説明

修飾ポリエチレングリコール中間体を得るための合成法

本発明は、保護基−アミノオキシPEGリンカーを得るための合成法において中間体を得るための新規で一層効率的な合成法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾ポリエチレングリコールを合成することでアミノオキシPEG化リンカーを製造するための中間体を得るための新規合成法を提供する。
【背景技術】
【0002】
固体マトリックス上における生体分子(例えば、ペプチド又はオリゴヌクレオチド)及び他の有機化合物の製造は、リンカーとして知られる二官能性スペーサー分子を用いて一層容易に実施される。リンカーの2つの反応性官能基の一方は(大抵は安定なアミド結合によって)適宜に官能化された樹脂に永久的に結合されるのに対し、成長する分子はリンカーの他方の反応位置に一時的に結合される。
【0003】
大部分のリンカーは支持体からの最終分子の分離のためにアシドリシスに頼っているものの、最終切断のために他の機構(例えば、光分解、フルオリドリシス(fluoridolysis)及び塩基を触媒とするβ離脱)の使用も利用されてきた。
【0004】
さらに、特定の細胞タイプと選択的に相互作用する生物学的活性分子は標的組織への放射能の送達のために有用であることを指摘するのは重要である。例えば、放射性標識ペプチドは診断イメージング及び放射線療法のために放射性核種を腫瘍、梗塞巣部及び感染組織に送達するための大きな潜在的可能性を有している。約110分の半減期を有する18Fは、多くのレセプターイメージング試験のために最適なポジトロン放出核種である。したがって、18F標識された生物活性ペプチドは、多種多様の疾患を定量的に検出して特性決定するためにPETで利用できるので大きな臨床的可能性を有している。
【0005】
新しい血管は、脈管形成(vasculogenesis)及び血管新生(angiogenesis)という2つの異なる機構によって形成されることがある。血管新生は、既存の血管からの枝分れによる新血管の形成である。このような過程をもたらす主な刺激は、組織中の細胞への栄養素及び酸素の不十分な供給(低酸素症)であり得る。細胞は数多くの血管新生促進因子を分泌することで応答し得るが、しばしば言及されるその一例は血管内皮増殖因子(VEGF)である。これらの因子は、基底膜のタンパク質を分解するタンパク分解酵素並びにこれらの潜在的に有害な酵素の作用を制限する阻害物質の分泌を開始させる。血管新生促進因子の他の顕著な効果は、内皮細胞の移動及び分裂を引き起こすことである。管腔の反対側で血管の周囲に連続シートを形成している、基底膜に付着した内皮細胞は、有糸分裂を起こさない。付着の喪失及び血管新生促進因子に対するレセプターからの信号の総合効果により、内皮細胞の移動、増殖及び再配列が起こり、最終的に新血管の周囲に基底膜が合成される。
【0006】
血管新生は、創傷治癒および炎症の過程をはじめとする、組織の増殖及び再構築に際して顕著である。腫瘍がミリメートルサイズに達したとき、その増殖速度を維持するために血管新生を開始しなければならない。血管新生には、内皮細胞及びその環境の特性変化を伴う。これらの細胞の表面は移動の準備のために再構築され、基底膜が分解されたところには、タンパク質分解の実行及び制御に関与する各種のタンパク質に加えて隠れた構造が露出される。腫瘍の場合、生じた血管ネットワークは通常は組織化されておらず、急激なねじれ及び動静脈シャントを形成している。血管新生の阻止はまた、抗腫瘍療法のための有望な戦略であると考えられている。血管新生を伴う変態はまた、悪性疾患を一例とする疾患の診断にも非常に有望である。この着想はまた、炎症及びアテローム性動脈硬化症(初期アテローム性動脈硬化症病巣のマクロファージは血管新生促進因子の潜在的な源である)を含む種々の炎症関連疾患においても大きな有望性を示す。
【0007】
細胞接着に関与する多くのリガンドは、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)のトリペプチド配列を含んでいる。RGD配列は、この配列を有するリガンドと細胞表面上のレセプターとの間の一次認識部位として作用するように思われる。一般に、リガンドとレセプターとの二次相互作用が相互作用の特異性を高めると考えられる。これらの二次相互作用は、リガンド及びレセプターのうちでRGD配列にすぐ隣接した部分の間又はRGD配列から遠く離れた部位で起こり得る。
【0008】
したがって、インビボで血管新生に関連するインテグリンレセプターの効率的なターゲティング及びイメージングは、化学的に頑強で安定な、選択的で高親和性のRGD系ベクターを要求する。その上、バックグラウンドの問題を低減させるため、イメージング剤を設計するときには排出経路が重要な因子となる。
【0009】
国際公開第06/030291号は、血管新生に関連するレセプターに結合するターゲティングベクターとしてのペプチド系化合物の使用に関する。さらに、国際公開第2006/030291号は、迅速に製造できる、診断イメージングのために有用なペプチド系化合物を記載している。本発明は、修飾Boc(−COOCH(CH3)3)保護アミノオキシPEGリンカーを得るための中間体の新規な合成法を記載する。次いで、このPEGリンカーをペプチド系フラグメントに結合することでBoc保護アミノオキシペプチド系化合物を生成できる。その後、Boc保護アミノオキシペプチド系化合物を合成することで、血管新生で使用できる放射性標識ペプチド系化合物が得られる。
【0010】
本明細書における参考文献の考察又は引用は、かかる参考文献が本発明に対する先行技術であることを容認するものと解すべきでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
国際公開第2009/108484号パンフレット
【発明の概要】
【0012】
本発明は、非対称PEG化リンカーを得るための新規な中間体合成法を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態は、式(K1)のリンカーを製造するための方法であって、下記の反応を含んでなる方法を示す。
【0014】
【化1】

式中、Rは下記構造の1つを表し、
【0015】
【化2】

PGは次式のカルバメートであるか、
【0016】
【化3】

或いはPGは次式の基を表し、
【0017】
【化4】

(式中、R2=アルキル又はアリールであり、さらに好ましくはR2=H(この場合にはPGはホルミルである)又はR2=メチル(この場合にはPGはアセチルである)であり、最も好ましくはR2=フェニル(この場合にはPGはベンゾイルである)である。)
或いはさらにPGはアルキル又はアリール、さらに好ましくはアリル、最も好ましくはベンジルであってもよく、
nは1〜19を表す。
【0018】
構造の詳細な説明
表1は、リンカーを製造するための中間体及び出発原料の主要な選択された構造及び構造名を示す。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【発明を実施するための形態】
【0021】
血管新生用の放射性標識生成物を製造する際には、放射性標識ペプチド系化合物を得るための合成法における重要な構成単位は、信頼可能で効率的なリンカーを同定することである。本発明では、PEGリンカー用の商業的に入手可能な試薬は存在しないものの、市販の原価効率が良い試薬からの簡便な合成法が本明細書に開示される。詳しくは、本発明は迅速かつ効率的にPEGリンカーを得るための新規な中間体合成法を特許請求する。
【0022】
PEGリンカーを得るために特許請求の範囲に記載された合成法を使用することには利点がある。1つの利点は、特許請求の範囲に記載された合成法がPEGリンカーを得るための急速なプロセスであることである。さらに詳しくは、本明細書に開示されるリンカーK1を大規模生産のために使用することは、化合物F1及びH1のような中間体を使用する場合であればコストの観点から見て有利である。
【0023】
特許請求の範囲に記載されたPEGリンカーを得るために修飾ポリエチレングリコールを合成することにはいくつかの利点がある。
【0024】
1つの利点は、特許請求の範囲に記載された合成法がPEGリンカーを得るための短くて速いプロセスであることである。本発明で使用される簡便な合成法は半日で実施でき、したがってPEG成分を1週間以下で製造することを可能にする。
【0025】
以下に特記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。
【0026】
PEG(ポリエチレングリコール)とは、個別エチレングリコールの鎖である。
【0027】
本明細書で使用される「リンカー」という用語は、ベクター及びレポーターのような2以上の他の部分をひとつに結合する部分を意味する。異なる親油性及び/又は電荷を有するリンカー基の使用は、診断上のニーズに合わせてペプチドのインビボ薬物動態を大幅に変更することができる。生分解性リンカー及び生体高分子をはじめとして、多種多様のリンカーが使用できる。リンカーは、最も簡単にはベクターとアミノオキシ基との間の化学結合である。さらに一般的には、リンカーは単分子又は多分子の骨格(例えば、線状、環状又は枝分れ状の骨格)を与える。リンカーはさらに、ベクターをレポーターから遠ざけるという役割を有することもある。本明細書に記載されるリンカーは、特にデキストラン及び好ましくはポリ(エチレングリコール)(PEGという)のような高分子構造を含んでいる。PEG部分を含むリンカーは、ある種の状況下で望ましいように、血中クリアランスを遅くすることが判明している。かかるリンカーは、グルタル酸及び/又はコハク酸及び/又はポリエチレングリコール系成分から導くことができる。
【0028】
アジ化物(即ち、式N3-を有する陰イオン)を使用せずに式(1)を製造する場合について記載した合成プロトコルに従えば、様々な長さのPEG中心部分、一方の側に位置する保護アミノオキシ酢酸、及びPEG部分の多端にアミドとして連結されたスペーサーを有するすべての分子を合成できる。
【0029】
さらに、下記に記載される合成プロトコルは、様々な長さ(即ち、直列に結合されたエチレングリコールの数)のPEG部分の形成を可能にする。
【0030】
ベクターは、本明細書では、レセプター分子に対して親和性を有する化合物又は成分のフラグメント、好ましくはペプチド化学種、さらに好ましくはRGDペプチドのような血管新生ターゲティング化学種として定義される。本発明で使用されるベクターの具体例は、Arg−Gly−Aspペプチド又はその類似体である。
【0031】
本明細書に記載される合成法では、特許請求の範囲に記載された下記の反応において枠で囲んで示された部分はワンポット操作で実施できる。
【0032】
【化5】

式中、Rは下記構造の1つを表し、
【0033】
【化6】

本発明の一実施形態は、式(K1)のリンカーを製造するための方法であって、下記の反応を含んでなる方法を示す。
【0034】
【化7】

式中、Rは下記構造の1つを表し、
【0035】
【化8】

PGは次式のカルバメートであるか、
【0036】
【化9】

或いはPGは次式の基を表し、
【0037】
【化10】

(式中、R2=アルキル又はアリールであり、さらに好ましくはR2=H(この場合にはPGはホルミルである)又はR2=メチル(この場合にはPGはアセチルである)であり、最も好ましくはR2=フェニル(この場合にはPGはベンゾイルである)である。)
或いはさらにPGはアルキル又はアリール、さらに好ましくはアリル、最も好ましくはベンジルであってもよく、
nは1〜19を表す。
【0038】
本発明の別の実施形態は、上記の合成法において化合物E1及びL1を製造するための方法であって、H1及びG1が抽出又は結晶化によってL1から分離される方法を示す。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態は、上記の合成法における方法であって、C1がE1と反応してF1、G1及びE1の混合物を生成し、E1は両方の末端ヒドロキシル基上に脱離基(LG)を導入することでポリプロピレングリコールから製造される方法を示す。
【0040】
本発明のさらに他の実施形態は、上記の反応に従った方法であって、好ましい温度が約22℃であり、好ましい時間が約5〜8時間である方法を示す。。
【0041】
本発明の別の実施形態は、上記の合成法に従った方法であって、F1、G1及びE1の混合物がフタルイミド塩と反応してH1、G1及びL1の混合物を生成する方法を示す。
【0042】
本発明のさらに別の実施形態は、上記の合成法に従った方法であって、F1、G1及びE1の混合物が約30〜約70℃の温度範囲で約1〜約4時間にわたりフタルイミド塩と反応してH1、G1及びL1の混合物を生成する方法を示す。
【0043】
本発明のさらに別の実施形態は、上記の合成法に従った方法であって、H1がクロマトグラフィー又は結晶化によってG1から単離される方法を示す。
【実施例】
【0044】
以下の実施例で本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は決して本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0045】
本発明は、以下の略語を使用する実施例によって例示される。
p:パラ
o:オルト
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
MS:質量分析法
LC−MS:液体クロマトグラフィー/質量分析法
TEG:テトラエチレングリコール
DMF:ジメチルホルムアミド
1H−NMR:プロトン核磁気共鳴
THF:テトラヒドロフラン
DMA:ジメチルアセトアミド
hr(s):時間
min(s):分
mg:ミリグラム
Boc:−COOCH(CH3)3
RT:室温
C:摂氏温度
M+H+:本明細書では、分子とプロトンとの付加物として質量分析法で検出されるイオンの質量として定義される。
M+Na+:本明細書では、分子とナトリウムイオンとの付加物として質量分析法で検出されるイオンの質量として定義される。
UV:紫外
Boc保護アミノオキシリンカーの合成のための合成経路
Boc保護アミノオキシリンカーの合成のための合成経路を下記図1に示す。中間体の同定のために使用された主な分析ツールは、MS及びLC−MSであった。
【0046】
すべての合成段階は、比較的安価で容易に入手できる出発原料及び化学薬品を用いて実施した。いずれの段階も、経費のかかるもの又は非効率なものとは確認できない。
【0047】
【化11】

Boc保護アミノオキシリンカーの合成のための各プロセス段階の実験データ
無水物によるN−アシル化
無水物によるN−アシル化は、アミンからアミドを生成するための一般的で簡便な合成法である。
【0048】
【化12】

i.11−O−トシル−3,6,9−トリオキサ−1−ヒドロキシ−ウンデカン(3)
【0049】
【化13】

p−トルエンスルホニルクロリドの予備調製溶液を、トリエチルアミン及び1,11−ジヒドロキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデカン(TEG)(2)のクロロホルム溶液に60分かけて滴下した。反応混合物を周囲温度(20〜23℃)で一晩撹拌した。その後、反応混合物を濾過し、濾液を減圧下で蒸発させた。残留物をまずヘキサンと混合して振盪し、次いで酢酸エチル/ヘキサン(1:1)と混合して振盪し、最後に残留物を酢酸エチル中に懸濁することで生成物を残留物から抽出した。懸濁液を濾過し、生成物を濾液中に集めた。濾液を減圧下で蒸発させ、残留物をMSによって分析した。
【0050】
MSにより、未反応のモノトシル化物(M+H+ 349.14)及びジトシル化物(M+H+ 503.15)の混合物が確認された。
【0051】
ii.N−(3,6,9−トリオキサ−11−ヒドロキシ−ウンデカン)−フタルイミド(4)の生成
【0052】
【化14】

第1段階からのトシル化TEG(3)をDMFに溶解し、フタルイミドカリウムを添加した。反応混合物を80℃で一晩撹拌した。翌朝、温度を2時間にわたって90℃に上昇させた。室温に冷却した後、混合物を濾過し、濾液を減圧下で蒸発させた。残留物をメタノールと混合し、濾過し、濾液を減圧下で蒸発させた。この手順を、ジエチルエーテルを用いて繰り返した。
【0053】
iii.N−(3,6,9−トリオキサ−11−ヒドロキシ−ウンデカン)−フタルイミド(4)の精製
ビス−N−フタルイミドを含む粗N−(3,6,9−トリオキサ−11−ヒドロキシ−ウンデカン)−フタルイミドを、できるだけ少量のTHFに溶解した。THF溶液を40〜60℃の水に滴下した。ビスアミドが水から沈殿し、冷却後にこれを濾過によって除去した。濾液を減圧下で蒸発させ、ジエチルエーテルを残留物に添加し、生成物を固体残留物からジエチルエーテル中に抽出した。エーテルをデカントし、この手順を1回繰り返した。残留物を水と混合し、1×ジエチルエーテル及び2×酢酸エチルで抽出した。合わせた酢酸エチル相を減圧下で蒸発させた。エーテル相を合わせ、デカントし、蒸発させた。残留物を酢酸エチルに溶解し、溶液をエグジラレート(exhilarate)抽出から単離された生成物に添加した。この第2の酢酸エチル溶液を減圧下で蒸発させた。生成物4の構造を1H−NMRによって確認した。生成物4:ビスイミド:TEGの比は86:2:12であった(NMR)。
【0054】
iv.11−アミノ−3,6,9−トリオキサ−ヒドロキシ−ウンデカン
【0055】
【化15】

100mgの化合物4をメタノールに溶解し、ヒドラジン一水和物を添加した。混合物を50℃に3時間加熱し、室温に冷却し、室温で一晩撹拌した。
【0056】
MSにより、所望の生成物(M+H+ 194.1)が確認された。
【0057】
v.17−ヒドロキシ−3,9,12,15−テトラオキサ−6−アザ−5−オキソ−ヘプタデカン酸(6)
【0058】
【化16】

アミン5をジクロロメタン及び助溶媒としての若干のDMFと混合した。1.5モル当量の無水ジグリコール酸を添加し、混合物を40℃に2時間加熱した。室温に冷却し、週末中撹拌した後、反応混合物を減圧下で蒸発させた。残留物を水と混合し、1N NaOH(水溶液)でpHを11〜12に調整することでエステルを加水分解した。溶液を一晩撹拌し、その後にHClでpH1〜2に酸性化し、減圧下で蒸発させた。
【0059】
残留物のLC−MSは、予想される質量M+H+ 310.15及びM+Na+ 332.13を有する主ピークを示した。
【0060】
vi.(Boc−アミノオキシ)無水酢酸(8)
【0061】
【化17】

(Boc−アミノオキシ)酢酸(7)を無水酢酸に溶解し、週末中50〜60℃に加熱した。反応混合物のLC−MSは、混合無水物7a及び対称無水物8を含む数種の生成物を示した。
【0062】
無水物7aは元来は標的化合物であったが、反応混合物中に8が発見された。これは次の段階にとって7aより良好な試薬である(上記参照)。7aによるN−アシル化は、2種の生成物、即ち所望生成物としてのN−(Boc−アミノオキシ)アセトアミド及び副生物としてのN−アセトアミドを生じることがあるからである。
【0063】
化合物8の構造は、M+H+ 265.1及びM+H+ 165を有するLC−MS(M+H+ 365)フラグメントによって確認された。これらのフラグメントは、1つ及び2つのBoc基が失われたことを表している。
【0064】
vii.5−N−(Boc−アミノオキシ−アセトアミド)−3−オキサ−1−ヒドロキシペンタン(9)
【0065】
【化18】

化合物8を含む混合物をTHFに溶解し、2−(2−アミノエチル)エタノールを添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。反応混合物を水と混合し、NaOH(水溶液)でpHを10超に調整し、一晩撹拌した。反応混合物をTHF及びブラインに添加して抽出した。蒸発させたTHF相を次の段階で直接使用した。
【0066】
生成物はLC−MSを用いて確認された。
【0067】
viii.5−N−(Boc−アミノオキシ−アセトアミド)−3−オキサ−1−(O−トシル)ペンタン(9)
【0068】
【化19】

考察/結果
標的化合物であるBoc保護アミノオキシリンカーは、中間体6と中間体10とのカップリングによって製造されるはずである。これらの実験の結果は、化合物6(4つの合成段階)及び化合物10(3つの合成段階)が共に簡単な合成方法で製造できることを示している。化合物10は、いかなる形式の精製も行うことなしに3つの合成段階で製造された。提唱された方法を用いるエーテル生成は、上記の実験ixで確認された。
【0069】
かかる合成法における重量な段階は、化合物9の生成である。これを達成するためにはいくつかのアプローチが存在する。1つは化合物7の酸ハロゲン化物を製造することであるが、Boc基は例えば酸塩素化時に安定でない。他の1つの方法は、カップリング試薬を使用することである。カップリング試薬の使用に関する問題点は、生成物及び試薬の分子量が小さいことである。
【0070】
化合物8の生成が一層良好な解決策であろうが、その生成は実験vi(上記参照)で立証されている。比較的純粋な化合物8が得られるようにこの合成法を調整することは、成功のかぎであると思われる。この段階の追跡は、ギ酸と酢酸との間においてインサイチュで生成される混合無水物を用いて行われる。ホルミルの反応性はアセチルに比べて高いので、7とホルミルとの間で混合無水物が生じるであろう。ホルミル基はアセチルほど安定でなく、もし7が存在すれば8の生成が好都合なはずである。無水物8は、混合無水物に比べて熱力学的に好ましい構造と見なされる。
【0071】
特定の実施形態及び参考文献の引用
本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態によって技術的範囲が限定されるべきでない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、当業者には本発明の様々な変更態様が上述の説明及び添付の図面から明らかとなろう。かかる変更態様は添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0072】
様々な刊行物及び特許出願を本明細書で引用したが、それらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(K1)のリンカーを生成するための中間体E1及びL1の製造方法であって、下記の反応を含んでなる方法。
【化1】

(式中、Rは下記構造の1つを表し、
【化2】

PGは次式のカルバメートであるか、
【化3】

或いはPGは次式の基を表し、
【化4】

(式中、R2=アルキル又はアリールであり、さらに好ましくはR2=H(この場合にはPGはホルミルである)又はR2=メチル(この場合にはPGはアセチルである)であり、最も好ましくはR2=フェニル(この場合にはPGはベンゾイルである)である。)
或いはさらにPGはアルキル又はアリール、さらに好ましくはアリル、最も好ましくはベンジルであってもよく、
nは1〜19を表す。)
【請求項2】
H1及びG1が抽出又は結晶化によってL1から分離される、化合物E1及びL1を製造するための請求項1記載の方法。
【請求項3】
C1がE1と反応してF1、G1及びE1の混合物を生成し、E1は両方の末端ヒドロキシル基上に脱離基(LG)を導入することでポリプロピレングリコールから製造される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
好ましい温度が約22℃であり、好ましい時間が約5〜8時間である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
F1、G1及びE1の混合物がフタルイミド塩と反応してH1、G1及びL1の混合物を生成する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
F1、G1及びE1の混合物が約30〜約70℃の温度範囲で約1〜約4時間にわたりフタルイミド塩と反応してH1、G1及びL1の混合物を生成する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
H1がクロマトグラフィー又は結晶化によってG1から単離される、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2012−513391(P2012−513391A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542223(P2011−542223)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/066917
【国際公開番号】WO2010/074935
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】