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修飾グラフェン、膜、及び成形体
説明

修飾グラフェン、膜、及び成形体

【課題】低温で導電性を発現し、大面積での塗布性膜に適した、水系溶媒への分散性が高いグラフェンシート、及び該グラフェンシートを含有する液状組成物、また、該グラフェンシートからなる膜、該グラフェンシートを含有する成形体を提供すること。
【解決手段】スルホ基を有するフェニルヒドラジンで化学修飾された修飾グラフェンシート、及びスルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体で修飾されたグラフェンシートを含有する液状組成物、さらには、該修飾グラフェンシートからなる膜、及び該修飾グラフェンシートを提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体により化学修飾された修飾グラフェン、該修飾グラフェンを用いて構成されるグラフェンシート、該グラフェンシートからなる膜に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンとは、グラファイトを構成する単層シートのことであり、ベンゼン環が同一平面に規則的に並んだ原子一層の厚みを有するシートである。近年、グラフェンが単離されて、その物性が測定されるに伴い(非特許文献1、2)、その高い電子伝導性や量子力学的効果に基づく様々な超高速エレクトロニクスデバイスやセンサ、透明導電膜などへの応用、また、種々の樹脂とのコンポジットとして高熱電導材料や高強度材料への応用が提案されている。
【0003】
グラフェンの製造方法としては、機械的剥離法と化学的剥離法が良く知られており、たとえば機械的剥離法として、HOPGなどの高配向グラファイトの薄片若しくは、グラファイトの単結晶を、粘着テープを用いて剥離劈開を繰り返し、粘着テープに転写されたグラフェン積層体をSiO/Si基板上に擦り付ける。このようにしてSiO上に転写されたグラフェン単層膜および複数層のグラフェン積層膜が製造される。
【0004】
本方法によれば、簡便に良質なグラフェンを得ることができるが、粘着テープの接着−剥離工程を繰り返した後、光学顕微鏡や、AFM、SEM等を用いて、慎重にグラフェンを探し、選択する必要があるため、生産性に乏しく、工業的に適した方法ではなかった。例えば、この方法を用いて作製したグラフェンを用いて大面積の透明導電膜を作製したり、樹脂とのコンポジットを形成することは、実用的観点から鑑みて困難である。
【0005】
これに対し、グラフェンを効率的に得る方法として、化学的剥離法が知られている。化学的剥離法は、グラファイトを強酸で酸化して酸化グラファイトとし、この酸化グラファイトを水や有機溶媒に分散させて超音波を印加することで剥離が起こり、単層〜複数層のグラフェンが得られる。この方法に於いて得られるものは、酸化グラフェンと呼ばれ、酸化によって、グラファイト中のグラフェンシート間の層間距離を拡張することで、機械的剥離法に比べて、大量にグラフェンを製造することが可能であるが、酸化によって、炭素−炭素二重結合が切断されるため、電子材料用途に適したグラフェンを得るためには、高温での熱処理やヒドラジン等の還元剤の使用が必要であった。例えば、酸化グラフェンの分散液を石英基板上にディップコーティングした後、1100℃以上で加熱還元して透明導電膜を作成する方法が(非特許文献3)に開示されているが、この方法では、酸化グラフェンからグラフェンへの還元に1100℃以上の加熱を必要とするために、高温での耐熱性を有する基材しか用いることができず、基材選択性に乏しいことが問題であった。
【0006】
一方、酸化グラフェンの分散液を基材上にスピンコートしてグラフェン酸化物の薄膜を作製し、ヒドラジン蒸気で還元を行う方法も開示されている。この方法では、加熱に比べて低い温度で還元を行うことができるが、ヒドラジンは毒性が高く、慎重な取り扱いを要するとともに、低温処理では充分な導電性を得ることができず、ヒドラジン還元の後に、400℃で熱処理を行っても、1100℃での熱還元と比較して導電性が低く、より高温での処理が必要であることが知られている(非特許文献4)。
【0007】
低温処理で導電性を発現させるためには、膜作製や種々の樹脂とのコンポジット形成前に、酸化グラフェンを予め還元しておくことが有効であるが、分散液中でヒドラジン等を用いた還元を行うと、グラフェンの凝集が起こり、安定な分散液を得ることができず、均一な膜を作製したり、コンポジットを形成することが困難となるという問題がある。
【0008】
これに対し、予め水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)などを用いて還元した酸化グラフェンを、スルファニル酸のアリルジアゾニウム塩でスルホン化し、溶媒中での分散性を確保した後、さらにヒドラジンを用いた還元を行う方法が開示されている(特許文献1)。この方法によれば、グラフェンシートへのスルホ基の導入によって、水系溶媒に対する分散性が高まり、さらに、グラフェンシートから突き出たフェニル環の存在によって、π−πスタッキングによるグラフェンシートの凝集を抑制することができるため、還元グラフェンシートの安定な水系分散液を与えることが可能である。しかしながら、この技術は、基本的にグラフェンシートの水系溶媒への分散性の確保と還元を複数のステップを経て行う方法であり、実用上煩雑な方法であった。
【0009】
一方、フェニルヒドラジンを用いて酸化グラフェンを修飾することにより、一段階でグラフェンシートの凝集抑制と有機溶媒への分散性を付与する方法も開示されている(非特許文献5)。この方法で得られるグラフェンシートは、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、プロピレンカーボネートなどの有機溶媒に分散することができるが、水系溶媒には分散せず凝集する。また、これらの溶媒は比較的沸点が高く、溶媒の蒸発が遅いため、これらの溶媒を用いたグラフェンシート分散液は、塗布製膜性に劣り、透明導電膜など、均一な膜を作製する用途に用いることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2009/143405号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】K.S.ノボセロフ(K.S.Novoselov)等著、サイエンス(Science)、306巻、2004年、666頁
【非特許文献2】K.S.ノボセロフ(K.S.Novoselov)等著、プロシーディングス オブ ナショナル アカデミイ オブ サイエンス(Proceedings of the National Academy of Sciences)第102巻、2005年、10451頁
【非特許文献3】X. ウォン(Xuan Wang)等著、ナノレターズ(Nano Letters)第8巻、2008年、323頁
【非特許文献4】H.A.ベチェッリル(H.A.Becerril)等著,エーシーエス ナノ(ACS Nano)第2巻、2008年、463頁
【非特許文献5】V.H.ファム(V.H.Pham)等著、ケミカル コミュニケーションズ(Chemical Communications)第46巻、2010年、4375頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
即ち、本発明の目的は、低温で導電性を発現し、大面積での塗布性膜に適した、水系溶媒への分散性が高いグラフェンシート、及び該グラフェンシートを含有する液状組成物、また、該グラフェンシートからなる膜、該グラフェンシートを含有する成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明者らは、鋭意努力を重ねることによって、スルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体を用いた酸化グラフェンの修飾によって、塗布性膜性に優れる水系溶媒への分散安定性と、低温での導電性発現を有するグラフェンシートを開発するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、スルホ基を有するフェニルヒドラジンで化学修飾された修飾グラフェンシート、及びスルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体で修飾されたグラフェンシートを含有する液状組成物、さらには、該修飾グラフェンシートからなる膜、及び該修飾グラフェンシートからなる成形体に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低温で導電性を発現できるため、基材の選択性が高く、かつ塗布分散性に優れるため、大面積のグラフェン透明導電膜を基材上に形成可能である。また、溶媒分散性に優れるため、種々の樹脂と混合でき、導電性のコンポジットを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、以下の各項目から構成される。
1.スルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体により化学修飾された修飾グラフェン、
2.1.に記載の修飾グラフェンを用いて構成される修飾グラフェンシート、
3.厚さが0.1nm〜30nmである2.に記載の修飾グラフェンシート、
4.2.又は3.に記載の修飾グラフェンシートを含有する液状組成物、
5.2.又は3.に記載の修飾グラフェンシートからなる膜、
6.修飾グラフェンシートからなる膜がパターニングされた膜であることを特徴とする5.に記載の修飾グラフェンシートからなる膜、
7.2.又は3.に記載の修飾グラフェンシートを用いて得られる成形体、
8.5.又は6.に記載の膜を用いた導電性膜、
9.(1)グラファイトを酸化して得られる酸化グラフェンを溶媒中に展開して、酸化グラフェンの分散液を得る工程、
(2)前記酸化グラフェンの分散液中にスルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体を添加し、酸化グラフェンとスルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体とを反応させる工程、
を有する1.に記載の修飾グラフェンの製造方法。
【0017】
本発明のスルホ基を有するフェニルヒドラジンで修飾されたグラフェンシートは、酸化グラフェンの水系分散液にスルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体を混合し、反応させることによって得ることができる。なお、本発明においてグラフェンシートとは、グラフェン単層体のシートに加えて、グラフェン単層体が複数積層したグラフェン積層体シートも含む。
【0018】
<酸化グラフェンの合成方法>
酸化グラフェンの水系分散体は、従来公知の方法によって製造が可能である。例えば、Brodie法、Staudenmaier法、Hummer法など、公知慣例の方法により酸化グラファイトを合成し、これを溶媒中に展開して超音波照射を行うことでグラフェンシートの剥離を起こさせ、酸化グラフェンの分散液を得ることができる。
【0019】
具体的には、例えばHummer法では、グラファイトを濃硫酸中に浸漬し、硝酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムを加えた後、過酸化水素を加えて反応し、酸化グラファイトを得ることができる。酸化グラファイトでは、上記反応を通じて、sp炭素がsp炭素に変化して、水酸基やエポキシ基が生成し、グラフェンシートの層端にはカルボニル基、及びカルボキシル基が形成される。このため、酸化グラファイトを水系溶媒中に展開すると、溶媒分子が層間に挿入され、層方向の剥離が起こりやすくなる。
【0020】
グラファイトを酸化した後は、反応液中に残存する酸化剤や酸化剤由来のイオン成分を除去する必要があり、水やアルコールを用いて洗浄を行うことができる。洗浄操作は、公知慣用の方法を用いれば良く、デカンテーション、ろ過、遠心分離、透析、イオン交換などの方法を単独、若しくは複数組み合わせて行うことで精製を行うことができる。
【0021】
精製を行った酸化グラフェンの水系分散液は、超音波照射を行うことで、剥離を促進し、酸化グラフェンを得ることができる。酸化グラフェンの水系分散液は、さらに遠心分離操作を行うことによって、充分剥離していない酸化グラファイトを除去しておくと良い。非剥離の酸化グラファイトを除去した後、該水分散液の遠心分離操作を行うことによって、酸化グラフェン水系分散液の濃縮を行うことが可能である。
【0022】
本発明に於いて、酸化グラフェンを分散させる水系溶媒としては、水を含む極性溶媒であることが好ましく、例えば、水と、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパーノールから選ばれる1種、若しくは2種以上の混合液を挙げることができる。これら溶媒の水に対する濃度は、酸化グラフェンの凝集を抑制する観点から、50%以下であることが好ましく、20%以下であることが、より好ましい。
【0023】
本発明に於いて、酸化グラフェンの原料であるグラファイトには特に制限はなく、天然グラファイト、合成グラファイトのいずれをも好適に用いることができる。合成グラファイトとしては、ガス状炭素源の積層によって得られる高配向性グラファイト(例えば、ユニオンカーバイド社・HOPG−R)、ポリイミドなどの高分子をグラファイト化して用いられるグラファイト(例えば、(株)カネカ製・グラファイトシート)、溶融金属溶媒から析出させるリン片状グラファイトなどを用いることができる。また、グラファイトの層間に種々の物質を予めインタカレートしたグラファイトも好適に用いることができ、この様なグラファイトとしては、例えば、膨張黒鉛及び膨張化黒鉛を挙げることができる。また、グラファイトをインタカレーターの溶液に分散させて、分散液中において黒鉛とインタカレーターを反応させる公知慣用の方法を用いて製造したグラファイト層間化合物を用いても良い。
【0024】
このようなグラファイト層間化合物のインタカレーターとしては、特に限定されず、例えば、酸、酸化剤、金属、金属塩などが挙げられ、酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸が、また、酸化剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、塩素酸カリウム、臭素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウムなどが挙げられる。金属としては、例えばカリウム、ナトリウムなどが挙げられ、金属塩としては、例えば、塩化銅、塩化鉄、塩化銀、塩化アルミニウムなどを挙げることができる。これらのインタカレーターは、それぞれ、単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0025】
<修飾グラフェンシート>
本発明の修飾グラフェンシートは、単層、若しくは複数層のグラフェンシートがスルホ基を有するヒドラジン誘導体によって修飾されたものであって、その厚みが0.1nm〜30nmであることが好ましく、0.1nm〜10nmであることがより好ましい。特に、膜厚が0.1nm〜5nmの修飾グラフェンシートは、透明導電膜の作製に好適に用いることができる。得られた修飾グラフェンシートが単層であるか複数層であるかは、透過型電子顕微鏡やAFMによりグラフェンシートを観察することで確認でき、修飾グラフェンシートの厚みは、修飾グラフェンシートをシリコンウェーハーやマイカ上にのせた状態でAFMにより測定すれば良い。
【0026】
本発明の修飾グラフェンは、前記方法によって得られた酸化グラフェンの水系分散液中にスルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体を添加することによって、容易に行うことができる。本発明において、酸化グラフェンを修飾するために用いる、スルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体としては、例えば、2−ヒドラジノベンゼンスルホン酸、3−ヒドラジノベンゼンスルホン酸、4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸、3,6−ジクロロ−4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸、4,4’−ジヒドラジノ−2,2’−スチルベンジスルホン酸、1−(4−スルファモイルフェニル)ヒドラジン、及びこれらの塩化合物、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などの一種、若しくは、2種以上を併用することができる。
【0027】
本発明において、スルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体による酸化グラフェンの修飾は、グラファイトの酸化から得られた酸化グラファイトを剥離して酸化グラフェンを単離した後に修飾を行っても良いし、酸化グラファイトの状態で修飾を行いながら、剥離を行って修飾グラフェンを得ても良い。
【0028】
本発明に於いて、化学修飾を行う際の酸化グラフェンの水系分散液に対する濃度は、酸化グラフェンと前記フェニルヒドラジン誘導体の反応が充分に進行する条件であれば、特に制限は無いが、0.01mg/mL〜500mg/mLの範囲であることが好ましく、0.05mg/mL〜200mg/mLの範囲であることが、より好ましい。水系溶媒として、水を単独で用いる場合、分散液のpHは、アンモニア水溶液を用いて8〜9に調整しておくことが好ましい。
【0029】
本発明に於いて、酸化グラフェンの化学修飾のために、前記スルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体を添加する方法は、特に制限は無いが、水系溶媒中に溶解した溶液の状態で添加することが、酸化グラフェンとの反応の効率を高める上で好ましい。この場合、該フェニルヒドラジン誘導体を溶解する水系溶媒としては、酸化グラフェンを分散させる水系溶媒との相溶性が良いものであれば、特に制限は無いが、酸化グラフェンの分散溶媒と同様に、水を含む極性溶媒であることが好ましく、例えば、水と、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパーノールから選ばれる1種、若しくは2種以上の混合液を挙げることができる。該フェニルヒドラジン誘導体を分散させる溶媒は、酸化グラフェンの分散溶媒と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0030】
前記フェニルヒドラジン誘導体の水系溶媒に対する濃度は、特に制限はないが、低すぎると、酸化グラフェンの充分な化学修飾が達成されず、また、高すぎる場合には、グラフェンの凝集を誘起するため、0.1質量%〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.5質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0031】
本発明に於いて、酸化グラフェンの修飾反応においては、前記フェニルヒドラジン誘導体と酸化グラフェンの混合比(フェニルヒドラジン誘導体/酸化グラフェン)は、適宜選択すれば良いが、2/1〜1/10であることが好ましく、より好ましくは、1/1〜1/5であり、全量を一度に添加しても良いし、数回に分けて分割添加しても良く、少量ずつ滴下する方法を用いても良い。
【0032】
前記スルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体による酸化グラフェンの修飾反応は、温度が低すぎると反応性が低く、また温度が高すぎる場合には、反応によって形成された修飾グラフェンの凝集が起こりやすくなるため、5℃〜90℃の温度範囲で行うことが好ましく、より好ましくは10℃〜60℃、さらに20℃〜40℃の範囲で反応を行うことが、より好ましい。
【0033】
前記ヒドラジン誘導体による修飾反応が進行すると、還元によって、酸化グラフェンの分散液は、黄茶色から黒色に変化するので、分散液が充分に黒色化するまで反応を継続すれば良い。このようにして得られた黒色の反応液から、ろ過や遠心分離によって、未反応の前記ヒドラジン誘導体を洗浄除去した後、修飾グラフェンシートを得ることができる。
【0034】
このようにして得られた修飾グラフェンシートは、捕集にあたり、未修飾の酸化グラフェンに比べて水系溶媒への分散性が高いために、分散性の差を利用して、例えば、遠心分離によって、概ね酸化グラフェンと修飾グラフェンを分離することができるが、完全に分離することは困難であり、一部、未修飾の酸化グラフェンを含んでいても良い。
【0035】
この様に洗浄を経て得られた修飾グラフェンシートは、水系溶媒に分散された状態でも良いし、乾燥させ、固体状態としても良い。本発明の修飾グラフェンシートは、グラフェン平面から、フェニル環が突き出た構造となるため、グラフェンシート間のπ−πスタッキングが抑制され、かつ、スルホ基の存在によって、一旦固体状態にしても、水系溶媒への再分散が容易に行える。
【0036】
修飾グラフェンシートの乾燥には、公知慣用の種々の方法を用いることができ、例えば、エバポレータで溶媒を除去した後に加熱乾燥したり、真空乾燥を行う方法、凍結乾燥、スプレードライ法などを用いることができるが、溶媒への再分散が容易に行える点から、凍結乾燥法を用いるのが好ましい。
【0037】
<修飾グラフェンシートを含有する液状組成物>
前記の様にしてスルホ基を有するヒドラジン誘導体を用いて修飾された酸化グラフェンシートは、水系溶媒に5質量%程度まで安定に分散させた液状組成物を構成することができる。該液状組成物の濃度は、目的によって、適宜選択すれば良いが、透明導電膜形成などの薄膜作製に用いる場合には、0.05質量%〜2質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%とするのが良い。
【0038】
本発明の液状組成物において、前記修飾グラフェンシートを分散させる水系溶媒は、水を含む極性溶媒であることが好ましく、例えば、水と、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパーノールから選ばれる1種、若しくは2種以上の混合液を挙げることができる。
【0039】
また、前記水系溶媒には、塗布性膜性の改善など、目的に応じて、他の溶媒を混合して用いることができる。混合して用いることができる溶媒としては、例えば、ブチルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコール及びその誘導体類、グリセロール、グリセロールモノエチルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどのグリセロール及びその誘導体類が挙げられる
【0040】
本発明の液状組成物に於いて、これら前記水系溶媒に混合して用いる溶媒の混合割合としては、修飾グラフェンシートが凝集しない範囲で適宜選択すれば良いが、前記水系溶媒に対して50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。透明導電膜作製用など、特に薄い膜を作製する場合には、10%以下であることが、さらに好ましい。
【0041】
本発明の液状組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で公知の種々の添加剤、例えば、顔料、染料、接着成分、硬化剤、増粘剤、重合開始剤、表面調整剤などを含有しても良い。
【0042】
本発明の修飾グラフェンを含有する液状組成物は、また、目的に応じて種々の樹脂、若しくは、樹脂モノマーを含有しても良い。該液状組成物に含有する樹脂、及び樹脂モノマーは、前記水系溶媒に溶解し、修飾グラフェンの分散を妨げないものであれば特に制限はなく、樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロール、ポリビニルピロリドン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体などが挙げられる。また、樹脂モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、スチレンスルホン酸ナトリウムなどの単官能モノマー、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートなどのグリコール系2官能モノマー、トリメチルプロパントリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシレートトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレートなどの3官能モノマーが挙げられる。これらの樹脂、若しくは樹脂モノマーは、それぞれ、単独で用いても良いし、2種以上を適宜混合して用いても良い。
【0043】
本発明の液状組成物が、樹脂モノマーを含有する場合、前記水系溶媒に可溶な公知慣用の種々の重合開始剤を含有していても良く、例えば、和光純薬VA−044、VA−046B、V−50、VA−057、VA−060、VA−061、AV−067、VA−080,VA−086などを用いることができる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリック酸などが挙げられる。
【0044】
また、本発明の液状組成物は、クエン酸、チオ硫酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ホスフィン酸などの還元剤を含有していても良い。
【0045】
これら樹脂および樹脂モノマーの水系溶媒中への混合割合には特に制限は無く、目的に応じて適宜選択すれば良いが、樹脂とグラフェン酸化物のバルクコンポジット成形体を作製する用途に用いる場合には、溶媒に対する樹脂の混合割合は、70%以下であることが好ましい。また、基材上にコンポジット膜を形成する場合には、液状組成物中の樹脂及び樹脂モノマーの混合割合は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることが、製膜性の観点からより好ましい。
【0046】
本発明の液状組成物に於いて、樹脂及び樹脂モノマーを含有する場合、樹脂及び樹脂モノマーに対するグラフェン酸化物の混合割合としては、該液状組成物の使用目的に応じて適宜選択すれば良く、90%以下であれば好適に用いることができるが、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0047】
本発明において、前記修飾グラフェン、及び各種添加剤、樹脂及び樹脂モノマーを水系溶媒に分散させる方法としては、特に制限はなく、公知慣用の分散方法を用いることができ、各種の攪拌機による分散や超音波ホモジナイザによる分散を単独、若しくは2種以上を組み合わせて行うことができる。分散に際しては、これら全ての成分を同時に分散させても良いし、1成分毎、逐次分散させても良い。
【0048】
(修飾グラフェンシートからなる膜)
本発明において、「修飾グラフェンシートからなる膜」とは、修飾グラフェンシートが基材上に固定された膜のことを表し、基材に固定されない自立フィルム状のものは、「修飾グラフェンシートからなる成形体」として表す。
【0049】
本発明の前記液状組成物は、各種の基材上に塗布製膜することで、基材上に導電性の薄膜を形成することが可能である。本発明の前記液状組成物を用いた修飾グラフェンシートの製膜方法としては、特に制限なく公知慣用の方式を採用することができ、具体的には、インクジェット法、グラビア法、グラビアオフセット法、オフセット法、凸版法、凸版反転法、スクリーン法、マイクロコンタクト法、リバース法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ロールコーター法、スクイズコーター法、含浸コーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレイコーター法、静電コーター法、超音波スプレイコーター法、ダイコーター法、スピンコーター法、バーコーター法、スリットコーター法、ドロップキャスト法等を挙げることができる。
【0050】
本発明の修飾グラフェンシートからなる膜を形成する基材としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択すれば良いが、ガラス、プラスチック、セラミックス、金属など公知慣用の材料を好適に用いることができ、ガラスとしては、例えば、石英ガラス、ソーダガラス、硼ケイ酸ガラスなどが挙げられ、プラスチック基材としては、PET、PEN、PBT、ポリイミド、アクリル、ポリスチレンなどが挙げられる。また、シリコン、シリコンカーバイドなども好適に用いることができる。
【0051】
本発明の修飾グラフェンシートからなる膜を形成する基材の形態としては、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、透明導電膜として用いる場合には、板状、シート状、ウェハー状の基材を用いることが望ましい。
【0052】
本発明の修飾グラフェンシートからなる膜の膜厚には、特に制限は無く、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、透明導電膜用途として用いる場合には0.1nm〜30nmであることが好ましく、0.1nm〜10nmであることがより好ましい。特に、透過率が90%以上の高透明性導電膜を作製する場合には、膜厚は0.1nm〜5nmにすることが好ましい。
【0053】
本発明の修飾グラフェンからなる膜を形成する基材の表面は、均一な膜形成を行う観点から、親水性であることが望ましく、例えば、表面に水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホ基、アミノ基等を有することが望ましい。前記液状組成物の基材表面への塗濡れ性が悪い場合には、製膜性を向上させるため、塗布製膜前に、基材表面にこれらの官能基を形成する操作を行っても良い。この目的には、公知慣用の種々のプライマー、シランカップリング剤を用いることができ、また酸素プラズマや大気プラズマ、コロナ処理を行って濡れ性を改善しておくことも有効である。
【0054】
これらの官能基の存在は、前記液状組成物の基材への濡れ性を向上させるためだけでなく、修飾グラフェンシート表面に存在するエポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基等と結合を形成することによって膜が安定化する作用もあり、好ましい。
【0055】
本発明の前記修飾グラフェンシートは、スルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体によって酸化グラフェンが修飾されたものであり、未修飾の酸化グラフェンと比べて親水性基板への製膜性に優れており、薄膜で大面積の製膜を行うことができる。
【0056】
本発明の修飾グラフェンシートからなる膜の一形態は、主として前記修飾グラフェンシートから構成され、前記液状組成物に含有される添加剤や樹脂成分を含有していても良いが、透明導電膜用として用いる場合には、これら成分の混合割合は、修飾グラフェンシートに対して、10%以下、より好ましくは5%以下とするのが良い。
【0057】
また、本発明の修飾グラフェンシートからなる膜の一形態は、樹脂膜中に修飾グラフェンシートが分散された形態であって、樹脂に対する修飾グラフェンシートの混合割合は、0.1%〜90%であり、好ましくは、0.5%〜20%である。
【0058】
本発明の修飾グラフェンシートからなる膜を透明導電膜として用いる場合、前記各種の製膜法によって塗布製膜した後、さらに還元作用を行うことによって導電性を高めることが可能である。還元方法としては、公知慣用の方法を用いることができ、加熱還元、還元剤による還元、光照射による還元、または、還元雰囲気でのプラズマ、例えば水素プラズマによる還元などを単独、若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
本発明の修飾グラフェンシートからなる膜は、前述の様にフェニルヒドラジン誘導体によって還元、修飾されたグラフェンシートを用いているので、低温での導電性発現が可能であり、酸化グラフェンの様に1100℃といった高温での処理は必要なく、300℃程度までの低温での熱処理によって充分な導電性を得ることができる。
【0060】
本発明の修飾グラフェンシートからなる膜の還元を加熱によって行う場合、グラフェンシートの酸化を防ぐために、真空中、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などで加熱を行うことが好ましい。また、還元剤雰囲気で加熱する方法も好適に用いることができる。
【0061】
本発明の修飾グラフェンシートからなる膜の還元に用いる還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、クエン酸、チオ硫酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ホスフィン酸などを単独、若しくは2種以上を組み合わせて用いることができ、気体状態での暴露やこれらの溶液に膜を浸漬するなどの方法を用いて還元を行うことができる。
【0062】
本発明の修飾グラフェンからなる膜は、また、目的に応じて、パターニングを行うことが可能である。パターニングの方法は、特に制限はなく、公知慣用の方法を用いることができ、修飾グラフェンの塗工膜からレーザアブレーションにより部分的に除去して形成しても良いし、さらに、前記液状組成物を直接インクジェット法、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷、凸版反転法、マイクロコンタクト法などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0063】
(修飾グラフェンシートからなる成形体)
本発明に於いて、修飾グラフェンシートからなる成形体とは、基材上に固定された薄膜を除く独立した構造体のことを表し、例えば、板状、シート状、直方体状、球状など、種々の形状の成形体を作製することが可能である。
【0064】
本発明の修飾グラフェンシートからなる成形体は、修飾グラフェンシートのみからなる成形体であっても良いし、公知慣用の種々の添加剤を含有していても良く、また、修飾グラフェンシートが種々の樹脂成分中に分散された形態であっても良く、種々の樹脂成分とのコンポジットであっても良い。
【0065】
本発明において、修飾グラフェンシートのみからなる成形体は、修飾グラフェンシートのみが分散された前記液状組成物を、任意の容器内、若しくは接着性の無い基材上で乾燥させて得ることができる。例えば、前記液状組成物を桐山ロートやブフナーロートを用いて減圧ろ過を行うことによって、修飾グラフェンシートが積層した成形体を得ることができる。
【0066】
本発明の修飾グラフェンからなる成形体の一形態は、修飾グラフェンが樹脂中に分散された構造を有するものであり、導電性や帯電防止効果を有する成形体を形成することが可能である。この成形体は、前記の樹脂成分を含有する液状組成物を任意形状の容器内若しくは接着性の無い基材上で乾燥させて得ることができる。この場合、樹脂組成物に対する修飾グラフェンの混合割合は90%以下であれば、好適に成形体を形成可能であるが、樹脂中での修飾グラフェンの良好な分散のためには、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0067】
また、本発明の修飾グラフェンからなる成形体の一形態は、種々の樹脂成分と修飾グラフェンとのコンポジットであるが、該コンポジットは、樹脂モノマーと重合開始剤を含有する前記液状組成物を加熱し、重合反応を進行させることによって形成することができる。加熱温度は、含有する樹脂モノマーと重合開始剤種によって適宜選択するが、概ね40℃〜90℃の温度で行うと良い。
【0068】
この場合、修飾グラフェンの混合量は、使用目的に応じて適宜選択すれば良いが、例えば、導電性を有するコンポジットを形成するためには、グラフェンによる導電パスを確保した上で、樹脂中での修飾グラフェンの凝集を抑制する目的から、樹脂成分に対する修飾グラフェンの混合割合が0.5%〜20%以下とするのが好ましく、1%〜10%の範囲とするのが、より好ましい。
【0069】
本発明の前記修飾グラフェンシートからなる成形体は、成形体の作製中、若しくは成形後に、さらに還元作用を行うことによって成形体の導電性、熱伝導性などを高めることが可能である。還元方法としては、公知慣用の方法を用いることができ、加熱還元、還元剤による還元、光照射による還元、または、還元雰囲気でのプラズマ、例えば水素プラズマによる還元などを単独、若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
本発明の修飾グラフェンシートを含有する成形板の還元に用いる還元剤としては、例えば、水素、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、クエン酸、チオ硫酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ホスフィン酸などを単独、若しくは2種以上を組み合わせて用いることができ、気体状態での暴露やこれらの溶液に膜を浸漬するなどの方法を用いて還元を行うことができる。
【0071】
また、本発明の修飾グラフェンシートを含有する成形体中の修飾グラフェンシートの還元を加熱によって行う場合、グラフェンシートの酸化を防ぐために、真空中、窒素雰囲気、Ar雰囲気などで加熱を行うことが好ましい。また、還元剤雰囲気で加熱する方法も好適に用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を挙げて、本発明を説明するが、以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0073】
なお、本実施例において、修飾グラフェンシートからなる膜、修飾グラフェンシートを用いて得られる成形体の表面抵抗率、導電率測定は、三菱化学株式会社製ロレスタGP(MCP−T610)を用い、四端子法により行った。
【0074】
(実施例1)4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸による修飾グラフェンの合成
1gのグラファイト(SC−20−O、Graphit Kropfmuhl AG)を入れた丸底フラスコに22.5mLの濃硫酸を加え、グラファイトを分散させた後、0.5gの硝酸ナトリウムを加えて、反応液を氷冷した。次に、3gの過マンガン酸カリウムを滴下して加え、反応温度を35℃に30分保持した後、50mLのイオン交換水を反応液に徐々に加えると反応液の温度が98℃に上昇した。さらに100mLの水を加えた後、3%の過酸化水素を反応液の色が茶色から黄色になるまで加えた。反応液を遠心分離して(3000U/min.、5分)、上澄みを取り除いた後、イオン交換水を加えて、さらに同条件で3回遠心分離操作を行った。さらに、上澄み液のpHが6なるまで、より高速(8000U/min.、15分)の遠心分離による洗浄を行った。このようにして得られた酸化グラファイトの水分散液に、超音波分散機(Sonoplus HD 3100−SH 70 Gカップホーン、BANDELIN electronic・GmbH&Co.KG)を用いて超音波照射を行い(50W、30秒)、酸化グラフェンの剥離を行った。この液を遠心分離すると、剥離した酸化グラフェンは上澄み液中に分散し、一方、非剥離の酸化グラファイトは沈澱するので、上澄み液を捕集することによって酸化グラフェンを回収した。
【0075】
このようにして得られた0.1質量%の酸化グラフェン水分散液40mLに0.1質量%のアンモニア水をpHが8になるまで加えた。0.1gの4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸をイオン交換水10mLに加え、アンモニア水を加えながら完全に溶解させた後、先に調製した酸化グラフェンの水分散液に加えて攪拌したところ、反応液の色が、数時間で茶色から黒色に変化し、4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸による還元反応が進行していることが確認できた。反応液を一晩攪拌した後、遠心分離による沈澱、上澄みを除去した後にイオン交換水へ再分散する操作を3回繰り返した。さらに遠心分離を行い、沈殿物を40mLのイオン交換水に再分散させ、この分散液に4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸の水溶液(0.1g/10mL)を加えて室温でさらに4時間攪拌した後、遠心分離−上澄み除去−イオン交換水への再分散の操作を3回繰り返して洗浄を行い、4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸により修飾された修飾グラフェンを得た。この修飾グラフェンは、遠心分離操作で濃縮することにより、1質量%の安定な水分散液を得ることができた。得られた修飾グラフェンシートを透過型電子顕微鏡で観察したところ、単層のシートであることが確認できた。また、得られた修飾グラフェンの水分散液を100倍に希釈してシリコンウェハー上にスピンコートした後に自然乾燥し、AFMで観察したところ、個別のグラフェンシートが観察され、グラフェンシートの膜厚は0.8nmであった。
【0076】
(実施例2)4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸による修飾グラフェンの合成
1gのグラファイト(SC−20−O、Graphit Kropfmuhl AG)を入れた丸底フラスコに22.5mLの濃硫酸を加え、グラファイトを分散させた後、0.5gの硝酸ナトリウムを加えて、反応液を氷冷した。次に、3gの過マンガン酸カリウムを滴下して加え、反応温度を35℃に30分保持した後、50mLのイオン交換水を反応液に徐々に加えると反応液の温度が98℃に上昇した。さらに100mLの水を加えた後、3%の過酸化水素を反応液の色が茶色から黄色になるまで加えた。反応液をろ過して酸化グラフェンをろ別し、20mLの水で洗浄した。このようにして得た酸化グラフェンに水を加えて分散し、1%のアンモニア水を用いてpHを8に調整した。この分散液に4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸の水溶液(1g/20mL、pH〜8)を加えて、室温で1時間攪拌した。反応液に超音波照射(50W、10分)を行った後、一晩攪拌を行った。さらに超音波照射(50W、10分)を行って、修飾グラフェンの剥離を行った。遠心分離による沈澱−水への再分散の過程により、修飾グラフェンの洗浄と濃縮を行い、1.5質量%の修飾グラフェン水分散液を得た。得られた分散液を水で10倍に希釈してシリコンウェハー上にスピンコートし、乾燥した後、AFM(SIIナノテクノロジー株式会社製、SPI−4000)観察を行ったところ、個別のグラフェンシートが観察され、膜厚が0.7〜3nmの単層〜3層のグラフェンシートであることが確認できた。
【0077】
(比較例1)
実施例1において得られた、4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸で修飾しない酸化グラフェンを水に分散させたところ、0.1mg/mLの濃度以上では、液中に凝集物が確認され、安定な分散液を得ることができなかった。
【0078】
(実施例3)修飾グラフェンシートからなる膜
実施例1において得られた1質量%の修飾グラフェンの水分散液を水で希釈して、濃度が1mg/mLの修飾グラフェン水分散液を得た。この水分散液を製膜用の液状組成物として用い、2.5cm×5cmのスライドガラス上にスピンコート製膜したところ、ガラス表面全面にわたって導電性を示す透過率80%(550nm)の修飾グラフェンシートからなる膜を得た。AFMを用いて、この膜の膜厚を測定したところ、平均膜厚は10nmであった。この膜を空気中でホットプレートを用いて加熱処理したところ、導電性が向上し、下表の様な表面抵抗を示す膜となった。加熱処理は、加熱温度まで5分間で昇温し、室温まで放冷する方法を用いた。結果を、表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
(実施例4)修飾グラフェンシートからなる膜
実施例1において得られた1質量%の修飾グラフェンの水分散液を水で希釈して、濃度が1mg/mLの修飾グラフェン水分散液を得た。この水分散液を5cm×5cmにカットしたPETフィルム(東洋紡 コスモシャインA4100)上にスピンコート製膜したところ、PETフィルム全面にわたって導電性を示す透過率85%(550nm)の修飾グラフェンシートからなる膜を得た。この膜をホットプレートを用いて120℃で加熱処理したところ、60kΩ/□の表面抵抗率を示した。
【0081】
(実施例5)修飾グラフェンシートを含有する液状組成物
実施例1で得られた1質量%の修飾グラフェンの水分散液に、下表(表2)の様に各種溶媒を加えて修飾グラフェンの分散液を作製した。これらの分散液は、実施例3、4で用いたものと同様のスライドガラス、若しくはPETフィルム上にスピンコート製膜し、透明性のある導電膜を得ることができた。表2に液状組成物の組成とガラス基材上に作製した膜の導電性の結果を示す。
【0082】
【表2】

【0083】
(実施例6)パターン化された修飾グラフェンシートからなる膜
実施例3と同様にしてガラス基板上に修飾グラフェンシートからなる膜を作製した後、Nd3+:YAGレーザー(Spectron SL803)の基本波(1064nm、20ns)をガラバノスキャナー(HPMレーザースキャニングモジュール、HPM社製 XY10A−YHY2)を用いて走査照射した。レーザー照射部はアブレーションにより除去され、非照射部のみが残留する結果、ガラス基板上に20μm幅の線状の導電性パターンを得ることができた。
【0084】
(比較例2)
実施例1において得られた未修飾の酸化グラフェンを水に分散し、1mg/mLの濃度の水分散液を得た。この水分散液を2.5cm×5cmのスライドガラス上にスピンコートしたところ、酸化グラフェンのシートはスライドガラスとの密着性が悪く、均一な膜が作製できなかった。
【0085】
(比較例3)
実施例1と同様にして得られた未修飾の酸化グラフェンを水に分散し、1mg/mLの濃度の水分散液を得た。この水分散液を2.5cm×5cmの3−アミノプロピルトリメトキシシラン修飾スライドガラス上にスピンコート製膜した。AFMで観察したこの膜の膜厚は15nmであり、550nmの透過率は80%であった。この膜を、実施例3と同様の方法で加熱処理したところ、130℃の加熱では導電性は確認できなかった。この膜を200℃で加熱処理したところ、表面抵抗率は約700kΩ/□であり、本発明の修飾グラフェンより二桁大きな値であった。
【0086】
(実施例7)修飾グラフェンシートからなる成形体
実施例2と同様にして得られた修飾酸化グラフェンの1.5質量%分散液をミリポア製の直径47mmメンブレンフィルターを用いて吸引ろ過し、フィルター上に黒色の修飾グラフェンが積層した円盤状の成形体を得た。この成形体は、円盤状の形状を保持したまま、乾燥後にフィルターから容易に剥離し、自立した修飾グラフェンのみからなる円盤状成形体を得た。この成形体を200℃で加熱処理したところ、100S/cmの導電率を示した。この成形体は、手で曲げても破壊せず、手を離すと元の形状に回復した。また、ハサミで任意の形状にカットすることが可能であった。
【0087】
(比較例4)酸化グラフェンシートからなる成形体
実施例1と同様にして得られた酸化グラフェンの0.1質量%分散液をミリポア製の直径47mmメンブレンフィルターを用いて吸引ろ過したところ、フィルター上に黄茶色の酸化グラフェンの固形物を得た。この固形物は、乾燥後にフィルターから剥離しようとすると崩壊した。この固形物の断片を200℃で加熱処理したところ、0.1S/cm程度の導電率であった。
【0088】
(実施例8)修飾グラフェンシートからなる成形体
実施例2で得られた修飾グラフェンの水分散液を凍結乾燥し、黒色で綿状の修飾グラフェンの乾燥固体を得た。この乾燥固体をテフロン(登録商標)ビーカーに入れ、アクリレートに対する修飾グラフェンの割合が1〜9%となる様に、アクリレートの水溶液を加えた。アクリレートの水溶液は、ポリエチレングリコールジアクリレートとトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(14/3 EO/OH)を3/2の割合で混合し、これを水に溶解することで得た。修飾グラフェンとアクリレート水溶液の混合液を超音波ホモジナイザ(Sonoplus社製、HD 3100)で氷冷しながら処理し、黒色の均一な分散液(成形体作製用液状組成物)を得た。AIBNを重合開始剤として、60℃で重合反応を行い、黒色の固形物を得た。この固形物をビーカーから取り出して乾燥し、黒色円柱状の修飾グラフェンコンポジットからなる成形体を得た。この成形体は、200℃に加熱することで導電性を示し、アクリレートに対する修飾グラフェンが1%のコンポジットは、3×10−3S/cm、5%のコンポジットは、5×10−2S/cmの導電率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の修飾グラフェンシートは、導電性膜や導電性フィラーとしての利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体により化学修飾された修飾グラフェン。
【請求項2】
請求項1に記載の修飾グラフェンを用いて構成される修飾グラフェンシート。
【請求項3】
厚さが0.1nm〜30nmである請求項2に記載の修飾グラフェンシート。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の修飾グラフェンシートを含有する液状組成物。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の修飾グラフェンシートからなる膜。
【請求項6】
修飾グラフェンシートからなる膜がパターニングされた膜である請求項5に記載の修飾グラフェンシートからなる膜。
【請求項7】
請求項2又は3に記載の修飾グラフェンシートを用いて得られる成形体。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の修飾グラフェンシートからなる膜を用いた導電性膜。
【請求項9】
(1)グラファイトを酸化して得られる酸化グラフェンを溶媒中に展開して、酸化グラフェンの分散液を得る工程、
(2)前記酸化グラフェンの分散液中にスルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体を添加し、酸化グラフェンとスルホ基を有するフェニルヒドラジン誘導体とを反応させる工程、
を有する請求項1に記載の修飾グラフェンの製造方法。

【公開番号】特開2013−79176(P2013−79176A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221048(P2011−221048)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】