説明

信号出力装置

【課題】安全機器の2つの接点や配線に生じた短絡や溶着等の異常を検出することができるとともに、装置内部の電子回路の故障も検出することができ、本質安全防爆構造の安全機器にも適用できるようにする。
【解決手段】信号出力装置10は、2相信号生成回路13、信号監視回路15、不一致検出回路17を備えている。2相信号生成回路13は、発振回路で構成され、電圧制限回路12から供給された電源から互いに逆相の2つの反転パルス信号を生成し、非常停止スイッチ20の2接点21A,21Bのそれぞれに印加する。信号監視回路15は、分離回路14A,14Bを介して伝達された非常停止スイッチ20の出力信号に基づいて、2つの監視信号を出力する。不一致検出回路17は、2つの監視信号が一致するか否かに基づいて、非常停止スイッチ20における異常の有無を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非常停止スイッチや開閉検出スイッチ等の2接点式の安全機器に接続され、安全機器の操作状態及び接点異常の発生状態を出力する信号出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場内で使用される非常停止スイッチは、操作状態の検出の信頼性を向上するため、単一の操作部材の操作で開閉する2つの接点を備えている。2接点のうちの第1の接点や配線が短絡や溶着等の異常によって操作部材の操作信号を出力できなくなった場合にも、正常な第2の接点から操作部材の操作信号を出力できる。工場内で使用される2接点式の安全機器としては、非常停止スイッチの他に、危険区域内への進入規制用ゲートの開閉状態を検出する開閉検出スイッチがある。
【0003】
非常停止スイッチや開閉検出スイッチ等の安全機器の操作信号は、信号出力装置に入力される。信号出力装置は、安全機器の2接点から出力される操作信号に基づいて検出信号を出力する。信号出力装置の出力は、例えば、駆動用モータのドライブ装置に入力される。安全機器が2つのb接点(以下、2b接点という。)を備えている場合、信号出力装置は、安全機器の2つの出力信号が何れもオンであればオン信号を出力し、安全機器の2つの出力信号が何れもオフであればオフ信号を出力する。信号出力装置は、安全機器の2つの出力信号が異なる場合に、安全機器に接点異常を生じたと判断してオフ信号を出力する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表平11−502305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の本質安全防爆構造の信号出力装置では、2つの接点や配線間に生じた短絡や内部回路の故障検出ができなかった。また、非防爆構造の信号出力装置で使用されているリレーは、消費電流が大きいため、本質安全防爆構造の信号出力装置で使用することが困難であった。
【0005】
この発明の目的は、安全機器の2つの接点や配線に生じた短絡や溶着等の異常を検出することができるとともに、装置内部の電子回路の故障も検出することができ、本質安全防爆構造の安全機器にも適用できる信号出力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の信号出力装置は、2接点式の安全機器に接続される信号出力装置であって、2相信号生成回路及び信号監視回路を備えている。2相信号生成回路は、互いに逆相の2つの反転信号を生成して安全機器の2接点のそれぞれに供給する。信号監視回路は、安全機器の2接点のそれぞれの出力信号に基づいて2つの監視信号を出力する。
【0007】
この構成によれば、安全機器の2接点のそれぞれに、2相信号生成回路から互いに逆相の2つの反転信号のそれぞれが供給される。安全機器の2接点が何れも正常であれば、2接点のそれぞれの出力信号は、互いに逆相となるように所定周期で反転する。2つの接点やこれらの配線の少なくとも一方に異常を生じ、それぞれの出力信号の何れか一方又は両方に異常を生じた場合に、安全機器又は信号出力装置内で故障を生じたと判断される。
【0008】
信号監視回路は、安全機器の2接点のそれぞれの出力信号で駆動される発光素子を備えた第1及び第2のフォトカプラを備え、第1のフォトカプラの入力端子及び出力端子をそれぞれ第2のフォトカプラの出力端子及び入力端子に接続することが好ましい。
【0009】
安全機器の2接点が何れも正常である場合には、第1及び第2のフォトカプラの発光素子が駆動されて両方から監視信号が出力される。2接点間の短絡等の異常が発生して安全機器の2接点のそれぞれの出力信号が同位相となると、第1及び第2のフォトカプラの発光素子が駆動されず、第1及び第2のフォトカプラから監視信号が出力されなくなる。監視信号が出力されるか否かによって2接点間の短絡等の異常の発生を検出することができる。
【0010】
信号監視回路から出力される2つの監視信号が一致するか否かに応じて故障発生の有無を検出する不一致検出回路をさらに備えることが好ましい。不一致検出回路により、監視信号に基づいて2接点間短絡等の異常の発生を検出することができる。
【0011】
信号監視回路に対する2端子の入力ラインのそれぞれに配置される絶縁手段をさらに備えることで、安全機器と信号監視回路との間を分離することができ、本質安全防爆構造の安全機器に用いることができるようになる。
【0012】
絶縁手段は、フォトカプラによって構成することができ、信号監視回路を兼ねることができる。これによって、回路構成を簡略化できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、安全機器の2つの接点やこれらの配線に生じた短絡や溶着等の異常を検出することができるとともに、装置内部の電子回路の故障も検出することができ、本質安全防爆構造の安全機器にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、この発明の信号出力装置を本質安全防爆構造の安全機器に適用した場合を例に挙げて説明するが、この発明の信号出力装置は非防爆構造の安全機器や他の機器にも適用することができる。
【0015】
図1は、この発明の実施形態に係る信号出力装置のブロック図である。信号出力装置10は、この発明の安全機器である非常停止スイッチ20の操作部材の操作状態や端子異常の発生状態を示す検出信号100を出力する。非常停止スイッチ20は、信頼性の向上を図るべく2b接点で構成された2接点21A,21Bを備えている。一例として、非常停止スイッチ20は、爆発性ガス雰囲気中で使用される本質安全防爆構造の安全機器である。なお、安全機器は、工場内の危険区域内への入出規制用ドアの開閉状態を検出する2接点式のドアスイッチ等であってもよい。
【0016】
信号出力装置10は、電源回路11、電圧制限回路12、2相信号生成回路13、分離回路14A,14B、信号監視回路15、信号出力回路16A,16B、不一致検出回路17を備えている。
【0017】
電源回路11は、信号出力装置10内の各回路へ電源を供給する。電圧制限回路12は、2相信号生成回路13に供給される電源の電圧を本質安全防爆構造に要求される電圧以下に制限する。2相信号生成回路13は、発振回路で構成され、電圧制限回路12から供給された電源から互いに逆相の2つの反転パルス信号を生成し、非常停止スイッチ20の2接点21A,21Bのそれぞれに印加する。
【0018】
分離回路14A,14Bは、この発明の絶縁手段に相当し、本質安全防爆構造の非常停止スイッチ20の2接点21A,21Bと非防爆構造の信号監視回路15との間を絶縁しつつ、非常停止スイッチ20の出力信号を信号監視回路15に伝達する。
【0019】
信号監視回路15は、分離回路14A,14Bを介して伝達された非常停止スイッチ20の出力信号に基づいて、2つの監視信号を出力する。信号出力回路16A,16Bは、信号監視回路15から出力された監視信号を増幅して不一致検出回路17に供給する。
【0020】
不一致検出回路17は、2つの監視信号が一致するか否かに基づいて、非常停止スイッチ20における接点や配線の短絡又は溶着等の異常の有無を判断する。不一致検出回路17の検出信号100は、例えば、工場内の機器の動力源であるモータの駆動を制御するドライブ装置に供給される。ドライブ装置は、不一致検出回路17から供給された検出信号100に基づいてモータの駆動を制御する。
【0021】
図2は、信号出力装置10の回路構成の一例を示す回路図である。2相信号生成回路13は、発振回路131、電流制限抵抗132A〜132C、抵抗133、トランジスタ134、増幅回路135,136を備えている。
【0022】
発振回路131は、本質安全防爆構造の電圧制限回路12を介して供給された電源回路11の電源電力に基づいて、所定の周波数の反転パルスを形成する。電流制限抵抗132A〜132Cは、発振回路131から出力された反転パルスの電流値を本質安全防爆の基準値以下に制限する。抵抗133及びトランジスタ134は、反転増幅回路を構成している。
【0023】
電流制限抵抗132A〜132Cで電流値を本質安全防爆の基準値以下にされた反転パルスは、増幅回路135で増幅された後に信号ライン41,42を経由して接点21Aに供給される。また、反転パルスは、抵抗133、トランジスタ134及び増幅回路136で反転増幅された後に信号ライン43,44を経由して接点21Bに供給される。したがって、接点21Aに供給される反転パルスと接点21Bに供給される反転パルスとは常時互いに逆相である。
【0024】
接点21A及び接点21Bの出力信号は、分離回路14A,14Bを介して信号監視回路15に入力される。分離回路14A,14Bのそれぞれは、一例としてフォトカプラで構成されているが、トランスで構成することもできる。
【0025】
信号監視回路15は、一例として第1のフォトカプラ151A及び第2のフォトカプラ151Bを備えている。フォトカプラ151A,151Bは、非常停止スイッチ20の2接点21A,21Bのそれぞれの出力信号で駆動される発光素子(発光ダイオード)を備えている。フォトカプラ151Aの入力端子(発光ダイオードのアノード)及び出力端子(発光ダイオードのカソード)は、それぞれフォトカプラ151Bの出力端子及び入力端子に接続されている。
【0026】
非常停止スイッチ20の2接点21A,21Bが何れも正常で且つ閉じている場合には、2接点21A,21Bのそれぞれの出力信号が逆相となり、フォトカプラ151A,151Bの発光素子に電流が流れ、両方から監視信号が出力される。
【0027】
2接点21A,21B間の短絡等の異常や配線異常が発生し、2接点21A,21Bのそれぞれの出力信号が同相となると、フォトカプラ151A,151Bの発光素子に電流が流れなくなり、フォトカプラ151A,151Bから監視信号が出力されなくなる。
【0028】
なお、分離手段14A,14Bをフォトカプラで構成した場合、信号監視回路15のフォトカプラ151A,151Bと共用することもできる。
【0029】
信号監視回路15から出力された2つの監視信号は、信号出力回路16A,16Bに入力される。信号出力回路16A,16Bは、それぞれ増幅回路161A,161Bを備えている。増幅回路161A,161Bで増幅された監視信号は、不一致検出回路17に入力される。
【0030】
以上のように、信号検出装置10は、互いに逆相の反転パルスを用いて非常停止スイッチ20の2接点21A,21Bの出力信号を検出する。2接点21A,21Bが正常で非常停止スイッチ20の操作部材が操作されていない場合には、フォトカプラ151A及び151Bが交互にオンする。2接点21A,21Bが正常で非常停止スイッチ20の操作部材が操作された場合には、フォトカプラ151A及び151Bの両方の発光素子に電流が流れず、フォトカプラ151A及び151Bの両方がオフする。
【0031】
2接点21A,21Bの間で短絡又溶着を生じた場合には、フォトカプラ151A及び151Bの両方の発光素子の入力端子側が同電位になって発光素子に電流が流れず、フォトカプラ151A及び151Bの両方がオフする。
【0032】
非常停止スイッチ20の操作部材が操作された場合、又は2接点21A,21Bの間若しくは信号ライン(配線)41〜44の間で短絡や溶着を生じた場合には、信号監視回路15から2つの監視信号の何れもが出力されなくなる。このとき、不一致検出回路17が検出信号を出力しなくなり、駆動源に電力が供給されなくなって機械の駆動源を停止させることができる。
【0033】
信号検出装置10は、分離回路14A,14Bを備えているため、危険区域内に設置された本質安全防爆構造の安全機器に接続して使用することができる。但し、信号検出装置10は、本質安全防爆構造でない安全機器に接続して使用することもでき、この場合には電圧制限回路12及び分離回路14A,14Bを省略することもできる。
【0034】
また、非常停止スイッチ20と信号出力装置10との間の配線距離が長い場合、配線の浮遊容量が大きくなり、2相信号の周波数が高いと、信号が減衰して正常に信号を伝送することができなくなる。そのために、2相信号の周波数を下げる必要が生じる。しかし、2相信号の周波数を下げると回路のコンデンサ容量が大きくなるとともにトランスが大きくなり、信号出力装置10が大型化する。そこで、フォトカプラ151Aと増幅回路161Aとの間及びフォトカプラ151Bと増幅回路161Bとの間に、周波数変換回路を介在させるとよい。これによって、増幅回路161A,161Bとトランスとの間のコンデンサ容量やトランス自体の大型化を防ぎ、信号出力装置10を小型化できる。
【0035】
なお、図3に示すように、安全リレーモジュールやセーフティコントローラ等の外部装置に備えられることのある不一致検出回路3を用いることで、信号検出装置110内の不一致検出回路17を省略することができる。汎用性の高い信号検出装置110を提供できる。
【0036】
また、信号検出回路110の不一致検出回路3を1つのa接点と1つのb接点(以下、1a−1b接点という。)に対応した処理を行うものとすることにより、図3に示すように、非接触安全スイッチ120のように1a−1b接点式の安全機器にも適用することができる。
【0037】
図4は、この発明の別の実施形態に係る信号検出装置210のブロック図である。信号検出装置210は、複数の非常停止スイッチ20に接続される。信号検出装置210は、モニタ回路18を複数備えている。各モニタ回路18は、電流制限抵抗18A、分離回路18B及び出力回路18Cを備えている。
【0038】
複数のモニタ回路18の出力信号に基づいて、複数の非常停止スイッチ20のうちで操作された非常停止スイッチ20を特定することができる。
【0039】
図5は、この発明のさらに別の実施形態に係る信号検出装置310のブロック図である。信号検出装置310は、駆動回路19を備え、安全機器として危険区域内への入出規制用のドアスイッチ220に使用される。駆動回路19は、電流制限抵抗19A、分離回路19B、入力回路19Cを備えている。駆動回路19は、ドアスイッチ220のロック用ソレノイド221に有電圧出力を供給する。なお、駆動回路19は、接点出力を供給するものであってもよい。
【0040】
信号ライン41〜44のそれぞれを各芯のシールド線で構成し、それぞれのシールドを回路グランド端子に接続することにより、接点20Aと接点20Bとの間の短絡だけでなく、接点20A内又は接点20B内の短絡も検出することができる。例えば、図1に示す信号検出回路10で、信号ライン41がシールドに短絡すると非常停止スイッチ20に電流が流れなくなり、信号ライン42がシールドに短絡すると分離回路14Aに電流が流れなくなる。
【0041】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の実施形態に係る信号出力装置のブロック図である。
【図2】同信号出力装置の回路構成の一例を示す回路図である。
【図3】この発明の別の実施形態に係る信号検出装置のブロック図である。
【図4】この発明の別の実施形態に係る信号検出装置のブロック図である。
【図5】この発明のさらに別の実施形態に係る信号検出装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
10−信号検出装置
12−電圧制御回路
13−2相信号生成回路
14A,14B−分離回路
15−信号監視回路
17−不一致検出回路
20−非常停止スイッチ(安全機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2接点式の安全機器に接続される信号出力装置であって、
互いに逆相の2つの反転信号を生成して前記2接点のそれぞれに供給する2相信号生成回路と、
前記2接点のそれぞれからの出力信号に基づいて2つの監視信号を出力する信号監視回路と、
を備えた信号出力装置。
【請求項2】
前記信号監視回路は、前記2接点のそれぞれの出力信号に基づいて駆動される発光素子を備えた第1及び第2のフォトカプラを備え、前記第1のフォトカプラの入力端子及び出力端子をそれぞれ前記第2のフォトカプラの出力端子及び入力端子に接続した請求項1に記載の信号出力装置。
【請求項3】
前記信号監視回路から出力される2つの監視信号が一致するか否かに応じて故障発生の有無を検出する不一致検出回路をさらに備えた請求項2に記載の信号出力装置。
【請求項4】
前記信号監視回路に対する前記2接点の入力ラインのそれぞれに配置される絶縁手段をさらに備えた請求項2又は3に記載の信号出力装置。
【請求項5】
前記絶縁手段は、前記信号監視回路を兼ねる請求項4に記載の信号出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−266038(P2009−266038A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116316(P2008−116316)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】