信号処理装置
【課題】センサでの観測データにより未知パラメータを推定する方法に用いる信号数の推定には、従来、経験則による閾値を用いるため、高精度な未知パラメータの推定ができない。
【解決手段】キュムラント行列演算手段で求めた、センサでの観測データの高次統計量に基づくキュムラント行列から、固有値固有ベクトル演算手段が固有値と固有値に対応する固有ベクトルに分解し、符号判定手段が分解された固有値の符号が反転するときまでの固有値数を検出して信号数を推定し、パラメータ推定手段で、符号が反転するときまでの固有値に対応する固有ベクトルを用いて、未知パラメータを推定する。
【解決手段】キュムラント行列演算手段で求めた、センサでの観測データの高次統計量に基づくキュムラント行列から、固有値固有ベクトル演算手段が固有値と固有値に対応する固有ベクトルに分解し、符号判定手段が分解された固有値の符号が反転するときまでの固有値数を検出して信号数を推定し、パラメータ推定手段で、符号が反転するときまでの固有値に対応する固有ベクトルを用いて、未知パラメータを推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、センサで観測している信号の例えば到来方向などの未知パラメータを推定する信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサで観測している信号の未知パラメータを高精度に推定する信号処理装置として、最尤推定法に基づく方式や超分解能法に基づく方式を採用するものが開発されている。
しかし、これらの信号処理装置では、観測している信号の数を正確に入力する必要があり、このため、観測信号の数を推定する装置が必要になる。
観測データに含まれる信号数を推定する従来方式として、複数のセンサによる観測データから相関行列を算出し、相関行列の固有値から信号数を推定する方式がある。(例えば、非特許文献1参照)
【0003】
非特許文献1に開示された、従来方式による信号数推定処理を含む信号処理装置は、複数のセンサで観測したデータの相関行列を相関行列演算手段で算出し、算出された相関行列を固有値固有ベクトル演算手段において固有値と固有ベクトルに分解する。また、分解された固有値を用い、信号数推定手段により従来方式による信号数推定処理を行い、推定した信号数を参照して、未知パラメータ推定手段により、固有ベクトル(または、相関行列)を用いて最尤推定法に基づく推定処理や、超分解能法に基づく推定処理で観測信号の未知パラメータを推定する。そして、推定値出力手段により、推定した未知パラメータを出力するように構成されている。
【0004】
【非特許文献1】H. Krim, M. Viberg,“Two decades of array signal processing research: the parametric approach”IEEE Signal Processing Magazine, vol.13, no.4, pp.67-94, Jul 1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、相関行列の固有値の大きさで観測信号の数を推定する従来の信号数推定方式における問題点は、固有値を信号成分に対応するものと雑音成分に対応するものとに判別するための閾値を決定する処理が必要なことである。この閾値は、経験的判断などに基づいて設定するなど客観的指標を持たないため、実運用時に支障を来たすことがあった。
この発明は上述した点に鑑みてなされたもので、固有値を信号成分に対応するものと雑音成分に対応するものとに判別するための閾値を決定する処理がなく統計量に基づいて客観的判断基準により観測信号の数を推定することができる信号処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る信号処理装置は、
被観測物を観測し、観測データを出力するセンサと、
センサで観測したデータの高次統計量に基づくキュムラント行列を求めるキュムラント行列演算手段と、
キュムラント行列演算手段で算出された高次キュムラント行列を固有値と固有値に対応する固有ベクトルに分解する固有値固有ベクトル演算手段と、
固有値固有ベクトル演算手段で分解された固有値の符号が反転するときまでの固有値数を検出し信号数を推定する符号判定手段と、
符号が反転するときまでの固有値に対応する固有ベクトルを選択するベクトル選択手段と、
選択された固有ベクトルを用いて、未知パラメータを推定するパラメータ推定手段を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、キュムラント行列演算手段で求められた高次統計量に基づく行列の固有値の符号を符号判定手段で判定することで、信号成分と雑音成分を判別するための閾値を自動的に零に固定する信号数推定方式を実現し、客観的判断指標により信号数推定処理と後段の未知パラメータ推定処理を高精度に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
まず、高精度/高分解能な信号処理装置実現に必要条件について述べる。高精度/高分解能な信号処理装置を実現する場合、信号処理方式に最尤推定法に基づく方式や超分解能法に基づく方式を用いる。これらの方式では、観測データに含まれる正確な信号数を入力することで高精度/高分解能な運用が可能となる。よって、観測データに含まれる信号数を正確に推定するための方式を別途備える必要がある。
この発明に係る信号処理装置は、キュムラント行列の固有値の符号を判定することで、信号成分と雑音成分を判別するための閾値を自動的に零と設定する信号数推定方式を採用する。この発明における信号数推定方式は、非特許文献2に示されるVESPA(Virtual-Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques Algorithm)に基づく。VESPAでは、4次キュムラントに基づく行列の固有値を算出する。また、この発明に係る信号処理装置で観測する信号の4次キュムラントが負値となることは、非特許文献2にも示される。VESPAに基づく従来の信号処理装置では固有値の絶対値情報のみを使用したが、この発明に係る信号処理装置では固有値の符号を判定する機能を有する。
【0009】
図1は、この発明の実施の形態1に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示す信号処理装置は、複数のセンサ11〜1Lと、これらセンサ11〜1Lで観測されたデータの4次キュムラントによる行列を算出する4次キュムラント行列演算手段2と、4次キュムラント行列演算手段2で算出された4次キュムラント行列を固有値4と固有値に対応する固有ベクトル5に分解する固有値固有ベクトル演算手段3と、固有値の絶対値を基準に固有値を並べ替える並べ替え手段6と、信号の4次キュムラントの符号と一致する符合である固有値を判定する符号判定手段7と、信号の固有値に対応する固有ベクトルを選択するベクトル選択手段8と、選択された固有ベクトルを用いて未知パラメータを推定するパラメータ推定手段9と、推定したパラメータを出力する出力手段10とを備える。
【0010】
文献 M Dogan and J. Mendel, "Application of Cumulants to Array Processing - Part I : Aperture Extension and Array Calibration" IEEE Trans. Signal Processing, vol.43, no.5, pp.1200-1216, May 1995.(以下非特許文献2という)によれば、信号に対応する固有値は、負値であり、かつ、雑音に対応する固有値よりも絶対値が大きい。よって、図1の信号処理構成図のように、固有値4を並べ替え手段6で固有値の絶対値を基準にして並び替えれば、符号判定手段7では固有値の符号を判定して信号数が推定できる。例えば、並べ替え手段6で固有値4を絶対値の大きい方から降順に並べ替えたとすると、符号判定手段7では絶対値が大きい固有値から符号が負の固有値を数える。符号が負から正に変わるまでに数えた固有値の個数で信号数が推定できる。符号が負から正に変わることを基準とする判定条件は、閾値を自動的に零とすることと等価である。
【0011】
図6は、非特許文献2に基づく従来の信号処理装置の構成例である。絶対値演算手段100では固有値4の絶対値情報のみを取り出す。閾値判定手段120では、閾値110より絶対値が大きい固有値の個数を数え、信号数を推定する。よって、図6の信号処理構成の動作には、閾値110を決定する別の装置が必要である。
図1の信号処理装置は図6の従来の信号処理装置を比べて、閾値を決定する装置を不要とすることにより、この発明による信号処理装置は従来の信号処理装置より装置規模が小さくできる。
さらに、この発明の信号処理装置で推定した信号数を、未知パラメータを推定する別の信号処理装置へ出力することもできる。
【0012】
次に実施の形態1における信号処理装置において、信号数を推定し、未知パラメータ推定を実施する場合の具体例を示す。ここでは、センサ数をLと仮定する。
非特許文献2に基づくVESPAでは、式(1)に示す4次キュムラントを用いて信号数を推定することが特徴である。
【0013】
【数1】
【0014】
ここで、cum[ ]はキュムラント演算、E[ ]は平均処理を表す。
#iセンサと#jセンサ(i,j≦L)をガイディングセンサとすると、4次キュムラント行列演算手段2はセンサ11〜1Lで観測したデータベクトルxについて式(1)の4次キュムラントを用いて以下のような4次キュムラント行列Cを算出する。
【0015】
【数2】
【0016】
固有値固有ベクトル演算手段3は、式(8)のように行列Cを固有値λl(l=1,・・・,2L)、固有ベクトルel(l=1, ・・・,2L)に展開する。
【0017】
【数3】
【0018】
本実施の形態による信号処理装置では、並べ替え手段6が固有値λl(l=1, ・・・,2L)を式(9)のように絶対値を基準にして並び替える。
【0019】
【数4】
【0020】
【数5】
【0021】
本実施の形態による信号処理装置で推定可能な信号数Kはセンサ数Lまでである。
ベクトル選択手段8で式(10)のように判定された固有値λk(k=1, ・・・,K)に対応する固有ベクトルek(k=1, ・・・,K)を選択し、パラメータ推定手段9でこの選択された固有ベクトルek(k=1, ・・・,K)による式(11)に示される行列Vを用いて、VESPAでは未知パラメータを推定する。
【0022】
【数6】
【0023】
パラメータ推定手段9で推定されたパラメータは出力手段10で出力される。
また、推定した信号数Kを、最尤推定や他の超分解能法を用いる別の信号処理装置に出力し、未知パラメータを推定することもできる。
【0024】
他の実施例.
この発明の信号処理装置は、式(2)に示される行列Cを、式(12)のような行列C’を用いるVESPAにおいても実現できる。
【0025】
【数7】
【0026】
【数8】
【0027】
【数9】
【0028】
【数10】
【0029】
式(15)のように判定された固有値λk'(k=1,・・・,K)に基づき、以下の式(16)および式(17)ような行列V'と行列V"を用いてVESPAによる未知パラメータ推定が可能である。
【0030】
【数11】
【0031】
実施の形態2.
前記式(8)における固有値λl(l=1, ・・・,2L)のうち、信号に対応する固有値以外の固有値λl(l=K+1, ・・・,2L)は符号が不定である。このため、図1の信号処理装置では、信号数真値より多めの信号数を推定する場合がある。ただし、未知パラメータ推定方式では、信号数真値未満での推定処理となることを避けるために信号数推定値を多めに設定することが適切する場合もあり、図1の信号処理装置で多めに信号数を推定しても問題にならない。
図2は、信号数真値に対する推定精度を高めた実施の形態2における信号処理装置の構成を示すブロック図である。図2に示す信号処理装置では、擬似信号発生手段170においてセンサに入力される信号のキュムラントと符号が異なるキュムラントとなる擬似信号を発生し、センサ11〜1Lで得られた各観測データへ擬似信号加算手段181〜18Lで上記擬似信号を加算する。例えば、式(19)のように擬似信号yをデータベクトルxに加算する処理をする。
【0032】
【数12】
【0033】
他の実施例1.
図3は、信号数真値に対する推定精度を高めた他の実施例の信号処理装置の構成を示すブロック図である。図3に示す信号処理装置では、センサに入力される信号のキュムラントと符号が異なるオフセット値130を、オフセット値行列加算手段140で4次キュムラント行列演算手段2により観測データの4次キュムラントにより算出された4次キュムラント行列Cに加算する。例えば、式(20)のようにオフセット値αを行列Cに加算する処理をする。
【0034】
【数13】
【0035】
他の実施例2.
図4は、図3の信号処理装置と同様の効果を得る更に他の実施例の信号処理装置の構成を示すブロック図の一例である。図4の信号処理装置では、センサに入力される信号のキュムラントと符号が異なるオフセット値130を、オフセット値加算手段150で固有値固有ベクトル演算手段3で分解された固有値4に加算することで、図3の信号処理装置と同様の効果が得られる。例えば、式(21)のように固有値λlにオフセット値αを加算すれば、式(20)のように行列Cにオフセット値を加算する処理と同様の効果が得られる。
【0036】
【数14】
【0037】
非特許文献2によれば、信号に対応する固有値以外の固有値λl(l=K+1, ・・・,2L)は雑音の残余成分である。よって、雑音電力に基づくオフセット値αを加算することで、固有値λl(l=K+1, ・・・,2L)の符号を統一することができる。
【0038】
【数15】
【0039】
また、雑音電力を評価する雑音電力評価装置を備え、あるいは雑音電力評価装置が別途存在すれば、擬似信号yまたはオフセット値αを更新し、信号数の推定精度を高めることができる。
【0040】
この発明の信号処理装置では、信号に対応する4次キュムラントが負値である場合、負の固有値に対応する固有ベクトルのみを用いて、未知パラメータを推定する。符号判定手段7で、負の固有値に対応する固有ベクトルのみ選択することで、未知パラメータの推定処理に用いる固有ベクトル数を減らすことができ、全ての信号成分を未知パラメータの推定処理に用いることができる。
また、絶対値の大きな固有値となる大きな観測誤差が混入していたとしても、固有値が正値であれば、固有値の符号による判定処理により未知パラメータ推定処理から観測誤差の影響を排除できる。
【0041】
センサ数が1の場合、4次キュムラントが負値であれば、信号数は1以上であると検出でき、センサ数が複数の場合、式(2)のような4次キュムラント行列Cの対角項が負値であれば、観測している信号数が1以上であると検出できる。
4次キュムラント行列Cの対角項に正値の要素が存在する場合、正値の要素に対応するセンサは信号を観測していないと判定できる。よって、信号を観測していないセンサに対応する行列Cの要素を後段の信号処理から除外できる。
従って、本実施の形態においては、符号判定手段7が4次キュムラント行列演算手段2で算出された4次キュムラント行列Cの対角項の符号を判定し、観測している信号数を検出する。
また、符号判定手段7は、4次キュムラント行列Cの対角項の符号を判定し、対角項に正値の要素が存在する場合、正値の要素に対応するセンサは信号を観測していないと判定し、信号を観測していないセンサに対応する行列Cの要素を選択し、後段の信号処理から除外する。
【0042】
実施の形態3.
図5は、この発明の実施の形態3による信号処理装置の構成を示すブロック図である。センサ11〜1Lによる観測データを、符号変換手段としてのフーリエ変換手段161〜16Lでフーリエ変換してから、4次キュムラント行列演算手段2へ入力する。
観測データに含まれる信号の4次キュムラントが負値である場合,図5のように観測データをフーリエ変換した後のデータの4次キュムラントは正値となることがある。信号処理装置では固有値4の符号が反転する。よって、信号に対応する固有値の符号が正になるものとして、信号数が推定できる。
【0043】
以上のように、信号に対応する4次キュムラント、および、固有値の符号を反転した信号処理装置を構成できる。よって、この発明は、非特許文献2に基づいて信号に対応する固有値が負値であることのみではなく、信号に対応する固有値が正値となる場合も含まれる。
【0044】
統計量を算出する過程の平均処理において、観測データにゼロパディング処理を適用するなどにより母数を変更し、キュムラントを変化させることも考えられる。式(1)の4次キュムラントのように次数が異なる乗算結果を平均処理する要素が複合する場合、信号の状態とデータ数によってはキュムラントが零となることがある。キュムラントが零となること回避するため、平均母数を変更する。
【0045】
実施の形態1〜3では非特許文献2に基づいて4次キュムラントを用いる信号処理装置について示したが、4次キュムラント以外の高次統計量を用いてこの発明と同様の信号処理装置を構成できる。例えば、4次よりも高次なキュムラントを用いたとしても、キュムラント演算に冗長な情報を入力するなどにより、4次キュムラントを用いるこの発明の信号処理装置と同様の機能を有する信号処理装置を構成することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明に係る信号処理装置は、レーダ装置等に適用され、センサで観測している被観測物からの信号の例えば到来方向等の未知パラメータを高精度に推定する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の実施の形態1に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る他の実施例による信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るさらに他の実施例による信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】従来の信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
1 センサ、2 4次キュムラント行列演算手段、3 固有値固有ベクトル演算手段、4 固有値、5 固有ベクトル、6 並べ替え手段、7 符号判定手段、8 ベクトル選択手段、9 パラメータ推定手段、10 出力手段、100 絶対値演算手段、110 閾値、120 閾値判定手段、130 オフセット値、140 オフセット値行列加算手段、150 オフセット値加算手段、160 フーリエ変換手段、170 擬似信号発生手段、180 擬似信号加算手段。
【技術分野】
【0001】
この発明は、センサで観測している信号の例えば到来方向などの未知パラメータを推定する信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサで観測している信号の未知パラメータを高精度に推定する信号処理装置として、最尤推定法に基づく方式や超分解能法に基づく方式を採用するものが開発されている。
しかし、これらの信号処理装置では、観測している信号の数を正確に入力する必要があり、このため、観測信号の数を推定する装置が必要になる。
観測データに含まれる信号数を推定する従来方式として、複数のセンサによる観測データから相関行列を算出し、相関行列の固有値から信号数を推定する方式がある。(例えば、非特許文献1参照)
【0003】
非特許文献1に開示された、従来方式による信号数推定処理を含む信号処理装置は、複数のセンサで観測したデータの相関行列を相関行列演算手段で算出し、算出された相関行列を固有値固有ベクトル演算手段において固有値と固有ベクトルに分解する。また、分解された固有値を用い、信号数推定手段により従来方式による信号数推定処理を行い、推定した信号数を参照して、未知パラメータ推定手段により、固有ベクトル(または、相関行列)を用いて最尤推定法に基づく推定処理や、超分解能法に基づく推定処理で観測信号の未知パラメータを推定する。そして、推定値出力手段により、推定した未知パラメータを出力するように構成されている。
【0004】
【非特許文献1】H. Krim, M. Viberg,“Two decades of array signal processing research: the parametric approach”IEEE Signal Processing Magazine, vol.13, no.4, pp.67-94, Jul 1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、相関行列の固有値の大きさで観測信号の数を推定する従来の信号数推定方式における問題点は、固有値を信号成分に対応するものと雑音成分に対応するものとに判別するための閾値を決定する処理が必要なことである。この閾値は、経験的判断などに基づいて設定するなど客観的指標を持たないため、実運用時に支障を来たすことがあった。
この発明は上述した点に鑑みてなされたもので、固有値を信号成分に対応するものと雑音成分に対応するものとに判別するための閾値を決定する処理がなく統計量に基づいて客観的判断基準により観測信号の数を推定することができる信号処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る信号処理装置は、
被観測物を観測し、観測データを出力するセンサと、
センサで観測したデータの高次統計量に基づくキュムラント行列を求めるキュムラント行列演算手段と、
キュムラント行列演算手段で算出された高次キュムラント行列を固有値と固有値に対応する固有ベクトルに分解する固有値固有ベクトル演算手段と、
固有値固有ベクトル演算手段で分解された固有値の符号が反転するときまでの固有値数を検出し信号数を推定する符号判定手段と、
符号が反転するときまでの固有値に対応する固有ベクトルを選択するベクトル選択手段と、
選択された固有ベクトルを用いて、未知パラメータを推定するパラメータ推定手段を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、キュムラント行列演算手段で求められた高次統計量に基づく行列の固有値の符号を符号判定手段で判定することで、信号成分と雑音成分を判別するための閾値を自動的に零に固定する信号数推定方式を実現し、客観的判断指標により信号数推定処理と後段の未知パラメータ推定処理を高精度に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
まず、高精度/高分解能な信号処理装置実現に必要条件について述べる。高精度/高分解能な信号処理装置を実現する場合、信号処理方式に最尤推定法に基づく方式や超分解能法に基づく方式を用いる。これらの方式では、観測データに含まれる正確な信号数を入力することで高精度/高分解能な運用が可能となる。よって、観測データに含まれる信号数を正確に推定するための方式を別途備える必要がある。
この発明に係る信号処理装置は、キュムラント行列の固有値の符号を判定することで、信号成分と雑音成分を判別するための閾値を自動的に零と設定する信号数推定方式を採用する。この発明における信号数推定方式は、非特許文献2に示されるVESPA(Virtual-Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques Algorithm)に基づく。VESPAでは、4次キュムラントに基づく行列の固有値を算出する。また、この発明に係る信号処理装置で観測する信号の4次キュムラントが負値となることは、非特許文献2にも示される。VESPAに基づく従来の信号処理装置では固有値の絶対値情報のみを使用したが、この発明に係る信号処理装置では固有値の符号を判定する機能を有する。
【0009】
図1は、この発明の実施の形態1に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示す信号処理装置は、複数のセンサ11〜1Lと、これらセンサ11〜1Lで観測されたデータの4次キュムラントによる行列を算出する4次キュムラント行列演算手段2と、4次キュムラント行列演算手段2で算出された4次キュムラント行列を固有値4と固有値に対応する固有ベクトル5に分解する固有値固有ベクトル演算手段3と、固有値の絶対値を基準に固有値を並べ替える並べ替え手段6と、信号の4次キュムラントの符号と一致する符合である固有値を判定する符号判定手段7と、信号の固有値に対応する固有ベクトルを選択するベクトル選択手段8と、選択された固有ベクトルを用いて未知パラメータを推定するパラメータ推定手段9と、推定したパラメータを出力する出力手段10とを備える。
【0010】
文献 M Dogan and J. Mendel, "Application of Cumulants to Array Processing - Part I : Aperture Extension and Array Calibration" IEEE Trans. Signal Processing, vol.43, no.5, pp.1200-1216, May 1995.(以下非特許文献2という)によれば、信号に対応する固有値は、負値であり、かつ、雑音に対応する固有値よりも絶対値が大きい。よって、図1の信号処理構成図のように、固有値4を並べ替え手段6で固有値の絶対値を基準にして並び替えれば、符号判定手段7では固有値の符号を判定して信号数が推定できる。例えば、並べ替え手段6で固有値4を絶対値の大きい方から降順に並べ替えたとすると、符号判定手段7では絶対値が大きい固有値から符号が負の固有値を数える。符号が負から正に変わるまでに数えた固有値の個数で信号数が推定できる。符号が負から正に変わることを基準とする判定条件は、閾値を自動的に零とすることと等価である。
【0011】
図6は、非特許文献2に基づく従来の信号処理装置の構成例である。絶対値演算手段100では固有値4の絶対値情報のみを取り出す。閾値判定手段120では、閾値110より絶対値が大きい固有値の個数を数え、信号数を推定する。よって、図6の信号処理構成の動作には、閾値110を決定する別の装置が必要である。
図1の信号処理装置は図6の従来の信号処理装置を比べて、閾値を決定する装置を不要とすることにより、この発明による信号処理装置は従来の信号処理装置より装置規模が小さくできる。
さらに、この発明の信号処理装置で推定した信号数を、未知パラメータを推定する別の信号処理装置へ出力することもできる。
【0012】
次に実施の形態1における信号処理装置において、信号数を推定し、未知パラメータ推定を実施する場合の具体例を示す。ここでは、センサ数をLと仮定する。
非特許文献2に基づくVESPAでは、式(1)に示す4次キュムラントを用いて信号数を推定することが特徴である。
【0013】
【数1】
【0014】
ここで、cum[ ]はキュムラント演算、E[ ]は平均処理を表す。
#iセンサと#jセンサ(i,j≦L)をガイディングセンサとすると、4次キュムラント行列演算手段2はセンサ11〜1Lで観測したデータベクトルxについて式(1)の4次キュムラントを用いて以下のような4次キュムラント行列Cを算出する。
【0015】
【数2】
【0016】
固有値固有ベクトル演算手段3は、式(8)のように行列Cを固有値λl(l=1,・・・,2L)、固有ベクトルel(l=1, ・・・,2L)に展開する。
【0017】
【数3】
【0018】
本実施の形態による信号処理装置では、並べ替え手段6が固有値λl(l=1, ・・・,2L)を式(9)のように絶対値を基準にして並び替える。
【0019】
【数4】
【0020】
【数5】
【0021】
本実施の形態による信号処理装置で推定可能な信号数Kはセンサ数Lまでである。
ベクトル選択手段8で式(10)のように判定された固有値λk(k=1, ・・・,K)に対応する固有ベクトルek(k=1, ・・・,K)を選択し、パラメータ推定手段9でこの選択された固有ベクトルek(k=1, ・・・,K)による式(11)に示される行列Vを用いて、VESPAでは未知パラメータを推定する。
【0022】
【数6】
【0023】
パラメータ推定手段9で推定されたパラメータは出力手段10で出力される。
また、推定した信号数Kを、最尤推定や他の超分解能法を用いる別の信号処理装置に出力し、未知パラメータを推定することもできる。
【0024】
他の実施例.
この発明の信号処理装置は、式(2)に示される行列Cを、式(12)のような行列C’を用いるVESPAにおいても実現できる。
【0025】
【数7】
【0026】
【数8】
【0027】
【数9】
【0028】
【数10】
【0029】
式(15)のように判定された固有値λk'(k=1,・・・,K)に基づき、以下の式(16)および式(17)ような行列V'と行列V"を用いてVESPAによる未知パラメータ推定が可能である。
【0030】
【数11】
【0031】
実施の形態2.
前記式(8)における固有値λl(l=1, ・・・,2L)のうち、信号に対応する固有値以外の固有値λl(l=K+1, ・・・,2L)は符号が不定である。このため、図1の信号処理装置では、信号数真値より多めの信号数を推定する場合がある。ただし、未知パラメータ推定方式では、信号数真値未満での推定処理となることを避けるために信号数推定値を多めに設定することが適切する場合もあり、図1の信号処理装置で多めに信号数を推定しても問題にならない。
図2は、信号数真値に対する推定精度を高めた実施の形態2における信号処理装置の構成を示すブロック図である。図2に示す信号処理装置では、擬似信号発生手段170においてセンサに入力される信号のキュムラントと符号が異なるキュムラントとなる擬似信号を発生し、センサ11〜1Lで得られた各観測データへ擬似信号加算手段181〜18Lで上記擬似信号を加算する。例えば、式(19)のように擬似信号yをデータベクトルxに加算する処理をする。
【0032】
【数12】
【0033】
他の実施例1.
図3は、信号数真値に対する推定精度を高めた他の実施例の信号処理装置の構成を示すブロック図である。図3に示す信号処理装置では、センサに入力される信号のキュムラントと符号が異なるオフセット値130を、オフセット値行列加算手段140で4次キュムラント行列演算手段2により観測データの4次キュムラントにより算出された4次キュムラント行列Cに加算する。例えば、式(20)のようにオフセット値αを行列Cに加算する処理をする。
【0034】
【数13】
【0035】
他の実施例2.
図4は、図3の信号処理装置と同様の効果を得る更に他の実施例の信号処理装置の構成を示すブロック図の一例である。図4の信号処理装置では、センサに入力される信号のキュムラントと符号が異なるオフセット値130を、オフセット値加算手段150で固有値固有ベクトル演算手段3で分解された固有値4に加算することで、図3の信号処理装置と同様の効果が得られる。例えば、式(21)のように固有値λlにオフセット値αを加算すれば、式(20)のように行列Cにオフセット値を加算する処理と同様の効果が得られる。
【0036】
【数14】
【0037】
非特許文献2によれば、信号に対応する固有値以外の固有値λl(l=K+1, ・・・,2L)は雑音の残余成分である。よって、雑音電力に基づくオフセット値αを加算することで、固有値λl(l=K+1, ・・・,2L)の符号を統一することができる。
【0038】
【数15】
【0039】
また、雑音電力を評価する雑音電力評価装置を備え、あるいは雑音電力評価装置が別途存在すれば、擬似信号yまたはオフセット値αを更新し、信号数の推定精度を高めることができる。
【0040】
この発明の信号処理装置では、信号に対応する4次キュムラントが負値である場合、負の固有値に対応する固有ベクトルのみを用いて、未知パラメータを推定する。符号判定手段7で、負の固有値に対応する固有ベクトルのみ選択することで、未知パラメータの推定処理に用いる固有ベクトル数を減らすことができ、全ての信号成分を未知パラメータの推定処理に用いることができる。
また、絶対値の大きな固有値となる大きな観測誤差が混入していたとしても、固有値が正値であれば、固有値の符号による判定処理により未知パラメータ推定処理から観測誤差の影響を排除できる。
【0041】
センサ数が1の場合、4次キュムラントが負値であれば、信号数は1以上であると検出でき、センサ数が複数の場合、式(2)のような4次キュムラント行列Cの対角項が負値であれば、観測している信号数が1以上であると検出できる。
4次キュムラント行列Cの対角項に正値の要素が存在する場合、正値の要素に対応するセンサは信号を観測していないと判定できる。よって、信号を観測していないセンサに対応する行列Cの要素を後段の信号処理から除外できる。
従って、本実施の形態においては、符号判定手段7が4次キュムラント行列演算手段2で算出された4次キュムラント行列Cの対角項の符号を判定し、観測している信号数を検出する。
また、符号判定手段7は、4次キュムラント行列Cの対角項の符号を判定し、対角項に正値の要素が存在する場合、正値の要素に対応するセンサは信号を観測していないと判定し、信号を観測していないセンサに対応する行列Cの要素を選択し、後段の信号処理から除外する。
【0042】
実施の形態3.
図5は、この発明の実施の形態3による信号処理装置の構成を示すブロック図である。センサ11〜1Lによる観測データを、符号変換手段としてのフーリエ変換手段161〜16Lでフーリエ変換してから、4次キュムラント行列演算手段2へ入力する。
観測データに含まれる信号の4次キュムラントが負値である場合,図5のように観測データをフーリエ変換した後のデータの4次キュムラントは正値となることがある。信号処理装置では固有値4の符号が反転する。よって、信号に対応する固有値の符号が正になるものとして、信号数が推定できる。
【0043】
以上のように、信号に対応する4次キュムラント、および、固有値の符号を反転した信号処理装置を構成できる。よって、この発明は、非特許文献2に基づいて信号に対応する固有値が負値であることのみではなく、信号に対応する固有値が正値となる場合も含まれる。
【0044】
統計量を算出する過程の平均処理において、観測データにゼロパディング処理を適用するなどにより母数を変更し、キュムラントを変化させることも考えられる。式(1)の4次キュムラントのように次数が異なる乗算結果を平均処理する要素が複合する場合、信号の状態とデータ数によってはキュムラントが零となることがある。キュムラントが零となること回避するため、平均母数を変更する。
【0045】
実施の形態1〜3では非特許文献2に基づいて4次キュムラントを用いる信号処理装置について示したが、4次キュムラント以外の高次統計量を用いてこの発明と同様の信号処理装置を構成できる。例えば、4次よりも高次なキュムラントを用いたとしても、キュムラント演算に冗長な情報を入力するなどにより、4次キュムラントを用いるこの発明の信号処理装置と同様の機能を有する信号処理装置を構成することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明に係る信号処理装置は、レーダ装置等に適用され、センサで観測している被観測物からの信号の例えば到来方向等の未知パラメータを高精度に推定する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の実施の形態1に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る他の実施例による信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るさらに他の実施例による信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】従来の信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
1 センサ、2 4次キュムラント行列演算手段、3 固有値固有ベクトル演算手段、4 固有値、5 固有ベクトル、6 並べ替え手段、7 符号判定手段、8 ベクトル選択手段、9 パラメータ推定手段、10 出力手段、100 絶対値演算手段、110 閾値、120 閾値判定手段、130 オフセット値、140 オフセット値行列加算手段、150 オフセット値加算手段、160 フーリエ変換手段、170 擬似信号発生手段、180 擬似信号加算手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被観測物を観測し、観測データを出力するセンサと、
センサで観測したデータの高次統計量に基づくキュムラント行列を求めるキュムラント行列演算手段と、
キュムラント行列演算手段で算出された高次キュムラント行列を固有値と固有値に対応する固有ベクトルに分解する固有値固有ベクトル演算手段と、
固有値固有ベクトル演算手段で分解された固有値の符号が反転するときまでの固有値数を検出し信号数を推定する符号判定手段と、
符号が反転するときまでの固有値に対応する固有ベクトルを選択するベクトル選択手段と、
選択された固有ベクトルを用いて、未知パラメータを推定するパラメータ推定手段を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
センサは複数有することを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記符号判定手段は、キュムラント行列の対角要素の符号を判定し、信号検出機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記符号判定手段は、キュムラント行列の対角要素の符号を判定し、信号のキュムラントの符号と一致しない符号の対角要素と、符号が一致しない対角要素に関係する行列要素を判別・選択する機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の信号処理装置。
【請求項5】
信号のキュムラントの符号と一致しない符号となるキュムラントを擬似信号として生成する疑似信号発生手段と、
疑似信号発生手段で発生した擬似信号を、センサで観測した観測データに加算し、キュムラント行列演算手段に出力する擬似信号加算手段を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の信号処理装置。
る装置。
【請求項6】
信号のキュムラントの符号と一致しない符号となるオフセット値をオフセット値生成手段で生成し、キュムラント行列演算手段で求められたキュムラント行列に加算し、固有値固有ベクトル演算手段に出力するオフセット値行列加算手段を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
信号のキュムラントの符号と一致しない符号となるオフセット値をオフセット値生成手段で生成し、固有値固有ベクトル演算手段で分解された固有値に加算し、符号判定手段に出力するオフセット値加算手段を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項8】
信号以外の雑音電力の評価に基き、疑似信号発生手段で発生した擬似信号またはオフセット値生成手段で生成したオフセット値を更新する雑音電力評価装置を備えることを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項9】
固有値固有ベクトル演算手段で分解された固有値の絶対値を求め、絶対値に基づいて固有値を並べ替える並べ替え手段を符号判定手段の前段に備えたことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項10】
高次統計量として4次キュムラントを用いることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項11】
符号判定手段は信号のキュムラントの符号に一致しない符号の固有値に対応する固有ベクトルを判別・選択し、以降の処理には用いないことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項12】
観測データに含まれる信号の高次キュムラント信号に対応するキュムラントの符号を変換し、キュムラント行列演算手段2へ入力する符号変換手段を備えたことを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項13】
信号に対応するキュムラント、または、固有値の符号が負であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項14】
信号に対応するキュムラント、または、固有値の符合が正であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項15】
センサで観測したデータの高次統計量を算出する過程の平均処理において、キュムラント母数を変更する機能を有することを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項16】
パラメータ推定手段で推定した未知パラメータの推定値を装置の外部に出力する出力手段を備えたことを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項17】
前記符号判定手段で推定した信号数を装置の外部に出力する出力手段を備えたことを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項1】
被観測物を観測し、観測データを出力するセンサと、
センサで観測したデータの高次統計量に基づくキュムラント行列を求めるキュムラント行列演算手段と、
キュムラント行列演算手段で算出された高次キュムラント行列を固有値と固有値に対応する固有ベクトルに分解する固有値固有ベクトル演算手段と、
固有値固有ベクトル演算手段で分解された固有値の符号が反転するときまでの固有値数を検出し信号数を推定する符号判定手段と、
符号が反転するときまでの固有値に対応する固有ベクトルを選択するベクトル選択手段と、
選択された固有ベクトルを用いて、未知パラメータを推定するパラメータ推定手段を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
センサは複数有することを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記符号判定手段は、キュムラント行列の対角要素の符号を判定し、信号検出機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記符号判定手段は、キュムラント行列の対角要素の符号を判定し、信号のキュムラントの符号と一致しない符号の対角要素と、符号が一致しない対角要素に関係する行列要素を判別・選択する機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の信号処理装置。
【請求項5】
信号のキュムラントの符号と一致しない符号となるキュムラントを擬似信号として生成する疑似信号発生手段と、
疑似信号発生手段で発生した擬似信号を、センサで観測した観測データに加算し、キュムラント行列演算手段に出力する擬似信号加算手段を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の信号処理装置。
る装置。
【請求項6】
信号のキュムラントの符号と一致しない符号となるオフセット値をオフセット値生成手段で生成し、キュムラント行列演算手段で求められたキュムラント行列に加算し、固有値固有ベクトル演算手段に出力するオフセット値行列加算手段を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
信号のキュムラントの符号と一致しない符号となるオフセット値をオフセット値生成手段で生成し、固有値固有ベクトル演算手段で分解された固有値に加算し、符号判定手段に出力するオフセット値加算手段を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項8】
信号以外の雑音電力の評価に基き、疑似信号発生手段で発生した擬似信号またはオフセット値生成手段で生成したオフセット値を更新する雑音電力評価装置を備えることを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項9】
固有値固有ベクトル演算手段で分解された固有値の絶対値を求め、絶対値に基づいて固有値を並べ替える並べ替え手段を符号判定手段の前段に備えたことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項10】
高次統計量として4次キュムラントを用いることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項11】
符号判定手段は信号のキュムラントの符号に一致しない符号の固有値に対応する固有ベクトルを判別・選択し、以降の処理には用いないことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項12】
観測データに含まれる信号の高次キュムラント信号に対応するキュムラントの符号を変換し、キュムラント行列演算手段2へ入力する符号変換手段を備えたことを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項13】
信号に対応するキュムラント、または、固有値の符号が負であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項14】
信号に対応するキュムラント、または、固有値の符合が正であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項15】
センサで観測したデータの高次統計量を算出する過程の平均処理において、キュムラント母数を変更する機能を有することを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項16】
パラメータ推定手段で推定した未知パラメータの推定値を装置の外部に出力する出力手段を備えたことを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項17】
前記符号判定手段で推定した信号数を装置の外部に出力する出力手段を備えたことを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の信号処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−112751(P2010−112751A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283417(P2008−283417)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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