説明

修飾“S”抗体

本発明は抗体、特に修飾された抗体、修飾された抗体の調製法およびその使用に関する。より詳細には本発明は余分な免疫グロブリンドメインを定常領域に加えることにより、より活性なIgG抗体の調製に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本出願は、抗体、そして特に修飾された抗体、修飾された抗体の調製法、およびその使用に関する。より詳細には本発明は、余分な免疫グロブリンドメインを定常領域に加えることによる、より活性なIgG抗体の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
背景および関連技術
抗体は過去数十年間、研究および診断に、そしてごく最近ではそれらの特異的結合性および高い安定性により疾患の治療的処置に欠くことができなかった。モノクローナル抗体は最初に、選択したB細胞株を不死化ミエローマ細胞株と融合してハイブリドーマを生産し、不死化細胞が選択したB細胞クローンの選択した抗体型のみを分泌することにより生産された。組換えDNA技術の使用は、抗体を生産する新規方法ならびに新規抗体構築物の設計を可能とした。
【0003】
構造的に、各抗体は2つの同一な「重」鎖および2つの同一な「軽」鎖の相互作用により形成され、そのすべてが合わさってY形の分子(重鎖は全Yに広がり、そして軽鎖は2つの腕のみに広がる)を形成する。免疫グロブリンG抗体分子は、抗原結合を決定する相補性決定領域(CDR)、エフェクター機能を定める定常領域および骨格領域を含む。抗体構築物は、限定するわけではないが重もしくは軽鎖の少なくとも1つのCDR、またはそれらのリガンド結合部分、重もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、骨格領域またはそれらの任意の部分のような免疫グロブリン分子の少なくとも1つの部分を含んでなる分子を含む任意のタンパク質またはペプチドを含むことができる。抗体フラグメントは、CDR抗原結合部位を含むFabとして知られている免疫グロブリン分子のフラグメントを含み、これは2つのFabフラグメントを生産するY形抗体分子の「ヒンジ」領域で切断するプロテアーゼであるパパインを用いて抗体を開裂することにより生成する。抗体は限定するわけではないがヒト、マウス、ウサギ、ラット、齧歯類、霊長類またはそれらの組み合わせのような任意の哺乳動物を含むか、またはそれらから誘導することができる。
【0004】
ヒト抗原に対する抗体(Ab)は通常、構造が高度に保存されている抗原に対する幾つかのAbを除いて、対応する齧歯類の抗原とは交差反応しない。結局、ヒト標的に対するAbを開発したものの、齧歯類を対象とした前臨床実験を行う目的には、齧歯類の抗原に対する別個のAbの必要性がしばしば存在する。そのような実験は抗−ヒトAbで処置したヒトに何が起こり得るかを明らかにするために行うので、動物実験で使用する抗−齧歯類の「代理」Abは、できるだけ多くの特性において抗−ヒトAbに類似することが重要である。Abに関するそのような特性は、抗原に対するアフィニティーまたはアビディティ、相対的中和能力、アイソタイプおよび関連するFc−媒介型免疫エフェクター機能(例えば補体結合)、薬物動態学的挙動、およびその可溶性標的抗原と免疫複合体を形成する能力を含むことができる。通常、動物実験の適切な代理として役立ち得るAbの選択はほとんど存在しないので、不可能ではないが完璧な代理Abを見いだすことは大変困難であることが多い。2つの最も重要な特性、齧歯類抗原の生物活性の中和および類似IgGアイソタイプが、代理Abに十分であると考えられるだろう。
【0005】
対応する齧歯類抗原を中和する齧歯類抗体を開発することは可能であるが、ヒト抗体の代理Abとして役立つためには1つの基準を満足するように抗体のアイソタイプを変える必要があることが多い:そのアイソタイプをヒト抗体に対して機能的な対(counterpart)となるアイソタイプとする。このようにすると、生成した修飾抗体はインビトロでインビボの生物活性を表し、そしてインビトロで齧歯類の抗原を発現する細胞に対して補体結合活性を示すことができる。しかし所定量の抗原の生物活性を遮断するために必要な修飾抗体の量は、同量のヒト抗原の生物活性を遮断するために必要なヒト抗体の量よりもはるかに高くなり得る。さらに修飾された齧歯類抗体は齧歯類抗原に対する元の齧歯類抗体よりも効力が低くなり得る。
【0006】
活性および効力におけるこの差異は、抗原に結合する修飾された抗体とヒト抗体の間の様式の基本的差異の結果であり得る。ヒト抗体の両腕は同時に2つの異なる抗原分子に結合することができるが、二量体の修飾抗体分子の1つの腕の1つの抗原分子への結合は、第2腕が第2抗原分子に結合することを妨げ得る。修飾された抗体は機能的に一価であり得る一方、天然の抗体は二価であり得る。さらにそれ自体が1より多くの分子により結合され得るホモポリマー(例えばTNFはホモトリマーである)であることができる標的の2分子に結合する能力により、天然の抗体は標的分子とより高次な複合体を形成することができる。対照的に、修飾抗体は同時に1より多くの標的分子には結合できない場合、修飾抗体は標的分子とより高次の複合体を形成することはできないであろう。したがって天然抗体のほとんどの分子が二価で複合体に結合し、そして大変遅い解離速度を有する一方、修飾抗体の各分子は一価で結合し、故により速い解離速度を有するであろうから、天然抗体/標的分子複合体および修飾抗体/標的分子複合体の相対的安定性は劇的に異なると予想される。修飾抗体の標的からの解離は、遊離し、そして生物活性な標的分子を生じるので、天然と修飾抗体との間には中和効力に大きな差異が生じるだろう。
【0007】
中和効力に加えて、Ab/標的分子複合体のサイズおよび複雑さにおける差異も、血清クリアランス速度および細胞の活性化を相伴うFc受容体結合親和性のような活性に影響を及ぼすと期待される。
【0008】
このように修飾抗体の操作では、生成する構築物が標的の2つの分子に結合するその能力により、機能的に二価であることを確実とすることが時に望ましい。1つの抗体分子より多くの分子により結合され得る、それ自体がホモポリマーである抗原の場合、抗体/抗原複合体の最大効力および安定性を達成するために、抗原と高次の複合体を形成することができる構築物を有することが望ましい。
【0009】
このように抗原/抗体結合における多結合価および複合体形成を可能にし、抗体構築物に好ましい結合特性および中和能力の両方をもたらす、追加された柔軟性および空間的距離を提供するための抗体の操作法が必要である。
【発明の開示】
【0010】
発明の要約
本明細書に記載する本発明は、正常Abの定常領域に余分な定常領域免疫グロブリン(Ig)ドメインを挿入することにより、2つのFabドメインに追加された柔軟性、およびその間に空間的距離を与える修飾Ab(’S’Ab)である。
【0011】
すなわち1つの観点では、本発明は抗体の定常領域に余分な定常領域免疫グロブリン(Ig)ドメインを挿入することにより、抗体のFabドメインに追加された柔軟性、およびその間に空間的距離を提供する方法に関する。生成した構築物は’S’抗体と呼ぶ。本発明の方法により調製されたS抗体は、非修飾抗体よりも強化された中和能力を示す。以下の実施例に示すように、本発明に従い調製された齧歯類の抗−TNF S−Ab、S−cV1qおよびS−rRt108は、中和TNF生物活性は元のcV1qおよびrRt108Abよりもそれぞれ200倍および20倍効果的である。
【0012】
本発明は別の観点では、前記S抗体、およびその少なくとも1つの特定配列、ドメイン、部分またはバリアントをコードするポリヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子を提供する。本発明はさらに抗−S抗体核酸分子を含んでなる組換えベクター、そのような核酸および/または組換えベクターを含有する宿主細胞、およびそのような抗体核酸、ベクターおよび/または宿主細胞の作成および/または使用法を提供する。
【0013】
また本発明は、宿主細胞中で少なくとも1つのS抗体を発現するための少なくとも1つの方法を提供し、この方法は本明細書に記載する宿主細胞を、少なくとも1つのS抗体が検出可能および/または回収可能な量で発現される条件下で培養することを含んでなる。宿主細胞は、COS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、HepG2、Ag653、SP2/0、HeLa、ミエローマもしくはリンパ腫細胞、またはそれらの任意の誘導体、不死化または形質転換した細胞から選択することができる。また提供されるのは、そのようなS抗体が検出可能および/または回収可能な量で発現されるように、in vitro、in vivoもしくはin situの条件下で、抗体をコードする核酸を翻訳することを含んでなる少なくとも1つのS抗体の生産法である。
【0014】
また本発明は、本明細書に記載する両単離されたS抗体分子をコードする核酸および/または抗体および適切な担体もしくは希釈剤を含んで成る少なくとも1つの組成物を提供する。担体もしくは希釈剤は既知の担体もしくは希釈剤に従い、製薬学的に許容され得る。組成物はまた少なくとも1つのさらなる化合物、タンパク質または組成物を含むことができる。また組成物は、検出可能な標識もしくはレポーター、TNFアンタゴニスト、抗リウマチ薬、筋弛緩剤、麻薬、非−ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、麻酔薬、鎮静剤、局所麻酔薬、神経筋遮断剤、抗菌薬、止痒薬、コルチコステロイド、同化性ステロイド、エリスロポエチン、免疫感作、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン代用薬、放射性薬品、抗鬱薬、抗精神薬、刺激物質、喘息薬物療法、ベータアゴニスト、吸入ステロイド、エピネフリンもしくは類似体、細胞傷害性もしくは他の抗ガン薬、メトトレキセートのような代謝拮抗物質、抗増殖薬、サイトカイン、サイトカインアンタゴニストから選択される少なくとも1つの化合物またはタンパク質の有効量も含んでなることができる。
【0015】
本発明はさらに、細胞、組織、器官、動物または患者の少なくとも1つの疾患状態を、関連する状態の前、それに続いて、またはその最中にモジュレートまたは処置するために、当該技術分野で知られている、および/または本明細書に記載するように治療に有効量の本発明のS抗体を投与するための少なくとも1つの方法または組成物を提供する。
【0016】
本発明はまた、本発明に従い治療的または予防的に有効量の少なくとも1つのS抗体を送達するための少なくとも1つの組成物、デバイスおよび/または方法も提供する。
【0017】
本発明はさらに、細胞、組織、器官、動物または患者の少なくとも1つの疾患状態を、関連する状態の前、それに続いて、またはその最中に、当該技術分野で知られている、および/または本明細書に記載するように診断するための少なくとも1つのS抗体法または組成物を提供する。
【0018】
また提供するのは、本発明の少なくとも1つの単離されたS抗体を含んでなる医療用デバイスであり、ここでデバイスは非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹内、嚢内、軟骨内、窩内、腔体内、小脳内、脳室内、結腸内、大脳内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊椎内、滑液包内、胸内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣、直腸、頬、舌下、鼻内または経皮から選択される少なくとも1つの様式により、S抗体と接触または投与するために適する。
【0019】
また包装材料および溶液もしくは凍結乾燥形態の本発明の少なくとも1つの単離されたS抗体を含んでなる容器を含んでなる、ヒトの製薬学的または診断的使用のための製品も提供する。この製品は場合により構成要素として、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹内、嚢内、軟骨内、窩内、腔体内、小脳内、脳室内、結腸内、大脳内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊椎内、滑液包内、胸内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣、直腸、頬、舌下、鼻内もしくは経皮送達デバイスまたはシステムの容器を有することを含んでなることができる。
【0020】
また提供するのは、本発明の少なくとも1つの単離されたS抗体の生産法であり、これは回収可能な量で抗体を発現することができる宿主、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物または植物細胞を含んでなる。さらに本発明で提供するのは、上記方法により生産された少なくとも1つのS抗体である。
【0021】
本発明はさらに、本明細書に記載する本発明を提供する。
発明の詳細な説明
A.引用
本明細書に引用するすべての刊行物または特許は全部、それらが本発明のこの時点の技術の状況を示し、かつ/または本発明の説明および可能性を提供するので参考により本明細書に編入する。刊行物とは任意の科学的もしくは特許公報、またはすべての記録された、電子的または印刷形式を含む任意の媒体形式で入手できる任意の他の情報を称する。(以下の技術文献は引用により全部、本明細書に編入する:Ausbel,et al.,分子生物学の現在のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、ジョン ウィリー&サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)、ニューヨーク、ニューヨーク州 1987−2001:Sambrook,et al.、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第2版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州 1989;Harlow and Lane、抗体(Antibodies)、ア ラボラトリーマニュアル、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州 1989;Colligan,et al.編集、免疫学の現在のプロトコール(Current Protocols in Immunolgy)、ジョン ウィリー&サンズ社、ニューヨーク州 1994−2001;Colligan,et al.,タンパク質科学の現在のプロトコール(Current Protocols in Protein Science)、ジョン ウィリー&サンズ社、ニューヨーク、ニューヨーク州 1997−2001。)
B.定義
特に定義しない限り、本発明と関連して使用する科学的および技術的用語は当業者により通常理解されている意味を有する。
【0022】
さらに内容で特に必要とされない限り、単数形は複数形を含み、そして複数形は単数形を含む。一般に本明細書に記載する細胞および組織培養、分子生物学、タンパク質およびオリゴ−もしくはポリヌクレオチド化学およびハイブリダイゼーションに関して、そしてその技術において使用する命名法は、当該技術分野で周知であり、そして一般的に使用されているものである。標準的な技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養および形質転換(例えば電気穿孔、リポフェクション)に使用する。
【0023】
酵素反応および精製技術は、製造元の仕様に従い、当該技術分野で通常行われているように、または本明細書に記載するように行う。前述の技術および手順は、一般に当該技術分野で周知な常法に従い、そして種々一般的な、および引用し、そして検討した、より具体的な参考文献に行記載されているように行う(例えば引用により本明細書に編入する、Sambrook,et al.、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、1989を参照にされたい)。本明細書に記載する研究室での手順および分析技術、合成用有機物、医学および製薬化学に関連して使用する命名法は、当該技術分野では周知であり、そして通常使用されているものである。標準的技術は化学合成、化学分析、製薬学的調製、製剤および送達および患者の処置に使用される。
【0024】
本出願で使用する科学的および技術的用語は、他にに特定しない限り当該技術分野で通常に使用されている意味を有する。本出願で使用するように、以下の用語または句は、以下の意味を有する:
「抗体」または「抗体ペプチド(1つまたは複数)」は、完全な抗体、または完全な抗体と特異的結合を競合するその結合フラグメントを指す。結合フラグメントは組換えDNA技術により、または酵素的もしくは完全な抗体の化学的開裂により生成される。結合フラグメントにはFab、Fab’、F(abl)2、Fvおよび単鎖抗体を含む。「二重特異性」または「二官能性」抗体以外は、同一のその各結合部位を有すると理解される。過剰な抗体がカウンター受容体へ結合する受容体の量を少なくとも約20%、40%、60%または80%、そしてより通常には約85%より多く(インビトロの競合結合アッセイで測定した時)まで減少させる時、抗体は実質的に受容体のカウンター受容体への結合(adhesion)を阻害する。
【0025】
本明細書で使用する「修飾されたIg分子」または「S抗体」とは、抗体の定常領域ドメインに少なくとも1つのさらなる定常ドメインの部分を含むことにより、自然に存在するIg分子とは異なる免疫グロブリン(“Ig”)分子を意味し;さらなる定常ドメインは、元の抗体と同じクラスまたは異なるIgクラスのいずれでもよい。修飾されたIg分子は、例えば選択した配列に整列したIgドメインまたはその部分をコードするポリヌクレオチドを使用した通例の遺伝子組換え、および細胞中で発現させることにより作成することができる。あるいは修飾されたIg分子はポリペプチド合成の通例の技術を使用して合成することができる。Ig分子はIgA(これはIgA1およびIgA2を含む)、IgM、IgG、IgDまたはIgE分子であることができる。
【0026】
本明細書で使用する「定常領域ドメイン」または「定常ドメイン」は、Ig分子の定常部分内のドメインを指し、C、C1、ヒンジ、C2、CおよびC4を含む。本明細書で使用する「可変領域ドメイン」または「可変ドメイン」は、特定の抗原に対するIgの特異性を付与するIg分子の部分を指す。
【0027】
本明細書で使用する「抗原」は、免疫グロブリン分子の抗原結合領域に結合できるか、または免疫応答を誘導することができるいずれかの物質を意味する。本明細書で使用ように、「抗原」には、限定するわけではないが抗原決定基、ハプテンおよび免疫原を含む。
【0028】
用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT−細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面群からなり、そして通常は特異的な三次元構造特性ならびに特異的な荷電特性を有する。抗体は解離定数が1mM、好ましくは100nM、そして最も好ましくは10nMである時、抗原に特異的に結合すると言う。
【0029】
本明細書で使用する「ベクター」は、1以上の目的とする遺伝子またはポリヌクレオチド配列を宿主細胞に送達し、そして好ましくは発現することができる構築物を意味する。ベクターの例には限定するわけではないが、ウイルスベクター、裸のDNAもしくはRNA発現ベクター、カチオン性の縮合剤に会合したDNAもしくはRNA発現ベクター、リポソームにカプセル化されたDNAもしくはRNA発現ベクター、および生産細胞のような特定の真核細胞を含む。
【0030】
本明細書で使用する「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、単−または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを意味し、そして他に限定しない限り、自然に存在するヌクレオチドに類似する様式で核酸にハイブリダイズする天然のヌクレオチドの既知の類似体を包含する。他に示さない限り、特定の核酸配列は場合により相補的配列を含む。ポリヌクレオチド配列は免疫グロブリンの可変および/または定常領域ドメインをコードすることができる。本明細書で使用する用語「単離されたポリヌクレオチド」は、ゲノム、cDNAまたは合成起源のポリヌクレオチド、またはそれらの幾つかの組み合わせを意味する。その起源により「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)「単離されたポリヌクレオチド」に自然に見いだされるポリヌクレオチドの全部または部分を付随せず、(2)自然には連結しないポリヌクレオチドに操作可能に連結され、または(3)より大きな配列の一部として自然に存在しない。
【0031】
本明細書で使用する製薬学的に許容され得る担体」には、Igと合わせた時にIgが生物活性を維持するようにし、そして個体の免疫系と非反応性である任意の物質を含む。例には限定するわけではないがリン酸緩衝化生理食塩水、水のような任意の標準的な製薬学的担体、油/水型乳液のような乳液、および様々な種類の湿潤化剤を含む。エーロゾルまたは非経口的投与用の好適な希釈剤には、リン酸緩衝化生理食塩水または標準(0.85%)食塩水を含む。
【0032】
添付する特許請求の範囲で使用する「a」は、少なくとも1つを意味し、そして複数を含むことができる。本明細書で使用する用語「操作可能に連結された」とは、意図する様式でそれらが機能できる関係における位置を指す。コード配列に「操作可能に連結された」対照配列は、コード配列の発現が対照配列の発現と両立できる条件下で達成されるような様式に連結されている。
【0033】
本明細書で使用する用語「対照配列」は、それらが連結されているコード配列の発現およびプロセッシングを行うために必要なポリヌクレオチド配列を指す。そのような対照配列の性質は、宿主生物に依存して異なる:原核生物では、そのような対照配列は一般にプロモーター、リボゾーム結合部位、および転写終結配列を含み;真核生物では、そのような対照配列は一般にプロモーターおよび転写終結配列を含む。用語「対照配列」は少なくとも、その存在が発現およびプロセッシングに必須であるすべての成分を含むことを意図し、そしてまたその存在が発現およびプロセッシングに有利となるさらなる成分、例えばリーダー配列および融合パートナー配列も含むことができる。
【0034】
本明細書で使用する20個の通例のアミノ酸およびそれらの略号は、通例の使用に従う。本発明のS抗体を作るアミノ酸は、しばしば略記される。アミノ酸の命名法は当該技術分野で周知であるように、その1文字暗号、その3文字暗号、名前または3ヌクレオチドコドン(1つまたは複数)によるアミノ酸の命名により示すことができる(Alberts,B.et al.,細胞の分子生物学(Molecular Biology of The Cell)、第3版、ガーランド(Garland)出版社、ニューヨーク、1994を参照にされたい):
【0035】
【表1】

【0036】
20個の通常のアミノ酸の立体異性体(例えばD−アミノ酸)、x−、x−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸のような非天然アミノ酸、および他の通例ではないアミノ酸も本発明のポリペプチドの成分に適することができる。通例ではないアミノ酸の例には:4−ヒドロキシプロリン、g−カルボキシグルタメート、e−N,N,N−トリメチルリシン、e−N−アセチルリシン、0−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、s−N−メチルアルギニン、および他の類似アミノ酸およびイミノ酸を含む。本明細書で使用するポリペプチドの表記では標準使用および慣例に従い、左手方向がアミノ末端方向であり、そして右手方向がカルボキシ末端方向である。
【0037】
ポリペプチドに適用する時、用語「実質的に同一」とは、2つのペプチド配列が最適に配列された時、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、そして最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を共有することを意味する。
【0038】
好ましくは、同一でない残基の位置は保存的アミノ酸置換により異なる。
【0039】
保存的アミ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を称する。例えば:脂肪族側鎖を有するアミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸は、セリンおよびトレオニンであり;アミド−含有側鎖を有するアミノ酸は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸は、リシン、アルギニンおよびヒスチジンであり;硫黄−含有側鎖を有するアミノ酸は、システインおよびメチオニンである。好適な保存的アミノ酸置換群は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸およびアスパラギン−グルタミンである。
【0040】
本明細書で検討するように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列中のわずかな変化は、そのアミノ酸配列中の変化が少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、そして最も好ましくは99%で維持されるならば、本発明に包含されるものとする。特に保存的アミノ酸置換が意図される。保存的置換は、それらの側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で起こるものである。遺伝子でコードされるアミノ酸は一般にファミリーに分類される:(1)酸性=アスパルテート、グルタメート;(2)塩基性=リシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非電荷極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。より好適なファミリーは:脂肪族−ヒドロキシ(hydrox)=セリン、トレオニン;アミド含有=アスパラギン、グルタミン:脂肪族=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン;芳香族=フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン。例えばロイシンのイソロイシンまたはバリンへの、アスパルテートのグルタメートへの、トレオニンのセリンへの散発的置換、またはアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸への同様な置換は、生じる分子の結合または特性に主要な効果が無く、特に置換に骨格部位内のアミノ酸が関与しなければそうであると予想することは妥当である。アミノ酸の交換が機能的ペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異性をアッセイすることにより容易に決定することができる。アッセイは本明細書に詳細に記載する。抗体または免疫グロブリン分子のフラグメントまたは類似体は、当業者により容易に調製され得る。フラグメントまたは類似体の好適なアミノ−およびカルボキシ−末端は、機能的ドメインの境界付近で生じる。
【0041】
構造的および機能的ドメインは、公的もしくは所有配列データーベースに対してヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを比較することにより同定することができる。好ましくはコンピューターによる比較法を使用して、既知の構造および/または機能の他のタンパク質中に存在する配列モチーフまたは予想されるタンパク質の立体配座のドメインを同定する。既知の三次元構造にフォールドするタンパク質配列を同定する方法は知られている(Bowie et al.,Science 253:164(1991))。このように前述の例は、当業者が本発明に従い構造的および機能的ドメインを定めるために使用できる配列モチーフおよび構造的立体配座を認識できることを示している。
【0042】
好適なアミノ酸置換は:(1)タンパク質分解に対する感受性を下げる、(2)酸化に対する感受性を下げる、(3)タンパク質複合体を形成する結合親和性を改変する、(4)結合親和性を改変する、および(4)そのような類似体の他の生理化学的または機能的特性を付与するか、または修飾するものである。類似体は自然に存在するペプチド配列以外の様々なムテインの配列を含むことができる。例えば単一もしくは多アミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)を自然に存在する配列に作成することができる(好ましくは分子間接触を形成するドメイン(1つまたは複数)の外側のポリペプチドの部分に)。
【0043】
保存的アミノ酸置換は、元の配列の構造的特性を実質的に変化させるべきではない(例えば、置換アミノ酸は元の配列に存在するヘリックスを壊したり、または元の配列を特徴付ける他の種類の二次構造を破壊する結果につながるべきではない)。
【0044】
(技術的に認識されているポリペプチドの二次およびS三次構造の例は、Creighton編集、タンパク質、構造および分子学的理論(Proteins,Strurctures and Molecular Principles) W.H.フリーマン アンド カンパニー(Freeman and Company)、ニューヨーク、1984;C.Branden and J.Tooze編集、タンパク質構造への導入(Introduction to Protein Structure) ガーランド出版社、ニューヨーク、1991;Thornton et al.,Nature 354:105 1991に記載されており、これらは引用により本明細書に編入する。)
患者という用語は、ヒトおよび獣医学的個体を含む。
B.抗体構造
基本的な抗体構造単位は四量体である。各四量体は2つの同一対のポリペプチド鎖からなり、各対が1つの「軽」(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分には、抗原認識機能の主な原因となる約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能の原因となる定常領域を定める。ヒトの軽鎖はカッパおよびラムダ軽鎖に分類される。重鎖定常領域は、μ、δ、γ、αおよびεに分類され、そしてそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして抗体のアイソタイプを定める。
【0045】
各ガンマ重鎖定常領域は、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含み、ガンマ−3中のヒンジドメインは4種のエキソンによりコードされる。(Morrison and Oiの免疫グロブリン遺伝子(Immunoglobulin Genes)、第259〜274の「キメラIg遺伝子(Chimeric Ig Genes)」、Honjo et al.編集、アカデミック(Academic)出版社、サンディエゴ、カリフォルニア州、1989)。軽鎖および重鎖中、可変および定常領域は約12個以上のアミノ酸の“J”領域により連結され、重鎖は約10個以上のアミノ酸の“D”領域も含む(一般的に:基本的免疫学(Fundamental Immunology)、第7章(Paul,W.編集、第2版、ラベン(Raven)出版、ニューヨーク 1989(引用により全部、この目的で編入する)を参照にされたい)。各軽/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。このように完全な抗体は2つの結合部位を有する。二官能性または二重特異性抗体を除き、2つの結合部位は同じである。鎖はすべて、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる、3つの超可変領域により連結された比較的保存されている骨格領域(FR)の同じ一般構造を表す。
【0046】
各対の2つの鎖に由来するCDRは骨格領域により並べられ、特異的エピトープへの結合を可能とする。N−末端からC−末端へ、軽および重鎖の両方がドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、免疫学的に興味深いタンパク質のKabat配列(Kabat Sequences of Proteins of Immunological Intrest)(ベセスダ国立健康研究所(National Instututes of Health Bethesda)、メリーランド州 1987および1991;Chothia & Lesk J.Mol.Biol.196:901−917 1987;Chothia et al.,Nature 342:878−883 1989)の定義に従う。
【0047】
二重特異性または二官能性抗体は、2つの異なる重/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工的なハイブリッド抗体である。二重特異性抗体はハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結を含む種々の方法により生産することができる(例えば、Songsivilai & Lachman Clin.Exp.Immunol.79:315−321 1990;Kostelny et al.J.Immunol.148:1547−1553 1992を参照にされたい)。
【0048】
二重特異性抗体の生産は、通例の抗体の生産法に比べるとやや労力を要する方法であり、そして二重特異性抗体に関する収量および純度は一般に低い。
【0049】
二重特異性抗体は単一結合部位を有するそのフラグメント形態としては存在しない(例えばFab、FabおよびFv)。
C.本発明の抗体
本発明は抗体分子の空間的特性を修飾するために、すなわちインビトロおよびインビボで分子の中和能力および安定性、およびこれら分子の特性を強化するために、定常領域に余分な免疫グロブリンドメインを含むように抗体分子を操作することに関する。
【0050】
本発明に従い、抗体の定常領域に免疫グロブリン定常ドメインを挿入することにより、抗体の特性を修飾し、したがってそれを包含する分子のアビディティおよび/または親和性を増すために、複数の天然または修飾された免疫グロブリン(Ig)定常ドメインの利用法を提供する。この様式で、抗体の2つのFabドメインの空間的特性および柔軟性を修飾することができる。また本発明に従い提供されのは、本発明の方法に従い修飾された分子の組成物である。一般に本発明による方法は、余分な免疫グロブリン定常ドメインまたはその修飾体を含んでなる少なくとも1つの分子を、Ig定常ドメインを抗体の定常領域に物理的に連結することにより分子に加えて、抗体定常ドメインを形成することを含んでなる。
【0051】
例えばIgG定常領域の完全なCH1ドメインを含んでなるポリペプチドは、2つのドメインを物理的に連結することにより、正常な抗体のCH1とヒンジドメインとの間に余分なCH1ドメインを挿入することにより、IgG2a抗体の定常領域に加えることができる。物理的連結は任意の通例の技術を使用して行うことができる。好適な態様では、ドメインの物理的連結は組換え的に行われ、すなわちそのようなドメインをコードする遺伝子構築物を発現系に、それらから発現した時、分子の正しい集成が可能となる様式で導入される。前記の例を図1に表す。
【0052】
そのような修飾されたIgを構築するために、一般に余分な定常ドメイン分子をコードする遺伝子が容易に単離され、そして元の抗体の定常領域をコードする遺伝子にクローン化される。例えばIgG1遺伝子の全CH1ドメインを含むXbaI−ApoI制限フラグメントは、以下の実施例で示すように、必要に応じてそのようなフランキング領域と一緒にIgG2a遺伝子のCH1とヒンジドメインとの間のイントロン中に位置するStuI制限部位にクローン化され得る。次いで最終的な重鎖発現プラスミドを調製するために、重鎖可変領域をコードするDNAフラグメントを修飾された定常領域配列の上流にクローン化する。次いでこの構築物は軽鎖プラスミドと混合され、そして発現に適する細胞株にトランスフェクトされる。この様式で、図1に示す分子を生産することができる。
【0053】
以下の実施例では、マウスCH1ドメインをコードする配列をマウスIgG2a重鎖分子のCH1ドメインの下流に挿入した。他の好適な態様は、CH1ドメインの代わりにIgG由来のCH2またはCH3ドメインを挿入することを含むことができる。挿入するドメインは軽鎖に由来するドメインまたはIgDのような別のIgアイソタイプ、特に別のドメインを付随しないCHドメインでもよい。通常、重鎖のCH1ドメインは軽鎖定常領域に密接に(intimately)会合(associated)しており、そしてこの会合は重鎖および軽鎖の両方の上の疎水性面を埋める。知られている限り、S−Abs中のCH1ドメインは軽鎖に結合していない。各二量体分子の2つのCH1ドメインは互いに結合して、他の露出した疎水性面を埋めることが可能である。免疫グロブリンドメインは軽鎖が重鎖を結合することができる限り、CH1ドメインとヒンジ領域との間の代わりに可変領域とCH1ドメインとの間に挿入されることができる。
【0054】
さらに挿入される定常領域は天然の抗体に存在する定常領域の天然形に限定される必要はない。むしろ本発明に従い挿入される定常領域ドメインは、例えば定常領域ドメインの突然変異誘発法を介して生成され、続いて強化された活性についてスクリーニングされるか、または合成的に調製され得る。
【0055】
本発明はヒト、非ヒト霊長類、ヤギ、ウサギ、ニワトリ、ラットまたはハムスターのような他の種に由来するAbを用いて実施することができる。他の可能性は、CD4のような非Abタンパク質に由来する免疫グロブリンのドメインを挿入することであろう。挿入された配列は免疫グロブリンドメインである必要はない。他の配列はAbの効力を改善するために必要とされる柔軟性または空間的配置を与えることができる。例には(Gly−Gly−Gly−Ser)のようなグリシンおよびセリン残基からなるポリペプチドリンカーを含む。しかしS−cV1qおよびS−Rt108Abを作成する前に、cV1qはcV1q−flex1またはcV1q−flex3と名付けたAbを生成するために、柔軟なGly−Gly−Gly−Ser配列のいずれか1または3個の縦列コピーを含むように修飾された。これらのAbは細胞中で発現され、細胞上清から精製され、そしてmuTNF細胞傷害性を遮断するそれらの能力についてアッセイされた。結果(示さず)は、cV1qの柔軟な変形が標準cV1qAbと同じ中和効力を有することが示された。柔軟性リンカーのさらなる至適化は、効力を増加する他の変形を生じることが可能である。
D.利点
前述の記載から、当業者は本発明が2つのFabドメインの間に追加される空間的距離および柔軟性が望ましい多数の種々の目的に利用できると理解するだろう。例えば本明細書に記載する修飾は:
代理Abが機能的に二価であることが望ましい場合、より良いAbとして役立つAb
特にホモポリマー性抗原と、所望する高次な免疫複合体を形成するAb
Abの中和効力に劇的な上昇、これにより研究目的、診断目的、または治療処置に必要なAbの量を減らすこと
標的抗原を発現している細胞に対するAbのアビディティに劇的な上昇、これにより細胞に対する大きな結合から生じるFc媒介型の免疫エフェクターメカニズムを強化することができ(Ab依存的細胞傷害性のような);ヒト抗原に対するAbの応用性を持つことができる
をもたらすことができる。
【0056】
本発明は一般に受容体とそのリガンドとの間の相互作用を強化するためにも応用することができると考えられる。この観点では、受容体またはリガンド部分のいすれかは、受容体とリガンドとが相互作用する親和性、アビディティまたは単に能力を強化する1より多くの部分を有するように分子を修飾することができる。換言すると、本発明は結合ドメインの空間的特性を修飾することにより、分子のその標的に対するアビディティを増す方法を提供する。最終的な結果は、標的に対して修飾された分子が元の分子よりも高い親和性を有し、そして結果として競合物として使用することができる。さらに余分な免疫グロブリンドメインを加えることは外来タンパク質配列を導入しないので、修飾された分子が免疫原になる見込みが低い。
【0057】
より高い親和性を有するリガンドは、アンタゴニストとして受容体の機能を遮断するように、または極めて有力なアゴニストを潜在的に生成するように設計することができる。
E.修飾された抗体の設計
上に検討しように、本発明に従い好適な修飾S抗体を調製するために使用する基本的設計は、CH1ドメインのようなさらなる定常ドメインを抗体の定常領域に編入することである。本発明による1つの構築物は、CH1ドメインの既存の抗体への付加である(図1に示すような)。修飾される抗体は任意のヒト、齧歯類または他の起源の抗体から選択することができ、そしてキメラ、ヒト化、ヒトまたは合成抗体でよい。1つの態様では、修飾される抗体は正常またはトランスジェニックマウスの免疫感作を介して生成され得る。抗体は当該技術分野で知られている任意の多数の方法でさらに修飾され得る。一般に修飾された抗体は余分な定常ドメインをコードするポリヌクレオチドまたは他の挿入配列を、抗体の定常領域をコードするプラスミドに単に挿入し、そしてプラスミドを適切な宿主細胞中で発現させて、修飾された抗体を生産することにより調製することができる。挿入は免疫グロブリンの定常領域のいかなる場所でも行うことができる。1つの態様では、挿入は重鎖分子のCH1ドメインの下流になされるが、挿入は定常領域の別の場所に行うこともできる。挿入は直接またはリンカー分子を使用して行うことができる。挿入およびリンカーの性質は、意図する機能を行うために必要とされるような、すなわち抗体分子の空間的特性および結合領域の柔軟性を修飾するために設計することができる。抗体免疫グロブリン分子を修飾するアミノ酸組成および挿入物の長さは、当該技術分野で知られている様々な異なる配列を含有する構築物を試験することにより決定することができる。
【0058】
特定の特性を有する修飾分子を望む場合、どうにかその特性を修飾するように、定常領域挿入物の中に特定の突然変異を導入することが望ましいか、または必要かもしれない。しかしヒトで使用する抗体を望む場合、挿入物は出来る限り免疫原性を下げてヒトの配列に近づくように作成することが望ましい。したがって一般に免疫原性の生成を回避するように、出来る限り少ないアミノ酸の変化を修飾分子に導入することが望ましい。
【0059】
少なくとも2つの異なる抗原に結合特異性を有する、二重特異性、ヘテロ特異性、ヘテロ結合体または類似のモノクローナル、ヒト化抗体を使用することもできる。そのよう場合、1つの結合特異性は1つの抗原に対するように設計され、そしてもう1つは任意の他の抗原に対する。二重特異性抗体の作成法は、当該技術分野では既知である。従来から二重特異性抗体の組換え生産は、2つの免疫グロブリンの重鎖/軽鎖対の同時発現に基づき、ここで2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))。免疫グロブリンの重および軽鎖の無作為な取り合わせにより、これらのハイブリドーマ(クワドローマ)は、10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生産し、この中の1つだけが正しい二重特異性構造を有する。通常はアフィニティクロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製はやや煩わしく、そして生成物の収量は低い。類似の方法が開示されている(例えば国際公開第93/08829号パンフレット、米国特許第6210668号、同第6193967号、同第6132992号、同第6106833号、同第6060285号、同第6037453号、同第6010902号、同第5989530号、同第5959084号、同第5959083号、同第5932448号、同第5833985号、同第5821333号、同第5807706号、同第5643759号、同第5601819号、同第5582996号、同第5496549号、同第4676980号明細書、国際公開第91/00360号、同第92/00373号パンフレット、欧州特許第03089号明細書、Traunecker et al.,EMBO J.10:3655 1991;Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210 1986、それぞれ引用により本明細書に編入する)。
【0060】
以下の実施例では、マウスIgG1定常領域の完全なCH1ドメインをコードするDNA配列を、抗体cV1qおよびrRt108のマウスIgG2a定常領域をコードする遺伝子に加えるために、修飾されたAbは組換えDNA法を使用することにより調製した。余分なCH1ドメインは、正常AbのCH1とヒンジドメインとの間に挿入した(図2)。具体的には、マウスIgG1遺伝子の全CH1ドメインおよび幾つかの隣接イントロン配列を含むXbaI−ApoI制限フラグメントを、マウスIgG2aのCH1とヒンジドメインとの間のイントロンに位置するStuI制限部位にクローン化した。次いでcV1qまたはRt108重鎖可変領域のいずれかをコードしたDNAフラグメントを、修飾した定常領域配列の上流にクローン化して最終的な重鎖発現プラスミドを調製した。この重鎖プラスミドを、前に正常Abを発現するために使用した同じ軽鎖プラスミドと混合し、そして電気穿孔によりマウスのミエローマ細胞に一緒に導入した。S−cV1qまたはS−rRt108のいずれかを分泌するトランスフェクトした細胞は、細胞上清をマウスIgGについて通例のELISA技術によりアッセイすることにより同定した。生産細胞株をスケールアップし、次いでS−Abは細胞上清から通例のプロテインAクロマトグラフィーにより精製した。
【0061】
精製したS−AbはSDSを含有するポリアクリルアミドゲルを通すことにより、それらの重鎖が正常なAbの対応する重鎖よりも高い分子量(予想どおり約15kDa高い)であったことを確認した(図3)。S−Abおよび正常Abの軽鎖は予想通り同じ分子量であった。修飾抗体の起源であった非修飾マウス抗体と比べた修飾抗体の配列を図2に示す。
【0062】
一般に、本発明のヒト抗体または抗原−結合フラグメントは、少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)または少なくとも1つの重鎖可変領域のバリアント、および少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR4、CDR5およびCDR6)または少なくとも1つの軽鎖可変領域のバリアント、骨格領域および記載したように修飾された軽鎖および重鎖定常領域を含んで成る抗原結合領域を含んで成る。そのような抗体は、通例の技法を使用して抗体の種々の部分(例えばCDR、骨格)を化学的に一緒に連結することにより調製するか、組換えDNA法の通例技術を使用して抗体をコードする(すなわち1以上の)核酸分子を調製および発現することにより、または他の適当な方法を使用することにより、調製することができる。
【0063】
好ましくはS抗体またはリガンド結合部分またはそのバリアントは、少なくとも1つのタンパク質リガンドまたは受容体に結合し、これにより対応するタンパク質またはそのフラグメントの少なくとも1つの生物学的活性を提供する。種々の治療的または診断的に重要なタンパク質が当該技術分野において周知であり、そしてそのようなタンパク質の適当なアッセイまたは生物学的活性も当該技術分野において周知である。任意の数の生物学的に活性なタンパク質に結合するS抗体を本発明に関連して使用することができる。特に興味深いのはTNF、レプチン、任意のインターロイキン(IL−1からIL−23等)、および補体の活性化に関与するタンパク質に結合し、すなわち活性をモジュレートするS抗体である(例えばC3b)。腫瘍等で発現するタンパク質を含め、特定の疾患状態で異なって発現される標的タンパク質も興味深い。これらすべての種類のリガンドは、本明細書に引用する参考文献および他の参考文献に記載されている方法により見いだすことができる。特に好適なS抗体の群は、サイトカイン受容体に結合するものである。サイトカインは最近、それらの受容体コードに従い分類された(Inglot 1997,Archivum Immunologiae Therapiae Experimentalis 45:353−7、これは引用により本明細書に編入する)。
【0064】
修飾された定常領域を含んでなる本発明の修飾されたS抗体は、ファージディスプレイ(Katsube,Y.,et al.,Int J Mol.Med,1():863−868 1998)、または当該技術分野で知られ、かつ/または本明細書に記載するようなトランスジェニック動物を使用する方法のような適切な方法を使用して調製することができる。例えば抗体またはその特定部分もしくはバリアントは、コード核酸およびその部分を適当な宿主細胞で発現させることができる。
【0065】
本発明はまた、本明細書に記載するアミノ酸配列と実質的に同じである修飾された抗体に関する。好ましくはそのような抗体または抗原結合フラグメント、およびそのような鎖またはCDRを含んでなる抗体は、所望する抗原と高い親和性で(例えば約10−9M以下のK)で結合できる。本明細書に記載する配列と実質的に同じアミノ酸配列には、保存的アミノ酸置換、ならびにアミノ酸欠失および/または挿入を含んで成る配列を含む。保存的アミノ酸置換とは、第1アミノ酸と類似の化学的および/または物理的特性(例えば、荷電、構造、極性、疎水性/親水性)を有する第2のアミノ酸に、第1アミノ酸を置き換えることを言う。保存的置換には、以下の群内で1つのアミノ酸が別のアミノ酸に置き換わることを含む:リシン(K)、アルギニン(R)およびヒスチジン(H);アスパルテート(D)およびグルタメート(E);アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)、K、R、H、DおよびE;アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)およびグリシン(G);F、WおよびY;C、SおよびT。
【0066】
本発明のS抗体は、それが由来する元の抗体から、天然の突然変異または人為的操作に由来するいずれか1以上のアミノ酸置換、欠失または付加を含むことができる。
【0067】
機能に必須な本発明のS抗体のアミノ酸は、位置指定突然変異誘発法またはアラニン−走査突然変異誘発法(例えばAusubel、同上、第8、15章;Cunningham and Wells,Science 244:1081−1085 1989を参照にされたい)のような当該技術分野で既知の方法により同定することができる。後者の手法は、1つのアラニン突然変異を分子の各残基に導入する。生成した突然変異体分子は次いで、限定するわけではないが少なくとも1つのS中和活性のような生物活性に関して試験される。抗体結合に重要な部位も、結晶化、核磁気共鳴または光親和性標識のような構造分析により同定することができる(Smith,et al.,J.Mol.Biol.224:899−904 1992およびde Vos,et al.,Science 255:306−312 1992)。
【0068】
本発明のS抗体は限定するわけではないが、少なくとも1つの配列番号1の少なくとも5個の連続するアミノ酸から選択される少なくとも1つの部分、配列または組み合わせを含むことができる。
【0069】
S抗体はさらに場合により、少なくとも1つの配列番号1の少なくとも1つの70〜100%連続するアミノ酸のポリペプチドを含んで成ることができる。
【0070】
1つの態様では、免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列またはそれらの部分(例えば可変領域、CDR)は、少なくとも1つの配列番号1の対応する鎖のアミノ酸配列に対して、約70〜100%の同一性(例えば70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100またはこの中の任意の範囲または値)を有する。例えば軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号1の軽鎖配列に匹敵することができ、または重鎖CDR3のアミノ酸配列は配列番号1の重鎖CDR3配列に匹敵することができる。好ましくは70〜100%のアミノ酸同一性(すなわち、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100またはこの中の任意の範囲または値)が、当該技術分野で知られている適当なコンピューターアルゴリズムを使用して決定される。
【0071】
当業者は、本発明が少なくとも1つの生物的に活性な本発明の抗体を含むと考えるだろう。生物的に活性な抗体は、天然(非−合成)、内因性または関連する、および既知の抗体の少なくとも20%、30%または40%、そして好ましくは少なくとも50%、60%または70%、そして最も好ましくは少なくとも80%、90%または95%〜1000%の特異的活性を有する。酵素活性および基質特異性を測定するアッセイおよび定量法は、当業者には周知である。
【0072】
別の観点では、本明細書に記載する修飾されたS抗体は有機部分の共有結合によりさらに修飾され得る。そのような修飾は改善された薬物動態学的特性(例えばインビボ血清半減期の上昇)を持つ抗体または抗原結合フラグメントを生じることができる。この有機部分は直鎖または分岐した親水性のポリマー性基、脂肪酸基、または脂肪酸エステル基であることができる。特定の態様では親水性のポリマー性基は約800〜約120,000ダルトンの分子量を有することができ、そしてポリアルカングリコール(例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG))、炭水化物ポリマー、アミノ酸ポリマーまたはポリビニルピロリドンであることができ、そして脂肪酸または脂肪酸エステル基は約8〜約40個の炭素原子を含んで成ることができる。
【0073】
本発明の修飾された抗体および抗原結合フラグメントは、直接的または間接的に抗体に共有的に結合した1以上の有機部分を含んで成ることができる。本発明の抗体または抗原結合フラグメントに結合する各有機部分は、独立して親水性ポリマー性基、脂肪酸基または脂肪酸エステル基であることができる。本明細書で使用する用語「脂肪酸」は、モノ−カルボン酸およびジ−カルボン酸を包含する。本明細書で使用する用語「親水性のポリマー性基」とは、水中でオクタンよりも溶解性の有機ポリマーを指す。例えばポリリシンは水中でオクタンより可溶性である。すなわちポリリシンの共有結合により修飾された抗体は、本発明に包含される。本発明の抗体を修飾するために適する親水性ポリマーは直鎖または分岐であることができ、そして例えばポリアルカングリコール(例えば、PEG、モノメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG)、PPG等)、炭水化物(例えばデキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖等)、親水性アミノ酸のポリマー(例えばポリリシン、ポリアルギニン、ポリアスパルテート等)、ポリアルカンオキシド(例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)、およびポリビニルピロリドンを含む。好ましくは本発明の抗体を修飾する親水性ポリマーは、別の分子量の物体として約800〜約150,000ダルトンの分子量を有する。例えばPEG5000およびPEG20,000(ここで下付文字は、ダルトンでのポリマーの平均分子量である)を使用することができる。親水性のポリマー性基は1〜約6個のアルキル、脂肪酸または脂肪酸エステル基で置換することができ。脂肪酸または脂肪酸エステル基で置換される親水性ポリマーは、適当な方法を使用することにより調製することができる。例えばアミン基を含んで成るポリマーは、脂肪酸または脂肪酸エステルのカルボキシレートにカップリングすることができ、そして脂肪酸または脂肪酸エステル上で活性化されたカルボキシレート(例えばN,N−カルボニルジイミダゾールにより活性化される)を、ポリマー上のヒドロキシル基にカップリングすることができる。
【0074】
本発明の抗体を修飾するために適切な脂肪酸および脂肪酸エステルは飽和であることができ、あるいは1以上の不飽和単位を含むことができる。本発明の抗体を修飾するために適切な脂肪酸には、例えばn−ドデカノエート(C12、ラウレート)、n−テトラデカノエート(C14、ミリステート)、n−オクタデカノエート(C18、ステアレート)、n−エイコサノエート(C20、アラキデート)、n−ドコサノエート(C22、ベヘネート)、n−トリアコンタノエート(C30)、n−テトラコンタノエート(C40)、シスαα9−オクタデカノエート(C18、オレート)、オールシス−α5,8,11,14−エイコサテトラエノエート(C20、アラキドネート)、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸等を含む。適当な脂肪酸エステルには、直鎖もしくは分枝低級アルキル基を含んで成るジカルボン酸のモノ−エステルを含む。低級アルキル基は、1から約12、好ましくは1から約6個の炭素原子を含んで成ることができる。
【0075】
修飾されたヒト抗体および抗原結合フラグメントは、1以上の修飾剤を用いた反応によるような適当な方法を使用して調製することができる。本明細書で使用する用語「修飾剤」は、活性化基を含んで成る適当な有機基(例えば親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)を指す。「活性基」は、適当な条件下で第2の化学基と反応し、これにより修飾剤と第2の化学基との間に共有結合を形成することができる化学的部分または官能基である。例えばアミン反応性の活性基には、トシラート、メシラート、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)等のような求電子性基を含む。チオールと反応することができる活性基には、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5−チオール−2−ニトロ安息香酸チオール(TNB−チオール)等を含む。アルデヒド官能基をアミンまたはヒドラジドを含有する分子にカップリングさせることができ、そしてアジド基を三価のリン基と反応させてホスホルアミデートまたはホスホルイミド結合を形成することができる。活性基を分子に導入する適当な方法は、当該技術分野で既知である(例えば、Hermanson,G.T.生物結合法(Bioconjugate Techniques)、アカデミック出版;サンディエゴ、カリフォルニア州、1996を参照にされたい)。活性化基は有機基(例えば親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)に直接、またはリンカー部分、例えば二価のC−C12基(ここで1以上の炭素原子が酸素、窒素または硫黄のようなヘテロ原子に置き換わることができる)を介して結合させることができる。適当なリンカー部分には、例えばテトラエチレングリコール、−(CH−、−NH−(CH−NH−、−(CH−NH−および−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−NH−を含む。リンカー部分を含んで成る修飾剤は、例えばモノ−Boc−アルキルジアミン(例えばモノ−Boc−エチレンジアミン、モノ−Boc−ジアミノヘキサン)を、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で脂肪酸と反応させて、遊離アミンと脂肪酸カルボキシレートとの間にアミド結合を形成することにより生成することができる。Boc保護基はトリフルオロ酢酸(TFA)を用いた処理により生成物から除去し、記載した別のカルボキシレートにカップリングすることができる1級アミンを露出することができるか、または無水マレイン酸と反応させ、そして生じた生成物を環化して脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を生成することができる(例えばThompson,et al.,国際公開第92/16221号パンフレットを参照にされたい(この教示は引用により本明細書に編入する))。
【0076】
本発明の修飾した抗体は、ヒト抗体または抗原結合フラグメントを修飾剤と反応させることにより生成することができる。例えば有機部分を、アミン−反応性修飾剤(例えばPEGのNHSエステル)を使用することにより非−部位特異的様式で抗体に結合することができる。修飾したヒト抗体または抗原結合フラグメントは、抗体または抗原結合フラグメントのジスルフィド結合(例えば鎖内ジスルフィド結合)を還元することにより調製することもできる。還元された抗体または抗原結合フラグメントは、次いでチオール−反応性の修飾剤と反応させて、本発明の修飾された抗体を生成することができる。本発明の抗体の特異的部位に結合する有機部分を含んで成る修飾されたヒト抗体および抗原結合フラグメントは、逆タンパク質溶解(Fisch et al.,Bioconjugate Chem.,3:147−153 1992;Werlen et al.,Bioconjugate Chem.,5:411−417 1994;Kumaran et al.,Protein Sci.6(10):2233−2241 1997;Itoh et al.,Bioorg.Chem.,24(1);59−68 1996;Capellas et al.,Biotechnol.Bioeng.,56(4):456−463 1997のような適当な方法、およびHermanson,G.T.,生物結合法(Bioconjugate Techniques)、アカデミック出版;サンディエゴ、カリフォルニア州1996)のような適当な方法を使用して調製することができる。
F.修飾されたS抗体の調製
本発明のキメラ抗体、フラグメントおよび領域の定常(C)領域をコードするヒト遺伝子は、ヒト胎児肝臓ライブラリーから既知の方法により誘導することができる。ヒトC領域の遺伝子は、ヒト免疫グロブリンを発現し、そして生産する細胞を含む任意のヒト細胞に由来することができる。ヒトC領域は、γ、μ、α、δ、εおよびG1、G2、G3およびG4のようなそれらのサブタイプを含め、ヒトH鎖の既知のクラスまたはアイソタイプに由来することができる。H鎖アイソタイプは抗体の種々のエフェクター機能の原因であるので、C領域の選択は補体結合、または抗体依存的細胞傷害性(ADCC)における活性のような所望のエフェクター機能により導かれるだろう。好ましくはC領域はγ1(IgG1)に由来する。ヒトC領域はヒトL鎖アイソタイプ、κまたはλ、好ましくはκのいずれかに由来することができる。
【0077】
ヒト免疫グロブリンC領域をコードする遺伝子は、ヒトの細胞から標準的なクローニング技術により得られる(Sambrook,et al.,モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル、第2版、コールドスプリングハーバー出版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク 1989;Ausubel et al.編集、分子生物学の現在のプロトコール 1987−1993)。ヒトC領域遺伝子は、2つのクラスのL鎖、5つのクラスのH鎖およびそれらのサブクラスを表す遺伝子を含む既知のクローンから容易に入手することができる。F(abおよびFabのようなキメラ抗体フラグメント、は、適切に短縮化されたキメラH鎖遺伝子を設計することにより調製することができる。例えばF(abフラグメントのH鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、CH1ドメインおよびH鎖のヒンジ領域、続いて短縮化分子を生じるための翻訳終結コドンをコードするDNA配列を含む。
【0078】
一般に本発明のマウス、ヒトまたはマウスおよびキメラ抗体、フラグメントおよび領域は、特異的な抗体のHおよびL鎖抗原結合領域をコードするDNAセグメントをクローニングし、そしてこれらDNAセグメントをCおよびC領域を囲むDNAセグメントにそれぞれ連結して、マウス、ヒトまたはキメラ免疫グロブリンをコードする遺伝子を生成することにより生産される。
【0079】
このように好適な態様では、連結(J)セグメントを用いて機能的に再配列されたV領域のような非ヒト起源の少なくとも抗原結合領域をコードする第1DNAセグメントが、挿入された配列を含有するヒトC領域の少なくとも部分をコードする第2DNAセグメントに連結されて含んでなる融合したキメラ遺伝子が作成される。
【0080】
可変、定常または挿入配列の配列は、キメラ抗体が目的とする抗原に結合し、そして阻害する能力を維持する程度で挿入、置換および欠失により修飾することができる。当業者は適用可能な機能的アッセイを行うことにより、この活性の管理を確実にすることができる。
【0081】
本発明のS抗体は、当該技術分野で周知であるように場合により細胞株、混合細胞株、不死化細胞または不死化細胞のクローン群により生産することができる。(例えばAusubel et al.編集、分子生物学の現在のプロトコール、ジョン ウィリー&サンズ社、ニューヨーク、ニューヨーク州 1987−2001;Sambrook,et al.,モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル、第2版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク 1989;Harlow and Lane、抗体、ア ラボラトリーマニュアル、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク 1989;Colligan et al.編集、免疫学の現在のプロトコール、ジョン ウィリー&サンズ社、ニューヨーク 1994−2001:Colligan et al.編集、タンパク質科学の現在のプロトコール、ジョン ウィリー&サンズ社、ニューヨーク、ニューヨーク州 1997−2001を参照にされたい。それぞれ引用により全部、本明細書に編入する)。
【0082】
1つの取り組みでは、ハイブリドーマは適当な不死化細胞株(例えば、限定するわけではないがSp2/0、Sp2/0−AG14、NS/O、NS1、NS2、AE−1、L.5、>243、P3X63Ag8.653、SP2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SSI、Sp2 SA5、U937、MLA 144、ACT IV、MOLT4、DA−1、JURKAT、WEHI、K−562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL−60、MLA 144、NAMAIWA、NEURO 2A等のミエローマ細胞系、またはヘテロミエローマ、それらの融合産物、またはそれらから派生する任意の細胞もしくは融合細胞、または当該技術分野で周知な他の適当な細胞系)(例えばwww.atcc.org.、www.lifetech.com.)等を、限定するわけではないが、単離またはクローン化された脾臓、末梢血、リンパ節、扁桃または他の免疫もしくはB細胞を含む細胞のような抗体生産細胞、内因性もしくは異種の核酸のいずれかとして、または組換えもしくは内因性のウイルス、細菌、藻類、原核生物、両生類、昆虫、爬虫類、魚類、哺乳類、齧歯類、ウマ、ヒツジ(ovine)、ヤギ、ヒツジ(sheep)、霊長類、真核生物のゲノムDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNAもしくはRNA、クロロプラストDNAもしくはRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、1本鎖、2本鎖もしくは3本鎖、ハイブリダイズしたもの、あるいはそれらの任意の組み合わせのような、重鎖または軽鎖定常または可変または骨格またはCDR配列を発現している任意の他の細胞と融合させることにより生産される。(例えばAusubel,同上およびColligan、免疫学、第2章を参照にされたい。引用により全部、本明細書に編入する)。
【0083】
任意の他の適当な宿主細胞も、本発明の抗体、その特定したフラグメントまたはバリアントをコードするヘテロロガスな、または内因性の核酸を発現するために使用することができる。融合(ハイブリドーマ)または組換え細胞は、選択的な培養条件または他の適当な既知の方法を使用して単離し、そして限界希釈法、セルソーティングまたは他の既知の方法によりクローン化することができる。所望の特異性をもつ抗体を生産する細胞を、適当なアッセイにより選択することができる(例えばELISA)。
【0084】
非−ヒトまたはヒト抗体を操作またはヒト化する方法も使用することができ、そして当該技術分野では周知である。一般にヒト化または操作した抗体は、非ヒトが起源の1以上のアミノ酸残基を有する。これらのヒトアミノ酸残基はしばしば「輸入」残基と呼ばれるが、典型的には「輸入」可変、定常または既知のヒト配列の他のドメインから取られている。既知のヒトIg配列開示されている:(例えば、
【0085】
【表2】

【0086】
Kabat et al.,免疫学的に興味深いタンパク質の配列、米国衛生局、1983;各々は引用により全部、本明細書に編入する)。
【0087】
そのような輸入された配列を使用して、免疫原性を下げ、または結合、親和性、オン−レイト(on−rate)、オフ−レイト(off−rate)、アビディティー、特異性、半減期または当該技術分野で知られている他の適当な特性を下げ、強化し、またはモディファイすることができる。一般に、非ヒトまたはヒトCDR配列の一部または全部が維持されると同時に、可変および定常領域の非ヒト配列はヒトまたは他のアミノ酸に置き換えられる。また抗体はヒト化され、抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を保持する。この目的を達成するために、ヒト化抗体は場合により元のおよびヒト化配列の3次元モデルを使用して、元の配列および種々の概念のヒト化産物の分析プロセスにより調製することもできる。3次元の免疫グロブリンモデルは一般に入手可能であり、そして当業者にはよく知られている。選択された候補の免疫グロブリン配列の見込みがある3次元立体構造を具体的に説明し、そして表すコンピュータープログラムを利用することができる。これらの展示の推測から、候補の免疫グロブリン配列の機能における残基の役割の見込みが分析できるようになり、すなわち候補の免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を与える残基の分析が可能となる。このように、標的抗原(1つまたは複数)に対する親和性の上昇のような所望の抗体の特性を達成するように、コンセンサスおよび輸入配列からFR残基を選択し、そして合わせることができる。一般にCDR残基は抗原結合の影響に直接的かつ最も実質的に関与している。本発明の抗体のヒト化または操作は、限定するわけではないが:(Winter,Jones et al.,Nature 321:522 1986;Riechmann et al.,Nature 332:323 1988;Verhoeyen et al.,Science 239:1534 1988;Sims et al.,J.Immunol.151:2296 1993;Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901 1987;Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285 1992;Presta et al.,J.Immunol.151:2623 1993;米国特許第5723323号、同第5976862号、同第5824514号、同第5817483号、同第5814476号、同第5763192号、同第5723323号、同第5,766886号、同第5714352号、同第6204023号、同第6180370号、同第5693762号、同第5530101号、同第5585089号、同第5225539号;同第4816567号明細書、PCT/US98/16280号、US96/18978号、US91/09630号、US91/05939号、US94/01234号、GB89/01334号、GB91/01134号、GB92/01755号明細書;国際公開第90/14443号、同第90/14424号、同第90/14430号パンフレット、欧州特許第229246号明細書(各々は引用により全部、本明細書に編入する))に記載されているような既知の方法を使用して行うことができる。
【0088】
本発明の抗体は、そのような抗体を乳の中に生産するヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ等のようなトランスジェニック動物または哺乳動物を提供するために、少なくとも1つのS抗体をコードする核酸を使用して調製することもできる。そのような動物は既知の方法を使用して提供することができる。(例えば限定するわけではないが、米国特許第5,827,690号;同第5,849,992号;同第4,873,316号;同第5,849,992号;同第5,994,616号;同第5,565,362号;同第5,304,489号明細書等(これらの各々は引用により全部、本明細書に編入する)を参照にされたい。)
本発明の抗体は、そのような抗体、特定した部分またはバリアントを、植物の一部またはそれらから培養した細胞中に生産するトランスジェニック植物および培養植物細胞(例えば限定するわけではないが、タバコおよびトウモロコシ)を提供するために、少なくとも1つのS抗体をコードする核酸を使用してさらに調製することができる。非限定的な例として、組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコの葉が、例えば誘導性プロモーターを使用して大量の組換えタンパク質を成功裏に提供するために使用された。(例えばCramer et al.,Curr.Top.Microbol.Immunol.240:95−118 1999およびそこに引用されている技術文献を参照にされたい。)またトランスジェニックトウモロコシは、他の組換え系で生産されたものに、または天然の起源から精製されたものに等しい生物学的活性を持つ工業的生産レベルで哺乳動物のタンパク質を発現するために使用された。(例えばHood et al.,Adv.Exp.Med.Biol.464:127−147 1999およびそこに引用されている技術文献を参照にされたい)。1本鎖抗体(scFv’s)のような抗体フラグメントを含め抗体はタバコ種子およびジャガイモの塊茎を含むトランスジェニック植物の種子からも大量に生産された。(例えばConrad et al.,Plant Mol.Biol.38:101−109 1998およびそこに引用されている技術文献を参照にされたい)。すなわち本発明の抗体は、既知の方法に従いトランスジェニック植物を使用して生産することもできる。(また例えば、Fischer et al.,Biotechnol.Appl.Biochem.30:99−108 Oct.,1999;Ma et al.,Trends Biotechnol.13:522−7 199;Ma et al.,Plant Physiol.109:341−6 1995;Whitelam et al.,Biochem.Soc.Trans.22:940−944 1994;およびそこに引用されている技術文献(これらの各々は引用により全部、本明細書に編入する)を参照にされたい。)
抗原に関する抗体の親和性またはアビディティーは、適当な方法を使用して実験的に定めることができる。(例えばBerzofsky,et al.,「抗体−抗原相互作用(Antibody−Antigen Interactions)」、基本的免疫学(Fundamental Immunology)で、Paul,W.E.編集、ラベン出版:ニューヨーク、ニューヨーク州 1984;Kuby,Janis 免疫学(Immunology)、W.H.フリーマン アンド カンパニー(Freeman and Company):ニューヨーク、ニューヨーク州 1992;およびそこに記載されている方法を参照にされたい。)測定された特定の抗体−抗原相互作用の親和性は、異なる条件下(例えば、塩濃度、pH)で測定すれば変動し得る。すなわち親和性および他の抗原−結合パラメーター(例えばK、K、K)の測定は、好ましくは抗体および抗原の標準化された溶液、および本明細書に記載するバッファーのような標準化バッファーを用いて作成される。
G.核酸分子
本明細書に提供する情報を使用して、少なくとも1つのS抗体をコードする本発明の核酸分子は、本明細書に記載する方法または当該技術分野で既知の方法を使用して得ることができる。
【0089】
本発明の核酸分子は、mRNA、hnRNA、tRNAまたは他の任意の形態のようなRNAの形態、あるいは限定するわけではないがクローニングにより得た、または合成的に生成されたcDNAおよびゲノムDNAを含むDNAの形態、またはそれらの任意の組み合わせであることができる。DNAは3本鎖、2本鎖もしくは1本鎖、またはそれらの組み合わせであることができる。DNAまたはRNAの少なくとも1つの鎖の部分がコード鎖(センス鎖としても知られている)であることができ、またはそれは非コード鎖(アンチ−センス鎖とも言われる)であることができる。
【0090】
本発明の単離された核酸分子は、場合により1以上のイントロン、S抗体のコード配列を含んでなる少なくとも1つの重鎖または軽鎖核酸分子の少なくとも1つのCDR(CDR1、CDR2および/またはCDR3のような)の少なくとも1つの特定した部分を持つオープンリーディングフレーム(ORF)を含んでなる核酸分子、および上記とは実質的に異なるが、遺伝子暗号の縮重によりそれでも本明細書に記載し、かつ/または当該技術分野で既知の少なくとも1つのS抗体をコードするヌクレオチド配列を含んで成る核酸分子を含むことができる。もちろん遺伝子暗号は当該技術分野では周知である。すなわち当業者には本発明の特異的な抗−S抗体をコードするそのような縮重核酸バリアントを生成することは日常的なことである。(例えばAusubel,et al.,同上を参照にされたい)、そしてそのような核酸バリアント本発明に包含する。
【0091】
本明細書に示すように、抗−S抗体をコードする核酸を含んで成る本発明の核酸分子は、限定するわけではないが自身により抗体フラグメントのアミノ酸配列をコードする核酸、全抗体またはそれらの部分のコード配列、抗体、フラグメントまたは一部のコード配列、ならびに少なくとも1つのイントロンのような前記のさらなるコード配列を含むか含まない少なくとも1つのシグナルリーダまたは融合ペプチドのコード配列のようなさらなる配列を、限定するわけではないが転写、mRNAプロセシング(スプライシングおよびポリアデニル化シグナルを含む(例えば、リボソーム結合およびmRNAの安定性))に役割を果たす転写された、非翻訳の配列のような非コード5’および3’配列を含むさらなる非コード配列と一緒に;さらなる機能性を提供するようなさらなるアミノ酸をコードするさらなるコード配列と含むことができる。すなわち抗体をコードする配列は、抗体フラグメントまたは一部を含んで成る融合抗体の精製を容易にするペプチドをコードする配列のようなマーカー配列と融合させることができる。
H.本明細書に記載するポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド
本発明は選択的なハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に開示するポリヌクレオチドとハイブリダイズする単離された核酸を提供する。すなわち本態様のポリヌクレオチドは、そのようなポリヌクレオチドを含んで成る核酸を単離し、検出し、かつ/または定量するために使用することができる。例えば本発明のポリヌクレオチドを使用して、寄託されたライブラリー中の部分的または完全長クローンを同定し、単離し、または増幅することができる。幾つかの態様ではポリヌクレオチドは単離されたゲノムまたはcDNA配列であり、またはそうでなければヒトまたは哺乳動物の核酸ライブラリーに由来するcDNAに相補的である。
【0092】
好ましくはcDNAライブラリーは少なくとも80%完全長の配列、好ましくは少なくとも85%または90%完全長の配列、そしてより好ましくは少なくとも95%完全長の配列を含んで成る。cDNAライブラリーは稀な配列の提示を上げるために標準化することができる。低または中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は典型的には(しかし排他的ではなく)、相補的配列に比べて低下した配列同一性を有する配列に採用する。中および高ストリンジェンシー条件も、より大きな同一性の配列のために場合により使用することができる。低ストリンジェンシー条件は、約70%の配列同一性を有する配列の選択的ハイブリダイゼーションを可能とし、そしてオーソロガス(orthologous)またはパラロガス(paralogous)な配列を同定するために使用することができる。
【0093】
場合により本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に開示するポリヌクレオチドによりコードされる抗体の少なくとも一部をコードするだろう。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドへの選択的ハイブリダイゼーションに使用できる核酸配列を包含する。(例えばAusubel、同上;Colligan、同上を参照にされたい;各々、引用により全部、本明細書に編入する)。
I.核酸の構築
本発明の単離された核酸は、当該技術分野で周知な(a)組換え法、(b)合成技術、(c)精製技術、またはそれらの組み合わせを使用して作成することができる。
【0094】
核酸は本発明のポリヌクレオチドに加えた配列を都合よく含んで成ることができる。例えばポリヌクレオチドの単離を補助するために、1以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を含んで成るマルチクローニング部位を核酸に挿入することができる。また翻訳可能な配列を、本発明の翻訳されたポリヌクレオチドの単離を補助するために挿入することができる。例えばヘキサ−ヒスチジンマーカー配列は、本発明のタンパク質を精製するための便利な手段を提供する。本発明の核酸(コード配列を除く)は場合により、本発明のポリヌクレオチドのクローニングおよび/または発現のためのベクター、アダプターまたはリンカーである。
【0095】
クローニングおよび/または発現における機能を至適化するために、ポリヌクレオチドの単離を補助するために、またはポリヌクレオチドの細胞への導入を向上させるために、そのようなクローニングおよび/発現配列にさらなる配列を加えることができる。クローニングベクター、発現ベクター、アダプターおよびリンカーの使用は、当該技術分野では周知である(例えばAusubel、同上;またはSambrook、同上を参照にされたい)。
J.核酸を構築するための組換え法
RNA、cDNA、ゲノムDNAまたはそれらの組み合わせのような本発明の単離された核酸組成物は、当業者に既知な多数のクローニング法を使用して生物起源から得ることができる。幾つかの態様では、cDNAまたはゲノムDNAライブラリー中の所望する配列を同定するために、ストリンジェントな条件下で本発明のポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを使用する。RNAの単離、およびcDNAおよびゲノムライブラリーの構築は、当業者には周知である(例えばAusubel、同上;またはSambrook、同上を参照にされたい)。
K.核酸スクリーニングおよび単離法
cDNAまたはゲノムライブラリーは、本明細書に開示するような本発明のポリヌクレオチドの配列に基づくプローブを使用してスクリーニングすることができる。プローブは同じまたは異なる生物中のホモロガスな遺伝子を単離するために、ゲノムDNAまたはcDNA配列とハイブリダイズさせるために使用することができる。当業者は様々な程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーションをアッセイに使用することができ;そしてハイブリダイゼーションまたは洗浄媒質のいずれかがストリンジェントであることができることを知っている。ハイブリダイゼーション条件がよりストリンジェントになれば、2本鎖形成が起こるためのプローブと標的との間の相補性の程度はより大きくならなければならない。ストリンジェンシーの程度は、温度、イオン強度、pHおよびホルムアミドのような部分的変性溶媒の存在により制御することができる。例えばハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、0%〜50%の範囲内でホルムアミドの濃度の操作を介して反応溶液の極性を変えることにより都合よく変動させることができる。検出可能な結合に必要な相補性(配列同一性)の程度は、ハイブリダイゼーション媒質および/または洗浄媒質のストリンジェンシーに従い変動するだろう。相補性の程度は最適には100%または70〜100%、あるいはその中の任意の範囲または値となろう。しかしプローブおよびプライマー中のわずかな配列の変化は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄媒質のストリンジェンシーを下げることにより補うことができると理解すべきである。
【0096】
RNAまたはDNAの増幅法は当該技術分野では周知であり、そして本明細書に与える教示および指針に基づき、過度な実験を行うことなく本発明に従い使用することができる。
【0097】
既知のDNAまたはRNAの増幅法は限定するわけではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および関連する増幅法(例えばMullis,et alへの米国特許第4,683,195号,同第4,683,202号、同第4,800,159号、同第4,965,188号明細書;Tabor,et alへの米国特許第4,795,699号および同4,921,794号明細書;Innisへの米国特許第5,142,033号明細書;Wilson,et alへの米国特許第5,122,464号明細書;Innisへの米国特許第5,091,310号明細書;Gyllensten,et alへの米国特許第5,066,584号明細書;Gelfand,et alへの米国特許第4,889,818号明細書;Silverへの米国特許第4,994,370号明細書;Biswasへの米国特許第4,766,067号明細書;Ringoldへの米国特許第4,656,134号明細書)、および二重鎖DNA合成のための鋳型として標的配列に対してアンチ−センスRNAを使用するRNAが媒介する増幅(例えばAusubel、同上;またはSambrook、同上;Malek et alへの米国特許第5,130,238号明細書、登録名前NASBAを参照にされたい:この技術文献の内容は引用により全部、本明細書に編入する)を含む。
【0098】
例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、ゲノムDNAまたはcDNAライブラリーから直接、本発明のポリヌクレオチドの配列および関連する遺伝子を増幅することができる。PCRおよび他のインビトロ増幅法も、例えば発現するタンパク質をコードする核酸配列をクローン化するために、サンプル中に所望のmRNAの存在を検出するためのプローブとして使用する核酸を作成するために、核酸シークエンシングに、または他の目的に有用となり得る。(インビトロ増幅法を通して当業者を指導するために十分な技術の例は、Berger、同上;Sambrook、同上;Ausubel、同上;Mullis,et al.,米国特許第4,683,202号明細書1987;Innis,et al、PCRプロトコール 方法および応用に対する指針(PCR Protocols A Guide to Methods and Applications)、編集、アカデミック出版社、サンディエゴ、カリフォルニア州 1990から見いだされる。)ゲノムPCR増幅に関して市販されているキットが当該技術分野では知られている。例えば、アドバンテイジ−GC ゲノムPCRキット(クロンテック:Clontech)を参照にされたい。さらに例えばT4 遺伝子32タンパク質(ベーリンガーマンハイム:Boehringer Mannheim)を使用して、長いPCR産物の収量を向上させることができる。
L.核酸分子を構築するための合成法
本発明の単離された核酸は、既知の方法を使用して直接的な化学合成により調製することができる(例えばAusubel、同上を参照にされたい)。化学合成は一般に1本鎖オリゴヌクレオチドを生成し、これを相補的配列とのハイブリダイゼーションにより、または1本鎖を鋳型として使用したDNAポリメラーゼによる重合化により2本鎖に転換することができる。当業者はDNAの化学合成は約100余りの塩基の配列に限定されるが、より長い配列は短い配列の連結により得ることができると認識するだろう。
M.組換え発現カセット
本発明はさらに、本発明の核酸を含んでなる組換え発現カセットを提供する。本発明の核酸配列、例えば本発明の抗体をコードするcDNAまたはゲノム配列は、少なくとも1つの所望する宿主細胞に導入することができる組換え発現カセットを構築するために使用することができる。組換え発現カセットは典型的には、意図する宿主細胞でポリヌクレオチドの転写を支配する転写開始調節配列に操作可能に連結された本発明のポリヌクレオチドを含んでなる。ヘテロロガスおよび非ヘテロロガス(すなわち内因性)の両方のプロモーターを使用して、本発明の核酸の発現を支配することができる。
【0099】
幾つかの態様では、プロモーター、エンハンサーまたは他の要素として役立つ単離された核酸は、本発明のポリヌクレオチドの発現をアップまたはダウンレギュレートするように、非ヘテロロガス状態の本発明のポリヌクレオチドの適当な位置(上流、下流またはイントロン中)に導入することができる。例えば内因性プロモーターを突然変異、欠失および/または置換によりインビボまたはインビトロで改変することができる。
N.ベクターおよび宿主細胞
本発明は、本発明の単離された核酸分子を含むベクター、組換えベクターにより遺伝的に操作された宿主細胞、および当該技術分野で周知な組換え法による少なくとも1つの抗−S抗体の生産に関する。(例えばSambrook,et al.、同上;Ausubel et al.、同上(各々、引用により全部、本明細書に編入する)を参照にされたい。)
ポリヌクレオチドは場合により、宿主中での増殖のための選択可能なマーカーを含むベクターに連結することができる。一般にプラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿のような沈殿で、または荷電した脂質との複合体で導入される。ベクターがウイルスである場合、適当なパッケージング細胞株を使用してインビトロでパッケージングされ、そして次いで宿主細胞に形質導入することができる。
【0100】
DNA挿入物は適当なプロモーターに操作可能に連結するべきである。発現構築物は転写開始、終結用の、および転写領域中に翻訳のためのリボソーム結合部位をさらに含むだろう。構築物により発現された成熟転写産物のコード部分は、好ましくは最初に翻訳開始、および翻訳されるべきmRNAの終わりに適切に位置する終結コドン(例えばUAA、UGAまたはUAG)を含み、UAAおよびUAGが哺乳動物または真核細胞の発現には好適である。
【0101】
発現ベクターは好ましくは、しかし任意に少なくとも1つの選択可能なマーカーを含む。そのようなマーカーには例えば限定するわけではないが、真核細胞培養用のメトトレキセート(MTX)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR、米国特許第4,399,216号;同第4,634,655号;同第4,656,134号;同第4,956,288号;同第5,149,636号;同第5,179,017号明細書、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、マイコフェノール酸、またはグルタミンシンテターゼ(GS、米国特許第5,122,464号;同第5,770,359号;同第5,827,739号細書)耐性、そして大腸菌(E.coli)および他の細菌または原核細胞での培養にはテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性遺伝子を含む(上記の特許明細書は引用により全部、本明細書に編入する)。上記の宿主細胞に関する適当な培養基および条件は、当該技術分野では既知である。適当なベクターは当業者には直ちに明らかである。ベクター構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、電気穿孔、形質導入、感染または他の既知の方法により行うことができる。(そのような方法はSambrook、同上、第1〜4および16〜18章;Ausubel、同上、第1、9、13、15、16章において当該技術分野では記載されている)。
【0102】
本発明の少なくとも1つの抗体は、融合タンパク質のように修飾された形態で発現することができ、そして分泌シグナルだけでなく、さらにヘテロロガスな機能的領域を含むことができる。例えばさらなるアミノ酸の領域、特に荷電したアミノ酸を抗体のN−末端に付加して、宿主細胞中の、精製中の、あるいは後の取り扱いおよび保存中の安定性および持続性を向上させることができる。またペプチド部分を本発明の抗体に付加して、精製を容易することができる。そのような領域は抗体またはそれらの少なくとも1つのフラグメントの最終調製前に除去することができる。(そのような方法は多くの標準的な研究室用マニュアルに記載されている:Sambrook、同上、第17.29〜17.42および18.1〜18.74章;Ausubel、同上、第16、17および18章。)
当業者は本発明のタンパク質をコードする核酸の発現に利用可能な多数の発現系についての知識がある。あるいは本発明の核酸は、本発明の抗体をコードする内因性DNAを含む宿主細胞中で、(操作による)切り替え(turning on)により宿主細胞中で発現させることができる。(そのような方法は例えば米国特許第5,580,734号;同第5,641,670号;同第5,733,746号および同第5,733,761号明細書(引用により全部、本明細書に編入する)に記載されているように当該技術分野では周知である。)
抗体、それらの特定した部分またはバリアントの生産に有用な細胞培養の具体例は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞系は単層状態の細胞であることが多いが、哺乳動物細胞懸濁液またはバイオリアクターも使用することができる。完全なグリコシル化タンパク質を発現することができる多数の適当な宿主細胞系が当該技術分野で開発され、そしてそれにはCOS−1(例えばATCC CRL 1650)、COS−7(例えばATCC CRL−1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC CRL−10)、CHO(例えばATCC CRL 1610)およびBSC−1(例えばATCC CRL−26)細胞株、Cos−7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、P3X63Ag8.653、SP2/0−Ag14、293細胞、HeLa細胞等を含み、これらは例えばバージニア州マナッサスのアメリカンタイプカルチャーコレクションから容易に入手できる(www.atcc.org)。好適な宿主細胞はミエローマおよびリンパ腫細胞のようなリンパ節起源の細胞を含む。特に好適な宿主細胞は、P3X63Ag8.653細胞(ATCC寄託番号 CRL−1580)およびSP2/0−Ag14細胞(ATCC寄託番号 CRL−1851)である。特に好適な態様では、組換え細胞はP3X63Ab8.653またはSP2/0−Ag14細胞である。
【0103】
これらの細胞の発現ベクターは、限定するわけではないが1以上の以下の発現制御配列を含むことができる;複製起点;プロモーター(例えば後期または初期SV40プロモーター、CMVプロモーター(米国特許第5,168,062号;同第5,385,839号明細書)、HSV tkプロモーター、pgk(ホスホリグリセレート キナーゼ)プロモーターおよびEF−1 アルファプロモーター(米国特許第5,266,491号明細書)、少なくとも1つのヒト免疫グロブリンプロモーター;エンハンサーおよび/またはリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位(例えばSV40ラージTAgポリA付加部位)および転写終結配列のようなプロセッシング情報部位。例えば、Ausubel,et al.、同上;Sambrook、et al.、同上を参照にされたい。)本発明の核酸またはタンパク質の生産に有用な他の細胞は知られており、かつ/または例えば細胞株およびハイブリドーマのアメリカンタイプカルチャーコレクションカタログ(www.atcc.org)あるいは他の市販のものから入手可能である。
【0104】
真核宿主細胞を使用する時、典型的にはポリアデニル化または転写終結配列をベクターに包含する。終結配列の例は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来するポリアデニル化配列である。転写の正確なスプライシング配列も含むことができる。スプライシング配列の例は、SV40に由来するVP1イントロン(Sprague,et al.,J.Virol.45:773−781 1983)である。さらに宿主細胞中で複製を制御する遺伝子配列を、当該技術分野で既知であるようにベクターに包含することができる。
O.哺乳動物細胞中でのS抗体のクローニングおよび発現
典型的な哺乳動物発現ベクターは、mRNAの転写の開始を媒介する少なくとも1つのプロモーター要素、抗体コード配列および転写の終結および転写物のポリアデニル化に必要なシグナルを含む。さらなる要素にはエンハンサー、Kozak配列およびRNAスプライシングのための供与および受容部位により挟まれた介在配列を含む。高度に効率的な転写はSV40に由来する初期および後期プロモーター、レトロウイルス、例えばRSV、HTLVI、HIVIに由来する長い末端反復配列(LTRS)、およびサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターにより達成され得る。しかし細胞要素(例えばヒトアクチンプロモーター)も使用することができる。本発明の実施に使用するために適当な発現ベクターには、例えばpIRES1neo、pRetro−Off、pRetro−On、PLXSNまたはpLNCX(クロンテック ラボズ(Clonetech Labos)、パロアルト、カリフォルニア州)、pcDNA3.1(+/−)、pcDNA/Zeo(+/−)またはpcDNA3.1/Hygro(+/−)(インビトロジェン(Invitrogen))、PSVLおよびPMSG(ファルマシア(Pharmacia)、ウプサラ、スウェーデン)、pRSVcat(ATCC37152)、pSV2dhfr(ATCC37146)およびpBC12MI(ATCC67109)を含む。使用できた哺乳動物宿主細胞には、ヒトHela 293、H9およびJurkat細胞、マウスNIH3T3およびC127細胞、Cos1、Cos7およびCV1、quailQC1−3細胞、マウスL細胞およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含む。
【0105】
あるいは遺伝子は染色体に組み込まれた遺伝子を含む安定な細胞株で発現させることができる。dhfr、gpt、ネオマイシンまたはハイグロマイシンのような選択可能なマーカーを用いたコートランスフェクションにより、トランスフェクトした細胞の同定および単離が可能となる。
【0106】
トランスフェクトした遺伝子は、大量のコードされた抗体を発現させるために増幅することもできる。DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)マーカーは、数百またはさらに数千の目的遺伝子のコピーを持つ細胞株を開発するために有用である。別の有用な選択マーカーは、酵素グルタミンシンターゼ(GS)(Murphy,et al.,Biochem.J.227:277−279 1991;Bebbington,et al.,Bio/Technology 10:169−175 1992)である。これらのマーカーを使用して、哺乳動物細胞を選択培地で成長させ、そして最高の耐性を持つ細胞を選択する。これらの細胞株は、染色体に組み込まれた増幅した遺伝子(1つまたは複数)を含む。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)およびNSO細胞は、抗体の生産によく使用される。
【0107】
発現ベクターpC1およびpC4は、ラウス肉腫ウイルス(Cullen et al.,Molec.Cell.Biol.5:438−447 1985)の強力なプロモーター(LTR)に加えてCMV−エンハンサーのフラグメント(Boshart,et al.,Cell 41:521−530 1985)を含む。多クローニング部位、例えば制限酵素開裂部位であるBamHI、XbaIおよびAsp718は、目的遺伝子のクローニングを容易にする。ベクターは3’イントロンに加えて、ラットのプレプロインスリン遺伝子のポリアデニル化および終結シグナルを含む。
P.CHO細胞中でのクローニングおよび発現
ベクターpC4をS抗体の発現に使用する。プラスミドpC4は、プラスミドpSV2−dhfr(ATCC寄託番号37146)の誘導体である。プラスミドはマウスDHFR遺伝子をSV40初期プロモーターの制御下に含む。これらのプラスミドでトランスフェクトしたジヒドロ葉酸活性を欠くチャイニーズハムスター卵巣または他の細胞は、細胞を化学療法剤であるメトトレキセートを補充した選択培地(例えばアルファマイナスMEM、ライフテクノロジーズ(Life Technologies)、ゲチスバーグ、メリーランド州)中で成長させることにより選択することができる。メトトレキセート(MTX)に対して耐性の細胞中のDHFR遺伝子の増幅が十分に示された(例えば、F.W.Alt,et al.,J.Biol.Chem.253:1357−1370 1978;J.L.Hamlin and C.Ma.Biochem.et Biophys.Acta 1097:107−143 1990;およびM.J.Page and M.A.Sydenham,Biotechnology 9:64−68 1991を参照にされたい)。MTXの濃度を上昇させて成長させた細胞は、DHFR遺伝子の増幅の結果として目的酵素であるDHFRの過剰生産により薬剤への耐性を生じる。第2遺伝子がDHFR遺伝子に連結されている場合、これは通常、同時に増幅され(co−amplified)、そして過剰に発現される。当該技術分野では、この取り組みを使用して1000コピー以上の増幅した遺伝子(1つまたは複数)を持つ細胞株を発生できることが知られている。続いてメトトレキセートを離脱する時、宿主細胞の1以上の染色体(1つまたは複数)に組み込まれた増幅された遺伝子を含む細胞株が得られる。
【0108】
プラスミドpC4は目的遺伝子を発現するために、ラウス肉腫ウイルス(Cullen et al.,Molec.Cell.Biol.5:438−447 1985)の長い末端反復配列(LTR)の強力なプロモーターに加えて、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の前初期遺伝子のエンハンサーから単離されたフラグメント(Boshart,et al.,Cell 41:521−530 1985)を含む。プロモーターの下流は、遺伝子の組み込みを可能とするBamHI、XbaIおよびAsp718制限酵素開裂部位である。これらのクローニング部位の後に、プラスミドはラットのプレプロインスリン遺伝子の3’イントロンおよびポリアデニル化部位を含む。他の高効率プロモーター、例えばヒトb−アクチンプロモーター、SV40初期および後期プロモーターまたは他のレトロウイルス(例えばHIVおよびHTLVI)に由来する長い末端反復配列も発現に使用することができる。クロンテックのTet−OffおよびTet−On遺伝子発現系および同様な系は、哺乳動物細胞中で調節された様式でS抗体を発現させるために使用できる(M.Gossen,and H.Bujard,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−5551 1992)。mRNAのポリアデニル化には、他のシグナル、mRNAのポリアデニル化に例えばヒト成長ホルモンまたはグロビン遺伝子に由来するシグナルも使用することができる。染色体に組み込まれた目的の遺伝子を持つ安定な細胞株は、gpt、G418またはハイグロマイシンのような選択可能マーカーを用いたコ−トランスフェクションでも選択できる。始めに1より多くの選択可能なマーカー(例えばG418に加えてメトトレキセート)を使用することが有利である。
【0109】
プラスミドpC4は制限酵素で消化し、そして次いでウシの腸ホステァターゼを使用して既知の手法により脱リン酸化される。次いでベクターは1%アガロースゲルから単離される。
【0110】
例えば本発明のS抗体のHCおよびLC可変領域に相当する配列番号7および8に提示するような完全なS抗体をコードするDNA配列を、既知の方法の工程に従い使用する。適切なヒト定常領域(すなわちHCおよびLC領域)をコードする単離された核酸もこの構築物に使用される。
【0111】
単離された可変および定常領域をコードするDNAおよび脱リン酸化ベクターは、次いでT4 DNAリガーゼで連結される。次いで大腸菌(E.coli)HB101またはXL−1ブルー細胞を形質転換し、そしてプラスミドpC4中に挿入されたフラグメントを含む細菌が、例えば制限酵素分析を使用して確認される。
【0112】
活性なDHFR遺伝子を欠くチャイニーズハムスター(CHO)細胞をトランスフェクションに使用する。5μgの発現プラスミドpC4を0.5□gのプラスミドpSV2−neoを用いてリポフェクチンを使用してコ−トランスフェクトする。プラスミドpSV2neoは、G418を含む抗生物質群に対して耐性を付与する酵素をコードするTn5に由来するドミナント選択性マーカーであるneo遺伝子を含む。この細胞を、1μg/mlのG418を補充したアルファマイナスMEMにまく。2日後、細胞をトリプシン処理し、そして10、25または50ng/mlのメトトレキセートに加えて1μg/mlのG418を補足したハイブリドーマクローニングプレート(グレイナー(Greiner)、独国)中のアルファマイナスMEMにまく。約10〜14日後、1つのクローンをトリプシン処理し、そして異なる濃度のメトトレキセート(50nM、100nM、200nM、400nM、800nM)を使用して6−ウェルのペトリ皿または10mlのフラスコにまく。最高濃度のメトトレキセートで成長させたクローンを、さらにより高濃度のメトトレキセート(1mM、2mM、5mM、10mM、20mM)を含む新たな6−ウェルプレートに移す。100〜200mM濃度で成長するクローンが得られるまで、同じ手順を繰り返す。所望の遺伝子産物の発現を例えばSDS−PAGEおよびウエスタンブロットにより、または逆相HPLC分析により分析する。
Q.抗体の精製
S抗体は、限定するわけではないがプロテインA精製、硫酸アンモニウムもしくはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンもしくはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む周知な方法により、組換え細胞培養から回収し、そして精製することができる。高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)も精製に使用することができる。(例えばColligan、免疫学における現在のプロトコール、またはタンパク質科学における現在のプロトコール、ジョン ウィリー & サンズ(John Wiley & Sons)、NY、NY、1997−2001)、第1、4、6、8、910章を参照にされたい(各々が全部、引用により本明細書に編入される))。
【0113】
本発明の抗体には、自然に精製された生成物、化学合成法の生成物、および例えば酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞を含む真核細胞宿主から組換え技術により生産される産物を含む。組換え生産法で使用する宿主に依存して、本発明の抗体はグリコシル化されることができ、または非グリコシル化であることができるが、グリコシル化が好適である。そのような方法は多くの標準的な研究室マニュアルに記載されている:(Sambrook、同上、第17.37〜17.42;Ausubel,et al.、同上、第10、12、13、16、18および20章、Colligan、タンパク質科学(Protein Science)、同上、第12〜14、すべて引用により本明細書に編入する。)
R.用途
本発明の単離された核酸は、少なくとも1つのS抗体またはその特定したバリアントの生産に使用することができる、これは限定するわけではないが少なくとも1つの免疫障害もしくは疾患、心血管障害もしくは疾患、感染、悪性および/または神経障害もしくは疾患、アレルギー障害もしくは疾患、感染;皮膚の障害もしくは疾患;血液学的障害もしくは疾患、および/または肺障害もしくは疾患、または他の既知のもしくは特定された状態から選択される少なくとも1つの状態の症状を診断、監視、モジュレート、処置、緩和、発生の防止を助け、または低減するために、細胞、組織、器官または動物(哺乳動物およびヒトを含む)での効果を測定するために使用できる。
【0114】
そのような方法は少なくとも1つのS抗体を含んでなる有効量の組成物もしくは製薬学的組成物を、症状、効果もしくはメカニズムにおいてそのようなモジュレート、処置、緩和、防止または低減が必要な細胞、組織、器官、動物または患者に投与することを含んでなることができる。有効量は単回(例えばボーラス)、多回もしくは連続投与あたり約0.001〜500mg/kgの量、または単回、多回もしくは連続投与あたり約0.01〜5000μg/mlの血清濃度を達成する量、または本明細書に記載する、または関連する技術分野で知られている既知の方法を使用してなされ、そして決定された任意の有効範囲またはその中の値の量を含んでなることができる。
S.S抗体組成物
また本発明は、自然には存在しない組成物、混合物または形態である、本明細書に記載し、かつ/または当該技術分野で既知であるような少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6以上のS抗体を含んで成る少なくとも1つのS抗体組成物を提供する。そのような組成物は、本発明の少なくとも1つのS抗体を含んでなる自然には存在しない組成物を、製薬学的に許容され得る担体と組み合わせて含んでなる。そのようなS抗体組成物は本発明のS抗体を約40〜99%のいずれかで含むことができる。そのような組成物の割合は、当該技術分野で既知の、または本明細書に記載するような液体もしくは乾燥溶液、混合物、懸濁液、乳液またはコロイドとしての重量、容量、濃度、モル濃度である。
【0115】
本発明のS抗体または特定した部分またはバリアント組成物は、さらに限定するわけではないが希釈剤、結合剤、安定化剤、バッファー、塩、親油性溶媒、保存剤、アジュバント等のような少なくとも1つの任意の適切な補助剤を含んで成ることができる。製薬学的に許容され得る補助剤が好適である。そのような滅菌溶液の非限定的な例および調製法は当該技術分野では周知である:(Gennaro、編集、レミングトンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Science)、第18版、マック出版社、イーストン、ペンシルバニア州 1990。)製薬学的に許容され得る担体は、、当該技術分野で周知であるか、または本明細書に記載するようにS抗体組成物の投与様式、溶解性および/または安定性に適するように日常的に選択され得る。
【0116】
本組成物に有用な製薬学的賦形剤および添加剤は、限定するわけではないがタンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質および炭水化物(例えば単糖、二−、三−、四−およびオリゴ糖を含む糖;アルジトール、アルドン酸、エステル化糖等のような誘導化等;および多糖または糖ポリマー)を含み、これは単独または組み合わせて存在することができ、単独または組み合わせて1〜99.99重量もしくは容量%で含んでなる。タンパク質賦形剤の例には、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒト血清アルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼイン等を含む。緩衝能において機能することもできる代表的なアミノ酸/S抗体または特定した部分もしくはバリアント成分には、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテーム等を含む。1つの好適なアミノ酸はグリシンである。
【0117】
本発明の使用に適する炭水化物賦形剤には、例えばフルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース等のような単糖;ラクトース、シュクロース、トレハロース、セルビオース等の二糖;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、澱粉等の多糖;マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトール等のアルジトールを含む。本発明に使用するための好適な炭水化物賦形剤は、マンニトール、トレハロースおよびラフィノースである。
【0118】
S抗体組成物は、バッファーまたはpH調整剤を含むこともできる;典型的にはバッファーは有機酸または塩基から調製される塩である。代表的なバッファーには、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸の塩のような有機酸塩;Tris、トロメタミン塩酸塩またはリン酸バッファーを含む。本組成物の使用に好適なバッファーはクエン酸塩のような有機酸塩である。
【0119】
さらに本発明のS抗体または特定した部分もしくはバリアント組成物は、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー性糖)、デキストレート(例えば2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのようなシクロデキストリン)、ポリエチレングリコールのようなポリマー性賦形剤/添加剤、風味剤、抗微生物剤、甘味剤、酸化防止剤、帯電防止剤、表面活性剤(例えば“TWEEN 20”および“TWEEN 80”のようなポリソルベート)、脂質(例えばリン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えばコレステロール)およびキレート化剤(例えばEDTA)を含むことができる。
【0120】
本発明によるS抗体組成物で使用するために適するこれらのおよびさらに知られている製薬学的賦形剤および/または添加剤は当該技術分野では既知である(例えば「レミングトン:薬学の科学&実践(Remington:The Science & Practice of Pharmacy)」、第19版、ウィリアムス&ウィリアムス(Williams & Williams)、1995;「医師の卓上レファレンス(Physician’s Desk Reference)」、第52版、メディカル エコノミックス(Medical Economics)、モントバレー、ニュージャージー州 1998に列挙され、この開示は引用により全部、本明細書に編入する)。好適な担体または賦形剤材料は炭水化物(例えばサッカリドおよびアルジトール)およびバッファー(例えばクエン酸塩)またはポリマー性剤である。
T.製剤
上記のように本発明は安定な製剤を提供し、これは好ましくは食塩水または選択した塩を含むリン酸バッファー、ならびに保存剤を含有する保存溶液および製剤、ならびに製薬学的または獣医学的使用に適する多使用保存製剤であり、少なくとも1つの抗−S抗体を製薬学的に許容される製剤中に含んで成る。保存製剤は少なくとも1つの既知の保存剤、または任意に少なくとも1つのフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、亜硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えばヘキサヒドレート)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンズエトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサール、またはそれらの混合物から成る群から選択される保存剤を水性希釈剤中に含む。適当な濃度または混合物は、0.001〜5%またはその中の任意の範囲または値のような、限定するわけではないが0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9またはこの中の任意の範囲または値のような当該技術分野で知られているように使用することができる。非限定的な例には、保存剤なし、0.1〜2% m−クレゾール(例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.9、1.0%)、0.1〜3%ベンジルアルコール(例えば0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0、2.5%)、0.001〜0.5%チメロサール(例えば0.005、0.01)、0.001〜2.0%フェノール(例えば0.05、0.25、0.28、0.5、0.9、1.0%)、0.0005〜1.0%アルキルパラベン(1つまたは複数)(例えば0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9、1.0%)等を含む。
【0121】
上記のように、本発明は包装材料、および場合により水性希釈剤中に処方されたバッファーおよび/または保存剤を含む少なくとも1つのS抗体の溶液を含んで成る少なくとも1つのバイアルを含んで成る製品を提供し、ここで該包装材料は、そのような溶液が1、2、3、4、5、6、9、12、18、20、24、30、36、40、48、54、60、66、72時間以上保持できることを示すラベルを含んで成る。本発明はさらに、包装材料、凍結乾燥した少なくとも1つのS抗体を含んで成る第1バイアル、および処方されたバッファーまたは保存剤の水性希釈剤を含んで成る第2バイアルを含んで成る製品を含んで成り、ここで該包装材料は患者が少なくとも1つのS抗体を水性希釈剤中に再構成して、24時間以上の期間にわたり保持できる溶液を形成することを指示するラベルを含んで成る。
【0122】
本発明の生成物中の少なくとも1つのS抗体の範囲は、湿潤/乾燥系である場合、再構成時に約1.0μg/ml〜約1000mg/mlの濃度を生じる量を含むが、より低および高濃度も操作可能であり、そして意図する送達賦形剤に依存し、例えば溶液製剤は経皮用パッチ、肺、経粘膜または浸透圧もしくはミクロポンプ法とは異なるだろう。
【0123】
好ましくは水性希釈剤は場合によりさらに製薬学的に許容できる保存剤を含んで成る。好適な保存剤には、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンズエトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサール、またはそれらの混合物から成る群から選択されるものを含む。製剤中に使用する保存剤の濃度は、抗−微生物効果を生じるために十分な濃度である。そのような濃度は選択した保存剤に依存し、そして当業者により容易に決定される。
【0124】
他の賦形剤、例えば張性調整剤、バッファー、酸化防止剤、保存強化剤を場合により、そして好ましくは希釈剤に加えることができる。グリセリンのような張性調整剤は既知の濃度で通常に使用される。生理学的に耐容されるバッファーは好ましくはpH制御の改善を提供するために加える。製剤は約pH4〜約pH10のような広いpH範囲を網羅することができ、そして好ましい範囲は約pH5〜約pH9、そして最も好ましくは約6.0〜約8.0の範囲である。好ましくは本発明の製剤は約6.8から約7.8の間のpHを有する。好適なバッファーにはリン酸バッファー、最も好ましくはリン酸ナトリウム、特にリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を含む。
【0125】
Tween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、TWEEN 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、TWEEN 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレン ポリオキシプロピレン ブロック コポリマー)およびPEG(ポリエチレングリコール)、あるいはポリソルベート20もしくは80、またはポリオキサマー184もしくは188、Pluronic(商標)ポリリス(polyls)、他のブロック コポリマーのような非イオン性表面活性剤のような製薬学的に許容される可溶化剤、およびEDTAおよびEGTAのようなキレート化剤のような他の添加剤を、凝集を減らすために製剤または組成物に場合により加えることができる。これらの添加剤は製剤を投与するためにポンプまたはプラスチック容器が使用される場合に特に有用である。製薬学的に許容される表面活性剤の存在は、タンパク質が凝集する傾向を緩和する。
【0126】
本発明の製剤は、少なくとも1つの抗−S抗体、およびフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンズエトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサールまたはそれらの混合物から成る群から選択される保存剤を水性希釈剤中で混合することを含んで成る方法により調製することができる。少なくとも1つの抗−S抗体および保存剤を水性希釈剤中で混合することは、通例の溶解および混合手順を使用して行う。適当な製剤を調製するためには、例えばバッファー溶液中の少なくとも1つの計測した抗−S抗体量を、所望の濃度のタンパク質および保存剤を提供するために十分な量で、バッファー溶液中の所望の保存剤と合わせる。この方法の変法は当業者により認識されているだろう。例えば加える成分の順序、さらなる添加剤を使用するかどうか、製剤が調製される温度およびpHは、濃度および使用する投与の手段のために至適化できるすべての因子である。
【0127】
特許請求する製剤は、透明溶液として、または水、保存剤および/または賦形剤、好ましくはリン酸バッファーおよび/または食塩および選択した塩を水性希釈剤中に含む第2バイアルで再構成する凍結乾燥した少なくとも1つの抗−S抗体のバイアルを含んで成る2個のバイアルで患者に提供することができる。単一溶液のバイアルまたは再構成が必要な2個のバイアルのいずれも複数回、再使用することができ、そして患者処置の単回または多回サイクルを満たすことができ、そしてこれにより現在利用できるものより都合よい処置法を提供することができる。
【0128】
この特許請求する製品は、即時から24時間以上の期間にわたり投与するために有用である。したがってここで特許請求する製品は、患者に重要な利点を提供する。本発明の製剤は場合により約2〜約40℃の温度で安全に保存され、そして長期間にわたりタンパク質の生物活性を保持することができ、すなわちその溶液が6、12、18、24、36、48、72または96時間以上の期間にわたり保持され、かつ/または使用できることを示す包装ラベルを付すことを可能とする。保存希釈剤を使用する場合、そのようなラベルは1〜12カ月、半年、および1年半および/または2年までの使用を含むことができる。
【0129】
本発明の少なくとも1つのS抗体の溶液は、少なくとも1つの抗体を水性希釈剤中で混合することを含んで成る方法により調製することができる。混合は通例の溶解および混合手順を使用して行う。適当な希釈剤を調製するためには、例えば所望の濃度のタンパク質および場合により保存剤またはバッファーを提供するために十分な量で、水またはバッファー中で少なくとも1つの計量した抗体を合わせる。この方法の変法は当業者により認識されているだろう。例えば加える成分の順序、さらなる添加剤を使用するかどうか、製剤が調製される温度およびpHは、濃度および使用する投与の手段のために至適化することができるすべての因子である。
【0130】
特許請求する製品は、透明溶液として、または水性希釈剤を含む第2バイアルで再構成される凍結乾燥した少なくとも1つの抗−S抗体の第1バイアルを含んで成る2個のバイアルとして患者に提供することができる。単一溶液のバイアルまたは再構成が必要な2個のバイアルのいずれも複数回、多数回再使用することができ、そして患者処置の単回または多回サイクルを満たすことができ、そしてこれにより現在利用できるものより都合よい処置法を提供する。
【0131】
ここで特許請求する製品は、薬局、医院または他のそのような研究所および施設に、透明溶液または水性希釈剤を含む第2バイアルで再構成する凍結乾燥した少なくとも1つのS抗体のバイアルを含んで成る2個のバイアルを提供することより、患者に間接的に提供することができる。この場合、透明溶液は1リットルまで、またはそれより大きなサイズであることができ、大きなリザーバーを提供して、そこからより小さいバイアルに移すために、より小さい部分の少なくとも1つの抗体溶液を1または多数回引き出し、そして薬局または医院により使用者および/または患者に提供され得る。
【0132】
これらの単一バイアル系を含んで成る認識されているデバイスは、例えばベクトンデッキンソン(Becton Dickenson)(フランクリン レイク、ニュージャージー州、www.bectondickenson.com)、ジセトロニック(Disetronic)(バーグドルフ、スイス、www.disetronic.com;、バイオジェクト(Bioject)(ポートランド、オレゴン州)(www.bioject.com);ナショナルメディカルプロダツク(National Medical Products)、ウェストン メディカル(ピーターブロー、英国、www.weston−medical.com)、メディ−ジェクト社(Medi−Ject Corp)(ミネアポリス、ミネソタ州、www.mediject.com)により作成され、そして開発されたBD Pen、BD Autojector(商標)、Humaject(商標)、NovoPen(商標)、B−D(商標)Pen、AutoPen(商標)およびOptiPen(商標)、GenotropinPen(商標)、Genotronorm Pen(商標)、Humatro Pen(商標)、Reco−Pen(商標)、Roferon Pen(商標)、Biojector(商標)、iject(商標)、J−tip Needle−Free Injector(商標)、Intraject(商標)、Medi−Ject(商標)のような溶液送達のためのペン−注入デバイスを含む。2個のバイアル系を含んで成る認識されているデバイスは、HumatroPen(商標)のような再構成された溶液を送達するための、カートリッジ中で凍結乾燥された薬剤を再構成するためのペン−注入系を含む。
【0133】
ここで特許請求する製品には包装材料を含む。包装材料は管理会社が必要とする情報に加えて、製品を使用できる条件を提供する。本発明の包装材料は、2つのバイアルの湿潤/乾燥製品について、患者が水性希釈剤中で少なくとも1つの抗−S抗体を再構成して溶液を形成し、そして2〜24時間以上の期間にわたり溶液を使用するための使用説明を提供する。単一バイアルの溶液製品については、ラベルはそのような溶液が2〜24時間以上にわたり使用できることを示す。ここで特許請求する製品は、ヒトへの医薬品としての使用に有用である。
【0134】
本発明の製剤は少なくとも1つのS抗体および選択されたバッファー、好ましくは食塩または選択した塩を含むリン酸バッファーを混合することを含んで成る方法により調製することができる。少なくとも1つの抗体およびバッファーを水性希釈剤中で混合することは、通例の溶解および混合手順を使用して行う。適当な製剤を調製するためには、例えば所望の濃度のタンパク質およびバッファーを提供するために十分な量で、水またはバッファー溶液中の少なくとも1つの計測した抗体量を、水中の所望の緩衝剤と合わせる。この方法の変法は当業者により認識されているだろう。例えば加える成分の順序、さらなる添加剤を使用するどうか、製剤が調製される温度およびpHは、濃度および使用する投与の手段のために至適化され得るすべての因子である。
【0135】
特許請求する安定な、または保存された製剤は、透明溶液として、または水性希釈剤中に保存剤またはバッファーおよび賦形剤を含む第2バイアルで再構成する凍結乾燥した少なくとも1つの抗−S抗体のバイアルを含んで成る2個のバイアルとして患者に提供することができる。単一溶液のバイアルまたは再構成が必要な2個のバイアルのいずれも多数回、再使用することができ、そして単回または複数のサイクルで患者を処置するために十分であり、すなわち現在利用できるものよりも都合良い処置法を提供することができる。
【0136】
本明細書に記載する安定な、または保存された製剤または溶液のいずれの中の少なくとも1つのS抗体は、本発明に従いSCまたはIM注射;経皮、肺、経粘膜、インプラント、浸透圧ポンプ、カートリッジ、ミクロポンプまたは当業者により、あるいは当該技術分野で周知であるような他の手段を含む種々の送達法を介して患者に投与することができる。
U.治療的応用
本発明は、当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載するような細胞、組織、器官、動物または患者の疾患を、本発明の少なくとも1つのS抗体を使用してモジュレートまたは処置するための方法も提供する。
【0137】
また本発明は、細胞、組織、器官、動物または患者の、限定するわけではないが少なくとも1つの肥満症、免疫関連疾患、心血管疾患、感染性疾患、悪性疾患または神経疾患を含む少なくとも1つの疾患をモジュレートまたは処置するための方法も提供する。
【0138】
また本発明は、細胞、組織、器官、動物または患者の、限定するわけではないが少なくとも1つの慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、若年性関節リウマチの全身的発症、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、胃潰瘍、セロネガティブ関節症、変形性関節症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、特発性肺線維症、全身性脈管炎/ヴェーゲナー肉芽腫症、類肉腫症、精巣炎/精管除去反転法、アレルギー/アトピー性疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性結膜炎、過敏性肺炎、移植、臓器移植拒絶、対宿主性移植片病、全身性炎症応答症候群、敗血症症候群、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌性敗血症、好中球減少熱、尿路性敗血症、髄膜炎菌血症、外傷/出血、火傷、電離照射線暴露、急性膵炎、成人呼吸促進症候群、ジストレス症候群、慢性関節リウマチ、アルコール誘導型肝炎、慢性炎症病、類肉腫症、クローン病、鎌状赤血球貧血、糖尿病、ネフローゼ、アトピー性疾患、過敏症反応、アレルギー性鼻炎、枯草熱、通年性鼻炎、結膜炎、子宮内膜症、喘息、蕁麻疹、全身性アナフラキシー、皮膚炎、悪性貧血、溶血性疾患、血小板減少症、任意の臓器または組織の移植片拒絶、腎臓移植拒絶、心臓移植拒絶、肝臓移植拒絶、膵臓移植拒絶、肺移植拒絶、骨髄移植(BMT)拒絶、皮膚同種移植拒絶、関節移植拒絶、骨移植拒絶、小腸移植拒絶、胎児胸腺移植拒絶、副甲状腺移植拒絶、任意の臓器または組織の異種移植拒絶、同種移植拒絶、抗−受容体過敏症反応、グレーブス病、レーノー病、B型インスリン耐性糖尿病、喘息、重症筋無力症、抗体媒介型細胞傷害、III型過敏症反応、全身性エリテマトーデス、POEMS症候群(多発性神経障害、臓器巨大、内分泌障害、モノクローナル高ガンマグロブリン血症、および皮膚変化症候群)、ポリニューロパシー、臓器巨大、内分泌障害、モノクローナル高ガンマグロブリン血症、皮膚変化症候群、抗リン脂質症候群、天疱瘡、強皮症、混合結合組織病、特発性アディソン病、糖尿病、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、白斑、脈管炎、MI−後心臓切開症候群、IV型過敏症、接触皮膚炎、過敏性肺炎、同種移植拒絶、細胞内生物による肉芽腫、薬剤感受性、代謝性/特発性ウィルソン病、ヘマクロマトーシス、アルファ−1−アンチトリプシン欠損、糖尿病網膜炎、橋本甲状腺炎、骨粗鬆症、視床下部−下垂体−副腎皮質系評価、原発性胆汁性肝硬変、甲状腺炎、脳脊髄炎、悪液質、嚢胞性線維症、新生児慢性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、家族性血球貧食性リンパ組織球増多症、皮膚学的状態、乾癬、脱毛、ネフローゼ症候群、腎炎、糸状体腎炎、急性腎不全、血液透析、尿毒症、毒性、子かん前症、okt3療法、抗−cd3療法、サイトカイン療法、化学療法、放射線療法(例えば限定するわけではないが、喘息、貧血、悪液質等)、慢性サリチル酸中毒、睡眠時無呼吸、肥満、心不全、静脈洞炎、炎症性腸疾患等を含む少なくとも1つの免疫関連疾患を、モジュレートまたは処置するための方法も提供する。(例えばメルクマニュアル(Merck Manual)、第12〜17版、メルク&カンパニー、ラーウェイ、ニュージャージー州1972、1977、1982、1987、1992、1999;Wells et al.編集、薬物療法ハンドブック(Pharmacotherapy Handbook)、第2版、Appleton and Lange、スタムフォード、コネチカット州、1998、2000(各々引用により全部、本明細書に編入する)を参照にされたい。)
本発明はまた、細胞、組織、器官、動物または患者の少なくとも1つの感染性疾患をモジュレートまたは処置する方法を提供し、そのような感染性疾患には限定するわけではないが少なくとも1つの:急性または慢性細菌疾患、細菌、ウイルスおよび真菌感染を含む急性および慢性寄生性または感染性プロセス、HIV感染/HIVニューロパシー、髄膜炎、肝炎(A、BまたはC等)、敗血性関節炎、腹膜炎、肺炎、咽頭蓋炎、大腸菌0157:h7、溶血性尿毒症症候群/血栓性血小板減少性紫斑症、マラリア、デング出血熱、リーシュマニア症、らい病、毒素性ショック症候群、ストレプトコッカス筋炎、ガス壊疽、結核症、細胞内トリ結核菌(mycobacterium avium intracellulare)、カリニ肺炎、骨盤炎症状疾患、精巣炎/精巣上体炎、レジオネラ属、ライム病、インフルエンザ、エプスタイン−バールウイルス、ウイルス随伴血球貧食症候群、ウイルス脳炎/無菌髄膜炎等を含む。
【0139】
本発明はまた、細胞、組織、器官、動物または患者の少なくとも1つの悪性疾患をモジュレートまたは処置する方法を提供し、そのような悪性疾患には限定するわけではないが少なくとも1つの;白血病、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B−細胞、T−細胞またはFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、ヘアリーセル白血病、骨髄異形性症候群(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、結腸直腸癌、膵臓癌、鼻咽頭癌、悪性組織球症、悪性の新生物随伴症候群/高カルシウム血症、充実性腫瘍、腺癌、肉腫、悪性黒色腫、血管腫、転移性疾患、癌に関連する骨の吸収、癌に関連する骨痛(bone pain)等を含む。そのような方法は場合によりそのようなS抗体、放射線治療、抗脈管形成剤、化学療法剤、ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター等の投与の前、同時または後に投与することにより組み合わせて使用することができる。
【0140】
特に本発明は、本発明の抗体を投与することにより慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスおよび自己免疫インスリン依存性糖尿病のような自己免疫疾患をモジュレートまたは処置する方法;細菌感染の処置;細菌感染による敗血症ショックの処置;ウイルス感染の処置:多発性骨髄腫のようなガンの処置;ガン転移の抑制;ガン性悪液質の緩解;および糸球体増殖性腎炎のような炎症性疾患の処置を提供する。そのような方法は場合により、少なくとも1つのS抗体を含んでなる有効量の少なくとも1つの組成物または製薬学的組成物を、そのようなモジュレーション、処置または治療が必要な細胞、組織、器官、動物または患者に投与することを含んでなることができる。
【0141】
本発明の任意の方法は、少なくとも1つのS抗体を含んでなる有効量の組成物または製薬学的組成物を、そのようなモジュレーション、処置または治療が必要な細胞、組織、器官、動物または患者に投与することを含んでなることができる。そのような方法は場合によりさらにそのような免疫疾患または悪性疾患を処置するための同時投与または併用療法を含んで成ることができ、ここで該少なくとも1つS抗体、それらの特定部分またはバリアントの投与は、さらに事前に、同時におよび/または後に、少なくとも1つのTNFアンタゴニスト(例えば限定するわけではないがTNF抗体もしくはフラグメント、可溶性TNF受容体もしくはフラグメント、それらの融合タンパク質、または低分子量TNFアンタゴニスト)、IL−18抗体もしくはフラグメント、低分子量IL−18アンタゴニストもしくはIL−18受容体結合タンパク質、IL−1抗体(IL−1アルファおよびIL−1ベータの両方を含む)またはフラグメント、可溶性IL−1受容体アンタゴニスト、抗リウマチ薬(例えばメトトレキセート、オーラノフィン、金チオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト、金チオマレイン酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジン、放射線治療、抗−脈管形成剤、化学療法剤、サリドマイド)、筋弛緩薬、麻薬、非−ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静剤、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬(例えばアミノグルコシド、抗菌・カビ剤、駆虫剤、抗ウイルス剤、カルバペネム(carbapenem)、セファロスポリン、フルオロルキノロン(flurorquinolone)、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、他の抗微生物剤)、止痒薬、コルチコステロイド、同化性ステロイド、糖尿病関連薬、無機類、栄養物質、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、エリトロポエチン(例えばエポエチン アルファ)、フィルグラスチン(filgrastim)(例えばG−CSF、Neupogen)、サルグラモスチン(sargramostim)(GM−CSF、Leukine)、免疫感作、免疫グロブリン、免疫抑制剤(例えばバシリキシマブ(basiliximab)、シクロスポリン、ダクリズマブ(daclizumab))、成長ホルモン、ホルモン代用薬、エストロゲン受容体モジュレーター、散瞳薬、毛様体麻痺薬、アルキル化剤、代謝拮抗物質、有糸分裂阻害剤、放射性薬品、抗鬱剤、抗躁剤、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、交感神経作用薬、刺激物質、ドネペジル、タクリン、喘息薬物療法、ベータアゴニスト、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリンまたは類似体、ドルナーゼ アルファ(Pulmozyme)、サイトカインまたはサイトカインアンタゴニストから選択される少なくとも1つを投与することを含んでなる。適当な投薬用量は当該技術分野では周知である(例えばWells et al.,編集、薬物治療ハンドブック(Pharmacotherapy Handbook)、第2版、Appleton and Lange、スタンフォード、コネチカット州;PDR薬局方、タラスコン ポケット薬局方2000(Tarascon Pocket Pharmacopoeia,2000)、豪華版、トラスコン出版社、ローマ リンダ、カリフォルニア州 2000(その各々は引用により全部、本明細書に編入する)を参照にされたい。)
典型的には病的状態の処置は少なくとも1つの抗−S抗体組成物の有効量または投薬用量(これは組成物中に含まれる特異的活性に依存して全部で、平均して、範囲で少なくとも約0.01から500ミリグラムの少なくとも1つの抗−S抗体(患者1キログラムの用量あたり)、そして好ましくは単回または多回投与あたり少なくとも約0.1〜100ミリグラム抗体/患者体重である)を投与することにより行われる。あるいは有効な血清濃度は、単回または多回投与あたり0.1〜5000□g/mlの血清濃度を含んで成ることができる。適当な投薬用量は医師が知っており、そしてもちろん特定の疾患状態、投与する組成物の特異的活性、および処置を受ける特定の患者に依存する。場合により所望する治療的量を達成するために、繰り返し投与、すなわち特定の監視され、または計量された用量の反復個別投与を提供することが必要となり、ここで個別投与は所望の毎日の用量または効果が達成されるまで繰り返される。
【0142】
好適な用量は任意に、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99および/または100〜500mg/kg/投与、あるいはそれらの任意の範囲、値または画分を含むことができ、あるいは単回または多回投与あたり0.1、0.5、0.9、1.0、1.1、1.2、1.5、1.9、2.0、2.5、2.9、3.0、3.5、3.9、4.0、4.5、4.9、5.5、5.9、6.0、6.5,6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、20、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14.0、14.5、4.9、5.0、5.5、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、12、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14、14.5、15、15.5、15.9、16、16.5、16.9、17、17.5、17.9、18、18.5、18.9、19、19.5、19.9、20、20.5、20.9、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、96、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500および/または5000μg/ml血清濃度あるいはそれらの任意の範囲、値または画分の血清濃度を達するために含むことができる。
【0143】
あるいは投与する用量は、特定の薬剤の薬物動態学的特性、およびその投与の様式および経路;受容体の年齢、健康および体重;症状の性質および程度、現行処置の種類、処置の頻度、および所望する効果のような既知の因子に大変依存し得る。通常、有効成分の投薬用量は、体重1キログラムあたり約0.1〜100ミリグラムとなり得る。多くは投与あたり1キログラムにつき0.1〜50、そして好ましくは0.1〜10ミリグラム、あるいは徐放性形態が所望の効果を得るために効果的である。
【0144】
非限定的な例として、ヒトまたは動物の処置は、1日あたり0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90または100mg/kgのような0.1〜100mg/kgの本発明の少なくとも1つの抗体を1回に、または周期的用量として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40日に少なくとも1回、あるいはまたは加えて1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51または52週に少なくとも1回、あるいはまたは加えて1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20年に少なくとも1回、あるいはそれらの組み合わせで、単回、注入または反復投与を使用して提供することができる。
【0145】
内部投与に適する剤形(組成物)は、一般に単位または容器あたり約0.1ミリグラム〜約500ミリグラムの有効成分を含む。これらの製薬学的組成物では、有効成分は通常、組成物の総重量に基づき約0.5〜99.999重量%の量で存在するだろう。
【0146】
非経口投与には、抗体は溶液、懸濁液、乳液または凍結乾燥粉末として製剤することができ、一緒にまたは別に製薬学的に許容される非経口賦形剤が提供される。そのような賦形剤の例は、水、塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液および1〜10%ヒト血清アルブミンである。リポソームおよび固定油のような非水性賦形剤を使用することもできる。賦形剤または凍結乾燥粉末は、等張性(例えば塩化ナトリウム、マンニトール)および化学的安定性(例えばバッファーおよび保存剤)を維持するための添加剤を含むことができる。製剤は既知のまたは適当な技術で滅菌される。
【0147】
適当な製薬学的キャリアーは、この分野の標準的な参考書である最新版のレミングトンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、A.Osolに記載されている。
V.代替投与
多くの既知の、および開発された様式を、製薬学的に有効量の本発明の少なくとも1つの抗−S抗体を投与するために、本発明に従い使用することができる。肺投与は処方どおりに使用するが、他の投与様式は本発明に従い使用して適切な結果をもたらすことができる。
【0148】
本発明のS抗体は担体中で、溶液、乳液、コロイドもしくは懸濁液として、または乾燥粉末として、吸入あるいは本明細書に記載し、または当該技術分野で既知の他の様式により投与するために適当な種々のデバイスおよび方法を使用して送達することができる。
W.非経口製剤および投与
非経口投与用の製剤は、通常の賦形剤として滅菌水または塩水、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物起源の油、水素化ナフタレン等を含むことができる。注入用の水性または油性懸濁液は、既知の方法に従い適当な乳化剤または加湿剤および沈殿防止剤を使用して調製することができる。注入用の薬剤は、水溶液または溶媒中の滅菌された注入可能溶液または懸濁液のような非毒性で、非経口投与性の希釈剤であることができる。使用可能な賦形剤または溶剤として、水、リンゲル溶液、等張性塩水等を利用できる;通例の溶媒、または沈殿防止溶媒として、滅菌された非揮発性油を使用することができる。これらの目的のために、任意の種類の非揮発性油および脂肪酸を使用でき、それらには天然または合成または半合成の脂肪油または脂肪酸;天然または合成または半合成のモノ−もしくはジ−またはトリ−グリセリドを含む。非経口投与は当該技術分野で知られており、そして限定するわけではないが通例の注入手段、米国特許第5,851,198号明細書に記載されたガスで圧縮した、針を含まない注入デバイス、および米国特許第5,839,446号明細書に記載されたレーザーパーホレーターデバイスを含む(これらの明細書は引用により全部、本明細書に編入する)。
X.代替送達
本発明はさらに少なくとも1つの抗−S抗体を、非経口的、皮下、筋肉内、静脈内、網内、気管支内、腹内、嚢内、軟骨内、窩内、腔体内、小脳内、脳室内、結腸内、頸内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊椎内、滑液包内、胸内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣、直腸、頬内、舌下、鼻内または経皮による投与に関する。少なくとも1つの抗−S抗体組成物は、非経口(皮下、筋肉内もしくは静脈内)または任意の他の投与、特に液体溶液または懸濁液の形態で使用するために;膣または直腸投与、特に限定するわけではないがクリームおよび坐薬のような半固体形で使用するために;限定するわけではないが錠剤またはカプセル形態のような頬内、または舌下投与に;あるいは限定するわけではないが粉末、点鼻またはエーロゾルまたは特定薬剤(certain agent)の形態のような鼻内に;あるいは皮膚構造をモディファイし、または経皮パッチ中の薬剤濃度を上げるためのジメチルスルフォキシドのような化学的エンハンサー(Junginger et al.、「薬剤の浸透強化(Drug Permeation Enhancement)」;Hsieh,D.S.、編集、第59−90頁(マルセルデッカー(Marcel Dekker)社、ニューヨーク 1994、引用により全部、本明細書に編入する)を用いて、またはタンパク質およびペプチドを含む製剤の皮膚上への適用を可能にする酸化剤(国際公開第98/53847号パンフレット)を用いて、または電気穿孔のような一過性の輸送路を作るために電場を適用して、またはイオン導入法のような皮膚を通る荷電した薬剤の移動性を上げるために、またはソノホレシス(sonophoresis)のような超音波を適用して(米国特許第4,309,989号および同第4,767,402号明細書)、限定するわけではないがゲル、軟膏、ローション、懸濁液またはパッチ送達系のように経皮的に使用するために調製することができる(上記の刊行物および特許は引用により全部、本明細書に編入する)。
Y.肺/鼻投与
肺投与には、好ましくは少なくとも1つの抗−S抗体組成物は、肺または洞のより低い気道に到達するために効果的な粒子サイズで送達される。本発明に従い、少なくとも1つの抗−S抗体は吸入による治療薬の投与について当該技術分野で既知の種々の吸入または鼻デバイスにより送達することができる。エーロゾル化した製剤を患者の洞腔または肺胞に沈積させることができるこれらのデバイスには、計量用量吸入器(metered dose inhaler)、ネブライザー、乾燥粉末ジェネレーター、噴霧器等を含む。抗体を肺または鼻投与に向けるための適当な他のデバイスも当該技術分野では既知である。すべてのそのようなデバイスが、エーロゾル中の抗体を分配するための投与に適する製剤に使用することができる。そのようなエーロゾルは、溶液(水性または非水性の両方)または固体粒子のいずれかから成ることができる。Ventolin(商標)計量用量吸入器のような計量用量呼入器は、多くは推進ガスを使用し、そして吸息中の作動が必要である(例えば国際公開第94/16970号、同第98/35888号パンフレットを参照にされたい)。Turbuhaler(商標)(アストラ:Astra)、Rotahaler(商標)(グラクソ:Glaxo)、Diskus(商標)(グラクソ)、Spiros(商標)呼入器(ジュラ:Dura)、インハーレセラピューティクス(Inhale Therapeutics)により販売されているデバイスおよびSpinhaler(商標)粉末呼入器(フィソンス:Fisons)のような粉末吸入器は、混合粉末の呼吸作動を使用する(米国特許第4668218号明細書 アストラ、欧州特許第237507号明細書 アストラ、国際公開第97/25086号パンフレット グラクソ、国際公開第94/08552号パンフレット ジュラ、米国特許第5458135号明細書 インハーレ、国際公開第94/06498号パンフレット フィソンス、すべて引用により本明細書に編入する)。AERx(商標)アラディギム(Aradigm)、Ultravent(商標)ネブライザー(マリンクロッド:Mallinckrodt)、およびAcornII(商標)ネブライザー(マークエスト メディカル プロダクツ:Marquest Medical Products)(米国特許第5404871号明細書 アラディギム、国際公開第97/22376号パンフレット)のようなネブライザー(上記技術文献は引用により全部、本明細書に編入する)は、溶液からエーロゾルを生成するが、計量用量吸入器、乾燥粉末吸入器等は、小さい粒子のエーロゾルを生成する。市販されている吸入器デバイスのこれらの具体的例は、本発明の実施に適する具体的なデバイスの代表であり、本発明の範囲を限定するものではない。好ましくは少なくとも1つの抗−S抗体を含んで成る組成物は、乾燥粉末吸入器または噴霧器により送達される。これらは本発明の少なくとも1つの抗体を投与するための吸入デバイスの幾つかの望ましい特徴である。例えば吸入デバイスによる送達は有利には、信頼性があり、再現性があり、そして正確である。吸入デバイスは場合により、良好な呼吸適性のために小さい乾燥粒子(例えば約10μm未満、好ましくは約1〜5μm)を送達することができる。
Z.噴霧としてS抗体組成物の投与
S抗体組成物タンパク質を含む噴霧は、少なくとも1つの抗−S抗体の懸濁液または溶液を加圧下のノズルを通すことにより生成することができる。ノズルのサイズおよび形状、かける圧力および液体供給速度は、所望の出力および粒子サイズを達成するために選択することができる。電気噴霧は例えば毛細管またはノズル供給部に連結した電場により生成できる。有利には噴霧器により送達される少なくとも1つの抗−S抗体組成物タンパク質の粒子は、約10μm未満、好ましくは約1〜約5μmの範囲、そして最も好ましくは約2μm〜3μmの粒子サイズを有する。
【0149】
噴霧器で使用するために適当な少なくとも1つの抗−S抗体組成物タンパク質の製剤は典型的には水溶液中、1mlの溶液あたり、またはmg/gmで約0.1mg〜約100mg、またはその中の任意の範囲または値の濃度、例えば限定するわけではないが.1、.2、.3、.4、.5、.6、.7、.8、.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90または100mg/mlまたはmg/gmの少なくとも1つの抗−S抗体組成物タンパク質を含む。製剤は賦形剤、バッファー、張性調整剤、保存剤、表面活性剤および好ましくは亜鉛のような作用物質(agent)を含むこともできる。製剤はまた、抗体組成物を安定化するためにバッファー、還元剤、バルクタンパク質または炭水化物のような賦形剤または作用物質を含むこともできる。抗体組成物タンパク質を製剤するために有用なバルクタンパク質には、アルブミン、プロタミン等を含む。抗体組成物タンパク質を製剤するために有用な炭水化物には、シュクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、グルコース等を含む。抗体組成物タンパク質製剤はエーロゾルを形成する溶液の噴霧化により引き起こされる抗体組成物タンパク質の表面が誘導する凝集を下げ、または防止することができる表面活性剤を含むこともできる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルのような種々の通例の表面活性剤を使用することができる。量は一般に製剤の0.001から14重量%の間である。本発明の目的に特に好適な表面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリソルベート80、ポリソルベート20等である。S抗体のようなタンパク質、または特定部分またはバリアントの製剤のために、当該技術分野で既知のさらなる作用物質も製剤に含むことができる。
AA.ネブライザーによるS抗体組成物の投与
抗体組成物タンパク質は、ジェットネブライザーまたは超音波ネブライザーのようなネブライザーにより投与することができる。典型的にはジェットネブライザーでは、圧縮空気源を使用して開口部を通る高速エアジェットを作成する。ガスがノズルを越えて膨張すると低圧領域が作成され、これが液体リザーバーに連結された毛細管を通って抗体組成物タンパク質の溶液を引き出す。毛細管からの液流は、管から出る時に不安定なフィラメントおよび液滴に剪断され、エーロゾルを作成する。ある範囲の形状、流速、およびそらせ型を使用して、上記のジェットネブライザーから所望の性能特性を達成することができる。超音波ネブライザーでは、高周波電気エネルギーを使用して、典型的には圧電変圧器を使用して、振動的、機械的エネルギーを作成することができる。このエネルギーを直接的に、またはカップリング流体を通すいずれかで抗体組成物タンパク質の製剤に伝え、抗体組成物タンパク質を含むエーロゾルを作成する。有利にはネブライザーにより送達される抗体組成物タンパク質の粒子は、約10μm未満、好ましくは約1μm〜約5μmの範囲、そして最も好ましくは約2μm〜3μmの粒子サイズを有する。
【0150】
ジェットまたは超音波のいずれのネブライザーを用いても、使用するために適当な少なくとも1つの抗−S抗体の製剤は、典型的には1mlの溶液あたり約0.1mg〜約100mgの少なくとも1つの抗−S抗体タンパク質を含む。製剤は賦形剤、バッファー、張性調整剤、保存剤、表面活性剤および好ましくは亜鉛のような作用物質を含むことができる。製剤はまた、バッファー、還元剤、バルクタンパク質または炭水化物のような、少なくとも1つの抗−S抗体組成物タンパク質を安定化するための賦形剤または作用物質を含むこともできる。少なくとも1つの抗−S抗体組成物タンパク質を製剤するために有用なバルクタンパク質には、アルブミン、プロタミン等を含む。少なくとも1つの抗−S抗体を製剤するために有用な典型的な炭水化物には、シュクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、グルコース等を含む。少なくとも1つの抗−S抗体製剤はエーロゾルを形成する溶液の噴霧化により引き起こされる少なくとも1つの抗−S抗体の表面が誘導する凝集を下げ、または防止することができる表面活性剤を含むこともできる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびアルコールおよびポリオキシエチレンソルビタル脂肪酸エステルのような種々の通例の表面活性剤を使用することができる。量は一般に製剤の0.001から4重量%の間の範囲である。本発明の目的に特に好適な表面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリソルベート80、ポリソルベート20等である。抗体タンパク質のようなタンパク質の製剤のために当該技術分野で既知のさらなる作用物質も製剤に含むことができる。
AB.計量用量吸入によるTNF抗体組成物の投与
計量用量吸入器(metered dose inhaler:MDI)では、推進剤、少なくとも1つの抗−S抗体および任意の賦形剤または他の添加剤を、液化圧縮ガスを含む混合物としてキャニスターに含む。計量バルブの作動は好ましくは、約10μm以下、好ましくは約1μm〜約5μm、そして最も好ましくは約2μm〜3μmの範囲のサイズの粒子を含むエーロゾルとしての混合物を放出する。所望のエーロゾル粒子サイズは、ジェット−ミル(jet−milling) 、噴霧乾燥、臨界点縮合等を含む当業者に既知の様々な方法により生成される抗体組成物タンパク質の製剤を使用することにより得られる。好適な計量用量吸入器には、3Mまたはグラクソにより製造されたものを含み、そしてヒドロフルオロカーボン推進剤を採用するものを含む。
【0151】
計量用量吸入器デバイスを用いて使用するための少なくとも1つの抗−S抗体の製剤は、一般に少なくとも1つの抗−S抗体を含む細かく分割した粉末を、懸濁液として非水性媒質中に、例えば表面活性剤により推進剤に懸濁して含む。推進剤は、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノールおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタン、HFA−134a(ヒドロフルオロアルカン−134a)、HFA−227(ヒドロフルオロアルカン−227)等を含むクロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルロカーボンまたは炭化水素のような、この目的に使用される任意の通例の材料であることができる。好ましくは推進剤はヒドロフルオロカーボンである。表面活性剤は、推進剤中の懸濁液として少なくとも1つの抗−S抗体を安定化するために、化学分解等に対して活性剤を保護する等のために選択することができる。適当な表面活性剤にはソルビタントリオレート、ダイズ レシチン、オレイン酸等を含む。場合により溶液エーロゾルは、エタノールのような溶媒を使用することが好ましい。タンパク質のようなタンパク質の製剤に当該技術分野で既知のさらなる作用物質を、製剤に含むこともできる。
【0152】
当業者は、本発明の方法を本明細書に記載していないデバイスを介して少なくとも1つの抗−S抗体組成物を肺投与することにより達成できることを認識しているだろう。
AC.経口製剤および投与
経口用の製剤は、腸壁の透過性を人工的に上げるための補助剤(例えばレゾルシノールおよびポリオキシエチレンオレイルエーテルおよびn−ヘキサデシルポリエチレンエーテルのような非イオン性表面活性剤)の同時投与、ならびに酵素的分解を阻害するための酵素阻害剤(例えば膵臓トリプシンインヒビター、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFF)およびトラシロール)の同時投与に依存する。経口投与用の固体型剤形の活性成分化合物を、シュクロース、ラクトース、セルロース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、マルチトール、デキストラン、澱粉、寒天、アルギネート、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントガム、アラビアガム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成もしくは半合成ポリマーおよびグリセリドを含む少なくとも1つの添加剤と混合することができる。これらの剤形は他の種類(1つまたは複数)の添加剤、例えば不活性な希釈剤、ステアリン酸マグネシウム、パラベンのような潤滑剤、ソルビン酸、アスコルビン酸、アルファ−トコフェロールのような保存剤、システインのような酸化防止剤、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味料、風味剤(flavoring agent)、香料等も含むことができる。
【0153】
錠剤およびピルはさらに腸溶性コート調製物に加工することができる。経口投与用の液体調製物には、医学的使用が可能な乳液、シロップ、エリキシル、懸濁液および溶液調製物を含む。これらの調製物は該分野で通常使用されている不活性希釈剤、例えば水を含むことができる。インスリンおよびヘパリンの薬剤送達系としてリポソームも記載された(米国特許第4,239,754号明細書)。さらに最近では、混合アミノ酸(プロテイノイド)の人工ポリマーの微小球も薬剤を送達するために使用された(米国特許第4,925,673号明細書)。さらに米国特許第5,879,681号および同第5,5,871,753号明細書に記載された担体化合物も生物学的に活性な作用物質を経口で送達するために使用され、そして当該技術分野で既知である。
AD.粘膜製剤および投与
粘膜表面を通して吸収させるために、少なくとも1つの抗−S抗体を投与する組成物および方法には、複数のミクロン以下の粒子、粘膜接着性高分子、生物活性ペプチドおよび水性の連続相を含んで成る乳液を含み、これは乳液粒子の粘膜接着を達成することにより粘膜表面を通る吸収を促進する(米国特許第5,514,670号明細書)。本発明の乳液の適用に適する粘膜表面には、角膜、結膜、頬、舌、鼻、膣、肺、胃、腸および直腸経路の投与を含む。膣および直腸投与用の製剤、例えば坐薬は、賦形剤として例えばポリアルキレングリコール、ワセリン、カカオ脂等を含むことができる。鼻内投与用の製剤は固体であることができ、そして賦形剤として例えばラクトースを含み、または点鼻の水性もしくは油性溶液であることができる。頬内投与には賦形剤は糖、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、糊化(pregelinated)澱粉等を含む(米国特許第5,849,695号明細書)。
AE.経皮組成物および投与
経皮投与には、少なくとも1つの抗−S抗体をリポソームまたはポリマー性ナノ粒子、マイクロ粒子、マイクロカプセルまたは微小球(特に言及しない限り、集合的にマイクロ粒子と呼ぶ)のような送達デバイスにカプセル化する。多数の適当なデバイスが知られており、それらにはポリ乳酸、ポリグリコール酸およびそれらのコポリマーのようなポリヒドロキシ酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物およびポリホスファゼンのような合成ポリマー、ならびにコラーゲン、ポリアミノ酸、アルブミンおよび他のタンパク質、アルギネートおよび他の多糖およびそれらの組み合わせのような天然ポリマーから作られたマイクロ粒子を含む(米国特許第5,814,599号明細書)。
AF.持効性投与および組成物
本発明の化合物は個体に長期間、例えば単回投与から1週間から1年間送達することがしばしば望ましい。種々の緩効性、貯蔵またはインプラント剤形を利用することができる。例えば剤形は、体液中での溶解度が低い化合物の医薬的に許容される非毒性塩、例えば(a)リン酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレン モノ−もしくはジ−スルホン酸、ポリガラクツロン酸等のような多塩基性酸との酸付加塩;(b)亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウム等のような多価金属カチオン、または例えばN,N’−ジベンジル−エチレンジアミンまたはエチレンジアミンから形成される有機カチオンとの塩;あるいは(c)(a)および(b)の組み合わせ、例えばタンニン酸亜鉛塩を含むことができる。さらに本発明の化合物は、または好ましくは今ちょうど記載したような比較的不溶性の塩をゲル、例えば注入に適するゴマ油を含む例えばモノステアリン酸アルミニウムゲルに配合することができる。特に好適な塩は、亜鉛塩、タンニン酸亜鉛塩、パモ酸塩等である。注入用の別の種類の緩効性貯蔵製剤は、例えば米国特許第3,773,919号明細書に記載されているようなポリ乳酸/ポリグリコール酸ポリマーのような緩効分解型の非毒性、非抗原性ポリマー中にカプセル化するために分散した化合物または塩を含む。化合物または好ましくは上記の比較的不溶性の塩は、特に動物で使用するために、コレステロールマトリックスシラスティック(silastic)ペレット中に配合することもできる。さらなる緩効性の、貯蔵またはインプラント製剤、例えばガスまたは液体リポソームは技術文献で知られている(米国特許第5,770,222号明細書および「徐放性および放出制御薬剤送達系(Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems)」、J.R.Robinson 編集、マルセルデッカー社、ニューヨーク、1978)。
【0154】
本発明を一般的に記載してきたが、これは具体的説明により提供され、そして限定を意味しない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解できるだろう。
【実施例1】
【0155】
修飾された抗−マウスTNF抗体の調製
修飾されたAbは組換えDNA法を使用して、マウスIgG1定常領域の完全なCH1ドメインをコードするDNA配列を、マウス抗−TNF抗体(cV1q)およびラット抗−TNF抗体(rRt108)のマウスIgG2a定常領域をコードする遺伝子に加えることにより調製した。余分なCH1ドメインは、正常AbのCH1とヒンジドメインとの間に挿入した(図2)。具体的には、マウスIgG1遺伝子の全CH1ドメインおよび幾つかのフランキングイントロン配列を含むXbaI−ApoI制限フラグメントを、マウスIgG2a遺伝子のCH1とヒンジドメインとの間のイントロンに位置するStuI制限部位にクローン化した。次いでcV1qまたはRt108重鎖可変領域のいずれかをコードしたDNAフラグメントを、修飾した定常領域配列の上流にクローン化して最終的な重鎖発現プラスミドを調製した。この重鎖プラスミドを、前に正常Abを発現するために使用した同じ軽鎖プラスミドと混合し、そして一緒に電気穿孔によりマウスのミエローマ細胞に導入した。S−cV1qまたはS−rRt108のいずれかを分泌したトランスフェクトした細胞は、細胞上清をマウスIgGについて通例のELISA技術によりアッセイすることにより同定した。生産細胞株をスケールアップし、次いでS−Abは細胞上清から通例のプロテインAクロマトグラフィーにより精製した。
【0156】
精製したS−AbはSDSを含有するポリアクリルアミドゲルを通すことにより、それらの重鎖が正常なAbの対応する重鎖よりも高い分子量(予想どおり約15kDa)であったことを確認した(図3)。S−Abおよび正常Abの軽鎖は予想通り同じ分子量であった。
【0157】
細胞に基づく機能的アッセイでは、muTNFの中和においてS−cV1qがcV1qよりも約200倍強く(図4A)、そしてratTNFの中和においてS−rRt108がrRt108よりも約20倍強い(図4B)ことが示された。これらの結果は中和効力における所望の上昇が、余分な免疫グロブリンドメインを定常領域に加えることにより正に実現できたことを示した。興味深いことには、TNF中和効力における200倍の差異は、cV1qと元のV1qAbとの間(IgD変更体は機能的に二価であると考えられている)、およびcV1qとポリクローナルヤギ抗−muFc Abに架橋結合したcV1qとの間の比較でも観察された。
【0158】
正常またはS−AbをEIAプレートに固定化したTNFと結合させ、次いで溶液相125I−標識TNFとインキュベーションした結合実験は、S−Abが正常なAbsよりも2つのTNF分子に同時に結合する高い能力を有する予想を支持した(図5)。興味深いことには、cV1qとS−cV1qとの間の倍数の差異は、rRt108とS−rRt108と間の倍数の差異よりも大きく、WEHIアッセイにおけるcV1qとS−cV1qとの間の差異と合致する。これらのデータは、S−rRt108、そして特にS−cV1qが恐らくより高次元の複合体を形成するのに対し、それらの正常なAb対は形成しないことを示す(図6)。
【0159】
cV1qおよびS−cV1qの薬物動態学的プロフィールをマウスで、そしてRt108およびS−Rt108の薬物動態学的プロフィールをラットで比較した。結果(表2)は、マウスにおけるS−cV1qの血清半減期がcV1qの半減期の約半分の長さであったことを示す。対照的に、S−Rt108の半減期は、Rt108の半減期とちょうど同じ長さであった。S−cV1qはcV1qよりも速く循環から排除されたが、68時間の半減期はラット/マウスキメラAbには妥当であり、齧歯類における代用物としてこれらAbの使用を有効とするために役立つ。
【0160】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0161】
以下の図面は本明細書の一部を形成する:
【図1】正常Ab構造とS−Ab構造の概略的比較である。V領域は白で、そして定常領域は青で示す。マウスIgG1 Abに由来する余分なCH1ドメインは斜線で示す。
【図2】正常マウスIgG2a(muG2a)(配列番号1)の重鎖定常領域と本発明のS−Ab(配列番号2)との間のアミノ酸配列の比較である。アミノ酸は1文字暗号で示す。A−Ab中の余分なCH1ドメインは、アミノ酸98〜194に広がる。定常領域配列は、青で示す。LCでCys14(下線)ジスルフィド結合。
【図3】正常およびS−Ab重鎖および軽鎖の移動度を比較するSDS−ポリアクリルアミドゲル分析。各タンパク質サンプルはβ−メルカプトエタノールで還元し、そして5〜15%勾配のポリアクリルアミドゲルを介して電気泳動に通した。電気泳動後、ゲル中のタンパク質をクーマシーブルー染色で染色した。分子量標準のサイズは、kDaで左に示す。このS−cV1qの特別な調製物は、幾らかのウシIgGを含んだ。
【図4】WEHI細胞傷害アッセイからの結果を示すグラフである。変動するAb量をマウスTNF(左)またはラットTNF(右)のいずれかとインキュベーションし、そして混合物をWEHI−164細胞に10pg/ml TNFの最終濃度になるように加えた。Ab/TNF/細胞混合物を37℃で16時間インキュベーションし、次いで細胞の生存能は、MTT色素を加え、そしてOD550−650値を測定することにより定量した。高いODは生きている細胞を示す。S−Abは正常Abよりも30kDa高い分子量を有するので、分子量に基づく正常とS−Abとの間の差異は、示されるものよりも高い(cV1qについて240倍対200倍)。
【図5】正常とS−Abが2つのTNF分子に同時に結合する能力を比較するための結合アッセイの結果を示す。EIAプレートは2μg/mlのマウスまたはラットTNFでコーティングした。マウスTNFをコーティングしたウェルは100μg/mlのcV1qまたはS−cV1qのいずれかとインキュベーションした。ラットTNFをコーティングしたウェルは100μg/mlのrRt108またはS−rRt108のいずれかとインキュベーションした。非結合Abは洗浄により除去し、そして2μg/mlの125I標識マウスまたはラットTNFを加えた。非結合TNFを洗浄により除去し、そして結合したカウント数をガンマカウンターを使用して測定した。
【図6】S−cV1q/muTNF複合体がcV1q/muTNF複合体とどのように異なると考えられるかの図解である。cV1qとは異なり、S−cV1qの各分子は2つのTNF分子に同時に結合できることに注目されたい。S−cV1qの効力の上昇は、TNFの複合体へのその二価の結合によると考えられ、これはcV1qに比べてTNFが大変遅い解離速度の理由である。S−cV1q/muTNF複合体はcA2/huTNF複合体に大変類似しているか、または同一であると予想される(図1を参照にされたい)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリン分子の定常領域に挿入された余分な定常領域免疫グロブリン(Ig)ドメインを有する修飾された免疫グロブリン分子。
【請求項2】
余分な定常領域免疫グロブリン(Ig)ドメインがC3ドメインを含んでなる、請求項1に記載の修飾された免疫グロブリン分子。
【請求項3】
余分な定常領域免疫グロブリン(Ig)ドメインがC1ドメインを含んでなる、請求項1に記載の修飾された免疫グロブリン分子。
【請求項4】
余分な定常領域免疫グロブリン(Ig)ドメインがC2ドメインを含んでなる、請求項1に記載の修飾された免疫グロブリン分子。
【請求項5】
免疫グロブリン分子がIgG1である請求項1に記載の修飾された免疫グロブリン分子。
【請求項6】
余分な定常領域免疫グロブリン(Ig)ドメインがC1ドメインを含んでなる、請求項5に記載の修飾された免疫グロブリン分子。
【請求項7】
余分な定常領域免疫グロブリン(Ig)ドメインがIgG2a免疫グロブリンのC1ドメインを含んでなる、請求項6に記載の修飾された免疫グロブリン分子。
【請求項8】
抗原結合領域をさらに含んでなる請求項1に記載の修飾された免疫グロブリン分子。
【請求項9】
免疫グロブリン分子がIgA、IgG、IgM、IgEまたはIgD分子である、請求項1に記載の修飾された免疫グロブリン分子。
【請求項10】
請求項1に記載の修飾された免疫グロブリン分子をコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【請求項12】
請求項11に記載のベクターでトランスフェクトした宿主細胞。
【請求項13】
請求項12に記載の宿主細胞を培養し、そしてそのように生産された修飾された免疫グロブリン分子を回収することを含んでなる修飾された免疫グロブリン分子の生産法。
【請求項14】
細胞が真核または原核細胞である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞が哺乳動物、鳥類、爬虫類、昆虫、植物、細菌、真菌または酵母細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物細胞がヒト、ウサギ、マウス、ラット、ハムスターまたはウシの細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
宿主細胞が、COS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、HepG2、653、SP2/0、NS/0、HeLa、他のミエローマ細胞もしくはリンパ腫細胞、またはそれらの任意の誘導体、不死化または形質転換した細胞から選択される少なくとも1つである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の修飾された免疫グロブリン分子および製薬学的に許容され得る担体を含んで成る製薬学的組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、個体における感染を処置し、または防御する方法。
【請求項20】
請求項10に記載の単離された核酸および担体または希釈剤を含んでなる核酸組成物。
【請求項21】
上記ベクターが、後期または初期SV490プロモーター、CMVプロモーター、HSV tkプロモーター、pgk(ホスホグリセレートキナーゼ)プロモーター、ヒト免疫グロブリンプロモーターまたはEF−1アルファプロモーターからなる群から選択される少なくとも1つのプロモーターを含んでなる、請求項11に記載の抗体ベクター。
【請求項22】
上記ベクターが、メトトレキセート(MTX)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ネオマイシン(G418)またはグルタミンシンテターゼ(GS)の少なくとも1つから選択される少なくとも1つの選択遺伝子またはその部分を含んでなる、請求項11に記載の抗体ベクター。
【請求項23】
修飾された免疫グロブリンが検出可能もしくは回収可能な量で発現されるように、in vitro、in vivoもしくはsituの条件下で、請求項10に記載の核酸またはストリンジェントな条件下でそれにハイブリダイズする内因性核酸を翻訳することを含んでなる、請求項1に記載の修飾された免疫グロブリンの生産法。
【請求項24】
少なくとも1つのTNFアンタゴニスト、抗リウマチ薬、筋弛緩剤、麻薬、非−ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、麻酔薬、鎮静剤、局所麻酔薬、神経筋遮断剤、抗菌薬、止痒薬、コルチコステロイド、同化性ステロイド、糖尿病関連薬、無機類、栄養物質、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、下痢止め薬、鎮咳薬、制吐薬、抗潰瘍薬、緩下薬、抗凝固薬、エリトロポエチン、フィルグラスチン、サルグラモスチン、免疫感作、免疫グロブリン、免疫抑制剤、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体モジュレーター、散瞳薬、毛様体筋麻痺薬、アルキル化薬、代謝拮抗物質、有糸分裂阻害剤、放射性薬品、抗鬱薬、抗躁薬、精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、交感神経作用薬、刺激物質、ドネペジル、タクリン、喘息薬物療法、ベータアゴニスト、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリンまたは類似体、ドルナーゼアルファ、サイトカイン、サイトカインアンタゴニストから選択される少なくとも1つの化合物またはタンパク質をさらに含んで成る、請求項18に記載の組成物。
【請求項25】
細胞、組織、器官または動物の免疫障害または疾患を処置する方法であって:請求項1に記載の少なくとも1つの修飾された免疫グロブリンの少なくとも1つの選択された免疫調節有効量を、該細胞、組織、器官または動物に接触または投与することを含んで成る上記方法。
【請求項26】
上記動物が霊長類である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記霊長類がサルまたはヒトである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記免疫状態が、慢性関節リウマチ/セロネガティブ関節症、変形性関節症、炎症性腸症候群、全身性エリテマトーデス、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/眼性神経炎、突発性肺腺維症、全身性脈管炎/ヴェーゲナー肉芽腫症、類肉腫症、精巣炎/精管切除反転法、アレルギー性/アトピー性疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性結膜炎、過敏症肺炎、移植、臓器移植拒絶、対宿主性移植片病、全身性炎症反応症候群、敗血症症候群、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、好中球減少性熱、尿路敗血症、髄膜炎菌症、外傷/出血、火傷、電離放射線暴露、急性膵炎、成人呼吸促進症候群、全身性エリテマトーデスおよび慢性関節リウマチ、アルコール誘導肝炎、慢性炎症病、類肉腫症、クローン病、鎌状赤血球貧血、糖尿病、ネフローゼ、アトピー性疾患、過敏性反応アレルギー性鼻炎、枯草熱、脳嚢胞鼻炎、結膜炎、喘息、蕁麻疹、全身性アナフラキシー、皮膚炎、悪性貧血、溶血性疾患、血小板減少症、任意の臓器もしくは組織の移植片拒絶、腎臓移植拒絶、心臓移植拒絶、肝臓移植拒絶、膵臓移植拒絶、肺移植拒絶、骨髄移植(BMT)拒絶、皮膚同種移植片拒絶、軟骨移植拒絶、骨移植片拒絶、小腸移植拒絶、胎児胸腺移植拒絶、副甲状腺移植拒絶、任意の臓器もしくは組織の異種移植片拒絶、同種移植片拒絶、抗−受容体過敏性反応、グレーヴズ病、レーノー病、B型インスリン耐性糖尿病、喘息、重症筋無力症、抗体媒介型細胞傷害、III型過敏性反応、全身性エリテマトーデス、天疱瘡、強皮症、混合結合組織疾患、突発性アディソン病、糖尿病、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、白斑、脈管炎、MI後心臓切開症候群、IV型過敏症、接触皮膚炎、過敏性肺炎、同種移植片拒絶、細胞内生物による肉芽腫、薬物過敏症、代謝性/突発性、ウィルソン病、ヘマクロマトーシス、アルファ−1−アンチトリプシン欠損症、糖尿病、橋本甲状腺炎、骨粗鬆症、視床下部−下垂−副腎皮質系評価、原発性胆汁性肝硬変、甲状腺炎、脳脊髄炎、悪液質、嚢胞性線維症、家族性血球貧食性リンパ組織球増多症、皮膚学的、乾癬、脱毛症、ネフローゼ症候群、腎炎、血液透析、尿毒症、毒性、okt3治療、抗−cd3治療、サイトカイン治療、化学療法、放射線治療(例えば限定するわけではないが、無力症、貧血、悪液質等を含む)、慢性サリチル酸中毒から選択される少なくとも1つである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
上記の有効量が、該細胞、組織、器官または動物1キログラムあたり0.001〜50mgである、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
上記の有効量が、該細胞、組織、器官または動物1キログラムあたり0.0001〜50mgである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
細胞、組織、器官または動物における少なくとも1つの感染性またはガン性障害または状態をモジュレートする方法であって、選択した感染をモジュレートする有効量の請求項1に記載の少なくとも1つの修飾された免疫グロブリンを、該細胞、組織、器官または動物に接触または投与することを含んでなる上記方法。
【請求項32】
上記動物が霊長類である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
上記霊長類がサルまたはヒトである請求項32に記載の方法。
【請求項34】
上記の感染性またはガン性障害または状態が(I)細菌、ウイルスおよび真菌感染、HIV感染/HIVニューロパシー、髄膜炎、肝炎、敗血性関節炎、腹膜炎、肺炎、咽頭蓋炎、大腸菌(e.coli)0157:h7、溶血性尿毒症症候群/血栓崩壊性血小板減少性紫斑病、マラリア、デング出血熱、リーシュマニア症、ハンセン氏病、毒性ショク症候群、ストレプトコッカス筋炎、ガス壊疽、結核症、細胞内トリ結核菌、カリニ肺炎、骨盤炎症疾患、精巣炎/精巣上体炎、レジオネラ属、ライム病、インフルエンザa、エプスタイン−バーウイルス、ウイルス随伴血球貧食症候群、ウイルス性脳炎/無菌髄膜炎等を含む急性または慢性の細菌感染、急性および慢性の寄生性または感染プロセス;(ii)白血病、急性白血病、急性リンパ芽球白血病(ALL)、B−細胞、T−細胞またはFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄球白血病(CML)、慢性リンパ球白血病(CLL)、毛様体細胞性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ボジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、結腸直腸癌腫、膵臓癌腫、鼻咽腔癌腫、悪性組織球増殖症、悪性の腫瘍随伴性症候群/カルシウム過剰血症、充実性腫瘍、腺癌、肉腫、悪性黒色腫等、
から選択される少なくとも1つである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
上記の有効量が、該細胞、組織、器官または動物1キログラムあたり0.01〜100mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
上記の接触または上記の投与が、静脈内、筋肉内、ボーラス、皮下、呼吸、吸入、膣、直腸、頬内、舌下、鼻内または経皮から選択される少なくとも1つの様式による、請求項25ないし35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
上記(1)接触または投与の前、それと同時またはその後に、少なくとも1つのTNFアンタゴニスト、抗リウマチ薬、筋弛緩剤、麻薬、非−ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬、止痒薬、コルチコステロイド、同化性ステロイド、糖尿病関連薬、無機類、栄養物質、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、下痢止め薬、鎮咳薬、制吐薬、抗潰瘍薬、緩下薬、抗凝固薬、エリスロポエチン、フィルグラスチン、サルグラモスチン、免疫感作、免疫グロブリン、免疫抑制剤、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体モジュレーター、散瞳薬、毛様体筋麻痺薬、アルキル化薬、代謝拮抗物質、有糸分裂阻害剤、放射性薬品、抗鬱薬、抗躁薬、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、交感神経作用薬、刺激物質、ドネペジル、タクリン、喘息薬物療法、ベータアゴニスト、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリンまたは類似体、ドルナーゼアルファ、サイトカイン、サイトカインアンタゴニストから選択される少なくとも1つの化合物またはタンパク質の治療に有効な量を含んで成る少なくとも1つの組成物を投与することをさらに含んでなる、請求項25ないし35のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
請求項1に記載の少なくとも1つの修飾された免疫グロブリンを含んで成る医療用デバイスであって、該デバイスが静脈内、眼内、ボーラス、皮下、呼吸、吸入、膣、直腸、頬内、舌下、鼻内または経皮から選択される少なくとも1つの様式により、上記の少なくとも修飾された免疫グロブリンを接触または投与するために適する、上記医療用デバイス。
【請求項39】
請求項1に記載の少なくとも1つの修飾された免疫グロブリン、および滅菌水、滅菌緩衝化水から選択される少なくとも1つ、またはフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、亜硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム、アルキルパラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサール、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの保存剤を水性希釈剤中に含んでなる製剤。
【請求項40】
修飾された免疫グロブリンの濃度が約0.1mg/ml〜約100mg/mlである、請求項39に記載の製剤。
【請求項41】
張性調節剤をさらに含んでなる請求項39に記載の製剤。
【請求項42】
生理学的に許容され得るバッファーをさらに含んでなる請求項39に記載の製剤。
【請求項43】
第1容器中に凍結乾燥状態の請求項1に記載の少なくとも1つの修飾された免疫グロブリンを含んでなり、そして滅菌水、滅菌緩衝化水またはフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、亜硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム、アルキルパラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサール、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの保存剤を水性希釈剤中に含んでなる第2容器を任意的に含む製剤。
【請求項44】
修飾された免疫グロブリンの濃度が約0.1mg/ml〜約500mg/mlの濃度に再構成される、請求項43に記載の製剤。
【請求項45】
張性調節剤をさらに含んでなる請求項43に記載の製剤。
【請求項46】
生理学的に許容され得るバッファーをさらに含んでなる請求項43に記載の製剤。
【請求項47】
請求項39に記載の製剤を処置が必要な患者に投与することを含んでなる、患者の少なくとも疾患または状態の処置法。
【請求項48】
請求項40に記載の製剤を処置が必要な患者に投与することを含んでなる、少なくとも1つの疾患または状態の処置法。
【請求項49】
包装材料および請求項1に記載の少なくとも1つの修飾された免疫グロブリンの溶液または凍結乾燥形態を含んでなる容器を含んでなるヒトの製薬学的使用のための製品。
【請求項50】
上記容器が多回投与用のストッパーを有するガラスまたはプラスチック容器である、請求項49に記載の製品。
【請求項51】
上記容器が、穿刺され、そして静脈内、筋肉内、ボーラス、腹腔内、皮下、呼吸、吸入、鼻、膣、直腸、頬内、舌下、鼻内、皮下または経皮に使用することができるブリスターパックである請求項49に記載の製品。
【請求項52】
上記容器が、静脈内、筋肉内、ボーラス、腹腔内、皮下、呼吸、吸入、鼻、膣、直腸、頬内、舌下、鼻内、皮下または経皮送達デバイスまたはシステムの構成要素である請求項49に記載の製品。
【請求項53】
上記容器が、静脈内、筋肉内、ボーラス、腹腔内、皮下、呼吸、吸入、鼻、膣、直腸、頬内、舌下、鼻内、皮下または経皮用の注入器またはペン型注入器デバイスまたはシステムの構成要素である請求項49に記載の製品。
【請求項54】
請求項1に記載の少なくとも1つの修飾された免疫グロブリンを、塩水または塩を含有する少なくとも1つのバッファー中で混合することを含んでなる、請求項1に記載の少なくとも1つの修飾された免疫グロブリン製剤の調製法。
【請求項55】
回収可能な量の上記抗体または特定した部分またはバリアントを発現することができる宿主細胞またはトランスジェニック動物またはトランスジェニック植物または植物細胞を準備することを含んでなる、請求項1に記載の少なくとも1つの修飾された免疫グロブリンの生産法。
【請求項56】
上記宿主細胞が哺乳動物細胞、植物細胞または酵母細胞である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
上記トランスジェニック動物が哺乳動物である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
上記トランスジェニック動物が、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ウマおよび非ヒト霊長類から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
請求項1に記載の少なくとも1つの抗体を発現するトランスジェニック動物または植物。
【請求項60】
請求項55に記載の方法により生産された少なくとも1つの修飾された免疫グロブリン。
【請求項61】
抗体の定常領域に余分な定常領域免疫グロブリン(Ig)ドメインを編入することにより、抗体のFabドメイン間に追加された柔軟性および空間的距離を提供する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−522583(P2008−522583A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−512799(P2004−512799)
【出願日】平成15年6月5日(2003.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/017742
【国際公開番号】WO2003/105898
【国際公開日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】