説明

信号処理装置、信号処理方法、およびプログラム、並びに情報処理装置

【課題】心電図信号から良質な心臓鼓動パターンを得る。
【解決手段】
本開示の信号処理装置は、心臓の周期的な動きに対応する心電図信号から心臓の1周期分の動きを示す心臓鼓動パターンを切り出す切り出し部と、前後して切り出された前記心臓鼓動パターンの相関を示す相関係数を計算し、計算した前記相関係数に基づいて、切り出された前記心臓鼓動パターンを選別する選別部とを含む。本開示は、例えば、心臓鼓動パターンを用いて個人認証を行う認証装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号処理装置、信号処理方法、およびプログラム、並びに情報処理装置に関し、特に、人の心臓の動きを示す心臓鼓動パターンを正確に検出できるようにした信号処理装置、信号処理方法、およびプログラム、並びに情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、健康診断などの医療用途で心電図(以下、心電図信号と称する)の測定が行われている。心電図信号は周期的な心臓の動きを表し、その1周期分の波形パターン(以下、心臓鼓動パターンと称する)が各個人で異なる特徴を示すことが知られている。
【0003】
図1は、一般的な心臓鼓動パターンの波形を示している。同図の横軸は時間軸(サンプル軸)を示し、縦軸は電位を示している。同図に示されるように、一般的な心臓鼓動パターンは、U波、P波、Q波、R波、S波、T波の順に特徴的な波が配置されている。
【0004】
そして、この心臓鼓動パターンを個人認証に利用する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、予め登録者の心電図信号を測定して心臓鼓動パターンを抽出し、その特徴量を算出して登録しておく。そして、認証時には、被認証者の心電図信号を測定して心臓鼓動パターンを抽出し、その特徴量を算出して、登録済みの特徴量と比較し、その比較結果に基づいて認証を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−518709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、心臓鼓動パターンは個人認証に利用できる程特徴的なものである。しかしながら、登録者や被認証者(以下、被測定者とも称する)が安静な状態で測定した心電図信号であっても、個人特有の特徴を示す良質な心臓鼓動パターンが常に抽出できるとは限らない。
【0007】
すなわち、心電図信号には、心臓の動き以外の例えば被測定者と電極の接触不良や被測定者の筋電位などに起因するノイズ成分が含まれ得るからである。
【0008】
図2は、被測定者が安静な状態で測定した心電図信号の一例を示している。同図の横軸はサンプリング番号が付与された時間軸であり、縦軸は心電図信号の電位である。同図の場合、サンプリング番号0乃至7000に対応する電図信号が示されている。
【0009】
図3は、図2の心電図信号を横方向に拡大したものであり、図3Aはサンプリング番号5000乃至6000に対応し、図3Bはサンプリング番号4000乃至5000に対応し、図3Cはサンプリング番号1000乃至2000に対応する。
【0010】
図2および図3から明らかなように、 図3Aに示すサンプリング番号5000乃至6000の期間は、心電図信号の波形が安定しており、良質な心臓鼓動パターンの抽出が期待できる。これに対して、図3Bに示すサンプリング番号4000乃至4300の期間は、心電図信号の波形が大きく乱れており、良質な心臓鼓動パターンの抽出が期待できない。図3Cに示すサンプリング番号1000乃至2000の期間についても、心電図信号の波形に乱れが生じており、良質な心臓鼓動パターンの抽出が期待できない。
【0011】
仮に、図3Bまたは図3Cに示される心電図信号を個人認証に使用した場合、被測定者の特徴を示す正確な心臓鼓動パターンではない可能性があるので、結果として個人認証の精度を低下させてしまうことになる。
【0012】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、心電図信号から良質な心臓鼓動パターンを得られるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の第1の側面である信号処理装置は、心臓の周期的な動きに対応する心電図信号から心臓の1周期分の動きを示す心臓鼓動パターンを切り出す切り出し部と、前後して切り出された前記心臓鼓動パターンの相関を示す相関係数を計算し、計算した前記相関係数に基づいて、切り出された前記心臓鼓動パターンを選別する選別部とを含む。
【0014】
前記選別部は、計算した相関係数が第1の閾値以上となる連続回数が第2の閾値以上である場合、対応する連続した複数の前記心臓鼓動パターンを平均化した平均心臓鼓動パターンを出力することができる。
【0015】
前記選別部は、計算した相関係数が第1の閾値よりも小さくなる連続回数が第3の閾値以上である場合、前記第1の閾値を所定の値だけ下げることができる。
【0016】
本開示の第1の側面である信号処理装置は、計算した相関係数が第1の閾値よりも小さくなる連続回数が第3の閾値以上である場合、被測定者に測定不良を通知する通知手段をさらに含むことができる。
【0017】
本開示の第1の側面である信号処理方法は、信号処理装置の信号処理方法において、前記信号処理装置による、心臓の周期的な動きに対応する心電図信号から心臓の1周期分の動きを示す心臓鼓動パターンを切り出す切り出しステップと、前後して切り出された前記心臓鼓動パターンの相関を示す相関係数を計算し、計算した前記相関係数に基づいて、切り出された前記心臓鼓動パターンを選別する選別ステップとを含む。
【0018】
本開示の第1の側面であるプログラムは、コンピュータに、心臓の周期的な動きに対応する心電図信号から心臓の1周期分の動きを示す心臓鼓動パターンを切り出す切り出しステップと、前後して切り出された前記心臓鼓動パターンの相関を示す相関係数を計算し、計算した前記相関係数に基づいて、切り出された前記心臓鼓動パターンを選別する選別ステップとを含む処理を実行させる。
【0019】
本開示の第1の側面においては、心臓の周期的な動きに対応する心電図信号から心臓の1周期分の動きを示す心臓鼓動パターンが切り出され、前後して切り出された心臓鼓動パターンの相関を示す相関係数が計算され、計算された相関係数に基づいて、切り出された心臓鼓動パターンが選別される。
【0020】
本開示の第2の側面である情報処理装置は、心臓の動きに対応する心電図信号を入力する入力部と、前記心電図信号から心臓の1周期分の動きを示す心臓鼓動パターンを切り出す切り出し部と、前後して切り出された前記心臓鼓動パターンの相関を示す相関係数を計算し、計算した前記相関係数に基づいて、切り出された前記心臓鼓動パターンを選別する選別部と、選別された前記心臓鼓動パターンを用いて所定の処理を行う情報処理部とを含む。
【0021】
前記情報処理部は、選別された前記心臓鼓動パターンを用いて個人認証処理を行うことができる。
【0022】
本開示の第2の側面においては、心臓の動きに対応する心電図信号が入力され、心電図信号から心臓の1周期分の動きを示す心臓鼓動パターンが切り出され、前後して切り出された心臓鼓動パターンの相関を示す相関係数が計算され、計算された相関係数に基づいて、切り出された心臓鼓動パターンが選別され、選別された心臓鼓動パターンを用いて所定の処理が行われる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の第1の側面によれば、心電図信号から良質な心臓鼓動パターンを得ることができる。
【0024】
本発明の第2の側面によれば、心臓鼓動パターンを用いる所定の処理の精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一般的な心臓鼓動パターンの波形を示す図である。
【図2】心電図信号の一例を示す図である。
【図3】図2の心電図信号を横方向に拡大した図である。
【図4】実施の形態である認証装置の外観図である。
【図5】実施の形態である認証装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】図5の特徴抽出部の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6の選別部の構成例を示すブロック図である。
【図8】第1の選別処理を説明するフローチャートである。
【図9】第2の選別処理を説明するフローチャートである。
【図10】選別部に入力される心臓鼓動パターンを重ねた図である。
【図11】選別部から出力される心臓鼓動パターンを重ねた図である。
【図12】相関係数の推移を示す図である。
【図13】コンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示を実施するための最良の形態(以下、実施の形態と称する)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
<1.実施の形態>
[認証装置の構成例]
図4は、実施の形態である認証装置の上面の外観を示している。この認識装置10は、人の心臓鼓動パターンを利用して個人認証を行うものである。
【0028】
同図Aに示すように、認証装置10の上面には、電極11Lおよび電極11Rが設けられている。認証装置10は、同図Bに示されるように、被測定者(登録者および被認証者)は、左手を電極11Lに、右手を電極11Rに接触させて状態で心電図信号を測定する。
【0029】
図5は、認識装置10の構成例を示している。認識装置10は、電極11L,11R、増幅部21、フィルタ部22、およびADC(analog digital converter)部23から成るアナログ処理部20と、前処理部31、特徴抽出部32、登録部33、および認証部34から成るデジタル処理部30とから構成される。
【0030】
増幅部21は、電極11L,11Rから得られる、被測定者の心臓の周期的な動きに起因する微弱な電気信号を増幅してフィルタ部22に出力する。フィルタ部22は、増幅された電気信号に対して、後段のADC部23におけるエイリアシングの発生を防止するためのアンチエイリアシングフィルタ処理を行ってADC部23に出力する。ADC部23は、所定のサンプリング周波数に同期してアンチエイリアシングフィルタ処理後の電気信号の電位を検出することにより心電図信号を生成し、デジタル処理部30に出力する。サンプリング周波数は、例えば1MHzとされる。
【0031】
前処理部31は、バンドパスフィルタからなり、入力された心電図信号から外乱を除去して特徴抽出部32に出力する。特徴抽出部32は、心電図信号から心臓鼓動パターンを抽出し、その特徴量を算出する。なお、特徴量の算出方法は任意である。心臓鼓動パターン自体を特徴量とみなしてもよい。
【0032】
登録部33は、登録時において、算出された心臓鼓動パターンの特徴量を登録者に対応付けて登録する(記憶する)。認証部34は、認証時において、被認証者の心臓鼓動パターンの特徴量と、登録部33に登録済みの登録者の特徴量とを比較し、その比較結果に基づいて、被認証者の個人認証を行う。
【0033】
図6は、図5の特徴抽出部32の構成例を示している。特徴抽出部32は、心拍検出部41、心臓鼓動パターン切り出し部42、選別部43、平均化部44、および算出部45から構成される。
【0034】
心拍検出部41は、前処理部31から入力される心電図信号の特徴点として、例えばR波のピークを検出する。具体的には、例えば、心電図信号の電位が所定の閾値以上である期間の最大値をR波のピークとして検出する。心臓鼓動パターン切り出し部42は、検出された特徴点を基準とする所定の範囲を心臓鼓動パターンとして心電図信号から切り出して選別部43に出力する。なお、心臓鼓動パターンとして、心電図信号の1周期分全体を切り出すのではなく、例えば、その一部(P波の始点からT波の終点まで、Q波の始点からS波の終点までなど)を切り出すようにしてもよい。
【0035】
選別部43は、心電図信号から切り出された心臓鼓動パターンが、ノイズ成分などを含まない良質なものであるか否かを選別し、良質な心臓鼓動パターンのみを平均化部44に出力する。なお、選別部43では、相関の高い心臓鼓動パターンが連続して抽出された場合、それらを良質な心臓鼓動パターンと判断している。
【0036】
平均化部44は、選別部43から入力される複数の良質な心臓鼓動パターンを平均化して算出部45に出力する。算出部45は、平均化された心臓鼓動パターンの特徴量を算出して後段に出力する。
【0037】
[選別部43の構成例]
図7は、選別部43の構成例を示している。選別部43は、レジスタ51,52、相関係数計算部53、カウント部54、平均化部55、およびレジスタ56から構成される。
【0038】
選別部41においては、前段の心臓鼓動パターン切り出し部42から順次入力される心臓鼓動パターンxが、レジスタ51、相関係数計算部53、および平均化部55に入力される。
【0039】
レジスタ51は、心臓鼓動パターン切り出し部42が順次出力する心臓鼓動パターンxを1周期分だけ保持し、心臓鼓動パターン切り出し部42の出力タイミングに対して1周期分だけ先行する心臓鼓動パターンyとして、後段のレジスタ52、相関係数計算部53、および平均化部55に出力する。
【0040】
レジスタ52は、レジスタ51が順次出力する心臓鼓動パターンyを1周期分だけ保持し、心臓鼓動パターン切り出し部42の出力タイミングに対して2周期分だけ先行する心臓鼓動パターンzとして平均化部55に出力する。したがって、平均化部55に入力される心臓鼓動パターンx,y,zは、それぞれ1周期分ずつずれたものとなる。なお、レジスタ52の後段にさらにレジスタを追加し、平均化部55に4周期分以上の心臓鼓動パターンが入力されるようにしてもよい。
【0041】
相関係数計算部53は、心臓鼓動パターン切り出し部42とレジスタ51から同時に入力される心臓鼓動パターンxと心臓鼓動パターンyとの相関の程度を示す相関係数rを次式に従って計算する。
【数1】

【0042】
なお、iは所定のサンプル幅Nからなる心臓鼓動パターンにおけるサンプル番号であり、オーバーラインx,yは、N個のサンプルからなる心臓鼓動パターンx={xi},y={yi}それぞれの相加平均である。ただし、オーバーラインx,yは、ともに0としてもよい。
【0043】
上式に従って計算される相関係数rは、−1≦r≦+1となり、相関の程度が高いほど+1に近い値となる。相関係数計算部53は、さらに、計算した相関係数rが第1の閾値(例えば0.8)以上であるか否かを判定し、その判定結果をカウント部54に通知する。
【0044】
カウント部54は、相関係数計算部53からの判定結果に従い、相関係数rが第1の閾値以上である場合、自己がカウントする第1のカウント値を1だけ加算する。反対に、相関係数rが第1の閾値より小さい場合、自己がカウントする第1のカウント値を0にリセットする。
【0045】
さらに、カウント部54は、第1のカウント値が第2の閾値以上であるか否かを判定し、判定結果をレジスタ56に通知する。なお、第2の閾値は、平均化部55に心臓鼓動パターンを出力するレジスタ(いまの場合、レジスタ51,52)の数と同数に設定する。したがって、図7の構成例の場合、第2の閾値は2とする。
【0046】
ただし、レジスタの数および第2の閾値は、大きすぎると選別部43が心臓鼓動パターンを選別するまでに時間を要するので、10以下とすることが望ましい。
【0047】
平均化部55は、心臓鼓動パターン切り出し部42、レジスタ51、およびレジスタ52から入力される連続した3周期分の心臓鼓動パターンx,y,zを平均し、その結果得られる平均心臓鼓動パターンをレジスタ56に出力する。
【0048】
レジスタ56は、カウント部54からの判定結果に従い、第1のカウント値が第2の閾値以上である場合、平均化部55からの平均心臓鼓動パターンを後段の平均化部44に出力する。ここで、第1のカウント値が第2の閾値以上であるということは、レジスタ56の平均心臓鼓動パターンが、相関の高い連続した心臓鼓動パターンx,y,zの平均であることを意味する。
【0049】
反対に、第1のカウント値が第2の閾値より小さい場合、レジスタ56は、平均化部55からの平均心臓鼓動パターンを破棄する。
【0050】
なお、相関係数計算部53における第1の閾値については、固定とすることもできるし、カウント部54からフィードバックされる第2のカウント値に基づいて変更するようにすることもできる。ここで、第2のカウント値は、カウント部54にて、相関係数rが第1の閾値よりも小さい場合に1ずつ加算されるものとする。
【0051】
具体的には、フィードバックされる第2のカウント値が第3の閾値以上である場合、第1の閾値を所定の値だけ下げる方向に変更する。この変更した第1の閾値は、フィードバックされる第2のカウント値が第3の閾値よりも小さい状態が所定の期間継続した場合、初期値に戻るようにする。
【0052】
[選別部43による第1の動作説明]
次に、選別部43による第1の動作(以下、第1の選別処理と称する)について説明する。
【0053】
図8は、第1の選別処理を説明するフローチャートである。この第1の選別処理は、心臓鼓動パターン切り出し部42から選別部43に心臓鼓動パターンが入力される毎に繰り返し実行される。
【0054】
ステップS1において、相関係数計算部53は、同時に入力される心臓鼓動パターン切り出し部42からの心臓鼓動パターンxと、レジスタ51からの心臓鼓動パターンyとの相関の程度を示す相関係数rを計算する。
【0055】
ステップS2において、相関係数計算部53は、計算した相関係数rが第1の閾値以上であるか否かを判定し、その判定結果をカウント部54に通知する。相関係数rが第1の閾値以上である場合、処理はステップS3に進められる。ステップS3において、カウント部54は、自己がカウントする第1のカウント値を1だけ加算する。
【0056】
ステップS4において、カウント部54は、第1のカウント値が第2の閾値以上であるか否かを判定し、判定結果をレジスタ56に通知する。第1のカウント値が第2の閾値以上である場合、処理はステップS5に進められる。ステップS5において、レジスタ56は、平均化部55からの平均心臓鼓動パターンを後段の平均化部44に出力する。そして、次に入力される心臓鼓動パターンに応じて、再び第1の選別処理のステップS1の処理が開始される。
【0057】
ステップS4において、第1のカウント値が第2の閾値よりも小さいと判定された場合、ステップS5はスキップされて第1の選別処理は終了される。そして、次に入力される心臓鼓動パターンに応じて、再び第1の選別処理のステップS1の処理が開始される。
【0058】
なお、ステップS2において、計算した相関係数rが第1の閾値よりも小さいと判定された場合、処理はステップS6に進められる。ステップS6において、カウント部54は、自己がカウントする第1のカウント値を0にリセットする。以上で、第1の選別処理は終了される。そして、次に入力される心臓鼓動パターンに応じて、再び第1の選別処理のステップS1の処理が開始される。
【0059】
以上に説明した第1の選別処理によれば、相関の高い心臓鼓動パターンが3つ以上連続した場合、イズ成分を含まない高い品質のものとみなし、それらに基づく平均心臓鼓動パターンも高い品質を有するとみなして後段に出力するようになされている。したがって、後段において、高い精度で個人認証を行うことが可能となる。
【0060】
[選別部43による第2の動作説明]
次に、選別部43による第2の動作(以下、第2の選別処理と称する)について説明する。
【0061】
図9は、第2の選別処理を説明するフローチャートである。この第2の選別処理は、前段の心臓鼓動パターン切り出し部42から選別部43に心臓鼓動パターンが入力される毎に繰り返し実行される。
【0062】
ステップS21において、相関係数計算部53は、同時に入力される心臓鼓動パターン切り出し部42からの心臓鼓動パターンxと、レジスタ51からの心臓鼓動パターンyとの相関の程度を示す相関係数rを計算する。
【0063】
ステップS22において、相関係数計算部53は、計算した相関係数rが第1の閾値以上であるか否かを判定し、その判定結果をカウント部54に通知する。相関係数rが第1の閾値以上である場合、処理はステップS23に進められる。ステップS23において、カウント部54は、自己がカウントする第1のカウント値を1だけ加算するとともに、自己がカウントする第2のカウント値を0にリセットする。
【0064】
ステップS24において、カウント部54は、第1のカウント値が第2の閾値以上であるか否かを判定し、判定結果をレジスタ56に通知する。第1のカウント値が第2の閾値以上である場合、処理はステップS25に進められる。ステップS25において、レジスタ56は、平均化部55からの平均心臓鼓動パターンを後段の平均化部44に出力する。以上で、第2の選別処理は終了される。そして、次に入力される心臓鼓動パターンに応じて、再び第2の選別処理のステップS21の処理が開始される。
【0065】
ステップS24において、第1のカウント値が第2の閾値よりも小さいと判定された場合、ステップS25はスキップされて第2の選別処理は終了される。そして、次に入力される心臓鼓動パターンに応じて、再び第2の選別処理のステップS21の処理が開始される。
【0066】
なお、ステップS22において、計算した相関係数rが第1の閾値よりも小さいと判定された場合、処理はステップS26に進められる。ステップS26において、カウント部54は、自己がカウントする第1のカウント値を0にリセットするとともに、自己がカウントする第2のカウント値を0にリセットする。
【0067】
ステップS27において、カウント部54は、第2のカウント値が第3の閾値(例えば、10)以上であるか否かを判定し、判定結果を相関係数計算部53に通知する。第2のカウント値が第3の閾値以上である場合、処理はステップS28に進められる。ステップS28において、心電図信号の測定結果が不良である旨が通知手段(不図示)により被測定者に通知される。この通知に従い、測定者は、電極と接触し直すなどの対処行動を行うことになる。
【0068】
ステップS29において、相関係数計算部53は、第1の閾値を所定の値(例えば、0.1)だけ下げる。これにより、第1のカウント値が加算されやすくなる。ステップS30において、カウント部54は、第2のカウント値を0にリセットする。以上で、第2の選別処理は終了される。そして、次に入力される心臓鼓動パターンに応じて、再び第2の選別処理のステップS21の処理が開始される。
【0069】
なお、ステップS27において、第2のカウント値が第3の閾値よりも小さいと判定された場合、ステップS28,S29,S30はスキップされて第2の選別処理は終了される。そして、次に入力される心臓鼓動パターンに応じて、再び第2の選別処理のステップS21の処理が開始される。
【0070】
以上に説明した第2の選別処理によっても、第1の選別処理と同様、高い品質の心臓鼓動パターンに基づく平均心臓鼓動パターンを出力できる。したがって、後段において、高い精度で個人認証を行うことが可能となる。また、第2の選別処理によれば、れば、第1の閾値をカウント部54からのフィードバックに基づいて変更するようにしたので、第1の選別処理に比較して、より早く平均心臓鼓動パターンを出力できる。なお、カウント部54からのフィードバックに基づいて、第1の閾値を段階的に下げたり、第1の閾値を初期値に戻すようにしたりしてもよい。
【0071】
次に、選別部43の出力について、図10乃至図12を参照して説明する。図10は、図2の心電図信号に基づいて心臓鼓動切り出し部42から選別部43に入力される心臓鼓動パターンを重ねて表示したものである。図11は、選別部43が第1の選別処理により出力した心臓鼓動パターン(良質な心臓鼓動パターンを平均した平均心臓鼓動パターン)を重ねて表示したものである。図12は、図2の心電図信号に基づいて心臓鼓動切り出し部42から選別部43に順次入力される心臓鼓動パターンに基づいて計算される相関係数rの推移を示している。
【0072】
図10および図11を比較して明らかなように、選別部43においては、誤って切り出された心臓鼓動パターン、ノイズ成分を含む心臓鼓動パターンが除外され、良質な心臓鼓動パターンのみが選出されていることがわかる。また、図12から、第1の閾値を0.8に設定すると、計算される相関係数rの約半数が第1の閾値を越えていることがわかる。したがって、第2の選別処理のように、第1の閾値を下げることによって選別部43からより早く、より多くの心臓鼓動パターンを後段に出力できる。
【0073】
ところで、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0074】
図13は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0075】
このコンピュータ100において、CPU(Central Processing Unit)101,ROM(Read Only Memory)102,RAM(Random Access Memory)103は、バス104により相互に接続されている。
【0076】
バス104には、さらに、入出力インタフェース105が接続されている。入出力インタフェース105には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部106、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部107、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部108、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部109、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア111を駆動するドライブ110が接続されている。
【0077】
以上のように構成されるコンピュータ100では、CPU101が、例えば、記憶部108に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース105およびバス104を介して、RAM103にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0078】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【0079】
また、プログラムは、1台のコンピュータにより処理されるものであってもよいし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであってもよい。さらに、プログラムは、遠方のコンピュータに転送されて実行されるものであってもよい。
【0080】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0081】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 認証装置, 11L,11R 電極, 20 アナログ処理部, 21 増幅部, 22 フィルタ部, 23 ADC部, 30 デジタル処理部, 31 前処理部, 32 特徴抽出部, 33 登録部, 34 認証部, 41 心拍検出部, 42 心臓鼓動パターン切り出し部, 43 選別部, 44 平均化部, 45 算出部, 51,52 レジスタ, 53 相関係数計算部, 54 カウント部, 55 平均化部, 56 レジスタ, 100 コンピュータ, 101 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の周期的な動きに対応する心電図信号から心臓の1周期分の動きを示す心臓鼓動パターンを切り出す切り出し部と、
前後して切り出された前記心臓鼓動パターンの相関を示す相関係数を計算し、計算した前記相関係数に基づいて、切り出された前記心臓鼓動パターンを選別する選別部と
を含む信号処理装置。
【請求項2】
前記選別部は、計算した相関係数が第1の閾値以上となる連続回数が第2の閾値以上である場合、対応する連続した複数の前記心臓鼓動パターンを平均化した平均心臓鼓動パターンを出力する
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記選別部は、計算した相関係数が第1の閾値よりも小さくなる連続回数が第3の閾値以上である場合、前記第1の閾値を所定の値だけ下げる
請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
計算した相関係数が第1の閾値よりも小さくなる連続回数が第3の閾値以上である場合、被測定者に測定不良を通知する通知手段を
さらに含む請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項5】
信号処理装置の信号処理方法において、
前記信号処理装置による、
心臓の周期的な動きに対応する心電図信号から心臓の1周期分の動きを示す心臓鼓動パターンを切り出す切り出しステップと、
前後して切り出された前記心臓鼓動パターンの相関を示す相関係数を計算し、計算した前記相関係数に基づいて、切り出された前記心臓鼓動パターンを選別する選別ステップと
を含む信号処理方法。
【請求項6】
コンピュータに、
心臓の周期的な動きに対応する心電図信号から心臓の1周期分の動きを示す心臓鼓動パターンを切り出す切り出しステップと、
前後して切り出された前記心臓鼓動パターンの相関を示す相関係数を計算し、計算した前記相関係数に基づいて、切り出された前記心臓鼓動パターンを選別する選別ステップと
を含む処理を実行させるプログラム。
【請求項7】
心臓の動きに対応する心電図信号を入力する入力部と、
前記心電図信号から心臓の1周期分の動きを示す心臓鼓動パターンを切り出す切り出し部と、
前後して切り出された前記心臓鼓動パターンの相関を示す相関係数を計算し、計算した前記相関係数に基づいて、切り出された前記心臓鼓動パターンを選別する選別部と、
選別された前記心臓鼓動パターンを用いて所定の処理を行う情報処理部と
を含む情報処理装置。
【請求項8】
前記情報処理部は、選別された前記心臓鼓動パターンを用いて個人認証処理を行う
請求項7に記載の情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−205856(P2012−205856A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75958(P2011−75958)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】