説明

修飾されたイソシアネート

【課題】好適な求核性基と反応でき、そして遊離イソシアネート基の欠点を有することなく各種フォーム網状体を提供することができる新規のイソシアネート誘導体を提供すること。
【解決手段】本発明は、少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、ビシナールヒドロキシ化合物を活性カルボニル化剤と反応させることによって得られる少なくとも1種の環状カーボネートとを反応させ、 次いで未反応イソシアネート基をマスキング剤でマスキングすることによって得られる修飾されたポリイソシアネートに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の修飾(即ち変性)されたイソシアネート誘導体に関する。本発明は、より詳細には、架橋官能性を有する基により修飾されたイソシアネート基を少なくとも1つ含む新規のイソシアネート誘導体に関する。
【0002】
本発明はこれら誘導体を製造する方法、及びコーティングの製造におけるこれら誘導体の使用にも関する。
【0003】
本発明は特にイソシアネート官能基を有し、少なくともその一つが架橋官能性アームとしても知られる架橋官能性を持つ基により修飾されているモノマー、オリゴマーまたはポリマー化合物に関する。本発明はさらに詳細には、少なくとも1つのイソシアネート官能基が上記の基により修飾されているポリイソシアネートに関する。
【0004】
本発明は修飾されたポリイソシアネートのこれら新規誘導体を得るための方法にも関する。更にポリマー、前記ポリイソシアネートと好適な求核性補助試薬との反応により得られるポリマー、特に重縮合体及び網状体の製造に有用な組成物における上記誘導体の使用に関する。この製造物はいずれかの種類のコーティングの産業用途、特にテキスタイル、ガラス、紙、金属、建築資材及び塗料の用途に活用されるものである。
【背景技術】
【0005】
イソシアネート官能基を「マスキング」剤として、また時に「ブロック化剤」とも呼ばれる作用物質によりマスキング(以下、「隠蔽」ともいう)することが実用上知られている。
【0006】
イソシアネート官能基を隠蔽する目的(この隠蔽は時にブロック化と参照される)、またはその必要性は、特定の補助試薬または反応性溶媒に対する、あるいは一般には連続しておりかつエマルジョンまたは懸濁液における支持相である相例えば、水に対する、イソシアネートの室温における過剰な反応性により説明されている。この高い反応性はポリウレタンの特定の用途、特に塗料では大きな問題になることがしばしばある。というのは別個にパッケージし、また時にはイソシアネートコモノマーの取り扱いを必要とするからである。その結果、実施に不便を生ずる。
【0007】
イソシアネート官能基に関する「マスキング剤」としてよく知られているものは、低温にてこの官能基を隠蔽して、基と反応することを防止することができる化合物であり、また高温においては初期に存在したイソシアネート官能基を回復するために取り除かれる化合物である。
【0008】
本発明の「架橋」修飾基は、それが反応した化合物によりイソシアネート基を架橋する条件下において取り除かれないことから、この様な基ではない。
一方、この基は好適条件下に官能基を開放することができ、次にこの官能基は反応性基と反応できるようになり、特に架橋反応を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許公開第0419114号
【特許文献2】欧州特許公開第337926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的の一つは、好適な求核性基と反応でき、そして遊離イソシアネート基の欠点を有することなく各種フォーム網状体を提供することができる新規のイソシアネート誘導体を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、非毒性又は極めて僅かな毒性しか持たない架橋官能基またはアームを含むイソシアネートを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、経済的に調製される架橋性(架橋用)官能基を少なくとも一つ含む新規修飾されたイソシアネート誘導体を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、応用に適した仕様を満たす架橋されていてよいポリマー(又はむしろ重縮合体)にアクセスできる架橋官能基を含む新規イソシアネートを提供することである。
本発明の別の目的は、上記架橋基を含む、該修飾されたイソシアネートからポリマー及び/又は網状体を調製する方法を提供することである。
【0014】
有機ポリイソシアネートに由来する、特に芳香ポリイソシアネートに由来するフォームエキスパンダーとして環式カーボネートを使用することは、欧州特許公開第0419114号より既知である。
【0015】
該明細書内に利用されている環式カーボネートの使用に関する条件、特に塩基性触媒を使用を含む条件下では、カーボネートは必要な場合は、ポリオール存在下にポリウレタン型であることができるフォームの膨張をもたらすCO2を放出しながら、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する。
【0016】
欧州特許公開第337926号は、広義に於いて、直鎖状ポリマーの水性乳剤を開示しており、このポリマーは多様な性質を有しており、そしてエポキシ基と反応することで鎖を伸長させるための鎖末端シクロカーボネート基を少なくとも2個含んでいる。
【0017】
発明者の研究により、驚くべきことに、環式カーボネートはポリイソシアネートと反応することでフォーム形成せず、環式カーボネート基を持つ、安定な修飾されたポリイソシアネートを形成し、これは続いて反応性水素を持つ化合物と反応させることで非発泡型の工業構造体要コーティング、特に塗料又はワニスを生じることが発見された。
【0018】
更に、この様に修飾されたポリイソシアネートは、反応性求核性分子との反応により、アルコール官能基の消費を伴う架橋反応を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的及び以下に明らかになる他の目的は、イソシアネート、好都合にはジイソシアネート、好ましくは下式Iの修飾されたポリイソシアネートにより達成される:
【0020】
【化1】

【0021】
(式中:
−Isoは(ポリ)イソシアネート残基であり(イソシアネート基の転化後);
−Xはイソシアネート基と反応できる原子又は原子団を表し;
−Aは結合であるか又は1ないし30、好都合には1ないし18、そして好ましくは1ないし5個の炭素原子を含む直鎖型、分枝型、あるいは環式の炭化水素をベースとした鎖を表し;
−Qは、結合、酸素又は硫黄原子、又はAについて述べた炭化水素をベースとする鎖を表し;
−Zは結合、又はAについて述べた炭化水素をベースとした鎖を表し;
−Yは結合、又はAについて述べた炭化水素をベースとした鎖を表し;
ただし基Z及びYは同時に結合を表すことはなく;
−Wは結合、酸素又は硫黄原子、又はAについて述べた炭化水素をベースとする鎖を表し;
−A,Q、及びWは同一でもよく、また互いに異なるものでもよい)。
【発明の効果】
【0022】
上記の化合物は1日を超え、好都合には1週間を超え、好ましくは1ヶ月を超え、更に好ましくは3ヶ月を超える期間にわたって通常の保存条件下且つ反応性求核性化合物の不在下に化学的に安定である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
「炭化水素をベースとした鎖」という表現は、炭素及び水素原子を含み、1個以上のヘテロ原子、特に元素周期律表の第IV、V及びVI族より、具体的には第IVA、VA及びVIA(O、S、Si等)原子、またはヘテロ基(−NH、−N(置換))によりさえぎられてよく、又は特にアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン(特にフッ素)、直鎖状または分枝状ハロゲン化(特にフッ素化)またはペルハロゲン化(特に過フッ素化)された炭素をベースとした鎖、及びカルボキシル、第一級又は第二級アミノ、NO2又はCN基より選択される1またはそれ以上の基で置換されていてよい鎖を意味する。
【0024】
周期表の定義に関してはメルクインデックス(Merck Index)第10版(Merck and Co. Rahway, Martha Windholz, Susan Budavari, 編集)を参照されたい。
【0025】
炭化水素をベースとする鎖は直鎖型、分枝型又は環式でもよい。
それは飽和型でも、又は不飽和型でもよい。
【0026】
特にアルキレンであり、又は具体的にはポリメチレン−(CH2n−鎖を挙げることができ、一般に前記nは1ないし12であり、置換されていなくても又は上記の基により置換されていてもよい。
【0027】
Xは以下の官能基を特に表す:
−O、
−S、
=N、
−NR(式中、Rが水素原子であるか、又は一般に1ないし12個、好ましくは1ないし5個の炭素原子を含み、そして上記のヘテロ原子もしくはヘテロ基でさえぎられている又は上記置換基を含む炭化水素をベースとする鎖を表す)、
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、R’が1個以上のヘテロ原子(特に元素周期律表のIVA、VA及びVIA族)、例えば、O、SもしくはSi、又は特に−N=及び−NR−(Rは上記に同じ)より選択されるヘテロ基によりさえぎられており及び/又は1個以上の上記置換基により置換されている、上記のとおりの4−ないし10−員の炭化水素をベースとする鎖であり、鎖R’がNHと共に窒素環、好都合には多窒素環を形成し、そして好ましくは二窒素環、例えば、ピペラジノ環を形成する)、
−CO−NR、
−NR−COO、
−COO、
【0030】
【化3】

【0031】
−NH−CO−NH、
−NH−CO−NR、
(式中、Rは上記に同じである)。
【0032】
好都合には、本発明のイソシアネート誘導体は、以下の条件を少なくとも1つ、好都合には少なくも2つ、より特には3つ、及び好ましくは全てを満たす;
−Xが酸素原子を表し、
−Aが−CH2−基を表し、
−Yが−CH2−を表し、
−Zが結合、又は−CH2−を表し、好ましくは結合であり、
−W及びQは結合を表す。
【0033】
好ましい架橋基はイソシアネート官能基をグリセリルカーボネートに反応させ得られるものである。
【0034】
好ましい別の基は、イソシアネート官能基を脂肪酸カーボネート又はそのエステル、例えばオレイン酸8,9−カーボネートと反応させることにより得られるものである。
【0035】
上記の如く、対象となるイソシアネートはモノイソシアネート、ジイソシアネート、又はポリイソシアネートである。
【0036】
本発明による修飾されたイソシアネート誘導体には以下のものが含まれる:
−ジイソシアネート;
−イソシアネート化合物、特にトリマーとしても知られるイソシアヌレート基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特にダイマーとしても知られる、ウレチジンジオン基を少なくとも1つ含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のビウレット基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のカルバメート基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のアロファネート基を含むポリイ
ソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のエステル基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のアミド基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも尿素官能基を含むポリイソシアネート
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のイミノシクロオキサジアジンジオン官能基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のシクロオキサジアジントリオン官能基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個の隠蔽(マスキング)されたイソシアネート基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に上記の1以上の基の組み合わせ、特にイソシアヌレート基の組合せを含むポリイソシアネート。
【0037】
「多官能基イソシアネート三縮合体」という表現は、より一般的には1以上の同一、あるいは異なるイソシアネートモノマー、及び所望によりモノマーの(シクロ)縮合、具体的にはシクロ(三量体化)により得られる生成物を意味するのに用いられる。
【0038】
より一般的には、これら化合物はイソシアヌレート基又はビウレット基を含む。
【0039】
一般に、本発明の(ポリ)イソシアネートは分子量が7500未満、好都合には3500未満であり、好ましくは2500未満である。
【0040】
記載の各種修飾された化合物の組成の一部を形成するイソシアネートモノマーは、脂肪族、環式脂肪族、またはアリールであってよい。
【0041】
上記の修飾されたポリイソシアネートは、それぞれホモポリイソシアネート、及びヘテロポリイソシアネート又は別種のホモポリイソシアネート及び/又は別種のヘテロポリイソシアネートの混合物として参照される、同一又は別種のイソシアネート分子の縮合生成物より成る。
【0042】
本発明の対象となる好ましいポリイソシアネートは、以下の条件の内の少なくとも1、好都合には2、好ましくは3を満たすものである:
−本発明の架橋基と反応する遊離NCO官能基の少なくとも1、そして好都合には2個が飽和(sp3)炭素を介して炭化水素ベースの骨格に結合している;
−該飽和(sp3)炭素の少なくとも1、及び好都合には2個が、少なくとも1及び好都合には2個の水素を持ち(換言すれば、イソシアネート官能基を持つ炭素が水素原子を1個、好ましくは2個持つときより良い結果が得られることが見いだされている);更に好ましくは該飽和(sp3)炭素の少なくとも3分の1が、好都合には少なくとも2分の1が、好都合には3分の2が、それ自体が少なくとも1、好ましくは2個の水素を持つ炭素原子を介し、該骨格に結合される:
−イソシアネート官能基を炭化水素ベースの骨格に結合している全ての炭素が飽和(sp3)炭素であり、好都合にはその一部が、そして好ましくはその全てが水素を有し、好ましくは2個の水素を有する;更に好ましくは該飽和(sp3)炭素の少なくとも3分の1が、好都合には2分の1が、好ましくは少なくとも3分の2が、少なくとも1個、より好ましくは2個の水素を有する炭素原子を介して該骨格に結合されている。
【0043】
本発明の好都合な実施態様の1つによれば、NCO官能基が上記の架橋基により修飾されるポリイソシアネートは、アルキレンジイソシアネートのホモ縮合またはヘテロ縮合の生成物(具体的には「ビウレット」型及び「トリマー」型の生成物を含む)、又は、さらには、尿素、ウレタン、アロファネート、エステル及びアミド官能基を含むイソシアネート官能基を含む「プレポリマー」及びそれらを含む混合物より選択される。
【0044】
それらは、例えば「トロネート(Tolonate)」という名称にて本件出願人より市販されているポリイソシアネートである。
【0045】
一般に、好ましいポリイソシアネートは以下のイソシアネートモノマーのホモ縮合又はヘテロ縮合生成物である:
−ポリメチレンジイソシアネート及び具体的には1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチル−1、5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、3,5,5−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート及びイソシアナト(4)−メチル−1,8−オクチレンジイソシアネート(TTI又はNTI);
−シアノブタン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,2−、1,3−、又は1,4−ジイソシアネート、3,3,5−トリメチル−1−イソシアナト−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、ビス(イソシアナト)メチルノルボロナン(NBDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(BIC)、H12−MDI及びシクロヘキシル1,4−ジイソシアネート;
−OCN−CH2−φ−CH2−NCOの様なアリーレンジアルキレンジイソシアネート;又はトリレンジイソシアネートの様な芳香族化合物。
【0046】
芳香族イソシアネートは好ましくない。
【0047】
ポリイソシアネートが比較的重い、即ちそれらが少なくとも4個のイソシアネート官能基を持ち、少なくとも1個のイソシアネート官能基が上記架橋基により好都合に修飾されている場合、又はイソシアネート官能基を持つ複数の化合物の混合物が存在する場合には、第1の条件は以下の通りである:
【0048】
−遊離NCO官能基又は上記架橋基を含むNCO官能基の少なくとも3分の1、好都合には3分の2、そして好ましくは5分の4は、炭化水素をベースとする骨格に飽和(SP3)炭素を介して結合されており、
−該飽和(SP3)炭素の少なくとも3分の1、好都合には3分の2、そして好ましくは5分の4が少なくとも1、好都合には2個の水素を有しており(換言すれば、イソシアネート基を有する炭素が1個の、好ましくは2個の水素を持つとき、より良好な結果が得られることが見いだされている)。
【0049】
該飽和(SP3)炭素の少なくとも3分の1、好都合には2分の1、そして好ましくは3分の2が、少なくとも1、好都合には2個の水素を有している炭素を介して該骨格に結合されることも好ましい。
【0050】
遊離イソシアネート基又は上記架橋基を含むイソシアネート官能基の実質的に全てが上記基準を満たす混合物が特に好ましい。
【0051】
本発明による非修飾のイソシアネート官能基は、遊離のものであっても又は一般的な熱不安定マスキング基によってマスキングされていてもよい。
【0052】
本発明の目的に関しては、用語「マスキング剤(隠蔽剤)」とは、マスキング(隠蔽)されたイソシアネート化合物が少なくとも50℃の温度に於いて、好都合には少なくとも60℃の温度に於いて、そして好ましくは少なくとも70℃であり、350℃を越えない、好都合には250℃を、そして好ましくは200℃を越えない温度に於いて、(最高温度はフラッシュ架橋プロセスのために制限される)、数秒ないし数時間、好都合には10秒ないし20分間の加熱後に、下記載の方法であるオクタノール試験に於いて、少なくとも50%のマスキング剤の解放を示すことによりイソシアネート官能基と反応する基を意味する。
【0053】
一般に、マスキングされたイソシアネート化合物は、イソシアネート結合の再生、又は1級または2級の脂肪族アルコールが存在する場合には上記結合のウレタン結合への転化又は1級又は2級脂肪族アミン基が存在する場合には尿素への転化を伴うマスキング剤の解放をもたらす化合物と考えられる。
活性型又は、熱又は酸化により活性化される潜在型触媒が存在する場合、解放反応は加速されるか、又はイソシアネート官能基を再生する(マスキング基を解放することで)ための温度はより低くなる。
【0054】
例えば、マスキング基がイミダゾールの場合、オクタノール試験は80℃にて対応するオクチルカルバメート形成率50%では50%の解放度を示し、100℃では100%の解放度を示し、2−ヒドロキシピリジンはこれらの温度でそれぞれ90%及び100%を示す。
【0055】
0.1質量%のジブチル錫が存在する場合には、80℃に於けるイミダゾールの非ブロック率は90%に増加する。
【0056】
具体的にはイミダゾール、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール、又は1,2,4−トリアゾールの様な(多)窒素複素環型のマスキング剤が挙げられ、該複素環体は置換基を有してよく;又はラクタム、置換されていてよいフェノール、例えば、パラ−ヒドロキシ安息香酸塩及びオキシム、具体的にはメチルエチルケトキム(MEKO)、メチルピルベートオキシム、エチルピルベート酸オキシム(MEPO)及びシクロヘキサノンオキシムが挙げられる。
【0057】
マスキング基はカルボン酸又はスルフォン酸官能基の様な酸性イオン官能基、又は第3級アミン官能基の様な塩基性イオン官能基を含んでよい。これらイオン基は粉末、分散体又は水溶液の製造の様な、特定の型の配合物の調製を容易にすることから、最も特に有用である。
【0058】
好都合な実施態様の一つでは、本発明のポリイソシアネート又は、より正確にはポリイソシアネート組成物は、少なくとも110℃のオクタノール試験にて、
【数1】

が4/3より大きく、好都合には1.5より大きく、好ましくは2より大きいものから選択された少なくとも2種の異なるマスキング剤を含む。
【0059】
マスキング基は、特にオキシム及びトリアゾール(1,2,3−トリアゾール、又は1,2,4−トリアゾール)であってよく、オキシムはメチルエチルケトキシム、メチルアミルケトキシム、メチルピルベートオキシム又はエチルピルベートオキシムが好都合である。
【0060】
本発明による修飾されたイソシアネート誘導体は液体又は粉末形態である。
【0061】
本発明による修飾されたイソシアネート誘導体は、当業者に公知の方法を実施し、式(II)の化合物を縮合することで調製されるだろう:
【0062】
【化4】

【0063】
(式中、X、A、Q、Y、Z及びWはイソシアネートに関する上記と同一内容である)。
【0064】
適当であれば、一般式(II)の化合物のXH以外の反応性官能基は、好適な保護基により保護され、その後脱保護される。
【0065】
即ち、本発明による修飾されたイソシアネートは:
−Xが酸素、又はイオウ原子を表す場合には、式中のXがOまたはSである上記一般式Iの化合物により修飾されることが所望されるイソシアネート化合物を、具体的にはエステル、エーテル、又は芳香族炭化水素であってよい溶媒の存在下又は非存在下に於いて、所望により触媒の存在下に加熱して縮合させること、
−Xが上記の基NRである場合には、一般的な溶媒中にて室温で又は加熱して、イソシアネート化合物と縮合させること、により得られる。
【0066】
適当であれば、イソシアネートは上記一般式IIの化合物との反応の前または後に、好適反応条件下にマスキング剤と反応される。
【0067】
イソシアネートは、当業者に既知の適切な反応条件下に一般式IIの化合物とマスキング剤との混合物と反応させてもよい。
【0068】
本発明の化合物はまた、前記イソシアネート化合物を、分子(II)の前駆体である化合物(例えばビシナル(隣接)ジオール類等)及び活性化されたカルボニル化剤(カルボニル活性化用分子であり、カーボネート形成反応の後に遊離し、場合によりイソシアネート官能基のマスキング剤としての働きをすることが可能なもの)と混合することによって調製することもできる。即ちこの様な例としては、カルボニルジイミダゾール、カルボニルビス(1,2,4−トリアゾール)、カルボニル−ビス(メチルエチルケトキシム)及びN,N’−ジスクシンイミジルカーボネートの様な活性化カルボニル化合物である。ジオールとの反応及びカーボネート形成後に解放される、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、又はメチルエチルケトキシムの様な化合物は、イソシアネート官能基を隠蔽する作用物質として既知である。
【0069】
本発明による好ましい修飾されたイソシアネートのグループの一つは、少なくとも幾つかのイソシアネート官能基、好ましくは100質量%ないし1質量%、好都合には100質量%ないし30質量%のイソシアネート官能基が上記の架橋基により修飾され、更に、少なくとも1質量%、好都合には少なくとも5質量%、そして好ましくは10質量%、そして99質量%まで、好都合には95質量%まで、好ましくは70質量%までのイソシアネート官能基が上記のマスキング基により修飾されている、イソシアネート官能基を含む、上記ジイソシアネート誘導体より成る。
【0070】
これらイソシアネート誘導体は特に粉末で用途があり又は水性媒体中で使用される。
【0071】
本発明の主題となるポリイソシアネート組成物は、少なくとも1%から99%以下、好ましくは少なくとも10%から90%以下の、本発明の架橋基を主に有するポリイソシアネート、及び少なくとも1%から99%以下、好ましくは10%から90%以下の、架橋基を主に有する別のポリイソシアネート及び/又は遊離の及び/又はマスキングされたイソシアネート官能基を有するが架橋基は含まないジイソシアネート由来の別分子を含む混合物より成るだろう。
【0072】
特に好都合な様式では、架橋基、及び遊離の及び/又はマスキングNCO基を同一の(ポリ)イソシアネート分子が有する。
【0073】
好ましくは、本発明の(ポリ)イソシアネート組成物は上記式Iの分子が持つカルボキシル基を含まない。
【0074】
しかし、イソシアネート官能基をマスキングする作用物質はイオン基を有し、特にカルボキシル基又は第三級アミン基を有し、これらイオン基は恐らく部分的または完全に塩化されているだろう。
【0075】
化合物は、遊離のイソシアネート官能基を、特に少なくとも1質量%、好都合には少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%から、99質量%まで、好都合には70質量%までで有するだろう。
【0076】
本発明による好適な修飾されたイソシアネートの第2のグループは、好ましくは真性イソシアネート(3つのイソシアネートモノマー分子及び所望により他のモノマーの理論的(シクロ)三量体化から得られ、イソシアヌレート及び/又はビウレット環を含む)、及びアロファネート、及び/又はダイマー、及び/又は尿素、ウレタン、ビウレットまたはカルバメートの混合物からなり、上記規定の架橋基により修飾されたイソシアネート基を少なくとも若干、好ましくは少なくとも1質量%ないし100質量%の、好都合には30質量%ないし100質量%含むものである。
【0077】
化合物は遊離イソシアネート官能基を、特に1質量%ないし99質量%、及び好都合には5質量%ないし70質量%有してよい。
【0078】
好ましい化合物の第3のグループは、複数の多官能性イソシアネート三縮合体及び、アロファネート、ウレチンジオン、又はダイマーの物理的混合からなり、本発明の架橋基により修飾されたイソシアネート基を100質量%ないし1質量%、好都合には70質量%ないし1質量%含み、且つ上記マスキング剤によりマスキングされたイソシアネート官能基を1質量%ないし99質量%、好都合には5質量%ないし70質量%含むものである。
【0079】
本発明の修飾されたイソシアネート誘導体の第4のグループは遊離イソシアネート基、及び/又はマスキングされたイソシアネート基及びアロファネート及び/又はウレチンジオン基を含む修飾されたイソシアネートより成る。
【0080】
化合物は遊離イソシアネート官能基を、具体的には1質量%ないし99質量%、好都合には5質量%ないし70質量%有してよい。
【0081】
上記混合物では、各種多官能性化合物は複数の同一、又は異なる種類のモノマーの重縮合により得られるだろう。
【0082】
多官能性イソシアネートの混合物の場合、各種多官能性イソシアネートは様々なイソシアネート、又は各種イソシアネートの混合物より得られるだろう。
【0083】
例えば、HDIイソシアネート及びブチルアロファネート及びHMDIの混合物は使用できる。
【0084】
本発明の化合物を製造するために、未反応の出発イソシアネートモノマーを部分除去する前、又は後に出発イソシアネート自体の(環式)縮合体(二量体化、三量体化等)による粗混合物を使用することもできる。これら粗混合物は、出発イソシアネートモノマーの混合物生成物全てに対する質量%が1ないし95%の範囲、好ましくは5%ないし80%の範囲であることを特徴とする。
【0085】
同様に、これら粗イソシアネート(シクロ)縮合混合物から得られる混合物が利用されてもよい。「得られる混合物」という表現は粗混合物の化合物と、求核化合物又はイソシアネート官能基と反応できるヒドロキシル、スルフィドリル又はアミン官能基を有する化合物との反応生成物を意味する。
【0086】
一般に、使用するイソシアネート組成物は重合又は縮重合により得られる各種分子の混合物であり、この場合、分数及び無作為数値に関しては上記参照されたものと同様に説明される。
【0087】
脱離基の離脱により遊離される、または解放されるイソシアネート官能基は、不安定性水素を含む基、具体的にはXが上記同様であるNCO/XH比に依存して、ポリオール、又はポリアミン、又はポリスルフィドリル、あるいはペンダント質カーボネート官能基及び末端遊離イソシアネート又はアルコール、アミン、スルフィドリル官能基を含むプレポリマーとの縮合により形成できる。
【0088】
好適な試薬により架橋基を開裂した後、得られたプレポリマーが引き続き架橋されるだろう。
【0089】
本発明による架橋基と反応する官能基は、アルコール官能基、第1又は第2アミン官能基、反応性水素原子を含む複素環式窒素化合物、オキシム、またはフェノール、好ましくはフェネート又はカルボキシレートである。アンモニア水、第1又は第2アミン、又は環を開裂することで反応する窒素複素環体、例えばグアニジン又はその塩が好ましくは選択できる。
【0090】
ポリウレタン網状体またはフィルムを得るためには、これらプレポリマーはアミン、好ましくは第1又は第2級の好ましくはジアミン又はポリアミンと反応するだろう。即ち網状体は媒体中に存在するNCOにより自己架橋するかまたはグラフト化するか、又はこれら官能基と反応性の混合物との架橋反応を可能にするペンダントヒドロキシル官能基を含む形で得られる。
【0091】
同様に、遊離イソシアネート及びカーボネート官能基を持つこれら生成物はアミンと反応し、ペンダントヒドロキシル及び/又はカーボネート官能基を含むポリウレアウレタン網状体を提供する。イソシアネート官能基の量がアミン量より多い場合、カーボネート環の開裂により解放されるアルコール官能基が過剰のイソシアネート官能基と反応するだろう。カーボネート環の開裂速度はアミン及びこのアミンとのイソシアネートとの反応性に依存する。
【0092】
特定の例では、アミンはイソシアネート官能基より前にカーボネート官能基と優先的に反応するだろう。このようにして、イソシアネート官能基は解放されたアルコール官能基と反応する可能性があるだろう。
【0093】
アミンによる環開裂反応は、遊離OH官能基(式中のZ結合以外である一般式Iの化合物の場合は第1級アルコール型のみの、式中のZが結合である一般式Iの化合物、具体的にはグリセリルカーボネートの場合には第1級及び/又は第2級アルコール型の)を解放しカルバメート結合を形成する。
【0094】
ある場合には、解放されるアルコール官能基は第3級ではあるが、本例に於いてはその反応性は低く、好ましくない。
【0095】
遊離OH官能基は次に特定温度にて、ブロックされていてもよいイソシアネート官能基と反応し、ブロック化基を放出し、特に遊離またはブロック化イソシアネート基を多官能基イソシアネート、ダイマー、トリマーあるいはプレポリマーが有している場合には急速に網状体を形成する。
【0096】
解放されたヒドロキシル官能基は本発明の化合物を利用する配合物中に存在する他の化合物とも反応してよい。即ち記載すべき例は、解放されたヒドロキシル官能基と反応しエステル又は酸エステルを生ずる酸性無水物又は酸性化合物である。
【0097】
ブロック化基の解離により遊離または解放されるイソシアネート官能基は、使用する架橋温度に依存して、特にアルコール、チオール、ウレタン等の不安定水素を含むいずれかの化合物と反応するだろう。
【0098】
別の利点は、ポリアルコキシル化アミン、特にポリエトキシル化アミンによる架橋基環を開裂する可能性であり、その結果良好な乳化特性を持つ縮合生成物を得ることができる。このタイプの化合物は引き続きの乳化重合反応、特にブロック化基の解離により遊離又は解放されるイソシアネート基との反応に於いて特に有用である。
【0099】
塩、好ましくはアミン塩、好ましくは弱酸塩も架橋により課される温度に依存しイソシアネート、及び/又はカルバミド官能基と反応するだろう。
塩に関しては、架橋温度が80℃未満の場合には2.5を超えるpKaを持つ弱酸塩が好ましい。より高い架橋温度の場合、3未満のpKaを持つ酸塩が利用できる。求核性であることから環の開裂ができるようになるイオンの交換及びアミンの放出が可能な塩基と反応性であるアミンの塩を中和できる化合物も導入できるだろう。注目すべき塩基は金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、第3アミン(トリエチルアミン、トリオ−シクラミン、N,N,−ジメチル−アミノエタノール等)、金属アルコキシド(ナトリウムメトキシド等)及び弱酸のアルカリ塩(酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等)である。
【0100】
アミン塩は、対応するアミンの反応性を低下させることによる改良された「ポットライフ」を持つという利点を有する。
【0101】
遊離イソシアネート基を更に含む本発明により修飾されたイソシアネート化合物を反応させるときにイソシアネートを注意して選び、アミンとイソシアネートとの反応、又はアミンとカーボネートとの反応の何れかを促進させる。この選択性は、温度、触媒又はアミン及び/又はイソシアネートの全体の立体的大きさを変えることで高めることができるだろう。
【0102】
化学的又は物理的方法によりアミンを回復することができるアミン前駆体化合物、例えば加水分解時に、カーボネート環を開裂できるアミンを解放するイミン、オキサゾリン、又はオキサゾリジンを利用することも好都合である。
【0103】
アミンのマスキングされた形態を構成し、加水分解時にアミン官能基を回復できるイソシアネート分子の特定例について言及すべきである。これらイソシアネートは単純イソシアネートである(分子当たり1イソシアネート官能基のみ)。
IPDIは好都合に選択されるだろう。
【0104】
マスキングされていてよいイソシアネート官能基及びカーボネート官能基を持つ本発明の製品は、非修飾されていない形態でも用いられるだろう。
【0105】
CO2含有量及び架橋反応によっては、驚くべきことにフィルム厚が100μmを越えず、また実施条件によって艶消し、サテン、あるいは光沢性の概観を表す塗料又はワニスの様な特別なコーティング剤である非膨張型コーティング剤が得られる。
【0106】
本発明による修飾されたイソシアネートは100℃を超える高温に於いて、CO2放出を伴いながらオキセタン化合物を提供する。これらオキセタン化合物はポリオール、又はポリアミン、好ましくはポリオールと共に現場でフィルム内にて架橋剤として利用できるだろう。
【0107】
アミンによりカーボネートを開裂した後に、ポリマーの調製に利用でき、又は例えばカーボネート官能基がポリオキシエチレン化アミンにより開裂される場合には自己乳化性にするか、あるいは、カーボネート官能基がアミノシリコーンまたはペルフルオロアミンにより開裂された場合には「引掻き耐性」又は「傷耐性」コーティングにする様な特性をポリマー内へ導入するために利用できるアルコール官能基を、少なくとも2つ含む誘導体が得られる。
【0108】
水又は塩基性水溶液によりカーボネート環が開裂すると、本発明のイソシアネート誘導体は架橋剤、特に第1級及び第2級アルコール官能基の存在による二重反応性を利用した架橋剤として利用できる4官能性ポリオールも提供することができる。
【0109】
一般に、本発明による修飾されたイソシアネート誘導体は高いコントロールされた反応性と高い架橋力という利点を持つが、これら特性は出発イソシアネートに僅かな分子量増加をもたらすアームの追加により得ることができる。
【0110】
同様に、ペンダントウレタンカーボネート官能基を含むポリイソシアネート誘導体は、ペンダントカーボネート官能基を含むアロファネートの形成を誘導するだろう。
【0111】
本発明の新規ポリイソシアネートの持つ多くの利点の一つは、例えば塗料の様なある種のコーティング剤の主要成分として有用であるポリマー及び/又は網状体の調製のベースとして機能することである。この様な場合、架橋可能なポリマーの硬度品質は、技術的及び機能的観点から所望される品質に含まれる。
【0112】
水性配合物の場合、本発明の架橋官能基を含むポリイソシアネートは、乳化特性を持つ界面活性剤又はポリオールの様な各種化合物により乳化され、又はポリアルキレンオキサイドの様な非イオン性官能基、又はパラヒドロキシ安息香酸(PHBA)、ジメチロールプロピオン酸、スルファミド酸及びリン誘導体の様な酸性イオン性官能基、あるいはN,N−ジアルキルヒドロキシルアルキルアミン、特にN,N−ジメチルエタノールアミン又はグアニジン誘導体の様な塩基性イオン性官能基をグラフト化することで水溶性にすることができる。
【0113】
グラフト化は可逆的(PHBA)又は不可逆的に実施されるだろう。
【0114】
本発明は、以下の実施例よりより明瞭となると共にその変形及びその他の利点も明らかになるだろう。
オクタノール試験
手順:
評価される保護されたマスキングされたNCO、約5mmol当量をマグネチックスターラーの付いたショットチューブ内に入れる。
2.5ないし3mlの1,2−ジクロロベンゼン(溶媒)及び等量の1−オクタノール(5mmol、即ち0.61g、マスキング剤と共に試験対象の触媒を伴ってもよい)を加える。
【0115】
次に、反応媒体を試験温度にする。続いて一定期間、通常特記ない限り6時間試験温度にて加熱し、イソシアネート官能基を脱ブロックし、即ち反応性にする。反応が終了したら、溶媒を真空下に蒸留して除き、残留物をNMR、マス及び赤外スペクトルにて分析する。
【0116】
これらデータより、1−オクタノールにより縮合されたマスキングされたイソシアネート官能基の百分率及び解放されたマスキング剤の百分率を評価する。
【実施例】
【0117】
実施例
例1: HDIブチルアロファネートの合成
4787gのHDIを6lの3つ口反応器に入れる。527.1gの1−ブタノールを45分間かけて加える。反応媒体をブタノール添加開始後45分後に温度が125℃になる様に加熱する。約1.3gのジブチル錫ジラウレートを加え、反応混合物の温度を140℃に上げる。
5時間反応させた後、測定したNCO力価は出発HDIが1.19であったのに対し0.786である。0.5mmHg真空下、140℃、流速400ないし1000g/時間で2回の連続蒸留で過剰のHDIを除去する。
蒸留物のNCO含有量は0.405、即ち17質量%であり、25℃の粘度は140mPa/sである。HDI含有量は0.4%である。
【0118】
例2:トリアゾール及びグリセリルカーボネートでマスキングされたHDI及びn−ブチルのアロファネートの合成
以下を連続してジャケット付き反応器に入れる:
−イソシアネート官能基含有量が0.405、即ち生成物100g当たりNCO官能基17質量%である例1のヘキサメチレンジイソシアネートブチルアロファネート350g;及び
−1,2,4−トリアゾール、51.4g。
反応混合媒体を20分間かけて113℃に達するよう加熱する。1,2,4−トリアゾールは完全に消費される。
この時点で83.6gのグリセリルカーボネートと3gのトリエチルアミンを加える。発熱が起こり、これが温度を131℃に上昇させる。次に反応を110℃にて約3時間続ける。
赤外分析より、遊離イソシアネート官能基が実質上無視できることが見いだされ、これら官能基がほぼ定量的に反応することが示される。
次に生成物を容器内に注ぎ、冷却する(488g)。
冷却された生成物は粘調な液体で、流れず、その粘度は25℃にて10000mPa/s超えるものである。
【0119】
例3:イソシアネート官能基の一部がトリアゾールでマスキングされており、イソシアネートの別の部分がグリセリルカーボネートで修飾されており、イソシアヌレート官能基を含む、ポリイソシアネートの合成。
以下を連続的に3口反応器内に加える:
−イソシアネート官能基含有量が0.525、即ち22質量%であるHDT(HDIトリマー)350g;
−1,2,4−トリアゾール63.2g、及び
−25分間反応後、トリエチルアミン1.5g。
1,2,4−トリアゾール添加時より混合物を加熱する。混合物は45分後に99℃の温度に達する。
この時点で、108gのグリセリルカーボネートと1.5gのトリエチルアミンを加える。
混合物の温度は123℃まで上昇し、その後遊離イソシアネート(NCO)官能基の力価が実質0になるまで、約1時間そのまま反応させる。
生成物を取り出し、冷却させる(得られる生成物;理論値、524.2g、実測値、517g)。冷却した生成物は固体であり、続いて粉砕したが、その潜在的イソシアネート官能基含有量は7.35質量%であり、カーボネート官能基(−O−C(O)−O)の含有量は10.48質量%である。修飾されたNCO/O−C(O)−Oのモル比は1である。
【0120】
例4:イソシアネート官能基がグリセリルカーボネートで修飾されている、イソシアヌレート官能基を含むポリイソシアネートの合成。
HDTトロネート300g及びグリセリルカーボネート184.4gを500mlの丸底フラスコに入れ、続いて反応媒体を86℃に加熱する。続いて生成物を取り出し、冷却後、それを破砕しNCO力価が0.001であり、そのカーボネート官能基(−O−C(O)−O)の含有量が19.3質量%、即ち生成物100g当たりのカーボネート官能基(−O−C(O)−O)0.3molである粉末を得る。
1H NMR分析より、修飾されたトリマー(ダイマーを含む)が54%、修飾されたビウレットが8.5%、遊離グリセリルカーボネートが0.39%存在することが示される。
生成物の特徴的な赤外バンドは次のとおりである:
COカーボネート:1798cm-1
COカルバメート:1721cm-1
COイソシアヌレートトリマー:1685cm-1
イソシアヌレート環:1468cm-1
CO−NHカルバメート:1531cm-1
NHカルバメート:3362cm-1
CH2Cl2媒体中ではアロファネートバンドが観察される;NHアロファネート:3369cm-1/NHカルバメート:3444cm-1
【0121】
例5:グリセリルカーボネートにより修飾されたHDIの合成
方法は例3と同様に実施される。HDI量は168gであり、グリセリルカーボネートの量は236gである。
80℃で5時間の後、残存するNCOの含有量は0.011である。100℃に更に2時間おいてから取り出し、冷却した後、粉末化された化合物の遊離NCO官能基の力価は0.001であり、又カーボネート官能基の力価は44.5%である。
【0122】
例6:
コハク酸グリセリルカーボネートモノエステルの合成
トルエン30ml、グリセリルカーボネート60.6g、無水コハク酸51.3gを連続して攪拌中の反応器内に加え、不活性雰囲気(窒素流)下に置く。
反応媒体を90℃にて6時間、120℃にて2時間加熱し、続いて2時間攪拌する。
その後、分液漏斗中に冷反応媒体の液体抽出を実施する。冷(10℃)0.5M重炭酸塩溶液500mlを、続いて酢酸エチル200mlを加える。有機相を除き、同一の冷(10℃)0.5M重炭酸塩溶液で2回洗浄する。
1MのHCl水溶液にて溶液のpHが酸性(pH=2)になるまで酸性化した後、水相を合わせる。次に水相を3回、500mlの酢酸エチルで抽出する。次に有機相を乾燥硫酸ナトリウム上で乾燥する。濾過後、溶液を真空下に濃縮し、白色の固体を得る。
反応収率は27%(収率は最適化されていない)である。
生成物のNMR分析は、生成物が以下の特徴的なバンドを有していることを示す:
1HNMR(DMSO):2.43及び2.65のコハク酸CH2/エステル官能基の酸素に対してαのCH24.16〜4.34/カーボネートに対してαのCH24.16〜4.34/カーボネートに対してαのCH25.01;
13CNMR(DMSO):28.7のコハク酸CH2/173.4の酸官能基のC=O/172.0のエステル官能基のC=O/154.8のカーボネート官能基のC=O/エステル官能基の酸素に対してαCH263.4/カーボネートに対してαのCH266.0/カーボネートに対してαのCH74.4。
生成物の構造は、赤外分析によっても確認される。
生成物の融点は102〜103℃(コフラーブロック)である。
【0123】
例7:
例6の化合物とHDTとの反応より得られる、ペンダントカーボネート官能基と実質的イソシアヌレート単位を含む樹脂の合成
使用したHDTはRhodia社より販売されているTolonateRHDTであり、これは以下に示す組成を持つヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)
のシクロ重縮合の化合物の混合物を含む。:
【表1】

真性トリマーは、イソシアヌレート環へとシクロ縮合している3個のHDI鎖から成る。
真性ダイマーはウレチジンジオン環へとシクロ縮合した2個のHDI鎖より成る。
トリマーオリゴマーに重質画分を加えたものは、3より多くのシクロ縮合HDI鎖と1より多くのイソシアヌレート環より構成される。TolonateRHDTは一般に生成物100g当たりNCO官能基として、遊離のイソシアネート官能基を22質量%の割合で含んでいる。
方法は以下の如く実施される:
ジブチルアミンを利用した逆力価測定法により測定されたその力価が、生成物100g当たりNCO官能基0.518molであるTolonateHDT14.77gを攪拌装置付きであり、窒素の不活性雰囲気下に置かれた反応器に入れる。等モル量の(モル比NCO/COOH=1)のコハク酸グリセリルカーボネートモノエステル(上記記載のようにして得た)を反応混合物に加える。トリエチルアミン(Et3N)をモノエステルのカルボキシル官能基に対し1mol%の割合で加える(モル比Et3N/COOH=0.01)。次に混合物を加熱し、110℃にて5時間攪拌する。二酸化炭素ガスの発生が観察される。
生成物を回収する。
得られた生成物は実際期待された反応生成物であり、以下の主要な特徴的な赤外バンドを有している:
2257cm-1の非常に弱いNCOバンド
1795cm-1のカーボネートC=Oバンド
1739cm-1のコハク酸エステルのC=Oバンド
1685及び1466cm-1のHDTイソシアヌレートバンド
1546cm-1のアミド−C=O−NH−バンド及び1640cm-1の第二級アミドのC=Oバンド
3350〜3250cm-1のNHバンド
【0124】
例8:
HDIダイマーを含むHDT組成物(TolonateRHDT)と例6の化合物との反応より得られるペンダントカーボネート官能基及び実質的にイソシアヌレート及びウレチジンジオン単位を含む樹脂の合成
HDT TolonateR組成物は例7の表に示すものである。以下の様にして得る:
1000gのHDIをコンデンサーカラムに接続された1lの反応器に加え、油槽中に加熱する。
反応媒体を1時間半160℃にて加熱する。次に10g(1質量%)のHMDZ(ヘキサメチルジシラザン)を加える。反応媒体を140℃にて30分間加熱し、続いて冷却する。温度が88℃に達した時点で、n−ブタノールを5.5g加える。1時間反応した後、生成物を真空下に蒸留して精製する。
重質画分はトリス−トリマー中に相溶化される。ビス−トリマーバルク(主要化合物)は、テトラマー(トリマー−ダイマー)及びイミノ−トリマーを含む。
得られた組成物は25℃にて509cpsの粘度を有する(509mPa.s)。
TolonateRHDT LV2は遊離のイソシアネート官能基をTolonateRHDT LV2製品100g当たりNCO官能基として0.544molの割合で含む。
更に14.8gのTolonate HDT LV2を用いて、上記例と同様に作業を進める。
同一モル比、即ちモノエステルのNCO官能基/COOH官能基の比=1及びEt3N官能基/COOH官能基のモル比=0.01を用いる。
得られた生成物は実際期待通りの反応生成物であり、以下の主要な特徴的なバンドを示す:
2257cm-1のNCOバンドは存在せず
1798cm-1のカーボネートC=Oバンド
1743cm-1のコハク酸エステルのC=Oバンド
1687及び1468cm-1のHDTイソシアヌレートバンド
1546cm-1のアミド−C=O−NH−バンド及び1640cm-1の第二級アミドのC=Oバンド
3350〜3250cm-1のNHバンド
【0125】
例9:
イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートトリマー(IPDT)と例6の化合物との反応より得られるペンダントカーボネート官能基及び実質的にイソシアヌレート単位を含む樹脂の合成
IPDTはイソホロンジイソシアネート(IPDI)それ自体でシクロ重縮合させて得た固形生成物(融点100〜115℃)であり、イソシアヌレート単位及び遊離イソシアネート官能基を含む。イソシアネートの力価は、100g生成物中のNCO官能基として0.409molである。
方法はCreanova Huels社の固形IPDT15.1gを用いて、上記例同様に実施される。
同一モル比、即ちモノエステルのNCO官能基/COOH官能基の比=1及びEt3N官能基/COOH官能基のモル比=0.01を用いる。
得られた生成物は実際期待通りの反応生成物であるが、未反応のイソシアネート官能基と遊離酸官能基を初期官能基に対し20mol%の割合で含み、そして以下の主要な特徴的なバンドを示す:
2257cm-1のNCOバンド
1788cm-1のカーボネートC=Oバンド
1735cm-1のコハク酸エステルのC=Oバンド
1693及び1446cm-1のIPDTイソシアヌレートバンド
1546cm-1にアミド−C=O−NH−バンド及び1640cm-1に第二級アミドのC=Oバンド
3350〜3250cm-1のNHバンド
3200〜2500cm-1の酸性OHバンド
【0126】
例10:
例6の化合物、1,2,4−トリアゾール及びTolonateRHDTの反応より得られるペンダントカーボネート官能基、1,2,4−トリアゾールでマスキングされたイソシアネート官能基、及び実質的にイソシアヌレート単位を含む樹脂の合成
方法は15gのTolonateRHDT(例6参照)、2.797gの1,2,4−トリアゾール及び8.77gのコハク酸グリセリルカーボネートモノエステルを用い、上記例と同様に実施される。COOH官能基/NCO官能基のモル比は0.5であり、トリアゾール官能基/NCO官能基のモル比は0.5であり、そしてEt3N官能基/COOH官能基のモル比は1%である。
得られた生成物は実際期待通りの反応生成物であり、以下の主要な特徴的なバンドを示す:
2257cm-1のNCOバンドは存在せず
1788cm-1のカーボネートC=Oバンド
1739cm-1のコハク酸エステルのC=OバンドとトリアゾールでブロックされたC=O
1684及び1467cm-1にHDTイソシアヌレートのバンド
1546cm-1の観察が困難なアミド−C=O−NH−バンド、1640cm-1に第二級アミドのC=Oバンド
3337、3126、1531及び1506cm-1のトリアゾールブロッキングのバンド。
得られた生成物は一時的に1,2,4−トリアゾールにてマスキングされているイソシアネートバンドを50%含むが、これは約130〜140℃の温度で熱により再生されるだろう。残りの50モル%イソシアネート官能基は酸性官能基との反応によりアミド結合に転化され、イソシアヌレート単位の脂肪族鎖(CH26)とスクシニルカーボネート鎖との結合を形成する。
本化合物は、1,2,4−トリアゾール/カーボネート官能基によりマスキングされたNCOのモル比が1であることを特徴とする。
【0127】
例11
グルタル酸グリセリルカーボネートモノエステルの合成
方法を、無水コハク酸を等モルの無水グルタル酸に置き換えて、例6と同様に実施する。
グルタル酸グリセリルカーボネートモノエステルは収率52%で固体化合物の形で得られる。本生成物は例6の化合物の誘導体と同じ特徴的な赤外バンドを有している。
【0128】
例12〜15:
例6の化合物とイソシアヌレートポリイソシアネートとの反応より得られるペンダントカーボネート官能基及び実質的にイソシアヌレート単位を含む樹脂の合成
方法を、例6の化合物を等モルの例11の化合物(グルタル酸グリセリルカーボネートモノエステル)に置き換えて、例7と同様に実施する。
得られた生成物は期待された生成物であり、赤外分析から確認される。
主要な特徴的な赤外バンドは、例7〜10の化合物それぞれに示されたものである。
【0129】
例16:
TolonateRHDT、トリメチロールプロパン、及びカルボニルジイミダゾールの反応より得られるペンダントカーボネート官能基及び実質的にイソシアヌレート単位を含む樹脂の合成
トリメチロールプロパン(134g)1モル、カルボニルジイミダゾール(165g)1モル及び100gのSolverssoR100を窒素の不活性雰囲気下に反応容器内に加える。攪拌されている反応媒体を90℃で5時間加熱する。
TolonateRHDT600gを熱した反応混合物中に加え、反応媒体を75℃にて一晩攪拌し続ける。反応媒体の赤外分析は、イソシアネートバンドが実質的に消失していることを示す。
生成物の赤外分析は、期待された生成物が実際に得られていること、即ちイソシアネート官能基の約2/3がイミダゾールによりブロックされ、イソシアネート官能基の約1/3がトリメチロールプロパンカーボネートのカルバメートの形でブロックされているポリイソシアヌレート樹脂が得られたことを示す。
即ち、イソシアネート官能基のための一時的な保護基として利用できる脱離基により活性化されるカルボニル化合物を利用する1段階工程にて熱架橋型樹脂を得ることができることが示されている。
【0130】
例17:
9,10−ジヒドロキシステアリン酸カーボネートの合成
10gの9,10−ジヒドロキシステアリン酸を反応器に加える。1規定(1N)の水酸化ナトリウムを1モル量加え、全てのカルボキシル基をナトリウム塩の形で中和する。100mlのN,N−ジメチルフォルムアミドを加え、混合物を80℃にて1時間攪拌する。溶媒の90%を真空下に蒸発させ、全ての水を除く。
次に100mlの乾燥N,N−ジメチルフォルムアミドと5.22gのカルボニルジイミダゾールを加え、混合物を80℃にて一晩、窒素流下に攪拌する。
続いて生成物をロータリーエバポレーターにて、真空下に濃縮、乾燥させN,N−ジメチルフォルムアミドの95%を除く。
酸性水溶液を加え、生成物をナトリウム塩から、pH試験紙により測定値が2になる様に対応する酸に転化する。次に酸性カーボネートを3回180mlのトルエンで抽出する。
有機トルエン相を合わせ、溶媒を真空下に蒸発させて12.3gのペースト状の生成物を得る。
生成物の構造は1H NMR分析(DMSO)にて確認される。
カーボネート官能基及びカルボン酸基の存在も実際に確認される。
【0131】
例18:
ペンダントカーボネート官能基及びイソシアヌレート単位を含む樹脂の合成
TolonateRHDT(製品100g当たりNCO官能基0.518mol)及び12gの9,10−ジヒドロキシステアリン酸カーボネートを、NCO官能基/COOH官能基のモル比が1になる様に反応器内に加える。カルボン酸COOH基に対し1mol%のトリエチルアミンを加える。混合物を窒素流下、95℃にて8時間攪拌し続ける。
得られた生成物は、期待通りの生成物である。それは以下の特徴的なバンドを有する:
2257cm-1のNCOバンドは存在せず
1788cm-1のカーボネートC=Oバンド
1739cm-1のコハク酸エステルのC=Oバンド
1685及び1466cm-1のHDTイソシアヌレートのバンド
1546cm-1のアミド−C=O−NH−バンド及び1640cm-1の第二級アミドのC=Oバンド
3350〜3250cm-1のNHバンド。
【0132】
例19:
1,9,10−トリヒドロキシオクタデカンの合成
100gのオレイルアルコールを出発材料に用いて、1948年6月15日の米国特許第2 443 280号明細書に開示の方法を利用する。
生成物は回収率25%で回収される。
【0133】
例20:
マスキングされたイソシアネート官能基及びペンダントカーボネート官能基を含む熱架橋性ウレタン樹脂の合成
例19の1,9,10−トリヒドロキシオクタデカン0.1molと100mlの2−(1−メトキシプロピル)アセテートを攪拌機を装備した反応器内に窒素雰囲気下に加える。次にNCO力価が100g当たり0.518molである0.1molのTolonate HDTを反応媒体中に加える。反応媒体の温度を45ないし50℃の範囲の温度にする。攪拌しながらの反応を1時間行った後、0.12molのカルボニルジイミダゾールを加える。反応媒体を50℃にて4時間攪拌し、約85℃の温度にして一晩攪拌しながら放置する。
次に反応媒体を放置して冷却して、遊離イソシアネート官能基を含まないことならびにイミダゾール、カルバメート官能基、及び主に環式カーボネート官能基によりマスキングされたイソシアネート官能基の存在を特徴とするウレタン樹脂の粘性組成物を得る。
赤外分析は以下の特徴的なバンドの存在を示す:
2257cm-1のNCOバンドは存在せず
1785cm-1のカーボネートC=Oバンド
カルバメートバンド(1720cm-1)及び約1735cm-1のイミダゾールブロッキングのバンド
1691及び1467cm-1のHDTイソシアヌレートのバンド
【0134】
例21:
遊離イソシアネート末端官能基を含むプレポリマーの調製
以下のものを順次3口反応器内に加える:
−100gのK−Flex188脂肪族ポリオール(King Industries社製ポリエステル)(6.97% OH/100g、即ち0.41molOH/100g);
−1680gのHDI(5mol)
反応媒体を80℃に加熱する。反応媒体をN2下、80℃にて5時間攪拌し、次に高真空下、蒸留して過剰のHDIを除く。
得られた生成物は、100g当たりのNCO力価0.22molNCO、即ち生成物100g当たり9.24%のNCOを有するイソシアネート末端官能基を含むウレタンプレポリマーである。
【0135】
例22:
アミノ末端官能基を含むプレポリマーの合成
例21のNCO末端官能基を含むプレポリマー150gを攪拌しながら反応容器に加え、窒素の不活性雰囲気下に置く。
5−アミノ−1−ペンタノール塩酸0.33mol及びトルエン600gを加える。
反応媒体を0.1%ジブチル錫ジラウレートの存在下にNCO力価が1%未満(ジブチルアミンとの反応によるNCO官能基分析及びHClによる残存アミンの分析による方法)になるまで60℃で加熱する。
NH2力価が約0.04molNH2/100gであるアミン塩酸官能基を含むプレポリマーの粘性なトルエン溶液を得る。
【0136】
例23:
コーティングの形成
実施例22のポリマー溶液100g(塩酸塩の形のアミン官能基0.04mol)を撹拌装置付き反応器に入れる。次にアミン官能基/O−C(=O)−O−官能基のモル比が1になるように例3の生成物20gを加える。0.04molのトリエチルアミン及び200gのトルエンを加える。
混合物を30分間室温にて攪拌する。
得られた混合物をガラスプレート上に置き、50μmの厚さのフィルムを形成させ、続いて50℃のオーブンに30分間入れ、更に100℃20分間、及び140℃30分間置く。
焼成後、良好な機械特性を有する透明な架橋したコーティングを得る。
本例は、本発明の生成物からコーティングが得られることを示している。
しかし、調合条件(溶媒の選択、他ポリオール又は他アミンとの混合物、比(NCO/OH)、(アミン/O−C(=O)−O−官能基)の最適化、使用するアクリルポリオール又はポリエステルの種類、イソシアネートの種類)を最適化することで、所望のニーズにコーティングの特性を合わせることができる。
【0137】
例24:
イミダゾール及びトリメチロールプロパンカーボネートにより保護されたHDTの合成
以下のものを反応容器に加える:
−134gのトリメチロールプロパン(1mol)
−1モルのカルボニルジイミダゾール(165g)
そして次に反応混合物を80℃にて5時間加熱する。
600gのHDTを高温反応混合物に加え、80℃にて5時間NCOバンドが消失するまで攪拌する。
これにより、NCO官能基の2/3がイミダゾールにより保護され、1/3がグリセリルカーボネートにより保護されているTolonate HDT誘導体900gは単一操作により直接得られる。
即ち、本誘導体は、NCO官能基をマスキングする作用物質として機能するであろう脱離基(イミダゾール、トリアゾール、フェニル)にて活性化されるカルボニル誘導体を利用して、単一操作により本誘導体を得ることができることが示される。
【0138】
以下、本発明の様々な実施形態を挙げる。
【0139】
実施形態1.
下式Iの修飾されたイソシアネート:
【化5】

(式中;
−Isoは(ポリ)イソシアネート残基であり(イソシアネート基の転化後);
−Xはイソシアネート基と反応できる原子又は原子団を表し;
−Aは、結合であるか、又は、1ないし30、好都合には1ないし18、そして好ましくは1ないし5個の炭素原子を含む直鎖型、分枝型、あるいは環式の炭化水素をベースとした鎖を表し;
−Qは、結合、酸素又は硫黄原子、又はAについて述べた炭化水素をベースとする鎖を表し;
−Zは結合、又はAについて述べた炭化水素をベースとした鎖を表し;
−Yは結合、又はAについて述べた炭化水素をベースとした鎖を表し;
ただし基Z及びYは同時に結合を表すことはなく;
−Wは結合、酸素又は硫黄原子、又はAについて述べた炭化水素をベースとする鎖を表し;
−A、Q、及びWは同一でもよく、または互いに異なるものでもよい)。
【0140】
実施形態2.
式中のXが以下のグループから選択される前記実施形態1の修飾されたイソシアネート:
−O、
−S、
=N、
−NR(式中、Rが水素原子であるか、又は、一般に1ないし12個、好ましくは1ないし5個の炭素原子を含み、そして上記のヘテロ原子もしくはヘテロ基でさえぎられている又は上記置換基を含む炭化水素をベースとする鎖を表す)、
【化6】

(式中、R’が1個以上のヘテロ原子(特に元素周期律表のIVA、VA及びVIA族)、例えば、O、SもしくはSi、又は特に−N=及び−NR−(Rは上記に同じ)より選択されるヘテロ基によりさえぎられており及び/又は1個以上の上記置換基により置換されている、上記のとおりの4−ないし10−員の炭化水素をベースとする鎖であり、鎖R’がNHと共に窒素環、好都合には多窒素環を形成し、そして好ましくは二窒素環、例えば、ピペラジノ環を形成する)、
−CO−NR、
−NR−COO、
−COO、
【化7】

−NH−CO−NH、
−NH−CO−NR、
(式中、Rは上記に同じである)。
【0141】
実施形態3.
式中のXが酸素原子である、前記実施形態1の修飾されたイソシアネート。
【0142】
実施形態4.
式中のAが−CH2−基を表す、前記実施形態1又は2の修飾されたポリイソシアネート。
【0143】
実施形態5.
式中のYが−CH2−基を表す、前記実施形態1〜4のいずれかの修飾されたイソシアネート。
【0144】
実施形態6.
式中のZが結合又は−CH2−基を表し、好ましくは結合を表す前記実施形態1〜5のいずれかの修飾されたイソシアネート。
【0145】
実施形態7.
式中のW及びQが結合を表す、前記実施形態1〜6のいずれかの修飾されたイソシアネート。
【0146】
実施形態8.
下式により表される、前記実施形態1〜7のいずれかの修飾されたイソシアネート。
【化8】

(式中、Isoが前記実施形態1のとおりである)
【0147】
実施形態9.
更に少なくとも1個の他の遊離イソシアネート官能基及び/又はマスキング剤又は熱不安定性マスキング剤混合物によりマスキングされた少なくとも1個の他のイソシアネート官能基を含む、前記実施形態1〜8のいずれかの修飾されたイソシアネート。
【0148】
実施形態10.
マスキング剤が、置換されているか又は未置換である、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール及び1,2,4−トリアゾールより選択される、前記実施形態9の修飾されたイソシアネート。
【0149】
実施形態11.
110℃に於けるオクタノール試験にて、
比D=(110℃で、最初にブロック化していないマスキング剤の百分率)/(110℃で、最終的にブロック化していないマスキング剤の百分率)
が4/3より大きく、好都合には1.5より大きく、好ましくは2より大きいように選択される少なくとも2種のマスキング剤を含む、前記実施形態9又は10のいずれかの修飾されたイソシアネート。
【0150】
実施形態12.
マスキング基がそれぞれオキシム及びトリアゾール(1,2,3−トリアゾール又は1,2,4−トリアゾール)であり、オキシムは好都合にはメチルエチルケトキシム、メチルアミルケトキシム、メチルピルベートオキシム又はエチルピルベートオキシムである、前記実施形態11の修飾されたイソシアネート。
【0151】
実施形態13.
以下より選択される、前記実施形態1〜12のいずれかの修飾されたイソシアネート:
−ジイソシアネート;
−イソシアネート化合物、特にトリマーとしても知られるイソシアヌレート基を含むポリイソシアネート
−イソシアネート誘導体、特にダイマーとしても知られるウレチジンジオン基を少なくとも1個含むポリイソシアネート
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のビウレット基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のカルバメート基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のアロファネート基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のエステル基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のアミド基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個の尿素官能基を含むポリイソシアネート
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のイミノシクロオキサジアジンジオン官能基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のシクロオキサジアジントリオン官能基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に少なくとも1個のマスキングされたイソシアネート基を含むポリイソシアネート;
−イソシアネート誘導体、特に上記の基、特に上記の1種以上の基の組合せを含み、特にイソシアヌレート基の組み合せを含む、ポリイソシアネート。
【0152】
実施形態14.
ヘキサメチレンジイソシアネートより得られる、前記実施形態1〜13のいずれかの修飾されたイソシアネート。
【0153】
実施形態15.
少なくとも幾つかのイソシアネート官能基を含む誘導体からなり、好ましくは少なくとも100質量%ないし1質量%、好都合には100質量%ないし30質量%のイソシアネート官能基が、下記一般式II
【化9】

(式中、X、A、Q、Y、Z及びWは前記実施形態1で述べたとおりである)の化合物により修飾されており、そして、少なくとも1質量%、好都合には少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%そして99質量%以下、好都合には70質量%以下のイソシアネート基が、前記実施形態9ないし12のいずれかで述べた少なくとも1種のマスキング基によりマスキングされており、そして、イソシアネート官能基の0ないし99質量%、好ましくは0ないし70質量%が遊離イソシアネート官能基である、前記実施形態1の修飾されたイソシアネート。
【0154】
実施形態16.
少なくとも幾つかのイソシアネート官能基を含むジイソシアネート誘導体からなり、好ましくは100質量%ないし1質量%、好ましくは100質量%ないし30質量%のイソシアネート官能基が前記実施形態15で述べた式IIの架橋基により修飾されており、そして少なくとも1質量%、好都合には少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%そして99質量%以下、好都合には70質量%以下のイソシアネート官能基が少なくとも1種のマスキング基により修飾されている、前記実施形態1〜15のいずれかの修飾されたイソシアネート。
【0155】
実施形態17.
好ましくは真性イソシアネート(3つのイソシアネートモノマー分子及び所望により他のモノマーの理論的(シクロ)三量体化から得られ、イソシアヌレート及び/又はビウレット環を含む)である多官能性イソシアネート三縮合体、及び、アロファネート及び/又はダイマーの混合物からなり、少なくとも幾つかの、少なくとも1質量%ないし100質量%、好都合には30質量%ないし100質量%のイソシアネート官能基が前記実施形態15で述べた架橋基により修飾されているイソシアネート官能基を含む、前記実施形態1〜16のいずれか1項の修飾されたイソシアネート。
【0156】
実施形態18.
幾つかの種の多官能性イソシアネート三縮合体とアロファネート、ウレチンジオン又はダイマーの物理的混合物からなり、前記イソシアネートが前記実施形態15で述べた架橋基により修飾されているイソシアネート基を100質量%ないし1質量%、好都合には70質量%ないし1質量%含み、そしてマスキング基によりマスキングされたイソシアネート基を1質量%ないし99質量%、好都合には5質量%ないし70質量%含む、前記実施形態1〜17いずれかの修飾されたイソシアネート。
【0157】
実施形態19.
前記実施形態15記載の一般式IIの化合物により修飾されているイソシアネートからなり、遊離イソシアネート基及び/又はマスキングされたイソシアネート基を含み、更にアロファネート及び/又はウレチンジオン基も含む、前記実施形態1〜18のいずれかの修飾されたイソシアネート。
【0158】
実施形態20.
a)ポリイソシアネートであってよく、及び/又は、カルバメート、尿素、ビウレット、ウレチジオン、イソシアヌレート、ウレタン及びアロファネート基から選ばれる基を含むイソシアネートと、前記実施形態15記載の一般式IIの化合物とを反応させること;及び
b)得られた生成物を単離すること、
の工程を含む、前記実施形態1〜19のいずれかの修飾されたイソシアネートの製造方法。
【0159】
実施形態21.
1)ポリイソシアネートであってよく、及び/又はカルバメート、尿素、ビウレット、ウレチジオン、イソシアヌレート、ウレタン及びアロファネート基から選ばれる基を含むイソシアネートと、前記実施形態12記載の一般式IIの化合物とを反応させること;及び
b)少なくとも1種のマスキング性化合物と同時に又は順次に反応させること;又は
2)イソシアネートと前記実施形態12記載の一般式IIの化合物及び少なくとも1種のマスキング性化合物とを同時に反応させること;及び
b)得られた生成物を単離すること、
の工程をいずれかの順序で含む、マスキングされたイソシアネート官能基を含む前記実施形態1〜19のいずれかの修飾されたイソシアネートの製造方法。
【0160】
実施形態22.
非膨張型薄膜コーティング、特に塗料又はワニスの製造のための前記実施形態1〜19の化合物の使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、ビシナルヒドロキシ化合物を活性カルボニル化剤と反応させることによって得られる少なくとも1種の環状カーボネートとを反応させ、
次いで未反応イソシアネート基をマスキング剤でマスキングする
ことによって得られる修飾されたポリイソシアネート。
【請求項2】
前記ポリイソシアネートがイソシアヌレート、ウレチジンジオン、ビウレット、カルバメート、アロファネート、エステル又はアミド官能基を少なくとも1個含むことを特徴とする、請求項1に記載の修飾されたポリイソシアネート。
【請求項3】
前記ポリイソシアネートが尿素、アミノシクロオキサジアジンジオン又はシクロヘキサジアジントリオン官能基を少なくとも1個含むことを特徴とする、請求項1に記載の修飾されたポリイソシアネート。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートが多官能性三縮合体、アロファネート、ビウレット若しくはウレチンジオン又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の修飾されたポリイソシアネート。
【請求項5】
前記三縮合体が3つのイソシアネートモノマーの環状三量体化によって得られたものであることを特徴とする、請求項4に記載の修飾されたポリイソシアネート。
【請求項6】
前記ポリイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートから得られたものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の修飾されたポリイソシアネート。
【請求項7】
前記ビシナルヒドロキシ化合物がグリセロール、9,10−ジヒドロキシステアリン酸又は1,9,10−トリヒドロキシオクタデカン又はトリメチロールプロパンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の修飾されたポリイソシアネート。
【請求項8】
前記の活性カルボニル化剤がカルボニルジイミダゾール、カルボニルビス(1,2,4−トリアゾール)、カルボニルビス(メチルエチルケトキシム)又はN,N−ジスクシンイミジルカーボネートであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の修飾されたポリイソシアネート。
【請求項9】
前記環状カーボネートがグリセリルカーボネート、グルタル酸グリセリルカーボネートモノエステル、トリメチロールプロパンカーボネート、9,10−ジヒドロキシステアリン酸カーボネート又は1、9,10−トリヒドロキシオクタデカンカーボネートであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の修飾されたポリイソシアネート。
【請求項10】
前記マスキング剤がイミダゾール、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール又は1,2,4−トリアゾールであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の修飾されたポリイソシアネート。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の修飾されたポリイソシアネートの製造方法であって、
(a)少なくとも1種の前記ポリイソシアネートを少なくとも1種の前記環状カーボネートと反応させる工程、
(b)工程(a)で得られた生成物を少なくとも主の前記マスキング剤と反応させる工程、及び
(c)工程(b)で得られた生成物を回収する工程:
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
非膨張型コーティングの製造のための請求項1〜10のいずれかに記載の修飾されたポリイソシアネートの使用。

【公開番号】特開2012−21169(P2012−21169A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−235170(P2011−235170)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【分割の表示】特願2000−574586(P2000−574586)の分割
【原出願日】平成11年10月1日(1999.10.1)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】