説明

修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸、修飾ヘテロポリ酸塩、およびフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体

【課題】回収・再利用が容易な酸触媒として利用できるフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示される修飾フリーアシッド型へテロポリ酸を単独重合もしくは共重合することによりフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体を得る。
m[XY]・nH2O ・・・(1)
[式中、Xは骨格構成原子が一部欠損したヘテロポリアニオンであり、Yは反応性の有機官能基を有する金属群である。nは1以上の整数であり、mは1以上の整数であって一般式(1)中の[XY]から決定される負電荷の絶対値である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸触媒として使用できる修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸、およびその中間材料となる修飾ヘテロポリ酸塩、並びに前記ヘテロポリ酸を用いたフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘテロポリ酸塩は酸素原子が4個配位したP、Si、As、Ge、Sなどのヘテロ原子を中心にW、Mo等の骨格構成原子が酸素原子を介して配位した構造を有するものである。このような構造を有するヘテロポリ酸塩は骨格構成原子の一部を欠損させ、異種金属で置換することが可能であることが知られている。このような欠損型のヘテロポリ酸塩と、より酸化数の低い異種金属で置換されたヘテロポリ酸塩は表面の負電荷密度が通常のヘテロポリ酸塩と比較して増大しているために反応用触媒として使用されている。
【0003】
欠損及び置換ヘテロポリ酸塩の触媒利用例は数多いが、その多くは酸化触媒として使用されている。例を挙げるとRu置換体によるアルコールの酸化反応が知られている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、工業用途として重要で多くの実用化がなされているのは、ヘテロポリアニオンのカウンターカチオンをH+に交換したフリーアシッド型のヘテロポリ酸を用いた酸触媒としての使用である。例えば、テトラヒドロフランの開環重合があげられる(特許文献2)。
【0005】
工業用途として有用である酸触媒としてのヘテロポリ酸の例の多くは無置換のフリーアシッド型を用いたものが多い。例えば、H3[PW1240]、H3[PMo1240]、H4[SiW1240]、H4[SiMo1240]等があげられる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−261493号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭59−215320号公報(実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらへテロポリ酸を用いた酸触媒は溶媒に溶解してしまい、回収、再利用が困難であるという問題があった。
【0008】
また、フリーアシッド型のヘテロポリ酸はプロトン輸送能に優れるため、塗膜中に含有させて帯電防止剤としての用途が期待されるが、塗膜からブリードアウトしやすく帯電防止性能を維持できないという問題があった。
【0009】
そこで、ヘテロポリ酸をポリマーやシリカなどの担体と混合して物理的に固定化する方法、およびヘテロポリ酸を4級アンモニウム塩型シランカップリング剤に静電荷作用により固定化させる方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、物理的に混合させる方法では、十分にブリードアウトを防止することができないという問題があり、静電荷作用により固定化する方法では、より強い電荷を有する化合物により置換されることによってブリードアウトを防止できなくなるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、単独重合もしくは共重合することにより上記問題を解決できる修飾されたフリーアシッド型のヘテロポリ酸、およびその中間材料となるヘテロポリ酸塩、ならびに前記ヘテロポリ酸を用いたフリーアシッド型ヘテロポリ酸の重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸は、ヘテロポリ酸の骨格構成原子の一部欠損部位に、反応性の有機官能基を有する金属群が導入されてなるものである。
【0013】
また、本発明の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸は、一般式(1)で示されるものである。
m[XY]・nH2O ・・・(1)
[式中、Xは骨格構成原子が一部欠損したヘテロポリアニオンであり、Yは反応性の有機官能基を有する金属群である。nは1以上の整数であり、mは1以上の整数であって一般式(1)中の[XY]から決定される負電荷の絶対値である。]
【0014】
また、本発明の修飾ヘテロポリ酸塩は、ヘテロポリ酸塩の骨格構成原子の一部欠損部位に、反応性の有機官能基を有する金属群が導入されてなるものである。
【0015】
また、本発明の修飾ヘテロポリ酸塩は、一般式(2)で示されるものである。
m[XY] ・・・(2)
[式中、Rは、Bu4+、Me2NH2+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+の群から選択され、Xは骨格構成原子が一部欠損したヘテロポリアニオンであり、Yは反応性の有機官能基を有する金属群である。mは1以上の整数であって一般式(2)中の[XY]から決定される負電荷の絶対値である。]
【0016】
また、本発明のフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体は、前記修飾フリーアシッド型へテロポリ酸を、単独重合もしくは共重合してなるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸は、ヘテロポリ酸の骨格構成原子の一部欠損部位に反応性の有機官能基を有する金属群が導入されてなることから、単独重合もしくは共重合することにより容易に重合体とすることができる。
【0018】
そして、重合体とされた本発明のフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体は、回収・再利用を容易にできる酸触媒、塗膜からのブリードアウトが起こりにくい帯電防止剤、セパレータからのブリードアウトが起こりにくい燃料電池のセパレータに含有させるプロトン輸送剤などに好適に用いることができる。
【0019】
また、本発明の修飾ヘテロポリ酸塩は、カチオン交換することにより、容易に本発明の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
まず、本発明の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸の実施の形態について説明する。本発明の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸は、ヘテロポリ酸の骨格構成原子の一部欠損部位に、反応性の有機官能基を有する金属群が導入されてなるものである。
【0022】
このような修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸は、骨格構成原子の欠損部分に反応性の有機官能基を有する金属群が導入されていることから、自身で単独重合したり、反応性の官能基を有する他のモノマー・ポリマー・ヘテロポリ酸と共重合することにより、フリーアシッド型のヘテロポリ酸系重合体を得ることができる。
【0023】
このような修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸としては、例えば、一般式(1)で示されるものがあげられる。
m[XY]・nH2O ・・・(1)
[式中、Xは骨格構成原子が一部欠損したヘテロポリアニオンであり、Yは反応性の有機官能基を有する金属群である。nは1以上の整数であり、mは1以上の整数であって一般式(1)中の[XY]から決定される負電荷の絶対値である。]
【0024】
一般式(1)中のXは骨格構成原子が一部欠損したヘテロポリアニオンを示す。このようなヘテロポリアニオンとしては、P21761、PW1139、γ−PW1036、SiW1139、γ−SiW1036、GeW1139などがあげられる。
【0025】
一般式(1)中のYは、反応性の有機官能基を有する金属群を示している。
【0026】
反応性の有機官能基としては、ヒドロキシル基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基などがあげられる。これら官能基のうち、不飽和性二重結合を有する基である(メタ)アクリル基、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロキシ基は、自身で単独重合したり、不飽和二重結合を有する他のモノマー・ポリマー・ヘテロポリ酸と容易に共重合することができる点で好ましい。これらの中でも特に、(メタ)アクリル基を用いることが好ましい。
【0027】
金属群としては、金属アルコキシドの加水分解物や金属クロライドがあげられる。この中でも、修飾されたヘテロポリ酸を製造する工程上、金属アルコキシドの加水分解物が好ましい。
【0028】
金属アルコキシドの加水分解物としては、具体的には、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤などの加水分解物があげられる。これらの中でも、反応性官能基の種類の多さ、取扱い性が良いこと及び入手の容易さの観点から、シランカップリング剤の加水分解物を用いることが好ましい。また、金属クロライドとしては、具体的には、チタンクロライド、シリルクロライド、塩化スズなどがあげられる。
【0029】
一般式(1)中のYの具体例としては、{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O、{CH2CHCOO(CH23Si}2O、{CH2CHSi}2O、{CH2CHC64Si}2O、{CH2(O)CHCH2O(CH23Si}2O、{NH2(CH22NH(CH23Si}2O、{NH2(CH23Si}2O、{SH(CH23Si}2O、{OCN(CH23Si}2Oなどがあげられる。また、これらYのSiをTi、Al、Zrに変更したものもあげられる。
【0030】
また、一般式(1)で示すように、一般式(1)のヘテロポリアニオンのカウンターカチオンはH+となっている。このようにカウンターカチオンをH+としたフリーアシッド型のヘテロポリ酸とすることにより、酸触媒としての触媒活性を良好にすることができる。また、フリーアシッド型のヘテロポリ酸は、帯電防止性能に優れた帯電防止剤として用いることができ、さらに、燃料電池のセパレータに含有させることにより、燃料電池のプロトン輸送能を良好にすることができる。
【0031】
一般式(1)の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸の具体例としては、以下の一般式(3)で示すものがあげられる。
6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2O・・・(3)
【0032】
一般式(1)の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸は、例えば、ヘテロポリ酸の骨格構成原子の一部欠損部位に、上述したような反応性の有機官能基を有する金属群を導入することにより得ることができる。
【0033】
具体的には、まず水とアルコールの混合物に反応性の有機官能基を有する金属アルコキシドを溶解させた溶液に、別途合成したK10[P21761]などの骨格構成原子が一部欠損したヘテロポリ酸塩を化学量論だけ加えて攪拌する。次いで、塩酸で溶液のpHを3以下程度に調整する。この作業により、反応系中で金属アルコキシドが加水分解され、当該加水分解物が、ヘテロポリ酸塩の骨格構成原子の一部欠損部位に脱水縮合反応によって導入される。次いで、得られた溶液にMe2NH2+などのカウンターカチオンを加えてヘテロポリ酸塩を沈殿として生成させる。生成した沈殿をろ別し、十分真空乾燥を行い、修飾されたヘテロポリ酸塩を粉体として得ることができる。次いで、陽イオン交換樹脂(アンバーライト120NBA:ローム・アンド・ハース社、など)を使用して、ヘテロポリ酸塩のカウンターカチオンをカチオン交換することで、H+をカウンターカチオンに持つ一般式(1)の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸を製造することができる。
【0034】
なお、上述した骨格構成原子が一部欠損したヘテロポリ酸塩は、既知文献を参照することにより得ることができる。例えば、R.Contant,Inorg.Synth.,27,104,1990.(アメリカ)。
【0035】
次に、本発明の修飾ヘテロポリ酸塩の実施の形態について説明する。本発明の修飾ヘテロポリ酸塩は、ヘテロポリ酸塩の骨格構成原子の一部欠損部位に、反応性の有機官能基を有する金属群を導入してなるものである。このような修飾ヘテロポリ酸塩は、上述した本発明のフリーアシッド型ヘテロポリ酸の中間材料となる。具体的には、修飾ヘテロポリ酸塩のカウンターカチオンを陽イオン交換樹脂を用いてH+に置換することにより、上述した本発明の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸を得ることができる。
【0036】
このような修飾ヘテロポリ酸塩としては、一般式(2)で示すものがあげられる。
m[XY] ・・・(2)
[式中、Rは、Bu4+、Me2NH2+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+の群から選択され、Xは骨格構成原子が一部欠損したヘテロポリアニオンであり、Yは反応性の有機官能基を有する金属群である。mは1以上の整数であって一般式(2)中の[XY]から決定される負電荷の絶対値である。]
【0037】
一般式(2)中のXおよびYとしては、上述した一般式(1)のXおよびYと同様である。また、このような修飾ヘテロポリ酸塩は水和物である場合がある。
【0038】
このような本発明の修飾ヘテロポリ酸塩の製造方法は、上述した本発明の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸の製造方法と、最終工程であるカチオン交換以外は同様である。
【0039】
次に、本発明のフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体の実施の形態について説明する。本発明のフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体は、上述した本発明の修飾フリーアシッド型へテロポリ酸を、単独重合もしくは共重合させてなるものである。
【0040】
重合は、反応性の有機官能基の反応により行うことができる。共重合する場合の相手のモノマー・ポリマー・ヘテロポリ酸としては、修飾フリーアシッド型へテロポリ酸が有する反応性の有機官能基と反応可能な官能基を有するものであればよい。このようなモノマー・ポリマー・ヘテロポリ酸としては、例えば側鎖中にヒドロキシル基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアナト基を有するものがあげられる。
【0041】
以下、不飽和性二重結合を有する金属群を導入してなる修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸と、不飽和性二重結合を有する他のモノマー(アクリルモノマー)との共重合反応を例にとり説明する。
【0042】
まず、所定量の反応溶媒、不飽和性二重結合を有する金属群を導入してなる修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸、汎用のアクリルモノマー及び重合開始剤を含む三口フラスコを用意し、攪拌しながら反応系内を窒素で置換する。窒素置換後、フラスコを75℃のオイルバスに加えて系内を加熱する。オイルバスの温度を75℃に保ったまま4時間加熱攪拌する。4時間後、反応溶液を室温まで放冷した後、大量のメタノールに溶液を滴下してポリマーを再沈殿させる。一晩攪拌した後、沈殿を分別して十分吸引乾燥させることで、修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸とアクリルモノマーとが共重合されてなるフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体を得ることができる。
【0043】
上述した重合方法は、溶液重合方法によるものであるが、塊重合等の異なる重合方法によっても重合することができる。
【0044】
例えば、まず紫外線硬化性のアクリル系オリゴマー、アクリル系モノマーおよび反応性の有機官能基を有する金属群が導入されてなる修飾フリーアシッド型へテロポリ酸を均一に混和させ、さらに光重合開始剤を均一に溶解させる。このときに粘度調節のために、各成分が溶解する溶媒を使用してもよい。
【0045】
次に、調整した溶液に紫外線を照射することにより(希釈溶媒を使用した場合は紫外線照射前に熱風乾燥により溶媒を除去する)、紫外線硬化性のアクリル系オリゴマーと、アクリル系モノマーと、反応性の有機官能基を有する金属群が導入されてなる修飾フリーアシッド型へテロポリ酸とが共重合されてなる、フリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体を得ることができる。なお、溶液に紫外線を照射する際は、溶液をポリエステルフィルムなどの基材上に塗布して薄膜上にしたり、型に流し込んだりして、所望の形状に整えておくことが好ましい。この塊重合方法によれば、ヘテロポリ酸成分の割合を増加させることができるため、触媒活性、帯電防止性能、プロトン輸送性能を良好にできる点で好ましい。
【0046】
フリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体の形状は用途に応じて使い分けることができる。酸触媒として用いる場合には、取り扱い性に優れる微粒子状であることが好ましい。この場合、微粒子の平均粒子径は、0.1〜100μmであることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲とすることにより、触媒反応を進みやすくできるとともに、取り扱い性を向上させることができる。
【0047】
上述したように本発明のフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体は、本発明の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸を単独重合もしくは共重合して得ることができるが、その際、ヘテロポリ酸成分(本発明の修飾フリーアシッド型ヘテロポリ酸およびその他のヘテロポリ酸)を重合体全体の15重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上とすることがより好ましく、50重量%以上とすることがさらに好ましい。また、上限は80重量%以下とすることが好ましい。
【0048】
このような本発明のフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体は、回収、再利用が容易な酸触媒として用いることができる。触媒反応としては、各種化合物のエステル化反応、アルキル化反応、アシル化反応の他、アルケンの水和反応、アルケンの酸化反応などがあげられる。さらに、本発明のフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体は、塗膜からのブリードアウトが起こりにくい帯電防止剤、セパレータからのブリードアウトが起こりにくい燃料電池のセパレータに含有させるプロトン輸送剤として用いることができる。帯電防止剤やプロトン輸送剤として用いる場合、本発明のフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体を単独で塗膜化して帯電防止層やセパレータを形成してもよいが、別の樹脂などと混合して塗膜やセパレータを形成してもよい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0050】
[実施例1]
<反応性の有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩の製造>
【0051】
メタクリル基を有する金属アルコキシドの加水分解物で修飾されたヘテロポリ酸塩((Me2NH26[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・6H2O)の製造方法について説明する。
【0052】
メタノール150mL、純水50mLの混合溶媒に、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(CH2(CH3)CCOO(CH23Si(OCH33)を475μL(2.0mmol)加えて、文献(R.Contant,Inorg.Synth.,27,104,1990)に従い合成した一欠損Dawson型タングストポリ酸塩K10[α2−P21761]・19H2Oを5.0g(1mmol)加えた。1M塩酸を使用して、pHを1.8に調整した。30分攪拌後、未反応の粉体をメンブランフィルターで取り除き、ろ液をロータリーエバポレーターを使用して約70mLまで濃縮した。この濃縮液に過剰量のMe2NH2Clを5.5g(67mmol)加えて粉体を析出させた。析出した粉体をガラスフィルター(G4)で回収して、十分真空乾燥させることで、目的物を白色粉体として3.98g(収率:81.6%)得ることができた。
【0053】
<FT−IR{KBr disk}>
1702(m)、1629(br,m)[H2O]、1466(m)[Me2NH2]、1412(w)、1327(w)、1304(w)、1186(m)、1088(s)、1039(m)、954(s)、922(w)、793(vs)、566(w)、527(m) cm-1
【0054】
31P NMR>
{溶媒 D2O、22.6℃、外部標準:25%H3PO4aq.キャピラリー}
δ−10.3、−13.3 ppm
【0055】
H NMR>
{溶媒 D2O、21.3℃、外部標準:TSP 置換法}
δ0.93−0.94、1.93、2.01−2.05、2.74、4.28−4.29、5.69、6.15 ppm
【0056】
13C NMR>
{溶媒 D2O、26.3℃、外部標準:DSS 置換法}
δ19.3、23.2、36.5、69.0、 128.4、138.0 ppm
【0057】
<CHN 元素分析>
(Me2NH26[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・6H2
【0058】
【表1】

【0059】
上記キャラクタリゼーションの結果より、目的物が単一種で合成されたことがわかる。
この化合物を前駆体に使用して、フリーアシッドの合成を行った。
【0060】
<反応性の有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸H6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2Oの製造(上記で得られた修飾ヘテロポリ酸塩のカウンターカチオンの置換)>
【0061】
上記で製造したヘテロポリ酸塩(Me2NH26[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・6H2O 0.4g(0.082mmol)を湯浴上で60mLの純水に溶解した。室温まで放冷後、H+チャージした陽イオン交換樹脂(アンバーライト120NBA:ローム・アンド・ハース社)100mLに通薬した。更に純水100mLを通薬して、出てきた液をロータリーエバポレーターを使用して乾固した。更に真空乾燥させることで、目的物を橙黄色粉体として0.3g(収率:80%)得ることができた。
【0062】
<FT−IR {KBr disk}>
1686(m)、1629(br,w)[H2O]、1419(w)、1368(w)、1306(w)、1238(w)、1189(br,w)、1090(s)、1039(m)、957(s)、915(m)、805(br,vs)、597(w)、566(w)、531(m) cm-1
【0063】
31P NMR>
{溶媒 D2O、23.1℃、外部標準:25%H3PO4aq.置換法}
δ−10.3、−13.3 ppm
【0064】
1H NMR>
{溶媒 D2O、21.4℃、外部標準:TSP 置換法}
δ0.89−0.92、1.91、1.97−2.04、4.25−4.26、5.67、6.13 ppm
【0065】
13C NMR>
{溶媒 D2O、25.2℃、外部標準:DSS 置換法}
δ9.72、19.4、23.3、69.1、128.5−129.0、138.1、172.0 ppm
【0066】
<Solid29Si NMR>
{CPMAS:40Hz、基準:置換法polydimethylsilane−solid (−37.0 ppm)、RT}
δ−53.0 ppm
【0067】
<CHN 元素分析>
6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2
【0068】
【表2】

【0069】
上記キャラクタリゼーションの結果より、目的物であるヘテロポリ酸H6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2Oが製造されたことが確認された。
【0070】
<実施例1で得られたヘテロポリ酸H6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2Oとメチルメタクリレート(MMA)との共重合体の製造>
【0071】
冷却管、窒素導入管、温度計を装備した三口フラスコにCH3CN 30mLを加え、上記で得たヘテロポリ酸H6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2O 8g(1.80mmol)を溶解した。さらにメチルメタクリレート(MMA) 12g(84mmol)を加え、さらに重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル 0.03gを加えて窒素でパージした。パージ終了後、三口フラスコをオイルバスにつけて内温を4時間75℃に保った。粘度が上昇した溶液にメタノール500mLを加えて析出した粉体をデカンテーションにより回収して十分真空乾燥させた。目的のポリマーを白色粉体として6.6g(収率:33.0%)得られた。
【0072】
<FT−IR>
2994(w)、2950(w)、1723(m)、1434(m)、1386(m)、1239(s)、1190(s)、1144(s)、962(m)、910(m)、838(m)、809(m)、749(m) cm-1
【0073】
31P NMR in CD3CN>
δ−9.1、−12.2 ppm
【0074】
上記キャラクタリゼーションの結果より、ヘテロポリ酸H6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2OとMMAとが共重合されてなる、フリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体が得られたことを確認した。
【0075】
[実施例2]
<反応性の有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩の製造>
【0076】
まず、ビニル基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩(Me2NH26[P21761(CH2CHSi)2O]・7H2Oの製造方法について説明する。
【0077】
メタノール150mL、純水50mLの混合溶媒にビニルトリメトキシシラン(CH2CHSi(OCH33)を310μL(2.0mmol)加えて実施例1と同様の文献に従って合成した一欠損Dawson型タングストポリ酸塩K10[α2−P21761]・19H2Oを5.0g(1mmol)加えた。1M塩酸を使用して、pHを1.8に調整した。2時間攪拌後、未反応の粉体をメンブランフィルターで取り除きろ液をロータリーエバポレーターを使用して約70mLまで濃縮した。この濃縮液に過剰量のMe2NH2Clを5.5g(67mmol)加えて粉体を析出させた。析出した粉体をメンブランフィルターで回収後、5mLのメタノールで2回洗浄しさらに50mLのジエチルエーテルで2回洗浄した。さらに充分吸引乾燥させることで目的物を微白黄緑色粉体として3.17g(収率:67.6%)得ることができた。
【0078】
<FT−IR{KBr disk}>
1617(m)、1465(s)、1437(w)、1405(W)、1272(w)、1232(w)、1090(vs)、1069(w)、1040(s)、1017(w)、954(m)、919(m)、792(Br,s)、622(w)、596(w)、583(w)、566(w)、528(m)、483(w) cm-1
【0079】
31P NMR>
{溶媒 D2O、23.4℃、外部標準:25%H3PO4aq.キャピラリー}
δ−10.3、−13.3 ppm
【0080】
H NMR>
{溶媒 D2O、23.5℃、内部標準:DSS}
δ6.05−6.12、6.30、6.33−6.35 ppm
【0081】
13C NMR>
{溶媒 DO、26.0℃、外部標準:DSS 置換法}
δ36.5、130.6、140.5 ppm
【0082】
29Si NMR>
{溶媒 DMSO−d6、26.0℃、外部標準:TMS 置換法}
δ−67.6 ppm
【0083】
183W NMR>
{溶媒 DMSO−d6、20.0℃、外部標準:飽和Na2WO4aq. 置換法}
δ−116.6、−161.7、−163.6、−164.1、−173.3、−178.9、−198.6、−317.3 ppm
【0084】
<CHN 元素分析>
(Me2NH26[P21761(CH2CHSi)2O]・7H2
【0085】
【表3】

【0086】
上記キャラクタリゼーションの結果より、目的物が単一種で得られたことがわかる。この化合物を前駆体に使用して、フリーアシッドの合成を行った。
【0087】
<反応性の有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸H6[P21761(CH2CHSi)2O]・22H2Oの製造>
【0088】
上記で製造したヘテロポリ酸塩(Me2NH26[P21761{(CH2CHSi)2O}]・7H2O 2.0g(0.43mmol)を純水30mLに溶解した。H+チャージした実施例1と同様の陽イオン交換樹脂100mLに通薬した。さらに純水100mLを通薬して出てきた液をロータリーエバポレーターを使用して乾固した。さらに真空乾燥させることで、目的物を黄色粉体として1.66g(収率:82.3%)得ることができた。
【0089】
<FT−IR{KBr disk}>
1617(m)、1406(m)、1271(w)、1090(vs)、1043(m)、956(s)、916(s)、797(br,s)、566(w)、529(m)、484(w) cm-1
【0090】
31P NMR>
{溶媒 D2O、22.8℃、外部標準:25%H3PO4aq.キャピラリー}
δ−10.4、−13.4 ppm
【0091】
1H NMR>
{溶媒 D2O、23.0℃、外部標準:DSS 置換法}
δ5.98−6.10、6.27−6.29、6.31−6.33 ppm
【0092】
13C NMR>
{溶媒 D2O、26.1℃、外部標準:DSS 置換法}
δ130.5、140.4 ppm
【0093】
<CHN 元素分析>
6[P21761(CH2CHSi)2O]・22H2
【0094】
【表4】

【0095】
上記キャラクタリゼーションの結果より、目的物であるヘテロポリ酸H6[P21761(CH2CHSi)2O]・22H2Oが製造されたことが確認された。
【0096】
[実施例3]
<反応性の有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩の製造>
【0097】
アクリル基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩((Me2NH26[P21761{CH2CHCOO(CH23Si}2O]・5H2O)の製造方法について説明する。
【0098】
メタノール150mL、純水50mLの混合溶媒に3−アルコキシプロピルトリメトキシシラン(CH2CHCOO(CH23Si(OMe)3)を445μL(2.0mmol)加えて実施例1と同様の文献にしたがって合成した一欠損Dawson型タングストポリ酸塩K10[α2−P21761]・19H2Oを5.0g(1mmol)加えた。1M塩酸を使用して、pHを1.8に調整した。2時間攪拌後、未反応の粉体をメンブランフィルターで取り除きろ液をロータリーエバポレーターを使用して約70mLまで濃縮した。この濃縮液に過剰量のMe2NH2Clを5.5g(67mmol)加えて粉体を析出させた。析出した粉体をメンブランフィルターで回収後、5mLのメタノールで2回洗浄しさらに50mLのジエチルエーテルで2回洗浄した。さらに充分吸引乾燥させることで目的物を微白黄緑色粉体として3.48g(収率:72.1%)得ることができた。
【0099】
<FT−IR{KBr disk}>
1713(m)、1616(m)、1465(m)、1413(w)、1298(w)、1217(w)、1088(s)、1069(w)、1039(m)、1018(w)、955(vs)、921(s)、795 (br,vs)、750(m)、715(m)、570(w)、529(w) cm-1
【0100】
31P NMR>
{溶媒 D2O、21.6℃、外部標準:25%H3PO4aq.キャピラリー}
δ−10.2、−13.3 ppm
【0101】
1H NMR>
{溶媒 D2O、21.8℃、外部標準:DSS 置換法}
δ0.91−0.95、2.01−2.06、4.27−4.31、5.94−5.97、6.21−6.28、6.41−6.45 ppm
【0102】
13C NMR>
{溶媒 DMSO−d6、25.1℃、外部標準:TMS 置換法}
δ8.57、21.8、66.0、128.2、131.1、165.3 ppm
【0103】
183W NMR>
{溶媒 DMSO−d6、18.3℃、外部標準:飽和Na2WO4aq. 置換法}
δ−115.9、−118.6、−162.7、−166.6、−173.4、−179.8、−199.8、−320.1 ppm
【0104】
<CHN 元素分析>
(Me2NH26[P21761{CH2CHCOO(CH23Si}2O]・5H2
【0105】
【表5】

【0106】
上記キャラクタリゼーションの結果より、目的物が単一種で得られたことがわかる。この化合物を前駆体に使用して、フリーアシッドの合成を行った。
【0107】
<反応性の有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸H6[P21761{CH2CHCOO(CH23Si}2O]・25H2Oの製造>
【0108】
上記で製造したヘテロポリ酸塩(Me2NH26[P21761{CH2CHCOO(CH23Si}2O]・5H2O 2.0g(0.41mmol)を純水30mLに溶解した。H+チャージした実施例1と同様の陽イオン交換樹脂100mLに通薬した。さらに純水100mLを通薬して出てきた液をロータリーエバポレーターを使用して乾固した。さらに真空乾燥させることで、目的物を黄色粉体として1.59g(収率:78.9%)得ることができた。
【0109】
<FT−IR{KBr disk}>
1698(m)、1618(m)、1416(w)、1301(w)、1225(w)、1089(m)、1038(m)、954(vs)、917(s)、793(br,vs)、570(w)、529(w) cm-1
【0110】
31P NMR>
{溶媒 D2O、21.4℃、外部標準:25%H3PO4aq.キャピラリー}
δ−10.3、−13.3 ppm
【0111】
1H NMR>
{溶媒 D2O、23.0℃、外部標準:DSS 置換法}
δ0.89−0.93、1.99−2.03、4.26−4.28、5.92−5.95、6.20−6.27、6.38−6.44 ppm
【0112】
13C NMR>
{溶媒 DO、25.6℃、外部標準:DSS 置換法}
δ6.93、23.2、68.8、129.6、133.9、170.6 ppm
【0113】
<CHN 元素分析>
6[P21761{CH2CHCOO(CH23Si}2O]・25H2
【0114】
【表6】

【0115】
上記キャラクタリゼーションの結果より、目的物であるヘテロポリ酸H6[P21761{CH2CHCOO(CH23Si}2O]・25H2Oが製造されたことが確認された。
【0116】
[実施例4]
<反応性の有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩の製造>
【0117】
ビニル基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩(Bu4N)3[PW1139(CH2CHSi)2O]の製造方法について説明する。
【0118】
メタノール150mL、純水50mLの混合溶媒にビニルトリメトキシシラン(CH2CHSi(CH3O)3)を310μL(2.0mmol)加えて実施例1と同様の文献にしたがって合成した一欠損Keggin型タングストポリ酸塩K7[PW1139]・8H2Oを3.0g(1mmol)加えた。1M塩酸を使用して、pHを1.8に調整した。2時間攪拌後、未反応の粉体をメンブランフィルターで取り除きろ液をロータリーエバポレーターを使用して約70mLまで濃縮した。この濃縮液に過剰量のBu4NBrを5.5g(17mmol)加えて粉体を析出させた。析出した粉体をメンブランフィルターで回収後、純水50mL、メタノール50mL、ジエチルエーテル50mLで各3回洗浄した。さらに充分吸引乾燥させることで目的物を白色粉体として3.16g(収率:44.7%)で得ることができた。
【0119】
<FT−IR{KBr disk}>
1482(w)、1467(w)、1459(w)、1420(w)、1381(w)、1111(m)、1065(m)、1038(m)、995(m)、963(vs)、870(s)、823(s)、791(m)、620(w)、522(w) cm-1
【0120】
31P NMR>
{溶媒 CD3CN、21.9℃、外部標準:25%H3PO4aq.キャピラリー}
δ−13.3 ppm
【0121】
1H NMR>
{溶媒 DMSO−d6、25.1℃、内部標準:TMS}
δ6.04、6.16−6.17、6.22−6.26 ppm
【0122】
13C NMR>
{溶媒 DMSO−d6、25.3℃、外部標準:TMS 置換法}
δ129.6、137.4 ppm
【0123】
29Si NMR>
{溶媒 DMSO−d6、25.2℃、外部標準:TMS 置換法}
δ−65.6 ppm
【0124】
<CHN 元素分析>
(Bu4N)3[PW1139(CH2CHSi)2O]
【0125】
【表7】

【0126】
上記キャラクタリゼーションの結果より、目的物が単一種で得られたことがわかる。
【0127】
[実施例5]
<反応性の有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩の製造>
【0128】
メタクリル基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩(Bu4N)3[PW1139{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]の製造方法について説明する。
【0129】
アセトニトリル150mL、純水50mLの混合溶媒にγ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(CH2(CH3)CCOO(CH23Si(OCH33)を475μL(2.0mmol)加えて実施例1と同様の文献にしたがって合成した一欠損Keggin型タングストポリ酸塩K7[PW1139]・8H2Oを3.0g(1mmol)加えた。1M塩酸を使用して、pHを1.8に調整した。2時間攪拌後、未反応の粉体をメンブランフィルターで取り除きろ液をロータリーエバポレーターを使用して約70mLまで濃縮した。この濃縮液に過剰量のBu4NBrを8.6g(27mmol)加えて粉体を析出させた。析出した粉体をメンブランフィルターで回収後、純水50mL、メタノール50mL、ジエチルエーテル50mLで各3回洗浄した。さらに充分吸引乾燥させることで目的物を白色粉体として3.16g(収率:44.7%)で得ることができた。
【0130】
<FT−IR{KBr disk}>
1716(m)、1474(m)、1458(m)、1382(w)、1320(w)、1297(w)、1169(m)、1111(s)、1065(s)、1037(s)、995(s)、963(vs)、870(vs)、824(vs)、712(s)、585(m)、521(m)) cm-1
【0131】
31P NMR>
{溶媒 CD3CN、21.9℃、外部標準:25%H3PO4aq.キャピラリー}
δ−12.6 ppm
【0132】
H NMR>
{溶媒 DMSO−d6、25.1℃、内部標準:TMS}
δ1.09(H1)、1.22、1.63、1.86、4.40(H3)、5.82、6.30(H4a or H4b) ppm
【0133】
13C NMR>
{溶媒 DMSO−d6、25.3℃、外部標準:TMS 置換法}
δ7.91(C1)、13.2、19.0、22.9、17.7(C7)、21.5(C2)、65.7(C3)、125.2(C6)、135.7(C5)、166.2(C4) ppm
【0134】
29Si NMR>
{溶媒 DMSO−d6、25.2℃、外部標準:TMS 置換法}
δ−51.8 ppm
【0135】
183W NMR>
{溶媒 DMSO−d6、22.4℃、外部標準:飽和Na2WO4aq.}
δ−98.0(2W)、−102.9(2W)、−107.0(1W)、−120.7(2W)、−197.6(2W)、−250.0(2W) ppm
【0136】
<CHN 元素分析>
(Bu4N)3[PW1139{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]
【0137】
【表8】

【0138】
上記キャラクタリゼーションの結果より、目的物が単一種で得られたことがわかる。
【0139】
[実施例6]
<反応性の有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩の製造>
【0140】
アクリル基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩(Bu4N)3[PW1139{CH2CHCOO(CH23Si}2O]の製造方法について説明する。
【0141】
アセトニトリル150mL、純水50mLの混合溶媒にγ―アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(CH2C(CH3)COO(CH23Si(OCH33)を445μL(2.0mmol)加えて実施例1と同様の文献にしたがって合成した一欠損Keggin型タングストポリ酸塩K7[PW1139]・8HOを3.0g(1mmol)加えた。1M塩酸を使用して、pHを1.8に調整した。2時間攪拌後、未反応の粉体をメンブランフィルターで取り除きろ液をロータリーエバポレーターを使用して約30mLまで濃縮した。この濃縮液に過剰量のBu4NBrを8.6g(27mmol)加えて粉体を析出させた。析出した粉体をメンブランフィルターで回収後、純水50mL、メタノール50mL、ジエチルエーテル50mLで各3回洗浄した。さらに充分吸引乾燥させることで目的物を白色粉体として2.42g(収率:65.4%)で得ることができた。
【0142】
<FT−IR{KBr disk}>
1718(m)、1474(m)、1459(m)、1381(m)、1274(m)、1194(m)、1111(m)、1065(m)、1037(m)、963(s)、869(s)、823(s)、521(w)、420(w) cm-1
【0143】
31P NMR>
{溶媒 DMSO−d6、21.8℃、外部標準:25%H3PO4aq.キャピラリー}
δ−13.1 ppm
【0144】
H NMR>
{溶媒 DMSO−d6、25.1℃、外部標準:TMS 置換法}
δ0.77、1.84、4.14、5.92、6.20、6.30 ppm
【0145】
13C NMR>
{溶媒 DMSO−d6、25.7℃、外部標準:TMS 置換法}
δ7.99、21.5、65.5、128.2、130.9、165.2 ppm
【0146】
29Si NMR>
{溶媒 DMSO−d6、25.1℃、外部標準:TMS 置換法}
δ−51.9 ppm
【0147】
<CHN 元素分析>
(Bu4N)3[PW1139{CH2CHCOO(CH23Si}2O]
【0148】
【表9】

【0149】
上記キャラクタリゼーションの結果より、目的物が単一種で得られたことがわかる。
【0150】
[実施例7]
<反応性の有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩の製造>
【0151】
エポキシ基を有する金属アルコキシドの加水分解物により修飾されたヘテロポリ酸塩(Bu4N)3[PW1139{CH2OCHCH2O(CH23Si}2O]の製造方法について説明する。
【0152】
アセトニトリル150mL、純水30mLの混合溶媒に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(CH2OCHCH2O(CH23Si(OCH33)を560μL(2.54mmol)加えて実施例1と同様の文献にしたがって合成した一欠損Keggin型タングストポリ酸塩K[PW1139]・8H2Oを3.0g(1mmol)加えた。1M塩酸を使用して、pHを1.8に調整した。2時間攪拌後、未反応の粉体をメンブランフィルターで取り除きろ液をロータリーエバポレーターを使用して約30mLまで濃縮した。この濃縮液に過剰量のBu4NBrを8.6g(27mmol)加えて粉体を析出させた。析出した粉体をメンブランフィルターで回収後、純水50mL、メタノール50mL、ジエチルエーテル50mLで各3回洗浄した。さらに充分吸引乾燥させることで目的物を白色粉体として1.10g(収率:29.7%)で得ることができた。
【0153】
<FT−IR{KBr disk}>
1701(m)、1474(m)、1458(m)、1420(m)、1383(m)、1111(m)、1065(m)、1036(m)、963(s)、869(s)、823(s)、525(w) cm-1
【0154】
31P NMR>
{溶媒 CD3CN、23.3℃、外部標準:25%H3PO4aq.キャピラリー}
δ−12.6 ppm
【0155】
1H NMR>
{溶媒 CD3CN、23.3℃、内部標準:TMS}
δ0.81、1.82、2.53、2.71、3.32、3.43、3.55、3.70 ppm
【0156】
13C NMR>
{溶媒 CD3CN、25.3℃、外部標準:TMS 置換法}
δ7.97、22.3、43.4、50.1、71.0、72.1 ppm
【0157】
29Si NMR>
{溶媒 DMSO−d6、26.1℃、外部標準:TMS 置換法}
δ−51.4 ppm
【0158】
<CHN 元素分析>
(Bu4N)3[PW1139{CH2OCHCH2O(CH23Si}2O]
【0159】
【表10】

【0160】
上記キャラクタリゼーションの結果より、目的物が単一種で得られたことがわかる。
【0161】
次に、実施例1と実施例3で得られたヘテロポリ酸について、それぞれ重合しフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体を作製した。
【0162】
<実施例1で得られたヘテロポリ酸H6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2Oの重合体の作製>
【0163】
容量15mLのシュレンクフラスコに上記実施例1で得たヘテロポリ酸H6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2O 1gと重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル0.002gをCH3CN 1mLに溶解した。この容器を液体窒素に浸漬して内部の反応溶媒を凍結させた。反応溶媒が凍結したのを確認後、シュレンクコックより吸引ポンプを使用して容器内部の脱気を10分間行った。脱気が終了したらシュレンクコックを閉め、容器内部を真空状態に保ったまま液体窒素より取り出し、室温に戻した。次いで容器を75℃のオイルバスに漬けて重合反応を15時間行った。重合が進行するにつれてポリマー粉体が徐々に析出した。重合反応終了後、析出した粉体を回収し多量のCH2CNで洗浄してから粉体を充分真空乾燥した。目的のポリマーが0.18g(収率:18.0%)得られた。
【0164】
<FT−IR{KBr disk}>
1699(m)、1653(m)、1558(w)、1541(w)、1506(w)、1489(w)、1473(w)、1456(w)、1396(w)、1269(w)、1090(s)、1041(w)、958(vs)、918(s)、810(br)、528(w) cm-1
【0165】
<Solid 31P NMR>
{25.0℃、外部標準:(NH4)HPO4 置換法}
δ−9.17、−12.0 ppm
【0166】
上記キャラクタリゼーションの結果より、ヘテロポリ酸H6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2Oの重合体(フリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体)であることが確認された。
【0167】
<実施例3で得られたヘテロポリ酸H6[P21761{CH2CHCOO(CH23Si}2O]・25H2Oの重合体の作製>
【0168】
容量15mLのシュレンクフラスコに実施例3で得たヘテロポリ酸H6[P21761{CH2CHCOO(CH23Si}2O]・25H2O 1gと重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル0.002gをCH3CN 1mLに溶解した。この容器を液体窒素に浸漬して内部の反応溶媒を凍結させた。反応溶媒が凍結したのを確認後、シュレンクコックより吸引ポンプを使用して容器内部の脱気を10分間行った。脱気が終了したらシュレンクコックを閉め、容器内部を真空状態に保ったまま液体窒素より取り出し、室温に戻した。次いで容器を75℃のオイルバスに漬けて重合反応を15時間行った。重合が進行するにつれてポリマー粉体が徐々に析出した。重合反応終了後析出した粉体を回収し多量のCHCNで洗浄してから粉体を充分真空乾燥した。目的のポリマーが0.46g(収率:46.0%)得られた。
【0169】
<FT−IR{KBr disk}>
1716(w)、1699(w)、1684(w)、1652(w)、1588(w)、1541(w)、1508(w)、1473(w)、1458(w)、1396(w)、1200(w)、1090(m)、1041(m)、955(s)、918(s)、796(br)、663(w) cm-1
【0170】
<Solid 31P NMR>
{25.3℃、外部標準:(NH4)HPO4 置換法}
δ−9.29、−12.5 ppm
【0171】
上記キャラクタリゼーションの結果より、ヘテロポリ酸H6[P21761{CH2CHCOO(CH23Si}2O]・25H2Oの重合体(フリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体)であることが確認された。
【0172】
以上のようにして得られたフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体(実施例1で得られたヘテロポリ酸H6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2Oとメチルメタクリレート(MMA)との共重合体、実施例1で得られたヘテロポリ酸H6[P21761{CH2(CH3)CCOO(CH23Si}2O]・20H2Oの重合体、および実施例3で得られたヘテロポリ酸H6[P21761{CH2CHCOO(CH23Si}2O]・25H2Oの重合体)の固体酸強度について、Hammett指示薬による評価を行った。
【0173】
Hammett指示薬(1,9−diphenyl−1,3,6,8−nonatetraen−5−one,pKa=−3.0)のメタノール溶液を濃度が4.0×10-5mol/Lに調整した。この溶液に上記重合体をそれぞれ加えて重合体表面の呈色を確認したところ、すべてのものについて上澄み溶液には呈色が見られなかったが、重合体表面にのみ指示薬に基づく赤色の呈色が確認された。このことより上記重合体はpKaが−3.0以上の強力な固体酸触媒として作用できることが確認され、また共有結合により固定化されているため重合体からのブリードアウトが無いことが確認された。また、これらのフリーアシッド型ヘテロポリ酸塩重合体はろ過することにより回収することができ、酸触媒として再利用することができるものであった。
【0174】
一方、重合されていない通常のヘテロポリ酸(例えば、H3[PW1240]・12H2O)はHammett指示薬により呈色は示すが、メタノールに溶解してしまうため固体酸触媒としては使用することができないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロポリ酸の骨格構成原子の一部欠損部位に、反応性の有機官能基を有する金属群が導入されてなる修飾フリーアシッド型へテロポリ酸。
【請求項2】
一般式(1)で示される請求項1記載の修飾フリーアシッド型へテロポリ酸。
m[XY]・nH2O ・・・(1)
[式中、Xは骨格構成原子が一部欠損したヘテロポリアニオンであり、Yは反応性の有機官能基を有する金属群である。nは1以上の整数であり、mは1以上の整数であって一般式(1)中の[XY]から決定される負電荷の絶対値である。]
【請求項3】
ヘテロポリ酸塩の骨格構成原子の一部欠損部位に、反応性の有機官能基を有する金属群が導入されてなる修飾へテロポリ酸塩。
【請求項4】
一般式(2)で示される請求項3記載の修飾へテロポリ酸塩。
m[XY] ・・・(2)
[式中、Rは、Bu4+、Me2NH2+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+の群から選択され、Xは骨格構成原子が一部欠損したヘテロポリアニオンであり、Yは反応性の有機官能基を有する金属群である。mは1以上の整数であって一般式(2)中の[XY]から決定される負電荷の絶対値である。]
【請求項5】
請求項1又は2記載の修飾フリーアシッド型へテロポリ酸を、単独重合もしくは共重合してなるフリーアシッド型ヘテロポリ酸系重合体。

【公開番号】特開2008−31147(P2008−31147A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47272(P2007−47272)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】