説明

信号切替装置

【課題】回路構成の簡素化によるコストダウンを実現でき、しかも送受信信号の利得を柔軟に調整できる信号切替装置を実現すること。
【解決手段】この信号切替装置(1)は、共通端子(11a)及び第1の端子(11b)から第3の端子(11d)を有し、第1の端子(11b)から第3の端子(11d)を共通端子(11a)に対して個別に接離可能であると共に、第1の端子(11b)から第3の端子(11d)のうち2端子を同時に共通端子(11a)に接続可能に構成されたスイッチ回路(11)と、入力端が第1の端子(11b)に接続され、出力端が第2の端子(11c)に接続された低雑音アンプ(13)とを具備し、共通端子(11a)を第1の端子(11b)に接続する第1の利得と、第2の端子(11c)に接続する第2の利得と、第1及び第2の端子(11b,11c)に同時接続する第3の利得とに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号切替装置に関し、特に、無線LAN通信装置の送受信部に適用可能な信号切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線LAN通信装置は、アンテナ装置によって受信した受信無線LAN信号を低雑音アンプ(LNA:Low Noise Amplifier)で増幅して取り込む受信回路と、アンテナ装置から送信する送信無線LAN信号を生成する送信回路と、アンテナ装置に対して入出力する受信無線LAN信号と送信無線LAN信号とを切り替える信号切替装置とを備えたものがある。低雑音アンプを有する受信回路においては、受信した無線LAN信号が強入力の場合、低雑音アンプで無線LAN信号が増幅されて歪みが生じ、パケットエラーが増大する傾向がある。受信信号が強入力の場合の信号の歪みの増大を抑制するため、バイパス回路を有する低雑音アンプを備えた高周波回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる高周波回路においては、受信した無線LAN信号が弱入力の場合には、低雑音アンプを介して増幅された無線LAN信号が受信回路に入力され、受信した無線LAN信号が強入力の場合には、バイパス回路により低雑音アンプを介さずに無線LAN信号が受信回路に入力される。これにより、無線LAN信号が弱入力の場合には、無線LAN信号の品質が向上すると共に、無線LAN信号が強入力の場合には、無線LAN信号の増幅に伴う歪みを抑制できるので、パケットエラーの増大を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/129716号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バイパス回路を有する低雑音アンプは、通常の低雑音アンプと比較して高価であり、高周波回路全体のコストアップを招く問題がある。また、バイパス回路を有する低雑音アンプを用いた場合であっても、受信信号が弱入力から強入力に変化した場合には、バイパス回路の切替えに伴う受信信号の利得が大きく変化するため、円滑に信号強度の変化に対応できない問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、回路構成の簡素化によるコストダウンを実現でき、しかも送受信信号の利得を柔軟に調整できる信号切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の信号切替装置は、共通端子及び第1の端子から第3の端子を有し、前記第1の端子から第3の端子を前記共通端子に対して個別に接離可能であると共に、前記第1の端子から第3の端子のうち2端子を同時に前記共通端子に接続可能に構成されたスイッチ回路と、入力端が前記第1の端子に接続され、出力端が前記第2の端子に接続された増幅回路と、を具備し、入力点となる前記共通端子での信号レベルに対する出力点となる前記増幅回路の出力端での利得として、前記第1の端子のみを前記共通端子に接続した場合の第1の利得と、前記第2の端子のみを前記共通端子に接続した場合の第2の利得と、前記第1及び第2の端子を前記共通端子に同時接続した場合の第3の利得とに切り替え可能に構成されたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、受信信号が弱入力の場合には、増幅回路の入力端に接続された第1の端子のみを共通端子に接続することにより、受信信号が増幅された第1の利得となるので、受信信号の品質が向上する。また、受信信号が強入力の場合には、増幅回路の出力端に接続された第2の端子のみを共通端子に接続することにより、受信信号が増幅回路をバイパスする第2の利得となるので、受信信号の増幅に伴う歪みを抑制できる。これにより、バイパス回路を設けずに受信信号の利得を制御できるので、回路構成の簡素化によるコストダウンを実現できる。さらに、受信信号が強入力と弱入力との間の中間入力の場合には、第1の端子及び第2の端子を共通端子に同時接続することにより、受信信号の一部が増幅回路をバイパスする第3の利得となるので、受信信号の利得を柔軟に調整できる。
【0009】
上記信号切替装置において、前記共通端子に入力される入力信号の信号レベルが第1の閾値より低い場合、前記第1の端子のみを前記共通端子に接続し、前記入力信号の信号レベルが第1の閾値より高い第2の閾値を超えている場合、前記第2の端子のみを前記共通端子に接続し、前記入力信号の信号レベルが、第1の閾値と第2の閾値との間の場合、前記第1及び第2の端子を前記共通端子に同時接続してもよい。
【0010】
この構成により、受信信号の信号レベルに応じて、第1の端子及び第2の端子を共通端子に接続するので、受信信号の信号レベルが第1の閾値より低い場合には第1の利得となり受信信号の品質が向上し、受信信号の信号レベルが第2の閾値を超えた場合には、第2の利得となり受信信号の増幅に伴うひずみを抑制できる。さらに、受信信号の信号レベルが第1の閾値と第2の閾値との間の場合には第3の利得となるので、受信信号の利得を柔軟に調整できる。
【0011】
また、上記信号切替装置において、前記共通端子に入力される入力信号の信号レベルが第1の閾値より低い場合、前記第1の端子のみを前記共通端子に接続し、前記入力信号の信号レベルが第1の閾値を超えた場合、前記第1及び第2の端子を前記共通端子に同時接続してから、前記第2の端子のみを前記共通端子に接続してもよい。
【0012】
この構成により、受信信号の信号レベルに応じて、第1の端子及び第2の端子を共通端子に接続するので、受信信号の信号レベルが第1の閾値より低い場合には第1の利得となり受信信号の品質が向上する。また、受信信号の信号レベルが第1の閾値を超えた場合には第3の利得を経て第2の利得となるので、利得を柔軟に調整できると共に受信信号の歪みを低減できる。
【0013】
また本発明の信号切替装置は、共通端子及び第1の端子から第3の端子を有し、前記第1の端子から第3の端子を前記共通端子に対して個別に接離可能であると共に、前記第1の端子から第3の端子のうち2端子を同時に前記共通端子に接続可能に構成されたスイッチ回路と、入力端が前記第1の端子に接続された増幅回路と、一端が前記第2の端子に接続され他端が接地された減衰回路と、を具備し、入力点となる前記共通端子での信号レベルに対する出力点となる前記増幅回路の出力端での利得として、前記第1の端子のみを前記共通端子に接続した場合の利得と、前記第1及び第2の端子を前記共通端子に同時接続した場合の利得とに切り替え可能であることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、受信信号が弱入力の場合には、増幅回路の入力端に接続された第1の端子のみを共通端子に接続することにより、受信信号が増幅されるので、利得が増大して受信信号の品質が向上する。また、受信信号が強入力の場合には、第1の端子及び減衰回路に接続された第2の端子を共通端子に同時接続することにより、受信信号が減衰されるので、利得が減少して受信信号の増幅に伴う歪みを抑制できる。これにより、バイパス回路を設けずに受信信号の利得を制御できるので、回路構成の簡素化によるコストダウンを実現できる。
【0015】
上記信号切替装置において、前記共通端子に入力する入力信号の信号レベルが第1の閾値より低い場合に前記第1の端子のみを前記共通端子に接続し、前記入力信号の信号レベルが第1の閾値より高い場合に前記第1及び第2の端子を前記共通端子に同時接続してもよい。
【0016】
この構成により、受信信号の信号レベルに応じて、第1の端子及び第2の端子を共通端子に接続するので、受信信号の信号レベルが第1の閾値より低い場合には受信信号が増幅されて受信信号の品質が向上する。また、受信の信号レベルが第1の閾値より高い場合には、受信信号が減衰されて受信信号の増幅に伴う歪みを抑制できる。これにより、バイパス回路を設けずに受信信号の利得を制御できるので、回路構成の簡素化によるコストダウンを実現できる。
【0017】
また本発明の信号切替装置は、共通端子及び第1の端子から第3の端子を有し、前記第1の端子から第3の端子を前記共通端子に対して個別に接離可能であると共に、前記第1の端子から第3の端子のうち2端子を同時に前記共通端子に接続可能に構成されたスイッチ回路と、出力端が前記第3の端子に接続された増幅回路と、一端が前記第2の端子に接続され他端が接地された減衰回路と、を具備し、入力点となる前記増幅回路の入力端子での信号レベルに対する出力点となる前記共通端子での利得として、前記第3の端子のみを前記共通端子に接続した場合の利得と、前記第2及び第3の端子を前記共通端子に同時接続した場合の利得とに切り替え可能であることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、送信信号が弱出力の場合には、増幅回路の出力端に接続された第3の端子のみを共通端子に接続することにより、送信信号が減衰されないので、利得が減衰せず、送信信号の品質が向上する。また、送信信号が強出力の場合には、第3の端子及び減衰回路に接続された第2の端子を共通端子に同時接続することにより、送信信号が減衰されるので、利得が減少して送信信号の増幅に伴う歪みを抑制できる。これにより、バイパス回路を設けずに送信信号の利得を制御できるので、回路構成の簡素化によるコストダウンを実現できる。
【0019】
上記信号切替装置において、前記共通端子の接続先となる端子を切り替え制御する制御部と、前記共通端子に接続されたアンテナ装置と、前記第3の端子に接続された送信回路と、前記増幅回路の出力端に接続された受信回路とを備えてもよい。
【0020】
上記信号切替装置において、前記共通端子の接続先となる端子を切り替え制御する制御部と、前記共通端子に接続されたアンテナ装置と、前記第1の端子に接続された受信回路と、前記増幅回路の入力端に接続された送信回路とを備えてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回路構成の簡素化によるコストダウンを実現でき、しかも送受信信号の利得を柔軟に調整できる信号切替装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態に係る信号切替装置の構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る信号切替装置のスイッチ回路切替状態を示す図である。
【図3】低雑音アンプ出力端での信号レベルのシミュレーション結果を示す図である。
【図4】低雑音アンプ出力端での信号レベルのシミュレーション結果を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る信号切替装置の構成図である。
【図6】第2の実施の形態に係る信号切替装置のスイッチ回路切替状態を示す図である。
【図7】第2の実施の形態に係る信号切替装置の減衰量の変化について示す図である。
【図8】第2の実施の形態に係る信号切替装置のスイッチ回路切替状態を示す図である。
【図9】第2の実施の形態に係る信号切替装置の減衰量の変化について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態は、無線LAN通信装置の送受信部に適用され、送信信号と受信信号とを切り替える信号切替装置の例である。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る信号切替装置1の構成図である。図1に示すように、本実施の形態に係る信号切替装置1は、送受信アンテナ装置の給電部に接続されるスイッチ回路11と、スイッチ回路11を制御する制御部として機能すると共に送受回路及び受信回路として機能する無線LAN用IC12との間の受信系統の入力段に接続される増幅回路としての低雑音アンプ13と、を具備する。無線LAN用IC12と信号切替装置1との間の送信系統の出力段にはパワーアンプ14が接続される。
【0026】
スイッチ回路11は、共通端子11a及び第1の端子11bから第3の端子11dを有し、第1の端子11bから第3の端子11dを共通端子11aに対して個別に接離可能であると共に、第1の端子11bから第3の端子11dのうち2端子を同時に共通端子11aに接続可能に構成された3ポートスイッチである。具体的には、スイッチ回路11は、アンテナ端子に接続される共通端子11aと、共通端子11aとの間でオン/オフを切替可能に構成された第1の端子11bから第3の端子11dとを備える。第1の端子11b
には、低雑音アンプ13の入力端が接続される。第2の端子11cには、低雑音アンプ13の出力端が接続される共に、無線LAN用IC12の受信系統が接続される。第3の端子11dには、送信系統のパワーアンプ14の出力端が接続される。パワーアンプ14の入力端は、無線LAN用IC12の送信系統が接続される。
【0027】
本実施の形態では、無線LAN用IC12は、アンテナ端子ATTから入力する受信信号の信号レベルに応じて、共通端子11aと第1の端子11bから第3の端子11dとの間の接続状態を切替えることにより、入力点となる共通端子11aに対する出力点となる低雑音アンプ13の出力端での利得を切替える。無線LAN用IC12は、受信電界強度(RSSI:Receive Signal Strength Indicator)に相当する信号(以下、単に受信信号という)の信号レベルが第1の閾値より低い弱入力の場合には、第1の端子11bのみを共通端子11aに接続する第1の接続状態に切替える。また、無線LAN用IC12は、受信信号の信号レベルが第1の閾値と第2の閾値との間の中間入力の場合には、第1の端子11b及び第2の端子11cを同時に共通端子に接続する第2の接続状態に切替える。さらに、無線LAN用IC12は、受信信号の信号レベルが第2の閾値を超えている場合には、第2の端子11cのみを共通端子11aに接続する第3の接続状態に切替える。なお、無線LAN用IC12は、受信信号の信号レベルが第1の閾値を超えたら、第1の端子11b及び第2の端子11cを共通端子11aに同時接続する第2の接続状態に切替え、その後に第2の端子11cを共通端子11aに接続する第3の接続状態に切替えるようにしても良い。
【0028】
低雑音アンプ13は、入力端が第1の端子11bに接続され、出力端が第2の端子11cに接続される。低雑音アンプ13は、特定帯域(例えば、2.4GHz帯)の高周波信号を所定の利得(例えば、15dBm)で増幅するように構成され、スイッチ回路11の第1の端子11bから出力された受信信号を増幅して無線LAN用IC12に出力する。本実施の形態においては、第1の接続状態では、第1の端子11bのみに受信信号が入力されるので、低雑音アンプ13にすべての受信信号が入力されて増幅される。このときの利得を第1の利得とする。また、第3の接続状態では、第2の端子11cのみに受信信号が入力され、低雑音アンプ13をバイパスして無線LAN用IC12に出力されるので、受信信号は増幅されない。このときの利得を第2の利得とする。また、第2の接続状態では、受信信号が第1の端子11b及び第2の端子11cへ分岐して並列に入力されるので、第1の端子11bから出力された受信信号の一部が低雑音アンプ13で増幅されるが、第2の端子11cへ分岐した一部の受信信号が増幅されずに低雑音アンプ13の出力端で合成されるので、ミスマッチによるロスが発生する。このミスマッチロスにより信号レベルが低下した受信信号の利得は、第1の接続状態における第1の利得より小さく、第3の接続状態における第2の利得より大きい第3の利得を示す。
【0029】
無線LAN用IC12は、受信電界強度を検出するRSSI回路21と、プログラマブルI/O22と、受信回路を構成する受信側ベースバンド信号処理部23と、送信回路を構成する送信側ベースバンド信号処理部24及びミキサ25とを含んで構成される。
【0030】
RSSI回路21は、アンテナ端子ATTから入力する受信信号のRSSIを測定して信号レベルを検出する。また、RSSI回路21は、受信信号の信号レベル情報をプログラマブルI/O22に出力する。
【0031】
プログラマブルI/O22は、受信信号の信号レベルに応じて任意の機能が割り当てられた複数のI/Oポートを備える。プログラマブルI/O22は、受信信号の信号レベルに応じて各I/Oポートを介してスイッチ回路11に切替制御信号を出力する。本実施の形態では、プログラマブルI/O23は、受信信号の信号レベルが第1の閾値より低い弱入力の領域(例えば、−70dBm以下)では、第1の接続状態に切替える切替制御信号を出力し、受信信号の信号レベルが第2の閾値より高い強入力の領域(例えば、−20dBm以上)では、第3の接続状態に切替える切替制御信号を出力する。また、プログラマブルI/O23は、受信信号の信号レベルが第1の閾値と第2の閾値との間の中間入力の領域では、第2の接続状態に切替える切替制御信号を出力する。
【0032】
受信側ベースバンド信号処理部23は、受信用フィルタ、D/Aコンバータ及び復調回路等を有し、受信データのデータ復調を行う。送信側ベースバンド信号処理部24は、送信用フィルタ、A/Dコンバータ及び変調回路等を有し、符号化、及びフレーム化された送信データをRF送信信号として送出する。ミキサ回路25は、送信側ベースバンド信号処理部24から出力されたRF送信信号を特定周波数(例えば、2.4GHz帯)に周波数変換してパワーアンプ14に出力する。パワーアンプ14は、送信信号を増幅してスイッチ回路11に出力する。
【0033】
次に、以上のように構成された信号切替装置1の動作について説明する。
図2Aに、受信信号が弱入力の場合(例えば、−70dBm)の信号切替装置1のスイッチ回路切替状態を示す。RSSI回路21は、アンテナ端子ATTで受信した受信信号の信号レベルに応じたポート切替信号をプログラマブルI/O22に出力する。プログラマブルI/O22は、ポート切替信号に応じて第1の接続状態への切替制御信号をスイッチ回路11に出力する。スイッチ回路11は、切替制御信号に応じて、共通端子11aと第1の端子11bとを接続する。
【0034】
アンテナ端子ATTからスイッチ回路11に入力した受信信号は、第1の端子11bを介して低雑音アンプ13に出力され、低雑音アンプ13で増幅(例えば、−55dBmに)される。増幅された受信信号は、無線LAN用IC12の受信側ベースバンド信号処理部23に出力される。受信側ベースバンド信号処理部23では、受信信号の受信データのデー復調が行われる。
【0035】
図2Bに、受信信号が強入力の場合(例えば、−20dBm)の信号切替装置1のスイッチ回路切替状態を示す。RSSI回路21は、アンテナ端子ATTで受信した受信信号の信号レベルに応じたポート切替信号をプログラマブルI/O22に出力する。プログラマブルI/O22は、ポート切替信号に応じて第3の接続状態への切替制御信号をスイッチ回路11に出力する。スイッチ回路11は、切替制御信号に応じて、共通端子11aと第2の端子11cとを接続する。
【0036】
アンテナ端子ATTからスイッチ回路11に入力した受信信号は、第2の端子11cから、低雑音アンプ13を介さずに、低雑音アンプ13の出力端となる受信側ベースバンド信号処理部23の受信系統に出力される。受信側ベースバンド信号処理部23では、受信信号の受信データのデータ復調が行われる。
【0037】
図2Cに、受信信号が中間入力の場合(例えば、−40dBm)の信号切替装置1のスイッチ回路切替状態を示す。RSSI回路21は、アンテナ端子ATTで受信した受信信号の信号レベルに応じたポート切替信号をプログラマブルI/O22に出力する。プログラマブルI/O22は、ポート切替信号に応じて第2の接続状態への切替制御信号をスイッチ回路11に出力する。スイッチ回路11は、切替制御信号に応じて、共通端子11aと第1の端子11b及び第2の端子11cとを共に接続する。
【0038】
アンテナ端子からスイッチ回路11入力した受信信号は、一部の受信信号が第2の端子11cを介して低雑音アンプ13をバイパスすると共に、一部の受信信号が第1の端子11bを介して低雑音アンプ13に入力して増幅される。ここで、第2の接続状態では、低雑音アンプ13を介して増幅された一部の受信信号(例えば、−25dBm)と、低雑音アンプ13を介さずに第2の端子11cから出力された一部の受信信号(例えば、−40dBm)とが合成されるので、ミスマッチが発生してゲインロスする。このゲインロスによって、低雑音アンプ13の出力端での合成後の受信信号の信号レベルは低下する(例えば、−30dBm)。すなわち、第1の接続状態の利得よりも小さく、第3の接続状態の利得よりも大きい利得が提供される。かかる利得で増幅された受信信号が無線LAN用IC12に入力する。受信側ベースバンド信号処理部23では、受信信号の受信データのデータ復調が行われる。
【0039】
ここで、図3及び図4Aを参照して、第1の接続状態から、第2の接続状態を経由せずに、第3の接続状態へ直接切り替えた場合の低雑音アンプ13出力端での信号レベルのシミュレーション結果を示す。共通端子11aの信号レベルは−100dBmから0dBmに掛けてリニアに上昇するものとする。また、信号レベルは−100dBmから−25dBmまでは第1の接続状態を維持し、信号レベルが−25dBmを超えた時点で第1の接続状態から第2の接続状態へ直接切り替えている。低雑音アンプ13の利得は10dBである。
【0040】
図3に示すように、スイッチ回路11の共通端子11aに第1の端子11bだけが接続される第1の接続状態では、入力信号が10dBで増幅されて出力される。信号レベルが−25dBmを超えた時点で、スイッチ回路11の共通端子11aに第2の端子11cだけが接続される第2の接続状態に直接切り替えられているが、第2の接続状態では低雑音アンプ13を完全にバイパスするので、低雑音アンプ13による10dBの増幅が無くなり、低雑音アンプ13出力端での信号レベルは共通端子11aの入力信号レベルまで下がる(例えば、−25dBm)。すなわち、入力点となる共通端子11aの信号レベルに対して出力点となる低雑音アンプ13の出力端での利得が、第1の接続状態での利得から第2の接続状態での利得へ直接切り替えられる。
【0041】
図4Bは、第1の接続状態から、第2の接続状態を経由して、第3の接続状態へ切り替えた場合の低雑音アンプ13出力端での信号レベルのシミュレーション結果を示す。図4Bに示すように、第1の接続状態においては、低雑音アンプ13により共通端子11aでの信号レベルに対して10dBの利得で増幅される。そして、受信信号の信号レベルが第2の閾値(−55dBm)を超えた時点で、第2の接続状態に切替えられる。第2の接続状態においては、共通端子11aに対して第1の端子11b及び第2の端子11cが同時に接続されるので、受信信号の一部が低雑音アンプ13に入力して10dBの利得で増幅される一方、第2の端子11cに入力した受信信号が増幅されずに低雑音アンプ13の出力端に印加され、利得の異なる2系統の受信信号の合成によってマッチングロスが生じて信号レベルが低下する(例えば、5dBの低下)。このため、第2の閾値の近傍では、第1の接続状態から第2の接続状態への切替えに伴って信号レベルが5dBだけ低下する。第2の接続状態での利得は、第2の接続状態での利得(10dB)よりもマッチングロスだけ小さい利得であるということができる。
【0042】
また、受信信号の信号レベルが上昇して第1の閾値(−25dBm)を超えた場合、第3の接続状態に切替えられる。第3の接続状態においては、共通端子11aに対して第2の端子11cだけが接続され、受信信号が低雑音アンプ13をバイパスして無線LAN用IC12に入力されるので、無線LAN用IC12の入力信号レベルが受信信号の信号レベルと同一となる。このため、第1の閾値の近傍では、第2の接続状態での利得から第3の接続状態での利得(0dB)に変化し、この利得変化に伴って信号レベルが例えば10dB変化する。
【0043】
このように、本実施の形態に係る信号切替装置1においては、第2の接続状態を介して第1の接続状態から第3の接続状態に切替えることにより、受信電界強度に応じて第1の接続状態から第3に接続状態(バイパスのみ)に切り替える過程で、中間の利得となる第2の接続状態機を経由するので、受信信号が弱入力から強入力に変化した場合においても、出力信号の信号レベルの変動を小さくでき、柔軟に出力信号の利得を調整することが可能となる。
【0044】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る信号切替装置1によれば、受信信号と送信信号とを切り替えるスイッチ回路に共通端子11a及び第1の端子11bから第3の端子11dを有するスイッチ回路11を設け、第2の端子11cを利用して低雑音アンプ13をバイパスする経路を構成可能にしたので、低雑音アンプ13にバイパス回路を備える必要が無くなり、コストダウンを図ることができる。また、共通端子11aに対して第1の端子11b及び第2の端子11cを同時接続する第2の接続状態で中間の利得を実現し、受信信号の信号レベルが弱入力から強入力に変化する場合においても、無線LAN用IC12に入力される信号の信号レベル変化を抑制することが可能となる。
【0045】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る信号切替装置2について説明する。なお、以下の説明においては、第1の実施の形態に係る信号切替装置1と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明の重複を避ける。本発明の第2の実施の形態は、無線LAN通信装置の送受信部に適用され、送信信号と受信信号とを切り替える信号切替装置の例である。
【0046】
図5は、本実施の形態に係る信号切替装置2の構成図である。本実施の形態に係る信号切替装置2においては、スイッチ回路11の第2の端子11cが減衰回路としての抵抗素子31を介してグラウンドに接地される。抵抗素子31は、一端が第2の端子11cに接続され、他端がグラウンドに接続される。
【0047】
スイッチ回路11は、受信信号の信号レベルが所定の第1の閾値以下の場合には、共通端子11aを第1の端子11bに接続する第1の接続状態に切替える。また、スイッチ回路11は、受信信号の信号レベルが所定の第1の閾値より大きい場合には、共通端子11aを第1の端子11b及び第2の端子11cに共に接続する第2の接続状態に切替える。
【0048】
抵抗素子31は、スイッチ回路11によって第2の接続状態に切替えられた場合に終端抵抗として機能する。本実施の形態では、受信信号の信号レベルが所定の閾値以上となる強入力の場合には第2の接続状態に切り替えられ、抵抗素子31が受信信号の信号レベルを減衰する減衰回路として機能し、受信信号の歪みを低減する。なお、受信信号の信号レベルの減衰量は、抵抗素子31の抵抗値を調整することにより、適宜変更することが可能である。
【0049】
本実施の形態では、無線LAN用IC12は、アンテナ端子ATTから入力する受信信号の信号レベルに応じて、共通端子11aと第1の端子11bから第3の端子11dとの間の接続状態を切替える。無線LAN用IC12は、受信信号の信号レベルが第1の閾値より低い弱入力の場合には、第1の端子11bのみを共通端子11aに接続する第1の接続状態に切替え(図6A参照)、受信信号の信号レベルが第1の閾値を超える強入力の場合には、第1の端子11b及び第2の端子11cを共通端子に同時接続する第2の接続状態に切替える(図6B参照)。
【0050】
本実施の形態では、第1の接続状態では、第1の端子11bのみに受信信号が入力されるので、低雑音アンプ13にすべての受信信号が入力されて増幅される。また、第2の接続状態では、低雑音アンプ13の入力端とグラウンドとの間に抵抗素子31が接続された回路構成となるので、受信信号の信号レベルが抵抗素子31により減衰される。このように、無線LAN用IC12は、受信信号の信号レベルに応じて、第1の端子11bのみを共通端子11aに接続した第1の接続状態における利得と、第1の端子11b及び第2の接続端子11cを共通端子11aに同時接続した第2の接続状態における利得とに切替えて、低雑音アンプ13による歪みを防止できる。
【0051】
図7は、第1の接続状態と第2の接続状態での減衰量の変化について示している。なお、図7においては、横軸に共通端子11aにおける受信信号の信号レベルを示し、縦軸に低雑音アンプ13出力端での信号レベル(左縦軸)及び減衰量(右縦軸)を示している。
【0052】
図7に示すように、受信信号が弱入力となる第1の接続状態では、受信系統から抵抗素子31が切り離されているので、低雑音アンプ13で10dBだけ増幅された信号が出力される。一方、受信信号が所定の閾値(例えば、−25dBm)を超える第2の接続状態では、共通端子11aに対して第1及び第2の端子11b、11cが同時接続されるため、抵抗素子31によって減衰作用を受けて減衰(例えば、6dB)されるため、第1の接続状態における受信信号の利得に対して第2の接続状態の受信信号の利得が小さくなる。
【0053】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る信号切替装置2によれば、共通端子11a及び第1の端子11bから第3の端子11dを有するスイッチ回路11を備え、抵抗素子31を介してスイッチ回路11の第2の端子11cを接地したので、第2の接続状態では、受信信号の信号レベルを減衰させることが可能となる。このため、受信信号の信号強度に応じて第1の接続状態と第2の接続状態とを切替えることにより、簡素な回路構成で受信信号の利得を柔軟に切替えることが可能となる。
【0054】
なお、上記第2の実施の形態に係る信号切替装置2においては、アンテナ端子から入力する受信信号の利得を切替える構成について説明したが、無線LAN用IC12の送信側ベースバンド信号処理部24から送信される送信信号の利得を切替えることも可能である。
【0055】
図8A、図8Bに送信信号の利得を切替える信号切替装置の一例を示す。同図に示す信号切替装置3は、スイッチ回路11と、出力端が第3の端子11dに接続された増幅回路としてのパワーアンプ14と具備する。送信信号の利得を切替える場合、無線LAN用IC12は、パワーアンプ14の入力端子における送信信号の信号レベルに応じて、共通端子11aと第1の端子11cから第3の端子11dとの間の接続状態を切替えることにより、送信信号の入力点となるパワーアンプ14の入力端での信号レベルに対する送信信号の出力点となる共通端子11aでの利得を切替えることができる。無線LAN用IC12は、パワーアンプ14の入力点における送信信号の信号レベルが所定の閾値より小さい場合には、第3の端子11dのみを共通端子11aに接続する第1の接続状態に切替える(図8A参照)。また、無線LAN用IC12は、送信信号の信号レベルが所定の閾値より大きい場合には、第2の端子11c及び第3の端子11dを共通端子11aに同時接続する第2の接続状態に切替える(図8B参照)。
【0056】
本実施の形態では、第1の接続状態では、パワーアンプ14の出力端に抵抗素子31が接続されない状態であるので、減衰されずに送信信号が出力される。また、第2の接続状態では、パワーアンプ14の出力端に抵抗素子31が接続されるので、送信信号が抵抗素子31で減衰されて出力される。
【0057】
図9は、第1の接続状態と第2の接続状態での減衰量の変化について示している。なお、図9においては、横軸にパワーアンプ14入力端における送信信号の信号レベルを示し、縦軸に共通端子11aでの信号レベル(左縦軸)及び減衰値(右縦軸)を示している。図9に示すように、送信信号が弱出力となる第1の接続状態では、送信系統から抵抗素子31が切り離されているので、パワーアンプ14で10dBだけ増幅された信号が出力される。一方、送信信号が所定の閾値(例えば、−25dBm)を超え強出力となる第2の接続状態では、共通端子11aに対して第2及び第3の端子11c,11dが同時接続されるため、抵抗素子31によって減衰作用を受けて減衰(例えば、6dB)されるため、第1の接続状態における送信信号の利得に対して第2の接続状態の送信信号の利得が小さくなる。
【0058】
このように、本発明の第2の実施の形態に係る信号切替装置3によれば、第2の端子11cを利用して送信信号を減衰する減衰回路としての抵抗素子31を設けたので、特別に減衰回路を設けることなく送信信号の減衰も可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている回路構成などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、回路構成の簡素化によるコストダウンを実現でき、しかも送受信信号の利得を柔軟に調整できるという効果を有し、特に、無線LAN通信機器の送受信回路に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1、2、3 信号切替装置
11 スイッチ回路
11a 共通端子
11b 第1の端子
11c 第2の端子
11d 第3の端子
12 無線LAN用IC
13 低雑音アンプ
14 パワーアンプ
21 RSSI回路
22 プログラマブルI/O
23 受信側ベースバンド信号処理部
24 送信側ベースバンド信号処理部
25 ミキサ
31 抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通端子及び第1の端子から第3の端子を有し、前記第1の端子から第3の端子を前記共通端子に対して個別に接離可能であると共に、前記第1の端子から第3の端子のうち2端子を同時に前記共通端子に接続可能に構成されたスイッチ回路と、
入力端が前記第1の端子に接続され、出力端が前記第2の端子に接続された増幅回路と、を具備し、
入力点となる前記共通端子での信号レベルに対する出力点となる前記増幅回路の出力端での利得として、前記第1の端子のみを前記共通端子に接続した場合の第1の利得と、前記第2の端子のみを前記共通端子に接続した場合の第2の利得と、前記第1及び第2の端子を前記共通端子に同時接続した場合の第3の利得とに切り替え可能に構成されたことを特徴とする信号切替装置。
【請求項2】
前記共通端子に入力される入力信号の信号レベルが第1の閾値より低い場合、前記第1の端子のみを前記共通端子に接続し、前記入力信号の信号レベルが第1の閾値より高い第2の閾値を超えている場合、前記第2の端子のみを前記共通端子に接続し、前記入力信号の信号レベルが、第1の閾値と第2の閾値との間の場合、前記第1及び第2の端子を前記共通端子に同時接続することを特徴とする請求項1記載の信号切替装置。
【請求項3】
前記共通端子に入力される入力信号の信号レベルが第1の閾値より低い場合、前記第1の端子のみを前記共通端子に接続し、前記入力信号の信号レベルが第1の閾値を超えた場合、前記第1及び第2の端子を前記共通端子に同時接続してから、前記第2の端子のみを前記共通端子に接続することを特徴とする請求項1記載の信号切替装置。
【請求項4】
共通端子及び第1の端子から第3の端子を有し、前記第1の端子から第3の端子を前記共通端子に対して個別に接離可能であると共に、前記第1の端子から第3の端子のうち2端子を同時に前記共通端子に接続可能に構成されたスイッチ回路と、
入力端が前記第1の端子に接続された増幅回路と、
一端が前記第2の端子に接続され他端が接地された減衰回路と、を具備し、
入力点となる前記共通端子での信号レベルに対する出力点となる前記増幅回路の出力端での利得として、前記第1の端子のみを前記共通端子に接続した場合の利得と、前記第1及び第2の端子を前記共通端子に同時接続した場合の利得とに切り替え可能であることを特徴とする信号切替装置。
【請求項5】
前記共通端子に入力する入力信号の信号レベルが第1の閾値より低い場合に前記第1の端子のみを前記共通端子に接続し、前記入力信号の信号レベルが第1の閾値より高い場合に前記第1及び第2の端子を前記共通端子に同時接続することを特徴とする請求項4記載の信号切替装置。
【請求項6】
共通端子及び第1の端子から第3の端子を有し、前記第1の端子から第3の端子を前記共通端子に対して個別に接離可能であると共に、前記第1の端子から第3の端子のうち2端子を同時に前記共通端子に接続可能に構成されたスイッチ回路と、
出力端が前記第3の端子に接続された増幅回路と、
一端が前記第2の端子に接続され他端が接地された減衰回路と、を具備し、
入力点となる前記増幅回路の入力端子での信号レベルに対する出力点となる前記共通端子での利得として、前記第3の端子のみを前記共通端子に接続した場合の利得と、前記第2及び第3の端子を前記共通端子に同時接続した場合の利得とに切り替え可能であることを特徴とする信号切替装置。
【請求項7】
前記共通端子の接続先となる端子を切り替え制御する制御部と、前記共通端子に接続されたアンテナ装置と、前記第3の端子に接続された送信回路と、前記増幅回路の出力端に接続された受信回路とを備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の信号切替装置。
【請求項8】
前記共通端子の接続先となる端子を切り替え制御する制御部と、前記共通端子に接続されたアンテナ装置と、前記第1の端子に接続された受信回路と、前記増幅回路の入力端に接続された送信回路とを備えたことを特徴とする請求項6記載の信号切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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