第2フィルタとを加算して第3フィルタを生成する第3フィルタ生成工程と、
入力信号に対して、生成された第3フィルタを用いてコンボリューション処理を行うコンボリューション処理工程とを含む、信号処理方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1フィルタ格納部に格納されている第1フィルタは、サンプル入力信号に基づくフィルタ生成工程により生成され、且つ、該サンプル入力信号のパワースペクトルに対応付けられており、
前記第2フィルタ格納部に格納されている第2フィルタは、前記フィルタ生成工程により生成され、且つ、該サンプル入力信号のSN比に対応付けられており、
前記フィルタ生成工程において、
任意の分布関数Gであるフィルタを、2つの分布関数の差を展開フィルタとして級数的に任意の個数nの展開フィルタに展開し、各展開フィルタの係数を任意に設定して前記係数を掛けた各展開フィルタを加算することで、前記展開フィルタの個数n及び前記各展開フィルタの係数の関数である第1フィルタを生成し、前記任意の個数nの展開フィルタに展開した際に得られるn位の分布関数Gと、前記分布関数Gとを任意の重み係数で合成することで第2フィルタを生成し、サンプル入力信号に基づき前記nの値、前記各展開フィルタの係数及び前記重み係数を設定する、信号処理方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記フィルタ生成工程において、
生成された第1フィルタ及び第2フィルタを用いてサンプル入力信号に対してコンボリューション処理を行うことによって得られる信号のSN比が最大となるように、前記nの値、前記各展開フィルタの係数及び前記重み係数を設定する、信号処理方法。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記分布関数は、ガウス関数である、信号処理方法。
【請求項5】
サンプル入力信号に基づき生成された第1フィルタと、該サンプル入力信号のパワースペクトルとを対応付けて格納する第1フィルタ格納部と、
サンプル入力信号に基づき生成された第2フィルタと、該サンプル入力信号のSN比とを対応付けて格納する第2フィルタ格納部と、
入力信号のパワースペクトルを算出し、前記第1フィルタ格納部に格納された複数のパワースペクトルのうち、算出されたパワースペクトルに近似するパワースペクトルを選択し、前記第1フィルタ格納部に格納された複数の第1フィルタのうち、選択されたパワースペクトルに対応する第1フィルタを選択する第1フィルタ選択部と、
入力信号のSN比を算出し、前記第2フィルタ格納部に格納された複数のSN比のうち、算出されたSN比に近似するSN比を選択し、前記第2フィルタ格納部に格納された複数の第2フィルタのうち、選択されたSN比に対応する第2フィルタを選択する第2フィルタ選択部と、
選択された第1フィルタと第2フィルタとを加算して第3フィルタを生成する第3フィルタ生成部と、
入力信号に対して、生成された第3フィルタを用いてコンボリューション処理を行うコンボリューション処理部とを含む、信号処理装置。
【請求項6】
請求項5において、
サンプル入力信号に基づき第1フィルタ及び第2フィルタを生成し、該サンプル入力信号のパワースペクトル及びSN比を算出するフィルタ生成部を更に含み、
前記フィルタ生成部が、
任意の分布関数Gであるフィルタを、2つの分布関数の差を展開フィルタとして級数的に任意の個数nの展開フィルタに展開し、各展開フィルタの係数を任意に設定して前記係数を掛けた各展開フィルタを加算することで、前記展開フィルタの個数n及び前記各展開フィルタの係数の関数である第1フィルタを生成し、前記任意の個数nの展開フィルタに展開した際に得られるn位の分布関数Gと、前記分布関数Gとを任意の重み係数で合成することで第2フィルタを生成し、サンプル入力信号に基づき前記nの値、前記各展開フィルタの係数及び前記重み係数を設定する、信号処理装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記フィルタ生成部が、
生成された第1フィルタ及び第2フィルタを用いてサンプル入力信号に対してコンボリューション処理を行うことによって得られる信号のSN比が最大となるように、前記nの値、前記各展開フィルタの係数及び前記重み係数を設定する、信号処理装置。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記分布関数は、ガウス関数である、信号処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate