説明

信号生成装置及び信号処理装置

【課題】他の音に影響を及ぼすことなく、入力された音響信号を異なる音響信号に変換できる音響信号を生成して出力する信号生成装置、及び信号生成装置が出力した音響信号を異なる音響信号に変換する信号処理装置を提供する。
【解決手段】信号生成装置2は、オリジナルの可聴音信号が入力されると、このオリジナルの可聴音信号を変換する変換情報を生成し、この変換情報をオリジナルの可聴音信号に重畳して出力する。この変換情報は非可聴音により生成されるので、信号生成装置2が出力した信号を再生すると、オリジナルの可聴音信号が聞こえる。また、信号処理装置3は、信号生成装置2が出力した信号が入力されると、変換情報に基づいてオリジナルの可聴音信号を異なる可聴音信号に変換して出力する。信号生成装置2が出力した信号を再生すると、オリジナルの可聴音信号とは異なるアレンジされた可聴音信号が聞こえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可聴音信号に情報を重畳した信号を生成して出力する信号生成装置、及び信号生成装置が出力した可聴音信号を処理して出力する信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、元の音響信号から特定の音響信号を抑制することで、入力された音響信号を異なる音響信号に変換して出力する装置がある。
【0003】
例えば、ステレオ再生用に加工された2チャンネルの音響信号の差信号を生成することで、中央付近に定位するボーカル成分を抑制して演奏音の成分を出力するステレオ再生装置があった。
【0004】
また、2チャンネルの原信号の和信号を、ボーカル成分を通過阻止する帯域阻止フィルタに通過させ、その通過信号と、2チャンネルの原信号の差信号と、を同相で加算することで、ステレオ/モノラルに拘わらず、回路の切り換えなしでボーカル成分を減衰させて、演奏音の成分を出力することが可能なボーカルキャンセル回路があった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−311585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のステレオ再生装置では、中央付近に定位する音声は抑制できるが、中央付近からずれた位置に定位する音声は完全に抑制できなかった。また、特許文献1に記載の発明では、モノラル音が入力された場合、楽器等の演奏音の成分もボーカル成分と同じ帯域が減衰するため、再生音の帯域バランスが崩れて迫力の無い音になるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、他の音に影響を及ぼすことなく、入力された音響信号を異なる音響信号に変換できる音響信号を生成して出力する信号生成装置、及び信号生成装置が出力した音響信号を異なる音響信号に変換する信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の信号生成装置は、オリジナルの可聴音信号を異なる可聴音信号に変換する変換情報であって、非可聴音により生成された変換情報を、重畳部がオリジナルの可聴音信号に重畳して重畳信号を生成する。そして、出力部がこの重畳信号を出力する。信号生成装置は、オリジナルの可聴音信号に非可聴音により生成された変換情報が重畳された重畳信号を出力するので、信号生成装置が出力した信号をオリジナルの可聴音信号として聴取できる。また、重畳信号には、オリジナルの可聴音信号を異なる可聴音信号に変換する変換情報が重畳されているので、この変換情報に基づいてオリジナルの可聴音信号を異なる可聴音信号に変換できる可聴音信号を生成することができる。
【0009】
また、この発明の信号生成装置は、変換情報として、オリジナルの可聴音信号の周波数帯域と異なる帯域に変調された、オリジナルの可聴音信号に含まれるいずれかの可聴音信号を、オリジナルの可聴音信号に重畳する。
【0010】
この構成においては、変換情報として、オリジナルの可聴音信号に含まれるいずれかの可聴音信号が非可聴音信号として重畳されているので、非可聴音信号を可聴音信号に復調することで、オリジナルの可聴音信号からいずれかの可聴音信号を消去する処理を行うことが可能となる。
【0011】
なお、この発明において非可聴音信号とは、オリジナルの可聴音信号に重畳されていることが、聴取者には聞き分けられない(聴き取れない)音響信号のことであり、人の可聴範囲の上限である20kHz以上の帯域に限るものではない。例えば、ある年代の聴取者における可聴範囲の上限が14kHzであれば、それ以上の帯域の音響信号は非可聴音信号である。また、音響透かしなどのように、重畳されていることが判別できない音響信号も非可聴音信号である。
【0012】
また、この発明の信号生成装置は、変換情報として、オリジナルの可聴音信号に含まれるいずれかの可聴音信号を、オリジナルの可聴音信号から消去するための情報を、オリジナルの可聴音信号に重畳する。
【0013】
この構成においては、オリジナルの可聴音信号に含まれるいずれかの可聴音信号を消去するための情報が重畳されているので、この情報に基づいて可聴音信号を生成したり可聴音信号を消去するための調整を行ったりすることで、オリジナルの可聴音信号からいずれかの可聴音信号を消去する処理を行うことが可能となる。
【0014】
また、この発明の信号生成装置は、変換情報として、オリジナルの可聴音信号の周波数帯域と異なる帯域に変調された、オリジナルの可聴音信号に含まれる複数の可聴音信号を、オリジナルの可聴音信号に重畳する。
【0015】
この構成においては、変換情報として、オリジナルの可聴音信号に含まれる複数の可聴音信号が重畳されているので、ユーザの希望に応じてオリジナルの可聴音信号から複数の可聴音信号や任意の可聴音信号を消去する処理を行うことが可能となる。
【0016】
この発明の信号処理装置は、信号生成装置が出力した重畳信号が入力部に入力されると、抽出部で重畳信号から変換情報を抽出し、変換部で、変換情報に基づいて入力部に入力されたオリジナルの可聴音信号を異なる可聴音信号に変換し、この可聴音信号を可聴音出力部が出力する。
【0017】
この構成においては、信号処理装置は、信号生成装置が出力した重畳信号に重畳された変換情報に基づいて、オリジナルの可聴音信号を異なる可聴音信号に変換するので、ユーザにオリジナルの可聴音信号をアレンジした可聴音信号を聴取させることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、信号生成装置は、他の音に影響を及ぼすことなく、入力された音響信号を異なる音響信号に変換して出力することができる可聴音信号を生成できる。また、信号処理装置は、信号生成装置が出力した可聴音信号が入力されると、他の音に影響を及ぼすことなく、入力された音響信号を異なる音響信号に変換して出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る信号生成装置及び信号処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】信号生成装置の各部が入出力する信号のスペクトルを示す図である。
【図3】信号処理装置の各部が入出力する信号のスペクトルを示す図である。
【図4】第1実施形態とは異なる構成の信号生成装置及び信号処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】信号生成装置のスピーカに入力される重畳信号のスペクトルを示す図である。
【図6】第2実施形態とは異なる構成の信号生成装置及び信号処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】信号生成装置のスピーカに入力される重畳信号のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の概要を説明する。信号生成装置は、オリジナルの可聴音信号が入力されると、このオリジナルの可聴音信号を変換する変換情報を生成し、この変換情報をオリジナルの可聴音信号に重畳して出力する。この変換情報は非可聴音により生成されるので、信号生成装置が出力した信号を再生すると、オリジナルの可聴音信号が聞こえる。また、信号処理装置は、信号生成装置が出力した信号が入力されると、変換情報に基づいてオリジナルの可聴音信号を異なる可聴音信号に変換して出力する。信号生成装置が出力した信号を再生すると、オリジナルの可聴音信号とは異なるアレンジされた可聴音信号が聞こえる。
【0021】
なお、この発明において非可聴音信号とは、オリジナルの可聴音信号に重畳されていることが、聴取者には聞き分けられない(聴き取れない)音響信号のことであり、人の可聴範囲の上限である20kHz以上の帯域に限るものではない。例えば、ある年代の聴取者における可聴範囲の上限が14kHzであれば、それ以上の帯域の音響信号は非可聴音信号である。また、音響透かしなどのように、重畳されていることが判別できない音響信号も非可聴音信号である。
【0022】
以下、信号生成装置及び信号処理装置の詳細について説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る信号生成装置及び信号処理装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、信号生成装置の各部が入出力する信号のスペクトルを示す図であり、(A)は加算器に入力されるミックス音信号のスペクトル、(B)は変調器に入力されるキャンセル音信号のスペクトル、(C)は加算器に入力される超音波帯域のキャンセル音信号のスペクトル、及び(D)はスピーカに入力される重畳信号のスペクトルを示す図である。図3は、信号処理装置の各部が入出力する信号のスペクトルを示す図であり、(A)はマイクロフォンが出力した重畳信号のスペクトル、(B)はBPFに抽出された超音波帯域のキャンセル音信号のスペクトル、(C)はLPFにより抽出されたミックス音信号のスペクトル、(D)は復調器で復調されたキャンセル音信号のスペクトル、及び(E)は減算器が出力したアレンジ音信号のスペクトルを示す図である。
【0024】
図1に示すように、信号処理システム1は、信号生成装置2と信号処理装置3を備えている。
【0025】
信号生成装置2は、変調器21(変調部に相当)、加算器22(重畳部に相当)、及びスピーカ23(出力部に相当)を備えている。
【0026】
信号処理装置3は、マイクロフォン31(入力部に相当)、BPF(バンドパスフィルタ)32(抽出部に相当)、復調器33、LPF(ローパスフィルタ)34、減算器35(変換部に相当)、及びスピーカ36(可聴音出力部に相当)を備えている。
【0027】
信号生成装置2では、加算器22に、不図示のコンテンツ再生装置が出力した可聴帯域の音響信号(オリジナルの可聴音信号:以下、ミックス音信号と称する。)が入力される。このミックス音信号は、複数の音響信号がミックスされており、周波数帯域は一例として10kHz以下である(図2(A)参照)。ミックス音信号は、モノラルでもステレオでもマルチチャンネルでも良い。また、変調器21に、可聴帯域の音響信号(以下、キャンセル音信号と称する。)が入力される。キャンセル音信号は、ミックス音信号に含まれる一部の音響信号であり、ミックス音信号からキャンセル音信号を消去(キャンセル)するための信号であり、例えば、不図示のコンテンツ再生装置から入力される。キャンセル音信号の周波数帯域は、一例として10kHz以下である(図2(B)参照)。
【0028】
信号生成装置2は、変調器21で、キャンセル音信号を可聴帯域から超音波帯域に変調して、変調したキャンセル音信号(非可聴音により生成された変調情報)を加算器22に入力する。変調器21で行う変調方法は、可聴帯域の音響信号を超音波帯域の信号に変調する方法であれば特に限定するものではなく、アナログ変調でもデジタル変調でも良い。図2には、キャリア周波数が36kHzのAM変調(DSB−TC)を行う例を示している。信号生成装置2は、加算器22で、変調器21から入力された超音波帯域のキャンセル音信号(図2(C)参照)を、前記のミックス音信号に重畳して重畳信号を出力する(図2(D)参照)。加算器22が出力した重畳信号は、不図示の増幅器で増幅されて、スピーカ23から放音(出力)される。
【0029】
なお、ミックス音信号を出力するコンテンツ再生装置としては、CD、DVD等を再生する光ディスク再生装置、放送波を受信するチューナー、インターネットを介してダウンロードしたコンテンツを再生するパソコン等が好適である。また、信号生成装置2にアナログ信号を入力してデジタル処理を行う場合、変調器(アナログ変調器)21の前段にA/Dコンバータ(以下、ADCと称する。)、加算器22の後段にD/Aコンバータ(以下、DACと称する。)を設けると良い。また、入力信号がデジタル信号の場合には、加算器22の後段にDACを設けると良い。
【0030】
信号処理装置3は、信号生成装置2が放音した重畳信号がマイクロフォン31から入力されると(図3(A)参照)、不図示の増幅器で増幅し、不図示のADCで重畳信号をデジタル化して、BPF32とLPF34に出力する。BPF32は、一例として通過帯域を26kHz〜46kHzに設定され、LPF34は、一例として通過帯域を0〜10kHzに設定されている。
【0031】
信号処理装置3は、BPF32により重畳信号から超音波帯域のキャンセル音信号を抽出し(図3(B)参照)、復調器33で可聴帯域のキャンセル音信号に復調し、減算器35に出力する(図3(D)参照)。なお、BPF32は、超音波帯域のキャンセル音信号のみ抽出するように帯域が予め設定されている。また、キャンセル音信号を上記のようにAM変調(DSB−TC)している場合には、包絡線検波を行ってキャンセル音信号を復調するように復調器33を構成すると良い。また、復調器33の後段に、復調したキャンセル音信号のゲインや位相をミックス音信号に対して、自動または手動で調整する調整器を設けると良い。この調整器は復調器33の前段に設けることも可能である。これにより、ミックス音信号からキャンセル音信号を精度良く消去(キャンセル)できる。
【0032】
信号処理装置3は、LPF34により重畳信号から可聴帯域のミックス音信号を抽出し、減算器35に出力する(図3(C)参照)。そして、減算器35で、ミックス音信号からキャンセル音信号を減算し、この減算した音響信号(以下、アレンジ音信号と称する。)を出力する(図3(E)参照)。減算器35が出力したアレンジ音信号は、不図示の増幅器で増幅されて、スピーカ36から放音(出力)される。
【0033】
このように、信号処理システム1では、ミックス音信号がモノラル、ステレオ、マルチチャンネルのいずれであっても、信号生成装置2は、アレンジ音信号に変換可能なミックス音信号を生成して出力する。また、信号処理装置3は、信号生成装置2が出力したミックス音信号が入力されると、ミックス音信号が含まれる他の音響信号に影響を及ぼすことなく、ミックス音信号からキャンセル音信号をキャンセルしてアレンジ音信号を出力する。
【0034】
なお、信号生成装置2において、変調器21でキャンセル音信号を変調する際に、逆相にするように設定しておくことで、信号処理装置3の減算器35を加算器に置換することができ、アレンジ音信号の生成処理を簡略化できる。
【0035】
信号処理システム1は、例えばカラオケ装置に適用できる。この場合、ガイドボーカル入りの楽曲をミックス音信号に設定し、ガイドボーカルをキャンセル音に設定すると、信号処理装置はガイドボーカル入りの楽曲を出力し、信号処理装置はアレンジ音信号として、ガイドボーカルがキャンセルされた楽器の演奏音を出力する。これにより、信号生成装置及び信号処理装置を使用することで、カラオケを行う際にユーザの習熟度に応じてガイドボーカルの有無を切り換えることができる。すなわち、本発明は、信号処理装置の有無によりオリジナルの可聴音信号とアレンジした可聴音信号との提供を切り換えるアプリケーションに適用できる。
【0036】
また、信号処理システム1は、例えば会員へ楽曲を提供する装置に適用できる。この場合、楽曲の純粋な音が聞こえないようにスクランブル音がミックスされた楽曲をミックス音信号に設定し、スクランブル音をキャンセル音信号に設定する。信号処理装置はスクランブル音がミックスされた楽曲を再生し、信号処理装置はスクランブル音がキャンセルされた楽曲を再生する。このとき、信号処理装置を予め会員に提供しておくことで、会員はスクランブル音がキャンセルされた楽曲を聴取でき、非会員はスクランブル音がキャンセルされない楽曲を聴取することになり、聴取者が会員か否かで提供する楽曲の品質を変えることができる。したがって、本発明は、試聴用や秘匿性を高めるためのアプリケーションに適用できる。
【0037】
なお、信号生成装置2及び信号処理装置3を以下のように構成することも可能である。すなわち、信号生成装置2の加算器22に入力するミックス音信号がキャンセル音信号を含まないように設定し、信号処理装置3の減算器35を加算器に置き換える。この場合、例えば、楽曲の演奏音をミックス音信号に設定し、ボーカルをキャンセル音信号に設定することで、信号生成装置2からは楽曲が再生される。また、信号処理装置3では、ボーカルが復調されて、楽曲の演奏音に重畳(加算)されるので、信号処理装置3からはボーカル入りの楽曲が再生される。これにより、会員ユーザにはボーカル入りの楽曲を提供するといったアプリケーションを提供できる。
【0038】
また、キャンセル音を変調する際に、パラメータが必要なフレーム単位での時間反転など容易には復調できない変調方法を用いることで、予め復調方法を知っているユーザのみが正常な音声に戻すことも可能である。これにより、特定のユーザ間において、音声信号を暗号化して送受信することができる。
【0039】
[第2実施形態]
図4は、第1実施形態とは異なる構成の信号生成装置及び信号処理装置の概略構成を示すブロック図である。図5は、信号生成装置のスピーカに入力される重畳信号のスペクトルを示す図である。
【0040】
ミックス音信号に重畳する変換情報としては、第1実施形態で説明したキャンセル音信号、つまり音響信号に限るものではなく、ミックス音信号からキャンセル音信号を消去するための情報をデジタル変調して重畳するように構成しても良い。この場合、信号生成装置と信号処理装置は以下のように構成すると良い。
【0041】
信号処理システム1Bは、信号生成装置4と信号処理装置5を備えている。信号生成装置4は、変調器41、加算器42、及びスピーカ43を備えている。信号処理装置5は、マイクロフォン51、BPF52、復調器53、キャンセル音生成器57、LPF54、減算器55、及びスピーカ56を備えている。
【0042】
図4に示す信号生成装置4では、ミックス音信号からキャンセル音信号を消去するための情報として、キャンセル音信号を生成するための情報(キャンセル音生成情報)を変調器41に入力する。キャンセル音生成情報は、例えば不図示のコンテンツ再生装置から入力されるように構成しても、不図示のキャンセル音生成器で生成するようにしても良い。ミックス音信号に含まれるキャンセル音信号としては、キャンセル音生成情報に基づいて信号処理装置5が、演算等により容易に生成できる音響信号が好ましい。
【0043】
また、信号処理装置5において、フィルタや演算器等を用いることでミックス音信号からキャンセル音信号を消去(キャンセル)できる場合には、ミックス音信号からキャンセル音信号を消去するための情報は、信号処理装置5に設けたフィルタや演算器等の調整情報とすることもできる。
【0044】
変調器41は、キャンセル音生成情報を、非可聴音信号にデジタル変調して加算器42に出力する。加算器42は、不図示のコンテンツ再生装置が出力したミックス音信号に、変調されたキャンセル音生成情報を重畳して重畳信号を出力する。加算器42が出力した重畳信号は、不図示の増幅器で増幅されて、スピーカ43から放音(出力)される。
【0045】
信号処理装置5は、信号生成装置4が放音した重畳信号がマイクロフォン51から入力されると、不図示の増幅器で増幅し、不図示のADCで重畳信号をデジタル化して、BPF52とLPF54に出力する。BPF52とLPF54は、BPF32とLPF34と同様に動作する。
【0046】
信号処理装置5は、BPF52により重畳信号から抽出された超音波帯域のキャンセル音生成情報を抽出して、復調器53でキャンセル音信号に復号し、キャンセル音生成器57でキャンセル音信号を生成して減算器55に出力する。
【0047】
信号処理装置5は、LPF54により重畳信号から可聴帯域のミックス音信号を抽出し、減算器55に出力する。そして、減算器55で、ミックス音信号からキャンセル音信号を減算し、この減算したアレンジ音信号を出力する。減算器55が出力したアレンジ音信号は、不図示の増幅器で増幅されて、スピーカ56から放音(出力)される。
【0048】
このように、キャンセル音生成信号をミックス音信号に重畳する場合には、キャンセル音生成信号を超音波帯域に変調しなくても良く、例えば非可聴音信号である音響透かしに変換(変調)して、ミックス音信号に重畳することも可能である。
【0049】
音響透かしの技術とは、例えば、音響信号の帯域を分割し、高周波数(人の聴覚上、位相変化の感知が難しい、例えば4kHz以上)の帯域の位相成分を変調することにより情報を伝送する技術や、情報を音色の変更・変調パラメータに変更して、音響信号の音色を変更・変調することにより情報を重畳させる技術等を用いると良い。
【0050】
以上のように、ミックス音信号からキャンセル音信号を消去してアレンジ音信号に変換する変換情報として、ミックス音信号からキャンセル音信号を消去するための情報を用いることで、キャンセル音信号を消去するための情報に基づいて、確実にキャンセル音を消去できるので、信号処理装置で、ミックス音信号を異なる可聴音信号にアレンジしたアレンジ音信号を再生することができる。
【0051】
[第3実施形態]
図6は、第2実施形態とは異なる構成の信号生成装置及び信号処理装置の概略構成を示すブロック図である。図7は、信号生成装置のスピーカに入力される重畳信号のスペクトルを示す図である。
【0052】
ミックス音信号に重畳する変換情報としては、キャンセル音信号と、キャンセル音信号を消去するための情報と、を用いるように構成しても良い。この場合、キャンセル音信号を消去するための情報としては、キャンセル音信号の変調状況を知らせるための情報、変調されている音源数・帯域・復調方法、または信号処理装置での調整器で用いる時間・位相同期やレベル補正用の補助情報を用いると良い。
【0053】
信号生成装置と信号処理装置は以下のように構成すると良い。信号処理システム1Cは、信号生成装置6と信号処理装置7を備えている。信号生成装置6は、変調器61、変調器62、加算器63、及びスピーカ64を備えている。信号処理装置7は、マイクロフォン71、BPF72、復調器73、BPF74、復調器75、キャンセル音生成器76、LPF77、減算器78、及びスピーカ79を備えている。
【0054】
図6に示すように、信号生成装置6において、変調器61には、キャンセル音信号が入力される。変調器61は、入力されたキャンセル音信号を可聴帯域から超音波帯域に変調して、変調されたキャンセル音信号を加算器63に入力する。また、変調器62には、キャンセル音信号を消去するための情報が入力される。変調器62は、キャンセル音信号を消去するための情報を、非可聴音信号にデジタル変調して加算器63に出力する。
【0055】
さらに、加算器63には、不図示のコンテンツ再生装置からミックス音信号が入力される。
【0056】
変調器61に入力されるキャンセル音信号と、変調器62に入力されるキャンセル音を消去するための情報と、は、例えば不図示のコンテンツ再生装置から入力されるように構成しても、不図示の信号生成器や情報生成器から入力されるように構成しても良い。
【0057】
変調器61が変調後のキャンセル音信号の周波数帯域と、変調器62が変調後のキャンセル音信号を消去するための情報の周波数帯域と、は重複しないように設定すると良い。
【0058】
加算器63は、不図示のコンテンツ再生装置から入力されたミックス音信号に、変調されたキャンセル音信号と、変調されたキャンセル音生成情報と、を重畳して重畳信号を出力する(図7参照)。加算器63が出力した重畳信号は、不図示の増幅器で増幅されて、スピーカ64から放音(出力)される。
【0059】
信号処理装置7は、信号生成装置6が放音した重畳信号を、マイクロフォン71で収音する。マイクロフォンで収音された重畳信号は、BPF72、BPF74、及びLPF77に入力される。
【0060】
信号処理装置7は、BPF72により、重畳信号から、超音波帯域に変調されたキャンセル音信号を消去するための情報を抽出し、復調器73で復号する。そして、この復号したキャンセル音信号を消去するための情報を復調器75及びキャンセル音生成器76に出力する。また、復調器73は、復号したキャンセル音信号を消去するための情報に基づいて、キャンセル音信号を抽出できるようにBPF74の通過帯域を調整する。
【0061】
BPF74は、通過帯域が調整されると、マイクロフォン71が出力した重畳信号からキャンセル音信号を抽出して復調器75に出力する。復調器75は、復調器73からキャンセル音信号を消去するための情報が入力されると、この情報に基づいて、キャンセル音信号を復調して、キャンセル音生成器76にキャンセル音信号を出力する。キャンセル音生成器76は、復調器75で復調されたキャンセル音信号のゲインや位相を調整する。キャンセル音生成器76は、復調器73からキャンセル音信号を消去するための情報が入力されると、この情報に基づいてキャンセル音信号のゲインや位相を調整して減算器78に出力する。
【0062】
LPF77は、マイクロフォン71が出力した重畳信号からミックス音信号を抽出して減算器78に出力する。
【0063】
減算器78は、ミックス音信号からキャンセル音信号を消去し、キャンセル音信号を含まないミックス音信号であるアレンジ音信号を出力し、アレンジ音信号がスピーカ79から放音される。
【0064】
このように、ミックス音信号からキャンセル音信号を消去してアレンジ音信号に変換する変換情報として、キャンセル音信号と、キャンセル音信号を消去するための情報と、を用いることで、変換処理が複雑となり、誰もが簡単に変換処理を行うことができない。例えば、OFDMなどのデジタルデータの変調信号をさらに別の帯域に重畳するといった処理を行っている場合、ミックス音信号からキャンセル音信号を消去するには信号処理装置が必要である。したがって、信号処理装置を所持するユーザのみにアレンジ音信号を聴取させることができる。
【0065】
[その他]
上記の各実施形態においては、ミックス音信号に1つのキャンセル音(可聴音)信号が重畳される例を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、複数のキャンセル音信号をミックス音信号に重畳することも可能である。
【0066】
この場合、各キャンセル音信号を変調する際に、信号の周波数帯域が重複しないように変調すると良い。また、信号処理装置には、複数のキャンセル音信号を選択する選択機構を設けると良い。
【0067】
ミックス音信号が、ギター、ベース、キーボード、及びドラムの各演奏音信号と、ボーカル音信号の5つの音響信号から成る場合、キーボードの演奏音信号とボーカル音信号のように2つの音響信号をキャンセル音信号に設定しても、すべての音響信号をキャンセル音信号に設定しても良い。
【0068】
このように設定することで、ミックス音信号に含まれる複数のキャンセル音信号のうち、キャンセル音信号に設定された任意の信号をキャンセルすることができ、ユーザは所望の楽曲にアレンジできる。
【0069】
なお、以上説明では、信号生成装置は可聴音信号をスピーカから出力(放音)し、信号処理装置は、信号生成装置が出力した可聴音信号をマイクロフォンで収音(入力)する構成について説明したが、この構成に限らず、信号生成装置と信号処理装置とが接続されて、音声信号を送受信するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1,1B,1C…信号処理システム 2,4,6…信号生成装置 3、5、7…信号処理装置 21,41,61,62…変調器 22,23,42,63…加算器 23,36,43,56,64,79…スピーカ 31,51,71…マイクロフォン 32,52,72,74…BPF 33,53,73,75…復調器 34,54,77…LPF 35,55,78…減算器 57,76…キャンセル音生成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリジナルの可聴音信号を異なる可聴音信号に変換する変換情報であって、非可聴音により生成された変換情報を、オリジナルの可聴音信号に重畳して重畳信号を生成する重畳部と、
前記重畳信号を出力する出力部と、
を備えた信号生成装置。
【請求項2】
前記変換情報は、前記オリジナルの可聴音信号の周波数帯域と異なる帯域に変調された、前記オリジナルの可聴音信号に含まれるいずれかの可聴音信号である請求項1に記載の信号生成装置。
【請求項3】
前記変換情報は、前記オリジナルの可聴音信号に含まれるいずれかの可聴音信号を、前記オリジナルの可聴音信号から消去するための情報である請求項1または2に記載の信号生成装置。
【請求項4】
前記変換情報は、前記オリジナルの可聴音信号に含まれる複数の可聴音信号であり、各可聴音信号は、それぞれ異なる帯域に変調された請求項1または2に記載の信号生成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の信号生成装置が出力した前記重畳信号を入力する入力部と、
前記入力部に入力された重畳信号から変換情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した変換情報に基づいて、前記入力部に入力されたオリジナルの可聴音信号を異なる可聴音信号に変換する変換部と、
前記変換部が変換した可聴音信号を出力する可聴音出力部と、
を備えた信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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