説明

信号振分複製先決定システム、信号振分複製先決定方法およびプログラム

【課題】クラスタのノード数が増減した場合において、呼情報を複製する処理時間を低減し、クラスタ全体として、スケーラブルに呼処理性能を向上させる。
【解決手段】呼処理を行う複数のノード20と、呼制御信号を一括して受信し、各ノード20に振り分け、セッション継続に必要な呼情報の複製先を決定する信号振分複製先決定装置10とを備える信号振分複製先決定システム1において、信号振分複製先決定装置10は、各ノード20のIDを、閉じたID空間上に配置し、自ノード20が配置された位置から所定回りに最初に配置された他のノード20を、自ノード20が記憶する呼情報の複製先(バディ)に決定する。ノード20が故障した場合に、信号振分複製先決定装置10は、故障したノード20が処理すべき呼制御情報を受信すると、その故障したノード20の呼情報の複製を記憶するノード20(バディ)に、振分先を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼制御サーバを複数台用いたクラスタ構成での信号処理において、信号の振分先となる呼制御サーバを決定し、さらに、その振り分けた信号から抽出した呼情報の複製先となる呼制御サーバを決定する信号振分複製先決定システム、信号振分複製先決定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クラウドコンピューティングの隆盛に伴い、分散並列処理技術が発展、普及している。また、設備維持コスト低減を目的として通信網のIP(Internet Protocol)化が進んでおり、従来の交換機のような専用のハードウェアではなく、汎用サーバを用いて通信ネットワークによる通信サービスを実現することが一般化している。
【0003】
呼制御サーバを複数台用いてクラスタ構成を実現する場合において、故障等が原因でクラスタを構成するノード(呼制御サーバ)を減設するときは、他のノードが減設ノードの保持する呼情報の複製を取得し、減設ノード分を肩代わりする必要がある。
【0004】
呼制御サーバのクラスタ構成を実現する既存の技術として、MSS(Mobicents Sip Servlet)が知られている(非特許文献1参照)。MSSでは、クラスタ内での各ノード(「メンバ」と呼ぶ)が保持する呼情報を、他のノード(「バディ」と呼ぶ)に複製して保持し合う構成としている。ここで、ノード(メンバ)が、自己の保持する呼情報の複製を生成し、他のノード(バディ)に記憶させることを、グラビテーションという。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“Mobicents Sip Servlets,”Red Hat Middleware, LLC., 2011/04/14, [online]、[平成23年5月12日検索]、インターネット<http://www.mobicents.org/products_sip_servlets.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、MSSでは、メンバが故障すると、ノードの減設を検出し、クラスタを構成する他のノードに呼処理を割り当てるが、故障したノードの複製情報をどのノードが保持しているかを意識することなく割り当てを行う。よって、複製を持っていないノードへの信号振分が発生し、振り分けられたノード(メンバ)は、クラスタ内のすべてのノードに問い合わせ、故障したノード(メンバ)のバディであるノードから、呼情報の複製情報を送信してもらうグラビテーションを行う必要がある。このように、MSSでは、複製情報を保持しているノードを意識せず、信号振分を行うため、呼情報の複製を取得するために余計なグラビテーションが発生し、処理時間がかかる。これにより、クラスタ全体の処理効率が低下し、ノードの台数の増加と共に性能が向上しないことが問題となる。
【0007】
このような背景を鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、クラスタのノード数が増減した場合において、呼情報を複製する処理時間を低減させ、呼制御サーバのクラスタ全体として、スケーラブルに呼処理性能を向上させることができる、信号振分複製先決定システム、信号振分複製先決定方法およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、呼制御信号を受信し、複数の呼制御サーバのうちから前記呼制御信号の振分先を決定し、前記呼制御信号のセッションの接続確認に用いられる呼情報の複製先を決定する信号振分複製先決定装置と、前記信号振分複製先決定装置により振り分けられた前記呼制御信号を受信し、送信先へ転送する呼処理を行う前記複数の呼制御サーバとを備える信号振分複製先決定システムであって、前記信号振分複製先決定装置が、前記複数の呼制御サーバそれぞれのIDを、所定の並び順の閉じたID空間上に配置し、自呼制御サーバの前記閉じたID空間上での配置位置から、所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記呼情報の複製先として決定し、前記所定回りで前記自呼制御サーバから1つ前に配置された前記呼制御サーバのIDの次の値から、前記所定回りに前記自呼制御サーバのIDまでの値を、前記自呼制御サーバの担当領域に設定し、前記呼制御信号を受信すると、前記呼制御信号に含まれるセッションに固有なIDを抽出して、前記閉じたID空間に配置し、前記セッションに固有なIDが配置された位置から、所定回りに最初に配置されている前記呼制御サーバを、当該呼制御信号の振分先に決定し、前記決定した振分先の前記呼制御サーバに、当該呼制御信号を送信する振分処理部と、前記振分処理部が決定した前記呼制御サーバごとの前記複製先を示す複製先情報を、前記呼制御サーバそれぞれに送信する複製先通知部と、を備え、前記呼制御サーバが、前記信号振分複製先決定装置から、前記呼制御信号を受信し、送信先へ転送する呼処理を行う呼接続処理部と、前記複製先情報を受信して、記憶部に記憶し、前記受信した呼制御信号に基づき、前記セッションに固有なIDを含む前記呼情報を生成して前記記憶部に記憶し、前記生成した呼情報の複製である呼複製情報を生成し、前記受信した複製先情報に示される前記複製先の呼制御サーバに送信し、前記呼制御サーバ自身が前記複製先情報に示される前記複製先に該当する場合に、前記呼複製情報を受信し、前記記憶部に記憶する呼情報管理部と、前記複製先の呼制御サーバの故障を監視する複製先監視部と、を備え、前記呼制御サーバの前記複製先監視部が、前記複製先の呼制御サーバの故障を検出し、その故障情報を、前記信号振分複製先決定装置に送信し、前記信号振分複製先決定装置の振分処理部が、前記故障情報を受信すると、前記閉じたID空間に配置された前記故障した呼制御サーバを、前記閉じたID空間から取り除き、前記故障した呼制御サーバの前記担当領域を、前記故障した呼制御サーバの前記複製先の呼制御サーバに変更し、前記故障した呼制御サーバを取り除いた前記閉じたID空間上での各呼制御サーバの配置位置から、前記所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記複製先として新たに設定し、前記新たな設定により前記複製先が変更となった前記呼制御サーバに、前記複製先情報を送信することを特徴とする信号振分複製先決定システムとした。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、呼制御信号を受信し、複数の呼制御サーバのうちから前記呼制御信号の振分先を決定し、前記呼制御信号のセッションの接続確認に用いられる呼情報の複製先を決定する信号振分複製先決定装置と、前記信号振分複製先決定装置により振り分けられた前記呼制御信号を受信し、送信先へ転送する呼処理を行う前記複数の呼制御サーバとを備える信号振分複製先決定システムの信号振分複製先決定方法であって、前記信号振分複製先決定装置が、前記複数の呼制御サーバそれぞれのIDを、所定の並び順の閉じたID空間上に配置し、自呼制御サーバの前記閉じたID空間上での配置位置から、所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記呼情報の複製先として決定し、前記所定回りで前記自呼制御サーバから1つ前に配置された前記呼制御サーバのIDの次の値から、前記所定回りに前記自呼制御サーバのIDまでの値を、前記自呼制御サーバの担当領域に設定するステップと、前記呼制御信号を受信すると、前記呼制御信号に含まれるセッションに固有なIDを抽出して、前記閉じたID空間に配置し、前記セッションに固有なIDが配置された位置から、所定回りに最初に配置されている前記呼制御サーバを、当該呼制御信号の振分先に決定するステップと、前記決定した振分先の前記呼制御サーバに、当該呼制御信号を送信するステップと、前記決定した呼制御サーバごとの前記複製先を示す複製先情報を、前記呼制御サーバそれぞれに送信するステップと、を実行し、前記呼制御サーバが、前記信号振分複製先決定装置から、前記呼制御信号を受信し、送信先へ転送する呼処理を行うステップと、前記複製先情報を受信して、記憶部に記憶するステップと、前記受信した呼制御信号に基づき、前記セッションに固有なIDを含む前記呼情報を生成して前記記憶部に記憶するステップと、前記生成した呼情報の複製である呼複製情報を生成し、前記受信した複製先情報に示される前記複製先の呼制御サーバに送信ステップと、前記呼制御サーバ自身が前記複製先情報に示される前記複製先に該当する場合に、前記呼複製情報を受信し、前記記憶部に記憶するステップと、前記複製先の呼制御サーバの故障を監視するステップと、を実行し、前記呼制御サーバが、前記複製先の呼制御サーバの故障を監視するステップにおいて、前記複製先の呼制御サーバの故障を検出した場合に、その故障情報を、前記信号振分複製先決定装置に送信するステップを実行し、前記信号振分複製先決定装置が、前記故障情報を受信すると、前記閉じたID空間に配置された前記故障した呼制御サーバを、前記閉じたID空間から取り除き、前記故障した呼制御サーバの前記担当領域を、前記故障した呼制御サーバの前記複製先の呼制御サーバに変更するステップと、前記故障した呼制御サーバを取り除いた前記閉じたID空間上での各呼制御サーバの配置位置から、前記所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記複製先として新たに設定し、前記新たな設定により前記複製先が変更となった前記呼制御サーバに、前記複製先情報を送信するステップと、を実行することを特徴とする信号振分複製先決定方法とした。
【0010】
このようにすることで、信号振分複製先決定システムによれば、故障した呼制御サーバが担当していた呼制御信号のセッションを、その故障した呼制御サーバの呼複製情報を記憶している呼制御サーバに振り分けるため、他の呼制御サーバへの問い合わせや、余計なグラビテーションを発生させずに、呼処理を継続できる。よって、従来技術に比べ、呼情報を複製する処理時間を低減させ、呼制御サーバのクラスタ全体として、呼処理性能を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記信号振分複製先決定装置が、新たに増設される前記呼制御サーバのIDを含む情報を、入力部を介して取得した場合に、前記振分処理部は、前記増設される呼制御サーバのIDを、前記閉じたID空間上に配置し、前記増設される呼制御サーバの前記閉じたID空間での配置位置から、前記所定回りで前記増設される呼制御サーバから1つ前に配置された前記呼制御サーバのIDの次の値から、前記所定回りに前記増設される呼制御サーバまでの値を、前記増設される呼制御サーバの前記担当領域に変更し、前記増設される呼制御サーバを配置した前記閉じたID空間上での各呼制御サーバの配置位置から、前記所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記複製先として新たに設定し、前記新たな設定により前記複製先が変更となった前記呼制御サーバに、前記複製先情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の信号振分複製先決定システムとした。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記信号振分複製先決定装置が、新たに増設される前記呼制御サーバのIDを含む情報を、入力部を介して取得した場合に、前記増設される呼制御サーバのIDを、前記閉じたID空間上に配置し、前記増設される呼制御サーバの前記閉じたID空間での配置位置から、前記所定回りで前記増設される呼制御サーバから1つ前に配置された前記呼制御サーバのIDの次の値から、前記所定回りに前記増設される呼制御サーバまでの値を、前記増設される呼制御サーバの前記担当領域に変更するステップと、前記増設される呼制御サーバを配置した前記閉じたID空間上での各呼制御サーバの配置位置から、前記所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記複製先として新たに設定し、前記新たな設定により前記複製先が変更となった前記呼制御サーバに、前記複製先情報を送信するステップと、を実行することを特徴とする請求項4に記載の信号振分複製先決定方法とした。
【0013】
このようにすることで、呼制御サーバが増設された場合であっても、各呼制御サーバは、呼制御信号を受信した際に、自身の記憶部内の呼情報に基づき呼処理を行うことができるため、余計なグラビテーションを発生させず、呼処理を継続できる。したがって、呼制御サーバのクラスタ全体として、スケーラブルに呼処理性能を向上させることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記振分処理部が、コンシステントハッシュ法を用いて、前記呼制御サーバのIDおよび前記呼制御信号に含まれる前記セッションに固有なIDのハッシュ値を、所定のハッシュ関数により計算し、ハッシュ空間上に配置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の信号振分複製先決定システムとした。
【0015】
このようにすることで、信号振分複製先決定装置は、既存のコンシステントハッシュ法を用いて、ハッシュ空間上に、呼制御サーバや呼制御信号のハッシュ値を配置し処理を行うことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の信号振分複製先決定方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムとした。
【0017】
このようなプログラムによれば、請求項4または請求項5に記載の信号振分複製先決定方法を一般的なコンピュータで実現させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クラスタのノード数が増減した場合において、呼情報を複製する処理時間を低減させ、呼制御サーバのクラスタ全体として、スケーラブルに呼処理性能を向上させる、信号振分複製先決定システム、信号振分複製先決定方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る信号振分複製先決定システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る信号振分複製先決定装置による、閉じたID空間を用いた信号振分処理と複製先決定処理とを説明するための図である。
【図3】本実施形態に係る信号振分複製先決定システムの初期設定時および正常時の動作を示すシーケンス図である。
【図4】本実施形態に係る信号振分複製先決定装置による、閉じたID空間を用いたノード減設時の信号振分処理と複製先決定処理とを説明するための図である。
【図5】本実施形態に係る信号振分複製先決定システムのノード減設時の動作を示すシーケンス図である。
【図6】本実施形態に係る信号振分複製先決定システムのノード増設時の動作を示すシーケンス図である。
【図7】従来技術であるMSSにおける信号振分処理と複製先決定処理とを説明するための図である。
【図8】従来技術であるMSSにおける、ノード減設時の信号振分処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態として、複数の呼制御サーバ(ノード20:図1参照)を備えるクラスタ構成での信号処理において、SIP(Session Initiation Protocol)メッセージを各呼制御サーバに振り分け、振り分けられた呼制御サーバが、SIPメッセージ(呼制御信号)から呼情報242(図1参照)を生成し、その生成した呼情報242の複製先となる他の呼制御サーバを決定する方法について、以下説明する。
【0021】
まず、比較例であるMSSにおける信号振分処理と複製先決定処理とについて、図7を参照して、具体的に説明する。
図7(a)は、MSSにおける信号振分処理を説明するための図である。また、図7(b)は、MSSにおける複製先決定処理を説明するための図である。
【0022】
図7(a)に示すように、MSSでは、呼処理を行うSIPサーバ(呼制御サーバ)6が複数台(メンバA,メンバB,メンバC,メンバD)と、各メンバ(SIPサーバ6)に対して、呼処理のためのSIPメッセージを振り分けるSLB(Sip Load Balancer)5とで、クラスタを構成している。
【0023】
SLB5は、外部装置(不図示)から一括してSIPメッセージを受信し、SAS(Sip Application Session)をメンバに対して振り分ける。つまり、SLB5は、SIPメッセージを受信すると、そのSIPメッセージを、各メンバに対して振り分ける処理を行う。このSLB5の振分先を決定するロジックは、例えば、(1)ランダムに振分先を決定する、(2)SASのID(IDentification)(SAS-ID)に対し、メンバ数で割った余り(MOD(Modulus))を求める。例えば、余りが「1」の場合、メンバAに振り分け、余りが「2」の場合、メンバBに振り分ける等の処理を行う。
【0024】
また、MSSでは、SASを振り分けられたメンバが、自身の次にクラスタに参加したメンバをバディとして、そのSIPメッセージから生成した呼情報242の複製を記憶させる。例えば、図7(b)に示すように、メンバAのSIPサーバ6は、SIPメッセージから生成した呼情報242(以下、図面において、メンバ(例えばメンバA)が生成した呼情報242を、「SAS−A」のように記載)を複製し、SAS−Aの複製情報を、次にクラスタに参加したメンバBに記憶させる。同様に、メンバBが生成したSAS−Bの複製情報を、クラスタへの参加順が次のメンバCに記憶させる。
なお、呼情報242とは、SAS-ID、送信元の識別番号、送信先の識別番号等を含むセッションを継続するために必要な情報である。
【0025】
次に、図7(a)に示す状態で、メンバAが故障したとすると、図8に示すように、SLB5は、本来メンバAに送信すべきSIPメッセージを、故障したメンバAに送信することができず、他のメンバに対してSASを振り分ける処理を行う。この際、メンバBにSASを振り分け、そのSIPメッセージを送信すれば、メンバBは、SAS-Aの複製情報を記憶しているため、呼処理を継続して行えるが、SLB5は、メンバBがメンバAのバディであることが分からないため、明示的な信号振分ができない。SLB5は、振分先決定ロジックとして、上記のように、(1)ランダムか、(2)MODを用いた振り分けを行うため、図8に示すように、例えば、SAS−Aの複製情報を持たないメンバCに対して、そのSIPメッセージを振り分ける。
【0026】
この場合、メンバCは、どのメンバが、SAS−Aの複製情報を記憶しているか分からないため、すべてのメンバに対して、SAS−Aの複製情報を記憶しているか否かの問い合わせを行う。そして、メンバCは、この例では、メンバBからの応答により、メンバBがSAS−Aの複製情報を記憶していることを知り、メンバBに対して、SAS−Aの複製情報の送信要求することにより、SAS−Aの複製情報を取得する。
このように、SLB5が、故障したメンバが生成した呼情報242の複製を記憶しているメンバに対して、明示的に信号振分ができないため、振り分けられたメンバが、故障したメンバの複製情報を記憶していない場合には、その複製情報を取得するための余計なグラビテーションが発生する。
【0027】
また、クラスタにメンバを増設する場合でも、同様に、SLB5が、(1)ランダムか、(2)SAS-IDに対し、メンバ数で割った余り(MOD)を用いた振り分けを行う。(2)のMODを用いた振り分けでは、メンバ数の増加により、余りの値が変わるため、対応するメンバが変更となり、結果として、呼処理を継続して行うことができない。よって、(1)ランダムな振り分けでも、(2)のMODを用いた振り分けでも、従来技術のMSSでは、メンバを増設する場合に、呼情報242の複製を取得するための余計なグラビテーションが発生する。
【0028】
次に、本実施形態に係る信号振分複製先決定システム1について説明する。
なお、以下の説明において、本実施形態における信号振分複製先決定システム1を構成する呼制御サーバをノードと称して説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る信号振分複製先決定システム1の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る信号振分複製先決定システム1は、呼処理を行う複数のノード(メンバ)20と、SIPメッセージ(呼制御信号)を一括して受信し、振分先となるノード(メンバ)20を決定するとともに、呼情報242の複製先となるバディを決定する信号振分複製先決定装置10とを備える。
【0030】
(信号振分複製先決定処理の概要)
まず、この信号振分複製先決定装置10が行う、信号振分複製先決定処理の概要について説明する。
この信号振分複製先決定装置10は、SIPメッセージの振分先を決定するロジックと、呼情報242の複製先を決定するロジックとを、図2、図4に示すような閉じたID空間を用いて実現する。この閉じたID空間として、本実施形態では、コンシステントハッシュ法(時計回り方式)を例として説明する。
【0031】
信号振分複製先決定装置10は、図2に示すように、各ノード(メンバ)20のID(例えば、IPアドレス)に対して、所定のハッシュ関数によりそのハッシュ値を計算し、閉じたID空間(ハッシュ空間)上に配置する。そして、各メンバは、自身より1つ前に配置されたメンバのハッシュ値の次の値から、時計回りに自身のハッシュ値までを担当領域とする。例えば、メンバBは、1つ前のメンバAのハッシュ値の次の値から時計回りにメンバB自身のハッシュ値の値までを担当領域とする。信号振分複製先決定装置10は、SIPメッセージを受信すると、そのSAS-IDに対して、所定のハッシュ関数によりそのハッシュ値を計算し、この閉じたID空間上に配置する。そして、閉じたID空間上で、そのSAS-IDのハッシュ値について、時計回りで最初に配置されているメンバを、振分先のメンバに決定する。
【0032】
また、信号振分複製先決定装置10は、図2に示すように、閉じたID空間上に、各メンバを配置すると、その各メンバから時計回りに最初に位置するメンバをバディとして決定する。例えば、メンバAは、時計回りに隣り合うメンバBをバディとして、SAS−A(呼情報242)の複製(呼複製情報243)を、メンバBに記憶させる。メンバBは、時計回りに隣り合うメンバCをバディとして、SAS−B(呼情報242)の複製(呼複製情報243)を、メンバCに記憶させる。
【0033】
ここで、メンバBが故障したとすると、図4に示すように、閉じたID空間(ハッシュ空間)上でメンバBの担当領域を、メンバBから時計回りに配置されたメンバCが受け持つ。メンバCは、SAS−Bの複製(呼複製情報243)を記憶しているため、メンバBが担当するSIPメッセージを受信しても、グラビテーションをする必要はなく、呼処理を継続して行うことができる。また、このとき、メンバDやメンバAの担当領域を変更する必要がないため、メンバBの故障が、従来技術のように、SIPメッセージの担当メンバのすべての変更になるのではなく、一部のメンバの変更だけで済むメリットがある。
【0034】
(各装置の構成)
次に、本実施形態に係る信号振分複製先決定システム1を構成する各装置について、図1を参照して、具体的に説明する。
【0035】
<信号振分複製先決定装置>
信号振分複製先決定装置10は、外部装置(不図示)から一括してSIPメッセージ(呼制御信号)を受信し、呼制御サーバである各ノード(メンバ)20に振り分ける。また、信号振分複製先決定装置10は、振分先のノード(メンバ)20の呼情報242の複製先となるノード(バディ)を決定する。
【0036】
この信号振分複製先決定装置10は、図1に示すように、制御部11と、入出力部12と、メモリ部13と、記憶部14とを含んで構成される。
【0037】
入出力部12は、他の装置等との間の情報の入出力を行う。例えば、入出力部12は、外部装置(不図示)から入力されたSIPメッセージや、各ノード20からバディの故障情報等を受信し、各ノード(メンバ)20に対し、バディを通知する後記するバディ情報241(詳細は後記)等の送信を行う。また、この入出力部12は、通信回線を介して情報の送受信を行う通信インタフェースと、不図示のキーボード等の入力装置やモニタ等の出力装置等との間で入出力を行う入出力インタフェースとから構成される。
【0038】
制御部11は、信号振分複製先決定装置10全体の制御を司り、情報受信部111と、振分処理部112と、バディ通知部(複製先通知部)114と、情報送信部115とを含んで構成される。なお、この制御部11は、例えば、信号振分複製先決定装置10の記憶部14に格納されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)がメモリ部13であるRAM(Random Access Memory)に展開し実行することで実現される。
【0039】
情報受信部111は、入出力部12を介して、外部装置(不図示)からのSIPメッセージや、各ノード20からのバディの故障情報等を取得する。
【0040】
振分処理部112は、情報受信部111からSIPメッセージを受け取り、そのSIPメッセージのSAS-IDを、閉じたID空間上に配置することで、振分先となるノード(メンバ)20を決定する。
具体的には、振分処理部112は、ハッシュ値計算部113を備えており、例えば、コンシステントハッシュ法(時計回り方式)を用いて、各ノード20のID(IPアドレス等)のハッシュ値を計算し、閉じたID空間(ハッシュ空間)上に各サーバ(メンバ)20を配置する。そして、振分処理部112は、情報受信部111から、SIPメッセージを受け取ると、そのSIPメッセージのSAS-IDのハッシュ値を、ハッシュ値計算部113が計算し、閉じたID空間(ハッシュ空間)上に配置する。続いて、振分処理部112は、閉じたID空間(ハッシュ空間)上でのSAS-IDのハッシュ値の配置から、時計回りに最初に配置されたノード(メンバ)20を、振分先として決定する。
【0041】
また、振分処理部112は、閉じたID空間のノード20の配置に基づき、各ノード(メンバ)20の呼情報242の複製先となるノード(バディ)20を決定する。
具体的には、振分処理部112は、閉じたID空間(ハッシュ空間)上の各メンバの配置から、時計回りに次に位置するノード20をバディとして決定する。
そして、振分処理部112は、決定したメンバのノード20とバディのノード20との組み合わせを示すメンバ-バディ情報141を生成し、記憶部14に記憶する。
【0042】
なお、信号振分複製先決定装置10は、呼情報242の複製(呼複製情報243)を記憶するバディの保持台数を2台以上設定する場合は、自メンバとその時計回りに配置されバディに決定されたメンバを除いて、そのバディの時計回りに配置された次のメンバを2番目のバディとして決定する。3台目以降も、同様に、最後に決定されたバディに対して、時計回りに次に配置されたメンバをバディとする。
【0043】
また、振分処理部112は、いずれかのノード(メンバ)20からバディの故障情報を、情報受信部111を介して取得すると、閉じたID空間(ハッシュ空間)上から、故障したノード(バディ)20を取り除く。このことにより、振分処理部112は、故障したノード20が担当していた担当領域を、故障したノード20のバディであるノード20に変更する処理を行う。
【0044】
振分処理部112は、新たなノード20が信号振分複製先決定システム1に追加される場合には、その増設されるノード20の情報を、システムの管理者等から入出力部12を介して取得し、その増設されるノード20のID(例えば、IPアドレス)のハッシュ値を、ハッシュ値計算部113により、所定のハッシュ関数を用いて計算し、閉じたID空間(ハッシュ空間)上に配置する。
そして、振分処理部112は、閉じたID空間(ハッシュ空間)上の各メンバの配置から、時計回りに次に位置するノード20をバディとして決定する。そして、振分処理部112は、増設されたノード20が加わったメンバ-バディ情報141を新たに生成し、記憶部14に記憶されているメンバ-バディ情報141を更新する。
【0045】
バディ通知部(複製先通知部)114は、記憶部14にメンバ-バディ情報141が生成されたことを契機に、各ノード(メンバ)20ごとに、そのノード(メンバ)20の呼情報242の複製先となるバディを通知する(バディ通知)。
また、バディ通知部114は、メンバ-バディ情報141が更新されると、新たに増設されたメンバ、および、バディが変更となったメンバに対して、バディを通知する(バディ通知)。
【0046】
情報送信部115は、入出力部12を介して、各ノード(メンバ)20に対し、バディ通知や、SIPメッセージ等を送信する。
【0047】
次に、記憶部14は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶装置からなり、メンバ-バディ情報141を記憶している。
【0048】
メモリ部13は、RAM等の一次記憶装置からなり、制御部11によるデータ処理に必要な情報を一次的に記憶している。
【0049】
<ノード>
次に、図1を参照して、本実施形態に係るノード20について説明する。ノード20は、信号振分複製先決定装置10からSIPメッセージ(呼制御信号)を受信し、送信元と送信先とのセッション接続を行う呼制御サーバであり、図1に示すように、制御部21と、入出力部22と、メモリ部23と、記憶部24とを含んで構成される。
【0050】
入出力部22は、他の装置等との間の情報の入出力を行う。例えば、入出力部22は、信号振分複製先決定装置10から振り分けられたSIPメッセージや、バディ通知等を受信し、信号振分複製先決定装置10に対して、バディの故障情報等の送信を行う。また、この入出力部22は、通信回線を介して情報の送受信を行う通信インタフェースと、不図示のキーボード等の入力装置やモニタ等の出力装置等との間で入出力を行う入出力インタフェースとから構成される。
【0051】
制御部21は、ノード20全体の制御を司り、情報受信部211と、呼接続処理部212と、呼情報管理部213と、バディ監視部(複製先監視部)214と、情報送信部215とを含んで構成される。なお、この制御部21は、例えば、ノード20の記憶部24に格納されたプログラムをCPUがメモリ部23であるRAMに展開し実行することで実現される。
【0052】
情報受信部211は、入出力部22を介して、信号振分複製先決定装置10からのSIPメッセージや、バディ通知等を取得する。
【0053】
呼接続処理部212は、SIPメッセージに基づき、ユーザ認証や、電話番号からIPアドレスへの変換、接続先へのルーティング等の処理を行う。
【0054】
呼情報管理部213は、信号振分複製先決定装置10から自ノード20のバディを示すバディ通知を受信し、記憶部24内にバディ情報241として記憶する。
呼情報管理部213は、受信したSIPメッセージに基づき、SAS-ID、送信元識別番号、送信先識別番号を含む呼情報242を生成し、記憶部24に記憶する。そして、呼情報管理部213は、例えば、新たな呼情報242を記憶したことを契機として、その呼情報242の複製である呼複製情報243を生成し、バディ情報241に示されるバディへ送信する。
また、呼情報管理部213は、自身がバディであるとき、メンバから受信した呼複製情報243を記憶部24に記憶する。
【0055】
バディ監視部(複製先監視部)214は、自メンバのバディに向けて確認メッセージを送信し、バディから確認応答メッセージを受信することで、バディの存在を確認する。なお、ノード20がバディに該当するとき、バディ監視部214は、メンバが送信した確認メッセージを受信すると、メンバに対して確認応答メッセージを返信する。
【0056】
情報送信部215は、入出力部22を介して、信号振分複製先決定装置10にバディの故障情報を送信したり、自メンバのバディに呼複製情報243を送信したりする。
【0057】
次に、記憶部24は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶装置からなり、バディ情報241、呼情報242、呼複製情報243等を記憶している。
【0058】
メモリ部23は、RAM等の一次記憶装置からなり、制御部21によるデータ処理に必要な情報を一次的に記憶している。
【0059】
(信号振分複製先決定処理)
次に、本実施形態に係る信号振分複製先決定システム1が行う信号振分複製先決定処理について詳細に説明する。まず、初期設定時および正常時の信号振分複製先決定処理について説明し、続いて、ノード減設(故障)時の信号振分複製先決定処理、ノード増設時の信号振分複製先決定処理について説明する。
【0060】
<初期設定時および正常時の信号振分複製先決定処理>
次に、図3を参照して、信号振分複製先決定システム1が行う、初期設定時および正常時の信号振分複製先決定処理について説明する(適宜、図1および図2参照)。
初期設定時において、信号振分複製先決定装置10の振分処理部112(ハッシュ値計算部113)は、図2に示すように、各ノード20のID(IPアドレス等)に対して、ハッシュ値を計算し、閉じたID空間(ハッシュ空間)上に配置する。そして、閉じたID空間上で時計回りに次のノード20を自メンバのバディに決定する。また、振分処理部112は、SIPメッセージのSAS-IDのハッシュ値を計算し、時計回りに最初に配置されたノード(メンバ)20を、振分先として決定する。以下、図3を参照して詳細に説明する。
【0061】
図3は、本実施形態に係る信号振分複製先決定システム1の初期設定時および正常時の動作を示すシーケンス図である。
【0062】
まず、信号振分複製先決定装置10の振分処理部112は、自身と接続する各ノード(メンバ)20のID(例えば、IPアドレス)のハッシュ値を、ハッシュ値計算部113が、所定のハッシュ関数により計算し、閉じたID空間(ハッシュ空間)上に配置する(ステップS1)。
【0063】
次に、振分処理部112は、閉じたID空間(ハッシュ空間)上の各ノード(メンバ)20の配置に基づき、そのノード(メンバ)20について、時計回りで最初のノード20をバディとし、記憶部14内に、メンバ-バディ情報141を生成する。そして、振分処理部112は、そのノード(メンバ)20ごとのバディとなるノード20を示すバディ通知(複製先情報)を、各ノード(メンバ)20に対し送信する(ステップS2)。ここでは、例えば、メンバAに対しては、メンバBをバディとして通知し、メンバBに対しては、メンバCをバディとして通知する(図2参照)。各ノード(メンバ)20は、バディ通知を受信し、記憶部24にバディ情報241として記憶する。
【0064】
そして、信号振分複製先決定装置10は、SIPメッセージを受信すると、振分処理部112(ハッシュ値計算部113)が、そのSIPメッセージに付されたSAS-IDのハッシュ値を、所定のハッシュ関数により計算し、閉じたID空間(ハッシュ空間)上に配置する。そして、振分処理部112は、そのSAS-IDのハッシュ値のハッシュ空間上での配置から、時計回りに最初に配置されたノード(メンバ)20を、振分先として決定する(ステップS3)。続いて、振分処理部112は、そのSIPメッセージを振分先となるノード(メンバ)20に送信する(ステップS4)。図3においては、振分処理部112が、メンバAを振分先として決定し、SIPメッセージをメンバAに送信したことを示している。
【0065】
ノード20(メンバA)は、信号振分複製先決定装置10から、SIPメッセージを受信すると、ノード20の呼接続処理部212が、そのSIPメッセージを送信先に転送する呼処理を実行する(ステップS5)。
【0066】
次に、ノード20(メンバA)の呼情報管理部213は、そのSIPメッセージから、SAS-ID、送信元識別番号、送信先識別番号を含む呼情報242を生成し、記憶部24に記憶する(ステップS6)。
【0067】
続いて、呼情報管理部213は、呼情報242の複製である呼複製情報243を生成し、バディ情報241に示されるバディへ送信する(ステップS7)。ここでは、メンバAからバディであるメンバBへ、呼複製情報243が送信される。
【0068】
呼複製情報243を受信したバディとなるメンバBは、自身の記憶部24にその呼複製情報243を記憶する(ステップS8)。
【0069】
本実施形態に係る信号振分複製先決定処理(正常時)においては、信号振分複製先決定装置10が、SIPメッセージを受信すると、上記説明したステップS3の振分先決定処理を行い、振分先に決定したノード(メンバ)20へSIPメッセージを送信し、そのバディに呼複製情報243を記憶させることができる。
【0070】
<減設時の信号振分複製先決定処理>
次に、図5を参照して、信号振分複製先決定システム1が行う、ノード減設(故障)時の信号振分複製先決定処理について説明する(適宜、図1および図4参照)。
ノード(メンバ)20が故障等により減設された場合、信号振分複製先決定装置10は、閉じたID空間(ハッシュ空間)上で、その減設されたノード(メンバ)20が担当していた領域を、時計回りで次のメンバに担当させるように処理する。図4に示す例では、メンバBが故障により減設されたため、メンバBの担当領域を、時計回りで次に位置するメンバCが担当する。メンバCは、SAS−B(呼情報242)の複製(呼複製情報243)を記憶しているため、メンバBが担当していたSIPメッセージを受信しても、グラビテーションを発生することなく、処理を継続することができる。以下、図5を参照して詳細に説明する。
【0071】
図5は、本実施形態に係る信号振分複製先決定システム1のノード減設時の動作を示すシーケンス図である。
【0072】
まず、各ノード20(メンバA,B,C,D)のバディ監視部214は、自身のバディに対して確認メッセージを送信し(ステップS10)、バディとなるノード20から、確認応答メッセージを受信することで(ステップS11)、バディの存在を確認する。
【0073】
そして、バディ監視部214は、バディに送信した確認メッセージの応答が、所定時間内にないことなどにより、バディに故障等が発生したことを検出し(ステップS12)、ノード(バディ)20の故障情報を、信号振分複製先決定装置10へ送信する。ここでは、メンバAのバディであるメンバBに故障が発生し、メンバBの故障情報を、メンバAのバディ監視部214が、信号振分複製先決定装置10へ送信するものとする。
【0074】
信号振分複製先決定装置10の振分処理部112は、閉じたID空間(ハッシュ空間)上から、故障したノード20(ここでは、メンバB)を取り除き、メンバBの担当領域を、閉じたID空間(ハッシュ空間)上で時計回りに次のノード20(メンバC)が担当するように変更する(ステップS13;担当領域の変更処理)。また、振分処理部112は、記憶部14内のメンバ-バディ情報141において、メンバAのバディを、メンバBからメンバCへ変更する。
【0075】
そして、信号振分複製先決定装置10のバディ通知部(複製先通知部)114は、バディの故障情報を送信したノード20(メンバA)に対して、変更したメンバ-バディ情報141に基づき、そのメンバAのバディとなるメンバCを示す新たなバディ通知(複製先情報)を、そのメンバAに対し送信する(ステップS14)。
【0076】
新たなバディ通知を受信したバディの故障情報を送信したノード20(メンバA)は、呼情報242の複製である呼複製情報243を生成し、そのバディ(メンバC)に送信する(ステップS15)。そして、メンバCは、呼複製情報243を受信し、記憶部24の呼複製情報243を更新して記憶する(ステップS16)。なお、メンバCは、呼複製情報243を受信することで、自身がバディである場合のメンバが、メンバBから、呼複製情報243を送信してきたメンバAに変更されたことを知ることができる。
【0077】
ここで、信号振分複製先決定装置10は、SIPメッセージを受信し、振分処理部112(ハッシュ値計算部113)が、そのSIPメッセージのSAS-IDのハッシュ値を、所定のハッシュ関数により計算する。その結果、故障したノード20(メンバB)の担当領域の値として、閉じたID空間(ハッシュ空間)に配置された場合には、振分処理部112は、メンバCを振分先として決定する(ステップS17)。
そして、振分処理部112は、そのSIPメッセージを決定した振分先となるメンバCへ送信する(ステップS18)。
【0078】
次に、メンバCは、信号振分複製先決定装置10から、SIPメッセージを受信し、呼接続処理部212が、呼複製情報243を参照して呼処理を行う(ステップS19)。
具体的には、メンバCの呼接続処理部212は、まず、自身の記憶部24内の呼情報242を検索し、受信したSIPメッセージに含まれるSAS-IDに該当するSAS-IDの呼情報242を記憶しているか否かを判定する。ここでは、受信したSIPメッセージは、故障したノード20(メンバB)が担当していたため、呼情報242には記憶されていないと判定される。次に、呼接続処理部212は、呼複製情報243を検索し、受信したSIPメッセージに含まれるSAS-IDに該当するSAS-IDの呼情報242を記憶しているか否かを判定する。ここでは、メンバCは、メンバBの呼情報242の複製である呼複製情報243を記憶しているため、該当するSAS-IDの呼情報242が記憶されている。よって、呼接続処理部212は、この呼複製情報243に記憶されたSAS-IDの呼情報242に基づき、SIPメッセージの転送等の呼処理を実行する。
【0079】
次に、メンバCの呼情報管理部213は、自身の呼情報242と、故障したノード20であるメンバBから取得した呼複製情報243とを統合し、新たな呼情報242を生成する(ステップS20)。続いて、呼情報管理部213は、新たに生成した呼情報242の複製である新たな呼複製情報243を生成し、バディであるメンバDに対して送信する(ステップS21)。次に、バディであるメンバDは、新たな呼複製情報243を受信し、記憶部24の呼複製情報243を更新して記憶する(ステップS22)。
【0080】
このようにすることで、本実施形態に係る、信号振分複製先決定システム1、信号振分複製先決定方法およびプログラムによれば、減設されたメンバが担当していたSIPメッセージを、その減設されたメンバのSIPメッセージの呼複製情報243を記憶しているメンバに振り分けるため、他のメンバへの問い合わせや、余計なグラビテーションを発生させずに、そのSIPメッセージの呼処理を継続できる。よって、従来技術に比べ、呼情報242を複製する処理時間を低減させ、呼制御サーバのクラスタ全体として、呼処理性能を向上させることができる。
【0081】
<増設時の信号振分複製先決定処理>
次に、図6を参照して、信号振分複製先決定システム1が行う、ノード増設時の信号振分複製先決定処理について説明する(適宜、図1参照)。なお、ここでは、信号振分複製先決定システム1の管理者(不図示)等から、信号振分複製先決定装置10の入出力部12を介して、増設するノード20(ここでは、メンバEとする)の情報が入力されたものとして説明する。
図6は、本実施形態に係る信号振分複製先決定システム1のノード増設時の動作を示すシーケンス図である。
【0082】
まず、信号振分複製先決定装置10の振分処理部112(ハッシュ値計算部113)は、増設されたノード20(メンバE)のID(例えば、IPアドレス)のハッシュ値を、所定のハッシュ関数により計算し、閉じたID空間(ハッシュ空間)上に配置する(ステップS30)。ここでは、ノード20Aとノード20Bとの間のハッシュ値として、メンバEが配置され、担当領域が変更されたものとする。
【0083】
次に、振分処理部112は、閉じたID空間(ハッシュ空間)上の各ノード20の配置に基づき、そのノード(メンバ)20について、時計回りで最初のノード20を、バディとし、新たなメンバ-バディ情報141を生成する。そして、振分処理部112は、記憶部14内に記憶してあるメンバ-バディ情報141との変更部分について更新する処理を行う(ステップS31)。
【0084】
続いて、信号振分複製先決定装置10のバディ通知部114は、新たに決定したバディを通知するため、増設したノード20(メンバE)と、そのメンバEとメンバ-バディ関係においてメンバとなるメンバAに対して、更新したメンバ-バディ情報141に基づき、そのノード(メンバ)20のバディ通知(複製先情報)を送信する(ステップS32)。具体的には、バディ通知部114は、メンバAに対しては、新たなバディとしてメンバEを通知する。また、バディ通知部114は、メンバEに対しては、バディとしてメンバBを通知する。
【0085】
新たなバディ通知(複製先情報)を受信した増設したノード20(メンバE)のメンバとなるノード20(メンバA)は、呼情報242の複製である呼複製情報243を生成し、そのバディ(メンバE)に送信する(ステップS33)。そして、バディであるメンバEは、呼複製情報243を受信し記憶部24に記憶する(ステップS34)。
【0086】
ここで、信号振分複製先決定装置10は、SIPメッセージを受信し、振分処理部112が、そのSIPメッセージのSAS-IDのハッシュ値を、ハッシュ値計算部113が計算し、増設したノード20(メンバE)の担当領域の値として、閉じたID空間(ハッシュ空間)に配置した場合には、そのメンバEを振分先として決定する(ステップS35)。
そして、振分処理部112は、そのSIPメッセージを決定した振分先のメンバEへ送信する(ステップS36)。
【0087】
メンバEは、信号振分複製先決定装置10から、SIPメッセージを受信すると、メンバEの呼接続処理部212が、そのSIPメッセージを送信先に転送する呼処理を実行する(ステップS37)。
【0088】
次に、メンバEの呼情報管理部213は、そのSIPメッセージから、SAS-ID、送信元識別番号、送信先識別番号を含む呼情報242を生成し、記憶部24に記憶する(ステップS38)。
【0089】
続いて、メンバEの呼情報管理部213は、呼情報242の複製である呼複製情報243を生成し、バディ情報241に示されるメンバBへ送信する(ステップS39)。
【0090】
呼複製情報243を受信したバディとなるメンバBは、自身の記憶部24にその呼複製情報243を記憶する(ステップS40)。なお、メンバBは、呼複製情報243を受信することで、自身がバディである場合のメンバが、メンバAから、呼複製情報243を送信してきたメンバEに変更されたことを知ることができる。
【0091】
ここで、信号振分複製先決定装置10は、SIPメッセージを受信し、振分処理部112が、そのSIPメッセージのSAS-IDのハッシュ値を、ハッシュ値計算部113が計算し、増設したメンバEのバディであるメンバBの担当領域の値として、閉じたID空間(ハッシュ空間)に配置した場合には、そのメンバBを振分先として決定する(ステップS41)。
そして、振分処理部112は、そのSIPメッセージを決定した振分先のメンバBへ送信する(ステップS42)。
【0092】
メンバBは、信号振分複製先決定装置10から、SIPメッセージを受信すると、呼接続処理部212が、自己の呼情報242を参照し、そのSIPメッセージを送信先に転送する呼処理を実行する(ステップS43)。
【0093】
次に、メンバBの呼情報管理部213は、自身の呼情報242から、閉じたID空間(ハッシュ空間)上において、自身の担当領域外となったSIPメッセージの呼情報242を削除して、新たな呼情報242を生成する(ステップS44)。ここで、呼情報管理部213は、メンバEから受信した呼複製情報243を参照し、重複するSAS-IDの呼情報242を削除することで、新たな呼情報242を生成することができる。
【0094】
続いて、メンバBの呼情報管理部213は、新たに生成した呼情報242の複製である新たな呼複製情報243を生成し、バディであるメンバCに対して送信する(ステップS45)。次に、バディであるメンバCは、新たな呼複製情報243を受信し、記憶部24の呼複製情報243を更新して記憶する(ステップS46)。
【0095】
このようにすることで、本実施形態に係る、信号振分複製先決定システム1、信号振分複製先決定方法およびプログラムによれば、ノード20が増設された場合であっても、各ノード(メンバ)20は、SIPメッセージを受信した際に、自身の記憶部24内の呼情報242に基づき呼処理を行うことができるため、余計なグラビテーションを発生させず、呼処理を継続できる。したがって、呼制御サーバのクラスタ全体として、スケーラブルに呼処理性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 信号振分複製先決定システム
10 信号振分複製先決定装置
11,21 制御部
12,22 入出力部
13,23 メモリ部
14,24 記憶部
20 ノード(呼制御サーバ)
111,211 情報受信部
112 振分処理部
113 ハッシュ値計算部
114 バディ通知部(複製先通知部)
115,215 情報送信部
141 メンバ-バディ情報
212 呼接続処理部
213 呼情報管理部
214 バディ監視部(複製先監視部)
241 バディ情報
242 呼情報
243 呼複製情報


【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼制御信号を受信し、複数の呼制御サーバのうちから前記呼制御信号の振分先を決定し、前記呼制御信号のセッションの接続確認に用いられる呼情報の複製先を決定する信号振分複製先決定装置と、前記信号振分複製先決定装置により振り分けられた前記呼制御信号を受信し、送信先へ転送する呼処理を行う前記複数の呼制御サーバとを備える信号振分複製先決定システムであって、
前記信号振分複製先決定装置は、
前記複数の呼制御サーバそれぞれのIDを、所定の並び順の閉じたID空間上に配置し、自呼制御サーバの前記閉じたID空間上での配置位置から、所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記呼情報の複製先として決定し、前記所定回りで前記自呼制御サーバから1つ前に配置された前記呼制御サーバのIDの次の値から、前記所定回りに前記自呼制御サーバのIDまでの値を、前記自呼制御サーバの担当領域に設定し、
前記呼制御信号を受信すると、前記呼制御信号に含まれるセッションに固有なIDを抽出して、前記閉じたID空間に配置し、前記セッションに固有なIDが配置された位置から、所定回りに最初に配置されている前記呼制御サーバを、当該呼制御信号の振分先に決定し、
前記決定した振分先の前記呼制御サーバに、当該呼制御信号を送信する振分処理部と、
前記振分処理部が決定した前記呼制御サーバごとの前記複製先を示す複製先情報を、前記呼制御サーバそれぞれに送信する複製先通知部と、を備え、
前記呼制御サーバは、
前記信号振分複製先決定装置から、前記呼制御信号を受信し、送信先へ転送する呼処理を行う呼接続処理部と、
前記複製先情報を受信して、記憶部に記憶し、
前記受信した呼制御信号に基づき、前記セッションに固有なIDを含む前記呼情報を生成して前記記憶部に記憶し、
前記生成した呼情報の複製である呼複製情報を生成し、前記受信した複製先情報に示される前記複製先の呼制御サーバに送信し、
前記呼制御サーバ自身が前記複製先情報に示される前記複製先に該当する場合に、前記呼複製情報を受信し、前記記憶部に記憶する呼情報管理部と、
前記複製先の呼制御サーバの故障を監視する複製先監視部と、を備え、
前記呼制御サーバの前記複製先監視部は、
前記複製先の呼制御サーバの故障を検出し、その故障情報を、前記信号振分複製先決定装置に送信し、
前記信号振分複製先決定装置の振分処理部は、
前記故障情報を受信すると、前記閉じたID空間に配置された前記故障した呼制御サーバを、前記閉じたID空間から取り除き、前記故障した呼制御サーバの前記担当領域を、前記故障した呼制御サーバの前記複製先の呼制御サーバに変更し、
前記故障した呼制御サーバを取り除いた前記閉じたID空間上での各呼制御サーバの配置位置から、前記所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記複製先として新たに設定し、前記新たな設定により前記複製先が変更となった前記呼制御サーバに、前記複製先情報を送信すること
を特徴とする信号振分複製先決定システム。
【請求項2】
前記信号振分複製先決定装置は、
新たに増設される前記呼制御サーバのIDを含む情報を、入力部を介して取得した場合に、
前記振分処理部は、前記増設される呼制御サーバのIDを、前記閉じたID空間上に配置し、前記増設される呼制御サーバの前記閉じたID空間での配置位置から、前記所定回りで前記増設される呼制御サーバから1つ前に配置された前記呼制御サーバのIDの次の値から、前記所定回りに前記増設される呼制御サーバまでの値を、前記増設される呼制御サーバの前記担当領域に変更し、
前記増設される呼制御サーバを配置した前記閉じたID空間上での各呼制御サーバの配置位置から、前記所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記複製先として新たに設定し、前記新たな設定により前記複製先が変更となった前記呼制御サーバに、前記複製先情報を送信すること
を特徴とする請求項1に記載の信号振分複製先決定システム。
【請求項3】
前記振分処理部は、コンシステントハッシュ法を用いて、前記呼制御サーバのIDおよび前記呼制御信号に含まれる前記セッションに固有なIDのハッシュ値を、所定のハッシュ関数により計算し、ハッシュ空間上に配置すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の信号振分複製先決定システム。
【請求項4】
呼制御信号を受信し、複数の呼制御サーバのうちから前記呼制御信号の振分先を決定し、前記呼制御信号のセッションの接続確認に用いられる呼情報の複製先を決定する信号振分複製先決定装置と、前記信号振分複製先決定装置により振り分けられた前記呼制御信号を受信し、送信先へ転送する呼処理を行う前記複数の呼制御サーバとを備える信号振分複製先決定システムの信号振分複製先決定方法であって、
前記信号振分複製先決定装置は、
前記複数の呼制御サーバそれぞれのIDを、所定の並び順の閉じたID空間上に配置し、自呼制御サーバの前記閉じたID空間上での配置位置から、所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記呼情報の複製先として決定し、前記所定回りで前記自呼制御サーバから1つ前に配置された前記呼制御サーバのIDの次の値から、前記所定回りに前記自呼制御サーバのIDまでの値を、前記自呼制御サーバの担当領域に設定するステップと、
前記呼制御信号を受信すると、前記呼制御信号に含まれるセッションに固有なIDを抽出して、前記閉じたID空間に配置し、前記セッションに固有なIDが配置された位置から、所定回りに最初に配置されている前記呼制御サーバを、当該呼制御信号の振分先に決定するステップと、
前記決定した振分先の前記呼制御サーバに、当該呼制御信号を送信するステップと、
前記決定した呼制御サーバごとの前記複製先を示す複製先情報を、前記呼制御サーバそれぞれに送信するステップと、を実行し、
前記呼制御サーバは、
前記信号振分複製先決定装置から、前記呼制御信号を受信し、送信先へ転送する呼処理を行うステップと、
前記複製先情報を受信して、記憶部に記憶するステップと、
前記受信した呼制御信号に基づき、前記セッションに固有なIDを含む前記呼情報を生成して前記記憶部に記憶するステップと、
前記生成した呼情報の複製である呼複製情報を生成し、前記受信した複製先情報に示される前記複製先の呼制御サーバに送信ステップと、
前記呼制御サーバ自身が前記複製先情報に示される前記複製先に該当する場合に、前記呼複製情報を受信し、前記記憶部に記憶するステップと、
前記複製先の呼制御サーバの故障を監視するステップと、を実行し、
前記呼制御サーバは、
前記複製先の呼制御サーバの故障を監視するステップにおいて、前記複製先の呼制御サーバの故障を検出した場合に、その故障情報を、前記信号振分複製先決定装置に送信するステップを実行し、
前記信号振分複製先決定装置は、
前記故障情報を受信すると、前記閉じたID空間に配置された前記故障した呼制御サーバを、前記閉じたID空間から取り除き、前記故障した呼制御サーバの前記担当領域を、前記故障した呼制御サーバの前記複製先の呼制御サーバに変更するステップと、
前記故障した呼制御サーバを取り除いた前記閉じたID空間上での各呼制御サーバの配置位置から、前記所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記複製先として新たに設定し、前記新たな設定により前記複製先が変更となった前記呼制御サーバに、前記複製先情報を送信するステップと、を実行すること
を特徴とする信号振分複製先決定方法。
【請求項5】
前記信号振分複製先決定装置は、
新たに増設される前記呼制御サーバのIDを含む情報を、入力部を介して取得した場合に、
前記増設される呼制御サーバのIDを、前記閉じたID空間上に配置し、前記増設される呼制御サーバの前記閉じたID空間での配置位置から、前記所定回りで前記増設される呼制御サーバから1つ前に配置された前記呼制御サーバのIDの次の値から、前記所定回りに前記増設される呼制御サーバまでの値を、前記増設される呼制御サーバの前記担当領域に変更するステップと、
前記増設される呼制御サーバを配置した前記閉じたID空間上での各呼制御サーバの配置位置から、前記所定回りに最初に配置された呼制御サーバを、前記複製先として新たに設定し、前記新たな設定により前記複製先が変更となった前記呼制御サーバに、前記複製先情報を送信するステップと、を実行すること
を特徴とする請求項4に記載の信号振分複製先決定方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の信号振分複製先決定方法を、コンピュータに実行させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−248091(P2012−248091A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120760(P2011−120760)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】