説明

修飾ヒアルロン酸および/またはその塩、ならびにこれを含む化粧料

【課題】皮膚等の生体組織について高い改質効果を有し、かつ水溶性に優れた修飾ヒアルロン酸および/またはその塩、ならびにこれを含む化粧料を提供する。
【解決手段】炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、下記式(i)で規定される透過率Xが40%以上であり、かつ、下記式(ii)で規定される透過率Yが50%以上である。
X=T/T×100(%)・・・(i)
Y=T/T×100(%)・・・(ii)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩、ならびにその製造方法およびこれを含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、鶏冠、さい帯、皮膚、軟骨、硝子体、関節液などの生体組織中に広く分布しており、例えば、化粧料、医薬品、食品の成分として広く利用されている。
【0003】
特許文献1(特開平6−25306号公報)には、ヒアルロン酸のアルコール性水酸基に脂肪酸残基を結合させた溶媒不溶化ヒアルロン酸が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の溶媒不溶化ヒアルロン酸は水およびエタノールへの溶解性が低いため、水やエタノールを含有する製品(例えば、化粧料、医薬品、食品)に配合するには不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−25306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、皮膚等の生体組織について高い改質効果を有し、かつ水溶性に優れた修飾ヒアルロン酸および/またはその塩、ならびにその製造方法およびこれを含む化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明の一態様に係る炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、下記式(i)で規定される透過率Xが40%以上であり、かつ、下記式(ii)で規定される透過率Yが50%以上である。
X=T/T×100(%) ・・・(i)
(式中、Tは水における波長660nm、光路長10mmの光の透過率であり、Tは1%の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する水における波長660nm、光路長10mmの光の透過率である。)
Y=T/T×100(%) ・・・(ii)
(式中、Tは70容量%エタノール含有エタノール−水混合液における波長660nm、光路長10mmの光の透過率であり、Tは1%の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する70容量%エタノール含有エタノール−水混合液における波長660nm、光路長10mmの光の透過率である。)
【0007】
本発明において、「修飾ヒアルロン酸および/またはその塩」とは、少なくとも一部に有機基が導入されているヒアルロン酸および/またはその塩のことをいい、ヒアルロン酸および/またはその塩とは異なる構造を有する。また、本発明において「有機基」とは、炭素原子を有する基のことをいう。さらに、本発明において、「炭化水素基含有基」とは、少なくとも一部に炭化水素基を有する有機基のことをいう。なお、本発明の「炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩」において、「炭化水素基含有基」の「炭化水素基」は、ヒアルロン酸および/またはその塩に含まれる炭化水素基とは異なるものをいう。
【0008】
2.上記炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、前記透過率Xが60%以上であることができる。
【0009】
3.上記炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、前記透過率Yが70%以上であることができる。
【0010】
4.上記炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、前記炭化水素基含有基に含まれる炭化水素基が、炭素原子数6〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基であることができる。
【0011】
5.上記炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、ヒアルロン酸1構成単位に含まれる前記炭化水素基含有基の数が0.001〜0.2であることができる。
【0012】
6.上記炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、1%水溶液の動粘度が50mm/s以下であることができる。
【0013】
7.本発明の他の一態様に係る化粧料は、上記炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する。
【発明の効果】
【0014】
上記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は炭化水素基含有基を含み、透過率Xが40%以上であって、かつ、透過率Yが50%以上であることにより、親水性および疎水性の両立を図ることができるため、皮膚等の生体組織について高い改質効果(例えば、皮膚のバリア機能修復効果)を有し、かつ水溶性に優れている。したがって、上記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、例えば水を含有する様々な製品(化粧料、食品、医薬品)に使用することができ、皮膚等の生体組織について高い改質効果(例えば、皮膚のバリア機能修復効果)を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(a)は、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸のH−NMRスペクトル(観測周波数400MHz、内部標準物質:DSS(0ppm)、溶媒:重水)を示し、図1(b)は、比較対照として、原料(炭化水素基含有基(グリセリン骨格含有基)を有さない)のヒアルロン酸(キユーピー株式会社製、平均分子量8000)のH−NMRスペクトルを示す。
【図2】図2は、比較例11で得られたサンプルの顕微鏡写真を示す。
【図3】図3は、試験液1および試験液2を塗布した場合のTEWLの測定値を示す。
【図4】図4は、試験液1および試験液2をそれぞれ塗布した場合の塗布後3日経過時の改善率(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩、ならびにこれを含む化粧料について詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0017】
1.修飾ヒアルロン酸および/またはその塩
【0018】
1.1.炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、炭化水素基含有基を有し、下記式(i)で規定される透過率Xが40%以上であり、かつ、下記式(ii)で規定される透過率Yが50%以上であることができる。
【0019】
X=T/T×100(%) ・・・(i)
(式中、Tは水における波長660nm、光路長10mmの光の透過率であり、Tは1%の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する水における波長660nm、光路長10mmの光の透過率である。)
【0020】
Y=T/T×100(%) ・・・(ii)
(式中、Tは70容量%エタノール含有エタノール−水混合液における波長660nm、光路長10mmの光の透過率であり、Tは1%の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する70容量%エタノール含有エタノール−水混合液における波長660nm、光路長10mmの光の透過率である。)
【0021】
本実施形態に係る炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の透過率Xが40%である場合、好ましくは透過率Xが60%以上である場合、より好ましくは透過率Xが80%以上である場合、水への溶解性に優れており、水分を含有する製品へ配合し易いものである。
【0022】
本実施形態に係る炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の透過率Yが50%である場合、好ましくは透過率Yが70%以上である場合、より好ましくは透過率Yが80%以上である場合、エタノールへの溶解性に優れており、エタノールを含有する製品へ配合し易いものであって、疎水性が高いものである。
【0023】
本実施形態に係る炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、透過率Xが40%以上(好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上)であり、かつ、透過率Yが50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上)であることにより、親水性および疎水性の両立を図ることができるため、皮膚等の生体組織について高い改質効果(例えば、皮膚のバリア機能修復効果)を有し、かつ、水溶性に優れている。
【0024】
炭化水素基含有基は、炭化水素基を少なくとも一部に有する基である。本発明で炭化水素基とは、直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基のことであり、直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基(ミリスチル基)、n−ヘキサデシル基(パルミチル基)、n−オクタデシル基(ステアリル基)、n−イコシル基が挙げられる。
【0025】
また、直鎖状または分岐状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オレイル基が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係る炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、炭化水素基含有基は、皮膚のバリア機能修復効果がより高く、かつ、水溶性により優れている点で、例えば、下記一般式(iii)で表される基であることが好ましい。
【0027】
−O−CH−CHOH−CH−OR ・・・(iii)
(式中、Rは炭化水素基を表す。)
【0028】
本実施形態に係る炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、炭化水素基含有基が例えば前記一般式(iii)で表される基である場合、−O−CH−CHOH−CH−O−部位に含まれる、水酸基を構成しない酸素原子の1つに前記一般式(iii)におけるRが結合し、−O−CH−CHOH−CH−O−部位に含まれる水酸基は二級水酸基であり、−O−CH−CHOH−CH−O−部位に含まれる、水酸基を構成しない酸素原子の他の1つがヒアルロン酸および/またはその塩を構成する炭素原子に結合することができる。
【0029】
このうち、皮膚のバリア機能修復効果がより高く、かつ水溶性により優れている点で、炭化水素基含有基に含まれる炭化水素基(例えば炭化水素基含有基が前記一般式(iii)で示される基である場合、Rで表される炭化水素基)の炭素原子数が6〜20であることが好ましく、8〜18であることがより好ましく、10〜16であることがさらに好ましい。なお、この場合、炭化水素基含有基に含まれる炭化水素基(例えば炭化水素基含有基が前記一般式(iii)で示される基である場合、Rで表される炭化水素基)はアルキル基であることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係る炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、炭化水素基含有基に含まれる炭化水素基(例えば炭化水素基含有基が前記一般式(iii)で示される基である場合、Rで表される炭化水素基)の炭素原子数が6未満である場合、皮膚のバリア機能修復が十分でない場合があり、一方、炭化水素基含有基に含まれる炭化水素基(例えば炭化水素基含有基が前記一般式(iii)で示される基である場合、Rで表される炭化水素基)の炭素原子数が20を超える場合、水溶性が低い場合がある。
【0031】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、炭化水素基含有基(例えば上記一般式(iii)で表される基)を含み、透過率Xが40%以上であって、かつ、透過率Yが50%以上であることにより、親水性および疎水性の両立を図ることができるため、優れた皮膚のバリア機能修復効果を発揮できる。特に、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩はエタノールへの溶解性に優れていることから、修飾されていない通常のヒアルロン酸よりも高い疎水性を有しているため、例えば油分が多い化粧料に好適に使用できる。また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、炭化水素基含有基(例えば上記一般式(iii)で表される基)を含み、透過率Xが40%以上であって、かつ、透過率Yが50%以上であることにより、親水性および疎水性の両立を図ることができるため、優れた皮膚のバリア機能修復効果を発揮できるとともに、水溶性に優れているため、例えば水を含有する種々の製品に添加して使用することが容易である。
【0032】
1.2.グリセリン骨格含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩
1.2.1.構造
1.2.1−1.グリセリン骨格含有基(炭化水素基含有基)
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、例えば、下記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基(以下、単に「グリセリン骨格含有基」ともいう。)を含む。
【0033】
−O−CH−CHOH−CH−OR ・・・(1)
(式中、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)
【0034】
また、本発明において、「グリセリン骨格」とは、−O−CH−CHOH−CH−O−で表される構成単位のことをいう。グリセリン骨格という名称は、このグリセリン骨格がグリセリン(HO−CH−CHOH−CH−OH)の一部を構成するものであることに由来する。
【0035】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、グリセリン骨格含有基に含まれる、水酸基を構成しない酸素原子の1つに前記一般式(1)におけるRが結合し、グリセリン骨格含有基に含まれる水酸基は二級水酸基であり、グリセリン骨格含有基に含まれる、水酸基を構成しない酸素原子の他の1つがヒアルロン酸および/またはその塩を構成する炭素原子に結合している。
【0036】
前記一般式(1)において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基(ミリスチル基)、n−ヘキサデシル基(パルミチル基)、n−オクタデシル基(ステアリル基)、n−イコシル基が挙げられる。
【0037】
また、前記一般式(1)において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オレイル基が挙げられる。
【0038】
このうち、皮膚のバリア機能修復効果がより高く、かつ水溶性により優れている点で、前記一般式(1)において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基の炭素原子数が6〜20であることが好ましく、8〜18であることがより好ましく、10〜16であることがさらに好ましい。この場合、Rで表される基はアルキル基であることが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基の炭素原子数が6未満である場合、皮膚のバリア機能修復が十分でない場合があり、一方、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基の炭素原子数が20を超える場合、水溶性が低い場合がある。
【0040】
1.2.1−2.ヒアルロン酸構成単位
本発明において、「ヒアルロン酸」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの2糖からなる構成単位を1以上有する多糖類をいう。また、「ヒアルロン酸の塩」としては、特に限定されないが、食品または薬学上許容しうる塩であることが好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0041】
ヒアルロン酸は、基本的にはβ−D−グルクロン酸の1位とβ−D−N−アセチル−グルコサミンの3位とが結合した2糖単位を少なくとも1個含む2糖以上のものでかつβ−D−グルクロン酸とβ−D−N−アセチル−グルコサミンとから基本的に構成され、2糖単位が複数個結合したものであり、またこの誘導体、例えば、アシル基等の加水分解性保護基を有したもの等も使用し得る。該糖は不飽和糖であってもよく、不飽和糖としては、非還元末端糖、通常、グルクロン酸の4,5位炭素間が不飽和のもの等が挙げられる。
【0042】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩では、皮膚のバリア機能修復効果をより高めることができ、かつ水溶性により優れている点で、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数が0.001〜0.5であることが好ましく、0.005〜0.2であることがより好ましく、0.01〜0.15であることがさらに好ましい。ここで、「ヒアルロン酸の1構成単位」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの二糖からなる1構成単位を意味する。
【0043】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数が0.001未満である場合、エタノールへの溶解性が低くて疎水性が十分でないため、皮膚のバリア機能修復効果が十分でない場合があり、一方、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数が0.5を超える場合、水溶性が低い場合がある。
【0044】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数は、H−NMRスペクトル解析によって同定することができる。
【0045】
すなわち、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のH−NMRスペクトルにおいて、ヒアルロン酸の1構成単位を構成するN−アセチルグルコサミンの−NHC(=O)CH(N−アセチル基)のメチル基(−CH)のプロトンを示すピークの積分値に対する、グリセリン骨格含有基中のRに含まれるメチレン基(−CH−)のプロトンを示すピークの積分値の比を算出することにより、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩における、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数を同定することができる。より具体的な同定方法については、後述する本願実施例にて説明する。
【0046】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩では、グリセリン骨格含有基がヒアルロン酸骨格を構成する炭素原子の少なくとも1つに結合していることができる。本発明において、「ヒアルロン酸骨格を構成する炭素原子」とは、ヒアルロン酸を構成するグルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンに含まれる炭素原子をいう。例えば、原料ヒアルロン酸および/またはその塩に含まれるカルボキシル基および水酸基のうち少なくとも1つに後述する化合物1または化合物2を反応させて、グリセリン骨格含有基を導入することにより、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、グリセリン骨格含有基が、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩に結合していることは、例えば、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のH−NMRスペクトルと、原料であるヒアルロン酸および/またはその塩のH−NMRスペクトルとの比較において、修飾ヒアルロン酸のグリセリン骨格含有基中のメチレン基(−CH−)のプロトンを示すピークによって確認することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、グリセリン骨格含有基は例えば、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を構成するN−アセチルグルコサミンの4位の炭素原子(C−4)および6位の炭素原子(C−6)、ならびに、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を構成するグルクロン酸の2位の炭素原子(C−2)、3位の炭素原子(C−3)、および5位の炭素原子(C−5)に結合するカルボニル基から選ばれる少なくとも1つに結合することができる。より具体的には、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は以下の一般式(3)で表される化合物であることができる。
【0049】
【化1】

・・・(3)
(式中、R〜Rは独立して、水酸基または上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を表し(ただし、R〜Rがいずれも水酸基を表す場合を除く。)、nは1〜750の数を示す。)
【0050】
なお、上記一般式(3)において、2位の炭素原子(C−2)に結合するN−アセチルグルコサミンの窒素原子に結合している水素原子が、上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基で置換されていてもよい。
【0051】
また、上記一般式(3)で表される化合物において、皮膚のバリア機能修復効果をより高めることができ、かつ水溶性に優れている点で、nは1〜50であることが好ましく、1〜25であることがより好ましい。
【0052】
1.2.1−3.動粘度
本発明において、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の水溶液の動粘度は、ウベローデ粘度計(柴田科学器械工業株式会社製)を用いて測定することができる。この際、流下秒数が200〜1000秒になるような係数のウベローデ粘度計を選択する。また、測定は30℃の恒温水槽中で行ない、温度変化のないようにする。
【0053】
ウベローデ粘度計により測定された前記水溶液の流下秒数と、ウベローデ粘度計の係数との積により、動粘度(単位:mm/s)を求めることができる。
【0054】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の1%水溶液の動粘度は、皮膚の角質への浸透性により優れており、皮膚のバリア機能を修復する効果をより高めることができる点で50mm/s以下であることが好ましく、0.1〜10mm/sであることがより好ましく、0.5〜3mm/sであることがさらに好ましい。本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の1%水溶液の動粘度が0.1〜10mm/s(さらに好ましくは0.5〜3mm/s)である場合、グリセリン骨格含有基を有することにより、皮膚の角質への浸透性に特に優れており、皮膚のバリア機能修復効果をさらに高めることができる。
【0055】
1.2.1−4.分子量
本発明において、ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は、以下の方法にて測定された値である。
【0056】
即ち、約0.05gのヒアルロン酸および/またはその塩(本品)を精密に量り、0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液に溶かし、正確に100mLとした溶液およびこの溶液8mL、12mL並びに16mLを正確に量り、それぞれに0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液を加えて正確に20mLとした溶液を試料溶液とする。この試料溶液および0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液につき、日本薬局方(第十五改正)一般試験法の粘度測定法(第1法 毛細管粘度計法)により30.0±0.1℃で比粘度を測定し(式(A))、各濃度における還元粘度を算出する(式(B))。還元粘度を縦軸に、本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100mL)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。ここで求められた極限粘度をLaurentの式(式(C))に代入し、平均分子量を算出する(T.C. Laurent, M. Ryan, A. Pietruszkiewicz,:B.B.A., 42, 476-485(1960))。
【0057】
(式A)
比粘度
= {試料溶液の所要流下秒数)/(0.2mol/L塩化ナトリウム溶液の所要流下秒数)}−1
【0058】
(式B)
還元粘度(dL/g)=
比粘度/(本品の換算した乾燥物に対する濃度g/100mL))
【0059】
(式C)
極限粘度(dL/g)=3.6×10−40.78
M:平均分子量
【0060】
1.2.1−5.透過率X,Y
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、1%の修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する水における光(波長660nm、光路長10mm)の透過率Xが、水に対して、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。ここで、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する水における上記光の透過率Xは、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の水への溶解性を示す指標である。特に、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する水における上記光の透過率Xが40%以上である修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、水への溶解性に優れており、水分を含有する製品へ配合し易いものである。
【0061】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、1%の修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有するエタノール−水混合液(エタノール含量70容量%)における光(波長660nm、光路長10mm)の透過率Yが、エタノール−水混合液(エタノール含量70容量%)に対して、20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。ここで、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有するエタノール−水混合液における上記光の透過率Yは、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のエタノールへの溶解性を示す指標である。特に、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有するエタノール−水混合液における上記光の透過率Yが50%以上である修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、エタノールへの溶解性に優れており、エタノールを含有する製品に配合し易いものであって、疎水性が高いものである。
【0062】
1.2.2.修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、例えば、ヒアルロン酸および/またはその塩を下記一般式(2)で表される化合物(本明細書において「化合物1」ともいう。)と反応させる工程によって得られる。あるいは、ヒアルロン酸および/またはその塩を下記一般式(4)で表される化合物(本明細書において「化合物2」ともいう。)と反応させることによって、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/または塩を調製してもよい。なお、反応性を高めるために、原料のヒアルロン酸および/またはその塩(以下「原料ヒアルロン酸および/またはその塩」という。)をアルキルアンモニウム塩に置換した後に、化合物1または化合物2と反応させることが好ましい。
【0063】
【化2】

・・・(2)
(式中、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)
【0064】
前記一般式(2)においてRで表される基としては、前記一般式(1)においてRで表される基として例示したものが挙げられる。
【0065】
【化3】

・・・(4)
(式中、Rは上記一般式(2)におけるRと同義であり、Xはハロゲン原子を示す。)
【0066】
前記一般式(4)においてXで表されるハロゲン原子としては例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0067】
1.2.2−1.原料
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造に使用される原料ヒアルロン酸および/またはその塩は、動物等の生体組織(例えば鶏冠、さい帯、皮膚、関節液など)から抽出されたものでもよく、または、微生物、動物細胞もしくは植物細胞を培養して得られたもの(例えばストレプトコッカス属の細菌等を用いた発酵法)、化学的または酵素的に合成されたものなどを使用することができる。
【0068】
原料ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は通常、親水性および適度な疎水性を両立できる点で、400〜100万であることが好ましく、1000〜30万であることがより好ましく、2000〜5万であることがさらに好ましい。
【0069】
原料ヒアルロン酸および/またはその塩としては、当該粗抽出物および精製物のいずれを用いてもよいが、精製物、具体的には、ヒアルロン酸および/またはその塩の純度が90%(質量比)以上のものが好ましい。純度が90%未満の原料ヒアルロン酸および/またはその塩を原料として用いた場合、ヒアルロン酸および/またはその塩と、前記化合物1または化合物2との反応が阻害される場合があるため好ましくない。
【0070】
1.2.2−2.アルキルアンモニウム塩への変換
原料ヒアルロン酸および/またはその塩をヒアルロン酸のアルキルアンモニウム塩に変換する場合、例えば、原料ヒアルロン酸および/またはその塩に化合物(以下「化合物3」ともいう。)を反応させることにより、ヒアルロン酸の第四級アルキルアンモニウム塩を得ることができる。このような化合物3としては、例えば、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の炭素原子数2〜18の水酸化第四級アルキルアンモニウムが挙げられる。すなわち、ヒアルロン酸の第四級アルキルアンモニウム塩は例えば、炭素原子数2〜18の第四級アルキルアンモニウム塩であることが好ましい。第四級アルキルアンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩が挙げられる。
【0071】
1.2.2−3.アルキルアンモニウム塩と化合物1または化合物2との反応
ヒアルロン酸の第四級アルキルアンモニウム塩と化合物1または化合物2との反応は、有機溶媒中で行うことができる。ここで、反応温度は通常0〜200℃であり、反応時間は通常0.1〜48時間である。上記反応で使用する有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルミアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン等が挙げられ、これらを単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0072】
化合物1は単独で、または二種以上を組み合わせて使用してもよい。化合物1の具体例としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、ミリスチルグリシジルエーテル、パルミチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアルケニルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0073】
また、化合物2は単独で、または二種以上を組み合わせて使用してもよい。化合物2の具体例としては、例えば、メチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、エチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、プロピル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ブチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、オクチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、デシル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ドデシル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、トリデシル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ミリスチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、パルミチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ステアリル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、アリル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテルが挙げられる。
【0074】
1.2.2−4.精製
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法においては、ヒアルロン酸および/またはその塩を化合物1と反応させる工程の後、ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方を反応液に添加する工程をさらに含むことができる。
【0075】
反応液中のナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方の濃度は、5〜20%であることが好ましい。ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方の濃度が5%未満では、次の沈殿物を得る工程で沈殿ができない恐れがある。20%を超えると、次の沈殿物を得る工程で、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と一緒にナトリウム塩またはカリウム塩が沈殿してしまう恐れがある。
【0076】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法においては、ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方を反応液に添加する工程の後に、反応液にアルコールを添加して、沈殿物を得る工程をさらに含むことができる。また、アルコールとしては例えば、メタノール、エタノールが挙げられ、エタノールが好ましい。ここで、沈殿物は、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩である。すなわち、反応液にアルコールを添加して、沈殿物(修飾ヒアルロン酸および/またはその塩)を得ることにより、残存する試薬と分離して、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を得ることができる。
【0077】
沈殿物を得た後、必要に応じて、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が溶解しにくい溶媒(例えば、含水アルコール)で沈殿物を洗浄してもよい。その後、沈殿物を乾燥することにより、精製された修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を得ることができる。
【0078】
上述の沈殿物を得る工程は複数回繰り返して行ってもよい。
【0079】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法において、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の動粘度が低い場合(例えば動粘度が10mm/sである場合)、上述した方法では反応液にアルコールを添加しても沈殿物が得られない場合がある。この場合、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法は、ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方を反応液に添加する工程の後に、反応液のpHを3以下に調整する工程と、pH3以下の反応液に水溶性有機溶媒を添加して、懸濁液を得る工程と、懸濁液をpH3.5〜8に調整して、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を沈殿させる工程とをさらに含むことができる。これらの工程を行うことにより、動粘度が低い場合であっても、高純度の修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を高い回収率にて得ることができる。
【0080】
本発明において、「懸濁液」とは、固体の微粒子が液体中に分散している混合物である。例えば、懸濁液では、液中に固体が分散していて液が濁っている状態であってもよいし、懸濁相と上澄み相とに分離していてもよい。後の工程において修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が沈殿しやすい点で、懸濁液は懸濁相と上澄み相とに分離していることが好ましい。
【0081】
懸濁液を得る工程において、水溶性有機溶媒は、溶液が懸濁液へと変化するのに少なくとも必要な量が添加されればよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を挙げることができ、これらを単独でまたは組み合わせて使用することができる。このうち、エタノールが好ましい。
【0082】
水溶性有機溶媒の添加量は、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含む溶液1部に対して、1部以上、好ましくは2〜50部、より好ましくは5〜20部である。この場合、水溶性有機溶媒の添加量が修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含む溶液1部に対して1部未満であると、懸濁が生じ難くなる。
【0083】
また、懸濁液を得る工程において、水溶性有機溶媒を添加する前の溶液はpH3以下であり、好ましくはpH0.5〜2.5、より好ましくはpH1〜2である。水溶性有機溶媒を添加する前の溶液のpHが3を超えると、水溶性有機溶媒を加えても懸濁が生じにくく、後の工程で溶液のpHを3.5〜8に調整しても、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が沈殿しにくい。また、水溶性有機溶媒を添加する前の溶液のpHが低すぎると、後の工程で溶液のpHを3.5〜8に調整する際に多量の塩が生成するため、好ましくない場合がある。
【0084】
修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を沈殿させる工程において、懸濁液をpH3.5〜8に調整して、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を沈殿させる。この場合、懸濁液のpHが3.5〜8の範囲を外れると、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が沈殿するのが困難になる。また、より高い回収率を達成できる点で、懸濁液をpH4〜7に調整するのが好ましく、pH4〜6に調整するのがより好ましい。
【0085】
1.2.3.用途
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、例えば皮膚等の生体組織に対する高い改質効果(特に、皮膚のバリア機能修復効果)を有している。本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、生体組織の表面に塗布または接触して摂取させてもよいし、特に、顔、腕、手指、足、関節などの皮膚に塗布または接触させるのが好ましい。
【0086】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は後述するように、例えば化粧料の成分として使用することができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る化粧料は、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する。特に、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、エタノールに対する溶解性に優れている。このため、油性原料を含む化粧料に配合する場合、分離または析出が生じることなく混合することができる。したがって、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、修飾されていない通常のヒアルロン酸と比較して、油性原料を含む化粧料に好適に使用できる。また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、水に対する溶解性に優れているため、例えば水を含有する種々の製品に使用できる。
【0087】
1.2.4.作用効果
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含むことにより、親水性および疎水性の両立を図ることができるため、優れた皮膚のバリア機能修復効果を発揮できる。
【0088】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が、皮膚のバリア機能修復効果を発揮するメカニズムは以下の通りであると推測される。すなわち、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を皮膚に塗布した場合、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のヒアルロン酸骨格部位が、皮膚の角質層を構成する水層に配置され、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のグリセリン骨格含有基が、皮膚の角質層を構成する脂質層に配置される。これにより、皮膚の角質層が本来有する水層および脂質層からなるラメラ構造が修復されて、本来ラメラ構造が有するバリア機能が修復される。その結果、皮膚のバリア機能修復効果を発揮することができる。
【0089】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩では、グリセリン骨格含有基(炭化水素基含有基)中のRによって疎水性がもたらされ、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩に含まれる水酸基(グリセリン骨格含有基(炭化水素基含有基)中の水酸基を含む)および/またはカルボキシル基によって親水性がもたらされると推察される。
【0090】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を例えば皮膚に塗布した場合、皮膚の角質層において、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のグリセリン骨格含有基(炭化水素基含有基)中のRが脂質層に入り込み、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩に含まれるヒアルロン酸骨格部分が水層に入り込むことによって皮膚のラメラ構造を修復し、皮膚からの水の蒸発を防止することができる。これにより、皮膚の保湿力を高めることができると推察される。
【0091】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含むことにより、水溶性に優れているため、例えば水を含有する種々の製品に添加して使用することができる。
【0092】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、水およびエタノールに対する溶解性に優れているため、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を例えば含水液である製品に配合した場合、当該製品への溶解性に優れており、透明性が高い製品を得ることができる。
【0093】
2.化粧料
本発明の一実施形態に係る化粧料は、上記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する。例えば、本実施形態に係る化粧料は、上記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を保湿剤として含有することができる。また、本実施形態に係る化粧料は、上記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を通常、0.001〜5%含有する。含有量が0.001%未満では、満足な保湿効果や滑らかさが得られないため、使用時の皮膚のかさつき感を改善することができない恐れがある。含有量が5%を超えると、粘度が高くなりすぎ皮膚全体に伸ばしにくくなる恐れがある。さらに、本実施形態に係る化粧料が含水液である場合、水およびエタノールに対する溶解性に優れる本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有するため、本実施形態に係る化粧料は透明性に優れている。
【0094】
本実施形態に係る化粧料の態様は特に限定されないが、例えば、皮膚用化粧料が挙げられる。上記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を皮膚用化粧料に使用することにより、適度な粘度を有し、かつ、皮膚のバリア機能修復効果が高いため、皮膚に潤いを付与し、感触を改善し、かつ、皮膚のかさつき感を改善することができる。本実施形態に係る皮膚用化粧料の態様としては、例えば、洗顔料、洗浄料、化粧水(例えば、美白化粧水)、クリーム(例えば、バニシングクリーム、コールドクリーム)、乳液、美容液、パック(例えば、ゼリー状ピールオフタイプ、ペースト状拭き取りタイプ、粉末状洗い流しタイプ)、クレンジング、ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップライナー、頬紅、シェービングローション、アフターサンローション、デオドラントローション、ボディローション(ハンドケアローション、フットケアローションを含む)、ボディオイル、石鹸、入浴剤が挙げられる。
【0095】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、エタノールに対する溶解性に優れており、適度な疎水性を有する。よって、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を、油性原料を含む化粧料に配合する場合、分離または析出が生じることなく良好に混合することができる。したがって、本実施形態に係る化粧料は、油性原料を含む化粧料(例えば、クリーム、乳液、美容液、パック、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップライナー、オイルクレンジング、ファンデーション、アイシャドウ、アイライナー)として好適である。
【0096】
本実施形態に係る化粧料によれば、上記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有することにより、優れた保湿効果を発揮することができる。
【0097】
また、本実施形態に係る化粧料によれば、上記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有することにより、適度な粘度に調整されているため、使用時の皮膚のかさつき感を改善することができる。
【0098】
したがって、本実施形態に係る化粧料によれば、上記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有することにより、皮膚に潤いを与えることができ、かつ、例えば皮膚のかさつき感などを改善することができる。
【0099】
本実施形態に係る化粧料にはさらに、以下の成分が配合されていてもよい。前記成分としては、例えば、カチオン化多糖類(例えば、カチオン化ヒアルロン酸、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化澱粉、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化デキストラン、カチオン化キトサン、カチオン化ハチミツ等)、アニオン界面活性剤(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等)、非イオン界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体等)、陽イオン界面活性剤(例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等)、両性界面活性剤(例えば、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、イミダゾリニウムベタイン、卵黄レシチン、大豆レシチン等)、油分(例えば、シリコーン、シリコーン誘導体、流動パラフィン、スクワラン、ミツロウ、カルナバロウ、オリーブ油、アボガド油、ツバキ油、ホホバ油、馬油等)、保湿剤(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ジメチルシラノール、セラミド、ラウロイルグルタミン酸ジフィトステリルオクチルドデシル、フィトグリコーゲン、加水分解卵殻膜、トレハロース、グリセリン、アテロコラーゲン、ソルビトール、マルチトール、1,3−ブチレングリコール等)、高級脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ベヘニン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等)、高級アルコール(例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、バチルアルコール等)、多価アルコール(例えば、グリセリン、ジグリセリン、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンチレングリコール等)、増粘剤(例えば、セルロースエーテル、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、パルミチン酸デキストリン等)、両性高分子樹脂化合物(例えば、ベタイン化ジアルキルアミノアルキルアクリレート共重合体等)、カチオン性高分子樹脂化合物(例えば、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体カチオン化物、ポリジメチルジアリルアンモニウムハライド型カチオン性ポリマー等)、防腐剤(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール等)、酸化防止剤(例えば、トコフェノール、BHT等)、金属封鎖剤(例えば、エデト酸塩、エチドロン酸塩等)、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体等)、紫外線反射剤(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等)、タンパク質加水分解物(例えば、ケラチンペプチド、コラーゲンペプチド、大豆ペプチド、コムギペプチド、ミルクペプチド、シルクペプチド、卵白ペプチド等)、アミノ酸(例えば、アルギニン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、ヒドロキシプロリン、システイン、セリン、L−テアニン等)、天然物エキス(クジンエキス、カジルエキス、テンチカエキス、海草エキス、ユーカリエキス、ローヤルゼリーエキス、ローズマリーエキス、ブナの木エキス等)、その他の機能性成分(コエンザイムQ10、アルブチン、ポリクオタニウム51、エラスチン、白金ナノコロイド、パルミチン酸レチノール、パンテノール、アラントイン、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、L−アスコルビン酸2−グルコシド、エラグ酸、コウジ酸、リノール酸、トラネキサム酸等)、リン脂質ポリマー、香料、色素が挙げられる。
【0100】
3.実施例
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0101】
3.1.試験方法
3.1.1.平均分子量
本実施例において、(修飾)ヒアルロン酸の平均分子量は、上述の実施形態で説明された方法で測定された。
【0102】
3.1.2.ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基(炭化水素基含有基)またはパルミトイル基の数(N)
【0103】
本実施例において、修飾ヒアルロン酸のH−NMRスペクトルにおいて、2.0ppm付近に観察される、ヒアルロン酸の1構成単位を構成するN−アセチルグルコサミンに結合する−NHC(=O)CH(N−アセチル基)のメチル基(−CH)のプロトンを示すピークの積分値と、1.3ppm付近に観察される、グリセリン骨格含有基中のRまたはパルミトイル基に含まれるメチレン基(−CH−)のプロトンを示すピークの積分値とを算出し、これらの積分値から下記の式(5)〜式(9)を用いることにより、修飾ヒアルロン酸において、ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基またはパルミトイル基の数(表1において「N」と記載する)を算出した。
【0104】
・修飾ヒアルロン酸が、Rがn−ドデシル基またはn−トリデシル基であるグリセリン骨格含有基を有する場合(表1の試験番号1〜6、11〜13)
なお、ここでは、Rで表されるグリセリン骨格含有基の炭素原子を、n−ドデシル基の炭素原子数およびn−トリデシル基の炭素原子数の平均である12.5として算出した(ドデシル基の炭素原子数12、n−トリデシル基の炭素原子数13)。また、この場合、1.3ppm付近に出現するピークが、N−アセチル基のCHの水素原子のピークの積算値に対する積算値から、水素原子合計19個分に相当し、この19個分の水素原子は、R=−CH−CH−(CH9.5−CHの括弧内の9.5(メチレン基の個数)×2個の水素原子であると推測される。よって、以下の式(5)により、ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数を算出する。
【0105】
ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数=(1.3ppm付近のピークの積分値/19)/(2.0ppm付近のピークの積分値/3) ・・・(5)
【0106】
・修飾ヒアルロン酸が、Rがn−ブチル基であるグリセリン骨格含有基を有する場合(表1の試験番号10)
なお、Rが炭素原子数4のn−ブチル基の場合、1.3ppm付近に出現するピークは、N−アセチル基のCHの水素原子のピークの積算値に対する積算値から、水素原子2個分に相当し、この2個分の水素原子は、R=−CH−CH−(CH−CHの括弧内の1(メチレン基の個数)×2個の水素原子であると推測される。よって、以下の式(6)により、ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数を算出する。
【0107】
ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数=(1.3ppm付近のピークの積分値/2)/(2.0ppm付近のピークの積分値/3) ・・・(6)
【0108】
・修飾ヒアルロン酸が、Rがパルミチル基であるグリセリン骨格含有基を有する場合(表1の試験番号7)
なお、Rが炭素原子数16のパルミチル基の場合、1.3ppm付近に出現するピークは、N−アセチル基のCHの水素原子のピークの積算値に対する積算値から、水素原子合計26個分に相当し、この26個分の水素原子は、R=−CH−CH−(CH13−CHの括弧内の13(メチレン基の個数)×2個の水素原子であると推測される。よって、以下の式(7)により、ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数を算出する。
【0109】
ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数=(1.3ppm付近のピークの積分値/26)/(2.0ppm付近のピークの積分値/3) ・・・(7)
【0110】
・修飾ヒアルロン酸が、Rがステアリル基であるグリセリン骨格含有基を有する場合(表1の試験番号8および9)
なお、Rが炭素原子数18のステアリル基の場合、1.3ppm付近に出現するピークは、N−アセチル基のCHの水素原子のピークの積算値に対する積算値から、水素原子合計30個分に相当し、この30個分の水素原子は、R=−CH−CH−(CH15−CHの括弧内の15(メチレン基の個数)×2個の水素原子であると推測される。よって、以下の式(8)により、ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数を算出する。
【0111】
ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数=(1.3ppm付近のピークの積分値/30)/(2.0ppm付近のピーク積分値/3) ・・・(8)
【0112】
・修飾ヒアルロン酸が、グリセリン骨格含有基を有さずパルミトイル基を有する場合(表1の試験番号14および15)
なお、パルミトイル基の場合、1.3ppm付近に出現するピークは、N−アセチル基のCHの水素原子のピークの積算値に対する積算値から、
水素原子合計24個分に相当し、この24個分の水素原子は、パルミトイル基、−C(=O)−CH−CH−(CH12−CHの括弧内の12(メチレン基の個数)×2個の水素原子であると推測される。よって、以下の式(9)により、ヒアルロン酸1構成単位に含まれるパルミトイル基の数を算出する。
【0113】
ヒアルロン酸1構成単位に含まれるパルミトイル基の数=(1.3ppm付近のピークの積分値/24)/(2.0ppm付近のピークの積分値/3) ・・・(9)
【0114】
3.1.3.透過率X,Y
各実施例で得られた修飾ヒアルロン酸を水およびエタノール−水混合液(エタノール含量70容量%)それぞれに添加して、1%修飾ヒアルロン酸含有水および1%修飾ヒアルロン酸含有エタノール−水混合液(エタノール含量70容量%)を調製した。次に、分光光度計として(株)島津製作所製「マルチパーパス分光光度UV−2450」を使用し、波長660nm、光路長10mmの光の透過率X,Yをそれぞれ測定した。なお、対照側のセルとして、それぞれの溶媒である水およびエタノール−水混合液(エタノール含量70容量%)を用いて測定した。
【0115】
3.1.4.動粘度
上述の実施形態の欄で説明した方法により動粘度を算出した。
【0116】
3.2.実施例1
1Lビーカーにヒアルロン酸(分子量8000、キユーピー株式会社製)5.0gを水500mLに溶解させ、さらに40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液を攪拌しながら加えて、pHを7.2に調整した。pH調整後、凍結乾燥させ、ヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩を10.2g得た。30mLサンプル瓶に得られたヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩1.0g、C12〜13アルキルグリシジルエーテル(反応試薬)(四日市合成株式会社製)2.0g、およびジメチルホルミアミド(DMF)10mLを入れ、攪拌しながら80℃水浴上で8時間反応させた。反応終了後、12.5%塩化ナトリウム水溶液を10mL加え、8%塩酸にてpH1.0に調整した。次いで、エタノール50mLを撹拌しながらゆっくり加え、ヒアルロン酸を沈殿させた。次いで、25%水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整し、沈殿物をろ過にて回収し、80%エタノール50mLで3回洗浄した。得られた沈殿物を60℃で真空乾燥させて、上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含む修飾ヒアルロン酸(表1の試験番号4)を0.48g得た。また、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸(表1の試験番号4)の動粘度は1.2mm/sであった。
【0117】
本実施例で得られた修飾ヒアルロン酸のH−NMRスペクトル(観測周波数400MHz、内部標準物質:DSS(0ppm)、溶媒:重水)を図1(a)に示す。一方、比較対照として、原料(グリセリン骨格含有基を有さない)のヒアルロン酸(キユーピー株式会社製、平均分子量8000)のH−NMRスペクトル(観測周波数400MHz、内部標準物質:DSS(0ppm)、溶媒:重水)を図1(b)に示す。図1(a)のH−NMRスペクトルにおいて、1.3ppm付近に存在するピークは、修飾ヒアルロン酸のグリセリン骨格含有基中のメチレン基(−CH−)のプロトンを示すピークであると推察される。
【0118】
また、実施例1の修飾ヒアルロン酸の製造方法において、反応試薬の種類、溶媒、反応温度、および反応時間を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法にて、表1の試験番号1〜3および5〜15の修飾ヒアルロン酸を製した。反応試薬の種類を変えることによって、グリセリン骨格含有基のRの炭素原子数がそれぞれ表1に示すものである修飾ヒアルロン酸を得た。なお、上述した方法と同様の方法にて、表1で得られた修飾ヒアルロン酸にグリセリン骨格含有基が導入されていることをH−NMRスペクトルから確認した。また、試験番号1〜15の修飾ヒアルロン酸の動粘度はいずれも0.5〜3mm/sであった。
【0119】
表1によれば、本願発明(試験番号1〜13)の修飾ヒアルロン酸は、上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を有するため、水およびエタノールへの溶解性に優れていることが理解できる。中でも、グリセリン骨格含有基中のRの炭素原子数が6〜20であり、かつ、ヒアルロン酸1構成単位に含まれる前記グリセリン骨格含有基の数が0.001〜0.5である修飾ヒアルロン酸(試験番号1〜10および12)は、水およびエタノールへの溶解性により優れていた。
【0120】
これに対して、比較例(試験番号14および15)の修飾ヒアルロン酸は、上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を有していないため、水およびエタノールへの溶解性がいずれも劣っていることが理解できる。
【0121】
【表1】

【0122】
3.3.実施例2
実施例1の修飾ヒアルロン酸の製造方法において、ヒアルロン酸(分子量8000、キユーピー株式会社製)をヒアルロン酸(分子量30万、キユーピー株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様の方法で修飾ヒアルロン酸を製した。また、上述した方法と同様の方法にて、実施例2で得られた修飾ヒアルロン酸にグリセリン骨格含有基が導入されていることをH−NMRスペクトルから確認した。
【0123】
実施例2で得られた修飾ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数が0.03であり、1%修飾ヒアルロン酸含有水における上記光の透過率Xが100%であり、1%修飾ヒアルロン酸含有エタノール−水混合液(エタノール含量70容量%)における上記光の透過率Yが100%であった。また、実施例2で得られた修飾ヒアルロン酸の動粘度は3.5mm/sであった。
【0124】
3.4.実施例3
1Lビーカーにヒアルロン酸(分子量100万、キユーピー株式会社製)5.0gを水500mLに溶解させ、さらに40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液を攪拌しながら加えて、pHを7.2に調整した。pH調整後、凍結乾燥させ、ヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩を10.2g得た。30mLサンプル瓶に得られたヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩1.0g、C12〜13アルキルグリシジルエーテル(反応試薬)(四日市合成株式会社製)2.0g、およびジメチルホルミアミド(DMF)20mLを入れ、攪拌しながら80℃水浴上で8時間反応させた。反応終了後、12.5%塩化ナトリウム水溶液を10mL加え、25%水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整し、エタノール50mLを撹拌しながらゆっくり加え、ヒアルロン酸を沈殿させた。沈殿物をろ過にて回収し、80%エタノール50mLで3回洗浄した。得られた沈殿物を60℃で真空乾燥させて、修飾ヒアルロン酸を製した。また、上述した方法と同様の方法にて、実施例3で得られた修飾ヒアルロン酸にグリセリン骨格含有基が導入されていることをH−NMRスペクトルから確認した。
【0125】
実施例3で得られた修飾ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数が0.02であり、1%修飾ヒアルロン酸含有水における上記光の透過率Xが100%であり、1%修飾ヒアルロン酸含有エタノール−水混合液(エタノール含量70容量%)における上記光の透過率Yが75%であった。また、実施例3で得られた修飾ヒアルロン酸の動粘度は46mm/sであった。
【0126】
3.5.試験例1
本試験例では、以下に記す処方にて、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸を配合した化粧水を調製した。
修飾ヒアルロン酸(実施例1) 0.2%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1%
加水分解ヒアルロン酸 0.1%
コラーゲンペプチド 0.1%
1,3−ブチレングリコール 5.0%
グリセリン 3.0%
イソステアリルアルコール 0.1%
酢酸トコフェロール 0.1%
POE(20)ソルビタンモノラウリル酸エステル 0.5%
POE(15)ラウリルアルコールエーテル 0.5%
ピロリドンカルボン酸亜鉛 0.1%
エチルパラベン 0.1%
メチルパラベン 0.15%
エタノール 5.0%
香料 適量
精製水 残量
【0127】
3.6.試験例2
本試験例では、以下に記す処方にて、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸を配合した乳液を調製した。
修飾ヒアルロン酸(実施例1) 0.3%
ペンチレングリコール 5.0%
グリセリン 3.0%
スクワラン 5.0%
ステアリン酸 0.5%
ステアリルアルコール 2.0%
ワセリン 4.0%
ステアリン酸ソルビタン 1.0%
POE(10)モノステアリン酸エステル 1.0%
カルボキシビニルポリマー 0.5%
ポリクオタニウム−51 0.1%
メチルパラベン 0.15%
プロピルパラベン 0.1%
水酸化カリウム 0.1%
BHT 0.02%
EDTA−2ナトリウム 0.02%
香料 適量
精製水 残量
【0128】
3.7.試験例3
本試験例では、以下に記す処方にて、実施例2で得られた修飾ヒアルロン酸を配合したクリーム(エモリエントクリーム)を調製した。
修飾ヒアルロン酸(実施例2) 0.5%
ポリエチレングリコール 4.0%
1,3−プロパンジオール 6.0%
スクワラン 11.0%
ジメチコン 1.0%
セタノール 6.0%
ステアリン酸 2.0%
水添ココグリセリル 4.0%
トリカプリリン 8.0%
モノステアリン酸グリセリン 3.0%
POE(20)セチルアルコールエーテル 2.0%
コエンザイムQ10 0.03%
セラミド 0.1%
ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム 0.1%
EDTA−2ナトリウム 0.02%
プロピルパラベン 0.1%
メチルパラベン 0.15%
香料 適量
精製水 残量
【0129】
3.8.試験例4
本試験例では、以下に記す処方にて、実施例2で得られた修飾ヒアルロン酸を配合した美容液(美白保湿エッセンス)を調製した。
修飾ヒアルロン酸(実施例2) 0.8%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.2%
加水分解ヒアルロン酸 0.1%
1,3−ブチレングリコール 5.0%
グリセリン 1.5%
POEソルビタンモノステアリン酸エステル 1.0%
ソルビタンモノステアリン酸エステル 0.5%
キサンタンガム 0.2%
アルギン酸ナトリウム 0.2%
カルボキシビニルポリマー 0.2%
水酸化カリウム 0.1%
オリーブ油 0.2%
トコフェロール 0.1%
EDTA−2ナトリウム 0.02%
アルギニン 0.15%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05%
アルブチン 0.2%
パルミチン酸レチノール 0.2%
クジンエキス 0.2%
海藻エキス 0.2%
トラネキサム酸 0.1%
エラスチン 0.1%
コラーゲン 0.1%
リン酸アスコルビン酸マグネシウム 0.1%
クエン酸ナトリウム 1.0%
クエン酸 0.1%
プロピルパラベン 0.1%
メチルパラベン 0.15%
香料 適量
精製水 残量
【0130】
3.9.試験例5
本試験例では、以下に記す処方にて、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸を配合した美容液パック(ペースト状ピールオフタイプ)を調製した。
修飾ヒアルロン酸(実施例1) 0.5%
ポリ酢酸ビニルエマルジョン 17.0%
ポリビニルアルコール 11.0%
ソルビトール 5.0%
ポリエチレングリコール400 5.0%
スクワラン 2.5%
POEソルビタンモノステアリン酸エステル 1.0%
酸化チタン 4.0%
タルク 8.0%
エタノール 8.0%
メチルパラベン 0.15%
香料 適量
精製水 残量
【0131】
3.10.試験例6
本試験例では、以下に記す処方にて、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸を配合した洗顔料(クレンジングフォーム)を調製した。
修飾ヒアルロン酸(実施例1) 0.2%
カチオン化ヒアルロン酸 0.1%
(キユーピー株式会社製、ヒアロベール)
グリセリン 10.0%
ポリエチレングリコール400 15.0%
ジプロピレングリコール 10.0%
ラウロイルグルタミン酸ナトリウム 20.0%
POE(2)モノステアリン酸エステル 5.0%
パーム脂肪酸グルタミン酸ナトリウム 8.0%
アルキルベタイン 2.0%
EDTA−2ナトリウム 0.02%
プロピルパラベン 0.1%
メチルパラベン 0.15%
香料 適量
精製水 残量
【0132】
3.11.試験例7
本試験例では、以下に記す処方にて、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸を配合したサンスクリーン(乳液)を調製した。
修飾ヒアルロン酸(実施例1) 0.2%
1,3−ブチレングリコール 3.0%
ジプロピレングリコール 3.0%
シクロメチコン 5.0%
ジメチコン 5.0%
セタノール 1.0%
ワセリン 1.0%
メトキシケイヒ酸オクチル 5.0%
酸化チタン 2.0%
酸化亜鉛 2.0%
ステアリン酸ソルビタン 1.0%
POE(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル 1.0%
フェノキシエタノール 0.8%
メチルパラベン 0.1%
香料 適量
精製水 残量
【0133】
3.12.試験例8
本試験例では、以下に記す処方にて、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸を配合したリップクリームを調製した。
修飾ヒアルロン酸(実施例1) 0.1%
マイクロクリスタリンワックス 1.5%
セレシン 12.0%
スクワラン 10.0%
デカメチルテトラシロキサン 10.0%
リンゴ酸ジイソステアリル 5.0%
キャンデリラロウ 2.0%
ワセリン 8.0%
ヒドロキシステアリン酸グリセリル 2.0%
メントール 0.05%
流動パラフィン 1.0%
酢酸トコフェロール 0.1%
トコフェロール 0.05%
プロピルパラベン 0.1%
香料 適量
精製水 残量
【0134】
3.13.試験例9
本試験例では、以下に記す処方にて、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸を配合したシャンプーを調製した。
修飾ヒアルロン酸(実施例1) 0.2%
カチオン化ヒアルロン酸 0.1%
(キユーピー株式会社製、ヒアロベール)
POE(20)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 11.0%
ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム 10.0%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 4.0%
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド 2.0%
EDTA−2ナトリウム 0.1%
安息香酸ナトリウム 0.2%
フェノキシエタノール 0.8%
メチルパラベン 0.1%
香料 適量
精製水 残量
【0135】
3.14.試験例10
本試験例では、以下に記す処方にて、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸を配合したヘアコンディショナーを調製した。
修飾ヒアルロン酸(実施例1) 0.3%
カチオン化ヒアルロン酸 0.2%
(キユーピー株式会社製、ヒアロベール)
ステアリルアルコール 4.0%
セタノール 1.5%
ヒドロキシエチルウレア 1.0%
アミノプロピルジメチコン 1.5%
ジメチコン 0.5%
加水分解シルク 1.0%
1,3−ブチレングリコール 1.0%
グリセリン 3.0%
2−エチルヘキサン酸セチル 2.0%
ミリスチン酸イソセチル 0.4%
L−アルギニン 0.1%
トレハロース 0.1%
ソルビトール 0.1%
ケラチンペプチド 0.1%
POE(4)ステアリルエーテル 1.0%
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 3.0%
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.2%
安息香酸ナトリウム 0.3%
フェノキシエタノール 0.8%
メチルパラベン 0.1%
香料 適量
精製水 残量
【0136】
3.15.試験例11(皮膚バリア機能の修復確認試験)
2mLエッペンドルフチューブに、処理液(セラミドII(高砂香料工業社製)、セラミドIII(コスモファーム社製)、セラミドIV(コスモファーム社製)各4mg、ステアリン酸8mg(和光純薬工業社製)、コレステロール(関東化学社製)8mg、コレステロール硫酸(シグマ社製)2mg、純水140mg、実施例1の各試験番号の修飾ヒアルロン酸1mg)を入れ、室温にてボルテックスを用いて2分間撹拌した。次に、80℃恒温槽上で5分間加熱した後、ボルテックスを用いて2分間撹拌し、10℃恒温槽で5分間冷却した後、室温にて超音波処理を5分間行った。この操作を4回繰り返し、以下の手順で顕微鏡観察用サンプルを作製した。
【0137】
スライドガラス上に上記サンプルを1μL載せ、カバーガラス被せ、カバーガラス全体にサンプルを広げることにより、顕微鏡観察用サンプルを作製した。顕微鏡観察は、(株)キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−600を偏光観察モードにして、倍率1000倍で観察を行った。任意の観察視野(225×310μm)を5箇所選択し、ピントを合わせて撮影を行い、写真5枚中の直径5μm以上の黒い十字像の数を数え、写真1枚中の十字像の平均数を算出した。また、対照として、修飾ヒアルロン酸を含まない処理液を用いて同様の処理を行った。結果を表2に示す。
【0138】
【表2】

【0139】
図2において、十字像(丸で囲まれた箇所)はラメラ構造が形成されている箇所を表す。健康な皮膚の角質層では通常、脂質層と水層とがラメラ構造を形成し、このラメラ構造により皮膚のバリア機能が発揮される。したがって、本試験例において、ラメラ構造の形成箇所が多いほど皮膚のバリア機能の修復能が高いといえる。
【0140】
表2によれば、処理液が修飾ヒアルロン酸を含まない場合と比較して、処理液が修飾ヒアルロン酸を含む場合、十字像の数が多いことが理解できる。この結果から、一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含む修飾ヒアルロン酸は、皮膚のバリア機能の修復能を有すると推測される。
【0141】
3.16.試験例12(ヒト皮膚バリア機能の修復確認試験)
本試験例においては、本願発明の修飾ヒアルロン酸をヒト皮膚に塗布して、経皮水分蒸発量(trans
epidermal water loss:TEWL)の評価を行った。
【0142】
3.16.1.試験方法
3.16.1−1.被験者
年齢26〜34歳の成人(n=9)を対象に試験を行った。
【0143】
3.16.1−2.試料
試料1:上記実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸
試料2(対照):ヒアルロン酸(分子量8000、キユーピー株式会社製)
試料1を精製水に溶解し1%水溶液としたものを試験液1、試料2を精製水に溶解し1%水溶液としたものを試験液2とした。
【0144】
3.16.1−3.試験方法
被験者の前腕内側部に直径1cmの領域を2ヵ所設置し、これを試験部位とした。
【0145】
まず、水分蒸発量測定装置(CK−Electronic社製Cutometer MPA580)を用いて、試験部位のTEWLを測定した。
【0146】
その後、テープストリッピングにより、TEWLの値が15〜25g/m・hになるまで試験部位の表皮角層を除去し、皮膚バリア機能破壊処理を行った。
【0147】
皮膚バリア機能破壊処理後に、試験部位に試験液1または試験液2を塗布した。
【0148】
塗布回数は、午前と午後の1日2回とし、塗布量は、1回につき20μLとした。
【0149】
被験者はTEWLの測定前に試験部位を洗浄し、20分間安静にした。
【0150】
測定は、皮膚バリア機能破壊処理後に各試験液を塗布してから1日経過時および3日経過時の午前に行った。
【0151】
角質除去後のTEWLに対する各試験液を塗布した後のTEWLの差について、各測定日においてDunnett法による多重比較検定を行い、p<0.05で有意差有りとした。
【0152】
表3および図3に、試験液1および試験液2を塗布した場合のTEWLの測定値を示す。
【0153】
なお、表3中の数値は、各被験者のTEWL測定値の平均値を示した。
【0154】
また、下記の式(10)に従って、試験液を塗布して3日後のTEWLの改善率を算出した。表3における試験液1および試験液2をそれぞれ塗布した場合の塗布後3日経過時の改善率(%)を図4に示す。
【0155】
【数1】

・・・(10)
【0156】
【表3】

【0157】
表3および図3において、TEWLは、皮膚内部から対外への水分の移行量を表す。皮膚バリア機能破壊処理によって、皮膚の角質層のラメラ構造が破壊され、TEWLが増加する。したがって、本試験例において、TEWLが減少するほど皮膚のバリア機能修復能が高いといえる。
【0158】
表3および図3によれば、試験液2と比較して、修飾ヒアルロン酸を含む試験液1を塗布した場合、TEWLが低値となることが理解できる。
【0159】
また、試験液1を塗布した場合、角質除去直後のTEWLに対して、試験液を塗布した後のTEWLは、塗布後1日経過時および塗布後3日経過時において有意に低値を示した。
【0160】
さらに、表3によれば、試験液2と比較して、修飾ヒアルロン酸を含む試験液1を塗布した場合、TEWLの改善率が高いことが理解できる。
【0161】
この結果から、一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含む修飾ヒアルロン酸は、皮膚のバリア機能の修復能を有することが確認された。
【0162】
3.17.試験例13(溶解性試験)
下記の試料A0.1gを、エタノール:水=70:30(容積比)のエタノール−水混合液10mLに添加して、1%修飾ヒアルロン酸含有水を調製した。同様に、試料Aの代わりに、試料Bを用いて1%ヒアルロン酸含有水を調製した。
試料A:上記実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸
試料B(対照):ヒアルロン酸(分子量8000、キユーピー株式会社製)
【0163】
その結果、試料Aを用いて調製された1%修飾ヒアルロン酸含有水は、目視にて透明であり、沈殿が生じなかったことが確認された。このことから、試料Aを用いて調製された1%修飾ヒアルロン酸含有水では、修飾ヒアルロン酸がほぼ溶解していることが理解できる。試料Aを用いて調製された1%修飾ヒアルロン酸含有水は例えば、油性原料を含む化粧水(疎水性が高い化粧料)の原料として使用することができる。
【0164】
一方、試料Bを用いて調製された1%ヒアルロン酸含有水は、目視にて濁りは確認されなかったが、該化粧水を入れた容器の底に白色の沈殿が生じたことが確認された。
【0165】
以上の結果から、一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含む修飾ヒアルロン酸は、疎水性が高い化粧料にも好適に配合できることが理解できる。
【0166】
本発明に係る実施の形態の説明は以上である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(i)で規定される透過率Xが40%以上であり、かつ、下記式(ii)で規定される透過率Yが50%以上である、炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩。
X=T/T×100(%) ・・・(i)
(式中、Tは水における波長660nm、光路長10mmの光の透過率であり、Tは1%の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する水における波長660nm、光路長10mmの光の透過率である。)
Y=T/T×100(%) ・・・(ii)
(式中、Tは70容量%エタノール含有エタノール−水混合液における波長660nm、光路長10mmの光の透過率であり、Tは1%の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する70容量%エタノール含有エタノール−水混合液における波長660nm、光路長10mmの光の透過率である。)
【請求項2】
前記透過率Xが60%以上である、請求項1に記載の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項3】
前記透過率Yが70%以上である、請求項1または2に記載の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項4】
前記炭化水素基含有基に含まれる炭化水素基が、炭素原子数6〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項5】
ヒアルロン酸1構成単位に含まれる前記炭化水素基含有基の数が0.001〜0.2である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項6】
1%水溶液の動粘度が50mm/s以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭化水素基含有基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する、化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−21166(P2012−21166A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221319(P2011−221319)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【分割の表示】特願2011−525318(P2011−525318)の分割
【原出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】