説明

修飾セルロース繊維分散液の製造方法及びセルロース複合材料の製造方法

【課題】セルロースシートの製造における高生産性を実現し、優れた透明性、非着色性、
低線膨張係数、高弾性率を有するセルロース複合材料を提供する。
【解決手段】(1),(2)の工程を順に行う、平均繊維径が100nm以下であり、芳香環含有置換基で修飾されたセルロースI型結晶構造を有する修飾セルロース繊維分散液の製造方法。得られた修飾セルロース繊維とセルロース以外の高分子とを複合化したセルロース複合材料。芳香環含有置換基で修飾された修飾セルロースを用いることにより、シート化する際の濾過時間を短縮することができる。
(1) 木質から得られる解繊前のセルロースを芳香環含有置換基で修飾し、修飾セルロースを得る工程
(2) (1)で得られた修飾セルロースを平均繊維径100nm以下に解繊し、修飾セルロース繊維分散液を得る工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾セルロース繊維分散液及び修飾セルロース繊維シートの製造方法と、製造された修飾セルロース繊維分散液又は修飾セルロース繊維シートを用いたセルロース複合材料の製造方法に関するものであり、特に、修飾セルロース繊維の修飾置換基、更には修飾率を制御することにより、生産性を高めると共に、高耐熱性、高透明性、非着色性、低線膨張係数、及び高弾性率等の要求特性を改善したセルロース複合材料を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶や有機EL等のディスプレイ用基板には、ガラス板が広く用いられている。しかし、ガラス板は比重が大きく軽量化が困難であり、さらに、割れやすい、曲げられない、所定の厚みが必要である、などの欠点があることから、近年、ガラス板の代替材料としてプラスチック基板が検討されている。具体的には、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどを用いたディスプレイ用基板が使用されている。
【0003】
しかしながら、これら従来のガラス代替用プラスチック材料は、ガラス板に比べて線膨張係数が大きいため、基板上に薄膜トランジスタなどのデバイス層を高温で蒸着させるプロセスにおいて、反りや蒸着膜の割れ、半導体の断線などの問題が生じ易く、実用は困難であった。
【0004】
即ち、これらの用途には、高透明性、高耐熱性、低吸水性、低線膨張係数、かつ高強度を示すプラスチック材料が求められている。
【0005】
近年、バクテリアセルロースをはじめとするセルロースの微細繊維を用いた複合材料が、盛んに研究されている。セルロースは伸びきり鎖結晶を有することから、低線膨張係数、高弾性率、高強度を発現することが知られている。また、微細化することにより繊維径が数nmから200nmの範囲にある微小かつ高結晶性のセルロースナノファイバーが得られ、その繊維の隙間をマトリクス材料で埋めることで、高透明性と低線膨張係数を有する複合材料が得られることが報告されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、セルロース微細繊維よりなる不織布と、光硬化性樹脂との複合材料が記載されており、セルロース微細繊維を化学修飾することにより、吸水性を低減すると共に、透明性が向上した複合材料を得ている。特許文献1には、セルロースの修飾置換基として、脂肪族系のものが開示されており、特にアセチル基やメタクリロイル基が好ましいとされている。
【0007】
特許文献2には、光学異方性を制御する化合物として、芳香環構造を有する化合物を導入した改質繊維からなる不織布について開示されている。
【0008】
また、非特許文献1にはサーモトロピック液晶特性を示すベンゾイル化バクテリアセルロースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−51266号公報
【特許文献2】特開2008−274461号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Carbohydr Polym,Vol.74,No.4,P875−879(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1において具体的に開示されているセルロース微細繊維不織布(セルロースシート)の製造方法は、機械的に解繊したセルロース微細繊維の水懸濁液を、ガラスフィルターで濾過して脱水し、製膜する方法である。
しかし、本発明者らが、特許文献1に開示される方法に従ってセルロース複合材料の製造を行ったところ、セルロースシートを製造する際の、セルロース微細繊維の水懸濁液の脱水のための濾過にかかる時間が長く、実用的な生産性が得られないことが判明した。
【0012】
上記特許文献2において具体的に開示されている不織布(セルロースシート)は、セルロース原料として麻(例えば、後掲の比較例3〜5で用いたアバカ)由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプを用いている。
しかしながら、本発明者らが、特許文献2に開示される方法に従ってセルロースシートの製造を行ったところ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプは微細化されにくいことが判明した。したがって、特許文献2に開示されたセルロース原料から得られたセルロースシートと高分子材料とを複合化しても、低線膨張係数、高弾性率、高強度のセルロース複合材料とはならない。
【0013】
また、非特許文献1の方法で得られるベンゾイル化バクテリアセルロースは、ガラス転移温度を持つことから非晶質であり、これを高分子材料と複合化しても、線膨張係数が低い複合材料とはならないことが判明した。
【0014】
上記実状に鑑みて、本発明は、セルロースシートの製造における高生産性を実現し、優れた透明性、非着色性、低線膨張係数、高弾性率を有するセルロース複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、芳香環含有置換基で修飾された修飾セルロースを平均繊維径100nm以下に解繊して修飾セルロース繊維分散液とすることで、セルロースシートを製造する際の前述の濾過時間が著しく短縮することを見出した。また、セルロース原料として木質系のものを用い、修飾セルロース繊維の修飾置換基及び修飾率と共に、繊維径、結晶構造を制御することで、複合材料にした際に、優れた透明性、非着色性、低線膨張係数、かつ高弾性率を有するセルロース複合材料が得られることを見出した。
【0016】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであって、以下を要旨とする。
【0017】
[1] 平均繊維径が100nm以下であり、芳香環含有置換基で修飾されたセルロースI型結晶構造を有する修飾セルロース繊維の分散液を製造する方法であって、
(1) 木質から得られる解繊前のセルロースを芳香環含有置換基で修飾し、修飾セルロースを得る工程
(2) (1)で得られた修飾セルロースを平均繊維径100nm以下に解繊し、修飾セルロース繊維分散液を得る工程
を順に行うことを特徴とする、修飾セルロース繊維分散液の製造方法。
【0018】
[2] 芳香環含有置換基が、芳香環含有エステル基である[1]に記載の修飾セルロース繊維分散液の製造方法。
【0019】
[3] セルロースの全水酸基に対する修飾率が9モル%以下である[1]又は[2]に記載の修飾セルロース繊維分散液の製造方法。
【0020】
[4] [1]ないし[3]のいずれかに記載の方法によって得られる修飾セルロース繊維分散液を抄紙する工程を有する、修飾セルロース繊維シートの製造方法。
(以下、セルロース繊維をシート化したものを「セルロースシート」と称することがある。)
【0021】
[5] [1]ないし[3]のいずれかに記載の方法によって得られる修飾セルロース繊維分散液に含まれるセルロース繊維、又は[4]に記載の方法によって得られる修飾セルロース繊維シートと、セルロース以外の高分子とを複合化する工程を有する、セルロース複合材料の製造方法。
【0022】
[6] [1]ないし[3]のいずれかに記載の方法によって得られる修飾セルロース繊維分散液。
【0023】
[7] [4]に記載の方法によって得られる修飾セルロース繊維シート。
【0024】
[8] [5]に記載の方法によって得られるセルロース複合材料。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、木質セルロース原料を用い、修飾セルロース繊維の修飾置換基、さらには修飾率と、繊維径及び結晶構造を制御することで、セルロースシートの製造における高生産性を実現するとともに、複合材料にした際に、優れた透明性、非着色性、低線膨張係数、かつ高弾性率を実現することができる。さらには、セルロース繊維と高分子との親和性が向上し、透明性や強度をより一層高めることが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
【0027】
〔1〕修飾セルロース繊維分散液の製造方法
本発明の修飾セルロース繊維分散液の製造方法は、平均繊維径が100nm以下であり、芳香環含有置換基で修飾されたセルロースI型結晶構造を有する修飾セルロース繊維の分散液を製造する方法であって、
(1) 木質から得られる解繊前のセルロースを芳香環含有置換基で修飾し、修飾セルロースを得る工程(以下、この工程を「修飾工程と称することがある。)
(2) (1)で得られた修飾セルロースを平均繊維径100nm以下に解繊し、修飾セルロース繊維分散液を得る工程(以下、この工程を「解繊工程」と称することがある。)
を順に行うことを特徴とする。
【0028】
[解繊前のセルロース]
本発明における木質から得られる解繊前のセルロースとは、下記に示すような木質のセルロース含有物から一般的な精製処理を経て不純物を除去することにより製造されたものである。
【0029】
<セルロース含有物>
セルロース含有物としては、針葉樹や広葉樹等の木質が挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いことから、低線膨張係数、高弾性率を実現することができ好ましい。さらには針葉樹や広葉樹等の木質は微細な繊維径のものが得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源あることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位である。
【0030】
<セルロース含有物の精製方法>
本発明に用いられる解繊前のセルロースは上記のセルロース含有物を通常の方法で精製して得られる。この精製処理としては、例えば、ベンゼン及びエタノール又は、炭酸ナトリウムで脱脂した後、ワイズ法で脱リグニン処理を行い、更にアルカリ中で脱ヘミセルロース処理を行う方法が挙げられる。もしくは一般的な製紙用パルプで用いられる化学パルプ化法を適用することもできる。この場合、例えばクラフトパルプ、サリファイドパルプ、アルカリパルプの製造方法に従って、セルロース含有物を蒸解釜で加熱処理して脱リグニン等の処理を行い、更に漂白処理等を行う方法が挙げられる。
【0031】
本発明に用いられる解繊前のセルロースの繊維径は、上述のセルロース含有物に対して一般的な精製処理を経たものは、通常数平均繊維径数mm程度である。例えばチップ等の数cm大のものを精製処理して得られるセルロースである場合、更にリファイナーやビーター等の離解機で機械的処理を行い、平均繊維径100nm以下にすることが好ましい。
【0032】
[修飾工程]
本発明に用いられる修飾セルロースは、芳香環含有置換基で修飾されたセルロースI型結晶構造を有するセルロースである。ここで、修飾とは、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾されていることをさす。
【0033】
<修飾置換基>
本発明において、化学修飾によってセルロースに導入される官能基は、芳香環含有置換基である。修飾置換基として芳香環含有置換基を導入することは、易解繊性、高生産性を実現する上で好ましい。
【0034】
芳香環含有置換基とは、炭化水素系芳香族化合物や、複素環芳香族化合物、非ベンゼノイド芳香族化合物等の芳香環含有化合物由来の置換基である。ここで、炭化水素系芳香族化合物とは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等のベンゼン環の単環又はベンゼン環が2〜12個、好ましくは2〜6個縮合した化合物であり、複素環芳香族化合物とは、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール等の5〜10員環の複素環の単環又はその2〜12個、好ましくは2〜6個縮合環化合物である。非ベンゼノイド芳香族化合物とは、アズレン、アヌレン、シクロペンタジエニルアニオン、シクロヘプタトリエニルカチオン
、トロポロン、メタロセン、アセプレイアジレン等である。これらの中では、炭化水素系芳香族化合物由来の置換基が好ましく、特にベンゼン、ナフタレン、アントラセン由来の置換基が好ましい。
【0035】
これらの芳香環含有化合物はその水素が炭素数1〜12のアルキル基で置換されていても良い。また、芳香環が2個以上、単結合あるいは炭素数1〜3のアルキレン基で連結された化合物であっても良い。
【0036】
上記の芳香環含有化合物とセルロースを結合する置換基としては、セルロースの水酸基と反応するものであれば特に限定されるものではないが、エステル基、エーテル基、カルバマート基が好ましく、エステル基が特に好ましい。
【0037】
即ち、本発明において、セルロースに導入される修飾置換基の芳香環含有置換基としては、ベンゾイル基、ナフトイル基、アントロイル基等が好ましく、とりわけベンゾイル基が好ましい。
【0038】
<化学修飾剤>
上記修飾置換基によるセルロースの修飾方法としては、特に限定されるものではないが、セルロースと次に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。この反応条件についても特に限定されるものではないが、必要に応じて溶媒、触媒等を用いたり、加熱、減圧等を行うこともできる。この修飾方法については、後述の<修飾方法>の項で詳述する。
【0039】
化学修飾剤の種類としては、例えば、前述の芳香環含有化合物とセルロースを結合する置換基としてエステル基を形成させる場合は、酸、酸無水物、ハロゲン化試薬等が、エーテル基を形成させる場合は、フェノール系化合物、フェノキシシラン、オキシラン(エポキシ)等の環状エーテル等が、カルバマート基を形成させる場合はイソシアナート等が挙げられる。
【0040】
エステル基を形成させる化学修飾剤である酸としては、例えば安息香酸、ナフタレンカルボン酸等が、酸無水物としては、例えば無水安息香酸、無水フタル酸等が挙げられる。
【0041】
ハロゲン化試薬としては、例えばベンゾイルハライド、ナフトイルハライド等が挙げられる。
【0042】
エーテル基を形成させる化学修飾剤であるフェノール系化合物としては、フェノール、ナフトール等が、またフェノキシシラン等、フェニルオキシラン(エポキシ)等の環状エーテルが挙げられる。
【0043】
カルバマート基を形成させる化学修飾剤であるイソシアナートとしては、フェニルイソシアナート等が挙げられる。
【0044】
これらの中では特にベンゾイルハライド、ナフトイルハライド、無水安息香酸が好ましい。
【0045】
これらの化学修飾剤は、1種又は2種以上用いても構わない。
【0046】
<修飾方法>
修飾セルロースを、セルロース複合材料として透明性が要求される用途に用いる場合は、セルロースを微細繊維に解繊することが必要となる。本発明の修飾セルロース繊維分散液の製造方法においては、セルロースの修飾は、前述のセルロース含有物を精製処理して得られた解繊前のセルロースに対して行う。精製して得られたセルロースを修飾した後に解繊した場合、解繊がしやすく、脱水のための濾過時間が短くなるので生産性の点で好ましい。これに対して、精製後のセルロースを微細繊維に解繊してから修飾を行う場合、水を除去するのに労力を必要とする。このようなことから、精製後、解繊前のセルロースを修飾する方が好ましい。
【0047】
化学修飾は通常の方法をとることができるが、通常精製後のセルロースは含水状態であるので、この水を反応溶媒等と置換して、化学修飾剤と水との反応を極力抑制することが重要である。また、ここで水を除去するために乾燥を行うと、後の微細化が進行しにくくなるため乾燥工程を入れることは好ましくない。
【0048】
すなわち、必要に応じて反応溶媒等との置換を行った精製後セルロースに対して、常法に従って前述の化学修飾剤を反応させることによって化学修飾を行うことができる。この際、必要に応じて溶媒や触媒を用いたり、加熱、減圧等を行っても良い。溶媒としては、エステル化を阻害しない極性溶媒を用いることが好ましい。
【0049】
触媒としてはピリジンやN,N−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、水素化
ナトリウム、tert−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムte
rt−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、
酢酸ナトリウム等の塩基性触媒や、酢酸、硫酸、過塩素酸等の酸性触媒を用いることがで
きる。反応速度の速さや、重合度低下の防止のためピリジン等の塩基性触媒を用いること
が好ましい。化学修飾によるセルロースの着色の問題が無く、反応温度を高めて修飾率を
高めることができる点においては、酢酸ナトリウムが好ましい。また、化学修飾によるセ
ルロースの着色の問題が無く、室温下、短時間かつ少量の化学修飾剤添加量の反応条件に
おいて修飾率を高めることができる点においては、過塩素酸あるいは硫酸が好ましい。
【0050】
反応時の温度条件としては、高すぎるとセルロースの黄変や重合度の低下等が懸念され
、低すぎると反応速度が低下することから10〜130℃が好ましい。反応時間は用いた
化学修飾剤や目的とする修飾率にもよるが、通常数分から数十時間である。
【0051】
<修飾率>
ここでいう修飾率とは、セルロース中の全水酸基のうちの修飾されたものの割合を示し、修飾率は下記の滴定法によって測定することができる。
【0052】
(修飾率の測定方法)
修飾セルロース繊維又はセルロースシート0.05gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。ここにフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
【0053】
【数1】

【0054】
これを解いていくと、以下の通りである。
【数2】

【0055】
本発明に用いられる修飾セルロースの修飾率は、セルロースの全水酸基に対して、好ましくは9モル%以下であり、より好ましくは7モル%以下、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上である。
【0056】
芳香環含有置換基でセルロースを化学修飾することで、セルロースの分解温度が上昇し、耐熱性が高くなり、加熱時の着色が小さくなり好ましく、特に修飾置換基として芳香環含有置換基を導入することにより、前述の如く、易解繊性、高生産性の向上を図ることができ、好ましい。ただし、修飾率が高すぎると、セルロースの結晶構造が破壊され結晶性が低下するため、得られる複合材料の線膨張係数が大きくなってしまうという問題があり好ましくない。
また、修飾率が低すぎると、芳香環含有置換基を導入したことによる上記効果を十分に
得ることができず、親水性が高くなり、脱水の際の濾過時間が長くなったり、得られたセルロース繊維の含水率が高くなり好ましくない。特に、セルロース原料として木質を用いる場合、修飾率が低いと複合化の後処理で加熱した際に、着色してしまうため好ましくない。
【0057】
[解繊工程]
透明なセルロース複合材料を得るためには、セルロースを解繊して微細繊維(セルロースナノファイバー)とすることが必要となる。前述の修飾セルロースから、セルロースの微細繊維を得るために解繊工程を行う方法について以下に説明する。
【0058】
解繊工程の具体的な方法としては、特に制限はないが、例えば、セルロース濃度0.1
〜10重量%、例えば1重量%程度となるように、水、水溶性有機溶媒(この水溶性有機溶媒については、後述の<後処理>の項で詳述する。)、酸又はアルカリ水溶液、界面活性剤水溶液、無機塩水溶液等を用いて調製した修飾セルロースの分散液(以下「修飾セルロース分散液」と称す。)に、直径1mm程度のセラミック製ビーズを入れ、ペイントシェーカーやビーズミル等を用いて振動を与え、セルロースを解繊する方法などが挙げられる。
【0059】
また、ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、このようなセルロー
ス分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法(高速回転ホモジナイザー)や、高圧か
ら急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高
圧ホモジナイザー法)、マスコマイザーXのような対向衝突型の分散機(増幸産業)等を
用いる方法などが挙げられる。特に、高速回転ホモジナイザーや高圧ホモジナイザー処理
は、解繊効率が高く好ましい。
【0060】
これらの処理で解繊する場合は、修飾セルロース分散液の固形分(修飾セルロース)濃度が0.2重量%以上10重量%以下、特に0.3重量%以上6重量%以下で行うことが好ましい。この解繊工程に供する修飾セルロース分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理する修飾セルロース量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪く、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなるため、解繊処理に供する修飾セルロース分散液は適宜水を添加するなどして濃度調整する。
【0061】
高速回転ホモジナイザーの場合、回転数が高い方が、剪断力が掛かり解繊効率が高い。回転数としては例えば10000rpm以上が好ましく、15000rpm以上が更に好ましく、20000rpm以上が特に好ましい。また、時間は1分以上が好ましく、5分以上が更に好ましく、10分以上が特に好ましい。剪断により発熱が生じる場合は液温が50℃を越えない程度に冷却することが好ましい。また、分散液に均一に剪断力がかかるように攪拌又は循環することが好ましい。
【0062】
高圧ホモジナイザーを用いる場合、修飾セルロース分散液を増圧機で加圧し、細孔直径50μm以上200μm以下のノズルから噴出させ、高圧から減圧することで圧力差を生じさせる。この圧力差で生じるへき開現象により、修飾セルロースを解繊する。ここで、高圧条件の圧力が低い場合や、高圧から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維径とするための繰り返し噴出回数が多く必要となるため好ましくない。また、修飾セルロース分散液を噴出させる細孔の細孔直径が大き過ぎる場合にも、十分な解繊効果が得られず、この場合には、噴出処理を繰り返し行っても、所望の繊維径の修飾セルロース繊維が得られないおそれもある。
【0063】
修飾セルロース分散液の噴出は、必要に応じて複数回繰り返すことにより、微細化度を上げて所望の繊維径のセルロース繊維を得ることができる。この繰り返し回数(パス数)は、通常1回以上、好ましくは3回以上で、通常20回以下、好ましくは15回以下である。パス数が多い程、微細化の程度を上げることができるが、過度にパス数が多いとコスト高となるため好ましくない。
【0064】
噴出時の温度(修飾セルロース分散液の温度)には特に制限はないが、通常5℃以上100℃以下である。この温度が高すぎると装置、具体的には送液ポンプや高圧シール部等の劣化を早める恐れがあるため好ましくない。
なお、噴出ノズルは1本でも2本でもよく、噴出させたセルロースを噴出先に設けた壁やボール、リングにぶつけても良い。更にノズルが2本の場合には噴出先でセルロース同士を衝突させても良い。
【0065】
[修飾セルロース繊維分散液]
<平均繊維径>
上記の方法によって解繊された修飾セルロース繊維分散液(以下、単に「本発明の修飾セルロース繊維分散液」と称し、この修飾セルロース繊維分散液中の修飾セルロースを「本発明の修飾セルロース」と称することがある。)中のセルロース繊維の繊維径は、分散液中の分散媒を乾燥除去した後、SEMやTEM等で観察することにより計測して求めることができる。
本発明において、解繊された修飾セルロース繊維の平均繊維径(数平均繊維径)は、高透明なセルロース複合材料を得るためには、100nm以下であることを特徴とするが、この平均繊維径は80nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。なお、この平均繊維径の下限は通常4nm以上である。
【0066】
<セルロースI型結晶>
本発明の修飾セルロース繊維分散液に含まれるセルロース繊維は、セルロースI型結晶を有するものである。
【0067】
セルロースI型結晶構造とは、例えば、朝倉書店発行の「セルロースの事典」新装版第一刷P.81〜P.86、あるいはP.93〜99に記載の通りのものであり、ほとんどの天然セルロースはセルロースI型結晶構造である。これに対して、セルロースI型結晶構造ではなく、例えばセルロースII、III、IV型構造のセルロース繊維はセルロースI型結晶構造を有するセルロースから誘導されるものである。中でもI型結晶構造は他の構造に比べて結晶弾性率が高い。
本発明では、セルロースI型結晶構造のセルロース繊維により、微細セルロース繊維を提供することに特徴がある。I型結晶であると、セルロース繊維とマトリックスとの複合材料とした際に、低線膨張係数、かつ高弾性率な複合材料が得られる。
【0068】
セルロース繊維がI型結晶構造であることは、その広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の二つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
【0069】
<熱分解温度>
本発明の修飾セルロース繊維分散液に含まれる修飾セルロース繊維は、以下の方法で測定される熱分解温度が、300℃以上、特に330℃以上であることが好ましい。この温度が低いと、十分な耐熱性が得られず好ましくない。
【0070】
(熱分解温度の測定方法)
修飾セルロース繊維を温度23℃、湿度50%に48時間以上調湿し、これをTG−D
TA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて窒素下、室温から600℃まで10℃/分で
昇温していったときのTG(熱重量測定)から求めた接線の交点を熱分解温度とした。
【0071】
<後処理>
本発明の修飾セルロース繊維分散液は、前記解繊工程を経た後、その用途に応じて、分散媒(溶媒)濃度の調整、分散媒の置換、各種添加剤の添加等を適宜行うことができる。
【0072】
解繊工程を終了した解繊液は基本的に水を分散媒としているため、水を分散媒(溶媒)として用いる場合はそのまま、又は水で更に希釈することができる。また、水以外の有機溶媒を追加すること、有機溶媒を追加した後に所望の組成比まで濃縮すること、などもできる。水以外の溶媒を用いる場合は、溶媒の置換が必要となる。この場合は、溶媒を追加した後、濃縮により水を系外へ排除することが好ましい。濃縮を行う際には、系内が不均一にならないよう、注意することが必要である。系内が不均一になると、セルロース繊維の凝集が起こる場合があり、それによって、得られるセルロース複合材料のヘーズが高くなるので注意が必要である。
【0073】
分散媒として用いる溶媒は、水及び/又は水溶性有機溶媒であることが好ましい。即ち、解繊工程は基本的に水及び/又は水溶性有機溶媒を分散媒として行われることが多いため、解繊工程を終了した解繊液の溶媒を非水溶性有機溶媒に置換するには多量の置換のための溶媒と時間がかかり好ましくない。
【0074】
ここでいう水溶性有機溶媒とは、一気圧において、摂氏20度で同容量の純水と穏やかにかき混ぜた場合流動が収まった後もその混合液が均一な外観を維持するものをいう。水溶性有機溶媒としては、具体的には、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、アリルアルコール等の一価のアルコール類;エチレングリコール、ブチルグリコール、t−ブチルグリコール、メチルジグリコール、エチルジグリコール、ブチルジグリコール、メチルジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類(グリコール類);1−メトキシ−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等の上記グリコール類のアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルラクテート等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ジアセトンアルコール等のケトン類;アセトニトリル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の窒素系溶媒;酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、酪酸などの有機酸;などが挙げられる。
【0075】
[生産性]
芳香環含有置換基で修飾されたセルロースは、修飾置換基が導入されていない未修飾のセルロースや、特許文献1に記載される脂肪族置換基で修飾されたセルロースに比べて、後述の解繊処理における解繊性に優れる。従って、従来品と同条件での解繊処理を行った場合、より繊維径の小さい微細繊維を得ることができる。このため、解繊処理を軽減した上で、セルロース複合材料の透明性等の向上に有効な極微細なセルロース繊維を得ることができる。
【0076】
また、後述のセルロースシートの製造において、後掲の実施例に示されるように、本発明の方法で得られる修飾セルロース繊維分散液は、その濾過に要する時間が、未修飾のセルロース繊維の分散液に比べて格段に短く、また、脂肪族置換基で修飾したセルロース繊維の分散液に比べても更に一層短い。
【0077】
本発明の方法で得られる修飾セルロース繊維分散液により、このようにシート化の際の濾過時間が短縮される理由の詳細は明らかではないが、芳香環含有置換基は脂肪族置換基よりも疎水性が高く、芳香環含有置換基を導入することにより、セルロース繊維の水分散液からセルロース繊維が円滑に濾過分離されるようになることによるものと考えられる。また、芳香環含有置換基は嵩高い立体構造を有することから、繊維間に歪みが生じ、脂肪族置換基よりも微細化された繊維が得られやすいことによると考えられる。
【0078】
なお、後掲の実施例と比較例の濾過時間は、実験室レベルのものであり、工業的大量生産でより小さな差圧の減圧又は加圧濾過を、より大量のセルロース分散液に対して行った場合、その濾過時間の差は非常に大きな差となる。
【0079】
以上のように、本発明の修飾セルロース繊維分散液に含まれる修飾セルロース繊維は、これを用いたセルロース複合材料の生産性の向上に有効である。
【0080】
〔2〕修飾セルロースシートの製造方法
本発明の修飾セルロース繊維は、セルロース複合材料として用いる場合、シート状に成形して用いることができる。セルロースシートとすることで、樹脂を含浸させてセルロース複合材料としたり、樹脂シートではさんでセルロース複合材料とすることができる。修飾セルロースシートの製造に、上述の解繊工程を施した本発明の修飾セルロース繊維分散液を用いることにより、高透明性、低線膨張係数、高弾性率のセルロース複合材料が得られ、好ましい。この場合、上述の解繊工程を施した本発明の修飾セルロース繊維分散液を抄紙することにより、具体的には本発明の修飾セルロース繊維分散液を濾過することにより、或いは適当な基材に塗布してシート状とすることにより、セルロースシートを製造することができる。
【0081】
[抄紙工程]
セルロースシートを、本発明の修飾セルロース繊維分散液を濾過することによって製造する場合、濾過に供される本発明の修飾セルロース繊維分散液のセルロース濃度は、0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であることが好ましい。このセルロース濃度が低すぎると濾過に膨大な時間がかかるため好ましくない。また、本発明の修飾セルロース繊維分散液の濃度は1.5重量%以下、好ましくは1.2重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下であることが好ましい。このセルロース濃度が高すぎると均一なシートが得られないため好ましくない。
【0082】
また、濾過に用いる濾布としては、微細化したセルロース繊維は通過せずかつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては、有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。
【0083】
濾布としては、具体的には孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
【0084】
セルロースシートはその製造方法により、様々な空隙率を有することができる。空隙率の大きなセルロースシートを得る方法としては、抄紙工程(濾過による製膜工程)において、濾布上の被濾過物中の水を最後にアルコール等の有機溶媒に置換する方法を挙げることができる。これは、濾過により水を除去し、濾布上の被濾過物のセルロース含有量が5〜99重量%になったところでアルコール等の有機溶媒を加えるものである。或いは、本発明の修飾セルロース繊維分散液を濾過装置に投入した後、アルコール等の有機溶媒を、濾過されている分散液の上部に静かに投入することによっても濾過の最後にアルコール等の有機溶媒と置換することができる。
【0085】
ここで用いるアルコール等の有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、四塩化炭素等の1種又は2種以上の有機溶媒が挙げられる。非水溶性有機溶媒を用いる場合は、水溶性有機溶媒との混合溶媒にするか水溶性有機溶媒で置換した後、非水溶性有機溶媒で置換することが好ましい。
【0086】
この抄紙工程(濾過による製膜工程)においては、本発明の修飾セルロース繊維分散液を用いることで、他の修飾していないセルロース繊維や脂肪族系置換基で修飾されたセルロース繊維の分散液と比較して、速い速度で濾過することができ、かつ得られたシートをセルロース複合材料とした際、高透明なセルロース複合材料を得ることができる。
【0087】
上記濾過後は、乾燥を行うが、この乾燥は、送風乾燥であっても良く、減圧乾燥であっても良く、また、加圧乾燥であっても良い。また、加熱乾燥しても構わない。加熱する場合、温度は50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また、250℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。加熱温度が低すぎると乾燥に時間がかかったり、乾燥が不十分になる可能性があり、加熱温度が高すぎるとセルロースシートが着色したり、セルロースが分解したりする可能性がある。また、加圧する場合は0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、また、5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。圧力が低すぎると乾燥が不十分になる可能性がり、圧力が高すぎるとセルロースシートがつぶれたりセルロースが分解する可能性がある。
【0088】
空隙率の小さなセルロースシートを得る方法としては、本発明の修飾セルロース繊維分散液の濾過又は塗布後、上述の有機溶媒による置換を行うことなく乾燥を行う。乾燥に関しては上述の通りである。
【0089】
なお、セルロースの化学修飾は、このようにしてセルロースシートにした後に更に行うこともできる。この場合、上述のようにして得られたシートを乾燥してから化学修飾を行っても良いし、シートを乾燥する前に行っても良い。セルロースシートを前述の方法に従って化学修飾剤と反応させた後、水及び/又は有機溶媒で洗浄し、その後、乾燥することで修飾セルロースシートが得られる。
【0090】
このようにして製造される修飾セルロースシートの厚みは特に制限されるものではないが、100nm以上1cm以下が好ましい。より好ましくは1μm以上1mm以下、さらに好ましくは10μm以上500μm以下、特に好ましくは30μm以上250μm以下である。修飾セルロースシートの厚みは、製造の安定性、強度の点から上記下限以上で厚い方が好ましく、生産性、均一性、後述のマトリクス材料の含浸性の点から上記上限以下で薄い方が好ましい。
【0091】
〔3〕修飾セルロース粒子の製造方法
本発明の修飾セルロース繊維分散液に含まれる修飾セルロース繊維は、これを粒子状として用いることもできる(以下、セルロース繊維を粒子化したものを「セルロース粒子」と称す場合がある。)。これらの修飾セルロース粒子は特に熱可塑性樹脂と混練によって複合化する際に好適に用いられ、その高弾性率、低線膨張係数、表面平滑性といった特性を生かして、各種の構造材、特に表面の意匠性に優れた自動車用パネルや建築物の外壁パネル等に有用である。
【0092】
修飾セルロース繊維を粒子化する方法としては、修飾セルロース繊維を水、水溶性有機溶媒、酸又はアルカリ水溶液、界面活性剤水溶液、無機塩水溶液等に分散させてなる本発明の修飾セルロース繊維分散液を、例えば公知のスプレードライ装置を用いて、スプレーノズル等から噴射させることにより、分散媒を除去して造粒する方法が挙げられる。この噴射方法としては、具体的には回転円盤による方法、加圧ノズルによる方法、2流体ノズルによる方法などがある。スプレードライして得られた粒子を更に他の乾燥装置を用いて乾燥させても良い。この場合の熱エネルギー源としては、赤外線やマイクロ波を用いることもできる。
【0093】
また、本発明の修飾セルロース繊維分散液を凍結乾燥した後、粉砕することによっても修飾セルロース粒子を得ることができる。この場合、具体的には、本発明の修飾セルロース繊維分散液を液体窒素などで冷却した後、グラインダーや回転刃などで粉砕する方法が挙げられる。
【0094】
このような修飾セルロース繊維の粒子化は、化学修飾した後の修飾セルロース繊維に対して行うため、修飾していないセルロース繊維をセルロース粒子とした後に前述の化学修飾を行う場合に比し、生産性の点で好ましい。
【0095】
修飾セルロース粒子の粒径には特に制限はないが、1μm以上で1mm以下が好ましい。この粒径は更に好ましくは5μm以上、100μm以下であり、特に好ましくは5μm以上、50μm以下である。修飾セルロース粒子の粒径が大き過ぎると高分子と複合化した際、分散不良を起こし、小さ過ぎるとふわふわと舞って取り扱いが困難である。
【0096】
〔4〕セルロース複合材料の製造方法
[複合化方法]
本発明の修飾セルロース繊維分散液は、修飾セルロースシート又は修飾セルロース粒子として、或いはそのままの状態で高分子と複合化させることによりセルロース複合材料とすることができる。
【0097】
本発明のセルロース複合材料は、このように、本発明の修飾セルロース繊維分散液に含まれる修飾セルロース繊維、又はこれをシート化した修飾セルロースシート、又はこれを粒子化した修飾セルロース粒子、好ましくは修飾セルロースシート又は修飾セルロース粒子を、マトリクス材料であるセルロース以外の高分子と複合化したものであり、その高透明性、低線膨張係数、非着色性といった特性を生かして、各種ディスプレイ基板材料、太陽電池用基板、窓材等に有用であり、また、その高弾性率、低線膨張係数、表面平滑性といった特性を生かして、各種の構造材、特に表面の意匠性に優れた自動車用パネルや建築物の外壁パネル等に有用である。
【0098】
以下、本発明の修飾セルロース繊維分散液に含まれる修飾セルロース繊維をマトリクス材料であるセルロース以外の高分子と複合化してなる本発明のセルロース複合材料の製造方法について説明する。
【0099】
ここでマトリクス材料とは、セルロースシートと貼り合わせたり、空隙を埋めたり、造粒したセルロース粒子と共に混練する高分子材料又はその前駆体(例えばモノマー)のことをいう。
【0100】
本発明のセルロース複合材料のマトリクス材料としての高分子又はその前駆体は、セルロース複合材料の母材の一つとなり、また、後述する好適な物性を満たすセルロース複合材料を製造することができるものであれば、特に制限されない。
このマトリクス材料として好適なものは、加熱することにより流動性のある液体になる熱可塑性樹脂、加熱により重合する熱硬化性樹脂、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより重合硬化する、活性エネルギー線硬化性樹脂等から選ばれる少なくとも1種の樹脂(高分子材料)又はその前駆体である。
なお、本発明において高分子材料の前駆体とは、いわゆるモノマー、オリゴマーであり、例えば、熱可塑性樹脂の項に重合又は共重合成分として後述する各単量体など(以後、熱可塑性樹脂前駆体と称することがある)、熱硬化性樹脂・光硬化性樹脂の項に後述する各前駆体などが挙げられる。
【0101】
本発明のセルロース複合材料を製造する方法、即ち修飾セルロースシート、修飾セルロース粒子等(以下「セルロースシート、粒子等」と称す場合がある。)とマトリックス材料との接触及び複合化の方法としては、次の(a)〜(h)の方法が挙げられる。
(a) セルロースシート、粒子等に液状の熱可塑性樹脂前駆体を含浸させて重合させる方法
(b) セルロースシート、粒子等に熱硬化性樹脂前駆体又は活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体を含浸させて重合硬化させる方法
(c) セルロースシート、粒子等に樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、及び光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を含浸させて乾燥した後、加熱プレス等で密着させ、必要に応じて重合硬化させる方法
(d) セルロースシート、粒子等に熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で
密着させる方法
(e) 熱可塑性樹脂シート(又はフィルム)とセルロースシートを交互に配置し、加熱
プレス等で密着させる方法
(f) セルロースシートの片面もしくは両面に液状の熱可塑性樹脂前駆体や熱硬化性樹脂前駆体もしくは活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体を塗布して重合硬化させる方法
(g) セルロースシートの片面もしくは両面に樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、及び光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を塗布して、溶媒を除去後、必要に応じて重合硬化させることにより複合化する方法
(h) セルロース粒子と熱可塑性樹脂を溶融混練した後、シート状や目的の形状に成形
する方法
【0102】
なお、前述の本発明の修飾セルロース繊維分散液を乾燥させることなく水中でセルロース以外の高分子と複合化させた後、水を除去したり、水から他の有機溶媒に置換した後その有機溶媒中でセルロース以外の高分子と複合化させた後、その有機溶媒を除去することでセルロース複合材料を製造することもできる。
【0103】
中でも修飾セルロースシートに対しては(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)の方法が好ましく、修飾セルロース粒子に対しては(h)の方法が好ましい。
【0104】
(a) セルロースシート、粒子等に液状の熱可塑性樹脂前駆体を含浸させて重合する方法としては、重合可能なモノマーやオリゴマーをセルロースシート、粒子等に含浸させ、熱処理等により上記モノマーを重合させることによりセルロース複合材料を得る方法が挙げられる。一般的には、モノマーの重合に用いられる重合触媒を重合開始剤として用いることができる。
【0105】
(b) セルロースシート、粒子等に熱硬化性樹脂前駆体又は活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体を含浸させて重合硬化させる方法としては、エポキシ樹脂モノマー等の熱硬化性樹脂前駆体、又はアクリル樹脂モノマー等の活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体と硬化剤の混合物を、セルロースシート又は粒子に含浸させ、熱又は活性エネルギー線等により上記熱硬化性樹脂前躯体又は活性エネルギー線硬化性樹脂前躯体を硬化させることによりセルロース複合材料を得る方法が挙げられる。
【0106】
(c) セルロースシート、粒子等に樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、及び光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質(以下「樹脂成分」と称す場合がある。)を含む溶液)を含浸させて乾燥した後、加熱プレス等で密着させ、必要に応じて重合硬化させる方法としては、上記樹脂成分を、樹脂成分が溶解する溶媒に溶解させ、その溶液をセルロースシート、粒子等に含浸させ、乾燥させることでセルロース複合材料を得る方法が挙げられる。この場合、乾燥後加熱プレス等で溶媒が乾燥した空隙を密着させることでより高性能なセルロース複合材料を得る方法が挙げられる。光硬化性樹脂の場合には更に、必要に応じて活性エネルギー線等による重合硬化を行う。
上記樹脂成分を溶解させる溶媒としては、修飾セルロース繊維との親和性と樹脂成分の溶解性を考慮して選択すればよく、具体的には修飾セルロース繊維分散液の分散媒として例示したもの等の中から、樹脂成分の溶解性に応じて選択すればよい。
【0107】
(d) セルロースシート、粒子等に熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法としては、熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上又は融点以上で熱処理することにより溶融させ、融液をセルロースシート、粒子等に含浸させ、加熱プレス等で密着することによりセルロース複合材料を得る方法が挙げられる。熱処理は加圧下で行うことが望ましく、真空加熱プレス機能を有する設備の使用が有効である。
【0108】
(e) 熱可塑性樹脂シート(又はフィルム)とセルロースシートを交互に配置し、加熱プレス等で密着させる方法としては、修飾セルロースシートの片面もしくは両面に熱可塑性樹脂のシート(又はフィルム)を配置し、必要に応じて加熱やプレスすることにより、熱可塑性樹脂シート(又はフィルム)と修飾セルロースシートを貼り合わせる方法が挙げられる。この場合、修飾セルロースシートの表面に予め接着剤やプライマーなどを塗布して貼り合わせても良い。貼り合わせる際に気泡を抱き込まないように、加圧された2本のロールの間を通す方法や、真空状態でプレスする方法を用いることができる。
【0109】
(f) セルロースシートの片面もしくは両面に液状の熱可塑性樹脂前駆体や熱硬化性樹脂前駆体もしくは活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体を塗布して硬化させる方法としては、修飾セルロースシートの片面もしくは両面に熱重合開始剤を処方した熱硬化性樹脂前駆体を塗布して加熱することにより硬化させて両者を密着させる方法や、修飾セルロースシートの片面もしくは両面に光重合開始剤を処方した活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体を塗布した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化させる方法が挙げられる。修飾セルロースシートに熱もしくは活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体を塗布した後、更に修飾セルロースシートを重ねるなど、多層構造にしてから、硬化させても良い。
【0110】
(g) セルロースシートの片面もしくは両面に樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、及び光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質(樹脂成分)を含む溶液)を塗布して、溶媒を除去後、必要に応じて重合硬化させることにより複合化する方法としては、溶媒に可溶な樹脂成分を当該溶媒に溶解させた樹脂溶液を用意し、修飾セルロースシートの片面もしくは両面に塗布し、加熱により溶媒を除去する方法が挙げられる。光硬化性樹脂の場合には更に、必要に応じて活性エネルギー線等による重合硬化を行う。
ここで、樹脂成分を溶解させる溶媒としては、修飾セルロース繊維との親和性と樹脂成分の溶解性を考慮して選択すればよく、具体的には修飾セルロース繊維分散液の分散媒として例示したもの等の中から、樹脂成分の溶解性に応じて選択すればよい。
【0111】
このようにして製造した修飾セルロースシートと樹脂とのセルロース複合材料を複数枚重ねて積層体を得ることもできる。その際に、修飾セルロースシートを含むセルロース複合材料と含まない樹脂シートを積層しても良い。セルロース複合材料同士や樹脂シートとセルロース複合材料とを接着させるために、接着剤を塗布したり接着シートを介在させても良い。また、積層体に加熱プレス処理を加えて一体化することもできる。
【0112】
(h) セルロース粒子と熱可塑性樹脂を溶融混練した後、シート状や目的の形状に成形する方法としては、修飾セルロース粒子と熱可塑性樹脂とを、ドライブレンドした後に溶融する方法、溶融混練する方法、等が好ましく挙げられる。ドライブレンドした後に溶融する方法は、両者を、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等により均一に混合し、その後、該混合物に必要に応じて用いられる酸化防止剤などの添加剤を添加し、溶融状態を経てセルロース複合材料とする。具体的には、例えば、該混合物を単に溶融するか、又は、一軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等により溶融混練する。その後、Tダイから押し出してシート状に成形したり、金型に射出するなどして、目的の形状に成形する。
【0113】
[マトリクス材料の具体例]
本発明のセルロース複合材料に用いられるマトリクス材料の具体例及び好適例について以下に例示するが、本発明で用いるマトリックス材料は何ら以下のものに限定されるものではない。また、本発明における熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂は2種以上混合して用いることができる。
【0114】
本発明においては、以下のマトリックス材料(高分子材料又はその前駆体)のうち、高分子材料、又は前駆体の場合にはその重合体が、非晶質でガラス転移温度(Tg)の高い合成高分子であるものが、透明性に優れた高耐久性のセルロース複合材料を得る上で好ましい。なかでも、非晶質の程度としては、結晶化度で10%以下、特に5%以下であるものが好ましく、また、Tgは室温以上、特に100℃以上、とりわけ130℃以上のものが好ましい。なお、高分子のTgは一般的な方法で求めることができる。例えば、DSC法による測定で求められる。高分子の結晶化度は、非晶質部と結晶質部の密度から算定することができ、また、動的粘弾性測定により、弾性率と粘性率の比であるtanδから算出することもできる。
【0115】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、後述するセルロース複合材料の物性を満足し得るものであれば特に制限されないが、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0116】
スチレン系樹脂としては、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンなどの重合体及び共重合体が挙げられる。
【0117】
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドなどの重合体及び共重合体が挙げられる。ここで「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0118】
(メタ)アクリル酸エステルとは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロアルキルエステル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチルなどが挙げられる。
【0119】
(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0120】
芳香族ポリカーボネート系樹脂とは、3価以上の多価フェノール類を共重合成分として含有できる1種以上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲンなどの炭酸エステル類との反応により製造される共重合体である。必要に応じて、芳香族ポリエステルカーボネート類とするために共重合成分として、テレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸又はその誘導体(例えば、芳香族ジカルボン酸ジエステルや芳香族ジカルボン酸塩化物)を使用しても良い。
【0121】
上記ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ(略号はアルドリッチ社試薬カタログを参照)などが例示され、中でもビスフェノールAとビスフェノールZ(中心炭素がシクロヘキサン環に参加しているもの)が好ましく、ビスフェノールAが特に好ましい。共重合可能な3価フェノール類としては、1,1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンやフロログルシノールなどが例示できる。
【0122】
脂肪族ポリカーボネート系樹脂としては、脂肪族ジオール成分及び/又は脂環式ジオール成分と、ビスアルキルカーボネート、ホスゲンなどの炭酸エステル類との反応により製造される共重合体である。脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノールやイソソルバイトなどが挙げられる。
【0123】
芳香族ポリエステル系樹脂としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのジオール類とテレフタル酸などの芳香族カルボン酸との共重合体が挙げられる。また、ポリアリレートのように、ビスフェノールAなどのジオール類とテレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族カルボン酸との共重合体も挙げられる。
【0124】
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、上記ジオールとコハク酸、吉草酸などの脂肪族ジカルボン酸との共重合体やグリコール酸や乳酸などのヒドロキシジカルボン酸の共重合体等が挙げられる。
【0125】
脂肪族ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセンなどの炭素数2〜18程度の他のα−オレフィンなどとの二元あるいは三元の共重合体が挙げられる。具体的には、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高密度ポリエチレンなどのエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体などのエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体などのプロピレン系樹脂、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体などの1−ブテン系樹脂、及び、4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン−エチレン共重合体などの4−メチル−1−ペンテン系樹脂などの樹脂、並びに、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、1−ブテンと他のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。
更に、例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,4−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンとの二元あるいは三元の共重合体が挙げられる。具体的には、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体などのオレフィン系ゴムが挙げられる。これらのオレフィン系重合体は、2種以上が併用されていても良い。
【0126】
環状オレフィン系樹脂とは、ノルボルネンやシクロヘキサジエン等、ポリマー鎖中に環状オレフィン骨格を含む重合体又はこれらを含む共重合体である。例えば、ノルボルネン骨格の繰り返し単位、又はノルボルネン骨格とメチレン骨格の共重合体よりなるノルボルネン系樹脂が挙げられ、市販品としては、JSR製の「アートン」、日本ゼオン製の「ゼネックス」及び「ゼオノア」、三井化学製の「アペル」、チコナ製の「トーパス」などが挙げられる。
【0127】
ポリアミド系樹脂としては、6,6−ナイロン、6−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロンなどの脂肪族アミド系樹脂や、フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンと塩化テレフタロイルや塩化イソフタロイルなどの芳香族ジカルボン酸又はその誘導体とからなる芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0128】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体も挙げられる。
【0129】
ポリイミド系樹脂としては、例えば、無水ポリメリット酸や4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの共重合体であるピロメリット酸型イミド、無水塩化トリメリット酸やp−フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンやジイソシアネート化合物からなる共重合体であるトリメリット酸型ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンなどからなるビフェニル型ポリイミド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸や4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどからなるベンゾフェノン型ポリイミド、ビスマレイミドや4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどからなるビスマレイミド型ポリイミドが挙げられる。
【0130】
ポリアセタール系樹脂としては、例えば、オキシメチレン構造を単位構造にもつホモポリマーと、オキシエチレン単位を含む共重合体が挙げられる。
【0131】
ポリスルホン系樹脂としては、例えば、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンやビスフェノールAなどの共重合体が挙げられる。
【0132】
非晶性フッ素系樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ペルフルオロアルキルビニルエーテルなどの単独重合体又は共重合体が挙げられる。
【0133】
これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0134】
<硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂とは、前駆体が硬化してなる樹脂硬化物のことを意味する。ここで前駆体は、常温では液状、半固体状又は固形状であって、常温下又は加熱下で流動性を示す物質を意味する。これらは硬化剤、触媒、熱又は光の作用によって、重合反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融の樹脂となり得る。また、樹脂硬化物とは、上記熱硬化性樹脂前駆体又は活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体が硬化してなる樹脂を意味する。
【0135】
<熱硬化性樹脂>
本発明における熱硬化性樹脂前駆体としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの前駆体が挙げられる。
【0136】
上記エポキシ樹脂前駆体としては、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ樹脂前駆体中のエポキシ基の数としては、1分子あたり1個以上7個以下であることが好ましく、1分子あたり2個以上であることがより好ましい。ここで、前駆体1分子あたりのエポキシ基の数は、エポキシ樹脂前駆体中のエポキシ基の総数をエポキシ樹脂中の分子の総数で除算することにより求められる。
【0137】
上記エポキシ樹脂前駆体としては特に限定されず、例えば、以下に示したエポキシ樹脂の前駆体が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の前駆体は、単独でも2種以上併用されても良い。エポキシ樹脂は、通常、硬化剤を用いてエポキシ樹脂前躯体を硬化することにより得られる。
【0138】
エポキシ樹脂前駆体としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂及びこれらの水添化物や臭素化物などの前駆体が挙げられる。
また、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチルアジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環族エポキシ樹脂前駆体が挙げられる。
また、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数2〜9(好ましくは2〜4)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ樹脂前駆体が挙げられる。
また、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル型エポキシ樹脂前駆体及びこれらの水添化物が挙げられる。
また、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体のグリシジルアミン型エポキシ樹脂の前駆体及びこれらの水添化物などが挙げられる。
また、グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。また、エポキシ化ポリブタジエン等の共役ジエン化合物を主体とする重合体又はその部分水添物の重合体における不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。また、エポキシ化SBS等のような、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック又はその部分水添化物の重合体ブロックとを同一分子内にもつブロック共重合体における共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。また、1分子あたり1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。また、上記エポキシ樹脂の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入した、ウレタン変性エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。上記変性エポキシ樹脂としては、例えば、上記エポキシ樹脂にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、エポキシ樹脂以外に、少なくとも1つのオキシラン環を有する樹脂又はオリゴマーが添加されても良い。また、フルオレン含有エポキシ樹脂、フルオレン基を含有する熱硬化性樹脂及び組成物、又はその硬化物も挙げられる。これらフルオレン含有エポキシ樹脂は、高耐熱であるため好適に用いられる。
【0139】
上記エポキシ樹脂前駆体の硬化反応に用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されても良い。
【0140】
アクリル樹脂前駆体としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に2個又は3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、アクリル酸誘導体、分子内に4〜8個の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0141】
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキル基の炭素数が1〜30であるアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0142】
特に、脂環骨格を有するモノ(メタ)アクリレートは、耐熱性が高くなるので、好適に利用することができる。脂環骨格モノ(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば(ヒドロキシ−アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシ−アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシメチル−アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシメチル−アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシエチル−アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシエチル−アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等が挙げられる。また、これらの混合物を使用することもできる。
【0143】
分子中に2個又は3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール以上のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルキル基の炭素数が1〜30であるアルキルジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート、2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,4−ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0144】
エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0145】
これらの中でも、含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート化合物が好適に用いられる。
例えば、ビス(アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0146】
これらのうち、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン及び(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンから選ばれるものが好ましい。これらのビス(メタ)アクリレートは、2種以上を併用することもできる。
【0147】
分子内に4〜8個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステルが利用できる。
具体的には、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールセプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0148】
エポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ基を有する化合物、ビスフェノールA型プロピレンオキサイド付加型の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸との反応物を挙げることができる。
具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジプロピレンオキサイドジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル=トリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0149】
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートとしては、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2〜10個(好ましくは2〜5個)有するウレタンオリゴマー等が挙げられる。例えば、ジオール類及びジイソシアネート類を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、ヒドロキシ基含有の(メタ)アクリレートを反応させて製造される(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマーがある。
【0150】
ここで用いるジオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールが挙げられる。
イオン重合性環状化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン性重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。
上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテンオキシドとエチレンオキシド等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していても良いし、ブロック状の結合をしていても良い。
【0151】
ここまでに述べたこれらのポリエーテルジオールは、例えばPTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学(株)製)、PPG1000、EXCENOL2020、1020(以上、旭オーリン(株)製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂(株)製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬(株)製)等の市販品としても入手することができる。
【0152】
上記のポリエーテルジオールの他にポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオールなどが挙げられ、これらのジオールをポリエーテルジオールと併用して用いることもできる。これらの構造単位の重合様式は特に制限されず、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであっても良い。ここで用いるポリエステルジオールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の多価アルコールと、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の多塩基酸とを反応して得られるポリエステルポリオールを挙げることができる。市販品としてはクラポールP−2010、PMIPA、PKA−A、PKA−A2、PNA−2000(以上、(株)クラレ製)等が入手できる。
【0153】
また、ポリカーボネートジオールとしては、例えば1,6−ヘキサンポリカーボネート等が挙げられ、市販品としてはDN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン(株)製)、PC−8000(米国PPG(株)製)等が挙げられる。
【0154】
さらにポリカプロラクトンジオールとしては、ε−カプロラクトンと、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等の2価のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオールが挙げられる。これらのジオールは、プラクセル205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル(株)製)等が市販品として入手することができる。
【0155】
上記以外のジオールも数多く使用することができる。このようなジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール、β−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ヒマシ油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等が挙げられる。
【0156】
また上記したようなジオールを併用する以外にも、ポリオキシアルキレン構造を有するジオールとともにジアミンを併用することも可能であり、このようなジアミンとしてはエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン等のジアミンやヘテロ原子を含むジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
【0157】
好ましいジオールとしては、1,4−ブタンジオールの重合体であるポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。このジオールの好ましい分子量は、数平均分子量で通常50〜15,000であり、特に500〜3,000である。
【0158】
一方、ジイソシアネート類としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネートは一種でも、二種以上を併用して用いても良い。
なかでも、イソホロンジイソシアネートやノルボルナンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートなどの脂環骨格を有するジイソシアネートが好適に用いられる。
【0159】
また、反応に用いるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、さらにアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も挙げることができる。これらのうち、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0160】
市販のウレタンオリゴマーとしては、EB2ECRYL220(ダイセル・サイテック)、アートレジンUN-3320HA(根上工業)、アートレジンUN-3320HB(根上工業)、アートレジンUN-3320HC(根上工業)、アートレジンUN-330(根上工業)及びアートレジンUN-901T(根上工業)、NK-オリゴU-4HA(新中村化学)、NK-オリゴU-6HA(新中村化学)、NK-オリゴU-324A(新中村化学)、NK-オリゴU-15HA(新中村化学)、NK-オリゴU-108A(新中村化学)、NK-オリゴU-200AX(新中村化学)、NK-オリゴU-122P(新中村化学)、NK-オリゴU-5201(新中村化学)、NK-オリゴU-340AX(新中村化学)、NK-オリゴU-511(新中村化学)、NK-オリゴU-512(新中村化学)、NK-オリゴU-311(新中村化学)、NK-オリゴUA-W1(新中村化学)、NK-オリゴUA-W2(新中村化学)、NK-オリゴUA-W3(新中村化学)、NK-オリゴUA-W4(新中村化学)、NK-オリゴUA-4000(新中村化学)、NK-オリゴUA-100(新中村化学)、紫光UV-1400B(日本合成化学工業)、紫光UV-1700B(日本合成化学工業)、紫光UV-6300B(日本合成化学工業)、紫光UV-7550B(日本合成化学工業)、紫光UV-7600B(日本合成化学工業)、紫光UV-7605B(日本合成化学工業)、紫光UV-7610B(日本合成化学工業)、紫光UV-7620EA(日本合成化学工業)、紫光UV-7630B(日本合成化学工業)、紫光UV-7640B(日本合成化学工業)、紫光UV-6630B(日本合成化学工業)、紫光UV-7000B(日本合成化学工業)、紫光UV-7510B(日本合成化学工業)、紫光UV-7461TE(日本合成化学工業)、紫光UV-3000B(日本合成化学工業)、紫光UV-3200B(日本合成化学工業)、紫光UV-3210EA(日本合成化学工業)、紫光UV-3310B(日本合成化学工業)、紫光UV-3500BA(日本合成化学工業)、紫光UV-3520TL(日本合成化学工業)、紫光UV-3700B(日本合成化学工業)、紫光UV-6100B(日本合成化学工業)、紫光UV-6640B(日本合成化学工業)等が使用できる。
【0161】
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートの数平均分子量は、1,000〜100,000が好ましく、更に好ましくは2,000〜10,000である。
【0162】
なかでも、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコールを有するウレタンアクリレートは透明性、低複屈折性、柔軟性等の点により優れており、好適に利用することができる。
【0163】
オキセタン樹脂前駆体としては、少なくとも1個のオキセタン環を有する化合物が挙げられる。上記オキセタン樹脂前駆体中のオキセタン環の数は、1分子あたり1個以上、4個以下が好ましい。分子中に1個のオキセタンを有する化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル{[−3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンなどが挙げられる。分子中に2個のオキセタンを有する化合物としては、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4′−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルなどが挙げられる。3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、分枝状のポリアルキレンオキシ基やポリシロキシ基と3−アルキル−3−メチルオキセタンの反応物などが挙げられる。
【0164】
上記オキセタン樹脂前駆体の硬化反応に用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されても良い。特に光硬化剤はエネルギーの有効活用の面から好適に利用される。ここで光硬化剤とは活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始させる化合物であり、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
【0165】
フェノール樹脂前駆体としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類とホルムアルデヒド等を反応させノボラック等を合成し、これをヘキサメチレンテトラミン等で硬化させたもの等が挙げられる。
【0166】
ユリア樹脂前駆体としては、尿素等とホルムアルデヒド等の重合反応物が挙げられる。
【0167】
メラミン樹脂前駆体としては、メラミン等とホルムアルデヒド等の重合反応物が挙げられる。
【0168】
不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和多塩基酸等と多価アルコール等より得られる不飽和ポリエステルを、これと重合する単量体に溶解し硬化した樹脂等が挙げられる。
【0169】
珪素樹脂前駆体としては、オルガノポリシロキサン類を主骨格とするものが挙げられる。
【0170】
ポリウレタン樹脂前駆体としては、グリコール等のジオール類と、ジイソシアネートからなる重合反応物等が挙げられる。
【0171】
ジアリルフタレート樹脂前駆体としては、ジアリルフタレートモノマー類とジアリルフタレートプレポリマー類からなる反応物が挙げられる。
【0172】
これら熱硬化性樹脂の硬化剤、硬化触媒としては特に限定はないが、例えば、硬化剤としては多官能アミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール樹脂等が挙げられ、硬化触媒としてはイミダゾール等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0173】
<活性エネルギー線硬化性樹脂>
本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂としては、特に限定されないが、上述の熱硬化性樹脂の説明において例示したエポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂等の前駆体が挙げられる。
【0174】
これら活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化剤としては特に限定はないが、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
【0175】
〈その他の成分〉
上述した熱硬化性樹脂前駆体及び活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体は、適宜、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤等と配合した硬化性組成物として用いることができる。
【0176】
(連鎖移動剤)
反応を均一に進行させる目的等で、該硬化性組成物は連鎖移動剤を含んでも良い。
連鎖移動剤としては、例えば、分子内に2個以上のチオール基を有する多官能メルカプタン化合物を用いることができ、これにより硬化物に適度な靱性を付与する事ができる。メルカプタン化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオグリコレート)、ジエチレングリコールビス(β−チオプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(β−チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオグリコレート)等の2〜6価のチオグリコール酸エステル又はチオプロピオン酸エステル;トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコリルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート等のω−SH基含有トリイソシアヌレート;ベンゼンジメルカプタン、キシリレンジメルカプタン、4、4’−ジメルカプトジフェニルスルフィド等のα,ω−SH基含有化合物等が挙げられる。これらの中でもペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレートなどが挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を併用して用いても良い。メルカプタン化合物を入れる場合は、ラジカル重合可能な化合物の合計に対して、通常30重量%以下の割合で含有させる。
【0177】
(紫外線吸収剤)
着色防止目的で該硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含んでも良い。例えば、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤から選ばれるものである。これらは、1種類を用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリーブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、その他マロン酸エステル系のホスタビンPR−25(クラリアント社)、蓚酸アニリド系のサンデュボアVSU(クラリアント社)などの化合物である。紫外線吸収剤を入れる場合は、ラジカル重合可能な化合物の合計100重量部に対して、通常0.01〜1重量部の割合で含有させる。
【0178】
(セルロース以外の充填剤)
また、該硬化性組成物は、セルロース繊維以外の充填剤を含んでも良い。充填剤としては、例えば、無機粒子や有機高分子などが挙げられる。具体的には、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などの無機粒子、ゼオネックス(日本ゼオン社)やアートン(JSR社)などの透明シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートやPMMAなどの汎用熱可塑性ポリマーなどが挙げられる。中でも、ナノサイズのシリカ粒子を用いると透明性を維持することができ好適である。また、活性エネルギー線硬化性モノマーと構造の似たポリマーを用いると高濃度までポリマーを溶解させることが可能であり、好適である。
【0179】
(シランカップリング剤)
また、該硬化性組成物にはシランカップリング剤を添加しても良い。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
なかでも、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等は分子中に(メタ)アクリル基を有しており、他のモノマーと共重合することができるので好ましい。
シランカップリング剤は、ラジカル重合可能な化合物の合計に対して通常0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%となるように含有させる。この配合量が少な過ぎると、これを含有させる効果が十分に得られず、また、多過ぎると、硬化物の透明性などの光学特性が損なわれる恐れがある。
【0180】
<硬化工程>
マトリクス材料としての高分子材料の前駆体(例えば、熱硬化性樹脂前駆体、活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体)を使用した場合は、必要に応じて、前駆体を硬化させる硬化工程を実施しても良い。
【0181】
硬化方法は、使用される前駆体の種類により適宜選択されるが、例えば、熱硬化、又は放射線硬化が挙げられる。好ましくは放射線硬化である。放射線としては、赤外線、可視光線、紫外線、電子線等が挙げられるが、好ましくは光である。更に好ましくは波長が200nm〜450nm程度の光であり、更に好ましくは波長が300〜400nmの紫外線である。
【0182】
具体的には、予め高分子材料の前駆体に加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤を添加しておき、加熱して重合させる方法(以下「熱重合」という場合がある)、予め高分子材料の前駆体に紫外線等の放射線によりラジカルを発生する光重合開始剤を添加しておき、放射線を照射して重合させる方法(以下「光重合」という場合がある)等、及び熱重合開始剤と光重合開始剤を併用して予め添加しておき、熱と光の組み合わせにより重合させる方法が挙げられ、本発明においては光重合がより好ましい。
【0183】
光重合開始剤としては、通常、光ラジカル発生剤が用いられる。光ラジカル発生剤としては、この用途に用い得ることが知られている公知の化合物を用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが好ましい。これらの光重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0184】
光重合開始剤の使用量は、ラジカル重合可能な化合物の合計を100重量部としたとき、0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.05重量部以上である。その上限は、通常1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.1重量部以下である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、得られる硬化物の複屈折を大きくするだけでなく色相も悪化する。例えば、開始剤の量を5重量部とした場合、開始剤の吸収により、紫外線の照射と反対側に光が到達できずに未硬化の部分が生ずる。また、黄色く着色し色相の劣化が著しい。一方、少なすぎると紫外線照射を行っても重合が十分に進行しないおそれがある。
【0185】
硬化に際して照射する放射線の量は、光重合開始剤がラジカルを発生させる範囲であれば任意である。なお、極端に少ない場合は重合が不完全となるため硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されず、逆に極端に過剰な場合は硬化物の黄変等の光による劣化を生じるので、モノマーの組成及び光重合開始剤の種類、量に合わせて、波長300〜450nmの紫外線を、好ましくは0.1J/cm以上200J/cm以下の範囲で照射する。更に好ましくは1J/cm以上20J/cmの範囲で照射する。放射線を複数回に分割して照射すると、より好ましい。すなわち1回目に全照射量の1/20〜1/3程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射すると、複屈折のより小さな硬化物が得られる。使用するランプの具体例としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、紫外線LEDランプ等を挙げることができる。
【0186】
重合をすみやかに完了させる目的で、光重合と熱重合を同時に行う場合には、放射線照射と同時に30℃以上300℃以下の範囲で加熱して硬化を行う。この場合、重合を完結するために熱重合開始剤を添加しても良いが、大量に添加すると硬化物の複屈折の増大と色相の悪化をもたらすので、熱重合開始剤は、ラジカル重合可能な化合物の合計に対して通常0.1重量%以上2重量%以下、より好ましくは0.3重量%以上1重量%以下となるように用いる。
【0187】
熱重合開始剤としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。具体的には、ベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)ジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等を用いることができる。光照射時に熱重合が開始されると、重合を制御することが難しくなるので、これらの熱重合開始剤は好ましくは1分半減期温度が120℃以上であることが良い。これらの重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0188】
[積層構造体]
本発明のセルロース複合材料は、本発明の修飾セルロース繊維シートの層と、前述したセルロース以外の高分子よりなる平面構造体層(例えばシート又はフィルム)との積層構造体であっても良く、また、本発明の修飾セルロース繊維シートと、本発明のセルロース複合材料との積層構造としても良く、その積層数や積層構成には特に制限はない。
【0189】
また、本発明のセルロース複合材料は、その用途に応じて、これに更に無機膜が積層されたものであっても良く、上述の積層体に更に無機膜が積層されたものであっても良い。
【0190】
ここで用いられる無機膜は、セルロース複合材料の用途に応じて適宜決定され、例えば、白金、銀、アルミニウム、金、銅等の金属、シリコン、ITO、SiO、SiN、SiOxNy、ZnO等、TFT等が挙げられ、その組み合わせや膜厚は任意に設計することができる。
【0191】
[セルロース複合材料の特性ないし物性]
以下に本発明のセルロース複合材料の好適な特性ないし物性について説明する。
【0192】
<セルロース含有量>
本発明のセルロース複合材料中の本発明の修飾セルロース繊維の含有量は通常1重量%以上99重量%以下であり、セルロース以外の高分子の含有量が1重量%以上99重量%以下である。低線膨張性を発現するには、修飾セルロース繊維の含有量が1重量%以上、セルロース以外の高分子の含有量が99重量%以下であること必要である。透明性を発現するにはセルロース繊維の含有量が99重量%以下、セルロース以外の高分子の含有量が1重量%以上であることが必要である。好ましい範囲はセルロース繊維が5重量%以上90重量%以下であり、セルロース以外の高分子が10重量%以上95重量%以下であり、さらに好ましい範囲はセルロース繊維が10重量%以上80重量%以下であり、セルロース以外の高分子が20重量%以上90重量%以下である。特に、セルロースの含有量が30重量%以上70重量%以下で、セルロース以外の高分子の含有量が30重量%以上70重量%以下であることが好ましい。
【0193】
セルロース複合材料中の修飾セルロース繊維及びセルロース以外の高分子の含有量は、例えば、複合化前の修飾セルロース繊維の重量と複合化後のセルロース複合材料の重量より求めることができる。また、高分子が可溶な溶媒にセルロース複合材料を浸漬して高分子のみを取り除き、残ったセルロース繊維の重量から求めることもできる。その他、高分子の比重から求める方法や、NMR、IRを用いて高分子やセルロース繊維の官能基を定量して求めることもできる。
【0194】
<厚み>
本発明のセルロース複合材料の厚みは、好ましくは10μm以上10cm以下であり、このような厚みとすることにより、構造材としての強度を保つことができる。セルロース複合材料の厚みはより好ましくは50μm以上1cm以下であり、さらに好ましくは80μm以上250μm以下である。
なお、本発明のセルロース複合材料は、例えば、このような厚みの膜状(フィルム状)又は板状であるが、平膜又は平板に限らず、曲面を有する膜状又は板状とすることもできる。また、その他の異形形状であっても良い。また、厚みは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていても良い。
【0195】
<着色>
本発明のセルロース複合材料は、着色が少ない。
セルロースは、特に木質由来の原料を用いることで黄色味がつく場合がある。これには、セルロース自体の着色の場合と、精製度合いによって残ったセルロース以外の物質が着色する場合とがある。一般的に、セルロースのみの段階では着色しないが、高分子と複合化する際の加熱によって着色することがある。本発明の修飾セルロース繊維及びセルロース複合材料は、加熱の工程が入っても着色が少ない。本発明のセルロース複合材料の着色の程度は、YI値として20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。YI値は例えば、スガ試験機製カラーコンピューターを用いて測定することができる。
【0196】
<ヘーズ>
本発明のセルロース複合材料は、透明性の高い、すなわちヘーズの小さいセルロース複合材料とすることができる。各種透明材料として用いる場合、このセルロース複合材料のヘーズ値は、好ましくは30以下、より好ましくは25以下であり、特にこの値は20以下であることが好ましい。ヘーズの測定は例えばスガ試験機製ヘーズメータを用いて行い、C光の値を用いる。
【0197】
<全光線透過率>
本発明のセルロース複合材料を各種透明材料として用いる場合、このセルロース複合材料について、JIS規格K7105に準拠してその厚み方向に測定された全光線透過率が60%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。この全光線透過率が60%未満であると半透明又は不透明となり、透明性が要求される用途への使用が困難となる場合がある。全光線透過率は例えば、厚み10〜100μmのセルロース複合材料について、スガ試験機製ヘーズメータを用いて測定することができ、C光の値を用いる。
【0198】
<線膨張係数>
本発明のセルロース複合材料は、線膨張係数(1Kあたりの伸び率)の低いセルロースを用いることにより線膨張係数の低いセルロース複合材料とすることができる。このセルロース複合材料の線膨張係数は1〜50ppm/Kであることが好ましく、1〜40ppm/Kであることがより好ましく、1〜30ppm/Kであることが特に好ましい。
なお、線膨張係数は、後述の実施例の項に記載される方法により測定される。
【0199】
<引張強度>
本発明のセルロース複合材料の引張強度は、好ましくは40MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上である。引張強度が40MPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
【0200】
<引張弾性率>
本発明のセルロース複合材料の引張弾性率は、好ましくは0.2〜100GPaであり、より好ましくは1〜50GPaである。引張弾性率が0.2GPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
【0201】
[用途]
本発明のセルロース複合材料は、透明性が高く、高強度、低吸水性、高透明性、低着色、光学特性に優れるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイや基板やパネルとして好適である。また、シリコン系太陽電池、色素増感太陽電池などの太陽電池用基板に好適である。基板としては、バリア膜、ITO、TFT等と積層しても良い。また、自動車用の窓材、鉄道車両用の窓材、住宅用の窓材、オフィスや工場などの窓材などに好適に使われる。窓材としては、必要に応じてフッ素皮膜、ハードコート膜等の膜や耐衝撃性、耐光性の素材を積層しても良い。
また、低線膨張係数、高弾性、高強度等の特性を生かして透明材料用途以外の構造体としても用いることができる。特に、内装材、外板、バンパー等の自動車材料やパソコンの筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他、工業用資材等として好適に用いられる。
【実施例】
【0202】
以下、製造例、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0203】
尚、製造された修飾セルロース繊維及びセルロース複合材料の物性ないし特性の評価方法は、以下の通りである。
【0204】
<修飾セルロース繊維の化学修飾率>
乾燥した修飾セルロース繊維0.05gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加し、60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加し、60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌した。これをフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定し、下記式より化学修飾率を計算した。
【0205】
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、修飾率X(モル%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
【数3】

これを解いていくと、以下の通りである。
【数4】

【0206】
<セルロースの熱分解温度>
セルロースシートを温度23℃、湿度50%に48時間以上調湿し、これをTG−DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて窒素下、室温から600℃まで10℃/分で昇温していったときのTGから求めた接線の交点を熱分解温度とした。
【0207】
<平均繊維径>
セルロース繊維の繊維径は、SEMやTEM等で観察することにより計測して求めた。ランダムに抽出した12点中最大と最小を除いた10点の平均を平均繊維径とした。
【0208】
<セルロースの広角X線回折像測定>
セルロースシートをX線発生装置(PANanalytical社製「PW1700」)を用い、ターゲットCu/Kα線、モノクロメーター、電圧40kV、電流30mA、走査角(2θ)3.0〜50.0°、ステップ角0.05°の測定条件で測定を行った。
【0209】
<セルロース複合材料のセルロース繊維含有量>
複合化に用いたセルロースシートの重量と、セルロース複合材料の重量からセルロース繊維含有量(重量%)を求めた。
【0210】
<セルロース複合材料のYI値>
スガ試験機製カラーコンピュータを用いてYI値を測定した。
【0211】
<セルロース複合材料のヘーズ>
スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光によるヘーズ値を測定した。
【0212】
<セルロース複合材料の全光線透過率>
得られたセルロース複合材料について、JIS規格K7105に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光による全光線透過率を測定した。
【0213】
<セルロース複合材料の線膨張係数>
セルロース複合材料をレーザーカッターにより、3mm幅×40mm長にカットした。
これをSII製TMA6100を用いて引張モードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下、室温から180℃まで5℃/min.で昇温し、次いで180℃から25℃まで5℃/min.で降温し、更に25℃から180℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時の60℃から100℃の測定値から線膨張係数を求めた。
【0214】
<セルロース複合材料の引張弾性率>
セルロース複合材料をレーザーカッターにより、10mm幅×40mm長にカットした。これを、SII社製DMS6100を用いて引張モードでDMA(動的粘弾性)測定を行い、周波数10Hz、23℃における貯蔵弾性率E’(単位;GPa)を測定した。
【0215】
<製造例1>
原料としてベイマツ木粉((株)宮下木材/粒径50〜250μm(平均粒径138μm))を用意した。次に、セルロースの精製処理を以下に記す工程で実施した。木粉原料に2重量%に調整した炭酸ナトリウム水溶液を加え、液温78〜82℃で常時攪拌しながら6時間加熱した。この処理後に液を濾別し、残った木粉を水で洗浄、濾別した。次に、残った木粉に酢酸0.27重量%、亜塩素酸ナトリウム1.33重量%に調整した水溶液を加え、液温78〜82℃で5時間加熱した。処理後に液を濾別し、残った木粉を水で洗浄、濾別した。次に、残った木粉に5重量%に調整した水酸化ナトリウム水溶液を加え、常温〜30℃で16時間静置した。最後に、残った木粉を水で洗浄、濾別することによりセルロースを得た。尚、この精製処理実施時には濾別する際も含めてセルロースを完全に乾燥させることなく常に水に濡れた状態(含水量10重量%以上)にした。
【0216】
<製造例2>
原料として1cmにカットしたアバカ繊維を用意し、製造例1と同様の工程で精製処理を実施した。
【0217】
<実施例1>
製造例1で得られた含水セルロースを固形分で5g分量りとり、水分をアセトンに置換した。これにN,N-ジメチルホルムアミド150ml、ピリジン18.2ml、及びベンゾイルクロリド17.5mlを添加して攪拌し、室温で1時間反応させた。その後、反応液を濾過し、メタノールで洗浄した後、さらに大量の脱塩水で中性になるまで洗浄した。
得られたベンゾイル化セルロースの修飾率は9モル%であった。また、TG−DTAより算出した熱分解温度は337℃であった。
【0218】
得られたベンゾイル化セルロースを、0.5重量%の水懸濁液とし、増幸産業株式会社の石臼式摩砕機スーパーマスコロイダーMKCA6−2を用い、GC6−80の石臼を用いて、ギャップ間を80μmにして回転数1500rpmにて、原料投入口から、投入した。この摩砕機を通った処理済みセルロース分散液を再び原料投入口に投入し、合計2回摩砕機を通した。その後、超高圧ホモジナイザー(スギノマシン製アルティマイザー)に245MPaで10回通した。
【0219】
このセルロース分散液を0.13重量%濃度に水で希釈し、孔径1μmのPTFEメンブレンフィルター(T100A090C アドバンテック社製)を用いた90mm径の減圧濾過器(KG−90 アドバンテック社製)に150g投入し、減圧条件下(−0.09MPa)で濾過を開始した。フィルター上の被濾過物の固形分が約5重量%になったところで2−プロパノールを投入して置換した。この濾過処理において、濾過終了までに要した濾過時間は13分であった。その後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥して厚み66μmの白色の修飾セルロースシートを得た。
【0220】
この修飾セルロースシートの表面のSEM観察より算出した修飾セルロース繊維の平均繊維径は、31nmであった。
また、広角X線回折像から、結晶構造はセルロースI型結晶構造であることが確認された。
【0221】
この修飾セルロースシートを、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、ベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に含浸させ、減圧下一晩おいた。これを2枚のガラス板の間にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、放射照度400mW/cmの下を、ライン速度7m/minで照射した。このときの放射照射量は0.12J/cmであった。この操作をガラス面を反転して2回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は25℃であった。
【0222】
次いで、放射照度1900mW/cmの下をライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cmであった。この操作をガラス面を反転して8回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は44℃であった。放射照射量は21.8J/cmであった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、190℃の真空オーブン中で4時間加熱して複合材料を得た。なお、紫外線の放射照度は、オーク製作所製紫外線照度計「UV−M02」で、アタッチメント「UV−35」を用いて、320〜390nmの紫外線の照度を23℃で測定した。
【0223】
<実施例2>
製造例1で得られた含水セルロースを固形分で5g分量とり、水分をアセトンに置換した。これにN,N−ジメチルホルムアミド150ml、ピリジン18.2ml、塩化2−ナフトイル17.6gを添加して攪拌し、室温で1時間反応させた。その後、反応液を濾過し、メタノールで洗浄した後、さらに大量の脱塩水で中性になるまで洗浄した。
得られたナフトイル化セルロースの修飾率は5モル%であった。また、TG−DTAより算出した熱分解温度は315℃であった。
【0224】
得られたナフトイル化セルロースは、実施例1と同様にして微細化し、シート化した。シート化するのに要した濾過時間は60分であった。また、得られた修飾セルロースシートの厚みは70μmであった。
【0225】
この修飾セルロースシートの表面のSEM観察より算出した修飾セルロース繊維の平均繊維径は、22nmであった。
【0226】
得られた修飾セルロースシートを用いて、実施例1と同様にしてセルロース複合材料を得た。
【0227】
上記実施例1,2における修飾セルロース繊維及びセルロース複合材料の物性及び特性を、セルロースシート製造時の濾過時間とともに表1に示す。
【0228】
<比較例1>
製造例1で得られたセルロースを固形分で5g分量りとり、水分を酢酸に置換した。トルエン250ml、酢酸200ml、60重量%過塩素酸水溶液1mlを混合しておき、そこに上記セルロースを添加した後無水酢酸9mlを添加し攪拌しながら室温で1時間反応させた。反応後、反応液を濾過して、メタノール、脱塩水の順で洗浄した。
得られたアセチル化セルロースの修飾率は30モル%であった。また、TG−DTAより算出した熱分解温度は348℃であった。
【0229】
得られたアセチル化セルロースを0.5重量%の水懸濁液とし、実施例1と同様の条件で、摩砕機を通した後、超高圧ホモジナイザーに通し、同様に0.13重量%濃度に水で希釈したセルロース分散液を実施例1と全く同様にして濾過した。このとき、濾過終了までに要した濾過時間は29分であった。その後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥して白色のセルロースシートを得た。
【0230】
このセルロースシートの表面のSEM観察より算出した修飾セルロース繊維の平均繊維径は、32nmであった。
また、広角X線回折像から、結晶構造はセルロースI型結晶構造であることが確認された。
【0231】
このセルロースシートを用いて実施例1と同様にしてセルロース複合材料を得た。
本比較例における修飾セルロース及びセルロース複合材料の物性及び特性を、セルロースシート製造時の濾過時間とともに表1に示す。
【0232】
<比較例2>
製造例1で得られたセルロースを、0.5重量%の水懸濁液とし、高速回転式ホモジナイザーに投入し、20,000rpmにて60分間解繊処理を行った。このセルロース分散液を0.13重量%濃度に水で希釈し、実施例1と全く同様にして濾過した。このとき、濾過終了までに要した濾過時間は150分であった。その後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥して白色のセルロースシートを得た。
【0233】
このセルロースシートの表面のSEM観察より算出したセルロース繊維の平均繊維径は、26nmであった。
また、広角X線回折像から、結晶構造はセルロースI型結晶構造であることが確認された。
【0234】
このセルロースシートを用いて実施例1と同様にしてセルロース複合材料を得た。
本比較例におけるセルロース及びセルロース複合材料の物性及び特性を、セルロースシート製造時の濾過時間とともに表1に示す。
【0235】
<比較例3>
製造例2で得られた精製処理したアバカを、実施例1と同様にして化学修飾を行い、ベンゾイル化セルロースを得た。得られたベンゾイル化セルロースの修飾率は9モル%であった。また、TG−DTAより算出した熱分解温度は325℃であった。
【0236】
得られたベンゾイル化セルロースを、実施例1と同様にして微細化し、シート化した。シート化するのに要した濾過時間は5分であった。また、得られた修飾セルロースシートの厚みは75μmであった。
この修飾セルロースシートの表面のSEM観察より算出した修飾セルロース繊維の平均繊維径は、104nmであった。
得られた修飾セルロースシートを用いて、実施例1と同様にしてセルロース複合材料を得た。
【0237】
<比較例4>
製造例2で得られた精製処理したアバカを、化学修飾しないでセルロースシートとし、このセルロースシートを用いてセルロース複合材料を作成した以外は比較例3と同様の処理を行った。
シート化するのに要した濾過時間は111分であった。また、得られたセルロースシートの厚みは62μmであった。
このセルロースシートの表面のSEM観察より算出した修飾セルロース繊維の平均繊維径は、38nmであった。
【0238】
上記比較例3〜4におけるセルロース繊維及びセルロース複合材料の物性及び特性を、セルロースシート製造時の濾過時間とともに表1に示す。
【0239】
【表1】

【0240】
表1より次のことが分かる
実施例1,2で得られた本発明の修飾セルロース繊維は、比較例2の未修飾セルロースと比較して、熱分解温度が高く、耐熱性に優れる。また、同様な繊維径を有するセルロース水分散液からセルロースシートを得るのに必要な濾過時間を比較すると、芳香環含有置換基で修飾した実施例1,2のベンゾイル化セルロース及びナフチル化セルロースは、未修飾の比較例2のセルロースよりも濾過に要する時間が著しく短く、実施例1のベンゾイル化セルロースは、修飾率が約3分の1であるにも関わらず、脂肪族含有置換基で修飾した比較例1のアセチル化セルロースに比べても更に短い。このことより、芳香環含有置換基で修飾したセルロースは高生産性であるといえる。工業的に濾過する場合は、実施例1,2で示した差圧よりも小さくなるため、より一層濾過時間の差が大きくなることから、実施例と比較例の濾過時間の差は、実用的には非常に優位な差と言える。
また、セルロース複合材料の物性をみると、前述の通り、本発明の修飾セルロース繊維を用いたセルロース複合材料は、より透明性が高く、かつ非着色性、低線膨張係数、高弾性率の点において優れる。
【0241】
比較例3〜4は、セルロース原料として木質セルロース原料ではなく、麻(アバカ)由来原料を用いたものであるが、アバカを芳香環含有置換基で修飾した比較例3のベンゾイル化セルロースは、実施例1のベンゾイル化セルロースと比較して繊維径が太く、微細化されにくい。そのため、比較例3のベンゾイル化セルロースシートを高分子材料と複合化しても、高透明で低線膨張係数の複合材料は得られない。
【産業上の利用可能性】
【0242】
本発明の修飾セルロース繊維を用いた本発明のセルロース複合材料は、高透明であり、高強度、低吸水性、低着色及び光学特性に優れるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイや基板やパネルとして好適である。また、シリコン系太陽電池、色素増感太陽電池などの太陽電池用基板に好適である。基板としては、バリア膜、ITO、TFT等と積層しても良い。また、自動車用の窓材、鉄道車両用の窓材、住宅用の窓材、オフィスや工場などの窓材などに好適に使われる。窓材としては、必要に応じてフッ素皮膜、ハードコート膜等の膜や耐衝撃性、耐光性の素材を積層しても良い。
また、低線膨張係数、高弾性、高強度等の特性を生かして透明材料用途以外の構造体としても用いることができる。特に、内装材、外板、バンパー等の自動車材料やパソコンの筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他、工業用資材等として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が100nm以下であり、芳香環含有置換基で修飾されたセルロースI型結晶構造を有する修飾セルロース繊維の分散液を製造する方法であって、
(1) 木質から得られる解繊前のセルロースを芳香環含有置換基で修飾し、修飾セルロースを得る工程
(2) (1)で得られた修飾セルロースを平均繊維径100nm以下に解繊し、修飾セルロース繊維分散液を得る工程
を順に行うことを特徴とする、修飾セルロース繊維分散液の製造方法。
【請求項2】
芳香環含有置換基が、芳香環含有エステル基である請求項1に記載の修飾セルロース繊維分散液の製造方法。
【請求項3】
セルロースの全水酸基に対する修飾率が9モル%以下である請求項1又は2に記載の修飾セルロース繊維分散液の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法によって得られる修飾セルロース繊維分散液を抄紙する工程を有する、修飾セルロース繊維シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法によって得られる修飾セルロース繊維分散液に含まれるセルロース繊維、又は請求項4に記載の方法によって得られる修飾セルロース繊維シートと、セルロース以外の高分子とを複合化する工程を有する、セルロース複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法によって得られる修飾セルロース繊維分散液。
【請求項7】
請求項4に記載の方法によって得られる修飾セルロース繊維シート。
【請求項8】
請求項5に記載の方法によって得られるセルロース複合材料。

【公開番号】特開2011−16995(P2011−16995A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133966(P2010−133966)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】