説明

信号制御システム

【課題】 1つの検出装置により、歩行者および車両を効率よく検出して、適正に信号機を制御することのできる信号制御システムを提供する。
【解決手段】 横断歩道2の画像を取得するためのカメラ4と、横断歩道2に設置される信号機の点灯を制御する信号制御装置6と、信号制御装置6から送られる灯色情報に基づいて検出対象を選択する検出対象選択部10と、検出対象選択部10により歩行者が選択された場合にカメラ4の画像から歩行者を検出する歩行者検出部11と、検出対象選択部10により車両が選択された場合に、カメラ4の画像から車両を検出する車両検出部12とからなる画像処理部9を備えた検出装置5と、検出装置5による歩行者または車両の検出結果に基づいて歩行者用信号機3の点灯を制御する信号制御装置6と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号制御システムに係り、特に、1つの検出装置により、歩行者および車両を効率よく検出して、適正に信号機を制御することを可能とした信号制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、横断歩道に設置される歩行者用信号機においては、横断歩道を渡る歩行者の有無にかかわらず、ある決められた固定秒数で青色または赤色の点灯を切り換え表示するようになっている。
【0003】
しかしながら、これでは横断歩道に歩行者がいない場合でも歩行者用信号機が青色点灯されてしまったり、あるいは歩行者がまだ横断歩道を渡っている途中に歩行者用信号機が赤色点灯されてしまうといった不都合が生じうる。そのため、従来から、横断歩道に歩行者検出装置を設け、この歩行者検出装置により、横断歩道内の歩行者を検出することで、歩行者用信号機の制御を行うシステムが開発されている。
【0004】
一方、横断歩道が設置された道路を車両が走行する車両を検出する車両検出装置を設置し、車両検出装置により、道路を走行する車両を検出することで、歩行者用信号機あるいは車両用信号機の制御をすることが行われている。
【0005】
このような歩行者を検出する技術として、従来、横断歩道を横断する歩行者の画像を取得するためのカメラと、歩行者のうち計測領域における最後尾に位置する歩行者を検出しこの最後尾の歩行者の位置情報および速度から横断予測時間を算出する歩行者検知装置と、歩行者検知装置による横断予測時間に基づいて歩行者用信号機の点灯を制御する信号制御装置と、を備えた技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、車両を検出する技術として、従来、計測エリアの画像を撮影する撮像部と、撮像部で撮影されたアナログ画像データをデジタル信号に変換するA/D変換部と、デジタル信号に変換された信号を多値階調データとして格納する多値メモリ部と、多値メモリ部のデータを所定のフレーム単位に取り出し、その画像から影や周辺の不要部分を取り除く画像処理を行い車両を検出する車両検出部と、車両と検出された位置から所定の位置までの距離と時間から車両の速度を計測する速度計測部と、計測した車両の位置と速度を信号制御部に出力する速度出力部とを備えた技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−250756号公報
【特許文献1】特開2003−217082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1および特許文献2に記載の技術は、それぞれ歩行者専用の検出装置および車両専用の検出装置に関する技術であり、歩行者および車両の両方の対象物について検出を行おうとすると、歩行者用検出装置と車両用検出装置とをそれぞれ個別に設置する必要があるという問題を有している。そのため、設備に多くの無駄が生じ、設備コストが高くなってしまうという問題を有している。近年においては、1つの検出装置により、効率よく歩行者および車両を検出することが望まれている。
【0009】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、1つの検出装置により、歩行者および車両を効率よく検出して、適正に信号機を制御することのできる信号制御システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係る信号制御システムは、横断歩道部分の画像を取得するためのカメラと、
前記信号機の点灯状態に基づいて検出対象を選択する検出対象選択部と、前記検出対象選択部により歩行者が選択された場合に、前記カメラの画像から歩行者を検出する歩行者検出部と、前記検出対象選択部により車両が選択された場合に、前記カメラの画像から車両を検出する車両検出部とからなる画像処理部を備えた検出装置と、
前記検出装置による歩行者または車両の検出結果に基づいて前記歩行者用信号機の点灯を制御する信号制御装置と、
を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記検出対象選択部は、前記信号制御装置から送られる灯色情報に基づいて前記信号機の点灯状態を検出して検出対象を選択することを特徴とする請求項1に記載の信号制御システム。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記検出対象選択部は、前記カメラの画像に基づいて前記信号機の点灯状態を検出して検出対象を選択することを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記信号機は、歩行者用信号機であり、前記カメラは、前記歩行者用信号機に内蔵されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項において、前記検出装置は、前記カメラから送られる画像から横断歩道を自動的に検出し、横断歩道に対応する計測領域をあらかじめ設定するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、対象画像選択部により、信号機の点灯状態に基づいて検出対象となる歩行者または車両を選択し、選択された対象に応じて、歩行者検出部により歩行者を検出するか、車両検出部により車両を検出するようにしているので、1つの検出装置により、歩行者または車両を適正に検出することができる。しかも、信号制御装置の灯色情報に基づいて、対象画像選択部により選択された歩行者または車両を検出すればよいので、歩行者と車両とが混在する画像から歩行者または車両を検出する場合に比較して、対象の抽出が容易であり、検出システムを簡単に構成することができ、処理動作も迅速に行うことができる。さらに、1つの検出装置で歩行者および車両の検出を行うことができるので、装置の設置コストを低減させることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、検出対象選択部により、信号制御装置から送られる灯色情報に基づいて信号機の点灯状態を検出して検出対象を選択するようにしているので、適正に検出対象を選択することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、検出対象選択部により、カメラの画像に基づいて信号機の点灯状態を検出して検出対象を選択するようにしているので、適正に検出対象を選択することができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、信号機を歩行者用信号機とし、カメラを歩行者用信号機に内蔵するようにしているので、カメラの設置場所が制限されることがなく、カメラの設置を容易に行うことができる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、検出装置によりカメラから送られる画像から横断歩道を自動的に検出し、横断歩道に対応する計測領域をあらかじめ設定するようにしているので、カメラによる画像に基づいて逐次計測領域を手動で設定する必要がなく、カメラの設置作業が容易であり、かつ、システムの設定も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る信号制御システムの実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係る信号制御システムの実施形態における制御構成を示すブロック図である。
【図3】図3(a)、(b)、(c)は本発明に係る信号制御システムの実施形態における横断歩道の抽出動作を示すそれぞれ説明図である。
【図4】本発明に係る信号制御システムの実施形態の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本発明に係る信号制御システムの実施形態を示す概略図である。図1に示すように、道路1には、横断歩道2を挟んで対向するように歩行者用信号機3が設置されている。この歩行者用信号機3のうち、一方の歩行者用信号機3には、横断歩道2を横断する歩行者または道路1を走行する車両の画像を取得するためのカメラ4が内蔵されている。
【0023】
また、カメラ4には、このカメラ4により取得される画像から横断歩道2を渡る歩行者を検出するとともに、道路1を走行して横断歩道2を通過する車両を検出するための検出装置5が接続されている。この検出装置5には、歩行者用信号機3の制御を行う信号制御装置6が接続されている。そして、各カメラ4、検出装置5および信号制御装置6により信号制御システムが構成されるようになっている。
【0024】
図2は本発明に係る信号制御システムの実施形態を示すブロック図である。図2に示すように、検出装置5は、カメラ4による画像を入力する画像入力部7を備えており、この画像入力部7により入力された画像は、メモリ8に一時的に記憶されるように構成されている。
【0025】
また、検出装置5は、画像入力部7から入力された画像を処理する画像処理部9を備えている。また、画像処理部9には、この信号制御装置6により制御されている灯色情報が送られるように構成されており、画像処理部9は、信号制御装置6から出力される灯色情報に基づいて検出すべき対象が歩行者であるか、車両であるかを選択する検出対象選択部10を備えている。すなわち、歩行者用信号機3が青の場合は、歩行者が横断歩道2を渡ることができることになるので、検出すべき対象は、歩行者となる。一方、歩行者用信号機3が赤の場合は、歩行者が横断歩道2を渡ることができず、車両が走行することになるので、検出すべき対象は車両となる。このように検出対象選択部10は、信号制御装置6から送られる灯色情報が青であるか赤であるによって検出すべき対象を選択するようになっている。
【0026】
また、検出装置5は、画像入力部7から入力された画像を処理する画像処理部9を備えている。そして、画像処理部9は、検出画像選択部により選択された検出画像が歩行者であった場合に、画像入力部7から入力される画像に基づいて歩行者を検出する歩行者検出部11を備えており、画像処理部9は、検出画像選択部により選択された検出画像が車両であった場合に、画像入力部7から入力される画像に基づいて車両を検出する車両検出部12を備えている。
【0027】
画像処理部9の歩行者検出部11および車両検出部12は、カメラ4から送られる画像のうち横断歩道2を自動的に検出し、横断歩道2に対応する計測領域をあらかじめ設定することができるようになっている。この横断歩道2の自動検出手段としては、例えば、図3(a)に示すように、まず、カメラ4が設置された高さ、画角、俯角などの設置条件をあらかじめ取得しておき、画像内における各座標の実距離を算出する。続いて、画像内の白線部分を抽出して2値化した後、図3(b)に示すように、この2値化画像について実距離30cm四方の領域を膨張するとともに、図3(c)に示すように、再び縮退することにより得られた台形部分を横断歩道2に対応する計測領域とするものである。
【0028】
そして、歩行者検出部11は、例えば、パターン認識などにより、計測領域における歩行者を検出することにより、横断歩道2を渡る歩行者の有無を検出することができるものである。同様に、車両検出部12も、例えば、パターン認識などにより、計測領域における車両を検出することにより、横断歩道2を通過する車両の有無を検出することができるものである。
【0029】
次に、本実施形態の作用について図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0030】
まず、本実施形態においては、カメラ4により撮影された画像は、画像入力部7を介して画像処理部9に入力されるとともに(ST1)、所定のメモリ8に記憶される。
【0031】
画像処理部9は、カメラ4から送られる画像のうち横断歩道2を自動的に検出し、横断歩道2に対応する計測領域を設定して(ST2)、画像処理部9により画像処理を開始する(ST3)。
【0032】
一方、検出対象選択部10は、信号制御装置6から送られる灯色情報に基づいて、歩行者用信号機3が青の場合は、検出すべき対象画像を歩行者とし、歩行者用信号機3が赤の場合は、検出すべき対象画像を車両とする(ST4)。
【0033】
そして、検出対象選択部10により、対象画像として歩行者が選択された場合は、画像処理部9の歩行者検出部11により、カメラ4により撮影された画像の計測領域から歩行者を抽出し、歩行者の有無を検出する(ST5)。一方、検出対象選択部10により、対象画像として車両が選択された場合は、画像処理部9の車両検出部12により、画像の計測領域から車両を抽出し、車両の有無を検出する(ST6)。
【0034】
この歩行者の検出結果または車両の検出結果は、信号制御装置6に出力され(ST7)、信号制御装置6は、歩行者または車両の有無の基づいて歩行者用信号機3の青色点灯あるいは点滅または赤色点灯などの点灯制御を行う。
【0035】
以上述べたように本実施形態においては、信号制御装置6から送られる灯色情報に基づいて、検出対象選択部10により、検出する対象となる歩行者または車両を選択し、選択された対象に応じて、歩行者検出部11により歩行者を検出するか、車両検出部12により車両を検出するようにしているので、1つの検出装置5により、歩行者または車両を適正に検出することができる。しかも、信号制御装置6の灯色情報に基づいて、検出対象選択部10により選択された歩行者または車両を検出すればよいので、歩行者と車両とが混在する画像から歩行者または車両を検出する場合に比較して、対象の抽出が容易であり、検出システムを簡単に構成することができ、処理動作も迅速に行うことができる。さらに、1つの検出装置5で歩行者および車両の検出を行うことができるので、装置の設置コストを低減させることができる。
【0036】
さらに、画像処理部9により、カメラ4の設置位置に応じて、カメラ4から送られる画像のうち横断歩道2を自動的に検出し、横断歩道2に対応する計測領域をあらかじめ設定するようにしており、カメラ4による画像に基づいて逐次計測領域を手動で設定する必要がないので、カメラ4の設置作業が容易であり、かつ、システムの設定も容易となる。
【0037】
なお、前記実施形態においては、信号制御装置6からの灯色情報に基づいて、検出対象を歩行者であるか車両であるか選択するようにしたが、例えば、カメラ4による撮影画像に基づいて、横断歩道2を挟んで対向する歩行者用信号機3の点灯状態を検出することにより、画像処理部9により歩行者用信号機3が青であるか、赤であるかを判断するようにしてもよい。
【0038】
また、検出装置5により検出された歩行者または車両の情報を、中央の管理システムに送信することができるようにしてもよく、このように構成することにより、中央の管理システムにおいて、歩行者の通行量、車両の通行量などの情報収集を行うことが可能となる。
【0039】
さらに、前記実施形態においては、歩行者用信号機3を用いた場合について説明したが、例えば、車両用信号機にカメラ4を設置して、このカメラ4により撮影された画像に基づいて、歩行者または車両を検出するようにしてもよい。この場合は、車両用信号機が赤の場合は歩行者を検出対象として選択し、車両用信号機が青の場合は車両を検出対象として選択するようにすればよい。
【0040】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 道路
2 横断歩道
3 歩行者用信号機
4 カメラ
5 検出装置
6 信号制御装置
7 画像入力部
8 メモリ
9 画像処理部
10 検出対象選択部
11 歩行者検出部
12 車両検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断歩道部分の画像を取得するためのカメラと、
前記信号機の点灯状態に基づいて検出対象を選択する検出対象選択部と、前記検出対象選択部により歩行者が選択された場合に、前記カメラの画像から歩行者を検出する歩行者検出部と、前記検出対象選択部により車両が選択された場合に、前記カメラの画像から車両を検出する車両検出部とからなる画像処理部を備えた検出装置と、
前記検出装置による歩行者または車両の検出結果に基づいて前記歩行者用信号機の点灯を制御する信号制御装置と、
を備えていることを特徴とする信号制御システム。
【請求項2】
前記検出対象選択部は、前記信号制御装置から送られる灯色情報に基づいて前記信号機の点灯状態を検出して検出対象を選択することを特徴とする請求項1に記載の信号制御システム。
【請求項3】
前記検出対象選択部は、前記カメラの画像に基づいて前記信号機の点灯状態を検出して検出対象を選択することを特徴とする請求項1に記載の信号制御システム。
【請求項4】
前記信号機は、歩行者用信号機であり、前記カメラは、前記歩行者用信号機に内蔵されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の信号制御システム。
【請求項5】
前記検出装置は、前記カメラから送られる画像から横断歩道を自動的に検出し、横断歩道に対応する計測領域をあらかじめ設定するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の信号制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−221270(P2012−221270A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86951(P2011−86951)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】