説明

信号処理装置、レーダ装置、車両制御システム、および、信号処理方法

【課題】連続性判定おいて検知点を適切に処理することを目的とする技術を提供する。
【解決手段】ピーク信号の組み合わせを誤ったペアリングで検出された可能性のある検知点を特定検知点とし、この特定検知点に特定された過去検知点と、他の過去検知点とで減算する減算値を変更する。これにより、過去検知点が特定検知点に特定された過去検知点か他の過去検知点かに応じてメモリからの削除のタイミングを調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信波と受信波の情報に基づいて、物体を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置を用いて物体を検出する場合、送信波から得られる送信信号と、受信波から得られる受信信号とをミキシングして両者の周波数差により検出されるピーク信号から物体の相対距離と相対速度を検出する。ここで、ピーク信号とは一定値以上の信号強度を有する周波数スペクトラムをいう。
【0003】
また、FM−CW方式に基づく物体検出の場合、送信信号と受信信号のそれぞれのアップ区間とダウン区間からピーク信号を抽出して、アップ区間とダウン区間のピーク信号同士を組み合わせて、物体の相対距離と相対速度のパラメータを有する検知点を検出する。ここで、ピーク信号同士の組み合わせは、レーダ装置を備えた車両の速度、ピーク信号の信号強度、および、角度の情報により決定される。そして、検出された検知点が過去に検出された過去検知点と同じ物体の検知点であり、この検知点が複数回連続的に検出されたか否かを判定する連続性判定処理の結果、所定回数以上連続的に検出された場合に最新の検知点のデータをレーダ装置内のメモリに記録している。
【0004】
そして、連続的に検出されていた検知点が検出されなくなった場合でも、その後すぐにメモリから検知点のデータを削除するのではなく、検出されなくなる直近の検知点の位置や速度の情報から所定の位置に存在するものと仮定して検知点のデータを更新する外挿処理を行っている(例えば、特許文献1参照。)。そして、外挿処理により更新した検知点に対応する検知点が次の走査で検出されれば、外挿処理により更新された検知点のデータをこの対応する検知点のデータに上書きして最新の検知点データとしてメモリに記録する処理を行っている。そして、外挿処理を行った検知点データは車両制御の対象として車両制御装置に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−53611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アップ区間のピーク信号とダウン区間のピーク信号の組み合わせを間違えた(ミスペアリングした)検知点に対して外挿処理を行なって検知点データとして継続的にデータを車両制御装置に出力すると、本来存在しない検知点に基づいて不適切な車両制御を行う可能性があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ピーク信号の組み合わせを誤って検出された可能性のあるすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、所定周期で周波数が変わる送信信号と、該送信信号に基づく送信波の物体での反射波を受信した受信信号との差分周波数を示すピーク信号を前記送信信号の周波数が上昇する第1期間と周波数が下降する第2期間とで導出し、前記第1期間および前記第2期間のピーク信号をペアリングすることで前記ピーク信号に係る物体の反射点である検知点を検出する物体検出処理を行う信号処理装置であって、過去の前記物体検出処理において検出された前記検知点である過去検知点を示すデータと、前記過去検知点についての存在の可能性を示すカウンタ値とを記憶する記憶手段と、直近の前記物体検出処理において検出された前記検知点である現在検知点と前記過去検知点との連続性判定を行う判定手段と、前記連続性判定により前記現在検知点との連続性が確認できない前記過去検知点の前記カウンタ値を減算する減算手段と、前記カウンタ値が第1の閾値を下回った場合に、該カウンタ値に係る前記過去検知点を示すデータを前記記憶手段から削除する削除手段と、前記ピーク信号の組み合わせを誤ったペアリングで検出された可能性のある前記検知点を特定検知点として特定する特定手段と、前記特定検知点に特定された前記過去検知点と、他の前記過去検知点とで前記減算手段が減算する減算値を変更する変更手段と、を備える。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の信号処理装置において、前記変更手段は、前記特定検知点に特定された前記過去検知点の減算値を他の前記過去検知点の減算値よりも大きい値とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の信号処理装置において、前記連続性判定により前記現在検知点との連続性が確認できた前記過去検知点の前記カウンタ値を加算する加算手段と、前記加算手段により加算されたカウンタ値が前記第1の閾値よりも値の大きい第2の閾値以上の場合に、車両が備える装置を制御する車両制御装置へ前記検知点の情報を用いて構成される物体データを出力する出力手段と、をさらに備え、前記減算手段は、カウンタ値が前記第2の閾値以上となった前記特定検知点の連続性が確認できない場合に、前記特定検知点のカウンタ値が前記第1の閾値を下回るまでの減算回数が複数回となるようにカウンタ値を減算する。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の信号処理装置と、前記送信波を出力し、前記反射波を受信する手段と、を備える。
【0012】
また、請求項5の発明は、車両に搭載される請求項4に記載のレーダ装置と、前記車両が備える装置を制御する車両制御装置と、を備えることを特徴とする車両制御システム。
【0013】
さらに、請求項6の発明は、所定周期で周波数が変わる送信信号と、該送信信号に基づく送信波の物体での反射波を受信した受信信号との差分周波数を示すピーク信号を前記送信信号の周波数が上昇する第1期間と周波数が下降する第2期間とで導出し、前記第1期間および前記第2期間のピーク信号をペアリングすることで前記ピーク信号に係る物体の反射点である検知点を検出する物体検出処理を行う信号処理方法であって、過去の前記物体検出処理において検出された前記検知点である過去検知点を示すデータと、前記過去検知点についての存在の可能性を示すカウンタ値とを記憶手段に記憶する工程と、直近の前記物体検出処理において検出された前記検知点である現在検知点と前記過去検知点との連続性判定を行う工程と、前記連続性判定により前記現在検知点との連続性が確認できない前記過去検知点の前記カウンタ値を減算する工程と、前記カウンタ値が第1の閾値を下回った場合に、該カウンタ値に係る前記過去検知点を示すデータを前記記憶手段から削除する工程と、前記ピーク信号の組み合わせを誤ったペアリングで検出された可能性のある前記検知点を特定検知点として特定する工程と、前記特定検知点に特定された前記過去検知点と、他の前記過去検知点とで前記減算手段が減算する減算値を変更する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
請求項1ないし6の発明によれば、特定検知点に特定された過去検知点と、他の過去検知点とで減算手段が減算する減算値を変更する変更手段を備えることで、過去検知点が特定検知点に特定された過去検知点か他の過去検知点かに応じてメモリからの削除のタイミングを調整できる。
【0015】
また、特に請求項2の発明によれば、変更手段が、前記特定検知点に特定された前記過去検知点の減算値を他の前記過去検知点の減算値よりも大きい値とすることでピーク信号の組み合わせを誤ったペアリングで検出された可能性のある特定検知点を他の過去検知点よりも早く記憶手段から削除できる。
【0016】
さらに、特に請求項3の発明によれば、減算手段は、カウンタ値が第2の閾値以上となった特定検知点の連続性が確認できない場合に、特定検知点のカウンタ値が第1の閾値を下回るまでの減算回数が複数回となるようにカウンタ値を減算することで、特定検知点が車両制御装置へ出力された場合は、ピーク信号の組み合わせを誤ったペアリングで検出された可能性があっても、すぐには記憶装置から特定検知点のデータを削除せず、ピーク信号の組み合わせが誤りか否かを複数回の処理の後に判断することで、特定検知点のペアリングの正誤を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、車両1の全体図である。
【図2】図2は、車両制御システムのブロック図である。
【図3】図3は、FM−CW信号とビート信号を示す図である。
【図4】図4は、物体検出処理のフローチャートである。
【図5】図5は、ピーク信号分類処理のフローチャートである。
【図6】図6は、検知点検出の具体例を示す図である。
【図7】図7は、ピーク信号の検出を示す図である。
【図8】図8は、静止物の検知点を構成するピーク信号のマップへの分類を示す図である。
【図9】図9は、連続性判定処理フローチャートである。
【図10】図10は、検知点のカウンタ値の推移を示す図である。
【図11】図11は、ペアリング正誤判定処理のフローチャートである。
【図12】図12は、対向車の検知点のマップへの分類を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
<1.構成>
<1−1.車両全体図>
図1は、車両1の全体図である。車両1には本実施形態の車両制御システムであるレーダ装置2と、車両制御部3とが備えられている。レーダ装置2は車両前方のフロント部分に設けられている。レーダ装置2は走査範囲REの範囲を走査して、車両1と物体との相対距離、および、相対速度を算出するとともに、車両1からみた物体の角度を算出する。なお、レーダ装置2の搭載位置は車両前方のフロント部分に限らず、車両1の後方や側方でもよい。
【0020】
車両制御部3は、レーダ装置2から出力された物体データに基づいて車両1が備える装置を制御する。車両制御部3による制御の例としては、以下の図2で説明するブレーキ40やスロットル41などの装置を制御して、前方の車両に追従して走行する場合のブレーキ制御やアクセル制御、警報器42を制御して衝突危険性のある場合の警告表示、および、ブレーキ40を制御して行うブレーキ制御がある。また、衝突時にシートベルトにより乗員を座席に固定して衝撃に備えたり、ヘッドレストを固定して乗員の身体へのダメージを軽減する制御も行う。
【0021】
<1−2.システムブロック図>
図2は車両制御システムのブロック図である。車両制御システム10は、レーダ装置2と車両制御部3とが電気的に接続して構成されている。また、車両制御システム10の車両制御部3は、車速センサ30、ステアリングセンサ31、および、ヨーレートセンサ32などの車両1に設けられる各種センサと電気的に接続されている。さらに、車両制御部3はブレーキ40、スロットル41、および、警報器42などの車両1に設けられる各種装置と電気的に接続されている。
【0022】
レーダ装置2は、信号処理部11、変調部12、VCOVoltage Controlled Oscillation)13、方向性結合器14、平面アンテナ15、ミキサ16、フィルタ17、A/D(Analog Digital)変換部18、モータ駆動部19、モータ20、および、エンコーダ21を備える。なお、平面アンテナ15は送信アンテナ15a、および、受信アンテナ15bより構成されている。また、以下に述べる実施の形態では、レーダ装置2のアンテナ走査方式をアンテナを所定の方向に駆動させるメカスキャン方式として説明を行なうが、アンテナを駆動させずに物体の方向推定にDBF(Digital Beam Formingなどの方式を採用する電子スキャン方式についても本発明は適用できる。
【0023】
レーダ装置2による車両制御は、信号処理部11からの信号に基づき、変調部12が予め定められた周波数帯の変調信号を生成する。この変調信号はVCO13により送信信号に変換され、方向性結合器14を介して送信波として送信アンテナ15aの平面アンテナ15から出力される。
【0024】
平面アンテナ15から出力された送信波は物体にあたって反射し、反射波として平面アンテナ15に受信される。この受信された反射波と発振信号は方向性結合器14を介して、ミキサ16でミキシングされる。
【0025】
送信信号とミキシングされた受信信号は、物体からの相対距離や相対速度の情報を含むビート信号であり、フィルタ17によりフィルタリングされ、レーダ装置2を備えた車両1から物体までの相対距離や相対速度の情報を含む帯域のビート信号が検出される。
【0026】
フィルタ17により所定の周波数帯にフィルタリングされたビート信号は、A/D変換部18によりアナログ信号からデジタル信号に変換された後、信号処理部11に入力される。
【0027】
また、レーダ装置2は平面アンテナ15を所定の角度範囲で走査させる。平面アンテナ15の角度は、レーダ装置2を車両1の前方のバンパー部分に備え、前方車両が車両1の真正面に位置している場合に、平面アンテナ15のアンテナ面が車両1の進行方向と垂直の状態にある場合を0度とする。例えば、平面アンテナ15は0度の状態から左右にそれぞれ15度ずつ走査する。この平面アンテナ15の走査はモータ駆動部19とモータ20を用いて行われ、平面アンテナ15の走査に伴うエンコーダ21の図示しないスリットの通過数と通過方向の情報を信号処理部11へ出力する。
【0028】
信号処理部11にはレーダ装置2の各部の制御と、車両制御部3とのデータの送受信を行う場合に情報処理を行うCPU11aと、CPU11aの処理に用いられるプログラムなどが格納されているメモリ11bとが備えられている。CPU11aの各種の機能は、このプログラムを実行することで実現される。そして、信号処理部11はA/D変換部18から出力された信号に基づいて、車両1からの物体の相対距離や相対速度を検出する。また、エンコーダ21から出力される情報により車両1からの物体の角度を検出する。このように送信信号と受信信号に基づいてレーダ装置2で検出される物体の反射点を検知点という。
【0029】
さらに、信号処理部11は直近の物体検出処理において検出された検知点である現在検知点と過去検知点との連続性判定を行う。この連続性判定により現在検知点との連続性が確認できた過去検知点はそのカウンタ値を加算する。そして、カウンタ値の加算により予め設けられた物体データを出力するデータ出力閾値以上となった現在検知点は、車両制御部3に出力される物体データの構成要素として構成される。
【0030】
また、現在検知点との連続性が確認できない過去検知点はカウンタ値を減算する処理が行われる。カウンタ値は後述するカウンタ101aにより加算または減算される値で検知点の存在可能性を示すものであり、1回以上カウンタ値がデータ出力閾値以上となればその検知点で構成される物体データが存在するものとして、信号処理部11から車両制御部3に物体データを出力する。
【0031】
そして、車両制御部3へのデータ出力が1回以上行われたカウンタ値が物体データを出力するデータ出力閾値よりも低い値のデータ削除閾値を下回った場合に、対象の過去検知点のデータをメモリ11bから削除する。
【0032】
なお、後述するように現在検知点との連続性が確認できない過去検知点の減算されるカウンタ値は、ピーク信号の組み合わせが正しいとされたペアリングで検出された検知点(以下「一般検知点」ともいう。)と、ピーク信号の組み合わせが誤ったペアリングで検出された可能性のある検知点である特定検知点とでは異なるように設定されており、それぞれの減算するカウンタ値を変更することもできる。これにより、過去検知点が特定検知点か他の過去検知点(一般検知点)かに応じてメモリ11bからの削除のタイミングを調整できる。
【0033】
また、現在検知点との連続性が確認できない過去検知点のうち、1度もデータ出力閾値以上となっていない(データ出力閾値未満の)過去検知点については、データ削除閾値を下回ったか否かにかかわらず、過去の物体検出処理の後の直近の物体検出処理で検出されていない場合は、メモリ11bから削除する。このように、1度でもデータ出力閾値以上となった過去検知点は存在の可能性が高いため、複数回の物体検出処理を行っても検出されていない場合に対象の過去検知点データをメモリ11bから削除し、データ出力閾値を下回っている過去検知点は存在の可能性が低いため、直近の物体検出処理で検出されなければ対象の過去検知点のデータをメモリ11bから削除する。
【0034】
なお、検知点はそのパラメータ値として、相対距離、相対速度、および、角度を有しており、物体データは構成された検知点の相対距離、相対速度、および、角度のパラメータ値を有する。
【0035】
カウンタ101aはCPU11aの内部に設けられており、信号処理部11により連続性の判定処理で直近の物体検出処理において検出された検知点である現在検知点と過去検知点との連続性が確認できた過去検知点のカウンタ値を加算する。
【0036】
また、過去検知点が次の物体検出処理で現在検知点として検出されない場合は、過去検知点のカウンタ値を減算する。また、本実施の形態ではカウンタ101aはCPU11aの内部に設けられる構成としたが、それ以外の位置(例えば、信号処理部11内部またはレーダ装置2内部など)に設けてもよい。
【0037】
また、信号処理部11のメモリ11bは過去検知点を示すデータ(車両1と検知点の情報を用いて構成される物体との相対距離、相対速度、及び、角度(横位置)の情報)と過去検知点についてのカウンタ値を記憶している。メモリ11bは複数の検知点のデータと、検知点それぞれのカウンタ値を記憶しており、連続性判定の結果に応じて、検知点のデータおよびカウンタ値が更新される。
【0038】
信号処理部11と電気的に接続されている車両制御部3はCPU3aとメモリ3bとを備えており、CPU3aは車両1の各部の制御と、信号処理部11とのデータの送受信を行う際に情報処理を行う。また、メモリ3bはCPU3aの処理に用いられるプログラムが格納されており、さらに、信号処理部11から送信された物体データも格納されている。またCPU3aの各種機能は、このプログラムを実行することで実現される。
【0039】
この車両制御部3にはブレーキ40、スロットル41、および、警報器42が電気的に接続されており、物体データに応じてこれらを制御することで、車両1の動作が制御される。例えば、警報器42は車両1と物体との距離が接近している場合に警報を発してユーザーであるドライバーに異常を報知する。また、車両1と物体とが衝突する可能性がある場合は、ブレーキ40を作動させて車両1の速度を低下させたり、スロットル41を絞って、エンジンの回転数を低下させる。
【0040】
さらに、車両制御部3には車両1の速度を検出する車速センサ30、ステアリングホイールの操舵角を検出するステアリングセンサ31、および、車両1の旋回速度を検出するヨーレートセンサ32が接続されている。なお、ステアリングセンサ31とヨーレートセンサ32の両方を使用することで、ステアリング操作に応じた車両1の旋回方向、および、車両1の旋回速度を検出することが可能となる。そのため、両方のセンサを備えていることが好ましいが、ステアリングセンサ31またはヨーレートセンサ32のどちらか一方でも車両1の旋回方向を検出することは可能である。
【0041】
また、平面アンテナ15にて送受信される送信波および受信波は、電波、レーザ、または、超音波などの信号であり、平面アンテナ15から送信され、物体にあたってはね返り、反射波として受信することで、物体データを検出できるものであればよい。
【0042】
さらに、本実施形態ではアンテナを平面アンテナ15としているが、送信波を出力し、送信波の物体からの反射波を受信可能なアンテナであれば、平面アンテナ15以外にレンズアンテナ、または、反射鏡アンテナ等であってもよい。また、送信アンテナ15aと受信アンテナ15bとを別々の構成として述べているが、1つのアンテナで送信、および、受信の両方を行なうことができる送受信兼用のアンテナを用いてもよい。
【0043】
<2.処理>
<2−1.FM−CWの信号処理>
次に、物体検出処理において用いられる信号処理の一例としてFM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)の方式について説明する。なお、本実施形態では、FM−CWの方式を例に説明を行うが、アップ区間とダウン区間のような複数の区間を組み合わせて物体データを算出する方式であれば、この方式に限定されない。
【0044】
また、下記に記載の数式や図3に示すFM−CW信号とビート信号についての各記号は以下に示すものである。f:ビート周波数、fs:周波数、f:距離周波数、fup:アップ区間の距離周波数、fdn:ダウン区間の距離周波数、f:速度周波数、f:送信波の中心周波数、△f:周波数偏移幅、f:変調波の繰り返し周波数、C:光速(電波の速度)、T:物体までの電波の往復時間、R:物体までの距離、V:物体との相対速度、S:横位置。
【0045】
図3上図はFM−CWの送信信号および受信信号の信号波形を示す図である。また、図3下図は送信信号と受信信号との差分周波数により生じるビート周波数を示す図である。図3上図は横軸は時間、縦軸は周波数を示している。図中、実線で示す送信信号は、所定周期で周波数が変わる性質を有しており、周波数が上昇するアップ区間と、所定の周波数まで上昇した後に所定の周波数まで下降するダウン区間がある。そして、送信信号は、所定の周波数まで下降した後に再度所定の周波数まで上昇をするように一定の変化を繰り返す。また、送信信号は物体にあたって反射した後に受信され、同図の破線で示すような受信信号となる。受信信号についても送信信号と同じようにアップ区間とダウン区間が存在する。なお、本実施形態で用いられる周波数帯の例としては76Ghz帯の周波数があげられる。
【0046】
また、車両1と物体との距離に応じて、送信信号に比べて受信信号に時間的な遅れ(T=2R/C)が生じる。さらに、車両1と物体との間に速度差を有する場合は、送信信号に比べて受信信号が周波数fsの軸に平行にシフトする。このドップラーシフト分がfdとなる。
【0047】
図3下図は横軸を時間、縦軸をビート周波数として、数1に基づいてビート周波数を算出するものである。
【0048】
【数1】

なお、数1に示されるビート信号を後述するFFT処理することで、周波数スペクトルを検出する。この検出された周波数スペクトルの中から所定の閾値を超えた周波数スペクトルをピーク信号として検出し、このピーク信号に対して後述する処理を行うことで車両1と物体との相対距離、相対速度、および、角度を算出する。
【0049】
<2−2.物体検出処理>
図4は物体検出処理のフローチャートである。送信信号と受信信号とをミキシングすることにより生じるビート信号をA/D変換部(Analog to Digital Converter)18によりA/D変換して、信号処理部11に取り込み、信号処理部11によりビート信号にFFT(Fast Fourier Transform 高速フーリエ変換)処理を施す(ステップS101)。
【0050】
FFT処理を施されたビート信号は周波数スペクトルとして検出される。一般に物体の周波数スペクトルは、相対的にノイズなどの周波数スペクトルよりもパワーレベルが大きいので、所定のパワーレベルに設けられている閾値を超えた周波数スペクトルをピーク信号として抽出する(ステップS102)。
【0051】
次に、アンテナの角度ごとに抽出されたピーク信号について車両1の速度、ピーク信号の信号強度、および、ピーク信号の角度の情報に基づいて、複数のピーク信号が1つのグループとしてグルーピングされる(ステップS103)。その結果、1または複数のピーク信号を含んだ複数のグループがアップ区間とダウン区間のそれぞれに生成される。ここで、グルーピング処理は物体の所定の反射範囲から受信した受信信号が、反射範囲を構成する角度ごとのピーク信号として検出され、この角度ごとのピーク信号で構成される1グループを1つの反射点の検出点として処理するものである。
【0052】
そして、ステップS104ではアップ区間に生成された複数のグループと、ダウン区間に生成された複数のグループとのピーク信号同士をステップS105の処理でペアリングする対象のうち、静止物の検知点を構成するピーク信号の位置を車両1の周辺領域に相当するマップにおける複数の領域のいずれかに分類するピーク信号分類処理を行う(ステップS104)。
【0053】
ここで、静止物の検知点とは、たとえば車両1が40km/hで対象の物体に接近した場合、車両1からみればその物体が40km/hの速度で接近してきているようにみえる静止物の検知点であり、時間の経過による位置の変化が伴わない検知点である。
【0054】
なお、ステップS104の静止物ピークマップ生成の詳細な説明については、後に図5から図8の図面を用いて詳細に説明する。
【0055】
図4のステップS104の処理の後、ステップS105のペアリング処理を行う。このペアリング処理は、アップ区間に生成された複数のグループと、ダウン区間に生成された複数のグループのピーク信号同士を、車両1の速度、グルーピングされたピーク信号の信号強度、および、グルーピングされた信号の角度の情報に基づいて組み合わせる処理である(ステップS105)。このペアリング処理により、物体からの相対距離、相対速度、および、角度のパラメータを有した検知点が検出される。
【0056】
そして、直近の物体検出処理において検出された検知点である現在検知点が過去の物体検出処理において検出された過去検知点とが連続した検知点であり、検知点が連続的に検出されているか否かを導出する連続性判定処理を行う(ステップS106)。なお、このステップS106の連続性判定の処理については、図9および図10を用いて詳細に説明する。
【0057】
連続性判定の結果、検知点が連続的に検出されたか否かに応じて、その値が加算または減算されるカウンタ値を対応した検知点データとともにメモリ11bに記録する(ステップS107)。そして、対象の検知点が連続して3回以上検出されている場合(連続性2回以上の場合)(ステップS108がYes)はステップS110に進み、対象の検知点のカウンタ値がデータ出力閾値以上か否かを導出する(ステップS110)。
【0058】
ステップS108に戻って、検知点が初めて検出された新規の検知点の場合(連続性0回の場合)、または、前回初めて検出されて、今回も検出された検知点の場合(連続性1回の場合)(ステップS108がNo)は、検知点が移動物の検知点か否かを導出する(ステップS109)。
【0059】
移動物の検知点か否かは、検出された検知点の車両1との相対速度で判定でき、移動物の検知点でない場合(静止物の検知点の場合)(ステップS109がNo)は、車両1のACCがOFF状態か否かを導出して(ステップS116)、車両1のACCがOFF状態の場合(ステップS116がYes)は、処理を終了する。また、車両1のACCがOFF状態でない場合(ステップS116がNo)は、ステップS101の処理へ戻り、走査による検知点の検出を行う。
【0060】
次にステップS109に戻って、検知点が移動物の検知点の場合(ステップS109がYes)は、ペアリング正誤判定(ステップS115)の処理を行う。
【0061】
ステップS115のペアリング正誤判定処理では、上記のように移動物の検知点を判定の対象としている。ここで、移動物の検知点とは、ステップS105までの処理で検出された検知点のうち、たとえば車両1が40km/hで対象の物体に接近した場合、車両1からみればその検知点が70km/hの速度で接近してきているようにみえる(物体は車両1に30km/hの速度で車両1の方向に向かって走行している)移動物の検知点であり、時間の経過により位置が変化する検知点である。
【0062】
なお、移動物の検知点は車両1の方向に向かってくる対向車の検知点と、車両1の走行方向と同じ方向に走行する先行車の検知点とに分けられるが、車両1が移動物の検知点として検出した場合に、誤った制御を行うことを防止する観点から以下では、車両1の方向に向かってくる対向車の検知点について説明を行うが、対向車の検知点に限定されず先行車の検知点についても適用可能である。
【0063】
このようにステップS115のペアリング正誤判定では、移動物の検知点の位置がステップS104でピーク信号を分類したマップの複数の領域のうち分類された静止物データを構成するピーク信号の数が所定の閾値以上となる領域内に該当した場合は、移動物の検知点をピーク信号の組み合わせを誤ったペアリングで検出された可能性のある検知点である特定検知点として導出する。なお、この判定の詳細な説明は後に図11および図12の図面を用いて詳細に説明する。
【0064】
ステップS115の処理の後、車両1がACC−OFF状態か否かを導出して(ステップS116)、車両1がACC−OFF状態の場合(ステップS116がYes)は、処理を終了する。また、車両1のACCがOFF状態でない場合(ステップS116がNo)は、ステップS101の処理へ戻り、走査による検知点の検出を行う。
【0065】
ステップS110に戻って、現在検知点のカウンタ値がデータ出力閾値以上の場合は、次に検知点結合処理を行う(ステップS111)。この検知点結合処理は、1つの物体の1つの反射点である検知点を1または複数組み合わせて1つの物体データとする処理である。具体的には乗用車、トラック、および、バイクなどの移動物やガードレールや鉄橋およびガードレールなどの静止物の1つの物体からの1または複数の反射点に基づく検知点を1つの物体データとして結合する処理である。
【0066】
この物体データは車両制御部3に出力される(ステップS112)。出力された物体データに基づき、車両制御部3はブレーキ40の操作、スロットル41の操作、および、警報器42の操作など各車両制御部を用いて車両1を制御をする。
【0067】
そして、車両1がACC−OFF状態の場合(ステップS113がYes)は処理を終了し、車両1がACC−ON状態の場合(ステップS113がNo)は、ステップS101に戻って新たな物体検出処理を繰り返し行う。
【0068】
またステップS110に戻って過去検知点のカウンタ値がデータ出力閾値以上ではない場合(ステップS110がNo)は、カウンタ値がデータ出力閾値未満の過去検知点のデータをメモリ11bから削除して(ステップS114)処理を終了する。
【0069】
<2−3静止物ピークマップ生成処理>
次に、図4のステップS104の静止物ピークマップ生成の処理について図5から図8を用いて詳細に説明する。図5はピーク信号分類処理のフローチャートである。処理の説明の前に検出される物体について、図6の検知点検出の具体例を示す図を用いて説明する。
【0070】
なお、図6以降に示すxy座標軸は車両1に対して相対的に固定され、車両1の横方向(左右方向)がx軸方向、縦方向(進行方向)がy軸方向に対応する。
【0071】
図6では、道路C1上で+y方向を進行方向とする車両1に備えられたレーダ装置2の走査範囲RE内に、静止物A1(鉄橋)、および、静止物A2(ガードレール)を検出していることを示している。そして、レーダ装置2は道路C1上で車両1の進行方向(+y方向)に位置する静止物A1について複数の検知点である検知点101、検知点102、検知点103、および、検知点104を検出している。また、レーダ装置2は静止物A2を車両の左方向(−x方向)の道路L1上に検出しており、この静止物A2については複数の検知点である検知点201、検知点202、検知点203、検知点204、および、検知点205を検出している。
【0072】
なお、以下に説明するように、静止物Aについては検知点101および検知点102は本来、静止物の検知点であるが、ペアリングを誤って移動物の検知点(車両1の方向に向かって進行する対向車の検知点で以下、「対向車の検知点」ともいう。)として検出されている。静止物Aの残りの検知点である検知点103および検知点104については静止物の検知点として検出されている。
【0073】
また、静止物A2については、検知点201および検知点202は静止物の検知点であるが、ペアリングを誤って対向車の検知点として検出されている。静止物A2の残りの検知点である検知点203、検知点204、および、検知点205は静止物の検知点として検出されている。このようなペアリングの誤りは、ピーク信号の複数のグループがそれぞれ近接した位置に存在する場合に発生しやすい。
【0074】
図5の静止物ピークマップ生成処理では、まず最初に静止物グループの抽出を行い(ステップS201)、アップ区間およびダウン区間のそれぞれに対応するピーク信号を検出する。このステップS201およびステップS202の処理について図7を用いて説明する。図7はアップ区間とダウン区間のピーク信号グループを示す図である。走査範囲RE1はアップ区間で検出されたピーク信号グループを表し、走査範囲RE2はダウン区間で検出されたピーク信号グループを表している。そして、静止物A1を構成している検知点101はそのピーク信号の信号強度と角度の情報からピークグループ101Uとピークグループ101Dとがペアリングされて静止物の検知点として検出されるはずが、複数のピークグループ(以下、単に「グループ」という。)が近接した位置に存在するため、誤ってグループ101Uとグループ102Dとがペアリングされる(PA1)ことになっており、ペアリングされれば対向車の検知点となる。
【0075】
また、検知点102は検知点101と同様にピーク信号の信号強度と角度の情報からグループ102Uとグループ102Dとがペアリングされて静止物の検知点としてはずが、グループ102Uとグループ101Dとがペアリングされる(PA2)ことになっており、ペアリングされれば対向車の検知点となる。
【0076】
なお、その他のグループ103Uおよびグループ103Dと、グループ104Uおよびグループ104Dとはそれぞれ適正にペアリングされることになっており、ペアリングされれば静止物の検知点となる。
【0077】
静止物A2を構成している検知点201はそのピーク信号の信号強度と角度の情報からグループ201Uとグループ201Dとがペアリングされて静止物の検知点として検出されるはずが、複数のグループが近接した位置に存在するため、誤ってグループ201Uとグループ202Dとがペアリングされる(PA3)ことになっており、ペアリングされれば対向車の検知点となる。
【0078】
また、検知点202はそのピーク信号の信号強度と角度の情報からグループ202Uとグループ202Dとがペアリングされて静止物の検知点として検出されるはずが、複数のグループが近接した位置に存在するため、誤ってグループ202Uとグループ201Dとがペアリングされる(PA4)ことになっており、ペアリングされれば対向車の検知点として検出となる。
【0079】
なお、その他のグループ203Uおよびグループ203Dと、グループ204Uおよびグループ204Dと、グループ205Uおよびグループ205Dとはそれぞれ適正にペアリングされることになっており、ペアリングされれば静止物の検知点となる。
【0080】
したがって、図5のステップS201の静止物グループ抽出の処理では、アップ区間のグループではグループ103U、104U、203U、204U、205Uが抽出され、ダウン区間のグループではグループ103D、104D、203D、204D、205Dとが抽出される。
【0081】
そして、アップ区間およびダウン区間のグループのそれぞれに対応するピーク信号が検出される。ステップS202以下の処理について図8を用いて説明する。図8は、静止物の検知点を構成するピーク信号のマップMAへの適用図である。図7の処理で検出された静止物の検知点を構成するグループ103Uおよびグループ103Dと、グループ104Uおよびグループ104Dと、グループ203Uおよびグループ203Dと、グループ204Uおよびグループ204Dと、グループ205Uおよびグループ205Dとのデータから、図8に示すグループ103M、グループ104M、グループ203M、グループ204M、グループ205M、および、グループ206Mの各グループのピーク信号を検出する。
【0082】
ここで、たとえばグループ103Mはグループ103Uおよびグループ103Dに基づいて抽出されたグループである。グループ103Uを構成しているピーク信号とグループ103Dを構成しているピーク信号のうちピーク信号強度と角度の情報から、アップ区間とダウン区間のそれぞれに対応するピーク信号が存在するピーク信号のみを抽出して、グループ103Mを抽出する。つまり、グループ103Uのピーク信号は3本で、グループ103Dのピーク信号は3本であることから、それぞれのピーク信号の信号強度および角度の情報に基づいて対応するピーク信号を抽出した結果、グループ103Mはピーク信号が3本で構成されるグループとなる。
【0083】
また、別のグループのグループ104Mはグループ104Uおよびグループ104Dに基づいて抽出されたグループである。グループ104Uを構成しているピーク信号とグループ104Dを構成しているピーク信号のうちピーク信号強度と角度の情報から、アップ区間とダウン区間のそれぞれに対応するピーク信号が存在するピーク信号のみを抽出して、グループ104Mを構成する。つまり、グループ104Uのピーク信号は3本で、グループ104Dのピーク信号は4本であるが、それぞれのピーク信号の信号強度および角度の情報に基づいて対応するピーク信号を抽出した結果、グループ104Mはピーク信号が3本で構成されるグループとなる。このように静止物の検知点を構成するアップ区間およびダウン区間のグループのぞれぞれに対応するピーク信号を検出する。その結果、他のグループであるグループ203Mは信号数が4本、グループ204は信号数が4本、グループ205は信号数が4本、および、グループ206は信号数が4本となる。
【0084】
図5のフローチャートに戻りステップS202の処理の後、全グループのピーク信号の検出が完了しているか否かを判定する(ステップS203)。全グループのピーク信号の検出が完了していれば(ステップS203がYes)ステップS204に進み、全グループのピーク信号の検出が完了していなければ(ステップS203がNo)、ステップS202の処理を繰り返し行う。本実施形態では、グループ103Uおよびグループ103Dと、グループ104Uおよびグループ104Dと、グループ203Uおよびグループ203Dと、グループ204Uおよびグループ204Dと、グループ205Uおよびグループ205Dとのデータの全てのグループのピーク信号の検出が完了しているか否かを判定して、それぞれの処理へ進む。
【0085】
そして、図5の処理では、以下に説明するマップMAに対応して、数2を用いてピーク信号の周波数を算出する(ステップS204)。
【0086】
【数2】

また、数3、および、数4を用いてピーク信号の横位置を算出する(ステップS205)。横位置は車両1の左右方向の距離である。なお横位置については、以下に詳述する。
【0087】
【数3】

【0088】
【数4】

算出された周波数と横位置の情報に基づいてピーク信号をマップMAの該当区間に分類する(ステップS206)。そして、全ピーク信号のマップMAへの分類がなされたか否かを判定し(ステップS207)、全ピーク信号のマップMAへの分類が完了した場合(ステップS207がYes)は処理を終了する。なお、全ピーク信号のマップへの分類が完了していない場合(ステップS207がNo)は、ステップS204へ戻って、ピーク信号のマップへの分類処理を繰り返し行う。
【0089】
上記のピーク信号のマップへの分類処理を図8の静止物の検知点を構成するピーク信号のマップMAへの分類図を用いて具体的に説明する。図8に示すマップMAは、車両1の周辺領域に相当するもので複数の領域に分類されている。このマップMAは縦軸と横軸の二方向で形成されており、マップMAの縦軸(y軸方向)は周波数を示している。車両1のレーダ装置2が備えられた位置付近が0kHzとなっており、車両1の進行方向(+y方向)に進むにしたがって周波数が増加しており、20kHzごとに区分されている。なお、周波数は縦方向(y軸方向)の距離に相当する。
【0090】
また、マップMAの横軸(x軸方向)は横方向の距離を示し、車両1の位置が原点となり、その左右方向(x軸方向)を車両1の位置を基準とした検知点の位置を横位置として規定している。そして、マップMAはこのような縦横の区分により複数の領域に分類されており、これにより領域ごとに移動物のデータを構成する検知点のペアリング処理の正誤を確認できる。
【0091】
そして、上記図5のステップS203で検出された静止物の検知点を構成するピーク信号をその周波数と横位置に応じてマップMAの該当区分に分類する。車両1と同じ道路C1上に位置するグループ103およびグループ104の各ピーク信号は、その周波数と横位置からマップMAの縦軸は周波数の区間9(160kHzから180kHz)に該当し、横軸は車両1の道路C1と対応する位置および幅を有する区間C2(−1.8mから+1.8m)に該当する。したがって、グループ103およびグループ104のピーク信号はマップMAの領域MA1に該当し、この領域MA1のピーク信号の本数の合計は6本となる。
【0092】
次に、車両1の左方向(−x方向)の道路L1上に位置するグループ203、グループ204、グループ205、および、グループ206の各ピーク信号は、その周波数と横位置からマップMAの縦軸は周波数の区間5に(80kHzから100kHz)に該当し、横軸は車両1左方向(−x方向)の道路L1に対応する位置および幅を有する区間L2(−1.8mから−5.4m)に該当する。したがって、グループ203、グループ204、グループ205、および、グループ206の各ピーク信号はマップMAの領域MA2に該当し、この領域MA2のピーク信号の本数の合計は16本となる。このように分類されたピーク信号のマップMAのデータは信号処理部11のメモリ11bに保存される。
<2−4.連続性判定処理>
次に、図4に示したステップS106の連続性判定処理について、図9の連続性判定処理フローチャートを用いて詳細に説明する。この連続性判定の主な処理は、直近の物体検出処理により検出された現在検知点と過去に検出された過去検知点との連続性を判定し、連続性がある検知点はカウンタ値を加算し、連続性のない検知点はカウンタ値を減算する処理である。
【0093】
物体検出処理により検出された現在検知点と過去検知点との連続性が0回の場合(ステップS301がYes)、詳細には直近の物体検出処理で初めて検出された検知点の場合は処理を終了し、カウンタ101aによる過去検知点に対するカウンタ値の加減算は行わない。なお、図9の処理が終了した後に図4に示したステップS107の処理で検知点のデータとカウンタ値(この場合はカウンタ値0)をメモリ11bに記録する。以下、図9の各処理でもカウンタ値の増減に伴い検知点のデータとカウンタ値をメモリ11bに記録する。。
【0094】
図9に戻って、検知点の連続性が0回ではない場合(ステップS301がNo)で、現在検知点と過去検知点との連続性が1回の場合(ステップS302がYes)は、カウンタ101aにより過去検知点のカウンタ値に5の値を加算して(ステップS303)処理を終了する。
【0095】
検知点の検出の連続性が1回ではない場合(ステップS302がNo)は、現在検知点と過去検知点との検出の連続性が2回であるか否かを導出し(ステップS304)、検知点の検出の連続性が2回の場合(ステップS304がYes)は、カウンタ101aにより検知点のカウンタ値に5の値を加算して(ステップS305)処理を終了する。
【0096】
なお、後に図10を用いて説明するように、カウンタ値が10の位置をデータ出力閾値A1(以下、「閾値A1」ともいう。)とし、過去検知点のカウンタに値を加算した現在検知点のカウンタの値が閾値A1の値である10以上となると、信号処理部11は閾値A1を以上のカウンタ値の検知点で構成される物体データが車両制御部3に出力する。
【0097】
現在検知点と過去検知点との検出の連続性が2回ではない場合(ステップS304がNo)は、検知点の検出の連続性が3回であるか否かを導出し(ステップS306)、連続性が3回の場合(ステップS306がYes)は、カウンタ101aにより過去検知点のカウンタ値に2の値を加算して(ステップS307)処理を終了する。
【0098】
検知点の検出の連続性が3回ではない場合(ステップS306がNo)、前回検出した検知点を今回の走査で検出しているか否かを導出する(ステップS308)。前回検出した検知点を今回の走査で検出している場合(ステップS308がYes)は、過去検知点のカウンタ値に2の値を加算する(ステップS309)。なお、過去検知点にカウンタの値を加算した結果の値については、所定の上限値が設けられており、例えばカウンタ値が14を超えるとそれ以上カウンタの値は上昇しない。
【0099】
前回の走査で検出した検知点が今回の走査で検出されていない場合(ステップS308がNo)、つまり過去検知点と連続性のある現在検知点が存在しない場合は、連続性が確認できない過去検知点をメモリ11bから読み出して(ステップS310)、検知点が静止物を対象としたものか移動物を対象としたものかなどの検知点の種類に応じてカウンタ値を減算する。
【0100】
連続性が確認できない検知点のカウンタ値が1回以上閾値A1以上となった過去検知点(1度でもカウンタの値が10以上となった過去検知点)の場合(ステップS311がYes)は、外挿処理を行う。
【0101】
ここで、外挿処理とは過去検知点のカウンタ値が1回以上閾値A1以上となった過去検知点の連続性が確認できない場合に、所定の位置に検知点が存在するものとして過去検知点のデータを更新し、カウンタ値は減算する処理であり、更新された検知点(現在検知点)のデータと減算されたカウンタ値がメモリ11bに記録される。
【0102】
そして、カウンタ値が1回以上閾値A1以上となった過去検知点における外挿処理は、その処理回数が1回の場合に減算されたカウンタ値によりすぐにメモリ11bから対象の過去検知点のデータを削除することはなく、複数回の外挿処理に伴うカウンタ値の減算により過去検知点のカウンタの値が閾値A1よりも値が低いデータ削除閾値B1(以下、「閾値B1」ともいう。)を下回った場合にメモリ11bから対象の過去検知点のデータを削除する。これにより、存在の可能性が高い過去検知点の連続性が確認できない場合でもすぐにはメモリ11bから削除せずに、複数回の物体検出処理の中でその存在可能性を判断できる。
【0103】
図9の説明に戻り、ステップS311で検知点がカウンタ値が1回以上閾値A1以上となった検知点ではない場合(ステップS311がNo)は、対象の過去データをメモリ11bから削除して(ステップS312)処理を終了する。これにより、存在の可能性の低い過去検知点は早期にメモリ11bから削除して、他の存在可能性の高い過去検知点を優先的に記録すことができる。
【0104】
次にステップS311がYesの場合の後の処理は、各検知点の種類に応じてカウンタ値を減算する処理を行う。メモリ11bから読み出した検知点が静止物の検知点の場合(ステップS313がYes)は、対象の過去検知点のカウンタ値を2減算して(ステップS314)処理を終了する。
【0105】
検知点が静止物でない場合(ステップS313がNo)は、検知点が対向車か否かを導出する(ステップS315)。検知点が対向車か否かは過去の検知点データと比較して車両1に接近しているか否かを導出する。そして、検知点が対向車の場合(ステップS315がYes)、その検知点がミスペアリングの可能性のある特定検知点の場合(ステップS317がYes)、正常にペアリングが行われた一般検知点の減算値よりも大きい減算値となるカウンタ値を3減算して(ステップS318)処理を終了する。
【0106】
なお、対向車の検知点が特定検知点ではない一般検知点の場合(ステップS317がNo)は、特定検知点よりも減算値の少ないカウンタ値を2減算して(ステップS319)処理を終了する。
【0107】
ステップS315に戻って、検知点が対向車ではない場合(ステップS315がNo)、つまり検知点が先行車の場合は、カウンタ値を2減算して(ステップS316)処理を終了する。
【0108】
なお、これらのカウンタの値の加算および減算の値や、閾値A1および閾値B1の値は一例であり、他の値に変更してもよいが、特定検知点のカウンタ値の減算値は他の検知点の減算値よりも大きい値であり、閾値A1の値は閾値B1の値よりも大きい値となる。
【0109】
図10は、検知点のカウンタ値の推移を示す図である。図10に示すグラフは縦軸がカウンタ値となっており、上限の値が14となっている。また、横軸は1目盛りが物体検出処理の1サイクルの時間に対応した時間となっている。なお、本実施の形態では1サイクルを150msとしている。
【0110】
図10のT1の物体検出処理では物体検出処理により検知点R1が検出されており、信号処理部11はメモリ11bに検知点R1のデータと検知点R1のカウンタ値0を記録する処理を行う。そして、次のT2の物体検出処理では直近の150ms(1サイクル前)の物体検出処理で検出された検知点R1を過去検知点とした場合に連続性のある現在検知点R2が検出されている。この現在検知点R2の検出により過去検知点R1のカウンタ値が5加算され、検知点R2のデータとカウンタ値が0から5に更新され、メモリ11bに記録される。
【0111】
T3の物体検出処理では、検知点R2を過去検知点とした場合に連続性を有する現在検知点は存在せず、新たに検出された検知点S1が存在している。そのため、信号処理部11はメモリ11bの過去検知点R2のデータとカウンタ値をメモリ11bから削除し、新規に検出された検知点S1のデータとカウンタ値0を記録する。
【0112】
次に、T4の物体検出処理では、検知点S1を過去検知点とした場合に連続性を有する現在検知点S2が検出されている。そのため、信号処理部11は過去検知点S1のカウンタの値0に5を加算して、現在検知点S2のデータとカウンタ値5をメモリ11bに記録する。
【0113】
T5の物体検出処理では、検知点S2を過去検知点とした場合に連続性を有する現在検知点S3が検出されている。そのため信号処理部11は、過去検知点S2のカウンタ値5に5の値を加算して、現在検知点S3のデータとカウンタ値10をメモリ11bに記録する。なお、現在検知点S3のカウンタ値は車両制御部3に検知点の情報を用いて構成される物体データを出力する閾値A1以上となっているため、現在検知点S3は物体データを構成する要素となり、車両制御部3へ出力される。
【0114】
T6およびT7の物体検出処理では過去検知点S3が継続して検出されているため、T6では現在検知点がS4となり、検知点S4のデータとカウンタ値10に2を加算したカウンタ値12がメモリ11bに記録される。また、T7では過去検知点S4に対して検知点S5が現在検知点となり、検知点S5のデータとカウンタの値12に2を加算したカウンタ値14がメモリ11bに記録される。
【0115】
検知点S5のカウンタ値は上限のカウンタ値14のため、次の物体検出処理であるT8の物体検出処理では、過去検知点をS5とする現在検知点S6に連続性がある場合でも、カウンタ値は14として検知点S6のデータをメモリ11bに記録する。
【0116】
次に、過去検知点をS6とした場合に現在検知点との連続性が確認できないときに、所定の位置に検知点が存在するものとして仮定的に過去検知点のデータを更新する外挿処理を行い、現在検知点としてメモリ11bに記憶して検知点のデータの連続性を保つ。
【0117】
そして、これまで説明した検知点S1からS6まで連続性を有する検知点が後述するペアリング正誤判定処理において、ピーク信号の組み合わせを誤ったペアリングで検出された可能性のある特定検知点の場合をSA7以降の検知点とし、ピーク信号の組み合わせが正しい組み合わせでペアリングされた可能性のある一般検知点の場合をSB7以降の検知点として、この後の各検知点の推移を説明する。
【0118】
T8での過去検知点S6が一般検知点の場合に、次の物体検出処理のT9で現在検知点との連続性が確認できないときは、仮想的に現在検知点SB7を導出する。このように外挿処理により仮想的に導出された現在検知点SB7のカウンタ値は元のカウンタ値から2減算され、メモリ11bには現在検知点SB7のデータとカウンタ値14から2を減算したカウンタ値12が記録される。
【0119】
その後、検知点SB7を過去検知点としたT10のSB8以降の複数回の外挿処理の結果、1回の外挿処理ごとに検知点のカウンタ値を2ずつ減算して、検知点のデータとともにカウンタ値をメモリ11bに記録する。そして、T13における過去検知点をSB10とする検知点SB11のデータとカウンタ値4がメモリ11bに記録される。そして、検知点SB11はメモリ11bから検知点データを削除する閾値であるデータ削除閾値B1を下回っている。そのため、T1〜T13までメモリ11bに記録を更新してきたSB11のデータをメモリ11bから削除する。
【0120】
次に、T8の物体検出処理の説明に戻り検知点S6が特定検知点の場合は、特定検知点S6を過去検知点として仮想的に導出された現在検知点SA7では、検知点SA7のデータと特定検知点S6のカウンタ値14から3の値を減算したカウンタ値11をメモリ11bに記録する。
【0121】
その後、特定検知点SA7を過去検知点としたT10における仮想的な現在検知点SA8のデータとカウンタ値8がメモリ11bに記録される。次に、特定検知点SA8を過去検知点としたT11の仮想的な現在検知点SA9のデータとカウンタ値5がメモリ11bに記録される。
【0122】
メモリ11bに記録された検知点SA9はデータ削除閾値B1を下回っていることから、検知点SA9のデータは、T11の走査でメモリ11bから削除される。つまり、一般検知点を外挿処理する場合の減算値よりも特定検知点を外挿処理する場合の減算値が大きい値であることからピーク信号の組み合わせを誤ったペアリングで検出された可能性のある特定検知点を他の検知点よりも早くメモリ11bから削除することで不適切な車両制御を防止できる。具体的には図10に示すように特定検知点はT11でメモリ11bから削除され、一般検知点はT13でメモリ11bから削除される。つまり、特定検知点は一般検知点よりも300ms(2サイクルの物体検知処理早くメモリ11bから削除される。
【0123】
また、閾値A1を1回以上超えたS6を特定検知点とした場合に、特定検知点S6の連続性が確認できない場合に、特定検知点のデータが閾値B1を下回るまでメモリ11bから特定検知点のデータを削除せずに、外挿処理を行っている。つまり、特定検知点のカウンタ値が閾値B1を下回るまでの減算回数が複数回(図10では、S6のカウンタ値14から3を減算したSA7のカウンタ値12、SA7のカウンタ値12から3を減算したSA8のカウンタ値8、および、SA8のカウンタ値8から3を減算したSA9のカウンタ値5の合計3回)となるようにカウンタ値を減算して、閾値B1を下回ったカウンタ値の特定検知点を削除する。
【0124】
これにより、特定検知点が閾値A1以上となり車両制御部3へ出力された場合は、ピーク信号の組み合わせを誤ったペアリングで検出された可能性があっても、すぐにはメモリ11bから特定検知点のデータを削除せず、ピーク信号の組み合わせが誤りか否かを複数回の処理をとおして判定することで、特定検知点のペアリングの正誤を判定できる。
【0125】
<2−5.ペアリング正誤判定処理>
次に、図4のステップS115に示すペアリング正誤判定処理について、図11および図12を用いて詳細に説明する。図11はペアリング正誤判定処理のフローチャートである。
【0126】
図4のステップS105のペアリング処理により検出された検知点が連続して3回以上検出されておらず(ステップS108がNo)、移動物の検知点である場合(ステップS109がYes)にこのペアリング正誤判定処理が実行され、車両1の方向に所定速度以上(たとえば10km/h以上)で近づいてきている対向車の検知点か否かを判定する(ステップS301)。
【0127】
車両1の方向に所定速度以上で近づいてきている対向車の検知点が有る場合(ステップS401がYes)は、ステップS402の処理へ進む。また、車両1の方向に所定速度以上で近づいてきている対向車の検知点が無い場合(ステップS401がNo)は、処理を終了する。
【0128】
ステップS401がYesの場合、対向車の検知点の周波数を算出する(ステップS402)。そして、対向車の検知点の横位置を算出する(ステップS403)。周波数の算出は上記の数2を用いて行い、横位置の算出は上記の数3および数4を用いて行う。
【0129】
次に、ステップS402とステップS403とで算出した検知点の周波数および横位置のデータを用いて、対向車の検知点のマップMAの該当領域を算出する(ステップS404)。
【0130】
対向車の検知点のマップMAの位置が、マップの複数の領域のうちの分類された静止物の検知点を構成するピーク信号が所定の閾値以上となる領域内に該当した場合(ステップS405がYes)は、特定検知点として判定してフラグをオンする(ステップS406)。この特定検知点として判定された対向車の検知点は、ペアリング処理の対象を誤った可能性の高い検知点となり、特定検知点とされたことは、車両制御部3の各車両制御部を制御する際の判定条件の1つとなる。
【0131】
これにより、検知点のペアリング処理の正誤を確認できる。また、新規に検出された検知点および前回初めて検出されて今回も検出された検知点に対してペアリングの正誤判定を行うことで、早期にペアリング処理の正誤を確認できる。
【0132】
なお、ステップS405において、対向車の検知点のマップMAの位置が、マップの複数の領域のうちの分類された静止物の検知点を構成するピーク信号が所定の閾値以上となる領域内に該当しない場合(ステップS405がNo)、または、特定検知点のカウントアップが行われた(ステップ406)後、全ての対向車の検知点の該当領域の分類が行われたか否かを判定する(ステップS407)。
【0133】
全ての対向車の検知点の該当領域の分類が行われた場合(ステップS407がYes)は処理を終了する。また、全ての対向車の検知点の該当領域の分類が行われていない場合(ステップS407がNo)は、ステップS402の処理に戻る。
【0134】
図11の処理を図12を用いて具体的に説明する。図12は、対向車の検知点のマップへの分類を示した図である。マップMAは上記の図5および図8を用いて説明したように、静止物の検知点を構成するピーク信号を分類したマップであり、周波数の区間9、横位置の区間C2の領域MA1にグループ103Mおよびグループ104Mのピーク信号が合計6本分類され、周波数の区間5、横位置の区間L2の領域M2にグループ203M、グループ204M、グループ205M、および、グループ206のピーク信号が合計16本分類されている。
【0135】
そして領域MA1は横位置の区間がC2であり、この区間C2はピーク信号の閾値が4本で設定されている。また、領域MA2は横位置の区間がL2であり、この区間L2はピーク信号の閾値が15本で設定されている。なお、横位置の区間R2についてもピーク信号の閾値が15本で設定されている。このように左右方向(x軸方向)の各区間に設定されている閾値は、マップMAの複数の領域のうち左右方向に関して車両1と一致する領域であるC2の各領域よりも、車両1と異なる領域であるL2またはR2の領域のほうが高く設定されている。つまり、通常静止物の存在の確率の低い自車線の領域では静止物の検知点を構成するピーク信号の閾値を低く設定し、自車線以外の他の車線の領域では静止物の存在確率は自車線よりも高く、また車両1へ向かって進行してくる対向車の存在確率も高いことを考慮して、静止物の検知点を構成するピーク信号の閾値を高く設定している。
【0136】
このように静止物の検知点を構成するピーク信号が分類され、それぞれの領域に閾値が設定されている状態で、移動物の検知点の周波数と横位置の情報に基づいて、移動物の各検知点マップMAの各領域に分類する。図12では対向車の検知点として検出された検知点101、および、検知点102が領域MA1に分類され、同じく対向車の検知点として検出された検知点201、および、検知点202が領域MA2に分類されている。
【0137】
そして、領域MA1のピーク信号の閾値は4本であるところ、領域MA1の静止物の検知点を構成するピーク信号の本数は6本であるため、領域MA1に分類された対向車の検知点101および対向車の検知点102は、それぞれ特定検知点のカウンタがアップされる。
【0138】
また、領域MA2のピーク信号の閾値は15本であるところ、領域MA2の静止物の検知点を構成するピーク信号の本数は16本であるため、領域MA2に分類された対向車の検知点201および対向車の検知点202は、それぞれ特定検知点のカウンタがアップされる。これにより、自車両と一致する領域(たとえば自車線の領域)と、自車両と異なる領域(たとえば自車線以外の他の車線や自車線から外れた領域)の両方で移動物を構成する検知点のペアリング処理の正誤を確認できる。
【0139】
また、自車両と異なる領域の閾値が自車両の領域の閾値と比べて高いことから、本来対向車が存在する可能性の高い自車両と異なる領域において、対向車の検知点をペアリングを誤った対象とする可能性はない。さらに、自車両と異なる領域ではガードレールなどの静止物の検知点が存在する可能性が高いことから、閾値を高く設定していても静止物の検知点が存在する場合は、静止物の検知点を構成するピーク信号の数は閾値を上回る。
【0140】
なお、周波数の区間1(周波数0kHzから20kHz)は車両1と検出対象の静止物との距離が近いことから、区間L2および区間R2に位置する静止物の検知点を構成するピーク信号が区間C2に入り込んできたり、ノイズの影響を受けやすいことから、これらの区間で構成される車両1からの近傍領域は本実施形態の処理では使用しないこととしている。
【符号の説明】
【0141】
1・・・・・車両
2・・・・・レーダ装置
3・・・・・車両制御部
10・・・・車両制御システム
11・・・・信号処理部
12・・・・変調部
13・・・・VCO
14・・・・方向性結合器
15・・・・平面アンテナ
16・・・・ミキサ
17・・・・フィルタ
18・・・・A/D変換部
19・・・・モータ駆動部
20・・・・モータ
21・・・・エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周期で周波数が変わる送信信号と、該送信信号に基づく送信波の物体での反射波を受信した受信信号との差分周波数を示すピーク信号を前記送信信号の周波数が上昇する第1期間と周波数が下降する第2期間とで導出し、前記第1期間および前記第2期間のピーク信号をペアリングすることで前記ピーク信号に係る物体の反射点である検知点を検出する物体検出処理を行う信号処理装置であって、
過去の前記物体検出処理において検出された前記検知点である過去検知点を示すデータと、前記過去検知点についての存在の可能性を示すカウンタ値とを記憶する記憶手段と、
直近の前記物体検出処理において検出された前記検知点である現在検知点と前記過去検知点との連続性判定を行う判定手段と、
前記連続性判定により前記現在検知点との連続性が確認できない前記過去検知点の前記カウンタ値を減算する減算手段と、
前記カウンタ値が第1の閾値を下回った場合に、該カウンタ値に係る前記過去検知点を示すデータを前記記憶手段から削除する削除手段と、
前記ピーク信号の組み合わせを誤ったペアリングで検出された可能性のある前記検知点を特定検知点として特定する特定手段と、
前記特定検知点に特定された前記過去検知点と、他の前記過去検知点とで前記減算手段が減算する減算値を変更する変更手段と、
を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号処理装置において、
前記変更手段は、前記特定検知点に特定された前記過去検知点の減算値を他の前記過去検知点の減算値よりも大きい値とすること、
を特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の信号処理装置において、
前記連続性判定により前記現在検知点との連続性が確認できた前記過去検知点の前記カウンタ値を加算する加算手段と、
前記加算手段により加算されたカウンタ値が前記第1の閾値よりも値の大きい第2の閾値以上の場合に、車両が備える装置を制御する車両制御装置へ前記検知点の情報を用いて構成される物体データを出力する出力手段と、
をさらに備え、
前記減算手段は、カウンタ値が前記第2の閾値以上となった前記特定検知点の連続性が確認できない場合に、前記特定検知点のカウンタ値が前記第1の閾値を下回るまでの減算回数が複数回となるようにカウンタ値を減算すること、
を特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の信号処理装置と、
前記送信波を出力し、前記反射波を受信する手段と、
を備えるレーダ装置。
【請求項5】
車両に搭載される請求項4に記載のレーダ装置と、
前記車両が備える装置を制御する車両制御装置と、
を備えることを特徴とする車両制御システム。
【請求項6】
所定周期で周波数が変わる送信信号と、該送信信号に基づく送信波の物体での反射波を受信した受信信号との差分周波数を示すピーク信号を前記送信信号の周波数が上昇する第1期間と周波数が下降する第2期間とで導出し、前記第1期間および前記第2期間のピーク信号をペアリングすることで前記ピーク信号に係る物体の反射点である検知点を検出する物体検出処理を行う信号処理方法であって、
過去の前記物体検出処理において検出された前記検知点である過去検知点を示すデータと、前記過去検知点についての存在の可能性を示すカウンタ値とを記憶手段に記憶する工程と、
直近の前記物体検出処理において検出された前記検知点である現在検知点と前記過去検知点との連続性判定を行う工程と、
前記連続性判定により前記現在検知点との連続性が確認できない前記過去検知点の前記カウンタ値を減算する工程と、
前記カウンタ値が第1の閾値を下回った場合に、該カウンタ値に係る前記過去検知点を示すデータを前記記憶手段から削除する工程と、
前記ピーク信号の組み合わせを誤ったペアリングで検出された可能性のある前記検知点を特定検知点として特定する工程と、
前記特定検知点に特定された前記過去検知点と、他の前記過去検知点とで前記減算手段が減算する減算値を変更する工程と、
を備えることを特徴とする信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−13484(P2012−13484A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148806(P2010−148806)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】