説明

信号周期検出装置及び信号周期検出方法

【課題】
精度良く信号周期を検出する。
【解決手段】
信号発生源210から送られた矩形パルス信号PSを受けたLPF部120が、当該信号PSの低周波数成分を選択的に通過させることにより、所定値を経由する立ち下がり変化が、当該所定値となる時点を含むサンプリング周期の時間幅の期間において、単調減少の変化である信号LSを生成する。かかる信号LSの信号値を、AD変換部130がサンプリング周期で検出し、経由時間算出部140が、連続して検出された2個の信号値の変化が減少変化であり、かつ、当該2個の信号値のサンプリング時刻間に、信号値が所定値を経由したと判断された場合に、当該2個の信号値に基づいて、信号LSの信号値が所定値となった経由時刻の情報を算出する。そして、周期算出部160が、連続して算出された2個の経由時刻の情報を利用して、当該立ち下がり変化の発生周期を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号周期検出装置、信号周期検出方法及び信号周期検出プログラム、並びに、当該信号周期検出プログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、周期的に発生する所定態様の信号値変化の発生周期を検出する信号周期検出が広く行われている。例えば、車室内に漏れてくるエンジン動作に由来する音の消音を、能動型騒音制御(ANC:Active Noise Control)により行う場合に、当該消音の対象となる周波数を定めるために、エンジン回転に同期した周期で立ち上がり又は立ち下がりを生じるパルス性の信号(エンジン回転パルス信号)について、立ち上がり変化又は立ち下がり変化という所定態様の信号値変化の発生周期が検出される。
【0003】
こうした信号周期検出の技術としては、当該パルス性の信号の立ち上がりエッジ間又は立ち下がりエッジ間に計数される所定周波数のクロックのパルス数に基づいて、立ち上がり変化又は立ち下がり変化の発生周期(すなわち、エンジンパルス回転周期)を検出する技術が提案されている(特許文献1参照:以下、「従来例」という)。この従来例の技術では、当該パルス性の信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジをカウンタのリセット信号とするとともに、リセット信号間におけるクロックのパルス数を、当該カウンタで計数するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3144578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来例の技術では、所定周波数のクロックのパルス数の計数結果に基づいて、信号周期を検出する。このため、同一の信号周期の検出であっても、従来例の技術による検出結果は、クロック周期の幅で変動することになる。この結果、精度良く信号周期を検出するためには、クロック周波数を高めてクロック周期を短くする必要がある。
【0006】
しかしながら、クロック周波数を高めるためには高速動作素子を選択して使用することが必要となる。この結果、高速クロックの採用によるコストアップが発生する。
【0007】
このため、信号周期の検出結果の変動幅を、クロック周期よりも小さくすることができる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、精度良く信号周期を検出することができる新たな信号周期検出装置及び信号周期検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、所定値を経由する着目変化の時の信号値の変化が、前記所定値となる時点を含む所定サンプリング周期幅の期間において、同一方向の変化であり、かつ、前記着目変化が周期的に発生する入力信号の信号値を、前記所定サンプリング周期で検出する信号値検出部と;前記信号値検出部により連続して検出された2個の信号値の変化が、前記着目変化における変化であり、かつ、前記検出された2個の信号値のサンプリング時刻間に、前記入力信号の信号値が前記所定値を経由したと判断された場合に、前記検出された2個の信号値に基づいて、前記入力信号の信号値が前記所定値となった経由時刻の情報を算出する経由時刻算出部と;前記経由時刻算出部により連続して算出された2個の経由時刻の情報を利用して、前記着目変化の発生周期を算出する周期算出部と;を備えることを特徴とする信号周期検出装置である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、所定値を経由する着目変化の時の信号値の変化が、前記所定値となる時点を含む所定サンプリング周期幅の期間において、同一方向の変化であり、かつ、前記着目変化が周期的に発生する入力信号の信号値を、前記所定サンプリング周期で検出する信号値検出工程と;前記信号値検出工程において連続して検出された2個の信号値の変化が、前記着目変化における変化であり、かつ、前記検出された2個の信号値のサンプリング時刻間に、前記入力信号の信号値が前記所定値を経由したと判断された場合に、前記検出された2個の信号値に基づいて、前記入力信号の信号値が前記所定値となった経由時刻の情報を算出する経由時刻算出工程と;前記経由時刻算出工程において連続して算出された2個の経由時刻の情報を利用して、前記着目変化の発生周期を算出する周期算出工程と;を備えることを特徴とする信号周期検出方法である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の信号周期検出方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする信号周期検出プログラムである。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の信号周期検出プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る信号周期検出装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1のクロック発生部により発生されるクロック信号の波形を説明するための図である。
【図3】図1のローパスフィルタ部の入力信号と出力信号との関係を説明するための図である。
【図4】図1のローパスフィルタ部の出力信号の立下り波形とクロック信号の周期との関係を説明するための図である。
【図5】図1の経由時刻算出部による経由時刻算出処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5の経由時刻情報の算出ステップにおける処理を説明するための図である。
【図7】図1の周期算出部による信号周期算出処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図7を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[構成]
図1には、一実施形態に係る信号周期検出装置100の構成がブロック図にて示されている。この図1に示されるように、信号周期検出装置100は、クロック発生部110と、信号変換部としてのローパスフィルタ(LPF)部120と、信号値検出部としてのAD(Analogue to Digital)変換部130とを備えている。また、信号周期検出装置100は、経由時刻算出部140と、サンプリング回数計数部としてのクロック計数部150と、周期算出部160とを備えている。
【0016】
上記のクロック発生部110は、所定周波数で発振する水晶発振素子等の発振素子を備えて構成される。クロック発生部110は、クロック信号CKを発生する。こうして発生したクロック信号CKは、AD変換部130及びクロック計数部150へ送られる。
【0017】
上記のLPF部120は、信号発生源210から送られた信号PSを受ける。本実施形態では、信号PSは、立ち下り変化が周期的に発生する矩形パルス信号となっている。
【0018】
なお、信号PSの例としては、車両に搭載されたエンジンの回転を検出するセンサの出力信号等が挙げられる。
【0019】
信号PSを受けたLPF部120は、低周波数成分を選択的に通過させる。この結果、信号PSから高周波数成分が除去された信号LSが生成される。本実施形態における信号PS(LPF部120にとっての入力信号)と、信号LS(LPF部120にとっての出力信号)との関係については、後述する。
【0020】
上記のAD変換部130は、クロック発生部110から送られたクロック信号CK、及び、LPF部120から送られた信号LSを受ける。そして、AD変換部130は、クロック信号CKに同期して信号LSの値のサンプリングを行い、サンプルリング結果をデジタル値(以下、「サンプリング値」と記す)に変換する。AD変換部130は、新たなサンプリング値が得られるたびに、当該新たなサンプリング値を、サンプリング結果LDとして、経由時刻算出部140へ送る。
【0021】
上記の経由時刻算出部140は、AD変換部130から送られたサンプリング結果LDを受ける。そして、経由時刻算出部140は、サンプリング結果LDに基づいて、計数開始指令EDを生成し、生成された計数開始指令EDをクロック計数部150へ送る。
【0022】
また、経由時刻算出部140は、サンプリング結果LDに基づいて、経由時刻情報TDを算出する。算出された経由時刻情報TDは、周期算出部160へ送られる。
【0023】
なお、経由時刻算出部140による経由時刻算出処理については、後述する。
【0024】
上記のクロック計数部150は、クロック発生部110から送られたクロック信号CK、及び、経由時刻算出部140から送られた計数開始指令EDを受ける。そして、クロック計数部150は、一の計数開始指令EDを受けてから次の計数開始指令EDを受けるまでの期間におけるクロック信号CK中のパルス数(すなわち、クロック信号CKの立ち上り変化の回数)を計数する。クロック計数部150による計数結果CCは、周期算出部160へ送られる。
【0025】
上記の周期算出部160は、経由時刻算出部140から送られた経由時刻情報TD、及び、クロック計数部150から送られた計数結果CCを受ける。そして、周期算出部160は、経由時刻情報TD及び計数結果CCに基づいて、信号PSの信号周期TPを算出する。算出された信号周期TPは、信号周期利用装置220へ送られる。こうした信号周期利用装置220の例としては、エンジン回転周期の周波数を利用して車室内のエンジン音の消音を図る能動型騒音制御装置等が挙げられる。
【0026】
次に、上述したクロック発生部110が発生するクロック信号CKについて、説明する。クロック信号CKは、図2に示されるように、周期TCの矩形パルス信号である。
【0027】
なお、本実施形態では、AD変換部130は、クロック信号CKの立ち上り変化に同期して信号LSの値のサンプリングを行うようになっている。このため、周期TCが、AD変換部130におけるサンプリング周期となっている。そこで、以下の説明においては、「サンプリング周期TC」とも記すものとする。
【0028】
次いで、信号PSと信号LSとの関係、すなわち、LPF部120の作用による波形変形について説明する。図3に示されるように、LPF部120による信号PSの立ち上がり変化波形及び立ち下がり変化波形に含まれる高周波成分の除去により、信号LSの立ち上がり変化及び立ち下がり変化が、信号PSの場合よりも緩やかとなる。
【0029】
こうした波形変形がなされたとしても、信号LSの立ち下がり変化時に、信号LSの信号値LS(T)が所定値LSTとなる事象の発生周期は、信号PSの立ち下がり変化の発生の周期TPと一致する。すなわち、信号LSの立ち下がり変化時に、信号LSの信号値LS(T)が所定値LSTとなる事象の発生周期を検出することにより、信号PSの立ち下がり変化の発生の周期TPを検出できるようになっている。
【0030】
なお、本実施形態においては、図4に示されるように、信号LSの立ち下がり変化では、立ち下がり変化の開始から、信号LSの信号値LS(T)が所定値LSTとなるまでの時間TFが、サンプリング周期TCよりも長くなっている。また、信号LSの立ち下がり変化では、信号値LS(T)が所定値LSTとなってから立ち下がり変化の終了までの時間TBが、サンプリング周期TCよりも長くなっている。このため、信号LSの立ち下がり変化時に、信号LSの信号値LS(T)が所定値LSTとなる時刻の前後におけるサンプリング周期TCの時間長の期間は、信号LSの立ち下がり変化中の期間であり、信号値LS(T)が単調減少、すなわち、減少方向という同一方向に変化している期間となっている。こうした条件を満足するように、本実施形態では、LPF部120の特性、及び、所定値LSTが選択されている。
【0031】
[動作]
次に、以上のように構成された信号周期検出装置100の動作について、経由時刻算出部140による経由時刻算出処理、及び、周期算出部160による信号周期算出処理に主に着目して説明する。なお、信号発生源210からは、立ち下り変化が周期的に発生する矩形パルス信号である信号PS(図3参照)が、信号周期検出装置100のLPF部120へ供給されているものとする。また、クロック発生部110は、周期TCで立ち上がり変化が発生するクロック信号CK(図2参照)を発生しており、クロック信号CKが、AD変換部130及びクロック計数部150に供給されているものとする。
【0032】
信号発生源210から受けた信号PSを受けたLPF部120は、信号PSの低周波数成分を選択的に通過させる。この結果、信号PSから高周波数成分が除去された信号LSが生成され、AD変換部130へ送られる。
【0033】
LPF部120から送られた信号LSを受けたAD変換部130は、クロック信号CKに同期して信号LSの値のサンプリングを行い、サンプルリング結果をデジタル値(以下、「サンプリング値」と記す)に変換する。そして、AD変換部130は、新たなサンプリング値が得られるたびに、当該新たなサンプリング値を、サンプリング結果LDとして、経由時刻算出部140へ送る。
【0034】
<経由時刻算出処理>
経由時刻算出部140は、AD変換部130から送られたサンプリング結果LDに基づいて、経由時刻算出処理を実行する。
【0035】
かかる経由時刻算出処理に際しては、図5に示されるように、まず、ステップS11において、経由時刻算出部140が、新たにサンプリング結果LDを受けたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS11:N)には、ステップS11の処理が繰り返される。
【0036】
新たにサンプリング結果LDを受け、ステップS11における判定の結果が肯定的となると(ステップS11:Y)、処理はステップS12へ進む。このステップS12では、経由時刻算出部140が、サンプリング結果LDが所定値LSTより大きいか否かを判定する。
【0037】
ステップS12における判定の結果が否定的であった場合(ステップS12:N)には、処理はステップS11へ戻る。以後、ステップS12における判定の結果が肯定的となるまで、ステップS11及びステップS12の処理が繰り返される。ステップS12における判定の結果が肯定的となると(ステップS12:Y)、処理はステップS13へ進む。
【0038】
ステップS13では、経由時刻算出部140が、新たにサンプリング結果LDを受けたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS13:N)には、ステップS13の処理が繰り返される。
【0039】
新たにサンプリング結果LDを受け、ステップS13における判定の結果が肯定的となると(ステップS13:Y)、処理はステップS14へ進む。このステップS14では、経由時刻算出部140が、サンプリング結果LDが所定値LST以下か否かを判定することにより、信号LSの立ち下がり変化において、信号LSの信号値LS(T)が所定値LSTを経由したか否かを判定する。
【0040】
ステップS14における判定の結果が否定的であった場合(ステップS14:N)には、処理はステップS13へ戻る。以後、ステップS14における判定の結果が肯定的となるまで、ステップS13及びステップS14の処理が繰り返される。
【0041】
ステップS14における判定の結果が肯定的となると(ステップS14:Y)、信号LSの立ち下がり変化において、信号LSの信号値LS(T)が所定値LSTを経由したと判断され、処理はステップS15へ進む。このステップS15では、経由時刻算出部140が、計数開始指令EDを生成し、生成された計数開始指令EDをクロック計数部150へ送る。
【0042】
この計数開始指令EDを受けたクロック計数部150は、前回の計数開始指令EDを受けてから今回の計数開始指令EDを受けるまでの期間におけるクロック信号CK中のパルス数(すなわち、クロック信号CKの立ち上り変化の回数)の計数結果を、計数結果CCとして、周期算出部160へ送る。そして、クロック計数部150は、新たなクロック信号CK中のパルス数の計数を開始する。
【0043】
ステップS15の処理を終了すると、処理はステップS16へ進む。このステップS16では、経由時刻算出部140が、前回受けたサンプリング結果LDと、今回受けたサンプリング結果LDとに基づいて、信号LSの今回の立ち下がり変化において所定値LSTを経由した時刻、すなわち、信号LSの今回の立ち下がり変化において信号値LS(T)が所定値LSTとなった時刻の情報を算出する。そして、経由時刻算出部140は、算出された時刻の情報を、経由時刻情報TDとして、周期算出部160へ送る。そして、処理はステップS11へ戻る。
【0044】
以後、ステップS11〜S16の処理が繰り返される。この結果、信号LSの今回の立ち下がり変化において信号値LS(T)が所定値LSTを経由するたびに、経由時刻算出部140が、計数開始指令EDをクロック計数部150へ送るとともに、経由時刻情報TDを算出し、算出された経由時刻情報TDを周期算出部160へ送る。
【0045】
ここで、ステップS16における経由時刻情報TDの算出について、図6を参照して説明する。図6に示されるように、上述したステップS14で肯定的な判定がなされた場合におけるサンプリング結果LDの値が(LST−X2)であり、その前にAD変換部130から送られたサンプリング結果LDの値が(LST+X1)であったものとする。この場合、経由時刻算出部140は、値LS(T)の値(LST+X1)から値(LST−X2)への変化は直線的な変化であるものと仮定して、次の(1)式により、サンプリング結果LDとして値(LST−X2)であった時刻TENに対する値LS(T)が所定値LSTとなった時刻TDNの相対時刻(TDN−TEN)を算出する。
TDN−TEN=−TC・X2/(X1+X2) …(1)
【0046】
この後、再度、ステップS14で肯定的な判定がなされた場合におけるサンプリング結果LDの値が(LST−X4)であり、その前にAD変換部130から送られたサンプリング結果LDの値が(LST+X3)であったものとする。この場合、経由時刻算出部140は、値LS(T)の値(LST+X3)から値(LST−X4)への変化は直線的な変化であるものと仮定して、次の(2)式により、サンプリング結果LDとして値(LST−X4)であった時刻TEN+1に対する値LS(T)が所定値LSTとなった時刻TDN+1の相対時刻(TDN+1−TEN+1)を算出する。
TDN+1−TEN+1=−TC・X4/(X3+X4) …(2)
【0047】
ところで、(1)式における分母値(X1+X2)、及び、(2)式における分母値(X3+X4)は、サンプリング周期TCと、信号LSの立ち下がり変化時における所定値LST付近における信号値LS(T)の変化速度により定まるといえる。ここで、信号LSの立ち下がり変化時における所定値LST付近における信号値LS(T)が略直線的に変化するものと仮定すると、当該直線的な変化の変化速度Vは、設計時において定まるLPF部120の特性で決まる略一定値であるといえる。また、サンプリング周期TCも、設計時において定まる略一定値であるといえる。このため、次の(3)式により定義される値Kは、設計時において予め算出可能となっている。
K=−TC/(TC・V)≒−TC/(X1+X2)
≒−TC/(X3+X4) …(3)
【0048】
このため、値Kを予め算出しておき、上述した(1)式で算出される相対時刻(TDN−TEN)、及び、上述した(2)式で算出される相対時刻(TDN+1−TEN+1)を、次の(4)式及び(5)式で算出するようにしてもよい。
TDN−TEN=K・X2 …(4)
TDN+1−TEN+1=K・X4 …(5)
【0049】
なお、図6においては、クロック計数部150におけるクロックパルス数の計数値の変化の様子が併せて示されている。そして、クロック計数部150は、時刻TEN(N=1,2,…)における計数値CCNを、周期算出部160へ送るようになっている。
【0050】
<信号周期算出処理>
周期算出部160は、経由時刻算出部140から送られた経由時刻情報TD、及び、クロック計数部150から送られた計数結果CCに基づいて、信号周期算出処理を実行する。
【0051】
かかる信号周期算出処理に際しては、図7に示されるように、まず、ステップS21において、周期算出部160が、最初の経由時刻情報TD(すなわち、相対時刻(TD1−TE1))を受けたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS21:N)には、ステップS21の処理が繰り返される。
【0052】
最初の経由時刻情報TDを受け、ステップS21における判定の結果が肯定的となると(ステップS21:Y)、処理はステップS22へ進む。このステップS22では、周期算出部160が、次の経由時刻情報TDを受けたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS22:N)には、ステップS22の処理が繰り返される。
【0053】
次の経由時刻情報TD(すなわち、相対時刻(TD2−TE2))を受け、ステップS22における判定の結果が肯定的となると(ステップS22:Y)、処理はステップS23へ進む。ステップS23では、周期算出部160が、その時点でクロック計数部150から送られている計数結果(すなわち、図6において、N=1の場合の計数値CCN+1に対応する計数値CC2)を読み取る。
【0054】
次いで、ステップS24において、相対時刻(TD1−TE1)、相対時刻(TD2−TE2)及び計数値CC2に基づいて、次の(6)式により、信号周期TPを算出する。
TP=TC・CC2+(TD2−TE2)−(TD1−TE1) …(6)
【0055】
そして、周期算出部160は、算出された信号周期TPを信号周期利用装置220へ送る。この後、処理はステップS22へ戻る。
【0056】
以後、ステップS22〜S24の処理が繰り返される。この結果、周期算出部160は、新たに経由時刻情報TDを受けるたびに、次の(7)式により、その時点における信号周期TPを算出し、算出結果を、信号周期利用装置220へ送る。
TP=TC・CCN+2+(TDN+2−TEN+2)−(TDN+1−TEN+1) …(7)
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、信号発生源210から送られ、立ち下り変化が周期的に発生する矩形パルス信号である信号PSを受けたLPF部120が、信号PSの低周波数成分を選択的に通過させることにより、信号PSから高周波数成分が除去された信号LSを生成する。こうして生成された信号LSは、所定値LSTを経由する着目変化である立ち下がり変化が、所定値LSTとなる時点を含むサンプリング周期TCの時間幅の期間において、単調減少の変化であり、かつ、着目変化が周期的に発生するようになっている。
【0058】
かかる信号LSの信号値を、AD変換部130がサンプリング周期TCで検出する。引き続き、経由時刻算出部140が、AD変換部130により連続して検出された2個の信号値の変化が、信号LSの立ち下がり変化中における変化であり、かつ、当該2個の信号値のサンプリング時刻間に、信号値が所定値LSTを経由したと判断された場合に、当該2個の信号値に基づいて、信号LSの信号値が所定値LSTとなった経由時刻の情報を算出する。そして、周期算出部160が、経由時刻算出部140により連続して算出された2個の経由時刻の情報を利用して、信号LSの立ち下がり変化の発生周期、ひいては、信号PSの立ち下がり変化の発生周期を算出する。
【0059】
したがって、本実施形態によれば、サンプリング周期の短時間化を抑制しつつ、精度良く信号周期を検出することができる。
【0060】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0061】
例えば、上記の実施形態では、信号PSは、立ち下がり変化が周期的に発生する信号であるものとした。これに対し、立ち上がり変化が周期的に発生する信号であっても、上記の実施形態の場合と同様にして、立ち上がり変化の発生周期を検出することができる。
【0062】
また、上記の実施形態では、信号PSは、矩形パルス信号であるものとした。これに対し、信号発生源が発生する信号における所定値を経由する着目変化が、当該所定値となる時点を含むサンプリング周期の時間幅の期間において、単調減少の変化であり、かつ、着目変化が周期的に発生するようになっている場合(例えば、信号PSが正弦波である場合)には、上記の実施形態におけるLPF部を省略し、信号発生源が発生する信号が、AD変換部に直接入力する構成とすることができる。
【0063】
なお、上記の実施形態における信号周期検出装置100の経由時刻算出部140及び周期算出部160を、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等を備えた演算手段を備えるコンピュータシステムとして構成し、予め用意されたプログラムを当該コンピュータシステムで実行することにより、上記の経由時刻算出部140及び周期算出部160における処理を実行するようにしてもよい。このプログラムは書き換え可能な不揮発性の記憶素子等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該コンピュータによって記録媒体から読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
100 … 信号周期検出装置
120 … ローパスフィルタ部(信号変換部)
130 … AD変換部(信号値検出部)
140 … 経由時刻算出部
150 … クロック計数部(サンプリング回数計数部)
160 … 周期算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定値を経由する着目変化の時の信号値の変化が、前記所定値となる時点を含む所定サンプリング周期幅の期間において、同一方向の変化であり、かつ、前記着目変化が周期的に発生する入力信号の信号値を、前記所定サンプリング周期で検出する信号値検出部と;
前記信号値検出部により連続して検出された2個の信号値の変化が、前記着目変化における変化であり、かつ、前記検出された2個の信号値のサンプリング時刻間に、前記入力信号の信号値が前記所定値を経由したと判断された場合に、前記検出された2個の信号値に基づいて、前記入力信号の信号値が前記所定値となった経由時刻の情報を算出する経由時刻算出部と;
前記経由時刻算出部により連続して算出された2個の経由時刻の情報を利用して、前記着目変化の発生周期を算出する周期算出部と;
を備えることを特徴とする信号周期検出装置。
【請求項2】
一の前記着目変化において前記所定値を経由した後の最初のサンプリングの後、次の前記着目変化において前記所定値を経由した後の最初のサンプリングまでのサンプリング回数を計数するサンプリング回数計数部を更に備え、
前記経由時刻算出部は、前記所定値となった経由時刻の情報として、前記着目変化において前記所定値を経由した後の最初のサンプリングの時刻に対する相対時刻を算出し、
前記周期算出部は、前記サンプリング回数計数部による計数結果に前記所定サンプリング周期を乗じて得られる時間に対して、前記経由時刻算出部により算出された連続する2個の前記所定値となった経由時刻の情報に基づく補正を施すことにより、前記着目変化の発生周期を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号周期検出装置。
【請求項3】
前記着目変化に対応する信号値の変化が、周期的に発生するが、前記所定サンプリング周期幅の期間において、同一方向の変化であるとはいえない信号を、前記入力信号に変換する信号変換部を更に備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の信号周期検出装置。
【請求項4】
前記信号変換部は、所定周波数以下の周波数成分を通過させるローパスフィルタを備える、ことを特徴とする請求項3に記載の信号周期検出装置。
【請求項5】
所定値を経由する着目変化の時の信号値の変化が、前記所定値となる時点を含む所定サンプリング周期幅の期間において、同一方向の変化であり、かつ、前記着目変化が周期的に発生する入力信号の信号値を、前記所定サンプリング周期で検出する信号値検出工程と;
前記信号値検出工程において連続して検出された2個の信号値の変化が、前記着目変化における変化であり、かつ、前記検出された2個の信号値のサンプリング時刻間に、前記入力信号の信号値が前記所定値を経由したと判断された場合に、前記検出された2個の信号値に基づいて、前記入力信号の信号値が前記所定値となった経由時刻の情報を算出する経由時刻算出工程と;
前記経由時刻算出工程において連続して算出された2個の経由時刻の情報を利用して、前記着目変化の発生周期を算出する周期算出工程と;
を備えることを特徴とする信号周期検出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の信号周期検出方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする信号周期検出プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載の信号周期検出プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−72784(P2013−72784A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212912(P2011−212912)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】