説明

信号処理装置、信号処理方法及びプログラム

【課題】音楽等の音声の聴取を妨げることによる不快感や煩わしさを低減させつつ、周囲の音声を提供することができる信号処理装置、信号処理方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】信号処理装置1は、音声信号SL,SRを取得する音声信号取得部11と、外部信号ML,MRを取得する外部信号取得部14と、音声信号及び外部信号から出力信号OL,ORを生成可能な出力信号生成部100と、動作モードとして外部モードを設定可能なモード設定部25と、動作モードに応じて出力信号生成部を制御するフェード制御部26と、を有し、フェード制御部は、出力信号生成部に対して、外部モードの場合には、ユーザUの右耳及び左耳の一方用の出力信号を少なくとも外部信号から生成すると共に、他方用の出力信号を少なくとも音声信号から生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、信号処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話を含む様々な携帯型音楽プレーヤが広く普及し、多くの人が電車内や公衆等、屋内外を問わずヘッドホン・イヤホン等を使用している。ヘッドホン等から発せられる音の音量は、聴取する人それぞれが自分に適した音量を設定しているが、音楽を聴取することが目的の場合が多く、周囲のノイズに対して主観的に十分大きい音量に設定されることが多い。
【0003】
例えば、音楽を聴取しながら何か買い物をしようとする場合、音楽を視聴している状態では店員等の声が聞き難いことがある。その他、音楽等を使用している状態で、周囲の音に耳を傾ける必要がある場合も多い。
【0004】
このような場合、店員等の声など周囲の音を聴くために、ユーザは、一旦、音楽等の音量を下げたり、音楽等の再生を停止させたり、ヘッドホンを頭部から外したり、または、ヘッドホンを片耳だけ外すなどの行為をすることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−281916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにヘッドホン等を取り外すなどの行為を行う必要が多い状況の一つとして、携帯電話での通話を行う場合が挙げられる。これに対して、特許文献1には、通常は音楽等の聴取のために使用されるが、一方のスピーカがマイクとなり他方のスピーカが相手の声を聞くために使用することで携帯電話の受話器としても機能するイヤホンマイクが記載されている。
【0007】
この特許文献1に記載のイヤホンマイクによれば、確かに携帯電話の通話を、イヤホンマイクを取り外すこと無く行うことが可能ではあるが、他の状況下において、周囲の音を聴取したい場合には、その周囲の音を視聴することが難しい。
【0008】
携帯電話における通話の場合、ユーザは多くの場合その会話に集中する傾向にある。従って、ヘッドホン等を外すことを厭わないユーザも少なくない。
【0009】
一方、買い物などにおける会話は、短時間で済むことが多く、ユーザにとって重要度が低かったり、ある程度の意識レベルが確保でき会話内容が把握できればよい場合が多い。そして、このような場合に、「聴取するのを中断したくない」、「音量を下げるのには時間がかかる」、「片耳だけ外すとボーカルが聞けないことが嫌だ」、「プレイヤーは鞄に入っていて操作するのは面倒だがヘッドホンを外して聞けなくなるのは嫌だ」などと思うユーザも当然いる。よって、周囲の音が原因で音楽等の聴取を中断することにより気分を害したり、ヘッドホン等を外すなどの行為に不快感を受けるユーザも多いのが実情である。
【0010】
また、上記特許文献1に記載のイヤホンマイクでは、いずれにしろ両マイクを通話のために使用することとなり、音楽等の聴取は中断せざるを得ない。一方、例えば、携帯電話における通話だけでなく、他の状況下においても、音量(ボリュームや音量レベルとも言う。)を下げたり、再生を中止したり、ヘッドホンを外すのでは、やはり音楽等の聴取は中断せざるを得ない。他方、ヘッドホンを片耳だけ外す等の行為を行う場合、例えば音楽等がステレオのサウンドであれば、左右の音声信号の差異が大きいものもあり、外された方の音声を聴取することができず、音楽等の聴取が中断とまで行かないまでも半減してしまう。
【0011】
このような周囲の音は、最近急速に普及しつつあるノイズキャンセリング機能のあるプレーヤやヘッドホンを使用する場合には、特に、なお一層聞こえ難いのが実情である。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、音楽等の音声の聴取を妨げることによる不快感や煩わしさを低減させつつ、周囲の音声を提供することが可能な、新規かつ改良された信号処理装置、信号処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ステレオの音声コンテンツを表す音声信号を取得する音声信号取得部と、
周囲の音を集音して得られる外部音を表す外部信号を取得する外部信号取得部と、
上記音声信号取得部が取得した音声信号、及び、上記外部信号取得部が取得した外部信号から、ユーザに提供されるステレオの音声を表す出力信号を生成可能な出力信号生成部と、
上記出力信号生成部の動作モードとして、少なくとも、生成させる上記出力信号に対応した外部モードを設定可能なモード設定部と、
上記モード設定部が設定した動作モードに応じて、上記出力信号生成部による上記出力信号の生成動作を制御するフェード制御部と、
を有し、
上記フェード制御部は、上記出力信号生成部に対して、上記外部モードが設定されている場合には、ユーザの右耳及び左耳の一方用の上記出力信号を少なくとも上記外部信号から生成すると共に、他方用の上記出力信号を少なくとも上記音声信号から生成させる、信号処理装置が提供される。
【0014】
また、上記モード設定部は、上記動作モードとして、上記外部モードの代りに、少なくとも、上記出力信号に対応した音声モードも設定可能であり、
上記フェード制御部は、上記出力信号生成部に対して、上記音声モードが設定されている場合には、上記ステレオの出力信号を上記ステレオの音声信号から生成させてもよい。
【0015】
また、上記外部信号取得部が取得した外部信号に基づいて、該外部信号が表す外部音を低減するノイズキャンセル信号を生成するノイズキャンセル信号生成部を更に有し、
上記出力信号生成部は、上記外部音を低減させるために、上記音声信号から生成される上記出力信号に上記ノイズキャンセル信号を重畳させてもよい。
【0016】
また、上記外部信号取得部は、ステレオの上記外部信号を取得し、
上記信号処理装置は、上記外部モードが設定されている場合、上記外部信号取得部が取得したステレオの上記外部信号に基づいて、上記ユーザに対する該外部信号の発信源の方向を特定する方向特定部を更に有し、
上記フェード制御部は、上記方向特定部が特定した上記発信源の方向に応じて、上記ユーザの右耳及び左耳の出力信号から、上記外部信号から生成する上記他方用の出力信号を決定してもよい。
【0017】
また、上記フェード制御部は、上記方向特定部が上記ユーザの前後方向を含む平面内に上記発信源の方向を特定した場合、上記出力信号生成部に対して、右耳用の上記出力信号を、右耳用の上記音声信号及び右耳用の上記外部信号を重畳することにより生成させ、かつ、左耳用の上記出力信号を、左耳用の上記音声信号及び左耳用の上記外部信号を重畳することにより生成させてもよい。
【0018】
また、上記フェード制御部は、上記外部モードが設定されている場合、上記出力信号生成部に対して、上記外部信号のみから上記一方用の出力信号を生成させ、ステレオの上記音声信号をモノラルの音声信号に変換して上記他方用の出力信号を生成させてもよい。
【0019】
また、上記モード設定部は、上記ユーザの操作に応じて上記音声モードと上記外部モードとを切替可能であってもよい。
【0020】
また、上記音声信号及び上記外部信号と異なり、上記ユーザに提供されるべき音声情報を表す情報信号を、外部の情報発信装置から取得する情報信号取得部を更に有し、
上記モード設定部は、上記情報信号取得部が上記情報信号を取得した場合、上記動作モードとして、生成させる上記出力信号に対応した情報モードを設定し、
上記フェード制御部は、上記情報モードが設定されている場合、上記出力信号生成部に対して、上記一方用の上記出力信号を少なくとも上記情報信号から生成すると共に、他方用の上記出力信号を少なくとも上記音声信号から生成させてもよい。
【0021】
また、上記音声モードにおいて上記外部信号を取得して、該外部信号に所定の音声信号が含まれるか否かを判定する音声認識部を更に有し、
上記モード設定部は、上記外部信号に上記所定の音声信号が含まれると判定された場合、上記動作モードを上記外部モードに切替えてもよい。
【0022】
また、上記出力信号生成部は、上記ステレオの出力信号のうち右耳用及び左耳用の出力信号それぞれに対して
上記ステレオの音声信号のうち右耳用及び左耳用の音声信号それぞれが含まれる音量を調整可能な複数のフェーダを有する音声信号調整部と、
上記ステレオの外部信号のうち右耳用及び左耳用の外部信号それぞれが含まれる音量を調整可能な複数のフェーダを有する外部信号調整部と、
を有してもよい。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ステレオの音声コンテンツを表す音声信号を取得する音声信号取得ステップと、
周囲の音を集音して得られる外部音を表す外部信号を取得する外部信号取得ステップと、
少なくとも、ユーザに提供されるステレオの音声を表す出力信号に対応した外部モードを設定するモード設定ステップと、
上記モード設定ステップで設定された動作モードに応じて、上記音声信号取得ステップで取得した音声信号、及び、上記外部信号取得ステップで取得した外部信号から、ユーザに提供されるステレオの音声を表す出力信号を生成する出力信号生成ステップと、
を有し、
上記出力信号生成ステップでは、上記外部モードが設定されている場合には、ユーザの右耳及び左耳の一方用の上記出力信号を少なくとも上記外部信号から生成すると共に、他方用の上記出力信号を少なくとも上記音声信号から生成する、信号処理方法が提供される。
【0024】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、
ステレオの音声コンテンツを表す音声信号を取得する音声信号取得機能と、
周囲の音を集音して得られる外部音を表す外部信号を取得する外部信号取得機能と、
上記音声信号取得機能が取得した音声信号、及び、上記外部信号取得機能が取得した外部信号から、ユーザに提供されるステレオの音声を表す出力信号を生成可能な出力信号生成機能と、
上記出力信号生成機能の動作モードとして、少なくとも、生成させる上記出力信号に対応した外部モードを設定可能なモード設定機能と、
上記モード設定機能が設定した動作モードに応じて、上記出力信号生成部による上記出力信号の生成動作を制御するフェード制御機能と、
を実現させ、かつ、
上記フェード制御機能は、上記出力信号生成機能に対して、上記外部モードが設定されている場合には、ユーザの右耳及び左耳の一方用の上記出力信号を少なくとも上記外部信号から生成すると共に、他方用の上記出力信号を少なくとも上記音声信号から生成させる、ことを実現させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、音楽等の音声の聴取を妨げることによる不快感や煩わしさを低減させつつ、周囲の音声を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の各実施形態に係るヘッドホンの概要について説明するための説明図である。
【図2A】本発明の各実施形態に係るヘッドホンの概要について説明するための説明図である。
【図2B】本発明の各実施形態に係るヘッドホンの概要について説明するための説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るヘッドホンの構成について説明するための説明図である。
【図4】同実施形態に係るヘッドホンの制御部の構成について説明するための説明図である。
【図5】同実施形態に係るヘッドホンの出力信号生成部の構成について説明するための説明図である。
【図6】同実施形態に係るヘッドホンの動作について説明するための説明図である。
【図7】同実施形態に係るヘッドホンの音声モードにおける動作を説明するための説明図である。
【図8】同実施形態に係るヘッドホンの外部モードにおける動作を説明するための説明図である。
【図9】同実施形態に係るヘッドホンの外部モードにおける動作を説明するための説明図である。
【図10】同実施形態に係るヘッドホンの動作モード切替え時の動作を説明するための説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るヘッドホンの構成について説明するための説明図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るヘッドホンの構成について説明するための説明図である。
【図13】プログラムを実行することにより一連の処理を実現するコンピュータの構成例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
本発明の各実施形態に係る信号処理装置は、様々な形態に実施することが可能である。例えば、信号処理装置は、例えば、アウタイヤーヘッドホン・インナーイヤーヘッドホン・イヤホン・ヘッドセットなどのヘッドホンとして実施が可能である。また、他の信号処理装置の例としては、例えば、上記のヘッドホンに音声信号を提供する携帯電話・携帯プレーヤ・コンピュータ・PDA(Personal Data Assistance)等が挙げられる。また、これらの端末等で有る場合、信号処理装置は、その端末のDSP(Digital Singnal Processor)として実施することも可能である。つまり、本発明の各実施形態は、ユーザに音声信号等を提供することが可能な様々な装置や端末等として実現することが可能である。しかしながら、本発明の各実施形態に係る信号処理装置の理解が容易になるように、この信号処理装置がヘッドホン1として実現された場合を例に挙げて以下では説明する。
【0029】
この各実施形態に係るヘッドホン1は、通常のヘッドホン等と同様に、外部の音声信号再生装置等からステレオの音声コンテンツを表す「音声信号S,SL,SR」を取得して、その音声信号を実際の音としてユーザ(装着者)に提供することが可能である。なお、音声信号が表す音声コンテンツは、例えば、音楽・ラジオ放送・テレビ放送・英会話などの教材・落語などの娯楽コンテンツ・ゲーム音・動画の音・コンピュータの操作音など、様々なものが挙げられ、特に限定されるものではない。これに加えて、各実施形態に係るヘッドホン1は、適宜、周囲の音をもユーザに提供することが可能である。ここでは、周囲の音を「外部音MS,MSL,MSR」と言い、その外部音を集音して得られる信号を「外部信号M,ML,MR」ということにする。また、ヘッドホン1が生成し、スピーカ等を駆動させることにより実際にユーザに提供される音を「出力音OS,OSL,OSR」と言い、この出力音を表した信号を「出力信号O,OL,OR」という。
【0030】
なお、音声信号はステレオとして供給されるため、ユーザの左耳用の音声信号を音声信号SLと言い、右耳用の音声信号を音声信号SRと言う。一方、両者を区別しない場合には、音声信号Sということにする。また、出力信号及び出力音も同様にステレオであるため、単に出力信号O及び出力音OSと言う場合には、左右の区別はないものとして扱う。また、出力信号OL及び出力音OSLと、出力信号OR及び出力音OSRと、という場合には、左耳用又は右耳用を表す信号及び音であるとする。また、外部信号及び外部音は、状況・条件等に応じてモノラルである場合とステレオである場合とがある。このため、ステレオの場合、左耳用のものを外部信号ML及び外部音MSLと言い、右耳用のものを外部信号MR及び外部音MSRと言う。これに対して、両者を区別しない場合、又は、モノラルである場合には、外部信号M及び外部音MSと言うことにする。
【0031】
この本発明の各実施形態に係るヘッドホン1の理解が容易になるように、以下では次の順序で説明する。
1.本発明の各実施形態に係るヘッドホンの概要
2.第1実施形態
2−1.ヘッドホンの構成
2−2.制御部の構成
2−3.出力信号生成部の構成
2−4.ヘッドホンの動作
2−4−1.音声モードにおける動作
2−4−2.外部モードにおける動作
2−4−3.外部モード終了時における動作
2−4−4.情報モードにおける動作
2−5.効果の例
3.第2実施形態
4.第3実施形態
【0032】
<1.本発明の各実施形態に係るヘッドホンの概要>
図1は、本発明の各実施形態に係るヘッドホンの概要について説明するための説明図である。上述の通り、本発明の各実施形態に係る信号処理装置は、図1に例示するようなヘッドホン1として実施される。図1では、このヘッドホン1の装着者をユーザUとし、そのユーザUが聴取することを望む外部音MSRの発信源を、ここでは発信者MMとしている。
【0033】
なお、外部音MSRは、人が発した声である必要はなく、例えば、アナウンスなどの放送、携帯電話の受話音、緊急車両のサイレンなどや、単なる物音など、音として認識可能なものであれば如何なる音であってもよい。
【0034】
このような外部音MSRは、ユーザが音声信号から生成された出力音OSL,OSRを聴取している場合には、ユーザに認識されにくい。また、音声信号が表す音声コンテンツをより一層楽しむためのノイズキャンセリング機能が働いている場合には、更に一層、ユーザが外部音MSRを認識することは難しい。
【0035】
これに対して、本発明の各実施形態に係るヘッドホンの概要を図2A及び図2Bに示す。
図2Aに示すように、外部音MSがモノラルである場合、ヘッドホン1は、外部信号Mを発信者MMの位置する右方向の出力信号ORとして出力する。一方、ヘッドホン1は、発信者MMが位置する方向と異なる左方向の出力信号OLとして、ヘッドホン1は、ステレオの音声信号SL,SRをモノラルに変換して出力する。
【0036】
一方、図2Bに示すように、外部音MSL,MSRがステレオである場合、ヘッドホン1は、ステレオの外部信号ML,MRをモノラルに変換しつつ、やはり発信者MMの位置する右方向の出力信号ORとして出力する。出力信号OLとしては、上記同様に、ヘッドホン1は、ステレオの音声信号SL,SRをモノラルに変換して出力する。
【0037】
従って、ユーザUは、外部音MSRの発信者MMの方向に応じた出力音OSRとして、その外部音MSを聴取することができる一方、他方の出力音OSLとして、モノラルに変換された音声信号Sを聴取することができる。よって、ユーザUは、ヘッドホン1を外すなどの煩わしい動作を行う必要はなく、また、音声コンテンツの聴取を中断されたり左右一方の音を聞き逃すなどの不快感を受けることなく、外部音MSを聴取することが可能である。更に、その際、外部音MSの提供される側の出力音OSRの方向により、ユーザUは、その外部音MSの発信源の方向をも認識することが可能である。
【0038】
なお、通常のステレオの音声信号SL,SRをステレオの出力信号OL,ORとしている場合、そのヘッドホン1の動作モードを、ここでは「音声モード」と言う。また、図2A及び図2Bに示すように少なくとも一方の出力信号OL,ORとして外部信号Mが提供されている場合、そのヘッドホン1の動作モードを、ここでは「外部モード」と言う。更に、後述するように、ヘッドホン1は、外部モードにおける外部信号Mの代りに、外部から取得した所定の情報を少なくとも一方の出力信号OL,ORとして提供することも可能である。そこで、この場合のヘッドホン1の動作モードを、ここでは「情報モード」と言う。
【0039】
以下、この本発明の各実施形態に係るヘッドホン1についてより具体的に説明する。ただし、ここで説明したヘッドホン1の動作や効果等は、あくまで一例であり、各実施形態に係るヘッドホン1が、これらのみに限定されるものではなく、これら同様の動作や効果等を奏することは言うまでもない。
【0040】
<2.第1実施形態>
(2−1.ヘッドホンの構成)
図3は、本発明の第1実施形態に係るヘッドホンの構成について説明するための説明図である。図3に示すように、本実施形態に係るヘッドホン1は、音声信号取得部11と、デジタル/アナログ変換回路12と、増幅回路13と、外部信号取得部14と、情報信号取得部15と、制御部20と、出力信号生成部100と、スピーカSPL,SPRとを有する。
【0041】
音声信号取得部11は、ステレオの音声コンテンツを表す音声信号SL,SRを取得する。この音声信号取得部11は、ヘッドホン1の場合、入力端子として構成することができる。また、本発明の各実施形態に係る信号処理装置が再生機能や放送波受信機能を有する場合、その音声信号取得部11を再生機能や放送波受信機能として実現することも可能である。この音声信号取得部11が取得した音声信号SL,SRは、出力信号生成部100に送られる。
【0042】
なお、ここでは、この音声信号SL,SRと、他の信号である外部信号ML,MR及び情報信号IL,IRは、デジタル信号であるものとする。
【0043】
出力信号生成部100は、音声モードの場合、音声信号SLから出力信号OLを生成し、音声信号SRから出力信号ORを生成する。この出力信号生成部100の他の動作モードにおける動作については、随時後述する。また、出力信号生成部100により生成された出力信号OL,ORは、デジタル/アナログ変換回路12に送られる。
【0044】
デジタル/アナログ変換回路12は、出力信号生成部100が生成したデジタルの出力信号OL,ORを、アナログの出力信号OL,ORに変換する。そして、変換後の出力信号OL,ORは、増幅回路13に送られる。
【0045】
増幅回路13は、デジタル/アナログ変換回路12により変換されたアナログの出力信号OL,ORを、所定の増幅率又はユーザUにより設定される増幅率で増幅する。増幅後の出力信号OL,ORは、それぞれ左右のスピーカSPL,SPRへと出力され、スピーカSPL,SPRから左右の出力音OSL,OSRとしてユーザUに提供される。なお、上記デジタル/アナログ変換回路12と増幅回路13とは、例えばデジタルアンプなどのように一体に形成されても良い。
【0046】
一方、外部信号取得部14は、周囲の音を集音して得られる外部音MSL,MSRを表した外部信号ML,MRを取得する。なお、本実施形態に係るヘッドホン1は、ノイズキャンセル機能を有しており、この外部信号取得部14は、ノイズキャンセリング機能のために備えられるスピーカなどの集音装置(図示せず)として構成することが可能である。なお、この集音装置は、ヘッドホン1の左右両ハウジング等に備えられ、ヘッドホン1に対する左右の外部音MSをステレオで集音することが可能である。そして、この外部信号取得部14は、集音した外部音MSL,MSRをデジタルの外部信号ML,MRに変換する。なお、外部信号取得部14としての集音装置は、フィードバック型及びフィードフォワード型のいずれのノイズキャンセリング機能用のものであってもよい。更に言えば、この例と異なり、ヘッドホン1は、ノイズキャンセリング機能を有さず、外部信号取得部14は、専用の集音装置、又は、外部の集音装置から外部信号ML,MRを取得する接続端子として、構成することも可能である。外部信号取得部14が取得した外部信号ML,MRは、出力信号生成部100に送られる。
【0047】
上記出力信号生成部100は、音声モードの場合、音声信号SL,SRによる出力音OSL,OSRと共にユーザUが聴取するであろうノイズ(周囲の音(外部音MS)を低減させるために、左右のNC(ノイズキャンセル)信号NL,NRを生成する。そして、出力信号生成部100は、このNC信号NL,NRそれぞれを、音声信号SL,SRから生成される出力信号OL,ORに重畳する。
【0048】
一方、この出力信号生成部100は、外部モードの場合、外部信号ML,MRから、ユーザに提供すべき外部音MSL,MSRを抽出して、ユーザUの右耳及び左耳の一方用の出力信号Oを少なくとも外部信号Mから生成する。また、出力信号生成部100は、他方用の出力信号Oを少なくとも上記音声信号Sから生成する。
【0049】
情報信号取得部15は、音声信号S及び外部信号Mと異なり、ユーザUに提供されるべき音声情報を表す情報信号IL,IRを、外部の情報発信装置(図示せず)から取得する。そのために、情報信号取得部15は、有線又は無線による情報発信装置との通信機能を備える。この際、情報信号取得部15は、ネットワーク等を介して情報発信装置と通信可能であってもよく、直接通信可能であってもよい。なお、この音声情報としては、様々な情報を使用することが可能である。例えば、近年普及しつつある緊急地震速報などの災害情報や緊急情報、現在地や目的地までのルートを表すナビ情報、電車などで特定駅に到着したことを表す到着情報などを、情報信号とすることが可能である。更に、本実施形態に係る信号処理装置が携帯電話である場合、この情報信号取得部15は、通話機能として構成することができ、着信音や通話を情報信号とすることができる。この情報信号IL,IRは、音声信号S及び外部信号Mと同様に、その情報を音声で表したデジタルの信号であることが望ましいが、ステレオだけでなく、モノラルであってもよい。
【0050】
情報信号取得部15が取得した情報信号IL,IRは、制御部20に送られ、情報モードの場合、制御部20は、この情報信号IL,IRを、出力信号生成部100に出力する。
【0051】
この際、出力信号生成部100は、外部モードにおける外部信号ML,MRの代りに、情報信号IL,IRを使用する。つまり、出力信号生成部100は、ユーザUの右耳及び左耳の一方用の出力信号Oを少なくとも情報信号IL,IRから生成する。また、出力信号生成部100は、他方用の出力信号Oを少なくとも上記音声信号Sから生成することになる。
【0052】
このように出力信号生成部100は、設定される動作モードに応じて、出力信号OL,ORを切替えて生成する。換言すれば、出力信号生成部100の動作モードとしては、生成する出力信号OL,ORに対応した各モード(音声モード・外部モード・情報モード)が設定される。このようなモードの切替えや出力信号生成部100の動作の制御は、制御部20により行われる。よって、次に、制御部20について説明し、その後、出力信号生成部100の具体的な構成例について説明する。
【0053】
(2−2.制御部の構成)
図4は、本実施形態に係るヘッドホンの制御部の構成について説明するための説明図である。図4に示すように、本実施形態に係るヘッドホン1の制御部20は、方向特定部21と、音声認識部22と、記憶部23と、タイマ24と、モード設定部25と、フェード制御部26とを有する。
【0054】
方向特定部21は、少なくとも外部モードが設定されている場合、外部信号取得部14が取得したステレオの外部信号ML,MRに基づいて、ユーザU、つまりヘッドホン1に対する外部信号ML,MRの発信者MMの方向(「発信方向」ともいう。)を特定する。つまり、方向特定部21は、外部信号ML,MRを取得して、両者のデータを比較する。そして、音量が大きい方の外部信号が発信方向であると特定する。なお、後述するように、出力信号生成部100は、外部信号ML,MRから、例えば人の声などのように、ユーザUに提供したい外部音MSを抽出する。この抽出後の外部信号ML,MRも、ここでは外部信号ML,MRと言う。そこで、方向特定部21は、この抽出後の外部信号ML,MRを取得して、発信方向の特定に使用することが望ましい。方向特定部21は、特定した発信方向を表す方向信号Dirをフェード制御部26に出力する。
【0055】
音声認識部22は、音声モードにおいて、方向特定部21又は出力信号生成部100から、抽出後の外部信号ML,MRを取得して、その外部信号ML,MRに所定の音声信号が含まれるか否かを判定する。そして、音声認識部22は、そのような所定の音声信号が含まれる場合、モード設定部25に、動作モードを外部モードに切替えることを指示するモード切替信号CMを出力する。
【0056】
なお、この所定の音声としては、例えば、緊急車両のサイレン、店の販売員が通常発する内容の音声、緊急事態を知らせる内容の声や音、ユーザが予め設定した所定の周波数やパターンの音などが挙げられる。なお、このような所定の音声の情報は、記憶部23に予め記録される。そして、音声認識部22は、例えば、外部信号ML,MRの特徴量(周波数や波形、音声認識後の文字データなど)と、記録された情報の特徴量とが等しい場合に、所定の音声信号を検出することが可能である。
【0057】
タイマ24は、ユーザUなどにより設定され、所定の時間が経過した時点で、モード設定部25に、動作モードを外部モード、音声モード又は外部モードに切替えることを指示するモード切替信号CMを出力する。
【0058】
モード設定部25は、出力信号生成部100の動作モードとして、生成させる出力信号OL,ORに対応した音声モード、外部モード及び情報モードのいずれかを設定する。そして、モード設定部25は、設定した動作モードを表したモード情報Modを、フェード制御部26に出力する。
【0059】
このモード設定部25による動作モードの切替タイミングについて説明する。
動作モードの切替タイミングは様々に設定可能であるが、音声モードから他のモードへの切替タイミングとして、本実施形態では、少なくとも4通りの切替タイミングが設定されている。
【0060】
第1の切替タイミングとして、モード設定部25は、ユーザUの操作に応じて入力されるモード切替信号CMに応じて、動作モードを音声モードから、外部モード又は情報モードに切替えることが可能である。この場合、ユーザUは操作部(図示せず)を操作して、その操作部から入力される操作信号であるモード切替信号CMを、モード設定部25が取得する。そして、モード設定部25は、このモード切替信号CMに表されたモード(外部モード又は情報モード)へと、動作モードを切替えることになる。
【0061】
第2の切替タイミングとして、音声認識部22により外部信号ML,MRに所定の音声信号が含まれると判定された場合が挙げられる。つまり、モード設定部25は、音声認識部22からモード切替信号CMを取得した場合に、動作モードを音声モードから外部モードに切替えることが可能である。
【0062】
第3の切替タイミングとして、タイマ24からのモード切替信号CMがモード設定部25に入力した場合が挙げられる。なお、タイマ24から出力されるモード切替信号CMとして、外部モード又は情報モードに対応する信号を割り当てることにより、モード設定部25は、動作モードを音声モードから外部モード又は情報モードに切替えることが可能である。
【0063】
第4の切替タイミングとして、モード設定部25は、情報信号取得部15が情報信号IL,IRを取得した場合に、動作モードを情報モードへと切替えることが可能である。なお、図4では、モード設定部25が情報信号IL,IRを取得した際に、動作モードを情報モードに切替える場合を例示している。ただし、この第4の切替タイミングにおいても、上記他のタイミングと同様に、モード切替信号CMを使用することも可能である。この場合、情報信号取得部15は、情報信号IL,IRを取得した場合、モード切替信号CMをモード設定部25を出力することとなるが、情報信号IL,IRは、情報信号取得部15から直接出力信号生成部100に供給されてもよい。
【0064】
なお、ここで挙げた音声モードから他のモードへの切替タイミングは、あくまで一例であり、様々な応用が考えられることは言うまでもない。また、音声モード以外の他のモードから、それ以外のモードへの切替は、上記同様に、モード切替信号CM等を使用することにより、様々な組み合わせを設定することが可能である。
【0065】
更に、外部モード又は情報モードが設定されている状態から音声モードへの切替は、ユーザ操作に応じたモード切替信号CM、タイマ24から出力されるモード切替信号CM、外部信号又は情報信号が入力されなくなった場合など、様々に設定することが可能である。
【0066】
フェード制御部26は、モード設定部25が設定した動作モードに応じて、出力信号生成部100による出力信号OL,ORの生成動作を制御する。後述するように、出力信号生成部100は、出力信号OL,ORに含まれる、音声信号SL,SR、外部信号ML,MR及び情報信号IL,IRそれぞれの音量レベルを調整するために、複数のフェーダ(Fader)を有する。そこで、フェード制御部26は、動作モード(場合によっては発信方向も含む。)に応じて、これらの各フェーダが調整する音量レベルを変更するフェード信号Contを出力信号生成部100に供給する。
【0067】
上述のように、出力信号生成部100は、外部モードの場合、外部信号ML,MRから、ユーザに提供すべき外部音MSL,MSRを抽出して、ユーザUの右耳及び左耳の一方用の出力信号Oを少なくとも外部信号Mから生成する。この際、フェード制御部26は、方向特定部21が特定した発信者MMの方向に応じて、ユーザUの左耳及び右耳の出力信号OL,ORのうちから、外部信号Mから生成する出力信号を決定する。従って、この外部モードでは、フェード制御部26がフェード信号Contを調整することにより、方向特定部21が特定した発信方向に対応する出力信号OL,ORに、外部信号Mが含まれるように調整される。
【0068】
つまり、例えば、発信方向がユーザUの左側、つまりヘッドホン1の左側である場合、出力信号生成部100は、少なくとも左チャンネルの出力信号OLに、外部信号Mを含める。
一方、発信方向がユーザUの右側、つまりヘッドホン1の右側である場合、出力信号生成部100は、少なくとも右チャンネルの出力信号ORに、外部信号Mを含める。
更に又、例えば、発信方向がユーザUの左右方向のいずれかに偏って無い場合、つまり、発信方向が、ユーザの前後方向を含む平面内に有る場合、出力信号生成部100は、左右両チャンネルの出力信号OL,ORに外部信号Mを含める。
【0069】
なお、この際、発信方向がユーザUの左側又は右側である場合、出力信号生成部100は、外部信号Mが含まれないチャンネルの出力信号OR,OLに、ステレオの音声信号SL,SRをモノラルに変換し、そのモノラルの音声信号Sを含める。
一方、発信方向がユーザUの左右方向のいずれかに偏って無い場合、両チャンネルの出力信号OL,ORに外部信号Mが含まれることなる。この場合、出力信号生成部100は、その両チャンネルの出力信号OL,ORそれぞれに、更に対するチャンネル側の音声信号SL,SRの対応する方を含める。結果として、出力信号生成部100は、音声信号SLに外部信号MLを重畳して出力信号OLを生成し、音声信号SRに外部信号MRを重畳して出力信号ORを生成する。
【0070】
なお、このフェード制御部26から出力されるフェード信号Contにより、出力信号生成部100の各フェーダがどのように制御されるか、については、出力信号生成部100の構成について説明した後、ヘッドホン1の動作を通じて具体的に例示しつつ説明する。
【0071】
(2−3.出力信号生成部の構成)
図5は、本実施形態に係るヘッドホンの出力信号生成部の構成について説明するための説明図である。なお、この図5に示す出力信号生成部100の構成は、一例であり、上記同様の動作を行うことが可能な様々な回路構成が可能であることは言うまでもない。
【0072】
図5に示すように出力信号生成部100の構成例は、イコライザ101L,101Rと、ノイズキャンセル信号生成部102L,102Rと、外部音抽出部103L,103Rと、ボリューム調整用フェーダ111と、ノイズキャンセル調整用フェーダ112と、外部信号調整用フェーダ113と、情報信号調整用フェーダ114と、モニタフェーダ120と、クロスフェーダ130と、加算回路151〜158とを有する。
【0073】
まず、音声信号SL,SRのラインについて説明する。
イコライザ101L,101Rは、左右のチャンネルに1ずつ配置され、音声信号取得部11から各チャンネルに対応する音声信号SL,SRを取得する。そして、このイコライザ101L,101Rは、各音声信号SL,SRの周波数特性を変更する。このイコライザ101L,101Rは、予め設定された周波数特性、又は、ユーザUが設定した周波数特性へと各音声信号SL,SRの周波数特性を変更する。なお、設定によっては、イコライザ101L,101Rは、周波数特性を変更せずに各音声信号SL,SRを出力することも可能である。
【0074】
ボリューム調整用フェーダ111は、ボリューム調整部の一例であり、やはり左右のチャンネルに1ずつ配置された2のフェーダを有し、各フェーダが、イコライザ101L,101Rから、各チャンネルに対応する音声信号SL,SRを取得する。そして、ボリューム調整用フェーダ111は、ユーザUによって設定された値へと、各チャンネルの音声信号SL,SRの音量レベルを調整する。
【0075】
なお、以下では、説明の便宜上、左チャンネルを「L(Left)チャンネル」と言い、右チャンネルを「R(Right)チャンネル」とも言う。
【0076】
クロスフェーダ130は、音声信号調整部の一例であり、出力信号OL,ORそれぞれに対して、ステレオの音声信号SL,SRそれぞれが含まれる音量レベルを調整可能な複数のフェーダを有する。このクロスフェーダ130のフェーダを4つとし、各フェーダをフェーダLL,LR,RL,RRとして、より具体的に説明する。
【0077】
クロスフェーダ130のフェーダLLは、ボリューム調整用フェーダ111からLチャンネルの音声信号SLを取得して、その音声信号SLを、Lチャンネルの出力信号OLに含めるように加算回路151に出力する。
クロスフェーダ130のフェーダLRは、ボリューム調整用フェーダ111からRチャンネルの音声信号SRを取得して、その音声信号SRを、クロスしたLチャンネルの出力信号OLに含めるように加算回路152に出力する。
クロスフェーダ130のフェーダRLは、ボリューム調整用フェーダ111からLチャンネルの音声信号SLを取得して、その音声信号SLを、クロスしたRチャンネルの出力信号ORに含めるように加算回路153に出力する。
クロスフェーダ130のフェーダRRは、ボリューム調整用フェーダ111からRチャンネルの音声信号SRを取得して、その音声信号SRを、Rチャンネルの出力信号ORに含めるように加算回路154に出力する。
【0078】
この際、クロスフェーダ130のフェーダLL,LR,RL,RRそれぞれは、各チャンネルの出力信号OL,ORに含めるべき音声信号の音量レベルを調整することができる。
【0079】
ここで、外部信号ML,MRのラインについて説明する。
ノイズキャンセル信号生成部102L,102Rは、左右のチャンネルに1ずつ配置され、外部信号取得部14から各チャンネルに対応する外部信号ML,MRを取得する。そして、ノイズキャンセル信号生成部102L,102Rは、この外部信号ML,MRに基づいて、その外部信号ML,MRに表された外部音MSを低減させるためのNC信号NL,NRを生成する。外部音MSには、外部の雑音源などから発せられたノイズ(雑音)が含まれる。よって、外部信号ML,MRにはノイズ信号が含まれる。そこで、ノイズキャンセル信号生成部102L,102Rは、このノイズ信号から、各チャンネルに対するノイズを低減するためのNC信号NL,NRを生成する。この際、ノイズキャンセル信号生成部102L,102Rは、NC信号NL,NRを生成するためのフィルタを有しており、このフィルタによりノイズ信号を処理することによりNC信号NL,NRを生成する。なお、このフィルタの種類によりノイズ低減特性が決定される。
【0080】
ノイズ低減特性としては、例えば、周波数帯域に対するノイズ除去率の分布・NC信号生成に要する時間・NC信号生成方法などが挙げられる。そして、フィルタにおける処理の例としては、ノイズ信号の位相を反転させるなどが挙げられる。この処理例によれば、NC信号を音響出力すると、この出力音響がノイズと相互の干渉して弱め合う。なお、ここで挙げたノイズ低減特性やフィルタにおける処理は、あくまで一例であり本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0081】
なお、ノイズキャンセル信号生成部102L,102Rにおけるノイズ低減特性としては、後述する外部音抽出部103L,103Rが抽出する外部音MSの周波数帯に対するノイズ低減が他の周波数帯に比べて抑えられた特性であることが望ましい。
【0082】
ノイズキャンセル調整用フェーダ112は、左右のチャンネルに1ずつ配置された2のフェーダを有し、各チャンネルのフェーダが、そのチャンネルに対応するNC信号NL,NRを取得する。そして、ノイズキャンセル調整用フェーダ112は、予めノイズを最大限に減少させられる値に設定されており、その値によりNC信号NL,NRを増幅させる。なお、このノイズキャンセル調整用フェーダ112の増幅率等は、上述の通り予め適切な値に設定されていることが望ましく、固定されていてもよい。
【0083】
このノイズキャンセル調整用フェーダ112で調整されたNC信号NL,NRそれぞれは、加算回路151〜154により、それぞれ対応するチャンネルの出力信号OL,ORに重畳(ミックス)されることとなる。従って、出力信号OL,ORは、クロスフェーダ130の値に関係なく、NC信号NL,NRが重畳されてノイズが低減されることとなる。
【0084】
次に、外部信号ML,MRのもう1つのラインについて説明する。
外部音抽出部103L,103Rは、左右のチャンネルに1ずつ配置され、外部信号取得部14から各チャンネルに対応する外部信号ML,MRを取得する。そして、外部音抽出部103L,103Rは、例えば人の声や緊急車両のサイレンなどのようなユーザが聴取することを望む周波数帯域の外部信号ML,MRを抽出する。より具体的には、外部音抽出部103L,103Rは、バンドパスフィルタ等を有しており、上記の周波数帯域の外部信号ML,MRのみを出力し、他の周波数帯域の外部信号ML,MRをカットする。なお、この外部音抽出部103L,103Rが抽出した外部信号ML,MRは、制御部20に送られ、発信方向の特定等に使用されることになる。
【0085】
外部信号調整用フェーダ113は、外部信号調整部の一例であり、やはり左右のチャンネルに1ずつ配置された2のフェーダを有し、各フェーダが、外部音抽出部103L,103Rから、抽出され各チャンネルに対応する外部信号ML,MRを取得する。そして、外部信号調整用フェーダ113は、予め抽出された外部音MSが最適な音量となる値に設定されており、その値により外部信号ML,MRを増幅させる。その結果、外部信号調整用フェーダ113は、外部音抽出部103L,103Rで抽出された外部音MSを強調することができる。なお、この外部信号調整用フェーダ113の増幅率等は、上述の通り予め適切な値に設定されていることが望ましく、固定されていてもよい。
【0086】
ただし、この外部信号調整用フェーダ113は、情報モードが設定された場合、外部信号ML,MRを遮断することが望ましい。
【0087】
モニタフェーダ120は、外部信号調整部の一例であり、出力信号OL,ORそれぞれに対して、ステレオの外部信号ML,MR(又は情報信号IL,IR)それぞれが含まれる音量レベルを調整可能な複数のフェーダを有する。このモニタフェーダ120のフェーダを4つとし、各フェーダをフェーダLL,LR,RL,RRとして、より具体的に説明する。
【0088】
モニタフェーダ120のフェーダLLは、外部信号調整用フェーダ113からLチャンネルの外部信号MLを取得して、その外部信号MLを、Lチャンネルの出力信号OLに含めるように加算回路157を介して加算回路155に出力する。
モニタフェーダ120のフェーダLRは、外部信号調整用フェーダ113からRチャンネルの外部信号MRを取得して、その外部信号MRを、クロスしたLチャンネルの出力信号OLに含めるように加算回路157を介して加算回路155に出力する。
モニタフェーダ120のフェーダRLは、外部信号調整用フェーダ113からLチャンネルの外部信号MLを取得して、その外部信号MLを、クロスしたRチャンネルの出力信号ORに含めるように加算回路158を介して加算回路156に出力する。
モニタフェーダ120のフェーダRRは、外部信号調整用フェーダ113からRチャンネルの外部信号MRを取得して、その外部信号MRを、Rチャンネルの出力信号ORに含めるように加算回路158を介して加算回路156に出力する。
【0089】
この際、モニタフェーダ120のフェーダLL,LR,RL,RRそれぞれは、各チャンネルの出力信号OL,ORに含めるべき外部信号の音量レベルを調整することができる。
【0090】
一方、情報モードの場合、情報信号IL,IRが制御部20から出力される。
情報信号調整用フェーダ114は、情報信号調整部の一例であり、左右のチャンネルに1ずつ配置された2のフェーダを有し、各フェーダが、制御部20から出力された各チャンネルに対応する情報信号IL,IRを取得する。そして、情報信号調整用フェーダ114は、制御部20から出力された情報信号IL,IRが最適な音量となる値に設定されており、その値により情報信号IL,IRを増幅させる。なお、この情報信号調整用フェーダ114の増幅率等は、上述の通り予め適切な値に設定されていることが望ましく、固定されていてもよい。
【0091】
この情報信号調整用フェーダ114から出力される情報信号IL,IRは、それぞれ外部信号調整用フェーダ113から出力される外部信号ML,MRの各チャンネルに、加算回路161,162により重畳される。一方、情報信号IL,IRが取得される場合には、上述の通り、情報モードが設定され、かつ、情報モードの場合、外部信号調整用フェーダ113は、外部信号ML,MRを遮断する。従って、この場合、情報信号IL,IRは、外部信号ML,MRの代りに、上記モニタフェーダ120により、音量レベルが調整されつつ出力信号OL,ORに振り分けられる。
【0092】
なお、上記構成のうち、外部信号調整用フェーダ113と、モニタフェーダ120と、クロスフェーダ130とは、動作モードに応じて制御部20から出力されるフェード信号Contにより各フェーダにより各信号の音量レベルが調整されることになる。ただし、外部信号調整用フェーダ113は、情報モードの場合に外部信号ML,MRを遮断するが、それ以外のモードでは固定した値で外部信号ML,MRを増幅することとなる。
【0093】
以上、本発明の第1実施形態に係るヘッドホン1の構成について説明した。
次に、本発明の第1実施形態に係るヘッドホン1の動作について説明する。
【0094】
(2−4.ヘッドホンの動作)
まず、図6を参照しつつ、本実施形態に係るヘッドホン1の動作の概要について説明する。図6は、本実施形態に係るヘッドホンの動作について説明するための説明図である。
【0095】
図6に示すように、ヘッドホン1は、動作を開始すると、まず、ステップS101(音声信号取得ステップ及び外部信号取得ステップの一例)を処理する。ステップS101では、音声信号取得部11が音声信号SL,SRを取得し、外部信号取得部14が外部信号ML,MRを取得する。なお、図示していないが、この外部信号ML,MRは、ノイズキャンセル信号生成部102L,102Rにより、NC信号NL,NRの生成に使用され、また、音声認識部22により、所定の音声信号が含まれているか否かの確認に使用される。このステップS101の処理後は、ステップS103に進む。
【0096】
ステップS103(モード設定ステップの一例)では、モード設定部25が、モード切替信号CMや情報信号IL,IRの取得の有無などに応じて、動作モードを設定する。そして、ステップS105に進む。
【0097】
ステップS105では、フェード制御部26が動作モードを確認する。そして、動作モードが音声モードである場合には、ステップS107に進み、動作モードが外部モードである場合には、ステップS109に進み、動作モードが情報モードである場合には、ステップS111に進む。
【0098】
このステップS107,S109,S111(出力信号生成ステップの一例)では、フェード制御部26が各モードに応じたフェード信号Contを出力信号生成部100に出力して、この出力信号生成部100による出力信号生成動作を制御する。このフェード信号Contで制御された出力信号生成部100における、各フェーダ等の値等については、各モード毎に詳しく説明する。一方、このステップS107,S109,S111の処理後は、ステップS113に進む。
【0099】
ステップS113では、ヘッドホン1がユーザ操作や音声信号の入力状態に応じて、動作を終了するか否かを判断する。そして、ユーザ操作や音声信号の入力状態が動作の終了を表す場合には、動作を終了する。一方、動作を終了しない場合には、ステップS101以降の処理が繰り返されることになる。
【0100】
ここで、各モードにおけるヘッドホン1の動作例について、音声モード、外部モード、情報モードの順で説明する。
【0101】
(2−4−1.音声モードにおける動作)
図7は、本実施形態に係るヘッドホンの音声モードにおける動作を説明するための説明図である。
【0102】
ステップS103で音声モードが設定され、ステップS107に進んだ場合、このステップS107では、フェード制御部26が、フェード信号Contを介して出力信号生成部100の各フェーダを、例えば下記の表1のように設定する。
【0103】
【表1】

【0104】
表1のような値に各フェーダが制御されることにより、モニタフェーダ120のフェーダが、全ての外部信号ML,MRを出力信号OL,ORから遮断するため、出力信号生成部100は、図7に簡略化して示すような回路構成となる。つまり、クロスフェーダ130は、Lチャンネルの音声信号SLを、Lチャンネルの出力信号OLにミックスし、Rチャンネルの音声信号SRを、Rチャンネルの出力信号ORにミックスする。従って、この出力信号生成部100により、出力信号OLは、Lチャンネルの音声信号SLとLチャンネルのNC信号NLとがミックスして、ノイズが低減されたLチャンネルの音声信号となる。一方、出力信号ORは、Rチャンネルの音声信号SRとRチャンネルのNC信号NRとがミックスして、ノイズが低減されたRチャンネルの音声信号となる。よって、音声モードの場合、ヘッドホン1は、ステレオの音声信号SL,SRを、各チャンネルに対応してステレオの出力信号OL,ORとすることができる。
【0105】
(2−4−2.外部モードにおける動作)
図8及び図9は、本実施形態に係るヘッドホンの外部モードにおける動作を説明するための説明図である。
【0106】
ステップS103で、モード設定部25により外部モードが設定されており、ステップS109に進んだ場合、このステップS107では、図8の処理が行われる。
【0107】
図8に示すように、外部モードでは、まず、ステップS201が処理される。このステップS201では、方向特定部21が、予め設定された外部信号取得時間中であるか否かを確認する。この外部信号取得時間は、例えば0.1〜数秒程度に設定され、外部モードに設定された際、ステップS201がステップS207の後に繰り返された際、又は、図6のループでステップS109が繰り返された際に、カウントが開始される。そして、外部信号取得時間中であれば、ステップS203に進み、それ以外であれば、ステップS205に進む。
【0108】
ステップS203では、方向特定部21が、外部信号ML,MRをそれぞれサンプリングする。そして、ステップS201に進む。
【0109】
一方、ステップS205では、方向特定部21が、ステップS203でサンプリングされた外部信号ML,MRを比較して、音量レベルの大きい方を、発信方向であると特定する。より具体的には、例えば、方向特定部21は、サンプリングされた外部信号ML,MRそれぞれを二乗して蓄積し、その値を左右で比較する。そして、方向特定部21は、その値が大きい方を、発信方向に特定する。つまり、Lチャンネルの外部信号MLの方が大きく、両者の差の絶対値が所定の閾値を越えた場合には、左方向を発信方向とする。一方、Rチャンネルの外部信号MRの方が大きく、両者の差の絶対値が所定の閾値を越えた場合には、右方向を発信方向とする。更に、両チャンネルの外部信号ML,MRの値の大きさが等しいか、両者の差が所定の閾値以下である場合、前後方向を発信方向とする。なお、このステップS205では、外部信号ML,MRそれぞれの二乗の蓄積値を比較するのではなく、絶対値の蓄積値を比較するなどの変更も可能であることは、言うまでもない。また、方向特定部21が比較する外部信号ML,MRは、外部音抽出部103L,103Rによりターゲットとなる音声の周波数帯域が抜き出された外部信号ML,MRである。このステップS205の処理後は、ステップS207に進む。
【0110】
ステップS207では、方向特定部21が、発信方向の特定結果が所定の複数回一致しているか否かを判定する。そして、複数回一致していない場合には、ステップS201以降の処理が繰り返され、複数回一致している場合には、方向特定部21がフェード制御部26に発信方向を表した方向信号Dirを出力し、ステップS209に進む。
【0111】
なお、後述の処理では、この方向信号Dirが表す発信方向に応じた出力信号OL,ORが出力される。よって、このように一回の発信方向の特定結果で次のステップに進まずに、複数回の特定結果の一致を取ることにより、ステップS201の外部信号取得時間毎に頻繁に、出力信号OL,ORが変化することを防ぐことができる。ただし、ユーザUの操作に基づくモード切替信号CMなどでモードが外部モードに切替えられた場合などのように、外部モード開始時には、このステップS207を処理せずにステップS209に直接進むことも可能である。このように外部モード開始時に複数回判定を行わないことにより、ユーザUの操作等に応じた迅速なモード切替が可能となる。
【0112】
ステップS207で発信方向の特定結果が複数回一致してステップS209に進んだ場合、このステップS209では、フェード制御部26が、発信方向が左、前後、右のいずれであるかを判定する。そして、発信方向が左である場合にはステップS211へ進み、発信方向が前後である場合にはステップS213へ進み、発信方向が右である場合にはステップS215へ進む。
【0113】
ステップS211,S213,S215(出力信号生成ステップの一例)では、フェード制御部26が発するフェード信号Contにより、出力信号生成部100の各フェーダが調整され、発信方向に応じた出力信号OL,ORが生成される。ただし、フェード制御部26は、いきなり各フェーダを発信方向に応じた設定値へと変更するのではなく、各フェーダを発信方向に応じた設定値へと徐々に変更することが望ましい。
【0114】
ステップS211、つまり発信方向が左方向である場合、フェード制御部26は、フェード信号Contを介して出力信号生成部100の各フェーダを、例えば下記の表2のように設定する。なお、表2中、フェード方向は、表1に記載した音声モードが設定されている状態から、外部モードに切替えられた際のフェード方向を表す。このフェード方向についての説明は、他の表及び図8及び図10においても同様であり、この図8及び図10のステップS211〜S215及びステップS303〜ステップS307では、クロスフェーダ130の各フェーダのフェード方向を例示している。
【0115】
【表2】

【0116】
一方、ステップS213、つまり発信方向が前後方向である場合、フェード制御部26は、フェード信号Contを介して出力信号生成部100の各フェーダを、例えば下記の表3のように設定する。
【0117】
【表3】

【0118】
そして、ステップS215、つまり発信方向が右方向である場合、フェード制御部26は、フェード信号Contを介して出力信号生成部100の各フェーダを、例えば下記の表4のように設定する。
【0119】
【表4】

【0120】
音声モードから外部モードへと変更されてステップS215が処理された場合、つまり発信方向が右方向である場合についてより具体的に説明する。
【0121】
ステップS215において、表4のような値に各フェーダが制御されることにより、出力信号生成部100は、図9に簡略化して示すような回路構成となる。
【0122】
つまり、クロスフェーダ130は、発信方向とは逆のLチャンネルの出力信号OLに、LR両チャンネルの音声信号SL,SRが同程度でダウンミックスして含まれるように調整される。一方、クロスフェーダ130は、発信方向と同じRチャンネルの出力信号ORには音声信号SL,SRが含まれないように遮断される。なお、音声信号SL,SRをダウンミックスする際、音量レベルが大きくなり過ぎないように、クロスフェーダ130のフェーダLL,LRは、0dBよりも低い値(例えば−6dB)に設定されることが望ましい。ただし、表2〜表4では、0dBよりも低い値として−6dBを例示しているが、この値は特に限定されるものではない。
【0123】
これに対して、モニタフェーダ120は、発信方向と同じRチャンネルの出力信号ORに、LR両チャンネルの外部信号ML,MRが同程度でダウンミックスして含まれるように調整される。一方、モニタフェーダ120は、発信方向と異なるLチャンネルの出力信号OLには外部信号ML,MRが含まれないように遮断される。なお、外部信号ML,MRをダウンミックスする際、音量レベルが大きくなり過ぎないように、モニタフェーダ120のフェーダRL,RRも、0dBよりも低い値(例えば−6dB)に設定されることが望ましい。
【0124】
従って、この出力信号生成部100により、発信方向と異なるLチャンネルの出力信号OLは、Lチャンネルの音声信号SLとRチャンネルの音声信号SRとがダウンミックスされ、更にLチャンネルのNC信号NLがミックスされた音声信号となる。一方、発信方向と同じRチャンネルの出力信号ORは、Lチャンネルの外部信号MLとRチャンネルの外部信号MRとがダウンミックスされ、更にRチャンネルのNC信号NRがミックスされた音声信号となる。よって、外部モードの場合、ヘッドホン1は、モノラルの音声信号Sを、発信方向と異なるLチャンネルの出力信号OLとすることができ、モノラルの外部信号Mを、発信方向と同じRチャンネルの出力信号ORとすることができる。
【0125】
その結果、ユーザUは、外部信号Mが表す外部音MSを聴取することができるだけでなく、左右どちらか一方の音声信号Sが欠落してない音声信号Sを聴取することができる。よって、音声信号Sが表す音声コンテンツを楽しみながら、外部信号Mが表す外部音MSをも聴取することが可能である。なお、この際、ユーザUは、外部音MSが発せられるチャンネルにより、発信者MMの方向を認識することも可能である。
【0126】
以上、発信方向が右方向である場合を例に挙げて説明したが、発信方向が左方向である場合には、フェード制御部26は、各フェーダを表2のように調整するフェード信号Contを出力する。その結果、上記発信方向が右方向である場合に対してLRチャンネルが逆となった出力信号OL,ORを出力することができる。この場合、LRチャンネルを流れる各信号が逆となる以外は、基本的に上記発信方向が右方向である場合と同様の動作が行われるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0127】
一方、発信方向が前後方向である場合、フェード制御部26は、各フェーダを表3のように調整するフェード信号Contを出力する。その結果、クロスフェーダ130は、Lチャンネルの音声信号SLを、Lチャンネルの出力信号OLに含め、かつ、Rチャンネルの音声信号SRを、Rチャンネルの出力信号ORに含める。そして、モニタフェーダ120は、Lチャンネルの外部信号MLを、やはりLチャンネルの出力信号OLに含め、かつ、Rチャンネルの外部信号MRを、やはりRチャンネルの出力信号ORに含める。
【0128】
従って、Lチャンネルの出力信号OLは、Lチャンネルの音声信号SLとLチャンネルの外部信号MLとがミックスされ、更にLチャンネルのNC信号NLがミックスされた音声信号となる。一方、Rチャンネルの出力信号ORは、Rチャンネルの音声信号SRとRチャンネルの外部信号MRとがミックスされ、更にRチャンネルのNC信号NRがミックスされた音声信号となる。よって、音声モードの場合、ヘッドホン1は、ステレオの音声信号SL,SRとステレオの外部信号ML,MRとを、各チャンネル毎でミックスして、ステレオの出力信号OL,ORとすることができる。
【0129】
その結果、ユーザUは、やはり外部信号Mが表す外部音MSを聴取することができるだけでなく、左右どちらか一方の音声信号Sが欠落してない音声信号Sを聴取することができる。よって、音声信号Sが表す音声コンテンツを楽しみながら、外部信号Mが表す外部音MSをも聴取することが可能である。なお、この際、ユーザUは、外部音MSが両チャンネルから発せられることにより、発信者MMの方向を前後方向と認識することも可能である。
【0130】
なお、ここではフェード方向も含めて、音声モードから外部モードに変更される場合について説明した。しかしながら、例えば、情報モードから外部モードに変更される場合、及び、外部モード内で発信方向が変化した場合には、一部のフェード方向が異なるものの、他の動作は同様に行われることになる。
【0131】
(2−4−3.外部モード終了時における動作)
一方、ここで説明した外部モードから音声モードに切替えられる場合の動作、つまり外部モードを終了して通常のモードに切替わる際の動作について、図6及び図10を参照しつつ説明する。図10は、本実施形態に係るヘッドホンの動作モード切替え時の動作を説明するための説明図である。
【0132】
図6に示すステップS103で、動作モードが外部モードから音声モードに切替えられた場合、ステップS105からステップS107へと進み、このステップS107では、図10に示す処理が行われる。
【0133】
まず、この外部モードの終了時、ステップS301が処理される。このステップS301では、フェード制御部26が、外部モード時に設定されていた発信方向を確認する。そして、発信方向が左方向である場合にはステップS303に進み、発信方向が前後方向である場合にはステップS305に進み、発信方向が右方向である場合にはステップS307に進む。
【0134】
ステップS305,S307,S309(出力信号生成ステップの一例)では、フェード制御部26が発するフェード信号Contにより、出力信号生成部100の各フェーダが表1に示す値へと調整されて出力信号OL,ORが生成される。この際、ステップS305〜S309にクロスフェーダ130のフェード方向等を例示したように、フェード制御部26は、いきなり各フェーダを音声モードの設定値へと変更するのではなく、各フェーダを音声モードの設定値へと徐々に変更することが望ましい。そして、この外部モード終了動作を終了し、図6に示すようにステップS113を介してステップS101以降の処理が繰り返されることになる。
【0135】
(2−4−4.情報モードにおける動作)
なお、本実施形態で設定されている残りの動作モードである情報モードでは、基本的に外部モードにおける動作と同様な動作が行われる。ただし、この際、フェード制御部26は、外部信号調整用フェーダ113を−∞dBに設定して遮断しつつ、外部信号ML,MRが流れるラインに、情報信号調整用フェーダ114を介して情報信号IL,IRを供給する。従って、上記外部モードの動作において、外部信号ML,MRの代りに情報信号IL,IRが供給されることになる。従って、上記外部モードの動作において、外部信号ML,MRを情報信号IL,IRを読み替え、その他多少の変更を加えるだけで情報モードの動作とすることができるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0136】
(2−5.効果の例)
以上、本発明の第1実施形態に係るヘッドホン1について説明した。
このヘッドホン1によれば、動作モードに応じて、ユーザUに、音声信号Sが表す音声コンテンツを提供しつつ、更に外部信号Mが表す外部音MSをも同時に提供することが可能である。そして、この際、ステレオの音声信号Sは、ステレオのままユーザUに提供されるか、又は、モノラルに変換されてユーザUに提供される。従って、ステレオの音声信号Sのどちらか一方をユーザUが聴取できないようなユーザUに不快感を与えかねない状態を防ぎ、音声信号Sの両チャンネルの音声をユーザUに楽しませることができる。なお、また、外部信号Mが提供されるチャンネルの方向により、ユーザUに発信者MMの位置する方向をも認識させることが可能である。
【0137】
なお、本発明の第1実施形態によれば、外部モードの際に、各フェーダの設定値を変更することにより、発信方向と異なる方向のチャンネルから、ステレオの音声信号Sのどちらか一方のチャンネルの音声信号Sを出力させることも可能である。しかしながら、このような場合、ユーザUがヘッドホン1の片側を外した状態と等しくなり、ステレオの音声信号Sの両チャンネル間で差異が大きい場合、他方のチャンネルの音声信号Sを聴き逃したユーザUに不快感を与える恐れがある。従って、本実施形態で説明したように、どちらか一方のチャンネルから音声信号Sを出力する場合には、その出力される音声信号Sとしてステレオをモノラルにダウンミックスした音声信号Sを出力することが望ましい。
【0138】
また、本実施形態では、ノイズキャンセル機能を有するため、ノイズを低減して出力信号OL,ORによる出力音OSの音質を高めることが可能である。このようなノイズキャンセル機能は近年急速に普及しているが、ノイズキャンセル機能は、周囲の音をノイズとして低減させてしまうため、このような機能が無い場合と比べて、ユーザUが周囲の音を聴取することを難しくしていた。しかしながら、ここで説明した通り、本実施形態に係るヘッドホン1によれば、周囲の音を外部音MSとして出力音OSに含めることが可能である。従って、このようなノイズキャンセリング機能と併用される場合、ユーザUの不快感や不便さを取り除く効果は倍増することとなる。しかしながら、必ずしもノイズキャンセリング機能と併用される必要はないことは、言うまでもない。
【0139】
<3.第2実施形態>
なお、上記第1実施形態に係るヘッドホン1によれば、各動作モードにおける各フェーダの設定値を変更することにより、各動作モード時の音声信号SL,SRと外部信号ML,MRとの組み合わせを自由に変更することも可能である。
【0140】
例えば、上記第1実施形態では、外部モードにおいて発信方向が右又は左である場合、その発信方向のチャンネルからはモノラルにダウンミックスされた外部信号Mを出力させ、他方のチャンネルからはモノラルにダウンミックスされた音声信号Sを出力させた。
【0141】
これに対して、例えば、外部モードにおいて発信方向が右又は左である場合、両チャンネルから、ステレオの音声信号Sを対応するチャンネルで出力させつつ、その出力信号Oにやはりステレオの外部信号Mをミックスして出力することも可能である。この場合、モニタフェーダ120のフェーダLLとフェーダRRとで、発信方向に対応するチャンネル側の減衰率を低くするなど、減衰率を不均一に設定することにより、ユーザUに発信者MMの方向を認識させることも可能である。ただし、フェーダLLとフェーダRRの減衰率を均一に設定することももちろん可能である。
【0142】
また、この場合、上記第1実施形態と異なりステレオの外部信号ML,MRをダウンミックスせずにステレオのままユーザUに提供することが可能である。この際、モニタフェーダ120の他のフェーダLR,RLは、常に−∞dBに設定されることとなる。よって、図11に第2実施形態として例示するような出力信号生成部200を出力信号生成部100の代りに使用することも可能である。この第2実施形態に係るヘッドホンが有する出力信号生成部200は、モニタフェーダ120の代りにモニタフェーダ220を有する。この第2実施形態に係るモニタフェーダ220は、第1実施形態に係るモニタフェーダ120から、フェーダLR,RLと2の加算回路157,158とを取り除いた構成となる。従って、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することに加えて、更に装置構成を簡略化して、製造コストを低減することが可能である。
【0143】
<4.第3実施形態>
更に、第2実施形態とは逆に、外部信号ML,MRの情報をステレオで提供せずにモノラルで提供すれば済む場合、発信方向が前後方向であっても、外部信号ML,MRをダウンミックスして、両出力信号OL,ORに含めることも可能である。この場合、第1実施形態に係るヘッドホン1において、外部モードかつ発信方向が前後方向である場合に、モニタフェーダ120において、フェーダLR,RLを−∞dBからフェーダLL,RRと等しい所定の値に変更することとなる。なお、この所定の値は、上記第1実施形態では、−6dBに設定されているが、左右両外部信号ML,MRがダウンミックスされることより音量レベルが大きくなり過ぎないように、更に大きな減衰量の値に設定されることが望ましい。
【0144】
なお、この場合、図12に第3実施形態として例示するような出力信号生成部300を出力信号生成部100の代りに使用することも可能である。この第3実施形態に係るヘッドホンが有する出力信号生成部300は、モニタフェーダ120の代りにモニタフェーダ320を有する。この第3実施形態に係るモニタフェーダ320は、第1実施形態に係るモニタフェーダ120から、フェーダLR,RLと2の加算回路157,158とを取り除いた構成となる。また、第3実施形態に係る出力信号生成部300は、LR両チャンネルの外部信号ML,MR(又は情報信号IL,IR)をモノラルにダウンミックスする加算回路351を有する。その結果、この加算回路351とモニタフェーダ320との間の信号線を部分的に一本減じることができる。従って、この場合も、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することに加えて、更に装置構成を簡略化して、製造コストを低減することが可能である。
【0145】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0146】
例えば、上記実施形態では、外部信号Mがステレオである場合について説明した。しかしながら、外部信号Mがモノラルである場合も、本実施形態は同様の効果等を奏することが可能である。この場合、方向特定部21が発信方向を特定することが難しくなるため、例えば、外部信号Mが取得された方向のチャンネルなどのように、予め外部信号Mを出力させる出力信号Oのチャンネルを設定しておいてもよい。また、上記第1実施形態等における発信方向が前後方向である場合のように、両チャンネルの出力信号OL,ORにアナログの外部信号Mを含めることも可能である。また、このようにアナログの外部信号Mである場合以外にも、外部信号Mを含めるチャンネルを双方又はどちらか一方に予め設定しておき、発信方向に応じない外部信号Mの提供も可能であることは、言うまでもない。なお、ここで説明した変更内容については、上記実施形態ではステレオであった情報信号IL,IRについても同様のことが言える。
【0147】
また、上記実施形態では、音声信号Sが供給されている場合について説明しているが、音声信号Sが供給されていない場合、つまり無音の状態であったとしても、上記各実施形態に係るヘッドホン1は、同様の動作を行うことが可能である。
【0148】
更にまた、上記実施形態では、音声信号S,外部信号M,情報信号IL,IRがそれぞれデジタル信号として供給される場合について説明した。しかしながら、これらの情報のいずれか又は全ては、アナログの信号として供給されてもよい。この場合、デジタル/アナログ変換回路12等を省略し、各フェーダ等の構成をアナログ回路で構成することにより、ヘッドホン1等を構成することが可能である。
【0149】
そして、上記実施形態では、図5,図11,図12等に示すように、出力信号生成部100,200,300において各信号のミックス状態を調整する構成として、フェーダを使用する場合について説明した。しかしながら、図5,図11,図12において、同様の動作を行うことが可能なスイッチ及び増幅回路等を使用することにより、フェーダを使用せずに、出力信号生成部100,200,300を構成することも可能である。
【0150】
また、上記各実施形態で説明した一連の処理は、専用のハードウエアにより実行させてもよいが、ソフトウエアにより実行させてもよい。一連の処理をソフトウエアにより行う場合、図13に示すような汎用又は専用のコンピュータ900にプログラムを実行させることにより、上記の一連の処理を実現することができる。
【0151】
図13は、プログラムを実行することにより一連の処理を実現するコンピュータ900の構成例を説明するための説明図である。一連の処理を行うプログラムのコンピュータ900による実行について説明すれば、以下のようになる。
【0152】
図13に示すように、コンピュータは、例えば、バス901及びバス902と、ブリッジ903と、CPU(Central Processing Unit)904と、記録装置と、入出力インターフェイス907と、入力装置908と、出力装置909と、接続ポート910と、ドライブ912と、通信装置914となどを有する。これらの各構成は、ブリッジ903により接続されたバス901及びバス902や、入出力インターフェイス907等を介して相互に情報を伝達可能に接続されている。
【0153】
プログラムは、例えば、記録装置の一例である、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置911・ROM(Read Only Memory)905・RAM(Random Access Memory)906等に記録しておくことがきる。
【0154】
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD(Compact Disc)・MO(Magneto Optical)ディスク・DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体913に、一時的又は永続的に記録しておくこともできる。このようなリムーバブル記憶媒体913は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。これらのリムーバブル記憶媒体913に記録されたプログラムは、ドライブ912により読み出されて、入出力インターフェイス907・バス901,902等を介して上記の記録装置に記録されてもよい。
【0155】
更に、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LAN(Local Area Network)・インターネット等のネットワーク915を介して転送され、通信装置914がこのプログラムを受信する。また、このプログラムは、USB(Universal Serial Bus)等の接続ポート923に接続された他の記録装置や通信装置等から転送されてもよい。そして、通信装置914又は接続ポート923が受信したプログラムは、入出力インターフェイス907・バス901,902等を介して上記の記録装置に記録されてもよい。
【0156】
そして、CPU904が、上記の記録装置に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記の一連の処理が、実現される。この際、CPU904は、例えば、上記の記録装置からプログラムを、直接読み出して実行してもよく、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU904は、例えば、プログラムを通信装置914やドライブ912を介して受信する場合、受信したプログラムを記録装置に記録せずに直接実行してもよい。
【0157】
更に、CPU904は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置908や、接続ポート910に接続された他の入力装置から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
【0158】
そして、CPU904は、上記の一連の処理を実行した結果を、例えばモニタなどの表示装置・スピーカやヘッドホンなどの音声出力装置等の出力装置909から出力してもよい。更にCPU904は、必要に応じてこの処理結果を通信装置914や接続ポート910から送信してもよく、上記の記録装置やリムーバブル記憶媒体913に記録させてもよい。
【0159】
尚、本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0160】
1 ヘッドホン
11 音声信号取得部
12 デジタル/アナログ変換回路
13 増幅回路
14 外部信号取得部
15 情報信号取得部
20 制御部
21 方向特定部
22 音声認識部
23 記憶部
24 タイマ
25 モード設定部
26 フェード制御部
100,200,300 出力信号生成部
101L,101R イコライザ
102L,102R イズキャンセル信号生成部
103L,103R 外部音抽出部
111 ボリューム調整用フェーダ
112 ノイズキャンセル調整用フェーダ
113 外部信号調整用フェーダ
114 情報信号調整用フェーダ
120,220,320 モニタフェーダ
130 クロスフェーダ
151,152,153,154,155,156,157,158 加算回路
161,162,351 加算回路
CM モード切替信号
Cont フェード信号
Dir 方向信号
M,ML,MR 外部信号
MM 発信者
MS,MSL,MSR 外部音
O,OL,OR 出力信号
OS,OSL,OSR 出力音
S,SL,SR 音声信号
SPL,SPR スピーカ
U ユーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオの音声コンテンツを表す音声信号を取得する音声信号取得部と、
周囲の音を集音して得られる外部音を表す外部信号を取得する外部信号取得部と、
前記音声信号取得部が取得した音声信号、及び、前記外部信号取得部が取得した外部信号から、ユーザに提供されるステレオの音声を表す出力信号を生成可能な出力信号生成部と、
前記出力信号生成部の動作モードとして、少なくとも、生成させる前記出力信号に対応した外部モードを設定可能なモード設定部と、
前記モード設定部が設定した動作モードに応じて、前記出力信号生成部による前記出力信号の生成動作を制御するフェード制御部と、
を有し、
前記フェード制御部は、前記出力信号生成部に対して、前記外部モードが設定されている場合には、ユーザの右耳及び左耳の一方用の前記出力信号を少なくとも前記外部信号から生成すると共に、他方用の前記出力信号を少なくとも前記音声信号から生成させる、信号処理装置。
【請求項2】
前記モード設定部は、前記動作モードとして、前記外部モードの代りに、少なくとも、前記出力信号に対応した音声モードも設定可能であり、
前記フェード制御部は、前記出力信号生成部に対して、前記音声モードが設定されている場合には、前記ステレオの出力信号を前記ステレオの音声信号から生成させる、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記外部信号取得部が取得した外部信号に基づいて、該外部信号が表す外部音を低減するノイズキャンセル信号を生成するノイズキャンセル信号生成部を更に有し、
前記出力信号生成部は、前記外部音を低減させるために、前記音声信号から生成される前記出力信号に前記ノイズキャンセル信号を重畳させる、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記外部信号取得部は、ステレオの前記外部信号を取得し、
前記信号処理装置は、前記外部モードが設定されている場合、前記外部信号取得部が取得したステレオの前記外部信号に基づいて、前記ユーザに対する該外部信号の発信源の方向を特定する方向特定部を更に有し、
前記フェード制御部は、前記方向特定部が特定した前記発信源の方向に応じて、前記ユーザの右耳及び左耳の出力信号から、前記外部信号から生成する前記他方用の出力信号を決定する、請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記フェード制御部は、前記方向特定部が前記ユーザの前後方向を含む平面内に前記発信源の方向を特定した場合、前記出力信号生成部に対して、右耳用の前記出力信号を、右耳用の前記音声信号及び右耳用の前記外部信号を重畳することにより生成させ、かつ、左耳用の前記出力信号を、左耳用の前記音声信号及び左耳用の前記外部信号を重畳することにより生成させる、請求項4に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記フェード制御部は、前記外部モードが設定されている場合、前記出力信号生成部に対して、前記外部信号のみから前記一方用の出力信号を生成させ、ステレオの前記音声信号をモノラルの音声信号に変換して前記他方用の出力信号を生成させる、請求項1〜5のいずれかに記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記モード設定部は、前記ユーザの操作に応じて前記音声モードと前記外部モードとを切替可能である、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記音声信号及び前記外部信号と異なり、前記ユーザに提供されるべき音声情報を表す情報信号を、外部の情報発信装置から取得する情報信号取得部を更に有し、
前記モード設定部は、前記情報信号取得部が前記情報信号を取得した場合、前記動作モードとして、生成させる前記出力信号に対応した情報モードを設定し、
前記フェード制御部は、前記情報モードが設定されている場合、前記出力信号生成部に対して、前記一方用の前記出力信号を少なくとも前記情報信号から生成すると共に、他方用の前記出力信号を少なくとも前記音声信号から生成させる、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記音声モードにおいて前記外部信号を取得して、該外部信号に所定の音声信号が含まれるか否かを判定する音声認識部を更に有し、
前記モード設定部は、前記外部信号に前記所定の音声信号が含まれると判定された場合、前記動作モードを前記外部モードに切替える、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項10】
前記出力信号生成部は、前記ステレオの出力信号のうち右耳用及び左耳用の出力信号それぞれに対して
前記ステレオの音声信号のうち右耳用及び左耳用の音声信号それぞれが含まれる音量を調整可能な複数のフェーダを有する音声信号調整部と、
前記ステレオの外部信号のうち右耳用及び左耳用の外部信号それぞれが含まれる音量を調整可能な複数のフェーダを有する外部信号調整部と、
を有する、請求項4に記載の信号処理装置。
【請求項11】
ステレオの音声コンテンツを表す音声信号を取得する音声信号取得ステップと、
周囲の音を集音して得られる外部音を表す外部信号を取得する外部信号取得ステップと、
少なくとも、ユーザに提供されるステレオの音声を表す出力信号に対応した外部モードを設定するモード設定ステップと、
前記モード設定ステップで設定された動作モードに応じて、前記音声信号取得ステップで取得した音声信号、及び、前記外部信号取得ステップで取得した外部信号から、ユーザに提供されるステレオの音声を表す出力信号を生成する出力信号生成ステップと、
を有し、
前記出力信号生成ステップでは、前記外部モードが設定されている場合には、ユーザの右耳及び左耳の一方用の前記出力信号を少なくとも前記外部信号から生成すると共に、他方用の前記出力信号を少なくとも前記音声信号から生成する、信号処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
ステレオの音声コンテンツを表す音声信号を取得する音声信号取得機能と、
周囲の音を集音して得られる外部音を表す外部信号を取得する外部信号取得機能と、
前記音声信号取得機能が取得した音声信号、及び、前記外部信号取得機能が取得した外部信号から、ユーザに提供されるステレオの音声を表す出力信号を生成可能な出力信号生成機能と、
前記出力信号生成機能の動作モードとして、少なくとも、生成させる前記出力信号に対応した外部モードを設定可能なモード設定機能と、
前記モード設定機能が設定した動作モードに応じて、前記出力信号生成部による前記出力信号の生成動作を制御するフェード制御機能と、
を実現させ、かつ、
前記フェード制御機能は、前記出力信号生成機能に対して、前記外部モードが設定されている場合には、ユーザの右耳及び左耳の一方用の前記出力信号を少なくとも前記外部信号から生成すると共に、他方用の前記出力信号を少なくとも前記音声信号から生成させる、ことを実現させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−183451(P2010−183451A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26552(P2009−26552)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】