説明

修飾糖部分を含有する免疫刺激オリゴヌクレオチド類似体

本発明は、少なくとも1つのFANA置換ヌクレオチド類似体、およびピリミジン−プリンジヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドに関する。本発明はその医薬組成物および使用方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、免疫学の分野に関する。より具体的には、本発明は、免疫賦活能が強化された治療用オリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
細菌DNAは、B細胞およびナチュラルキラー細胞を活性化する免疫刺激作用を有するが、脊椎動物DNAは有さない(Tokunaga,T.ら、1988.Jpn.J.Cancer Res.79:682〜686;Tokunaga,T.ら、1984、JNCI 72:955〜962;Messina,J.P.ら、1991、J.Immunol.147:1759〜1764;および以下で概説:Krieg、1998、Applied Oligonucleotide Technology、C.A.SteinおよびA.M.Krieg(編)、John Wiley and Sons,Inc.、New York、NY、431〜448ページ)。細菌DNAのこれらの免疫刺激作用は、特定の塩基コンテクスト(base context)における非メチル化CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)の存在の結果であり、この非メチル化CpGジヌクレオチドは、細菌DNAにおいて一般的であるが、脊椎動物DNAにおいてはメチル化されており、十分に示されないことが現在理解されている(Kriegら、1995 Nature 374:546〜549;Krieg、1999 Biochim.Biophys.Acta 93321:1〜10)。細菌DNAの免疫刺激作用は、これらのCpGモチーフを含有する合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を用いて模倣することができる。そのようなCpG ODNは、B細胞増殖;サイトカインおよび免疫グロブリン分泌;ナチュラルキラー(NK)細胞の溶解活性およびIFN−γ分泌;ならびに共刺激分子を発現させ、サイトカイン、特にTh1様T細胞応答の発生の促進に重要なTh1様サイトカインを分泌させる、樹状細胞(DC)および他の抗原提示細胞の活性化を誘導する、ヒトならびにマウスの白血球に対する高い刺激作用を有する。天然のホスホジエステル骨格のCpG ODNのこれらの免疫刺激作用は、CpGモチーフがメチル化され、GpCに変換され、または別の方法で排除され、もしくは変化する場合、この作用は劇的に低減されるという点において、高度にCpG特異的である(Kriegら、1995 Nature 374:546〜549;Hartmannら、1999 Proc.Natl.Acad.Sci USA 96:9305〜10)。
【0003】
初期の研究では、免疫刺激CpGモチーフは、式プリン−プリン−CpG−ピリミジン−ピリミジンに従うと考えられた(Kriegら、1995 Nature 374:546〜549;Pisetsky、1996 J.Immunol.156:421〜423;Hackerら、1998 EMBO J.17:6230〜6240;Lipfordら、1998 Trends in Microbiol.6:496〜500)。しかし、マウスリンパ球は、この「式」に従わないホスホジエステルCpGモチーフに非常によく応答し(Yiら、1998 J.Immunol.160:5898〜5906)、同じことが、ヒトB細胞および樹状細胞に当てはまる(Hartmannら、1999 Proc.Natl.Acad.Sci USA 96:9305〜10;Liang、1996 J.Clin.Invest.98:1119〜1129)ことが現在明らかである。
【0004】
DNAおよびRNAオリゴヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼによる消化を受けやすく、それぞれ、核酸分子の末端および内部部位におけるヌクレオチド間のリン酸連結を分解させる。分解速度は、核酸の位置、例えば、細胞の外側(急速な)対細胞の内側(一般により遅い)、ならびに後者の場合、核酸を含有する細胞内コンパートメント、例えば、リソソームの内側(急速な)対細胞質内(より遅い)に応じて変化し得る。したがって、ヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドの安定性を増大させることは、細胞内でのその機能寿命を延長することによってその効力を強化する可能性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
安定形態のRNAおよびDNAを作製するためのいくつかの手法が報告されている。例えば、Uhlmann Eら(1990)Chem Rev 90:543〜84を参照されたい。残念ながら、多くのこれらの手法は、獲得される安定性が不十分であるか、安定性の獲得が機能の喪失を伴うために、満足な選択肢となっていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、対応する天然に存在するDNA分子と比較して、ヌクレアーゼおよび酸に対する改善された安定性を特徴とする、化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドを提供する。本発明は、一般に、少なくとも1つのFANA修飾プリンヌクレオシドを含む、免疫調節性モチーフを含有する免疫調節性オリゴヌクレオチドに関する。本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、免疫応答を調節するための組成物または方法を求める任意の状況または用途において有用である。本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、感染症、癌、アレルギー、自己免疫疾患、炎症性障害、および喘息を含めた様々な状態を治療するのに使用するためのアジュバント、ワクチン、および他の薬物を含めた医薬組成物の調製において特に役立つ。
【0007】
本発明の一態様は、少なくとも1つの免疫調節性ZNYZモチーフを含み、Zは、プリンヌクレオシドまたは2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノース(FANA)修飾プリンヌクレオシドであり、Nは、T、A、または5−置換Uであり、Yはピリミジンヌクレオシドであり、少なくとも1つのZは、FANA修飾プリンヌクレオシドを含む、長さが8〜200ヌクレオチドの免疫調節性オリゴヌクレオチドである。一実施形態では、免疫調節性モチーフはZNYZ Nである。別の実施形態では、免疫調節性モチーフはZNYGモチーフであり、YGは内部ピリミジン−グアニンジヌクレオチドである。一実施形態では、ZはGである。別の実施形態では、少なくとも1つのGは、FANA修飾を含む。一実施形態では、NはTである。別の実施形態では、Nは、5−クロロ−ウラシル、5−ヨード−ウラシル、5−エチル−ウラシル、5−プロピル−ウラシル、5−プロピニル−ウラシル、または(E)−5−(2−ブロモビニル)−ウラシルである。一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、免疫調節性モチーフの5’側に少なくとも4つのヌクレオチドを含む。別の実施形態では、免疫調節性モチーフの外側の少なくとも1つのヌクレオチドは、FANA修飾を有する。一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドではない。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、複数の内部YZジヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、すべての内部YZジヌクレオチドのZは、FANA修飾を含む。いくつかの実施形態では、Zは、グアノシン、2’−デオキシグアノシン、2’デオキシ−7デアザグアノシン、2’デオキシ−6−チオグアノシン、アラビノグアノシン、2’−デオキシイノシン、2’−デオキシ2’−置換−アラビノグアノシン、2’−O−置換−アラビノグアノシン、または他の非天然プリンヌクレオシドである。一実施形態では、ZはGである。一実施形態では、YはCであり、ZはGであり、CGジヌクレオチドのCは、メチル化されていない。別の実施形態では、Yはシトシン、2’−デオキシシトシン、2’−デオキシチミジン、アラビノシチジン、1−(2’−デオキシ−B−D−リボフラノシル)−2−オキソ−7−デアザ−8−メチルプリン、2’−デオキシ−2’−置換アラビノシチジン、2’−O−置換アラビノシチジン、2’−デオキシ−5−ヒドロキシシチジン、2’−デオキシ−N4−アルキルシチジン、2’−デオキシ−チオウリジンまたは他の非天然ピリミジンヌクレオシドである。
【0008】
一実施形態では、免疫調節性オリゴヌクレオチドは、免疫賦活性オリゴヌクレオチドである。別の実施形態では、免疫調節性オリゴヌクレオチドは、免疫抑制性オリゴヌクレオチドである。様々な実施形態では、免疫調節性オリゴヌクレオチドは、A、B、C、P、T、E、またはSクラスのオリゴヌクレオチドである。
【0009】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、長さが15ヌクレオチド未満である。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの安定化されたヌクレオチド間連結を有する。一実施形態では、少なくとも1つの安定化ヌクレオチド間連結は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、メチルホスホロチオエート、ホスホノアセテート、Rp−ホスホロチオエート、Sp−ホスホロチオエート、ボラノホスフェート、または3’−チオホルムアセタールからなる群から選択される。一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、第2型(second type)の糖修飾を有する。一実施形態では、第2型の糖修飾は、2’−O−メチルリボース、2’−O−プロパニルリボース(propanylribose)、2’−O−ブチルリボース、2’−O−(2−メトキシエチル)、2’−O,4’−C−アルキレン−連結リボース(alkylene−linked ribose)(アルキレンは、メチレン(LNA)もしくはエチレンである)、2’−デオキシ−2’−フルオロリボース、3’−O−メチルリボース、1’,2’−ジデオキシリボース;アラビノース、1’−メチルアラビノース、3’−ヒドロキシメチルアラビノース、4’−ヒドロキシメチル−アラビノース、または1,5−アンヒドロヘキシトールからなる群から選択される。
【0010】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの3’−3’ヌクレオチド間連結を有する。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの5’−5’ヌクレオチド間連結を有する。さらに別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの2’−5’ヌクレオチド間連結を有する。一実施形態では、オリゴヌクレオチドは分岐オリゴヌクレオチドである。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのパリンドローム配列を有する。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの(G)配列(nは4〜10である)を有する。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの疎水性のT類似体を含む。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの5−置換U類似体を含む。さらに別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、親油性の修飾を有する。一実施形態では、オリゴヌクレオチドはリンカーを含む。別の実施形態では、リンカーは、d−スペーサー、1,3−プロパンジオールリンカー、グリセロールまたはグリセロール同族体である。
【0011】
本発明の別の態様は、対象における免疫応答の刺激方法であって、免疫応答を刺激するのに有効な量で、任意の本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドを対象に投与するステップを含む方法である。一実施形態では、この方法は、対象における癌を治療するための方法であって、癌を治療するのに有効な量で、任意の本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドを、癌を有する対象に投与するステップを含む方法である。別の実施形態では、この方法は、対象に抗癌治療を施すステップをさらに含む。一実施形態では、抗癌治療は、放射線療法、化学療法、免疫療法、癌ワクチン、ホルモン療法、または生物学的応答調節剤である。一実施形態では、この方法は、対象における感染症を治療するための方法であって、感染症を治療するのに有効な量で、任意の本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドを、感染症を有しているか、有するリスクのある対象に投与するステップを含む方法である。一実施形態では、免疫調節性オリゴヌクレオチドは、静脈内に投与される。別の実施形態では、免疫調節性オリゴヌクレオチドは、皮下に投与される。一実施形態では、感染症はウイルス性疾患である。別の実施形態では、ウイルス性疾患は、B型肝炎、C型肝炎、サイトメガロウイルス、(CMV)、パピローマウイルス、HIVまたは単純ヘルペスウイルス(HSV)である。さらに別の実施形態では、感染症は、リーシュマニア、リステリア、または炭疽である。さらに別の実施形態では、この方法は、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗寄生虫剤、または抗真菌剤を対象に投与するステップをさらに含む。一実施形態では、この方法は、対象におけるアレルギーを治療するための方法であって、アレルギーを治療するのに有効な量で、任意の本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドを、アレルギーを有する対象に投与するステップを含む方法である。一実施形態では、アレルギーはアレルギー性鼻炎である。別の実施形態では、この方法は、抗アレルギー薬を対象に投与するステップをさらに含む。一実施形態では、対象は、アトピー性皮膚炎(湿疹)、アレルギー性鼻炎または鼻感冒、枯草熱、結膜炎、気管支喘息、じん麻疹(urticaria)(じん麻疹(hives))、または食物アレルギーを有しているか、有するリスクのある対象である。別の実施形態では、抗アレルギー薬物は、抗IgE抗体、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、またはプロスタグランジン誘導物質である。一実施形態では、この方法は、対象における喘息を治療するための方法であって、喘息を治療するのに有効な量で、任意の本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドを、喘息を有する対象に投与するステップを含む方法である。一実施形態では、この方法は、喘息薬を対象に投与するステップをさらに含む。一実施形態では、喘息薬は、PDE−4阻害剤、気管支拡張剤/β−2アゴニスト、K+チャネルオープナー、VLA−4アンタゴニスト、ニューロキン(neurokin)アンタゴニスト、トロンボキサンA2(TXA2)合成阻害剤、キサンチン、アラキドン酸アンタゴニスト、5リポキシゲナーゼ阻害剤、TXA2受容体アンタゴニスト、TXA2アンタゴニスト、5−リポキス(lipox)活性化タンパク質の阻害剤、またはプロテアーゼ阻害剤である。別の実施形態では、この方法は、対象における免疫応答の抑制方法であって、免疫応答を抑制するのに有効な量で、任意の本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドを対象に投与するステップを含む方法である。別の実施形態では、対象は、炎症性障害または自己免疫疾患を有する。別の実施形態では、対象は、自己免疫疾患を有する対象である。別の実施形態では、対象は、炎症性障害を有しているか、有するリスクのある対象である。さらに別の実施形態では、炎症性障害は敗血症である。
【0012】
本発明は、以下の説明に示され、または図面に例示される、成分の構成および配置の詳細にその用途を限定されない。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践され、または実施することが可能である。また、本明細書で使用する言い回しおよび専門用語は、説明の目的のためであり、限定しているとみなされるべきではない。本明細書において、「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する」、「含有する」、「伴う」、およびこれらの変形の使用は、その後に列挙される項目、およびこれらの均等物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【0013】
添付の図面は、縮尺通りに描かれることが意図されていない。図面において、様々な図面において例示されるそれぞれ同一またはほとんど同一の成分は、同様の数字で表されている。明確にする目的のために、すべての成分が、すべての図面において標識されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】2’−フルオロ−アラビノ−核酸(FANA)および2’O−メチル(2’OMe)についての化学構造を示す図面である。図面は、様々な形態のFANAおよび2’OMeも表し、2’−フルオロ−アラビノ−核酸が、好適なB−DNA構造(2’−endo)にあることを実証している。
【図2】グアノシン残基のFANA修飾を有する核酸が、酸に対して安定であることを示すグラフである。FANA核酸である配列番号1および配列番号5の脱プリン動態を、非FANA親である配列番号8の動態と比較した。核酸は、0.1MのHCl中でインキュベートし、脱プリンは、遊離プリン塩基のRP−HPLC定量化によって測定した。x軸は、分での時間であり、y軸は、ナノグラム(ng)でのグアニン濃度である。
【図3】B−クラスのFANA核酸による、TLR9−媒介NF−κB活性化を示すグラフである。FANA核酸である配列番号1〜7の活性を、非FANA親核酸である配列番号8の活性と比較した。hTLR9−LUC−293細胞を、指定された量の核酸を用いてインキュベートし、NF−κB活性化は、ルシフェラーゼ活性を測定することによって16時間後に求めた。刺激指数は、培地バックグラウンドのルシフェラーゼ活性を参照して計算した。x軸は、μMでのODN濃度の対数であり、y軸は、pg/mlでのIFN−α濃度である。
【図4】CpGモチーフ中へのFANA−Gの取込みが、hTLR9媒介IFN−α産生を増大させることを示すグラフである。C−クラスFANA核酸である配列番号9〜14の活性を、非FANA親である配列番号15および配列番号16(3’末端で3’−O−メチルグアノシンを有する親)の活性と比較した。ヒトPBMCを、漸増量のCクラス核酸を用いて24時間インキュベートし、IFN−αレベルは、ELISAによって求めた。結果は、3ドナーの平均±標準誤差を示す。x軸は、μMでのODN濃度の対数であり、y軸は、pg/mlでのIFN−α濃度である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、免疫調節能を同時に低減することなく、安定性を増大させた免疫調節性オリゴヌクレオチドに部分的に基づく。ある特定の免疫調節性モチーフを有するオリゴヌクレオチド(ODN)は、例えば、トール様受容体9(TLR9)との相互作用を介して、免疫系を刺激することが知られている。しかし、オリゴヌクレオチドは、インビボで、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼによって分解を受けやすい。CpG ODNのある特定の化学修飾、例えば、ヌクレオチド間連結の変形、または糖残基の変更などが使用されることによって、ヌクレアーゼに対するその安定性、ならびにその細胞取込み特性およびその免疫賦活プロファイルが調節される。残念ながらこれらの修飾は、場合によっては、おそらく、その受容体によるこれらのオリゴヌクレオチドの認識を妨げることによって、これらのオリゴヌクレオチドが免疫系を刺激する能力の、ある程度の喪失をもたらす場合がある。
【0016】
本発明は、いくつかの態様では、2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノ(FANA)修飾ヌクレオシドを含めることによる、免疫調節性オリゴヌクレオチドにおける2’−デオキシ−β−D−リボヌクレオシドの交換は、ODNに所望の安定性を付与するが、生物活性を損なわれていないままにするという発見に関する。さらに、これらのODNは、酸性pHでもより安定であり、経口用途におけるFANA修飾ODNの可能性を示すことが、意外にも発見された。そのような活性の増大は、FANAが、刺激性モチーフ内の内部ヌクレオシド上に位置している場合でさえ観察された。
【0017】
本発明のいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドは、免疫調節性モチーフ配列ZNYZを有し、Zはそれぞれ独立に、プリンヌクレオシドまたはFANA修飾プリンヌクレオシドであり、NはT、A、または5−置換Uである。Yはピリミジンヌクレオシドである。本発明の免疫調節性モチーフでは、少なくとも1つのZは、FANA−修飾プリンヌクレオシドである。オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のそのようなモチーフを含むことができる。場合によっては、オリゴヌクレオチドは、複数の内部YZジヌクレオチドを有する。1つまたは複数のこれらのジヌクレオチドは、FANA−修飾プリンを有することができる。場合によっては、すべてのYZジヌクレオチドが、FANA修飾プリンを有する。
【0018】
場合によっては、免疫調節性モチーフは、ZNYGモチーフとしてさらに定義され、YGは、内部ピリミジン−グアニンジヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、NはTである。免疫調節性モチーフは、4ヌクレオチド以上下流にあってよい。内部ピリミジン−グアニンジヌクレオチドは、一般にメチル化されていない。
【0019】
場合によっては、免疫調節性モチーフは、ZNYZ Nとしてさらに定義され、NはTまたはAである。
【0020】
場合によっては、Zは、グアノシン、2’−デオキシグアノシン、2’デオキシ−7デアザグアノシン、2’デオキシ−6−チオグアノシン、アラビノグアノシン、2’−デオキシイノシン、2’−デオキシ2’−置換−アラビノグアノシン、2’−O−置換−アラビノグアノシン、または他の非天然プリンヌクレオシドである。
【0021】
場合によっては、上述した免疫調節性モチーフ中に、2つ以上のFANA修飾プリンヌクレオシドが存在する。場合によっては、モチーフの外側に、1つまたは複数のFANA修飾プリンヌクレオシドが存在する。
【0022】
本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、免疫賦活性オリゴヌクレオチドとすることができる。上述した免疫調節性モチーフは、ODNクラス、例えばAクラス、Bクラス、Cクラス、Eクラス、Tクラス、およびPクラスなどを含めた免疫賦活性オリゴヌクレオチドの以前に述べられたクラスに関連して使用することができる。本発明のいくつかの実施形態では、免疫調節性オリゴヌクレオチドは、免疫賦活性モチーフを含み、これは「CpGジヌクレオチド」である。CpGジヌクレオチドは、メチル化されていてもよく、メチル化されていなくてもよい。少なくとも1つの非メチル化CpGジヌクレオチドを含有する免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、非メチル化シトシン−グアニンジヌクレオチド配列(すなわち、後に3’グアノシンが続き、リン酸結合によって連結された非メチル化5’シチジン)を含有し、免疫系を活性化するオリゴヌクレオチド分子であり、そのような免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、CpGオリゴヌクレオチドである。CpGオリゴヌクレオチドは、いくつかの発行済み特許、公開特許出願、および他の刊行物に記載されており、これには米国特許第6,194,388号;同第6,207,646号;同第6,214,806号;同第6,218,371号;同第6,239,116号;および同第6,339,068号が含まれる。少なくとも1つのメチル化CpGジヌクレオチドを含有する免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、メチル化シトシン−グアニンジヌクレオチド配列(すなわち、後に3’グアノシンが続き、リン酸結合によって連結されたメチル化5’シチジン)を含有し、免疫系を活性化するオリゴヌクレオチドである。他の実施形態では、免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドがない。CpGジヌクレオチドがないこれらのオリゴヌクレオチドは、非CpGオリゴヌクレオチドと呼ばれ、これらは非CpG免疫賦活性モチーフを有する。これらは、少なくとも80%のTを有するODNなどのTに富むODNであることが好ましい。
【0023】
「Bクラス」のODNは、B細胞を活性化することに強力であるが、IFN−αおよびNK細胞の活性化を誘発することに相対的に弱い。BクラスのCpGオリゴヌクレオチドは、一般に完全に安定化されており、ある特定の好適な塩基コンテクスト内に非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。例えば、米国特許第6,194,388号;同第6,207,646号;同第6,214,806号;同第6,218,371号;同第6,239,116号;および同第6,339,068号を参照されたい。別のクラスは、IFN−αおよびNK細胞の活性化を誘発することに強力であり、B細胞を刺激することに相対的に弱く、このクラスは、「Aクラス」と呼ばれている。AクラスのCpGオリゴヌクレオチドは一般に、5’および3’末端に安定化されたポリG配列、ならびに少なくとも6ヌクレオチドのパリンドロームホスホジエステルCpGジヌクレオチド含有配列を有する。例えば、公開特許出願PCT/US00/26527(WO01/22990)を参照されたい。さらに別のクラスのCpGオリゴヌクレオチドは、B細胞およびNK細胞を活性化し、IFN−αを誘発し、このクラスは、Cクラスと呼ばれている。
【0024】
「Cクラス」の免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、少なくとも2つの異なるモチーフを含有し、免疫系の細胞に対するユニークで望ましい刺激作用を有する。これらのODNの一部は、従来の「刺激性の」CpG配列および「GCに富む」または「B細胞中和」モチーフの両方を有する。これらの組合せモチーフオリゴヌクレオチドは、B細胞活性化および樹状細胞(DC)活性化の強い誘導物質である従来の「クラスB」CpG ODNに関連する作用と、IFN−αおよびナチュラルキラー(NK)細胞の活性化の強い誘導物質であるが、B細胞およびDCの活性化の相対的に劣った誘導物質である、より最近記載されたクラスの免疫刺激オリゴヌクレオチド(「クラスA」CpG ODN)に関連する作用との間のどこかに入る免疫刺激作用を有する。Krieg AMら(1995)Nature 374:546〜9;Ballas ZKら(1996)J Immunol 157:1840〜5; Yamamoto Sら(1992)J Immunol 148:4072〜6。好適なクラスB CpG ODNは、ホスホロチオエート骨格を有することが多いが、好適なクラスA CpG ODNは、混合骨格またはキメラ骨格を有し、Cクラスの組合せモチーフ免疫刺激オリゴヌクレオチドは、いずれも安定化された、例えば、ホスホロチオエート骨格、キメラ骨格、またはホスホジエステル骨格を有することができ、いくつかの好適な実施形態では、これらは、半軟質の(semi−soft)骨格を有する。このクラスは、2002年8月19日に出願された米国特許出願US10/224,523号に記載されており、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【0025】
「Eクラス」のオリゴヌクレオチドは、IFN−αの分泌を誘発するための強化された能力を有する。これらのODNは、YGZモチーフの5’および/または3’側に親油性の置換されたヌクレオチド類似体を有する。Eクラスの式の化合物は、例えば、以下の親油性の置換ヌクレオチド類似体のいずれかとすることができる:置換ピリミジン、置換ウラシル、疎水性T類似体、置換トルエン、置換イミダゾールもしくはピラゾール、置換トリアゾール、5−クロロ−ウラシル、5−ブロモ−ウラシル、5−ヨード−ウラシル、5−エチル−ウラシル、5−プロピル−ウラシル、5−プロピニル−ウラシル、(E)−5−(2−ブロモビニル)−ウラシル、または2.4−ジフルオロ−トルエン。Eクラスのオリゴヌクレオチドは、少なくとも仮特許出願第US60/847,811号に記載されている。
【0026】
「Tクラス」のオリゴヌクレオチドは、本発明のODNならびにIFN関連サイトカインおよびケモカインのように修飾されていないとき、BクラスまたはCクラスのオリゴヌクレオチドより低いレベルのIFN−αの分泌を誘発する一方で、Bクラスのオリゴヌクレオチドと同様のレベルのIL−10を誘発する能力を保持する。Tクラスのオリゴヌクレオチドは、少なくとも米国特許出願第11/099,683号に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0027】
「Pクラス」免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、5’TLR活性化ドメイン、2つの二重鎖形成領域および任意選択のスペーサーおよび3’末端を含めたいくつかのドメインを有する。このクラスのオリゴヌクレオチドは、Cクラスよりはるかに高いレベルのIFN−α分泌を場合によっては誘発する能力を有する。Pクラスのオリゴヌクレオチドは、インビトロおよび/またはインビボで自発的に自己集合してコンカテマーになる能力を有する。これらの分子の作用の方法についてのいずれの特定の理論によっても束縛されることなく、1つの可能な仮説は、この特性は、Pクラスのオリゴヌクレオチドに、ある特定の免疫細胞の内側でTLR9をより高度に架橋する能力を付与し、以前に述べられたクラスのCpGオリゴヌクレオチドと比較して、異なるパターンの免疫活性化を誘発するということである。TLR9受容体の架橋は、形質細胞様樹状細胞におけるI型IFNRフィードバックループを介して、より強いIFN−α分泌の活性化を誘発することができる。Pクラスのオリゴヌクレオチドは、少なくとも米国出願第11/706,561号に記載されている。
【0028】
本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、免疫抑制性オリゴヌクレオチドとすることができる。上述した免疫調節性モチーフは、「Sクラス」などのODNクラスを含めた、以前に述べられたクラスの免疫抑制性オリゴヌクレオチドに関連して使用することができる。阻害性の、またはSクラスのODNは、免疫刺激を阻害することが望ましいときはいつでも有用である。阻害性ODNは、敗血症ショック、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、自己免疫疾患、Th1−またはTh2媒介疾患、細菌感染症、寄生虫感染症、自然流産、および腫瘍を予防および治療するために使用することができる。阻害性ODNは、一般に、関連したTLRを発現するすべての細胞の活性化を阻害するため、より具体的には、抗原提示細胞、B細胞、形質細胞様樹状細胞(pDC)、単球、単球由来細胞、好酸球、および好中球の活性化を阻害するために使用することができる。SクラスのODNは、少なくとも米国出願第10/977,560号にさらに記載されている。
【0029】
免疫調節性オリゴヌクレオチドは、安定化FANAプリンヌクレオチド(複数も)に加えて安定化されたヌクレオチド間連結の骨格、または安定化された、およびホスホジエステルヌクレオチド連結のキメラ骨格を有することができる。「安定化されたヌクレオチド間連結」は、ホスホジエステルヌクレオチド間連結と比較して、インビボ分解(例えば、エキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼを介して)に相対的に耐性であるヌクレオチド間連結を意味するものとする。好適な安定化されたヌクレオチド間連結として、限定することなく、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、メチルホスホロチオエート、ホスホノアセテート、Rp−ホスホロチオエート、Sp−ホスホロチオエート、ボラノホスフェート、または3’−チオホルムアセタール、またはこれらの組合せが挙げられる。他の安定化されたオリゴヌクレオチドには、非イオン性DNA類似体、例えば、アルキル−およびアリール−ホスフェート(荷電ホスホネート酸素がアルキルまたはアリール基によって交換されている)、ホスホジエステル、ならびに荷電酸素部分が、アルキル化されている、アルキルホスホトリエステルなどが含まれる。一方または両方の末端で、ジオール、例えば、テトラエチレングリコールまたはヘキサエチレングリコールなどを含有するオリゴヌクレオチドも、ヌクレアーゼ分解に対して実質的に耐性であることが示されている。
【0030】
本発明の目的に関して、キメラ骨格は、部分的に安定化された骨格を指し、少なくとも1つのヌクレオチド間連結は、ホスホジエステルまたはホスホジエステル様であり、少なくとも1つの他のヌクレオチド間連結は、安定化されたヌクレオチド間連結であり、少なくとも1つのホスホジエステルまたはホスホジエステル様連結および少なくとも1つの安定化された連結は異なる。ボラノホスホネート連結は、ホスホジエステル連結と比べて安定化されることが報告されているので、骨格のキメラの性質の目的で、ボラノホスホネート連結は、状況に応じて、ホスホジエステル様として、または安定されたとして分類することができる。例えば、本発明によるキメラ骨格は、一実施形態では、少なくとも1つのホスホジエステル(ホスホジエステルまたはホスホジエステル様)連結および少なくとも1つのボラノホスホネート(安定化された)連結を含むことができる。別の実施形態では、本発明によるキメラ骨格は、ボラノホスホネート(ホスホジエステルまたはホスホジエステル様)およびホスホロチオエート(安定化された)連結を含むことができる。ホスホロチオエートなどの修飾骨格は、ホスホラミデートまたはH−ホスホネート化学を使用して、自動化されている技法を使用して合成することができる。アリール−およびアルキル−ホスホネートは、例えば、米国特許第4,469,863号に記載されているように作製することができ、アルキルホスホトリエステル(米国特許第5,023,243号および欧州特許第092,574号に記載されているように、荷電酸素部分がアルキル化されている)は、市販の試薬を使用して自動化されている固相合成によって調製することができる。他のDNA骨格修飾および置換を行うための方法が記載されている。Uhlmann Eら(1990)Chem Rev 90:544;Goodchild J(1990)Bioconjugate Chem 1:165。キメラのオリゴヌクレオチドを調製するための方法も知られている。例えば、Uhlmannらに発行された特許には、そのような技法が記載されている。
【0031】
混合骨格修飾ODN(Mixed backbone modified ODN)は、市販のDNAシンセサイザーおよび標準的なホスホルアミジット化学を使用して合成することができる。(F.E.Eckstein、「Oligonucleotides and Analogues−A Practical Approach」IRL Press、Oxford、UK、1991、ならびにM.D.MatteucciおよびM.H.Caruthers、Tetrahedron Lett.21、719(1980))。カップリング後に、PS連結が、Beaucage試薬(R.P.Iyer、W.Egan、J.B.ReganおよびS.L.Beaucage、J.Am.Chem.Soc.112、1253(1990))(アセトニトリル中0.075M)またはフェニルアセチルジスルフィド(PADS)を使用する硫化、その後のテトラヒドロフラン中の無水酢酸、2,6−ルチジン(1:1:8;v:v:v)およびN−メチルイミダゾール(テトラヒドロフラン中16%)を用いたキャッピングによって導入される。このキャッピングステップは、ホスホロチオエート連結が位置するべき位置での望まれないホスホジエステル(PO)連結の形成を最小限にするために、硫化反応の後に実施される。例えば、CpGジヌクレオチドでのホスホジエステル結合の導入の場合、中間体の亜リン酸−IIIは、ヨウ素の水/ピリジン溶液を用いた処理によって酸化される。固体支持体からの切断、および濃アンモニアを用いた処理による最終の脱保護(50℃で15時間)の後、ODNは、NaCl−勾配(例えば、緩衝液A:アセトニトリル/水=1:4/v:v中の10mMのNaHPO、pH6.8;緩衝液B:アセトニトリル/水=1:4/v:v中の10mMのNaHPO、1.5MのNaCl;1ml/分で、30分で5から60%のB)を使用する、Gen−Pak Faxカラム(Millipore−Waters)上のHPLC、またはキャピラリーゲル電気泳動によって分析される。このODNは、Source High Performanceカラム(Amersham Pharmacia)上のHPLCまたはFPLCによって精製することができる。HPLCでの同種の画分を合わせ、C18カラムまたは限外濾過によって脱塩する。このODNをMALDI−TOF質量分析法によって分析して、計算質量を確認した。
【0032】
本発明のオリゴヌクレオチドは、他の修飾も含むことができる。これらには、非イオン性DNA類似体、例えば、アルキル−およびアリール−ホスフェート(荷電ホスホネート酸素がアルキルまたはアリール基によって交換されている)、ホスホジエステル、ならびに荷電酸素部分が、アルキル化されている、アルキルホスホトリエステルなどが含まれる。一方または両方の末端で、ジオール、例えば、テトラエチレングリコールまたはヘキサエチレングリコールなどを含有するオリゴヌクレオチドも、ヌクレアーゼ分解に対して実質的に耐性であることが示されている。
【0033】
半軟質オリゴヌクレオチドは、部分的に安定化された骨格を有する免疫賦活性オリゴヌクレオチドであり、ホスホジエステルまたはホスホジエステル様ヌクレオシド間連結が、少なくとも1つの内部ピリミジンヌクレオシド−グアノシン(YG)ジヌクレオチド内でのみ起こる。半軟質オリゴヌクレオチドは、完全に安定化された骨格を有する免疫賦活性オリゴヌクレオチドに対していくつかの利点を有することができる。例えば、半軟質オリゴヌクレオチドは、対応する完全に安定化された免疫賦活性オリゴヌクレオチドと比べて、増大された免疫賦活力を有することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、YZジヌクレオチドはYGジヌクレオチドであり、Gはグアノシン、または修飾グアノシンである。いくつかの実施形態では、グアノシンはFANA修飾グアノシンである。
【0035】
免疫調節性オリゴヌクレオチドは、一般に、好適な内部位置でのホスホジエステルまたはホスホジエステル様ヌクレオチド間連結に加えて、分解に耐性である5’および3’末端を含む。そのような分解耐性の末端は、任意の適当な修飾を伴うことができ、これは、対応する無修飾末端に対して、エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性の増大をもたらす。例えば、5’および3’末端は、骨格の少なくとも1つのホスフェート修飾を含めることによって安定化させることができる。好適な実施形態では、各末端での骨格の少なくとも1つのホスフェート修飾は、独立してホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、またはメチルホスホロチオエートヌクレオチド間連結である。別の実施形態では、分解耐性の末端は、3’末端でペプチドまたはアミド連結によって接続された1つまたは複数のヌクレオチド単位を含む。
【0036】
ホスホジエステルヌクレオチド間連結は、自然において見出されるオリゴヌクレオチドの連結特性の型である。ホスホジエステルヌクレオチド間連結は、2つの架橋酸素原子によって隣接され、一方は帯電し、他方は無電荷である2つの追加の酸素原子によっても結合されたリン原子を含む。ホスホジエステルヌクレオチド間連結は、オリゴヌクレオチドの組織半減期を低減することが重要であるとき、特に好適である。
【0037】
ホスホジエステル様ヌクレオチド間連結は、リン含有架橋基であり、これは、ホスホジエステルと化学的および/またはジアステレオマー的に同様である。ホスホジエステルとの類似性の尺度には、ヌクレアーゼ消化に対する感受性およびRNAse Hを活性化する能力が含まれる。したがって例えば、ホスホジエステルオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ消化に感受性であるが、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ消化に感受性でない一方で、ホスホジエステルオリゴヌクレオチドおよびホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの両方は、RNAse Hを活性化する。好適な実施形態では、ホスホジエステル様ヌクレオチド間連結は、ボラノホスフェート(または同等に、ボラノホスホネート)連結である。米国特許第5,177,198号;米国特許第5,859,231号;米国特許第6,160,109号;米国特許第6,207,819号;Sergueevら、(1998)J Am Chem Soc 120:9417〜27。別の好適な実施形態では、ホスホジエステル様ヌクレオチド間連結は、ジアステレオマー的に純粋なRpホスホロチオエートである。ジアステレオマー的に純粋なRpホスホロチオエートは、混合された、またはジアステレオマー的に純粋なSpホスホロチオエートより、ヌクレアーゼ消化に対して感受性であり、RNAse Hを活性することに優れていると考えられている。CpGオリゴヌクレオチドの立体異性体は、1999年7月27日に出願された、同時係属の米国特許出願第09/361,575号、および公開PCT出願PCT/US99/17100(WO00/06588)の対象である。本発明の目的に関して、用語「ホスホジエステル様ヌクレオチド間連結」は、ホスホロジチオエートおよびメチルホスホネートヌクレオチド間連結を特に除外することに注意されるべきである。
【0038】
本発明の免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、天然のRNAおよびDNAと比較して、ホスホジエステルヌクレオチド間架橋、β−D−リボース単位および/または天然のヌクレオチド塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル)を伴う、様々な化学修飾および置換を包含することができる。化学修飾の例は、当業者に知られており、例えば、Uhlmann Eら(1990)Chem Rev 90:543;「Protocols for Oligonucleotides and Analogs」Synthesis and Properties&Synthesis and Analytical Techniques、S.Agrawal編、Humana Press、Totowa、USA 1993;Crooke STら(1996)Annu Rev Pharmacol Toxicol 36:107〜129;およびHunziker Jら(1995)Mod Synth Methods 7:331〜417に記載されている。本発明によるオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾を有することができ、それぞれの修飾は、天然のDNAまたはRNAから構成される同じ配列のオリゴヌクレオチドと比較して、特定のホスホジエステルヌクレオチド間架橋および/または特定のβ−D−リボース単位および/または特定の天然ヌクレオチド塩基の位置にある。
【0039】
例えば、本発明は、オリゴヌクレオチドに関し、これは、1つまたは複数の修飾を含むことができ、それぞれの修飾は、独立して以下から選択される:
a)修飾ヌクレオチド間架橋による、ヌクレオチドの3’および/または5’末端に位置したホスホジエステルヌクレオチド間架橋の交換、
b)デホスホ架橋による、ヌクレオチドの3’および/または5’末端に位置したホスホジエステル架橋の交換、
c)別の単位による、糖リン酸骨格からの糖リン酸単位の交換、
d)修飾糖単位によるβ−Dリボース単位の交換、および
e)修飾ヌクレオチド塩基による天然ヌクレオチド塩基の交換。
【0040】
オリゴヌクレオチドの化学修飾についてのより詳細な例は、以下の通りである。
【0041】
ヌクレオチドの3’および/または5’末端に位置したホスホジエステルヌクレオチド間架橋は、修飾ヌクレオチド間架橋によって交換することができ、この修飾ヌクレオチド間架橋は、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、NR−ホスホラミデート、ボラノホスフェート、α−ヒドロキシベンジルホスホネート、ホスフェート−(C〜C21)−O−アルキルエステル、ホスフェート−[(C〜C12)アリール−(C〜C21)−O−アルキル]エステル、(C〜C)アルキルホスホネートおよび/または(C〜C12)アリールホスホネート架橋、(C〜C12)−α−ヒドロキシメチル−アリール(例えば、WO95/01363に開示されている)から選択され、(C〜C12)アリール、(C〜C20)アリールおよび(C〜C14)アリールは、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ニトロ、シアノによって置換されてもよく、RおよびRは、互いに独立して水素、(C〜C18)−アルキル、(C〜C20)−アリール、(C〜C14)−アリール−(C〜C)−アルキル、好ましくは水素、(C〜C)−アルキル、好ましくは(C〜C)−アルキルおよび/またはメトキシエチルであり、またはRおよびRは、これらを担持している窒素原子と一緒になって、5〜6員の複素環を形成し、これは、O、SおよびNの群からのさらなるヘテロ原子をさらに含有することができる。
【0042】
ヌクレオチドの3’および/または5’末端に位置したホスホジエステル架橋のデホスホ架橋による交換(デホスホ架橋は、例えば、Uhlmann EおよびPeyman A、「Methods in Molecular Biology」、20巻、「Protocols for Oligonucleotides and Analogs」、S.Agrawal編、Humana Press、Totowa 1993、16章、355ffページに記載されている)、デホスホ架橋は、例えば、デホスホ架橋のホルムアセタール、3’−チオホルムアセタール、メチルヒドロキシルアミン、オキシム、メチレンジメチル−ヒドラゾ、ジメチレンスルホンおよび/またはシリル基から選択される。
【0043】
糖リン酸骨格(すなわち、糖リン酸骨格は糖リン酸単位から構成される)からの糖リン酸単位(すなわち、β−D−リボースおよびホスホジエステルヌクレオチド間架橋は、一緒に糖リン酸単位を形成している)は、別の単位によって交換することができ、他の単位は、「モルホリノ誘導体」オリゴマー(例えば、Stirchak EPら(1989)Nucleic Acids Res 17:6129〜41に記載されているような)を構築すること、すなわち、例えば、モルホリノ−誘導体単位による交換;またはポリアミド核酸(「PNA」;例えば、Nielsen PEら(1994)Bioconjug Chem 5:3〜7に記載されているような)を構築すること、すなわち、例えば、PNA骨格単位、例えば、2−アミノエチルグリシンによる交換に、例えば適している。
【0044】
用語「核酸」および「オリゴヌクレオチド」は、塩基および/または糖などにおける置換または修飾を含む核酸またはオリゴヌクレオチドも包含する。例えば、これらは、2’位でヒドロキシル基以外の低分子量有機基、および5’位でリン酸基またはヒドロキシ基以外の低分子量有機基に共有結合している骨格糖を有する核酸を含む。したがって、修飾核酸は、2’−O−アルキル化リボース基を含むことができる。さらに、修飾核酸は、リボースの代わりにアラビノースまたは2’−フルオロアラビノースなどの糖を含むことができる。したがって、オリゴヌクレオチドは、骨格組成において不均一であってもよく、それによってペプチド−核酸(核酸塩基を含むアミノ酸骨格を有する)などの一緒に連結したポリマー単位の任意の可能な組合せを含有する。
【0045】
オリゴヌクレオチドは、置換プリンおよびピリミジン、例えばC−5プロピンピリミジンおよび7−デアザ−7−置換プリン修飾塩基なども含む。Wagner RWら(1996)Nat Biotechnol 14:840〜4。プリンならびにピリミジンは、それだけに限らないが、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、5−メチルシトシン、5−ヒドロキシシトシン、5−フルオロシトシン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2,6−ジアミノプリン、ヒポキサンチン、ならびに他の自然に存在する核酸塩基および天然に存在しない核酸塩基、置換および非置換の芳香族部分を含む。他のそのような修飾は、当業者に公知である。
【0046】
修飾塩基は、T、C、G、A、およびUなどの、DNAおよびRNAにおいて一般に見出される、天然に存在する塩基と化学的に異なるが、これらの天然に存在する塩基と基本的な化学構造を共有する任意の塩基である。修飾ヌクレオチド塩基は、例えば、ヒポキサンチン、ウラシル、ジヒドロウラシル、シュードウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−アミノウラシル、5−(C〜C)−アルキルウラシル、5−(C〜C)−アルケニルウラシル、5−(C〜C)−アルキニルウラシル、5−(ヒドロキシメチル)ウラシル、5−クロロウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシシトシン、5−(C〜C)−アルキルシトシン、5−(C〜C)−アルケニルシトシン、5−(C〜C)−アルキニルシトシン、5−クロロシトシン、5−フルオロシトシン、5−ブロモシトシン、N−ジメチルグアニン、2,4−ジアミノ−プリン、8−アザプリン、置換7−デアザプリン、好ましくは7−デアザ−7−置換および/もしくは7−デアザ−8−置換プリン、5−ヒドロキシメチルシトシン、N4−アルキルシトシン、例えば、N4−エチルシトシン、5−ヒドロキシメチルシトシン、6−チオグアニン、ニトロピロール、C5−プロピニルピリミジン、ならびにジアミノプリン例えば、2,6−ジアミノプリン、5−メチルシトシン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、ヒポキサンチンまたは天然のヌクレオチド塩基の他の修飾から選択することができる。このリストは、例示的であることを意味し、限定していると解釈されるべきではない。
【0047】
上述したFANA修飾に加えて、本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、他の型の糖修飾を有することができる。FANA修飾と同様に、β−リボース単位またはβ−D−2’−デオキシリボース単位は、修飾糖単位によって交換することができ、修飾糖単位は、例えば、β−D−リボース、α−D−2’−デオキシリボース、L−2’−デオキシリボース、2’−F−2’−デオキシリボース、2’−O−(C〜C)アルキル−リボース(好ましくは2’−O−(C〜C)アルキル−リボースは、2’−O−メチルリボースである)、2’−O−(C〜C)アルケニル−リボース、2’−[O−(C〜C)アルキル−O−(C〜C)アルキル]−リボース、2’−NH−2’−デオキシリボース、β−D−キシロ−フラノース、α−アラビノフラノース、2,4−ジデオキシ−β−D−エリスロ−ヘキソ−ピラノース、ならびに炭素環式(例えば、Froehler J(1992)Am Chem Soc 114:8320に記載されている)および/もしくは鎖状の糖類似体(例えば、Vandendriesscheら(1993)Tetrahedron 49:7223に記載されている)、ならびに/またはビシクロ糖(bicyclosugar)類似体(例えば、Tarkov Mら(1993)Helv Chim Acta 76:481に記載されている)から選択される。いくつかの実施形態では、この修飾は、2’−O−メトキシエチルリボース、2’−O−プロパニルリボース、2’−O−ブチルリボース、2’−O−(2−メトキシエチル)、2’−O,4’−C−アルキレン−連結リボース(アルキレンは、メチレン(LNA)もしくはエチレンである)、2’−デオキシ−2’−フルオロリボース、3’−O−メチルリボース、1’,2’−ジデオキシリボース;アラビノース、1’−メチルアラビノース、3’−ヒドロキシメチルアラビノース、4’−ヒドロキシメチル−アラビノース、または1,5−アンヒドロヘキシトールである。
【0048】
本明細書に記載される特定の式において、一連の修飾塩基が定義される。例えば、文字Yは、ピリミジン、およびいくつかの実施形態では、シトシンまたは修飾シトシンを含有するヌクレオシドを指す。修飾シトシンは、本明細書で使用する場合、オリゴヌクレオチドの免疫賦活作用を損なうことなくこの塩基を交換することができる、シトシンの天然に存在する、または天然に存在しないピリミジン塩基類似体である。修飾シトシンとして、それだけに限らないが、5−置換シトシン(例えば、5−メチル−シトシン、5−フルオロ−シトシン、5−クロロ−シトシン、5−ブロモ−シトシン、5−ヨード−シトシン、5−ヒドロキシ−シトシン、5−ヒドロキシメチル−シトシン、5−ジフルオロメチル−シトシン、および非置換もしくは置換5−アルキニル−シトシン)、6−置換シトシン、N4−置換シトシン(例えば、N4−エチル−シトシン)、5−アザ−シトシン、2−メルカプト−シトシン、イソシトシン、シュード−イソシトシン、縮合環系を有するシトシン類似体(例えば、N,N’−プロピレンシトシンまたはフェノキサジン)、およびウラシル5’−置換ウラシル類似体、例えば、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモ−ウラシル、5−ブロモビニル−ウラシル、4−チオ−ウラシル、5−ヒドロキシ−ウラシル、5−プロピニル−ウラシルなどが挙げられる。好適なシトシンの一部として、5−メチル−シトシン、5−フルオロ−シトシン、5−ヒドロキシ−シトシン、5−ヒドロキシメチル−シトシン、およびN4−エチル−シトシンが挙げられる。本発明の別の実施形態では、シトシン塩基は、一般的な塩基(例えば、3−ニトロピロール、P−塩基)、芳香環系(例えば、フルオロベンゼンもしくはジフルオロベンゼン)、または水素原子(dSpacer)によって置換される。
【0049】
文字Zは、プリンまたは脱塩基残基、いくつかの実施形態では、グアニンまたは修飾グアニン塩基を指すのに使用される。修飾グアニンは、本明細書で使用する場合、オリゴヌクレオチドの免疫賦活作用を損なうことなくこの塩基を交換することができる、グアニンの天然に存在する、または天然に存在しないプリン塩基類似体である。修飾グアニンとして、それだけに限らないが、7−デアザグアニン、7−デアザ−7−置換グアニン(7−デアザ−7−(C2〜C6)アルキニルグアニンなど)、7−デアザ−8−置換グアニン、ヒポキサンチン、N2−置換グアニン(例えば、N2−メチル−グアニン)、5−アミノ−3−メチル−3H,6H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7−ジオン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、プリン、インドール、アデニン、置換アデニン(例えば、N6−メチル−アデニン、8−オキソ−アデニン)、8−置換グアニン(例えば、8−ヒドロキシグアニンおよび8−ブロモグアニン)、ならびに6−チオグアニンが挙げられる。これらの修飾グアニン塩基は、FANA修飾残基であることができる。本発明の別の実施形態では、免疫調節性モチーフにおけるグアニン塩基の1つは一般的な塩基(例えば、4−メチル−インドール、5−ニトロ−インドール、およびK−塩基)、芳香環系(例えば、ベンゾイミダゾールもしくはジクロロ−ベンゾイミダゾール、1−メチル−1H−[1,2,4]トリアゾール−3−カルボン酸アミド)、または水素原子(dSpacer)によって置換される。この実施形態では、他のグアニン塩基はFANA修飾残基である。
【0050】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のパリンドローム配列を含む。本明細書で使用する場合、「パリンドローム」および同等に「パリンドローム配列」は、逆方向反復、すなわち、ABCDEE’D’C’B’A’などの配列を指すものとし、AとA’、BとB’などは、通常のワトソン−クリック塩基対を形成することができる塩基である。場合によっては、パリンドロームはGCに富む。GCに富むパリンドロームは、少なくとも3分の2のG’およびC’の塩基組成を有するパリンドロームである。いくつかの実施形態では、GCに富むドメインは、「B細胞刺激性のドメイン」の3’側にあることが好ましい。長さ10塩基のGCに富むパリンドロームの場合では、したがって、パリンドロームは、少なくとも8個のG’およびC’を含有する。長さ12塩基のGCに富むパリンドロームの場合では、パリンドロームはまた、少なくとも8G’およびC’を含有する。14merのGCに富むパリンドロームの場合では、パリンドロームの少なくとも10塩基が、G’およびC’である。いくつかの実施形態では、GCに富むパリンドロームは、G’とC’でもっぱら構成される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、2つ以上のパリンドローム配列を含有する。
【0051】
DNAは、3’−5’ホスホジエステル結合を介して結合したデオキシリボヌクレオチドのポリマーである。本発明のポリマーの単位も、3’−5’ホスホジエステル結合を介して結合することができる。しかし、本発明は、具体的には、5’−5’、3’−3’、2’−2’、2’−3’、および2’−5’ヌクレオチド間連結を含めた、普通でないヌクレオチド間連結を有するポリマーも包含する。一実施形態では、そのような普通でない連結は、免疫賦活性DNAモチーフから除外されるが、1つまたは複数のそのような連結は、ポリマー内の他で起こり得る。遊離末端を有するポリマーについては、1つの3’−3’ヌクレオチド間連結を含めることで、2つの遊離5’末端を有するポリマーをもたらすことができる。反対に、遊離末端を有するポリマーについては、1つの5’−5’ヌクレオチド間連結を含めることで、2つの3’末端を有するポリマーをもたらすことができる。
【0052】
本発明の免疫賦活性組成物は、2つ以上の免疫賦活性DNAモチーフを含有することができ、これらは、枝分れ単位を介して連結することができる。ヌクレオチド間連結は、3’−5’、5’−5’、3’−3’、2’−2’、2’−3’、または2’−5’連結とすることができる。それに関して、命名法の2’−5’は、デオキシリボースの炭素原子に従って選択される。しかし、非天然糖部分、例えば、環が拡張された糖類似体(例えば、ヘキサノース、シクロヘキセン(cyclohexene)もしくはピラノース)または二環式もしくは三環式の糖類似体などが使用される場合、この命名法は、モノマーの命名法に従って変化する。普通でないヌクレオチド間連結は、ホスホジエステル結合とすることができるが、これは、ホスホロチオエート、または本明細書に記載される任意の他の修飾連結として代わりに修飾することができる。式Iは、ヌクレオチドの枝分れ単位を介した、本発明の分岐DNAオリゴマーおよび修飾オリゴリボヌクレオチド類似体についての一般的な構造を示す。それによって、Nu、Nu、およびNuは、3’−5’、5’−5’、3’−3’、2’−2’、2’−3’、または2’−5’−連結を介して連結することができる。DNAオリゴマーの枝分れでは、非ヌクレオチドリンカーおよび脱塩基スペーサー(abasic spacer)を使用することもできる。一実施形態では、Nu、Nu、およびNuは、同一の、または異なる免疫賦活性DNAモチーフを表す。
【0053】
【化1】

【0054】
修飾オリゴリボヌクレオチド類似体、特に、3’−3’連結を有する修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド類似体は、ダブラーまたはトレブラー(trebler)単位(Glen Research、Sterling、VA)を含有することができる。一実施形態におけるダブラー単位は、1,3−ビス−[5−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ペンチルアミド]プロピル−2−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホルアミジットに基づくことができる。一実施形態におけるトレブラー単位は、トリス−2,2,2−[3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピルオキシメチル]エチル−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホルアミジットの取込みに基づくことができる。複数のダブラー、トレブラー、または他のマルチプライヤー単位による修飾オリゴリボヌクレオチド類似体の枝分れは、本発明のさらなる実施形態であるデンドリマーに導く。分岐した修飾オリゴリボヌクレオチド類似体は、非分岐形態の類似体と比較して、特に、異なる免疫作用を有する免疫賦活性RNAおよびDNA、例えば、TLR3、TLR7、TLR8、およびTLR9などの組合せのために、受容体の架橋に導くことができる。さらに、分岐のまたはさもなければ多量体の類似体の合成は、分解に対してDNAを安定化させることができ、弱いか部分的に有効なDNA配列が治療上有用なレベルの免疫活性を発揮することを可能にすることができる。修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド類似体は、ペプチド修飾試薬またはオリゴヌクレオチド修飾試薬によって生じるリンカー単位も含有することができる(Glen Research)。さらに、修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド類似体は、ペプチド(アミド)連結によってポリマーに接続されている、1つまたは複数の天然または非天然アミノ酸残基を含有することができる。
【0055】
免疫調節性オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの間接的な連結を含有することができる。直接的な連結は、介在性のリンカー部分を含まない、本明細書に開示されるようなリン酸または修飾リン酸連結を指す。介在性のリンカー部分は、本明細書で開示されるリン酸または修飾リン酸連結と異なる有機部分であり、これとして、例えば、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセロールもしくはグリセロール同族体、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、dSpacer(すなわち、脱塩基デオキシヌクレオチド)、ダブラー単位、またはトレブラー単位を挙げることができる。
【0056】
連結は、3〜300個の原子を含有する、C、H、N、O、S、B、P、およびハロゲンから構成されることが好ましい。3つの原子を含む例は、例えば、1つのヌクレオチドの3’−ヒドロキシ基を、第2のオリゴヌクレオチドの3’−ヒドロキシ基に接続しているアセタール連結(ODN1−3’−O−CH−O−3’−ODN2)である。約300個の原子を含む例は、PEG−40(テトラコンタポリエチレングリコール)である。好適な連結は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホラミデート、ボラノホスホネート、アミド、エーテル、チオエーテル、アセタール(acetal)、チオアセタール、尿素、チオ尿素、スルホンアミド、シッフ塩基およびジスルフィド連結である。Solulink BioConjugation System、すなわち、(www.trilinkbiotech.com)を使用することも可能である。
【0057】
オリゴヌクレオチドが2つ以上の配列部分と比較される場合、これらの部分は、同一であっても異なっていてもよい。したがって、3’3’−連結を有するオリゴヌクレオチドにおいて、この配列は、同一の5’−ODN1−3’3’−ODN1−5’であっても、異なる5’−ODN1−3’3’−ODN2−5’であってもよい。さらに、様々なオリゴヌクレオチド部分、ならびにこれらを接続しているリンカーの化学修飾は、異なっていてもよい。短いオリゴヌクレオチドの取込みは、長いオリゴヌクレオチドの取込みより効率が小さいと思われるので、2つ以上の短い配列の連結は、免疫刺激の改善をもたらす。短いオリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは2〜20ヌクレオチド、より好ましくは3〜16ヌクレオチドであるが、最も好ましくは5〜10ヌクレオチドである。
【0058】
オリゴヌクレオチド部分配列は、非ヌクレオチドのリンカーによっても連結することができる。非ヌクレオチドのリンカーは、ヌクレオチドまたはそのポリマー(すなわち、ポリヌクレオチド)ではない任意のリンカーエレメントを指し、ヌクレオチドは、プリンまたはピリミジン核酸塩基および糖リン酸、特に、脱塩基リンカー(dSpacers)、トリエチーレン(trietyhlene)グリコール単位またはヘキサエチレングリコール単位を含む。さらに好適なリンカーは、C3、C6、C12アミノリンカーなどのアルキルアミノリンカー、およびまたC3またはC6チオールリンカーなどのアルキルチオールリンカーである。オリゴヌクレオチドは、芳香族残基によっても連結することができ、これは、アルキルまたは置換アルキル基によってさらに置換されていてもよい。
【0059】
本発明の免疫調節性ODNは、一次および二次構造の両方を有する、共有結合で閉じた、ダンベル形状の分子の形態もとることができる。一実施形態では、そのような環式オリゴリボヌクレオチドは、介在性の二本鎖セグメントによって接続された2つの一本鎖ループを含む。一実施形態では、少なくとも1つの一本鎖ループは、本発明の免疫調節性DNAモチーフを含む。本発明の他の共有結合で閉じた、ダンベル形状の分子は、キメラDNA:RNA分子を含み、この中で、例えば、二本鎖セグメントは、少なくとも部分的にDNA(例えば、ホモ二量体のdsDNAまたはヘテロ二量体のDNA:RNA)であり、少なくとも1つの一本鎖のループは、本発明の免疫調節性DNAモチーフを含む。あるいは、キメラ分子の二本鎖セグメントはDNAである。
【0060】
免疫調節性ODNは単離することができる。単離された分子は、実質的に純粋であり、これが、その意図された使用にとって実用的で適切な程度に、自然において、またはインビボ系において通常見出される他の物質がない分子である。特に、免疫調節性ODNは、十分に純粋であり、細胞の他の生物学的構成要素が十分に除かれており、その結果、例えば、医薬調製物を生成することにおいて有用である。本発明の単離された免疫調節性ODNは、医薬調製物中で薬学的に許容できる担体と混合することができるので、免疫調節性ODNは、調製物のわずかな重量百分率しか占めない場合がある。それにもかかわらず、免疫調節性ODNは、これが、生物系において付随し得る物質から実質的に分離されているという点で、実質的に純粋である。
【0061】
細胞中への取込みを促進するために、免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、いくつかの実施形態では、長さが8〜100塩基の範囲である。一般に、6ヌクレオチド超(何kb長でさえも)の任意のサイズのオリゴヌクレオチドは、十分な免疫賦活性モチーフが存在する場合、本発明による免疫応答を誘発することができる。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、長さが15ヌクレオチド未満である。
【0062】
一実施形態では、本発明の組成物は、ポリマーの少なくとも1つの末端に共有結合で連結したポリG配列をさらに含み、それぞれのポリG配列は、独立して、グアノシンリボヌクレオシド、グアノシンデオキシリボヌクレオシド、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される4〜10個の連続したグアノシンヌクレオシドを含む。ポリG配列は、一実施形態では、安定化されたヌクレオチド間リン酸連結、例えば、ホスホロチオエート連結を含む。ポリG配列は、ヌクレアーゼに対する安定化、細胞による取込みの強化、ある特定のサイトカインの阻害、およびいわゆるG−テトラッドを伴う二次構造または分子間構造の形成を含めた、いくつかの生物学的および物理化学的特性を付与することができる。一実施形態では、ポリマーは、3’末端を有し、ポリG配列は、この3’末端に共有結合で連結されている。ポリG配列は、任意の適当な直接的または間接的な連結を介して、通常、骨格連結を介してポリマーに共有結合で連結することができる。
【0063】
一態様では、本発明は、本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドと親油性修飾体とのコンジュゲートを提供する。親油性基は、一般に、コレステリル、修飾コレステリル、コレステロール誘導体、還元されたコレステロール、置換コレステロール、コレスタン、C16アルキル鎖、胆汁酸、コール酸、タウロコール酸、デオキシコレート、オレイルリトコール酸、オレオイルコレン酸、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、ステロイドなどのイソプレノイド、ビタミンEなどのビタミン、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、トリグリセリドなどの脂肪酸エステル、ピレン、ポルフィリン、テキサフィリン、アダマンタン、アクリジン、ビオチン、クマリン、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、ジゴキシゲニン、ジメトキシトリチル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、シアニン色素(例えば、Cy3もしくはCy5)、Hoechst33258色素、ソラレン、またはイブプロフェンとすることができる。ある特定の実施形態では、親油性部分は、コレステリル、パルミチル、および脂肪アシルから選択される。一実施形態では、親油性部分は、コレステリルである。本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチド中に1つまたは複数のそのような親油性部分を含めることにより、これらにヌクレアーゼによる分解に対するさらに追加の安定性が与えられると考えられている。本発明の1つの免疫調節性オリゴヌクレオチド中に2つ以上の親油性部分が存在する場合、それぞれの親油性部分は、任意の他と独立して選択することができる。
【0064】
一実施形態では、親油性基は、免疫調節性オリゴヌクレオチドのヌクレオチドの2’位に結合している。親油性基は、免疫調節性オリゴヌクレオチドのヌクレオチドの複素環核酸塩基の代わりに、またはこれに加えて連結することができる。親油性部分は、任意の適当な直接的または間接的な連結を介して免疫調節性オリゴヌクレオチドに、共有結合で連結することができる。一実施形態では、連結は直接的であり、エステルまたはアミドである。一実施形態では、連結は、間接的であり、スペーサー部分、例えば、1つまたは複数の脱塩基ヌクレオチド残基、オリゴエチレングリコール、例えばトリエチレングリコール(スペーサー9)、もしくはヘキサエチレングリコール(hexaethyleneglycol)(スペーサー18)など、またはブタンジオールなどのアルカン−ジオールを含む。
【0065】
本発明は、免疫応答の刺激または抑制によって治療することができる状態を有する対象を治療するための、本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドの使用を包含する。したがって、本発明の免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、感染症、癌、アレルギー、喘息、炎症状態、または自己免疫疾患の治療に有用である。
【0066】
免疫調節性オリゴヌクレオチドは、本発明のいくつかの態様では、アレルギーまたは喘息、感染性の生物での感染症、または癌を発症するリスクのある対象の治療にも有用である。リスクのある対象は、本明細書で使用する場合、感染症を引き起こす病原体、もしくは癌、もしくはアレルゲンへの曝露の任意のリスク、または癌を発症するリスクを有する対象である。例えば、リスクのある対象は、特定の型の感染因子が見出されている地域に旅行することを計画している対象であってもよく、またはこれは、生活様式もしくは医学の手順を通じて、感染性の生物を含有し得る体液、もしくは生物体に直接的にさらされる対象、またはさらに感染性の生物もしくはアレルゲンが同定されてきた地域で生活している任意の対象であってもよい。感染症を発症するリスクのある対象は、医療機関が、特定の感染性の生物抗原を用いたワクチン接種を推奨する一般的な集団も含む。抗原がアレルゲンであり、対象が、その特定の抗原に対してアレルギー反応を発症し、対象が、抗原にさらされる可能性がある場合、すなわち、花粉の季節の間に、その対象は、抗原への曝露のリスクがある。アレルギーまたは喘息を発症するリスクのある対象には、アレルギーまたは喘息を有していると特定されているが、免疫調節性オリゴヌクレオチド治療の間、活動性疾患を有していない対象、ならびに遺伝学的または環境的因子のためにこれらの疾患を発症するリスクがあると考えられる対象が含まれる。
【0067】
癌を発症するリスクのある対象は、癌を発症する高い確率を有するものである。これらの対象には、例えば、その存在が癌を発症するより高い可能性と相関関係を有することを実証されている遺伝学的異常性を有する対象、および癌を引き起こす作用物質、例えば、タバコ、アスベスト、または他の化学的毒素にさらされる対象、または以前に癌を治療され、見掛け上の寛解にある対象が含まれる。癌を発症するリスクのある対象が、対象が発症するリスクのある癌の型に特異的な抗原、およびCpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドを用いて治療されるとき、対象は、癌細胞を、これらが発生する際に殺すことができる場合がある。腫瘍が対象において形成し始める場合、対象は、腫瘍抗原に対して特異的な免疫応答を発生する。
【0068】
アレルギーを有する対象は、アレルゲンに応答してアレルギー反応を有するか、これを発症するリスクのある対象である。アレルギーは、物質(アレルゲン)に対する後天性の過敏症を指す。アレルギー状態として、それだけに限らないが、湿疹、アレルギー性鼻炎または鼻感冒、枯草熱、結膜炎、気管支喘息、じん麻疹(urticaria)(じん麻疹(hives))および食物アレルギー、および他のアトピー性状態が挙げられる。
【0069】
アレルギーは、無害なアレルゲンに対するIgE抗体産生によって一般に起こる。免疫調節性オリゴヌクレオチドの全身投与または粘膜投与によって誘発されるサイトカインは、大部分は、Th1(例は、IL−12、IP−10、IFN−αおよびIFN−γである)と呼ばれるクラスであり、これらは、体液性および細胞性免疫応答の両方を誘発する。IL−4およびIL−5サイトカインの産生と関連する、他の主要な型の免疫応答は、Th2免疫応答と呼ばれる。一般に、アレルギー性疾患は、Th2型免疫応答によって媒介されると思われる。免疫調節性オリゴヌクレオチドの、対象における免疫応答を、支配的なTh2(IgE抗体の産生およびアレルギーに関連する)からバランスのとれたTh2/Th1応答(アレルギー反応に対して保護的である)に移す能力に基づいて、免疫応答を誘発するための有効用量の免疫調節性オリゴヌクレオチドを、対象に投与することによって、喘息およびアレルギーを治療または予防することができる。
【0070】
したがって、免疫調節性オリゴヌクレオチドは、喘息などのアレルギー状態および非アレルギーの状態の治療において、著しい治療有用性を有する。Th2サイトカイン、特にIL−4およびIL−5は、喘息の対象の気道において上昇する。これらのサイトカインは、IgEアイソトープスイッチング(IgE isotope switching)、好酸球走化性および活性化、ならびに肥満細胞増殖を含めた、喘息の炎症反応の重要な側面を促す。Th1サイトカイン、特にIFN−γおよびIL−12は、Th2クローンの形成、およびTh2サイトカインの産生を抑制することができる。喘息は、気道の炎症、狭小化、および吸入物質に対する気道の反応性の増大を特徴とする呼吸器系の障害を指す。喘息は、もっぱらではないが、アトピー性またはアレルギー性の症状と関連することが多い。
【0071】
本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、抗アレルギー療法とともに投与することもできる。アレルギーを治療または予防するための従来方法は、アレルギー薬または脱感作療法の使用を伴う。アレルギーを治療または予防するための、いくつかの発展している療法は、中和抗IgE抗体の使用を含む。抗ヒスタミンおよびアレルギー反応の化学的メディエーターの作用を遮断する他の薬物は、アレルギー症状の重症度を制御するのに役立つが、アレルギー反応を防止せず、引き続くアレルギー反応に対する作用をまったく有していない。脱感作療法は、アレルゲンに対するIgG型応答を誘発するために、通常皮膚下の注射によって、小用量のアレルゲンを与えることによって実施される。IgG抗体の存在は、IgE抗体の誘発から生じるメディエーターの産生を中和することに役立つと考えられている。最初に、対象は、重度の反応を誘発することを回避するために、非常に低用量のアレルゲンを用いて処置され、用量は徐々に増加される。対象は、アレルギー反応を引き起こす化合物を実際に投与され、重度のアレルギー反応が生じ得るので、この種の療法は危険である。
【0072】
抗アレルギー薬には、それだけに限らないが、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、およびプロスタグランジン誘導物質が含まれる。抗ヒスタミン剤は、肥満細胞または好塩基球によって放出されるヒスタミンに対抗する化合物である。これらの化合物は、当技術分野で公知であり、一般に、アレルギーの治療に使用される。抗ヒスタミン剤として、それだけに限らないが、アクリバスチン、アステミゾール、アザタジン、アゼラスチン、ベタタスチン(betatastine)、ブロムフェニラミン、ブクリジン、セチリジン、セチリジン類似体、クロルフェニラミン、クレマスチン、CS560、シプロヘプタジン、デスロラタジン、デキスクロルフェニラミン、エバスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、HSR609、ヒドロキシジン、レボカバスチン、ロラチジン、メトスコポラミン、ミゾラスチン、ノルアステミゾール、フェニンダミン、プロメタジン、ピリラミン、テルフェナジン、およびトラニラストが挙げられる。
【0073】
コルチコステロイドとして、それだけに限らないが、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、フルニソリド、フルチカゾンプロピオネート、およびトリアムシノロンが挙げられる。デキサメタゾンは、抗炎症作用を有するコルチコステロイドであるが、吸入形態でのアレルギーまたは喘息の治療のために定期的に使用されず、その理由は、これが非常に吸収され、有効用量で長期間の抑制性副作用を有するためである。しかしデキサメタゾンは、アレルギーまたは喘息を治療するために、本発明によって使用することができ、その理由は、本発明の組成物と組み合わせて投与される場合、これは、低用量で投与することによって副作用を低減することができるためである。コルチコステロイドの使用に関連する副作用の一部して、咳、発声障害、口内鵞口瘡(カンジダ症)、ならびにより高い用量では、全身性作用、例えば、副腎抑制、グルコース不耐性、骨粗鬆症、骨の無菌性壊死、白内障形成、増殖抑制、高血圧、筋力低下、皮膚菲薄化、および容易な挫傷形成などが挙げられる。Barnes&Peterson(1993)Am Rev Respir Dis 148:S1〜S26;およびKamada AKら(1996)Am J Respir Crit Care Med 153:1739〜48。
【0074】
本発明の方法のオリゴヌクレオチドは、単独で、または喘息の治療に有用な他の作用剤および方法とともに使用することができる。一態様では、本発明は、喘息を有する対象の治療方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、喘息を有する対象に、対象を治療するために、有効量の本発明の組成物を投与するステップを含む。
【0075】
一態様では、本発明は、喘息を有する対象の治療方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、喘息を有する対象に、対象を治療するために、有効量の本発明の組成物および抗喘息療法を投与するステップを含む。
【0076】
「喘息」は、本明細書で使用する場合、気道の炎症および狭小化、ならびに吸入物質に対する気道の反応性の増大を特徴とする呼吸器系の障害を指す。喘息は、もっぱらではないが、アトピー性またはアレルギー性の状態と関連することが多い。喘息の症状には、気流閉塞から生じる喘鳴、息切れ、胸苦しさ、および咳嗽の再発性のエピソードが含まれる。喘息に関連する気道炎症は、いくつかの生理的変化、例えば、気道上皮の裸出、基底膜下(sub−basement membrane)のコラーゲン堆積、浮腫、肥満細胞活性化、好中球、好酸球、およびリンパ球を含めた炎症細胞浸潤などの観察を通じて検出することができる。気道炎症の結果として、喘息患者は、気道過敏症、気流制限、呼吸器症状、および疾患慢性化を経験することが多い。気流制限として、急性気管支収縮、気道浮腫、粘液栓形成、および気道リモデリング、気管支閉塞に至ることの多い特徴が挙げられる。喘息のいくつかの場合では、基底膜下線維症が起こる場合があり、肺機能における持続性の異常に至る。
【0077】
過去数年にわたる研究により、喘息は、炎症細胞、メディエーター、ならびに気道に常在する他の細胞および組織の中での複雑な相互作用から生じるらしいことが明らかになった。肥満細胞、好酸球、上皮細胞、マクロファージ、および活性化T細胞はすべて、喘息に関連する炎症プロセスにおいて重要な役割を果たす。Djukanovic Rら(1990)Am Rev Respir Dis 142:434〜457。これらの細胞は、局部組織に直接または間接的に作用することができる、予め形成された、および新規に合成されたメディエーターの分泌を通じて、気道機能に影響することができると考えられている。Tリンパ球(Th2)の亜集団は、選択的なサイトカインを放出し、疾患慢性化を確立することによって、気道におけるアレルギー性炎症を制御することにおいて重要な役割を果たすことも認識されている。Robinson DSら(1992)N Engl J Med 326:298〜304。
【0078】
喘息は、発症において異なる段階で起こり、症状の程度に基づいて、急性、亜急性、または慢性として分類することができる、複雑な障害である。急性炎症反応は、気道中への細胞の初期の動員に関連する。亜急性炎症反応は、細胞の動員、ならびに常在細胞の活性化を伴い、炎症のより持続性のパターンを引き起こす。慢性炎症反応は、持続性レベルの細胞損傷および進行中の修復プロセスを特徴とし、これは気道における永続的な異常をもたらす場合がある。
【0079】
「喘息を有する対象」は、気道の炎症および狭小化、ならびに吸入物質に対する気道の反応性の増大を特徴とする呼吸器系の障害を有する対象である。喘息の開始に関連する要因には、それだけに限らないが、アレルゲン、低温、運動、ウイルス感染、およびSOが含まれる。
【0080】
上述したように、喘息は、Th2型の免疫応答に関連する場合があり、これは、Th2サイトカインのIL−4およびIL−5、ならびにIgEへの抗体アイソタイプスイッチングを少なくとも部分的に特徴とする。Th1およびTh2免疫応答は、相互に対抗制御的であり、その結果、Th1型の免疫応答に向けた免疫応答の傾斜は、アレルギーを含めたTh2型の免疫応答を予防し、寛解させることができる。したがって、本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、それ自体、喘息を有する対象を治療するのに有用であるが、これは、類似体が、免疫応答をTh1型の免疫応答に向けさせることができるためである。その代わりにまたはそれに加えて、本発明の修飾オリゴリボヌクレオチド類似体は、喘息を有する対象を治療するために、アレルゲンと組み合わせて使用することができる。
【0081】
本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、喘息療法とともに投与することもできる。喘息を治療または予防するための従来方法は、抗アレルギー療法(上述した)、および吸入物質を含めたいくつかの他の作用剤の使用を伴ってきた。
【0082】
喘息を治療するための薬物療法は、一般に、2つの分類、すなわち急速緩和薬物療法(quick−relief medication)と長期管理薬物療法(long−term control medication)に分けられる。喘息患者は、持続性の喘息の管理を実現し、維持するために毎日長期管理薬物療法を受ける。長期管理薬物療法として、抗炎症剤、例えば、コルチコステロイド、クロモリン(chromolyn)ナトリウムおよびネドクロミルなど;長時間作用型気管支拡張剤、例えば、長時間作用型β−アゴニストおよびメチルキサンチンなど;ならびにロイコトリエン調節剤が挙げられる。急速緩和薬物療法には、短時間作用型βアゴニスト、抗コリン作用薬、および全身性コルチコステロイドが含まれる。これらの薬物のそれぞれに関連した多くの副作用が存在し、単独または組合せでのどの薬物も、喘息を予防または完全に治療することができない。
【0083】
抗喘息薬として、それだけに限らないが、PDE−4阻害剤、気管支拡張剤/β−2アゴニスト、K+チャネルオープナー、VLA−4アンタゴニスト、ニューロキンアンタゴニスト、トロンボキサンA2(TXA2)合成阻害剤、キサンチン、アラキドン酸アンタゴニスト、5リポキシゲナーゼ阻害剤、TXA2受容体アンタゴニスト、TXA2アンタゴニスト、5リポキス活性化タンパク質の阻害剤、およびプロテアーゼ阻害剤が挙げられる。
【0084】
気管支拡張剤/βアゴニストは、気管支拡張または平滑筋弛緩を引き起こす化合物のクラスである。気管支拡張剤/βアゴニストとして、それだけに限らないが、サルメテロール、サルブタモール、アルブテロール、テルブタリン、D2522/フォルモテロール、フェノテロール、ビトルテロール、ピルブエロール(pirbuerol)、メチルキサンチン、およびオルシプレナリンが挙げられる。長時間作用型βアゴニストおよび気管支拡張剤は、抗炎症療法に加えて、症状を長期間予防するために使用される化合物である。長時間作用型のβアゴニストには、それだけに限らないが、サルメテロールおよびアルブテロールが含まれる。これらの化合物は、通常、コルチコステロイドと組み合わせて使用され、一般に、いずれの炎症療法も伴わないで使用されない。これらは、過量における副作用、例えば、頻脈、骨格筋振戦、低カリウム血症、およびQTc間隔の延長などと関連している。
【0085】
例えば、テオフィリンを含めたメチルキサンチンは、症状の長期管理および予防のために使用されている。これらの化合物は、ホスホジエステラーゼ阻害、およびおそらくアデノシンアンタゴニズムから生じる気管支拡張を引き起こす。用量に関連した急性毒性は、これらの型の化合物に伴う特定の問題である。結果として、代謝クリアランスにおける個体差から起こる、毒性および狭い治療範囲を説明するために、日常の血清濃度をモニターしなければならない。副作用として、頻脈、頻脈性不整脈、吐き気および嘔吐、中枢神経系刺激、頭痛、てんかん、吐血、高血糖および低カリウム血症が挙げられる。短時間作用型βアゴニストとして、それだけに限らないが、アルブテロール、ビトルテロール、ピルブテロール、およびテルブタリンが含まれる。短時間作用型βアゴニストの投与に関連する有害作用の一部として、頻脈、骨格筋振戦、低カリウム血症、乳酸の増加、頭痛、および高血糖が挙げられる。
【0086】
クロモリンナトリウムおよびネドクロミルは、運動から起こる喘息症状、またはアレルゲンから起こるアレルギー症状を主に予防するための長期管理薬物療法として使用される。これらの化合物は、塩化物チャネル機能を妨害することによって、アレルゲンに対する初期および後期の反応を遮断すると考えられている。これらはまた、肥満細胞膜を安定化し、イノシネオフィル(inosineophil)および上皮細胞由来のメディエーターの活性化および放出を阻害する。4〜6週間の投与が、最大の利益を実現するのに一般に必要とされる。
【0087】
抗コリン作用薬は、急性の気管支けいれんの緩和のために一般に使用される。これらの化合物は、ムスカリン性コリン作用性受容体の競合的阻害によって機能すると考えられている。抗コリン作用薬には、それだけに限らないが、臭化イプラトロピウムが含まれる。これらの化合物は、コリン作用的に(cholinerigically)媒介された気管支けいれんのみを逆転させ、抗原に対する任意の反応を修飾しない。副作用として、口および呼吸器の分泌物の乾燥、一部の個体における喘鳴の増大、ならびに眼に噴霧された場合のかすみ目が挙げられる。
【0088】
本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、気道リモデリングを治療することにも有用となり得る。気道リモデリングは、気道における平滑筋細胞増殖および/または粘膜下肥厚から生じ、最終的に気道の狭小化を引き起こし、気流の制限に至る。本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、さらなるリモデリングを防止し、おそらくリモデリングプロセスから生じる組織発達を低減することさえできる。
【0089】
本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、癌を治療することにも有用となり得る。癌を有する対象は、検出可能な癌性細胞を有する対象である。癌は、悪性癌であっても非悪性癌であってもよい。癌または腫瘍として、それだけに限らないが、胆道癌;脳腫瘍;乳癌;子宮頚癌;絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;上皮内新生物;リンパ腫;肝癌;肺癌(例えば、小細胞および非小細胞);黒色腫;神経芽細胞腫;口腔癌;卵巣癌;膵癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫;皮膚癌;精巣癌;甲状腺癌;および腎癌、ならびに他の癌腫および肉腫が挙げられる。一実施形態では、癌は、有毛細胞白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、悪性黒色腫、扁平上皮癌、腎細胞癌、前立腺癌、膀胱細胞癌、または結腸癌である。
【0090】
免疫調節性オリゴヌクレオチドは、単独で、または抗癌療法とともに投与することができる。抗癌療法として、それだけに限らないが、放射線療法、化学療法、免疫療法、癌ワクチン、ホルモン療法、生物学的応答調節剤、および外科手術が挙げられる。抗癌剤は、癌を治療する目的で対象に投与される薬剤を指す。本明細書で使用する場合、「癌を治療すること」には、癌の発症の予防、癌の症状の低減、および/または確立した癌の増殖の阻害が含まれる。他の態様では、抗癌剤は、癌を発症するリスクのある対象に、癌を発症するリスクを低減する目的で投与される。癌を治療するための様々な種類の薬物が、本明細書に記載されている。本明細書の目的に関して、抗癌剤は、化学療法剤、免疫療法剤、癌ワクチン、ホルモン療法、および生物学的応答調節剤として分類される。
【0091】
さらに、本発明の方法は、免疫調節性オリゴヌクレオチドとともに2種以上の抗癌剤の使用を包含することが意図されている。例として、適切な場合、免疫調節性オリゴヌクレオチドは、化学療法剤および免疫療法剤の両方とともに投与することができる。代わりに、抗癌剤は、癌を有するか、癌を発症するリスクのある対象を治療する目的で一対象にすべて投与される、免疫療法剤と癌ワクチン、または化学療法剤と癌ワクチン、または化学療法剤、免疫療法剤と癌ワクチンを包含することができる。
【0092】
化学療法剤は、メトトレキセート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチン、非糖含有クロロエチルニトロソ尿素、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソール、フラジリン(fragyline)、メグラミン(Meglamine)GLA、バルルビシン、カルムスタイン(carmustaine)およびポリフェルポサン(poliferposan)、MMI270、BAY12−9566、RASファメシル(famesyl)トランスフェラーゼ阻害剤、ファメシルトランスフェラーゼ阻害剤、MMP、MTA/LY231514、LY264618/ロメテキソール(Lometexol)、グラモレク(Glamolec)、CI−994、TNP−470、ハイカムチン/トポテカン、PKC412、バルスポダル/PSC833、ノバントロン/ミトロキサントロン(Mitroxantrone)、メタレット(Metaret)/スラミン、バチマスタット、E7070、BCH−4556、CS−682、9−AC、AG3340、AG3433、インセル(Incel)/VX−710、VX−853、ZD0101、ISI641、ODN698、TA2516/マルミスタット(Marmistat)、BB2516/マルミスタット、CDP845、D2163、PD183805、DX8951f、レモナールDP2202、FK317、ピシバニール/OK−432、AD32/バルルビシン、メタストロン/ストロンチウム誘導体、テモダール/テモゾロミド、エバセット(Evacet)/リポソームドキソルビシン、イウタキサン(Yewtaxan)/パクリタキセル、タキソール/パクリタキセル、キセロード(Xeload)/カペシタビン、フルツロン/ドキシフルリジン、シクロパックス(Cyclopax)/経口パクリタキセル、経口タキソイド、SPU−077/シスプラチン、HMR1275/フラボピリドール、CP−358(774)/EGFR、CP−609(754)/RAS発癌遺伝子阻害剤、BMS−182751/経口白金、UFT(テガフール/ウラシル)、エルガミソール(Ergamisol)/レバミソール、エニルラシル/776C85/5FUエンハンサー、カンプト/レバミソール、カンプトサール/イリノテカン、ツモデックス(Tumodex)/ラリトレキセド、ロイスタチン/クラドリビン、パキセックス(Paxex)/パクリタキセル、ドキシル/リポソームドキソルビシン、カエリックス(Caelyx)/リポソームドキソルビシン、フルダラ/フルダラビン、ファルマルビシン/エピルビシン、DepoCyt、ZD1839、LU79553/ビス−ナフタルイミド、LU103793/ドラスタイン(Dolastain)、カエチックス(Caetyx)/リポソームドキソルビシン、ゲムザール/ゲムシタビン、ZD0473/アノルメド(Anormed)、YM116、ロジンシード(lodine seed)、CDK4およびCDK2阻害剤、PARP阻害剤、D4809/デキシホスアミド(Dexifosamide)、イフェス(Ifes)/メスネックス/イホスアミド(Ifosamide)、ブモン/テニポシド、パラプラチン/カルボプラチン、プランチノール(Plantinol)/シスプラチン、ベペシド/エトポシド、ZD9331、タキソテル/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロドラッグ、タキサン類似体、ニトロソ尿素、アルキル化剤、例えば、メルフェラン(melphelan)およびシクロホスファミドなど、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロロムブシル(Chlorombucil)、シタラビンHCl、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、エストラムスチンリン酸エステルナトリウム、エトポシド(VP16−213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5−FU)、フルタミド、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンα−2a、α−2b、酢酸ロイプロリド(LHRH放出因子類似体)、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ、ミトタン(o.p’−DDD)、ミトキサントロンHCl、オクトレオチド、プリカマイシン、プロカルバジンHCl、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェン、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、アムサクリン(m−AMSA)、アザシチジン、エルトロポイエチン(Erthropoietin)、ヘキサメチルメラミン(HMM)、インターロイキン2、ミトグアゾン(メチル−GAG;メチルグリオキサールビス−グアニルヒドラゾン;MGBG)、ペントスタチン(2’デオキシコホルマイシン)、セムスチン(メチル−CCNU)、テニポシド(VM−26)および硫酸ビンデシンからなる群から選択することができるが、これはそのように限定されない。
【0093】
免疫療法剤は、リブタキシン(Ributaxin)、ハーセプチン、クアドラメット、パノレックス、IDEC−Y2B8、BEC2、C225、オンコリム、SMART M195、ATRAGEN、オバレックス(Ovarex)、ベキサール、LDP−03、ior t6、MDX−210、MDX−11、MDX−22、OV103、3622W94、抗VEGF、ゼナパックス、MDX−220、MDX−447、MELIMMUNE−2、MELIMMUNE−1、CEACIDE、プレターゲット(Pretarget)、NovoMAb−G2、TNT、グリオマブ(Gliomab)−H、GNI−250、EMD−72000、LymphoCide、CMA676、モノファーム(Monopharm)−C、4B5、ior egf.r3、ior c5、BABS、抗FLK−2、MDX−260、ANA Ab、SMART 1D10 Ab、SMART ABL364 AbおよびImmuRAIT−CEAからなる群から選択することができるが、これはそのように限定されない。
【0094】
癌ワクチンは、EGF、抗イディオタイプ癌ワクチン、Gp75抗原、GMK黒色腫ワクチン、MGVガングリオシド共役ワクチン、Her2/neu、オバレックス、M−Vax、O−Vax、L−Vax、STn−KHLテラトープ(theratope)、BLP25(MUC−1)、リポソームイディオタイプワクチン、メラシン、ペプチド抗原ワクチン、毒素/抗原ワクチン、MVAベースワクチン、PACIS、BCGワクチン、TA−HPV、TA−CIN、DISC−ウイルスおよびImmuCyst/TheraCys、からなる群から選択することができるが、これはそのように限定されない。
【0095】
本明細書で使用する場合、用語「癌抗原」および「腫瘍抗原」は、互換的に使用され、癌細胞によって差次的に発現され、それによって癌細胞を標的にするために活用することができる抗原を指す。癌抗原は、潜在的に、明らかに腫瘍特異的な免疫応答を刺激することができる抗原である。これらの抗原の一部は、正常細胞によってコードされるが、必ずしも発現されない。これらの抗原は、正常細胞において通常沈黙している(すなわち、発現されない)もの、分化のある特定の段階でのみ発現されるもの、ならびに胚抗原および胎児性抗原などの一時的に発現されるものとして特徴づけることができる。他の癌抗原は、発癌遺伝子(例えば、活性化ras発癌遺伝子)などの突然変異細胞遺伝子、抑制遺伝子(例えば、突然変異体p53)、内部欠失または染色体転座から生じる融合タンパク質によってコードされる。さらに他の癌抗原は、RNAおよびDNA腫瘍ウイルスで担持されるものなどのウイルス遺伝子によってコードされ得る。
【0096】
本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、いくつかの態様では、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫による感染症を治療または予防するためにも使用することができる。感染症を有する対象は、感染性病原体にさらされてきており、または体内に急性または慢性の検出可能なレベルの病原体を有する対象である。免疫調節性オリゴヌクレオチドは、感染性病原体のレベルを低減し、または感染性病原体を根絶することができる、抗原特異的な全身性または粘膜免疫応答を開始するために、抗原とともに、または抗原なしで使用することができる。感染症は、本明細書で使用する場合、体内での外来微生物の存在から起こる疾患である。病原体流入の主要な部位である、体の粘膜表面を保護するための、有効なワクチンストラテジーおよび治療を開発することが特に重要である。
【0097】
ウイルスは、一般に、核酸コアおよびタンパク質外被を含有するが、独立して生存している生物体ではない、小さな感染因子である。ウイルスは、タンパク質を欠いている感染性の核酸の形態もとることができる。ウイルスは、生細胞の非存在下で生存することはできず、生細胞内でウイルスは複製することができる。ウイルスは、DNA(ファージ)のエンドサイトーシスまたは直接注射によって特定の生細胞に入り、増殖し、疾患を引き起こす。次いで増殖したウイルスは、放出され、さらなる細胞を感染させることができる。一部のウイルスは、DNA含有ウイルスであり、他のウイルスは、RNA含有ウイルスである。DNAウイルスとして、ポックス、ヘルペス、アデノ、パポバ、パルボ、およびヘパドナが挙げられる。RNAウイルスとして、ピコルナ、カリチ、アストロ、トガ、フラビ、コロナ、パラミクソ、オルソミクソ、ブニア、アレナ、ラブド、フィロ、ボルナ、レオ、およびレトロが挙げられる。いくつかの態様では、本発明は、プリオンが、疾患進行に関係づけられている疾患、例えば、ウシ海綿状脳症(すなわち、狂牛病、BSE)、または動物におけるスクラピー感染症、またはヒトにおけるクロイツフェルト−ヤコブ病などを治療することも意図されている。
【0098】
ウイルスとして、それだけに限らないが、エンテロウイルス(それだけに限らないが、ピコルナウイルス科(picornaviridae)のウイルス、例えばポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなどを含む)、ロタウイルス、アデノウイルス、ならびに肝炎ウイルス、例えばA、B、C、DおよびE型肝炎などが挙げられる。ヒトにおいて見出されているウイルスの具体例として、それだけに限らないが、以下のものが挙げられる:レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV−1(HTLV−III、LAV、またはHTLV−III/LAV、またはHIV−IIIとも呼ばれる);およびHIV−LPなどの他の単離体など;ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス(Togaviridae)(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(Flaviviridae)(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(Coronaviridae)(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)(例えば、ハンターンウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルス、およびナイロウイルス(Nairo virus));アレナウイルス科(Arenaviridae)(出血熱ウイルス);レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、レオウイルス、オルビウイルス、およびロタウイルス);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(Parvoviridae)(パルボウイルス);パポバウイルス科(Papovaviridae)(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(Adenoviridae)(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)(単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV));ポックスウイルス科(Poxviridae)(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);イリドウイルス(Iridoviridae)(例えば、アフリカブタ熱ウイルス);ならびに他のウイルス、急性喉頭気管支炎ウイルス、αウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ニパウイルス、ノーウォークウイルス、パピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、トリインフルエンザ、SARsウイルス、西ナイル熱。
【0099】
ウイルス性肝炎は、肝臓の炎症であり、これは、腫張、圧痛、および時として肝臓の永続的な損傷を生じる場合がある。肝臓の炎症が少なくとも6カ月以上続く場合、これは慢性肝炎と呼ばれる。A、B、C、DおよびE型肝炎を含めたウイルス性肝炎を引き起こすことが知られている、少なくとも5種の異なるウイルスが存在する。A型肝炎は、一般に、ヒトの糞便が混入した食物または飲料水を通じて感染する。B型肝炎は、一般に、血液などの体液を通じて伝染する。例えば、これは、出生時に母から小児に、性的接触、汚染した輸血および針を通じて伝染する場合がある。C型肝炎はかなり一般的であり、B型肝炎のように、輸血および汚染した針を通じて伝染することが多い。D型肝炎は、これが共に連携するB型肝炎ウイルスの担体である、静注薬物の使用者において最も多く見出される。E型肝炎は、ウイルス性A型肝炎と同様であり、一般に、衛生の悪さと関係している。
【0100】
グラム陰性菌およびグラム陽性菌はともに、脊椎動物において抗原として機能を果たす。そのようなグラム陽性菌には、それだけに限らないが、パスツレラ(Pasteurella)種、ブドウ球菌(Staphylococci)種、および連鎖球菌(Streptococcus)種が含まれる。グラム陰性菌には、それだけに限らないが、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス(Pseudomonas)種、およびサルモネラ(Salmonella)種が含まれる。感染性細菌の具体例として、それだけに限らないが、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリア(Mycobacteria)種(例えば、M.ツベルクロシス(M.tuberculosis)、M.アビウム(M.avium)、M.イントラセルラレ(M.intracellulare)、M.カンサイイ(M.kansaii)、M.ゴルドナエ(M.gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌(Streptococcus))、ストレプトコッカス・アガラクチアエ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌(Streptococcus))、連鎖球菌(Streptococcus)(ビリダンス群)、大便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、連鎖球菌(Streptococcus)(嫌気的な種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原体カンピロバクター(Campylobacter)種、腸球菌(Enterococcus)種、ヘモフィルス・インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus antracis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringers)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス(Bacteroides)種、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、トレポネーマ・パリジウム(Treponema pallidium)、トレポネーマ・ペルテニュ(Treponema pertenue)、レプトスピラ(Leptospira)、リケッチア(Rickettsia)、およびアクチノマイセス・イスラエリイ(Actinomyces israelli)が挙げられる。
【0101】
真菌の例として、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、トラコーマ病原体(Chlamydia trachomatis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が挙げられる。
【0102】
他の感染性生物(すなわち、原生生物)として、マラリア原虫(Plasmodium)種、例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、および三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)など、ならびにトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)が挙げられる。血液由来寄生虫および/または組織寄生虫として、マラリア原虫(Plasmodium)種、バベシア・ミクロチ(Babesia microti)、バベシア・ディバーゲンズ(Babesia divergens)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、リーシュマニア(Leishmania)種、ブラジルリーシュマニア(Leishmania braziliensis)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma gambiense)およびローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma rhodesiense)(アフリカ睡眠病)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)(シャーガス病)、およびトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)が挙げられる。
【0103】
他の医学的に関連した微生物は、文献中に広範に記載されており、例えば、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれている、C.G.A Thomas、Medical Microbiology、Bailliere Tindall、Great Britain 1983を参照されたい。
【0104】
本発明のオリゴヌクレオチドは、抗微生物剤とともに対象に投与することができる。抗微生物剤は、本明細書で使用する場合、感染性微生物を死滅させ、または阻害することができる、天然に存在するか、合成の化合物を指す。本発明によって有用な抗微生物剤の型は、対象が感染するか、感染するようになるリスクのある微生物の型に依存する。抗微生物剤には、それだけに限らないが、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤および抗寄生虫剤が含まれる。「抗感染薬」、「抗菌剤」、「抗ウイルス剤」、「抗真菌剤」、「抗寄生虫剤」および「寄生虫駆除剤」などの語句は、当業者に対して確立した意味を有し、標準的な医学教科書に定義されている。簡単に言えば、抗菌剤は、細菌を死滅させ、または阻害し、抗生物質ならびに同様の機能を有する他の合成または天然の化合物を含む。抗生物質は、微生物などの細胞によって二次代謝産物として産生される低分子量分子である。一般に、抗生物質は、微生物に特異的であり、宿主細胞中に存在しない、1つまたは複数の細菌の機能または構造を妨害する。抗ウイルス剤は、天然源から単離し、または合成することができ、ウイルスを死滅させ、または阻害するのに有用である。抗真菌剤は、表在性真菌感染ならびに日和見性および原発性の全身性真菌感染を治療するのに使用される。抗寄生虫剤は、寄生虫を死滅させ、または阻害する。
【0105】
ヒト投与に有用な、寄生虫駆除剤とも呼ばれる抗寄生虫剤の例として、それだけに限らないが、アルベンダゾール、アンホテリシンB、ベンズニダゾール、ビチオノール、クロロキンHCl、リン酸クロロキン、クリンダマイシン、デヒドロエメチン、ジエチルカルバマジン、ジロキサニドフロエート、エフロールニチン、フラゾリダオン(furazolidaone)、糖質コルチコイド、ハロファントリン、ヨードキノール、イベルメクチン、メベンダゾール、メフロキン、アンチモン酸メグルミン、メラルソプロール、メトリホナート、メトロニダゾール、ニクロサミド、ニフルチモックス、オキサムニキン、パロモマイシン、イセチオン酸ペンタミジン、ピペラジン、プラジカンテル、リン酸プリマキン、プログアニル、パモ酸ピランテル、ピリメタンミン(pyrimethanmine)−スルホンアミド、ピリメタンミン−スルファドキシン、キナクリンHCl、硫酸キニーネ、グルコン酸キニジン、スピラマイシン、スチボグルコネートナトリウム(グルコン酸アンチモンナトリウム)、スラミン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、チアベンダゾール、チニダゾール、トリメトロプリム(trimethroprim)−スルファメトキサゾール、およびトリパルサミドが挙げられ、これらのいくつかは、単独で、または他と組み合わせて使用される。
【0106】
抗菌剤は、細菌の増殖または機能を殺し、または阻害する。抗菌剤の大きなクラスは、抗生物質である。広範囲の細菌を死滅させ、または阻害するのに有効である抗生物質は、広域スペクトル抗生物質と呼ばれる。他の型の抗生物質も、グラム陽性またはグラム陰性のクラスの細菌に対して大部分は有効である。これらの型の抗生物質は、狭域抗生物質と呼ばれる。1つの生物体または疾患に対して有効であるが、他の型の細菌に対しては有効でない他の抗生物質は、限定域抗生物質(limited spectrum antibiotic)と呼ばれる。抗菌剤は、その主要な作用機序に基づいて時折分類される。一般に、抗菌剤は、細胞壁合成阻害剤、細胞膜阻害剤、タンパク質合成阻害剤、核酸合成阻害剤または機能性阻害剤、および競合的阻害剤である。
【0107】
抗ウイルス剤は、ウイルスによる細胞の感染、または細胞内でのウイルスの複製を防止する化合物である。抗ウイルス薬は、抗菌薬よりずっと少なく、これは、ウイルス複製のプロセスは、宿主細胞内でのDNA複製に非常に密接に関連しており、非特異的な抗ウイルス剤は、宿主に対して毒性となることが多いためである。抗ウイルス剤によって遮断または阻害することができるウイルス感染のプロセスの中に、いくつかの段階が存在する。これらの段階には、宿主細胞へのウイルスの付着(免疫グロブリンまたは結合ペプチド)、ウイルスの脱外被(例えば、アマンタジン)、ウイルスmRNAの合成または翻訳(例えば、インターフェロン)、ウイルスRNAまたはDNAの複製(例えば、ヌクレオチド類似体)、新規ウイルスタンパク質の成熟(例えば、プロテアーゼ阻害剤)、ならびにウイルスの出芽および放出が含まれる。
【0108】
ヌクレオチド類似体は、ヌクレオチドと同様であるが、不完全なまたは異常なデオキシリボースまたはリボース基を有する合成化合物である。ヌクレオチド類似体が細胞中に入ると、これらはリン酸化され、形成された三リン酸を生成し、ウイルスDNAまたはRNA中への取込みについて、正常なヌクレオチドと競合する。ヌクレオチド類似体の三リン酸形態が、成長中の核酸の鎖中に組み込まれると、これは、ウイルスポリメラーゼとの非可逆性の会合、およびしたがって、鎖の終止を引き起こす。ヌクレオチド類似体として、それだけに限らないが、アシクロビル(単純ヘルペスウイルスおよび水痘−帯状疱疹ウイルスの治療に使用される)、ガンシクロビル(サイトメガロウイルスの治療に有用)、イドクスウリジン、リバビリン(呼吸器合胞体ウイルスの治療に有用)、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジン、ジドブジン(アジドチミジン)、イミキモド、およびレシミキモド(resimiquimod)が挙げられる。
【0109】
インターフェロンは、ウイルス感染細胞ならびに免疫細胞によって分泌されるサイトカインである。インターフェロンは、感染細胞に隣接する細胞上の特定の受容体に結合することによって機能し、細胞内に変化を引き起こし、細胞がウイルスによって感染することから保護する。αおよびβインターフェロンはまた、感染細胞の表面上で、クラスIおよびクラスII MHC分子の発現を誘発し、宿主免疫細胞認識に対する抗原提示を増大させる。αおよびβインターフェロンは、組換え型形態として利用可能であり、慢性のB型およびC型肝炎の治療に使用されている。抗ウイルス療法に有効な投与量で、インターフェロンは、重度の副作用、例えば、発熱、倦怠感および体重減少などを有する。
【0110】
本発明において有用な抗ウイルス剤として、それだけに限らないが、免疫グロブリン、アマンタジン、インターフェロン、ヌクレオチド類似体、およびプロテアーゼ阻害剤が挙げられる。抗ウイルス剤の具体例として、それだけに限らないが、アセマンナン;アシクロビル;アシクロビルナトリウム;アデフォビル;アロブジン;アルビルセプト(Alvircept)スドトキス;塩酸アマンタジン;アラノチン;アリルドン;メシル酸アテビルジン;アブリジン;シドフォビル;シパムフィリン;塩酸シタラビン;メシル酸デラビルジン;デシクロビル;ジダノシン;ジソキサリル;エドクスジン;エンビラデン;エンビロキシム;ファムシクロビル;塩酸ファモチン;フィアシタビン;フィアルリジン;ホサリラート;フォスカーネットナトリウム;ホスホネットナトリウム;ガンシクロビル;ガンシクロビルナトリウム;イドクスウリジン;ケトキサール;ラミブジン;ロブカビル;塩酸メモチン;メチサゾン;ネビラピン;ペンシクロビル;ピロダビル;リバビリン;塩酸リマンタジン;メシル酸サキナビル;塩酸ソマンタジン;ソリブジン;スタトロン;スタブジン;塩酸チロロン;トリフルリジン;塩酸バラシクロビル;ビダラビン;ビダラビンホスフェート;ビダラビンリン酸ナトリウム;ビロキシム;ザルシタビン;ジドブジン;およびジンビロキシムが挙げられる。
【0111】
抗真菌剤は、感染性真菌の治療および予防に有用である。抗真菌剤は、作用機序によって時折分類される。いくつかの抗真菌剤は、グルコースシンターゼを阻害することによって、細胞壁阻害剤として機能する。これらには、それだけに限らないが、バシウンギン(basiungin)/ECBが含まれる。他の抗真菌剤は、膜完全性を不安定化することによって機能する。これらとして、それだけに限らないが、インミダゾール(immidazole)、例えばクロトリマゾール、セルタコンゾール(sertaconzole)、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、およびボリコナコール(voriconacole)など、ならびにFK463、アンホテリシンB、BAY 38−9502、MK991、プラディマイシン、UK292、ブテナフィン、およびテルビナフィンが挙げられる。他の抗真菌剤は、キチンを分解することによって(例えば、キチナーゼ)、または免疫抑制(501クリーム)によって機能する。
【0112】
免疫調節性オリゴヌクレオチドは、自己免疫疾患を治療および予防することにも有用となり得る。自己免疫疾患は、一クラスの疾患であり、対象自体の抗体が宿主組織と反応し、または免疫エフェクターT細胞が、内因性の自己ペプチドに自己反応性であり、組織の破壊を引き起こす。したがって免疫応答は、自己抗原と呼ばれる対象自体の抗原に対して開始される。自己免疫疾患として、それだけに限らないが、円形脱毛症、後天性血友病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫関連不妊症、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性糖尿病、自己免疫性血小板減少性紫斑病、ベーチェット症候群、類天疱瘡、心筋症、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、チャーグ−ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素病、皮膚筋炎、円板状ループス(discoid lupus)、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症、線維筋炎、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、糸球体腎炎(例えば、半月形糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎)、グレーブス病、移植片対宿主疾患、グッドパスチャー症候群、天疱瘡(例えば、尋常性天疱瘡)、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、インスリン抵抗性、特発性アジソン病、IgA腎症、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)、若年性関節炎、扁平苔癬、重症筋無力症、多発性硬化症、混合性結合組織病、多発性筋炎、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺症候群、リウマチ性多発性筋痛、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、若年性および成人関節リウマチ、シェーグレン症候群、抗コラーゲン抗体を有する強皮症、サルコイドーシス、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、高安関節炎(Takayasu arthritis)、移植臓器拒絶反応、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、ブドウ膜炎、潰瘍性大腸炎、血管炎、ならびに白斑が挙げられる。
【0113】
「自己抗原」は、本明細書で使用する場合、正常な宿主組織の抗原を指す。正常な宿主組織は、癌細胞を含まない。したがって、自己抗原に対して開始された免疫応答は、自己免疫疾患との関連で望ましくない免疫応答であり、正常な組織の破壊および損傷の一因となる一方で、癌抗原に対して開始された免疫応答は、望ましい免疫応答であり、腫瘍または癌の破壊に寄与する。したがって、自己免疫障害を治療することを目的とした、本発明のいくつかの態様では、免疫調節性オリゴヌクレオチドを、自己抗原、特に自己免疫障害の標的であるものとともに投与することは推奨されない。
【0114】
他の場合では、免疫調節性オリゴヌクレオチドは、低用量の自己抗原とともに送達することができる。いくつかの動物試験では、低用量の抗原の粘膜投与は、免疫低応答性または「トレランス」の状態をもたらすことができることが実証された。能動機構は、Th1から主にTh2およびTh3(すなわち、TGF−βに支配された)応答に向けたサイトカイン媒介性免疫偏向であるように思われる。低用量の抗原送達を用いた能動的抑制は、無関係の免疫応答を抑制することもでき(バイスタンダー抑制)、これは、自己免疫疾患、例えば、関節リウマチおよびSLEの療法においてかなり興味深い。バイスタンダー抑制は、局所的な環境における、Th1−対抗制御的な、抑制因子サイトカインの分泌を伴い、そこで炎症促進性サイトカインおよびTh1サイトカインが、抗原特異的または抗原非特異的な様式で放出される。「トレランス」は、本明細書で使用する場合、この現象を指すのに使用される。実際に、経口トレランスは、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、実験的自己免疫性重症筋無力症、コラーゲン誘発関節炎(CIA)、およびインスリン依存性糖尿病を含めた、動物におけるいくつかの自己免疫疾患の治療において有効である。これらのモデルにおいて、自己免疫疾患の予防および抑制は、抗原−特異的な体液性応答および細胞応答における、Th1からTh2/Th3応答への移行に関連する。
【0115】
本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、いくつかの態様では、炎症性障害を治療するのに有用である。本明細書で使用する場合、用語「炎症性障害」は、感染、毒素曝露、または細胞傷害の部位における、白血球および血漿タンパク質の蓄積および活性化を伴う生得免疫系の抗原非特異的反応に関連する状態を指す。炎症の特徴であるサイトカインとして、腫瘍壊死因子(TNF−α)、インターロイキン1(IL−1)、IL−6、IL−12、インターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンβ(IFN−β)、およびケモカインが挙げられる。したがって、ある特定の型の喘息、アレルギー、および自己免疫障害は、炎症性障害の特徴を有する場合がある。炎症性障害として、例えば、心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、慢性胆嚢炎、結核、橋本甲状腺炎、敗血症、サルコイドーシス、珪肺症および他の塵肺、ならびに創傷における移植された異物も挙げられるが、そのように限定されない。本明細書で使用する場合、用語「敗血症」は、微生物侵入に対する宿主の全身性の炎症反応に関連する、よく認識された臨床的な症候群を指す。用語「敗血症」は、本明細書で使用する場合、発熱または低体温、頻脈、および頻呼吸によって一般的に知らされ、重度の場合、低血圧、臓器機能不全、および死亡にさえ進行する場合のある状態を指す。
【0116】
「対象」は、ヒト、またはそれだけに限らないが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シチメンチョウ、ニワトリ、霊長類、例えば、サル、および魚(水産養殖種)、例えば、サケを含めた脊椎動物を意味するものとする。したがって、本発明は、非ヒト対象における癌および腫瘍、感染、ならびにアレルギー/喘息を治療するのに使用することもできる。例えば、癌は、コンパニオンアニマル(すなわち、ネコおよびイヌ)における死亡の主要原因の1つである。
【0117】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」、「治療される」、または「治療すること」は、障害、例えば、感染症、癌、アレルギー、または喘息などに関して使用される場合、疾患の発症に対する(例えば、病原体の感染に対する)対象の抵抗力を増大させる、または言い換えれば、対象が疾患を発症する(例えば、病原体に感染する)可能性を減少させる予防的な治療、ならびに疾患と闘い(例えば、感染を低減または排除する)、または疾患が悪化することから予防するための、対象が疾患を発症させた後の治療を指す。
【0118】
免疫調節性オリゴヌクレオチドが抗原とともに投与される場合において、対象は、抗原にさらされる場合がある。本明細書で使用する場合、用語「さらされる」は、インビボで対象を抗原と接触させる能動的なステップ、または抗原への対象の受動的な曝露を指す。抗原への対象の能動的な曝露のための方法は、当技術分野において公知である。一般に、抗原は、任意の手段、例えば、静脈内、筋肉内、経口、経皮、粘膜、鼻腔内、気管内、または皮下の投与などによって、対象に直接投与される。抗原は、全身的または局所的に投与することができる。抗原および免疫調節性オリゴヌクレオチドを投与するための方法は、以下により詳細に記載されている。抗原が、体内で免疫細胞への曝露に利用可能となる場合、対象は抗原に受動的にさらされる。対象は、例えば、体内への外来病原体の流入、または表面上で外来抗原を発現する腫瘍細胞の発生によって、抗原に受動的にさらされ得る。抗原またはアレルゲンは、いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドにコンジュゲートしている。
【0119】
対象が抗原に受動的にさらされる方法は、免疫調節性オリゴヌクレオチドの投与のタイミングに特に依存する場合がある。例えば、癌または感染症、またはアレルギーもしくは喘息の応答を発症するリスクのある対象では、そのリスクが最大であるとき、すなわち、アレルギーの季節の間、または癌を引き起こす作用剤への曝露の後に、免疫調節性オリゴヌクレオチドを定期的に対象に投与することができる。さらに、免疫調節性オリゴヌクレオチドは、旅行者が、感染因子への曝露のリスクのある外国に旅行する前に、旅行者に投与することができる。同様に、免疫調節性オリゴヌクレオチドは、細菌戦にさらされるリスクのある軍人または民間人に投与することによって、対象が細菌戦にさらされるとき、抗原に対する全身性または粘膜応答を誘発することができる。
【0120】
抗原は、本明細書で使用する場合、免疫応答を誘発することができる分子である。抗原として、それだけに限らないが、細胞、細胞抽出物、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、多糖コンジュゲート、多糖および他の分子のペプチドおよび非ペプチド模倣体、小分子、脂質、糖脂質、炭水化物、ウイルスおよびウイルス抽出物、ならびに寄生虫などの多細胞生物、ならびにアレルゲンが挙げられる。用語「抗原」は、外来であると宿主免疫系によって認識される、任意の型の分子を広く含む。抗原には、それだけに限らないが、癌抗原、微生物抗原、アレルゲンが含まれる。
【0121】
癌抗原は、本明細書で使用する場合、腫瘍または癌細胞表面と付随したペプチドまたはタンパク質などの化合物であり、これは、MHC分子との関連で、抗原提示細胞の表面上に発現されるとき、免疫応答を誘発することができる。癌抗原は、例えば、Cohenら、1994、Cancer Research、54:1055に記載されているように、癌細胞の未精製抽出物を調製することによって、抗原を部分的に精製することによって、組換え技術によって、または既知の抗原の新規合成によって、癌細胞から調製することができる。癌抗原は、それだけに限らないが、組換えで発現される抗原、腫瘍もしくは癌の免疫原性部分、または腫瘍もしくは癌の全体が含まれる。そのような抗原は、組換えでまたは当技術分野で既知の任意の他の手段によって単離または調製することができる。
【0122】
微生物抗原は、本明細書で使用する場合、微生物の抗原であり、それだけに限らないが、ウイルス、細菌、寄生虫、および真菌を含む。そのような抗原として無傷の微生物ならびに天然の単離体、ならびにこれらの断片または誘導体、ならびにまた天然微生物抗原と同一または同様であり、その微生物に特異的な免疫応答を誘発する合成化合物が挙げられる。化合物は、これが、天然微生物抗原に対する免疫応答(体液性および/または細胞の)を誘発する場合、天然微生物抗原と同様である。そのような抗原は、当技術分野において日常的に使用され、当業者に公知である。
【0123】
アレルゲンは、感受性の対象においてアレルギーまたは喘息の応答を誘発することができる物質(抗原)を指す。アレルゲンのリストは、非常に大きく、花粉、昆虫毒、動物の鱗屑ダスト、真菌胞子、および薬物(例えば、ペニシリン)を含むことができる。天然の動物ならびに植物アレルゲンの例には、それだけに限らないが、以下の属に特異的なタンパク質が含まれる:イヌ(カニス・ファミリアリス(Canis familiaris));ヒョウヒダニ属(Dermatophagoides)(例えば、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae));ネコ属(Felis)(フェリス・ドメスティクス(Felis domesticus));ブタクサ属(Ambrosia)(アムブロシア・アルテミイスファリア(Ambrosia artemiisfolia));ロリウム属(Lolium)(例えば、ドクムギ(Lolium perenne)またはネズミムギ(Lolium multiflorum));スギ属(Cryptomeria)(スギ(Cryptomeria japonica));アルテルナリア属(Alternaria)(アルテルナリア・アルテルナタ(Alternaria alternata));アルダー(Alder);ハンノキ属(Alnus)(アルヌス・グルチノアサ(Alnus gultinoasa));カバノキ属(Betula)(ベツラ・ベルコサ(Betula verrucosa));カシ属(Quercus)(ホワイトオーク(Quercus alba));オリーブ属(Olea)(オリーブ(Olea europa));ヨモギ属(Artemisia)(オウシュウヨモギ(Artemisia vulgaris));オオバコ属(Plantago)(例えば、ヘラオオバコ(Plantago lanceolata));ヒカゲミズ属(Parietaria)(例えば、パリエタリア・オフィチナリス(Parietaria officinalis)またはカベイラクサ(Parietaria judaica));チャバネゴキブリ属(Blattella)(例えば、チャバネゴキブリ(Blattella germanica));ミツバチ属(Apis)(例えば、アピス・ムルティフロルム(Apis multiflorum));イトスギ属(Cupressus)(例えば、ホソイトスギ(Cupressus sempervirens)、アリゾナイトスギ(Cupressus arizonica)およびモントレーイトスギ(Cupressus macrocarpa));ビャクシン属(Juniperus)(例えば、ユニペルス・サビノイデス(Juniperus sabinoides)、エンピツビャクシン(Juniperus virginiana)、セイヨウネズ(Juniperus communis)およびユニペルス・アシェイ(Juniperus ashei));クロベ属(Thuya)(例えば、ツヤ・オリエンタリス(Thuya orientalis));ヒノキ属(Chamaecyparis)(例えば、ヒノキ(Chamaecyparis obtusa));ワモンゴキブリ属(Periplaneta)(例えば、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana));カモジグサ属(Agropyron)(例えば、シバムギ(Agropyron repens));ライムギ属(Secale)(例えば、ライムギ(Secale cereale));コムギ属(Triticum)(例えば、コムギ(Triticum aestivum));カモガヤ属(Dactylis)(例えば、オーチャードグラス(Dactylis glomerata));ウシノケグサ属(Festuca)(例えば、ヒロハウシノケグサ(Festuca elatior));イチゴツナギ属(Poa)(例えば、ナガハグサ(Poa pratensis)またはコイチゴツナギ(Poa compressa));カラスムギ属(Avena)(例えば、エンバク(Avena sativa));シラゲガヤ属(Holcus)(例えば、シラゲガヤ(Holcus lanatus));ハルガヤ属(Anthoxanthum)(例えば、ハルガヤ(Anthoxanthum odoratum));オオカニツリ属(Arrhenatherum)(例えば、リボンガヤ(Arrhenatherum elatius));コヌカグサ属(Agrostis)(例えば、コヌカグサ(Agrostis alba));アワガエリ属(Phleum)(例えば、オオアワガエリ(Phleum pratense));クサヨシ属(Phalaris)(例えば、クサヨシ(Phalaris arundinacea));スズメノヒエ属(Paspalum)(例えば、バヒアグラス(Paspalum notatum));モロコシ属(Sorghum)(例えば、セイバンモロコシ(Sorghum halepensis));ならびにスズメノチャヒキ属(Bromus)(例えば、コスズメノチャヒキ(Bromus inermis))。
【0124】
用語「実質的に精製された」は、本明細書で使用する場合、他のタンパク質、脂質、炭水化物、またはポリペプチドに天然に付随する他の物質が実質的にないポリペプチドを指す。当業者は、タンパク質精製のための標準的な技法を使用してウイルスまたは細菌ポリペプチドを精製することができる。実質的に純粋なポリペプチドは、非還元ポリアクリルアミドゲル上で単一の主要なバンドを生じることが多い。部分的にグリコシル化されたポリペプチドまたはいくつかの開始コドンを有するものの場合では、非還元ポリアクリルアミドゲル上にいくつかのバンドが存在し得るが、これらは、そのポリペプチドについての独特のパターンを形成する。ウイルスまたは細菌ポリペプチドの純度は、アミノ末端のアミノ酸配列分析によって求めることもできる。多糖、小分子、模倣体などの、核酸ベクターによってコードされない他の型の抗原は、本発明内に含まれる。
【0125】
免疫調節性オリゴヌクレオチドは、アジュバントなどの他の治療剤と組み合わせることによって、免疫応答を強化することができる。免疫調節性オリゴヌクレオチドおよび他の治療剤は、同時にまたは順次に投与することができる。他の治療剤が同時に投与されるとき、これらは、同じまたは別々の製剤で投与することができるが、同じ時間に投与される。他の治療剤および免疫調節性オリゴヌクレオチドの投与が時間的に離れている場合、他の治療剤は、互いにおよび免疫調節性オリゴヌクレオチドとともに順次投与される。これらの化合物の投与間の時間の分離は、約数分とすることができ、またはこれはそれより長くすることができる。他の治療剤には、それだけに限らないが、アジュバント、サイトカイン、抗体、抗原などが含まれる。
【0126】
本発明の組成物は、非核酸アジュバントとともに投与することもできる。非核酸アジュバントは、体液性および/または細胞性免疫応答を刺激することができる、本明細書に記載される免疫調節性オリゴヌクレオチドを除いた任意の分子または化合物である。非核酸アジュバントには、例えば、デポ効果(depo effect)を生み出すアジュバント、免疫刺激アジュバント、およびデポ効果を生み出し、免疫系を刺激するアジュバントが含まれる。
【0127】
免疫調節性オリゴヌクレオチドは、いくつかの実施形態では、粘膜アジュバントとしても有用である。全身性免疫および粘膜免疫はともに、CpGオリゴヌクレオチドの粘膜送達によって誘発されることが以前に発見された。したがって、オリゴヌクレオチドは、他の粘膜アジュバントと組み合わせて投与することができる。
【0128】
免疫応答は、サイトカイン(Bueler&Mulligan、1996;Chowら、1997;Geisslerら、1997;Iwasakiら、1997;Kimら、1997)またはB−7共刺激分子(Iwasakiら、1997;Tsujiら、1997)の、免疫調節性オリゴヌクレオチドとの同時投与または共直線的な(co−linear)発現によっても誘発し、または増強することができる。用語「サイトカイン」は、種々の群の可溶性のタンパク質およびペプチドについての一般的な名称として使用され、これは、ナノモルからピコモルの濃度で体液性制御因子として作用し、正常または病的な条件下で、個々の細胞および組織の機能活性を調節する。これらのタンパク質はまた、細胞同士間の相互作用を直接媒介し、細胞外環境で起こるプロセスを制御する。サイトカインの例として、それだけに限らないが、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロン−γ(γ−IFN)、IFN−α、腫瘍壊死因子(TNF)、TGF−β、FLT−3リガンド、およびCD40リガンドが挙げられる。
【0129】
オリゴヌクレオチドは、Th2免疫応答からTh1免疫応答に免疫応答を再指向することにも有用である。これは、相対的にバランスのとれたTh1/Th2環境の生成をもたらす。Th2からTh1免疫応答への免疫応答の再指向は、オリゴヌクレオチドに応答して産生されるサイトカインのレベルを測定することによって、(例えば、単球細胞および他の細胞を誘発して、IL−12、IFN−γおよびGM−CSFを含めたTh1サイトカインを産生させることによって)、評価することができる。Th2からTh1応答への免疫応答の再指向または再平衡化(rebalance)は、喘息の治療または予防に特に有用である。例えば、喘息を治療するための有効量は、喘息に関連するTh2型の免疫応答を、Th1型の応答またはバランスのとれたTh1/Th2環境に再指向するのに有用な量である。Th2サイトカイン、特にIL−4およびIL−5は、喘息の対象の気道内で上昇する。本発明の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、免疫系を再平衡化するのに役立つTh1サイトカインを増加させ、Th2が優位な免疫応答に関連する有害作用を防止または低減する。
【0130】
本発明のオリゴヌクレオチドは、気道リモデリングを治療することにも有用となり得る。気道リモデリングは、気道における平滑筋細胞増殖および/または粘膜下肥厚から生じ、最終的に気道の狭小化を引き起こし、気流の制限に至る。本発明のオリゴヌクレオチドは、さらなるリモデリングを防止し、おそらくリモデリングプロセスから生じる組織発達を低減することさえできる。
【0131】
オリゴヌクレオチドは、樹状細胞の生着、分化、活性化および成熟を改善することにも有用である。免疫調節性オリゴヌクレオチドは、樹状細胞の細胞生存、分化、活性化および成熟を促進するためのユニークな能力を有する。
【0132】
免疫調節性オリゴヌクレオチドは、ナチュラルキラー細胞溶解活性および抗体依存性細胞傷害(ADCC)も増大させる。ADCCは、癌細胞などの細胞標的に特異的な抗体と組み合わせて、免疫調節性オリゴヌクレオチドを使用して実施することができる。免疫調節性オリゴヌクレオチドが抗体とともに対象に投与される場合、対象の免疫系は、誘発されることによって腫瘍細胞を死滅させる。ADCC手順において有用な抗体には、体内で細胞と相互作用する抗体が含まれる。細胞標的に特異的な多くのそのような抗体は、当技術分野において記載されており、多くが市販されている。
【0133】
本発明は、免疫調節性オリゴヌクレオチドを使用して、感染誘発に対する抗原非特異的生得的免疫活性化および広範囲の抵抗力を誘発するための方法も含む。用語「抗原非特異的生得的免疫活性化」は、本明細書で使用する場合、B細胞以外の免疫細胞の活性化を指し、例えば、NK細胞、T細胞、もしくは抗原非依存性の様式で応答することができる他の免疫細胞、またはこれらの細胞のいくつかの組合せの活性化を含むことができる。免疫細胞は、活性体であり、任意の侵入する化合物または微生物に応答して初回抗原刺激を受けるため、感染誘発に対する広範囲の抵抗力が誘発される。特定の抗原に対して特異的に初回抗原刺激を受ける必要はない。これは、細菌戦、および旅行者など、上述した他の状況において特に有用である。
【0134】
本発明の免疫賦活性ODNは、陽イオン性脂質と組み合わせることができる。一実施形態では、陽イオン性脂質は、DOTAP(N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチル−スルフェート)である。DOTAPは、細胞中にポリマーを輸送し、エンドソームのコンパートメントに特異的に通じ、そこでpH依存的様式でポリマーを放出することができると考えられている。エンドソームのコンパートメントに入ると、ポリマーは、ある特定の細胞内TLRと相互作用することができ、免疫応答を生じることに関与するTLR媒介シグナル伝達経路を始動させる。エンドソームのコンパートメントへの輸送を含めた同様の特性を有する他の作用剤も、DOTAPの代わりに、またはDOTAPに加えて使用することができる。他の脂質製剤として、例えば、EFFECTENE(登録商標)(特殊なDNA凝縮エンハンサーを有する非リポソーム脂質)、およびSUPERFECT(登録商標)(新規の活性デンドリマー(acting dendrimeric)技術)、SMARTICLES(登録商標)(細胞膜を横断するとき正に帯電する電荷可逆性粒子)、および脂質二重層を使用する安定核酸脂質粒子(SNALP)が挙げられる。リポソームは、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)およびLIPOFECTACE(商標)としてGibco BRLから市販されており、これらは、陽イオン性脂質、例えば、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)およびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)などから形成されている。リポソームを作製するための方法は、当技術分野で公知であり、刊行物に記載されている。リポソームは、Gregoriadis G(1985)Trends Biotechnol 3:235〜241によっても概説されている。他の実施形態では、本発明の免疫賦活性ポリマーは、微粒子、シクロデキストリン、ナノ粒子、ニオソーム、デンドリマー、ポリシチオニック(polycytionic)ペプチド、ビロソームおよびウイルス様粒子、またはISCOMS(登録商標)と混合される。
【0135】
免疫調節性オリゴヌクレオチドは、対象に直接投与することができ、またはオリゴヌクレオチド送達複合体とともに投与することができる。オリゴヌクレオチド送達複合体は、標的化手段(例えば、標的細胞に、より高い親和結合をもたらす分子)と付随した(例えば、イオンもしくは共有結合で結合した、または封入された)オリゴヌクレオチド分子を意味するものとする。オリゴヌクレオチド送達複合体の例には、ステロール(例えば、コレステロール)、脂質(例えば、陽イオン性脂質、ビロソームもしくはリポソーム)、または標的細胞特異的な結合剤(例えば、標的細胞特異的な受容体によって認識されるリガンド)と付随したオリゴヌクレオチドが含まれる。好適な複合体は、インビボで十分に安定であることによって、標的細胞による内部移行前の、著しいアンカップリングを防止することができる。しかし、複合体は、細胞内で、適切な状態下で切断可能となり得、その結果、オリゴヌクレオチドが機能的形態で放出される。
【0136】
表面に抗原およびオリゴヌクレオチドを送達するための送達ビヒクルまたは送達デバイスは記載されている。免疫調節性オリゴヌクレオチドおよび/または抗原および/または他の治療剤は、単独で(例えば、食塩水もしくは緩衝液中)、または当技術分野で既知の任意の送達ビヒクルを使用して投与することができる。例えば、以下の送達ビヒクルが記載されている:コクリエート(cochleate);Emulsomes(登録商標);上述したものなどのある特定の陽イオン性脂質、例えば、ISCOM(登録商標);生細菌ベクター(例えば、サルモネラ(Salmonella)、大腸菌(Escherichia coli)、カルメット−ゲラン杆菌(Bacillus Calmette−Guerin)、シゲラ(Shigella)、ラクトバシラス属(Lactobacillus));生ウイルスベクター(例えば、ワクシニア(Vaccinia)、アデノウイルス、単純ヘルペス(Herpes Simplex));ミクロスフェア;核酸ワクチン;ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース、キトサン);ポリマー環;プロテオソーム;フッ化ナトリウム;トランスジェニック植物。本発明のいくつかの実施形態では、送達ビヒクルは、リポソーム、ニオソーム、リポプレクセ(lipoplexe)、ポリプレクセ(polyplexe)、リポポリプレクセ(lipopolyplexe)、油中水型(W/O)エマルジョン、水中油型(O/W)エマルジョン、水中油中水型(W/O/W)多重エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ミセル、デンドリマー、ビロソーム、ウイルス様粒子、ナノスフェアまたはナノカプセルのようなポリマーナノ粒子、ミクロスフェアまたはマイクロカプセルなどのポリマー微粒子である。他の送達ビヒクルは、当技術分野で知られている。
【0137】
用語の免疫調節性オリゴヌクレオチドの「有効量」は、所望の生物学的効果を実現するのに必要または十分な量を指す。例えば、粘膜免疫を誘発するために、抗原とともに投与される免疫調節性オリゴヌクレオチドの有効量は、抗原に曝露すると、その抗原に対する応答においてIgAの発生を引き起こすのに必要な量であるのに対して、全身性免疫を誘発するのに必要な量は、抗原に曝露すると、その抗原に対する応答においてIgGの発生を引き起こすのに必要な量である。本明細書に提供される教示と合わせて、様々な活性化合物ならびに重み付け因子(weighing factors)、例えば効力、相対的なバイオアベイラビリティー、患者の体重、有害な副作用の重症度、および好適な投与方法などの中から選択することによって、実質的な毒性を引き起こさず、それでも特定の対象を治療するのに完全に有効である、有効な予防的または治療的治療レジメンを計画することができる。任意の特定の用途についての有効量は、治療されている疾患または状態、投与されている特定の免疫調節性オリゴヌクレオチド、対象のサイズ、または疾患もしくは状態の重症度のような因子に応じて変更することができる。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の免疫調節性オリゴヌクレオチドおよび/または抗原および/または他の治療剤の有効量を経験的に求めることができる。
【0138】
粘膜送達または局所的送達のための、本明細書に記載される化合物の対象の用量は、一般に、投与1回当たり約0.1μg〜10mgの範囲であり、これは、用途に応じて、毎日、毎週、または毎月、およびこれらの間の時間の任意の他の量で与えることができる。より一般的には、粘膜の、または局所的な用量は、数日または数週間離して間隔を空けて2〜4回の投与で、投与1回当たり約10μg〜5mg、最も一般的には、約100μg〜1mgの範囲である。より一般的には、免疫刺激剤の用量は、毎日または毎週の投与で、投与1回当たり1μg〜10mg、最も一般的には、10μg〜1mgの範囲である。化合物が、抗原を伴うが、別の治療剤を伴わずに送達される、抗原特異的な免疫応答を誘発する目的の非経口送達のための、本明細書に記載される化合物の対象の用量は、一般的にワクチンアジュバントまたは免疫刺激剤用途のための有効な粘膜用量より5〜10,000倍高く、より一般的には、10〜1,000倍高く、最も一般的には、20〜100倍高い。生得の免疫応答を誘発する目的のため、ADCCを増大させるため、または抗原特異的な免疫応答を誘発するための、非経口送達のための、本明細書に記載される化合物の用量は、免疫調節性オリゴヌクレオチドが、他の治療剤と組み合わせて、または特殊化された送達ビヒクルで投与される場合、一般的に、投与1回当たり約0.1μg〜10mgの範囲であり、これは用途に応じて毎日、毎週、または毎月およびこれらの間の任意の他の時間量で与えることができる。より一般的には、これらの目的のための非経口用量は、数日または数週間離して間隔を空けて2〜4回の投与で、投与1回当たり約10μg〜5mg、最も一般的には、約100μg〜1mgの範囲である。しかし、いくつかの実施形態では、これらの目的のための非経口用量は、上述した一般的な用量より5〜10,000倍高い範囲で使用することができる。
【0139】
本明細書に記載される任意の化合物について、治療有効量は、動物モデルから最初に求めることができる。治療有効用量は、ヒトにおいて試験された(ヒト臨床試験が開始された)オリゴヌクレオチド、および他のアジュバント、例えば、ワクチン接種目的のためのLTおよび他の抗原などの、同様の薬理学的活性を示すことが知られている化合物については、ヒトのデータから求めることもできる。非経口投与については、より高い用量を必要とする場合がある。適用される用量は、投与される化合物の相対的なバイオアベイラビリティーおよび効力に基づいて調節することができる。上述した方法、および当技術分野で公知である他の方法に基づいて、最大の効力を実現するために用量を調節することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0140】
本発明の製剤は、薬学的に許容できる溶液で投与され、これは、薬学的に許容できる濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合性の担体、アジュバント、および場合により他の治療成分をごく普通に含有することができる。
【0141】
療法において使用するために、有効量の免疫調節性オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドを所望の表面、例えば、粘膜、全身に送達する任意の様式によって対象に投与することができる。本発明の医薬組成物を投与することは、当業者に既知の任意の手段によって達成することができる。好適な投与経路として、それだけに限らないが、経口、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、鼻腔内、舌下、気管内、吸入、眼球、膣、および直腸が挙げられる。
【0142】
経口投与について、化合物(すなわち、免疫調節性オリゴヌクレオチド、抗原、および他の治療剤)は、活性化合物(複数も)を、当技術分野で公知である薬学的に許容できる担体と合わせることによって容易に製剤化することができる。そのような担体は、治療される対象による経口摂取のために、錠剤、ピル、糖衣丸、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして、本発明の化合物が製剤化されることを可能にする。経口で使用するための医薬調製物は、錠剤または糖衣丸のコアを得るために、必要に応じて適当な助剤を加えた後、場合により得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を処理して、固体賦形剤として得ることができる。適当な賦形剤は、特に、充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトールを含めた糖;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ゴムトラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなど、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などである。必要に応じて、崩壊剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩を添加することができる。場合により、経口製剤は、食塩水もしくは緩衝液、すなわち、体内の酸性状態を中和するためのEDTA中で製剤化することもでき、またはいずれの担体を伴うことなく投与することができる。
【0143】
上記1つまたは複数の成分の経口剤形も具体的に企図されている。以下の実施例で実証されるように、FANA修飾オリゴヌクレオチドは、酸性環境において増大した安定性を有し、経口用途にとってこれらを有用にしている。1つまたは複数の成分は、経口送達が、さらにより効果的であるように、さらなる化学修飾を有することができる。一般に、企図されている化学修飾は、成分分子自体への少なくとも1つの部分の結合であり、前記部分は、(a)タンパク質分解の阻害、および(b)胃または腸から血流中への取込みを可能にする。1つまたは複数の成分の全体的な安定性の増大、および体内での循環時間の増大も望まれている。そのような部分の例として、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリプロリンが挙げられる。AbuchowskiおよびDavis、1981、「Soluble Polymer−Enzyme Adducts」:Enzymes as Drugs、HocenbergおよびRoberts編、Wiley−Interscience、New York、NY、367〜383ページ;Newmarkら、1982、J.Appl.Biochem.4:185〜189。使用することができる他のポリマーは、ポリ−1,3−ジオキソランおよびポリ−1,3,6−チオキソカン(tioxocane)である。上記に示したように、ポリエチレングリコール部分は、医薬品の使用に好適である。
【0144】
成分(または誘導体)について、放出の位置は、胃、小腸(十二指腸、空腸、もしくは回腸)、または大腸とすることができる。当業者は、胃内で溶解しないが、十二指腸内または腸内の他の場所で物質を放出する、利用可能な製剤を有する。放出は、オリゴヌクレオチド(もしくは誘導体)の保護、または腸内などの胃環境を越えての生物学的に活性な物質の放出によって、胃環境の有害な作用を回避することが好ましい。
【0145】
胃に対する完全な抵抗力を確実にするために、少なくともpH5.0に対して不浸透性であるコーティングは必須である。腸溶コーティングとして使用される、より一般的な不活性成分の例は、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP50、HPMCP55、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、オイドラギットL30D、アクアテリック(Aquateric)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、オイドラギットL、オイドラギットS、およびセラックである。これらのコーティングは、混合膜として使用することができる。
【0146】
胃に対する保護のために意図されていないコーティングまたはコーティングの混合物を、錠剤上に使用することもできる。これには、糖コーティング、または錠剤を飲み込むのに容易にするコーティングが含まれ得る。カプセルは、乾燥した治療剤、すなわち粉末の送達のためのハードシェル(ゼラチンなど)からなることができ、液体形態については、ソフトゼラチンシェルを使用することができる。カシェ剤のシェル材料は、厚いデンプンまたは他の食用紙とすることができる。ピル、ロゼンジ、成形錠剤または錠剤粉薬(tablet triturate)については、モイストマッシング(moist massing)技法を使用することができる。
【0147】
治療剤は、顆粒形態での微細な多粒子、または粒径約1mmのペレットとして製剤中に含めることができる。カプセル投与のための材料の製剤は、粉末、軽度圧縮プラグとして、またはさらには錠剤としてとすることができる。治療剤は、圧縮によって調製することができる。
【0148】
着色剤および香味剤は、すべて含めることができる。例えば、オリゴヌクレオチド(または誘導体)は、製剤化し(リポソームまたはミクロスフェア封入によってなど)、次いで着色剤および香味剤を含有する冷蔵飲料などの食品内にさらに封じ込めることができる。
【0149】
不活性な材料を用いて治療剤の体積を希釈または増加させることができる。これらの希釈剤として、炭水化物、特にマンニトール、a−ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、修飾デキストラン、およびデンプンを挙げることができる。三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含めた、ある特定の無機塩も充填剤として使用することができる。いくつかの市販の希釈剤は、Fast−Flo、エムデックス(Emdex)、STA−Rx1500、エムコンプレス(Emcompress)、およびアビセル(Avicell)である。
【0150】
崩壊剤は、治療剤の製剤中に含めて固体剤形にすることができる。崩壊剤(disintegrate)として使用される材料には、それだけに限らないが、デンプンに基づく市販の崩壊剤を含めたデンプン、エクスプロタブ(Explotab)が含まれる。ナトリウムデンプングリコレート、アンベルライト(Amberlite)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ウルトラミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジの皮、酸性カルボキシメチルセルロース、天然のスポンジ、およびベントナイトは、すべて使用することができる。崩壊剤の別の形態は、不溶性の陽イオン交換樹脂である。粉末ゴムは、崩壊剤および結合剤として使用することができ、これらとして、粉末ゴム、例えば、寒天、カラヤ、またはトラガカントなどを挙げることができる。アルギン酸およびそのナトリウム塩も崩壊剤として有用である。
【0151】
結合剤は、治療剤を一緒に保持することによって硬質錠剤を形成するのに使用することができ、天然産物、例えば、アカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチンからの材料を含む。他には、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)はともに、アルコール溶液中で使用することによって、治療剤を顆粒化することができる。
【0152】
抗摩擦剤(anti−frictional agent)は、治療剤の製剤中に含めることによって、製剤プロセスの間の固着を防止することができる。滑剤は、治療剤とダイス壁の間の層として使用することができ、これらとして、それだけに限らないが、そのマグネシウムおよびカルシウム塩を含めたステアリン酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油、およびワックスを挙げることができる。硫酸ラウリルナトリウム、硫酸ラウリルマグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、カルボワックス4000および6000などの可溶性滑剤も使用することができる。
【0153】
製剤の間の薬物の流動特性を改善し、圧縮の間の再構成を助けることができる流動促進剤を添加することができる。流動促進剤として、デンプン、タルク、焼成シリカ、および水和シリコアルミネートを挙げることができる。
【0154】
水性環境中への治療剤の溶解を助けるために、界面活性物質を湿潤剤として添加することができる。界面活性物質として、陰イオン界面活性剤、例えば、硫酸ラウリルナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホスクシネートおよびジオクチルナトリウムスルホネートなどを挙げることができる。陽イオン性界面活性剤を使用することができ、陽イオン性界面活性剤として、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトミウム(benzethomium chloride)を挙げることができる。界面活性物質として製剤中に含めることができる、潜在的な非イオン界面活性剤のリストは、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースである。これらの界面活性物質は、オリゴヌクレオチドまたは誘導体の製剤中に単独で、または異なる比の混合物として存在することができる。
【0155】
経口で使用することができる医薬調製物には、ゼラチン製の押し込み型カプセル、ならびにゼラチン製のソフト密封カプセル、ならびにグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤が含まれる。押し込み型カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、および場合により安定剤との混合物中に活性成分を含有することができる。ソフトカプセル中では、活性化合物は、適当な液体、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの中に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定剤を添加することができる。経口投与のために製剤化されたミクロスフェアも使用することができる。そのようなミクロスフェアは、当技術分野で洗練されている。経口投与のためのすべての製剤は、そのような投与に適した投与量内であるべきである。
【0156】
頬側投与については、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤またはロゼンジの形態をとることができる。
【0157】
吸入による投与については、本発明によって使用するための化合物は、適当な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスを使用して、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾル噴霧提示の形態で送達されることが好都合となり得る。加圧エアロゾルの場合では、投与量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。吸入器または注入器において使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースまたはデンプンなどの粉末基剤との粉末混合物を封じ込めて製剤化することができる。
【0158】
オリゴヌクレオチド(またはその誘導体)の肺送達も、本明細書に企図されている。オリゴヌクレオチド(または誘導体)は、吸入しながら哺乳動物の肺に送達され、血流へと肺上皮のライニングを横断する。吸入される分子の他の報告として、Adjeiら、1990、Pharmaceutical Research、7:565〜569;Adjeiら、1990、International Journal of Pharmaceutics、63:135〜144(酢酸ロイプロリド);Braquetら、1989、Journal of Cardiovascular Pharmacology、13(補遺5):143〜146(エンドセリン−1);Hubbardら、1989、Annals of Internal Medicine、III巻、206〜212ページ(a1−アンチトリプシン);Smithら、1989、J.Clin.Invest.84:1145〜1146(a−1−プロテイナーゼ);Osweinら、1990、「Aerosolization of Proteins」、Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II、Keystone、Colorado、March、(組換え型ヒト成長ホルモン);Debsら、1988、J.Immunol.140:3482〜3488(インターフェロン−γおよび腫瘍壊死因子α)、ならびにPlatzら、米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)が挙げられる。全身効果のための薬物の肺送達のための方法および組成物は、1995年9月19日にWongらに発行された米国特許第5,451,569号に記載されている。
【0159】
それだけに限らないが、噴霧器、定量吸入器、および粉末吸入器を含めた、治療製品の肺送達のために設計された広範囲の機械的デバイスが、本発明の実践における使用のために企図されており、これらのすべては当業者によく知られている。
【0160】
本発明の実践に適した市販のデバイスのいくつかの具体例は、Mallinckrodt,Inc.、St.Louis、Missouriによって製造されたUltravent噴霧器;Marquest Medical Products、Englewood、Coloradoによって製造されたAcorn II噴霧器;Glaxo Inc.、Research Triangle Park、North Carolinaによって製造されたVentolin定量吸入器;およびFisons Corp.、Bedford、Massachusettsによって製造されたSpinhaler粉末吸入器である。
【0161】
すべてのそのようなデバイスは、オリゴヌクレオチド(または誘導体)の分注に適した製剤の使用を必要とする。一般的に、各製剤は、使用されるデバイスの型に特異的であり、療法において有用な通常の希釈剤、アジュバントおよび/または担体に加えて、適切な噴霧剤材料を使用することができる。リポソーム、マイクロカプセル、またはミクロスフェア、包接錯体、または他の型の担体の使用も企図されている。化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドは、化学修飾の型、または使用されるデバイスの型に応じて、様々な製剤において調製することもできる。
【0162】
ジェットまたは超音波噴霧器を用いて使用するのに適した製剤は、一般的に、溶液1mL当たり約0.1〜25mgの生物学的に活性なオリゴヌクレオチドの濃度で水中に溶解したオリゴヌクレオチド(または誘導体)を含むことになる。製剤は、緩衝液および単糖も含むことができる(例えば、オリゴヌクレオチドの安定化および浸透圧の調節のため)。噴霧器製剤は、エアロゾル形成において溶液の噴霧化によって引き起こされる、オリゴヌクレオチドの表面誘起凝集を低減または防止するために、界面活性物質も含有することができる。
【0163】
定量吸入器デバイスを用いて使用するための製剤は、界面活性物質の助力を用いて噴霧剤中に懸濁されたオリゴヌクレオチド(または誘導体)を含有する微粉化粉末を一般に含むことになる。噴霧剤は、この目的のために使用される任意の従来の材料、例えば、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、もしくはトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含めた炭化水素、またはこれらの組合せとすることができる。適当な界面活性物質には、ソルビタントリオレエートおよびダイズレシチンが含まれる。オレイン酸も、界面活性物質として有用となり得る。
【0164】
粉末吸入器デバイスからの分注のための製剤は、オリゴヌクレオチド(または誘導体)を含有する微粉化乾燥粉末を含むことになり、デバイスからの粉末の散布を促進する量、例えば、製剤の50〜90重量%で、増量剤、例えば、ラクトース、ソルビトール、スクロース、またはマンニトールなども含むことができる。オリゴヌクレオチド(または誘導体)は、最も有利には、遠位肺への最も有効な送達のために、10mm(または数ミクロン)未満、最も好ましくは0.5〜5mmの平均粒径を有する微粒子形態で調製されるべきである。
【0165】
本発明の医薬組成物の経鼻送達も企図されている。経鼻送達は、肺内で製品を堆積する必要なく、鼻部に治療製品を投与した後、直接に血流への本発明の医薬組成物の通過を可能にする。経鼻送達のための製剤には、デキストランまたはシクロデキストランを含むものが含まれる。
【0166】
経鼻投与について、有用なデバイスは、定量散布器が取り付けられた小さな硬質ボトルである。一実施形態では、計量された用量は、本発明の医薬組成物の溶液を、定められた体積のチャンバー中に引き込むことによって送達され、このチャンバーは、チャンバー内の液体が圧縮されるとき、噴霧を形成することによって、エアロゾル製剤をエアロゾル化するような寸法に作られたアパーチャーを有する。チャンバーが圧縮されることによって、本発明の医薬組成物が投与される。特定の実施形態では、チャンバーはピストン配置である。そのようなデバイスは市販されている。
【0167】
あるいは、強く握られたとき噴霧を形成することによって、エアロゾル製剤をエアロゾル化するような寸法に作られたアパーチャーまたは開口部を有するプラスチックスクイーズボトルが使用される。開口部は、ボトルの頂部に通常見出され、この頂部は一般に、エアロゾル製剤の効率的な投与のために、鼻腔内に部分的にはまるように先細りになっている。経鼻吸入器は、測定された用量の薬物を投与するために、計量された量のエアロゾル製剤を提供することが好ましい。
【0168】
化合物は、これらを全身的に送達することが望ましい場合、注射、例えば、大量注射または持続注入による非経口投与のために製剤化することができる。注射用製剤は、保存剤を添加して、単位剤形で、例えば、アンプルまたは複数回用量容器で提示することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態をとることができ、製剤化剤(formulatory agent)例えば、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などを含有することができる。
【0169】
非経口投与のための医薬製剤には、水溶性形態での活性化化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁液を、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適当な親油性溶媒またはビヒクルとしてゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランなどを含有することができる。懸濁液は、適当な安定剤、または化合物の溶解度を増大させることによって、高度に濃縮された溶液の調製物を可能にする作用剤も場合により含有することができる。
【0170】
あるいは、活性化合物は、使用前に、適当なビヒクル、例えば、滅菌した発熱物質なしの水を用いて構成するための粉末形態とすることができる。
【0171】
化合物は、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する、坐剤または停留浣腸などの直腸組成物または膣組成物で製剤化することもできる。
【0172】
以前に述べた製剤に加えて、化合物は、デポー調製物として製剤化することもできる。そのような長時間作用型製剤は、適当なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容できる油中のエマルジョンとして)、またはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として製剤化することができる。
【0173】
医薬組成物は、適当な固相またはゲル相の担体または賦形剤を含むこともできる。そのような担体または賦形剤の例として、それだけに限らないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。
【0174】
適当な液体または固体の医薬調製物形態は、例えば、吸入用の水溶液または食塩液であり、マイクロカプセル化されており、渦巻形にされており(encochleated)、微視的な金粒子上にコーティングされており、リポソーム内に封じ込められており、霧状化されており、エアロゾルであり、皮膚内への移植用のペレットであり、またはひっかいて皮膚中に入れるための鋭い物体上に乾燥されている。医薬組成物として顆粒、粉末、錠剤、コーティングされた錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、液滴、または活性化合物の遅延放出を伴う調製物も挙げられ、その調製物中に、賦形剤および添加剤および/または助剤、例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、滑剤、香味料、甘味料または可溶化剤などが、上述したように慣習的に使用される。この医薬組成物は、様々な薬剤送達系において使用するのに適している。薬物送達のための方法の簡単な概説については、参照により本明細書に組み込まれている、Langer、Science 249:1527〜1533、1990を参照されたい。
【0175】
免疫調節性オリゴヌクレオチド、および場合により他の治療剤および/または抗原は、それ自体で(純粋の)、または薬学的に許容できる塩の形態で投与することができる。医薬中に使用される場合、塩は、薬学的に許容できるべきであるが、薬学的に許容できない塩を、その薬学的に許容できる塩を調製するのに使用することができることが好都合である。そのような塩には、それだけに限らないが、以下の酸から調製されるものが含まれる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、そのような塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩、例えば、カルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩として調製することができる。
【0176】
適当な緩衝剤として酢酸と塩(1〜2% w/v);クエン酸と塩(1〜3% w/v);ホウ酸と塩(0.5〜2.5% w/v);およびリン酸と塩(0.8〜2% w/v)が挙げられる。適当な保存剤には、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03% w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9% w/v);パラベン(0.01〜0.25% w/v)、およびチメロサール(0.004〜0.02% w/v)が含まれる。
【0177】
本発明の医薬組成物は、有効量の免疫調節性オリゴヌクレオチド、および場合により抗原および/または他の治療剤を含有し、薬学的に許容できる担体中に場合により含められている。用語「薬学的に許容できる担体」は、ヒトまたは他の脊椎動物への投与に適した、1つまたは複数の適合性の固体または液体の充填剤、希釈剤、または封入物質を意味する。用語「担体」は、天然または合成の、有機または無機の成分を表し、活性成分がこれと混合されることによって用途を促進する。医薬組成物の成分はまた、所望の薬学的効率を実質的に損なう相互作用が存在しない様式で、本発明の化合物と、および互いに混ぜ合わせることができる。
【0178】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示され、これは、さらに限定するものとして解釈されるべきではまったくない。本願全体にわたって引用された参考文献(文献参照、発行済み特許、公開特許出願、および同時係属特許出願を含む)のすべての全内容は、参照により本明細書に明白に組み込まれている。
【実施例】
【0179】
材料および方法
オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)および試薬
FANA修飾オリゴヌクレオチド(ODN)の固相合成
オリゴヌクレオチドは、標準的なβ−シアノエチルホスホルアミジット化学反応を使用して、1μモルスケールで、AKTA Oligopilot 10 DNA/RNAシンセサイザー(GE−Healthcare)で合成した。Primersupport PS200は、GE−Healthcareから購入した(処理量(loading):40μmol/g)。5’−DMT保護β−シアノエチルホスホルアミジットを、オリゴ−2’−デオキシヌクレオチドの合成のために使用した。DMT基は、合成の5’末端で除去した。
【0180】
脱保護および精製
ODN(表1)を、濃アンモニア水を用いた処理(40℃、4時間)によって脱保護し、固体支持体から切断した。精製は、以下の勾配系を用いて、SOURCE 15Q陰イオン交換カラム(CV:6ml、GE Healthcare)上で実現した:緩衝液A:10mM水酸化ナトリウム、pH12;緩衝液B:2.5Mの塩化ナトリウム、10mMの水酸化ナトリウム、pH12。使用した勾配は、オリゴヌクレオチド配列に依存した。クロマトグラフィーシステムは、Frac950画分収集器を有するAKTA Purifier 10(GE Healthcare)であった。生成物含有画分は、Biogel P4カラムで脱塩し、凍結乾燥した。
【0181】
分析
ODNは、以下のモジュールを有するAgilent 1100 HPLCシステムで分析した:マイクロ真空脱ガス器(degaser)(G1379A)、バイナリーポンプ(G1312A)、ウェルプレートサンプラー(G1367A)、カラム乾燥器(G1316A)、およびBruker Esquire 3000+イオントラップ質量分析計(ネガティブモード)と連結したMWD(G1365B):カラム:Waters X−Bridge C18 2.5μm 2.1×50mm;カラム温度60℃;260nmでのUV検出;流速:0.2mL/分;溶媒A:385mMのHFIP+14.4mMのTEA;溶媒B:メタノール;注入量:10μL;勾配:0分:5%のB、15分:17.5%のB、50分 24%のB、65分:45%のB。
【0182】
【表1】

【0183】
脱プリンアッセイ
ODNを水に溶解させて250μMの最終濃度にした。各ODNについて、ODN溶液を水および1NのHClと混合し、0.1NのHCl中1μg/μlの最終濃度を有するODN溶液を得ることによって、3つの試料(20μl)を調製した。各ODNについて、HClを含まない、1μg/μlの最終ODN濃度を有する別個の溶液を調製し、これを、脱プリン実験におけるゼロ時点の試料として使用した。HCl含有試料を、室温で10、240および1440分間インキュベートした。インキュベーション後、約5.3μlのNHOH(1%)を添加することによって、沈殿したODNを溶解させた。試料は、30℃のカラム温度で、勾配分離(溶媒A:100mMのTEAAc、溶媒B:ACN;0%のB(0分)、9%のB(9分)、40%のB(25分)、95%のB(30分)、95%のB(35分)、0%のB(36分)、0%のB(50分))を使用して、Waters Atlantis C18 3μm カラム 2.1×150mm上で、HPLCによって分析した。グアニンは、274nmのUVでモニターした。検量線は、既知のグアニン濃度の標準試料を分析することによって作成した。ODN試料中の実際のグアニン濃度は、標準試料から得た較正曲線を使用して逆算した。
【0184】
TLRアッセイ
HEK293細胞を、それぞれヒトTLRおよび6xNF−κB−ルシフェラーゼレポータープラスミドを発現するベクターを用いて、電気穿孔によって形質移入した。安定な形質移入体(3×10細胞/ウェル)を、指定量のODNとともに、加湿インキュベーター内で、37℃で16時間インキュベートした。各データポイントは、三つ組で行った。細胞を溶解し、ルシフェラーゼ遺伝子活性についてアッセイした(Perkin−Elmer、Zaventem、BelgiumからのBriteLiteキットを使用して)。刺激指数は、ODNの添加のない培地のレポーター遺伝子活性に関して計算した。
【0185】
細胞精製
健康なヒトドナーからの末梢血バフィーコート標本を、University of Dusseldorf(ドイツ)の血液銀行から得、PBMCを、Ficoll−Hypaque(Sigma)による遠心分離によって精製した。細胞は、加湿インキュベーター内で、5%(v/v)の熱失活ヒトAB血清(BioWhittaker)または10%(v/v)の熱失活FCS、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(すべてSigmaから)を追加したRPMI1640培地中で、37℃で培養した。
【0186】
サイトカイン検出およびフローサイトメトリーによる分析
PBMCを、5×10細胞/mlの濃度で再懸濁し、96ウェル丸底プレート(250μl/ウェル)に添加した。PBMCを、ODNとともにインキュベートし、培養上清(SN)を、指定時点後に収集した。直ちに使用しない場合、SNは、必要とするまで−20℃で貯蔵した。
【0187】
SN中のサイトカインの量は、市販の抗体(PBL、New Brunswick、NJ、USA)を使用して開発したIFN−αについて社内のELISAを使用して評価した。
【0188】
緒言
非メチル化CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチド(ODN)は、トール様受容体9(TLR9)経路を通じて免疫応答を刺激することができる。非天然糖残基を有するODNは、天然ヌクレオチドと比較して、ヌクレアーゼに対する一般により劣った基質である。CpGジヌクレオチドにおける、またはCpGモチーフの5’側での2’−デオキシリボースのある特定の型の置換は、hTLR9の刺激を減少させることが報告されており[Zhaoら(1999)Biorg.Med.Chem.Lett.9、3453];例えば、2’−O−メチルによるGTCpGTTにおける5’−Gの修飾は、hTLR9経路を通じた活性を強く減少させた。意外にも、FANA修飾ODNは、hTLR9活性において同じ減少を示さない。CpG ODNの生物活性に対する2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノ(FANA)ヌクレオシドの影響は、以下の実施例で説明する。図1は、2’−exo配座に有利である2’−O−メチル修飾糖と異なって、FANA修飾糖の構造は、好適な2’−endo配座に有利であることを示す。
【0189】
(実施例1)
FANA修飾G残基を有するオリゴヌクレオチドは、低pHで安定である
脱プリンの機構を以下に示す。
【0190】
【化2】

配列番号1(1つのGがfaGで交換された、表2を参照されたい)および配列番号5(両方のG’が交換された)の安定性を調査した。胃内のpHを模倣する、0.1MのHCl中でODNをインキュベートし、脱プリンを、RP−HPLCによって経時的に測定した。酸安定性は、FANA修飾G(faG)によるGの置換によって強く改善された(図2)。すべてのG残基がfaGによって交換された配列番号5は、24時間の調査した期間にわたって、pH1の酸に対して安定であった。ただ1つのfaGを有するODN(配列番号1)でさえ、その無修飾親配列(配列番号8)に対して、安定性の増大を示した。この結果は、Gに富むODNの製造についての有意性を有するが、これは、脱プリン副生成物の形成が、ODNの5’末端でのジメトキシトリチル基の酸除去の間の問題であるためである。しかし、pHで安定であるODNは、経口投与に対するより良好な候補であるはずであることがより重要である。
【0191】
(実施例2)
CpG免疫賦活性モチーフにおけるfaGの取込みは、インビトロでヒトTLR9活性化を増大させる
FANA修飾オリゴヌクレオチドの、TLR9を活性化する能力を試験するために、いくつかのBクラスCpG ODNを、FANA修飾とともに合成し、TLR9を活性化する能力を試験した。ODNをhPBMCとともにインキュベートし、IFN−αの分泌をELISAによって測定した。いくつかの修飾を、六量体モチーフGTCGTT中に導入した。図3に示すように、CpGモチーフでのfaCによるCの置換(FANAシチジン誘導体)(配列番号3)は、効力および有効性の両方が低減するため、hTLR活性が強く減少した。意外にも、CpGジヌクレオチドモチーフにおける、faGによるGの置換(配列番号4)は、faC修飾オリゴヌクレオチドに対して、効力が著しく強化された。CGジヌクレオチドの外側のヘキサヌクレオチドモチーフにおいて、TまたはGがFANAヌクレオチドで置換されたODNは、無修飾親(配列番号8)と同様の有効性および効力を有した。ヘキサヌクレオチドモチーフにおける両方のGヌクレオチドを、faGと取り替えた場合(配列番号5)、hTLR9における有効性は、親ODNより著しく良好であった。
【0192】
GがfaGによって交換されたODNの活性の改善は意外な例であり、デオキシリボース糖部分の修飾は、他の型の修飾にみられる減少よりむしろ、hTLR9アッセイにおける活性の強化がもたらされた。
【0193】
【表2】

【0194】
(実施例3)
CpGモチーフにおけるfaGの取込みは、インビトロでIFN−α分泌をわずかに増大させる
インビトロでIFN−α分泌を誘発する能力に対するFANA置換の影響を研究するために、Cクラス由来ODNを、hPBMCとともにインキュベートし、IFN−α分泌をELISAによって測定した(表3および図4を参照されたい)。意外にも、5’末端の最初のGがfaGによって交換された配列番号9は、無修飾親の配列番号15より、IFN−αを誘発することに関して強力であった。さらに、CクラスODNにおけるGのfaGによる置換は、すべてのG残基が取り替えられても一般に耐容性良好であると思われた。
【0195】
【表3】

【0196】
本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様をこのように説明してきたが、様々な変更、修飾、および改善が当業者に容易に考えつくことが理解されるべきである。そのような変更、修飾、および改善は、本開示の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲内であることが意図されている。したがって、前述の説明および図面は一例に過ぎない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの免疫調節性ZNYZモチーフを含み、Zは、プリンヌクレオシドまたはFANA修飾プリンヌクレオシドであり、Nは、T、A、または5−置換Uであり、Yはピリミジンヌクレオシドであり、少なくとも1つのZは、FANA修飾プリンヌクレオシドを含む、長さが8〜200ヌクレオチドの免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記免疫調節性モチーフがZNYZ Nである、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記免疫調節性モチーフがZNYGモチーフであり、YGが内部ピリミジン−グアニンジヌクレオチドである、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項4】
N、N、N、NおよびNがTである、請求項2に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記免疫調節性モチーフの5’側に少なくとも4つのヌクレオチドを含む、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記免疫調節性モチーフの外側の少なくとも1つのヌクレオチドがFANA修飾を有する、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項7】
アンチセンスオリゴヌクレオチドではない、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項8】
複数の内部YZジヌクレオチドを含み、すべての内部YZジヌクレオチドのZがFANA修飾を含む、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項9】
Zが、グアノシン(G)、2’−デオキシグアノシン、2’−デオキシ−7デアザグアノシン、2’−デオキシ−6−チオグアノシン、2’−デオキシ−8−ヒドロキシグアノシン、アラビノグアノシン、2’−デオキシイノシン、2’−デオキシ2’−置換−アラビノグアノシン、2’−O−置換−アラビノグアノシン、または他の非天然プリンヌクレオシドである、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項10】
前記YがCであり、ZがGであり、CGジヌクレオチドのCがメチル化されていない、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項11】
Yが、シトシン、2’−デオキシシトシン、2’−デオキシチミジン、アラビノシチジン、1−(2’−デオキシ−B−D−リボフラノシル)−2−オキソ−7−デアザ−8−メチルプリン、2’−デオキシ−2’−置換アラビノシチジン、2’−O−置換アラビノシチジン、2’−デオキシ−5−ヒドロキシシチジン、2’−デオキシ−N4−アルキルシチジン、2’−デオキシ−チオウリジン、または他の非天然ピリミジンヌクレオシドである、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項12】
ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、メチルホスホロチオエート、ホスホノアセテート、Rp−ホスホロチオエート、Sp−ホスホロチオエート、ボラノホスフェート、または3’−チオホルムアセタールからなる群から選択される、少なくとも1つの安定化ヌクレオチド間連結をさらに含む、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項13】
第2型の糖修飾をさらに含み、前記第2型の糖修飾が、2’−O−メチルリボース、2’−O−プロパニルリボース、2’−O−ブチルリボース、2’−O−(2−メトキシエチル)、2’−O,4’−C−アルキレン−連結リボース(アルキレンはメチレン(LNA)もしくはエチレンである)、2’−デオキシ−2’−フルオロリボース、3’−O−メチルリボース、1’,2’−ジデオキシリボース;アラビノース、1’−メチルアラビノース、3’−ヒドロキシメチルアラビノース、4’−ヒドロキシメチル−アラビノース、または1,5−アンヒドロヘキシトールからなる群から選択される、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項14】
少なくとも1つの3’−3’ヌクレオチド間連結、および/または少なくとも1つの5’−5’ヌクレオチド間連結、および/または少なくとも1つの2’−5’ヌクレオチド間連結をさらに含む、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項15】
少なくとも1つのパリンドローム配列をさらに含む、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項16】
少なくとも1つの(G)配列をさらに含み、nは4〜10である、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項17】
少なくとも1つの疎水性T類似体および/または少なくとも1つの5−置換U類似体を含む、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項18】
前記オリゴヌクレオチドの親油性修飾をさらに含む、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項19】
リンカーを含む、請求項1に記載の免疫調節性オリゴヌクレオチド。
【請求項20】
配列番号1〜配列番号16を含むセットから選択されるオリゴヌクレオチド配列。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−500014(P2011−500014A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528498(P2010−528498)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002623
【国際公開番号】WO2009/047610
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(508092912)コーリー ファーマシューティカル ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】