説明

信号発生装置

【課題】持ち運びに便利な、軽量で小型の信号発生装置を提供する。また、OFDM信号発生器として使用でき、持ち運びに便利な、軽量で小型の信号発生装置を提供する。
【解決手段】信号発生装置1は、ハードディスク2から読み出される低周波帯の電波信号をアナログ信号に変換するD/A変換器4と、D/A変換器4で変換されたアナログ信号を高周波の信号に変換する周波数変換部5とを備える。信号発生装置1では、地上デジタルテレビジョン放送に用いるIF帯或いはUHF帯のOFDM信号を低周波の信号に変換した低周波帯の電波信号(例えば、中心周波数が5MHzで、帯域幅が5.7MHzのデジタルOFDM信号)をハードディスク2に予め記憶させておく。この記憶された低周波帯の電波信号を信号源として、IF帯或いはUHF帯のOFDM信号を検査信号として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地上デジタルテレビ放送の中継放送所における放送波中継装置の測定・検査などに使用する信号発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、2011年のアナログテレビ放送の終了に向けて、地上デジタルテレビのネットワークの拡充・建設が急速に進められつつある。特に、この数年は地上デジタルテレビ中継放送所の新設ラッシュを迎える。
【0003】
地上デジタルテレビ中継放送所では、新設時および運用時定期的に放送波中継装置などの無線設備が電波法に適合しているか否かの総務省の検査があり、電波の質や設備が検査対象になる。
【0004】
これらの検査に使用する測定器は、アナログテレビの検査時に使用した測定器も一部使用できるが、地上デジタルテレビ放送に特有の測定器も新たに必要になる。
【0005】
特に、OFDM信号発生器は地上デジタルテレビ放送の検査には無くてはならない測定器で、UHF帯及びIF帯(37.15MHz)の周波数で、OFDM変調方式で変調された各種の信号を発生する。このOFDM信号発生器には、一般的にはOFDM変調器が使用される。
【0006】
また、複数のテレビ番組を同時に、電波形式を保持したまま記録再生することができるデジタル放送波の信号記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この信号記録装置は、放送信号を低域の信号に周波数変換する周波数変換手段と、低域に周波数変換された放送信号をA/D変換するA/D変換手段と、A/D変換されたデータを記憶するデータ記憶手段とを備える。HDD等のデータ記憶手段に記憶されたデータを再生する際には、チャネルと時刻を指定することにより、記録されているデータから所望のチャネルと時刻のデータを取り出して、D/A変換器を介して出力し、これを所望のチャネルの周波数帯に変換する。この信号をテレビで視聴する。
【特許文献1】特開2006−94078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、地上デジタルテレビ中継放送所における放送波中継装置の測定や検査に使用されるOFDM信号発生器としては、上記OFDM変調器しかない。
【0008】
このOFDM変調器は、非常に高価であり、大型で重い。地上デジタルテレビ中継放送所を新設するときには、放送波中継装置などの無線設備の検査に用いる放送波信号(電波)がまだ出ていない場合がある。このような場合でも、その検査は実際に信号を入れてみないとできない。その場合に、検査する中継放送所に大型で重いOFDM変調器を持っていくのは非常に大変である。また、運用時定期的に放送波中継装置などの無線設備を検査する場合でも、検査する各中継放送所に大型で重いOFDM変調器を持っていくのは非常に大変である。そのため、OFDM信号発生器として使用できる軽量で小型の信号発生装置が要望されている。
【0009】
また、上記特許文献1に記載された信号記録装置は、テレビ番組を同時に、電波形式を保持したままHDD等のデータ記憶手段に記憶し、記憶されたデータを再生する際には、チャネルと時刻を指定することにより、記録されているデータから所望のチャネルと時刻のデータを取り出して、D/A変換器を介して出力し、これを所望のチャネルの周波数帯に変換する。この信号をテレビで視聴する。このように、この信号記録装置は、テレビ番組を、電波形式を保持したまま記録し、記録したデータを再生するための記録・再生装置である。
【0010】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされ、その目的は、持ち運びに便利な、軽量で小型の信号発生装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の別の目的は、OFDM信号発生器として使用でき、持ち運びに便利な、軽量で小型の信号発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、低周波帯の電波信号が記憶された記憶手段と、前記記憶手段から前記低周波帯の電波信号を読み出す信号読み出し手段と、前記記憶手段から読み出される前記電波信号をアナログ信号に変換するD/A変換手段と、前記D/A変換手段で変換されたアナログ信号を高周波の信号に変換する周波数変換手段と、を備え、前記周波数変換手段で変換された高周波の信号を検査用電波信号として出力することを要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の信号発生装置において、前記記憶手段に記憶された前記低周波帯の電波信号は、地上デジタルテレビジョン放送に用いるIF帯のOFDM信号或いはUHF帯のOFDM信号を、前記記憶手段に記憶しやすい低周波帯の信号に周波数変換した低周波のデジタルOFDM信号であり、前記周波数変換手段は、前記記憶手段から読み出して前記D/A変換手段でD/A変換した低周波のアナログOFDM信号を高周波の信号に変換して、前記IF帯のOFDM信号或いはUHF帯のOFDM信号を前記検査用電波信号として出力することを要旨とする。
【0014】
ここで、「OFDM信号」は、映像・音声などをデジタル信号化した放送TS(Transport Stream)信号を変換したISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式に準じた放送波信号である。
【0015】
IF(Intermediate Frequency)帯のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号は、放送TS(Transport Stream)信号を、伝送路符号化とOFDM(直交周波数分割多重)変調を行うOFDM変調器で生成された37.15MHzの中間周波数信号である。例えば、このOFDM信号には、帯域幅5.7MHzの放送電波の中に多数の(搬送波:サブキャリア)があって、各搬送波にデジタル信号がのっている。また、UHF(Ultra High Frequency)帯のOFDM信号は、OFDM変調器で生成されたIF帯のOFDM信号を周波数変換して生成される470〜770MHz程度の信号である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の信号発生装置において、前記信号読み出し手段は、前記記憶手段からの前記電波信号の読み出しを制御する中央処理装置とメインメモリを備え、外部から信号出力指令が入力されると、前記中央処理装置の制御により、前記記憶手段に記憶された前記低周波帯の電波信号が前記記憶手段から前記メインメモリに読み出されて前記D/A変換手段へ出力されることを要旨とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の信号発生装置において、前記記憶手段として少なくとも1台のハードディスクが設けられていることを要旨とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか一つに記載の信号発生装置において、前記周波数変換手段は、所望の局発信号を発生する局部発振回路と、前記記憶手段から読み出して前記D/A変換手段でD/A変換した低周波のアナログOFDM信号と前記局部発信器から出力される局発信号とを乗算して両信号の周波数の差信号を出力するミキサーと、雑音をカットして、必要な帯域の信号だけを取り出すフィルタと、を備えることを要旨とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の信号発生装置において、前記周波数変換手段はさらに、前記フィルタの出力信号を、地上デジタルテレビ放送の中継放送所の放送波中継装置を動作させる電力まで増幅する増幅手段を備えることを要旨とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の信号発生装置において、前記信号読み出し手段は、前記記憶手段からの前記電波信号の読み出しを制御する中央処理装置とメインメモリを備え、前記中央処理装置、前記メインメモリ、前記記憶手段、前記D/A変換手段、及び前記周波数変換手段が一つのパッケージ内に収容されていることを要旨とする。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の信号発生装置において、前記記憶手段として少なくとも1台のハードディスクが設けられていることを要旨とする。
【0022】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、記憶手段に記憶された低周波帯の電波信号を信号源として、検査用電波信号を生成して出力することができるので、その検査用電波信号を作るための変調器などが不要になる。また、そのような変調器と比べて構成が簡単で小型になるので、持ち運びに便利な、軽量で小型の信号発生装置を得ることができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、記憶手段に記憶された低周波のデジタルOFDM信号を信号源として、IF帯のOFDM信号或いはUHF帯のOFDM信号を生成して出力することができるので、OFDM信号発生器として使用することができ、OFDM信号を生成して出力するOFDM変調器が不要になる。また、OFDM変調器と比べて構成が簡単で小型になるので、持ち運びに便利な、軽量で小型の信号発生装置を得ることができる。
【0024】
また、放送波を受信し再送信する放送波中継装置の測定や検査を行う際に、高価なOFDM変調器を用意する必要がないと共に、大型で重いOFDM変調器をデジタルテレビ中継放送所に持ち運ぶ必要がない。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、外部から信号出力指令が入力されることで、中央処理装置の制御により、記憶手段に記憶された低周波帯の電波信号を記憶手段からメインメモリに読み出してD/A変換手段へ出力することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、記憶手段として少なくとも1台のハードディスクを用いることで、情報量の多い検査用のデジタルデータをハードディスクに記憶させることができる。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、雑音の無い、高品質の検査用電波信号を生成して出力することができる。これにより、上記放送波中継装置に対して信頼性の高い測定や検査を行うことができる。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、フィルタの出力信号を増幅手段により地上デジタルテレビジョン放送用の放送波信号として送信可能な電力まで増幅するので、フィルタから出力される検査用電波信号を上記中継放送所における放送波中継装置の測定や検査に使うことができる。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、信号発生装置の全ての機能が1台のパーソナルコンピュータに装備されているので、より携帯し易い信号発生装置を実現することができる。
【0030】
請求項8に記載の発明によれば、情報量の多い電波信号をハードディスクに記憶させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明を具体化した一実施態様を図面に基づいて説明する。本実施形態では、地上デジタルテレビ放送の中継放送所におけう放送波中継装置の測定や検査に使用する信号発生装置について説明する。
(一実施形態)
図1は、本実施形態に係る信号発生装置1の概略構成を示している。
【0032】
この信号発生装置1は、低周波帯の電波信号が記憶された記憶手段としてのハードディスク(HDD)2と、ハードディスク2から低周波帯の電波信号を読み出す信号読み出し手段としてのノート型のパーソナルコンピュータ(以下、「ノート型パソコン」という。)3と、を備える。ハードディスク2は、1台或いは複数台設けられている。
【0033】
また、信号発生装置1は、ハードディスク2から読み出される低周波帯の電波信号をアナログ信号に変換するD/A変換手段としてのD/A変換器4と、D/A変換器4で変換されたアナログ信号を高周波の信号に変換する周波数変換手段としての周波数変換部5と、を備える。
【0034】
ハードディスク2に記憶された低周波帯の電波信号は、地上デジタルテレビジョン放送に用いる上記IF帯のOFDM信号或いは上記UHF帯のOFDM信号を、ハードディスク2に記憶しやすい低周波(数MHz)の信号に周波数変換した低周波のデジタルOFDM信号である。本例では、低周波帯の電波信号は、例えば、中心周波数が5MHzで、帯域幅が5.7MHzのデジタルOFDM信号である。
【0035】
ノート型パソコン3は、CPU(中央処理装置)10、メインメモリであるRAM11、PCIバス12等を備えたパーソナルコンピュータである。このノート型パソコン3には、ハードディスク2が実装されている。
【0036】
信号発生装置1は、ノート型パソコン3のキーボード(図示省略)の操作により外部から信号出力指令が入力されると、CPU10の制御により、ハードディスク2に記憶された低周波帯の電波信号がハードディスク2からRAM11に読み出されてPCIバス12を介してD/A変換器4へ伝送されるようになっている。このD/A変換器4には、20MHzのサンプリング周期でD/A変換を行うように、20MHzの基準信号が入力されている。
【0037】
周波数変換部5は、D/A変換器4でD/A変換した低周波のアナログOFDM信号を、放送波中継装置の検査に用いる検査用電波信号と同じ高周波の信号(IF帯或いはUHF帯のOFDM信号)に変換する。
【0038】
この周波数変換部5は、所望の局発信号を発生する局部発振回路20と、D/A変換器4でD/A変換した低周波のアナログOFDM信号と局部発信器20から出力される局発信号とを乗算して両信号の周波数の差信号を出力するミキサー(D.B.M)30と、雑音をカットして、必要な帯域の信号だけを取り出すバンドパスフィルタ(B.P.F)31と、演算増幅器(OP Amp)32とを備える。
【0039】
ミキサー30は、4個のダイオードを含む。ハードディスク2から読み出されてD/A変換器4でD/A変換された低周波のアナログOFDM信号と局部発信器20から出力される局発信号(局発出力)とを乗算して両信号の周波数の差信号を出力するパッシブ・ミキサーである。このミキサー30は、周波数変動の少ない差信号を出力するように設定されている。
【0040】
所望の局発信号を発生する局部発振回路20は、電圧制御発信器(VCO)21などを含むPLL回路(Phase Locked Loop:位相同期回路)22を使用した周波数シンセサイザ回路からなり、外部からの制御に基づき周波数の異なる2種類の局発信号を発生するようになっている。
【0041】
一つの局発信号(IF用局発信号)は、IF帯のOFDM信号を生成して出力するための第1の周波数fL1の信号である。第1の周波数fL1は、D/A変換器4から出力される低周波のアナログOFDM信号の周波数(中心周波数)f1(本例ではf1=5MHz)との周波数の差信号として37.15MHzの信号がミキサー30から出力されるように設定される。このとき、第1の周波数fL1は42.15MHzである。
【0042】
このような第1の周波数fL1(fL1=42.15MHz)の局発信号が局部発振回路20からミキサー30へ出力される場合、ミキサー30の出力信号には、37.15MHzの信号、42.15(37.15+5)MHzの信号、及びその他の周波数の信号が含まれている。
【0043】
もう一つの局発信号(UHF用局発信号)は、UHF帯のOFDM信号を生成して出力するための第2の周波数fL2の信号である。第2の周波数fL2は、D/A変換器4から出力される低周波のアナログOFDM信号の周波数f1(5MHz)との周波数の差信号として例えば500MHzの信号がミキサ30から出力されるように設定される。このとき、第2の周波数fL2は505MHzである。
【0044】
このような第1の周波数fL2(fL2=505MHz)の局発信号が局部発振回路20からミキサ30へ出力される場合、ミキサ30の出力信号には、500MHzの信号、510(505+5)MHzの信号、及びその他の周波数の信号が含まれている。
【0045】
さらに、本実施形態では、第3の周波数fL3の局発信号をミキサー30へ出力するための切替スイッチ23が設けられている。この切替スイッチ23を図1の実線で示す位置から一点鎖線で示す位置へ切り替えると、第3の周波数fL3の局発信号がミキサー30へ出力される。
【0046】
また、局部発振回路20は、上記2種類の局発信号のいずれの場合でも、リップル及び位相雑音を抑えた局発信号を出力するように設定されている。
【0047】
ミキサー30は、4個のダイオードを含む。ハードディスク2から読み出されてD/A変換器4でD/A変換された低周波のアナログOFDM信号と局部発信器20から出力される局発信号(局発出力)とを乗算して両信号の周波数の差信号を出力するパッシブ・ミキサーである。このミキサー30は、周波数変動の少ない上記差信号を出力するように構成されている。
【0048】
バンドパスフィルタ31は、ミキサー30から出力される上記差信号から雑音をカットして、必要な帯域の信号だけを取り出すフィルタである。このバンドパスフィルタ31は、例えばSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタからなる。
【0049】
演算増幅器32は、バンドパスフィルタ31の出力信号を、地上デジタルテレビ放送の中継放送所の無線設備(放送波中継装置など)を動作させる電力まで増幅するためのものである。この演算増幅器32で増幅されたIF帯或いはUHF帯のOFDM信号が、検査信号として出力端子33から出力される。
【0050】
以上の構成を有する信号発生装置1では、地上デジタルテレビジョン放送に用いるIF帯或いはUHF帯のOFDM信号を低周波の信号に変換した低周波帯の電波信号(中心周波数が5MHzで、帯域幅が5.7MHzのデジタルOFDM信号)をハードディスク2に予め記憶させておく。この記憶された低周波帯の電波信号を信号源として、IF帯或いはUHF帯のOFDM信号を検査信号として出力することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、信号読み出し手段としてノート型パソコン3を備えた信号発生装置1について説明したが、この信号発生装置1は一般のノート型パソコン3のうち必要最小限の機能、例えば、CPU10,RAM11、PCIバス12、CPU10に信号出力指令を与える操作スイッチ(図示省略)などを備えていればよい。また、この場合、CPU10,RAM11、PCIバス12、CPU10、上記操作スイッチ及びD/A変換器4などをマザーボード(図示省略)上に実装し、周波数変換部5や局部発信器20などを別の基板上に実装し、これらを一つのパッケージ内に収納して信号発生装置1が構成される。このような構成により、持ち運びに便利な、軽量で小型の信号発生装置1を実現することができる。
【0052】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
○ハードディスク2に記憶された低周波帯の電波信号(中心周波数が5MHzで、帯域幅が5.7MHzのデジタルOFDM信号)を信号源として、IF帯或いはUHF帯のOFDM信号を生成して出力することができるので、OFDM信号発生器として使用することができる。これにより、OFDM信号を生成して出力するOFDM変調器が不要になる。
○OFDM変調器と比べて構成が簡単で小型になるので、持ち運びに便利な、軽量で小型の信号発生装置を得ることができる。
○OFDM変調器と比べて構成が簡単になるので、OFDM変調器よりも低価格の信号発生装置を実現することができる。
○放送波を受信し再送信する放送波中継装置の測定や検査を行う際に、高価なOFDM変調器を用意する必要がないと共に、大型で重いOFDM変調器をデジタルテレビ中継放送所に持ち運ぶ必要がない。
○操作スイッチ(図示省略)を操作してCPU10に信号出力指令を入力することで、ハードディスク2に記憶された低周波帯の電波信号をRAM11に読み出してD/A変換器4へ出力することができる。
○1台或いは複数台のハードディスク2を備えているので、情報量の多い検査用のデジタルデータをハードディスク2に記憶させることができる。
○局部発振回路20は、外部からの制御に基づき周波数の異なる2種類の局発信号を発生するようになっている。これにより、IF帯またはUHF帯のOFDM信号を低周波の信号に変換した低周波のOFDM信号がハードディスク2に記憶されているため、IF帯或のOFDM信号を検査信号として出力する場合には、IF用局発信号を発生させる。また、UHF帯のOFDM信号を出力する場合には、UHF用局発信号を発生させることにより、UHF帯のOFDM信号を検査信号として出力することができる。
○局部発振回路20は、2種類の局発信号のいずれの場合でも、リップル及び位相雑音を抑えた局発信号を出力するように構成されているので、高品質な検査信号を生成して出力することができる。
○検査信号(電波)を使って、放送中継所の無線設備が電波法に適合しているか等の検査や、電波の質等の検査に使用される信号(電波)の出力レベルはある程度高いレベルが必要であり、放送中継所の無線設備を動作させる位のレベルまで増幅する必要がある。そこまで出力レベルを上げないと、放送中継所の検査には使えない。本実施形態では、演算増幅器32は、バンドパスフィルタ31の出力信号を、地上デジタルテレビ放送の中継放送所の無線設備(放送波中継装置など)を動作させる電力まで増幅するので、増幅されたIF帯或いはUHF帯のOFDM信号を検査信号として放送中継所の検査に有効に使うことができる。
(放送波中継装置の測定・検査方法)
次に、地上デジタルテレビ放送の中継放送所で放送波中継装置の測定や検査を、上記一実施形態で説明した信号発生装置1を用いて行う方法を図2に基づいて説明する。
【0053】
図2に示す放送波中継装置40では、受信空中線から送られる親局OFDM変調信号は入力フィルタAに入力され、この入力信号に含まれる地上デジタルテレビ放送チャネルの内、一つのチャネルの放送信号帯域のみが入力フィルタAを通過し、不要波は減衰される。入力フィルタAを通過したOFDM変調信号は、第1局発Gから局発信号が入力される受信変換回路BによりIF帯のOFDM信号に変換される、このIF帯のOFDM信号は、第1局発Hから局発信号が入力される送信変換回路Cにより変換された後、電力増幅部Dで所定の電力まで増幅される。この増幅されたOFDM信号は、出力フィルタEで雑音が除去されて放送波信号(電波)Fとして送信空中線或いは擬似空中線へ出力される。
【0054】
上記一実施形態で説明した信号発生装置1は、UHF帯のOFDM信号を検査信号として出力する場合には、そのOFDM信号を入力フィルタAに入力するようにして放送波中継装置40の測定・検査を行う。また、信号発生装置1は、IF帯のOFDM信号を検査信号として出力する場合には、そのOFDM信号を送信変換回路Cに入力するようにして放送波中継装置40の測定・検査を行う。
(OFDM信号録音再生システム)
次に、上記一実施形態で説明した信号発生装置1のハードディスク2に、低周波帯の電波信号としてIF帯或いはUHF帯のOFDM信号を記録するためのOFDM信号録音再生システムを図3に基づいて説明する。
【0055】
このOFDM信号録音再生システムは、信号再生部(子機)として上記一実施形態で説明した信号発生装置(OFDM信号発生回路)1と、信号収録部(親機)50とを備える。
【0056】
信号収録部50は、周波数変換部(DOWN.CON)51と、局部発信器52と、据置型パソコン53とを備える。
【0057】
周波数変換部51では、UHF地上デジタル電波であるUHF帯のOFDM信号或いはOFDM変調器の出力信号であるIF(37.15MHz)帯のOFDM信号のいずれかの一方の電波の中から必要チャネルを選択して収録信号とする。
【0058】
この選択された収録信号は、周波数変換部51により、据置型パソコン53のハードディスクに収録しやすい数MHzの周波数の信号(低周波のOFDM信号)に変換する。この変換された信号は、大容量のハードディスクを備えた据置型パソコン53に送られる。
【0059】
この入力信号は数MHzのアナログ信号で、この信号を据置型パソコン53内の高速のA/D変換器(図示省略)を通してデジタル信号に変換し、この変換されたデジタル信号が据置型パソコン53のハードディスクに記録されるようになっている。なお、据置型パソコン53の図示を省略したA/D変換器には、10MHzの基準信号を2進倍回路54で2倍の周波数に変換した20MHzの基準信号が入力されるようになっている。
【0060】
据置型パソコン53のハードディスクに記録されたデジタル化されたOFDM信号は、ハードディスクから読み出されて、信号収録部50から信号発生装置(信号再生部)1へ出力される。このデジタル信号をノート型パソコン3のハードディスク2に取り込んで収録する。
【0061】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記一実施形態では、記憶手段として少なくとも1台のハードディスク2を用いた構成について説明したが、記憶手段として、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などの各種半導体メモリーを使用してもよい。
・上記一実施形態では、ノート型パソコン3のキーボード(図示省略)の操作により外部から信号出力指令が入力されるように構成してあるが、操作スイッチを設け、この操作スイッチの操作により信号出力指令が入力され、CPU10の制御により、ハードディスク2に記憶された低周波帯の電波信号がハードディスク2からRAM11に読み出されるようにした構成にも本発明は適用可能である。
・上記実施形態では、地上デジタル中継放送所において新設時及び運用時定期的に行われる放送用電波の質や無線設備の検査に使用するOFDM信号を発生するOFDM信号発生器として使用できる信号発生装置について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、以下のような各種の信号発生装置にも適用可能である。
・デジタル信号の変調方式として、地上デジタル放送では、直交周波数分割多重(OFDM)方式が採用され、衛星放送ではTC8PSK変調方式が、ケーブルテレビでは、64QAM変調方式が使用されている。これらの変調方式でデジタル信号を変調した信号を発生する信号発生装置にも本発明は広く適用可能である。
具体的には、以下のような各種の応用例に本発明は適用可能である。
(応用例1)
電波のサービスエリアの確認、混信の確認などのための伝搬試験機として、上記一実施形態で説明した信号発生装置1を使用することができる。
【0062】
この電波試験機は、ある地域に電波を発射する場合、その地域にどのくらいの強さで、どの方向にどんな電波を出したら、一番効率良くサービスできるかなどの試験に使われる。そういうときには、最初は机上で検討するが、最終的に試験電波を出して検査するのが一番よい。ある地点から検査用電波信号を出す信号発生装置に使える。
(応用例2)
新しい地下街、無線共聴等の試験信号源として、信号発生装置1を使用することができる。
(応用例3)
今後発展するであろうIT商品、冷蔵庫、空調設備、防犯設備等の無線ネットの総合接続による家電製品のユビキタスネットワークを構築する場合、メーカーの異なる家電製品個々の無線端末からの電波が家庭内で、連携して相互接続ができるかの確認が必要となる。そのため、各家庭個々でのシュミレーションが必要になると思われる。そこで、上記一実施形態で説明した信号発生装置1の記憶手段、例えばハードディスクに、低周波帯の電波信号として各メーカーの無線端末信号を記憶させておき、各製品の据え付け場所から、検査用電波信号を発信して、確実に制御端末に接続することを確認するための信号源として、信号発生装置1を使用することができる。
(応用例4)
無線LANの伝搬確認、無線LANも電波形式はOFDMであり、周波数伝送速度も各種、導入前に各部屋間、事務所間の伝搬テスト信号発生器として、信号発生装置1を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る信号発生装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】一実施形態に係る信号発生装置1を用いた測定・検査を放送波中継装置を示すブロック図。
【図3】一実施形態に係る信号発生装置のハードディスクに低周波帯の電波信号を記録するためのOFDM信号録音再生システムの概略構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0064】
1…信号発生装置、2…ハードディスク、3…ノート型パーソナルコンピュータ、4…D/A変換器、5…周波数変換部、10…CPU(中央処理装置)、11…RAM(メインメモリ)、12…PCIバス、20…局部発信器、21…電圧制御発信器、22…PLL回路、23…切替スイッチ、30…ミキサー、31…バンドパスフィルタ、32…演算増幅器、33…出力端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低周波帯の電波信号が記憶された記憶手段と、
前記記憶手段から前記低周波帯の電波信号を読み出す信号読み出し手段と、
前記記憶手段から読み出される前記電波信号をアナログ信号に変換するD/A変換手段と、
前記D/A変換手段で変換されたアナログ信号を高周波の信号に変換する周波数変換手段と、を備え、
前記周波数変換手段で変換された高周波の信号を検査用電波信号として出力することを特徴とする信号発生装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶された前記低周波帯の電波信号は、地上デジタルテレビジョン放送に用いるIF帯のOFDM信号或いはUHF帯のOFDM信号を、前記記憶手段に記憶しやすい低周波帯の信号に周波数変換した低周波のデジタルOFDM信号であり、
前記周波数変換手段は、前記記憶手段から読み出して前記D/A変換手段でD/A変換した低周波のアナログOFDM信号を高周波の信号に変換して、前記IF帯のOFDM信号或いはUHF帯のOFDM信号を前記検査用電波信号として出力することを特徴とする請求項1に記載の信号発生装置。
【請求項3】
前記信号読み出し手段は、前記記憶手段からの前記電波信号の読み出しを制御する中央処理装置とメインメモリを備え、
外部から信号出力指令が入力されると、前記中央処理装置の制御により、前記記憶手段に記憶された前記低周波帯の電波信号が前記記憶手段から前記メインメモリに読み出されて前記D/A変換手段へ出力されることを特徴とする請求項2に記載の信号発生装置。
【請求項4】
前記記憶手段として少なくとも1台のハードディスクが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の信号発生装置。
【請求項5】
前記周波数変換手段は、
所望の局発信号を発生する局部発振回路と、
前記記憶手段から読み出して前記D/A変換手段でD/A変換した低周波のアナログOFDM信号と前記局部発信器から出力される局発信号とを乗算して両信号の周波数の差信号を出力するミキサーと、
雑音をカットして、必要な帯域の信号だけを取り出すフィルタと、を備えることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一つに記載の信号発生装置。
【請求項6】
前記周波数変換手段はさらに、前記フィルタの出力信号を、地上デジタルテレビ放送の中継放送所の放送波中継装置を動作させる電力まで増幅する増幅手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の信号発生装置。
【請求項7】
前記信号読み出し手段は、前記記憶手段からの前記電波信号の読み出しを制御する中央処理装置とメインメモリを備え、
前記中央処理装置、前記メインメモリ、前記記憶手段、前記D/A変換手段、及び前記周波数変換手段が一つのパッケージ内に収容されていることを特徴とする請求項2に記載の信号発生装置。
【請求項8】
前記記憶手段として少なくとも1台のハードディスクが設けられていることを特徴とする請求項7に記載の信号発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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