説明

個々に投薬でき、液体に接触すると急速に分解する活性物質含有および特に芳香物含有膜状投与形態

【課題】個々に投薬でき、液体に接触すると急速に分解する、活性物質含有および、特に、芳香物含有の膜状投与形態の提供。
【解決手段】芳香物が液滴の形態で、外側の固体であるが水溶性相内に分散した内側脂溶性相として存在する形態で、外側相が、少なくとも40%(g/g)のポリビニルアルコールと、0〜30%(g/g)の表面活性剤とを含み、内側相の外側相に対する割合が、各場合、無水部分に関して、0.1〜30%(g/g)である膜状組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々に投薬でき、液体に接触すると急速に分解する、活性物質含有および、特に、芳香物含有の膜状投与形態であって、芳香物が、内部の脂溶性相として、液滴形態で、外側の固体の水溶性相に分散して存在する投与形態に関する。
【背景技術】
【0002】
口部領域および口の粘膜上に適用する平らな投与形態は公知である。米国特許第3,444,858号明細書(特許文献1)は、ゼラチン状材料を主成分にした薬剤片を記載している。また、膜状の薬品については、例えば、ニューイングランド医学誌、289、533〜535(1973)(非特許文献1)などに、70年代初頭にすでに記載されている。ドイツ特許2449865号明細書(特許文献2)は、異なる活性物質および活性物質濃縮物を含有する膜形態での薬用活性物質担体を記載している。
【0003】
米国特許第4,128,445号明細書(特許文献3)は、活性物質を有する担体材料の装填における技術的解決法を記載し、この中で、後の工程で行う活性物質調剤の添加について記載しており、これは、予め作っておいた膜状の調剤に活性物質調剤を塗布することによって行う。この文献は、後の工程である活性物質の層上への分散を均一に行うことを目的とした、乾燥および湿潤形態での装填方法を記載している。カナダ特許出願第492040号明細書(特許文献4)は、ゼラチン、寒天、グルテン、カルボキシビニルポリマー、多価アルコール、植物粘質物、ワックスまたは水とともに活性物質を用いた膜状調剤の製造プロセスを記載している。
【0004】
また、医薬品分野以外での活性物質装填膜または箔の応用について提案がなされている。欧州特許第0219762号明細書(特許文献5)は、デンプン、ゼラチン、グリセロールまたはソルバイトの水溶性膜が開示されており、これらは、ロールコート法を用いてコーティングされている。これに関し、このような投与形態はまた、化学試薬、芳香物などの成分を用いて製造することもできるかもしれないと記載している。
【0005】
ドイツ特許第3630603号明細書(特許文献6)は、投与において剥離可能な担体材料(剥離膜)上の平らな投与形態を提供している。
【0006】
薬剤含有膜状システムおよびこれらの利点は、さらに、米国特許第5,047,244号明細書(特許文献7)から公知である。これらのシステムは、水膨張可能層および水膨張不可能バリア膜との2層構造を有する。ポリエチレングリコールなどのポリマーの使用、コロイド状二酸化けい素の使用、生体付着性(例えば、カルボキシ官能基)ポリマーの使用、しかしまた、ポリビニルアルコールの使用および多くの他の補助物質の使用も同様に上記文献から公知である。
【0007】
膜状芳香物含有調剤の製造に適した調製は、欧州特許第0460588号明細書(特許文献8)に記載されている。20〜60重量%の膜形成物、2〜40重量%のゲル形成物、0.1〜35重量%の活性物質または芳香物および最大40重量%の不活性充填剤を含む組成物が、特に利点があるとみなされている。ゲル形成物として、他の成分に加えポリビニルアルコールに言及している。しかし、結局は、ポリビニルアルコールのゲル形成特性は、この文献に言及されている膜形成物と部分的にしか適合しない。ほとんどが蔗糖誘導体、ポリエチレングリコールなどである膜形成物の部分が、20重量%以上であるので、製造プロセスの一部である薄膜乾燥において、すでに芳香のかなりが失われる。
【0008】
マイクロカプセルは、固体相で封入することにより、揮発性または不相溶性の細かく分散した生成物を保護した公知の適用形態である(例えば、バウアー/フレンミヒ(Bauer/Frommig)、製薬技術(pharmazeutische Technologie)、シュツットガルト1986、563〜566(非特許文献2))。マイクロカプセル化した芳香物の場合、封入することによって、個々の液滴が、例えば、自由流動的になるなど、プロセス可能になる。このような形態は、例えば、米国特許第5,286,496号明細書(特許文献9)のように、口部領域での適用にすでに提案されている。しかし、これらは、より大きなサイズを有する最終生成物の製造のための細かく粉砕した中間生成物である。
【0009】
口部領域での適用のための芳香物含有シート状投与形態もまた、欧州特許第0452446号明細書(特許文献10)から公知である。しかし、この文献は、製造および貯蔵中、芳香物質の蒸発を防止する手段を記載していない。
【0010】
米国特許第4,946,684号明細書(特許文献11)において、水分安定性を向上させるための蔗糖アルコールの使用が、膜形状形態ではないが、平らな固体の開口気孔発泡という外観をもつこのような形態に関して提案されている。しかし、本発明者らの知見によれば、芳香物の加工処理において、このような溶解度増加添加物を高い割合で使用すると、芳香がより多く失われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,444,858号明細書
【特許文献2】独国特許発明第2449865号明細書
【特許文献3】米国特許第4,128,445号明細書
【特許文献4】カナダ特許出願第492040号明細書
【特許文献5】欧州特許第0219762号明細書
【特許文献6】独国特許発明第3630603号明細書
【特許文献7】米国特許第5,047,244号明細書
【特許文献8】欧州特許第0460588号明細書
【特許文献9】米国特許第5,286,496号明細書
【特許文献10】欧州特許第0452446号明細書
【特許文献11】米国特許第4,946,684号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ニューイングランド医学誌、289、533〜535(1973)
【非特許文献2】バウアー/フレンミヒ(Bauer/Frommig)、製薬技術(pharmazeutische Technologie)、シュツットガルト1986、563〜566
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、芳香物成分を含む膜形状の担体の製造および組み立ての公知の方法は、基本的な欠点を有している。1つには、それらの機械強度が不十分である。特に、得られた膜の曲げ強度および引裂き抵抗が、使用者が使い易い日常の適用に不十分である。より柔らかくなるように調節すると、膜は、「コールドフロー」という現象、すなわち、互いに癒着する傾向を示す。この特性は、使用者が、これらの物を個々に適用または投薬することができなくなるので、都合が悪い。しかし、最大の欠点は、先行技術による芳香物含有膜は、その構造および選択した補助物質により、製造および貯蔵中にかなりの芳香が失われるということである。この消失は、基材中での移動/拡散およびその後の蒸発による芳香物の全体的な量的消失の結果である。同時に、すぐに揮発する、質を決定する単一成分が、最もよく失われる成分であるので、味覚印象の質が変化する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の従来技術に基づき、本発明は、請求項1の導入部の包括部分に示すような、個々に投薬する投与形態であって、機械特性が向上し、製造および貯蔵中の芳香の消失が最小であり、上記の欠点および問題点を回避することができる投与形態を提供することを目的としている。
【0015】
この目的は、請求項1の特徴を有する本発明によって達成する。液滴状で芳香物質を含有する、活性物質含有内部相が、外側の固体であるが水溶性の、請求項1の特徴部に記載のような、ポリビニルアルコール、表面活性剤および充填剤の部分を含む相に封入され、内部相の構成量が、外側相に対して0.1〜30重量%である。かなりのポリビニルアルコール部分を用いて、芳香物が膜内に埋め込まれ、それにより、2相システムを形成している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による投与形態は、最大でも5分以内に口の中で分解し、そのプロセス中に、そこに含有されている芳香物を放出し、好ましくは、化粧品、医薬品、および食品技術応用において役立つ。本発明によって得られる生成物は、表面安定性、可撓性および耐破壊性を有し、また、大きな引裂き抵抗も有する。表面が低粘着性で粗いので、静摩擦が少なく、実質的に「コールドフロー」がない。
【0018】
本発明の主な目的は、外側相は、実質的にポリビニルアルコールからなり、芳香物含有内側相の外側相に対する構成量は、各場合、無水部分に関して、0.1〜30%(w/w)、好ましくは、1〜5%(w/w)である。0.1重量%未満では、それらの相は、互いに可溶し、30重量%より多ければ、外側相が大きくなり、膜形状にならない。
【0019】
外側相に表面活性剤を最大30%(w/w)まで添加することによって、液滴の分布、およびそのサイズの均一性を向上させることができる。サイズは、1μm未満〜約100μm程度である。充填剤を最大40%(w/w)まで添加するのは、本発明の利点の障害となるのではなく、応用の範囲を広げることになる。例えば、乾燥歯磨きとして使用できる。この目的に適しているのは、二酸化けい素、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、燐酸カルシウムまたはこれらの物質の混合物であるが、これらの例は一例にすぎない。ナトリウムサッカリナート(sodium saccharinate)、他の甘味料、塩、および蔗糖誘導体のような芳香増強物質は、例えば、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸またはグルタミン酸などの低分子有機酸と同様に、味覚印象を向上させるのに適している。
【0020】
得られた膜状生成物は、20〜300μmの厚さを有するのが好ましく、サイズは、0.5以上8cm2以下であるのがよい。
【0021】
使用するポリビニルアルコールは、部分的に加水分解した形態であり、水酸基の1〜20%、特に好ましくは12%が、アセチル基に置換されているのが好ましい。
【0022】
本発明の核心は、芳香または香りのある物質およびさらに風味剤の物質状態にある。これらの物質は、本質的にエーテル系オイル(植物の芳香を放つ部分の揮発性、不水溶性留分)および水との相溶性が制限された他の揮発性芳香または風味物質である。このような物質の例として、バラ芳香の芳香物の成分としてのフェニルエタノール、新鮮なペパーミント様の芳香物でのメントール、カンフェンおよびピネン、食欲増進芳香物、例えば、n−ブチルフタリドまたはシネオールのような香辛料的な芳香物、しかしまた、ユーカリ油およびタイム油のような医薬応用を有する芳香物がある。食品の添加物として用いたり、予め製造された食品添加物に用いられている揮発性オイルおよび/または芳香物は、非常に広範な分野にわたっている。これらの例として、いわゆる果物エーテルがあるが、また、エチルバニリン、6−メチルクーマリン、シトロネロールまたはn−ブチルアセテートなどの他の芳香物もある。
【0023】
例示された上記の芳香物は、大部分が互いに相溶性を有するが、いかなる割合ででもベース物質であるポリビニルアルコールに対し相溶性を有するとは限らず、また水とも相溶性があるとは限らず、これらは、本発明によると、ベース物質内に埋め込まれた小滴としてカプセル化されている。この状態の特徴は、芳香物は、固体内に細かい液滴の形態で内側相に存在するが、その他は、乾燥したポリビニルアルコールおよび、任意には、さらに添加物を含んでいるモノリシックの外側相であるということである。固体担体材料内での液滴の形態での液体活性物質の分散技術は、以前から公知であることは事実であるが、それにもかかわらず、従来、その技術は、液滴形成、スプレー乾燥およびスプレー凝固プロセスおよび最終生成物が粉状になるプロセスにのみ用いられていた。しかし、本発明は、外側相が、微視的に実体があり、従って、生成物の単純で、モノリシックな構造が可能となる分散状態を記載する。
【0024】
製造技術に関する利点もまた明白である。膜状投与形態へとさらに加工する間に、水分に感度の高い滴状の最初の生成物の完全性が阻害されることを防止する。また、中間ステップ、エネルギー消費の増加が回避できる。エーテル系オイルおよび他の芳香物への特に低い拡散性を特徴とする補助物質ポリビニルアルコールを同時に使用することで、最終製品の製造および貯蔵の両方において、含まれる芳香物および風味をできる限り保存し、これらの物質が投与形態から拡散することを確実に防止する。
【0025】
システムの機械強度が、特に、ポリビニルアルコールの使用に起因するとしても、他の水可溶性ポリマー部分が20%以下の場合は、本発明の生成物の質に悪影響があるとは限らない。機械的生成物特性の調節に関して、ポリエチレングリコールおよび他の可塑化添加物を添加することによっても、有利な特性が達成される。
【0026】
本発明による生成物の製造および処理は、当業者に公知の方法により行うことができる。これに関連して、欧州特許第0460588号明細書およびドイツ特許第3630603号明細書により公知の従来技術が、特に参考になる。
【0027】
好ましい方法において、第1に、ポリビニルアルコールの30%(w/w)溶液を水に溶解する。ゆっくりと攪拌しながら、予め秤量した量の芳香または風味物質をこの相に与える。このプロセスにおいて、高いせん断力攪拌運動は避けなければならない。温度を30〜40℃未満に調節し、比較的少量の可溶添加剤を添加することによって、感度の高い芳香または風味物質の溶解または蒸発を防止する。典型的には、液体の塊は、数時間しか物理的に安定していないので、すぐに、好ましくは、約200〜300μmの層厚さに、例えば、膜材または金属ローラのような担体にコーティングし、乾燥しなければならない。乾燥は、カナルドライヤー(canal dryer)で温度を80℃まで増加させながら、所望の生成物硬度に達するまで行うことができる。もし、低表面粘着が所望の場合、粗い表面を有する剥離コーティングされた材料上にコーティングすることによって生成物の表面が無光沢になる。
【0028】
顔料および他の光散乱添加物が阻害しない限り、2相構造により、驚くほど、膜の半透明から透明の外観が実現可能である。一般的な芳香物質の光屈折率は、通常、ポリビニルアルコールの屈折力に近いので、光の散乱は起こらない。
しかし、例えば、ソルバントレッド(Solvent Red)のような脂肪親和性の着色料で内側相を着色することによって、微視的に、いつでも芳香物質の分散状態を示すことができる。
【実施例】
【0029】
実施例:本発明による投与形態の調製 約90℃で、攪拌しながら、17.0gのポリビニルアルコール(加水分解度:88%)を60.0gの水に完全に溶解する。冷却後、8.0gのスペアミントオイルをそれに添加し、これを60分間ゆっくりと攪拌する。得られた均一に濁った粘性の塊を400μmの層厚さに、200μmの強力なポリエチレンテレフタレート膜に塗布する。
【0030】
10分間、室温でその層を乾燥し、次いで、50℃で8分間再乾燥する。これにより、モノリシックな外観を有する透明膜になり、水を添加すると、60秒以内で完全に溶解する。24時間、相対湿度60%での均衡化後、膜は、1mmの曲げ半径に対する曲げ強度を保持する。表面は乾燥し、滑りを有しているので、積み重ね状態での永続的な貯蔵が可能である。25℃/相対湿度60%での1週間の非梱包貯蔵後、主観的味覚印象に変化はない。
【0031】
本発明は、以下に図面により図示する。
参照番号(本発明の投与形態の断面図中)は、1は、膜状投与形態の外側の水溶性相を示し、2は、芳香物または風味物を含有する内側の脂溶性相を示す。
【符号の説明】
【0032】
1 膜状投与形態の外側の水溶性相
2 芳香物または風味物を含有する内側の脂溶性相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々に投薬でき、液体に接触すると急速に分解する、活性物質含有および、特に、芳香物含有の膜状投与形態であって、芳香物が、内部脂溶性相として、液滴の形態で、外側の固体であるが水溶性相内に分散して存在する投与形態であって、
前記外側相が、少なくとも40%(w/w)のポリビニルアルコールと、0〜30%(w/w)の表面活性物質とを含み、内側相の構成量が、外側相に対して、各場合、無水部分に関して、0.1〜30%(w/w)であることを特徴とする投与形態。
【請求項2】
前記外側相が、最大40%(w/w)まで充填剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の投与形態。
【請求項3】
前記内側相の構成量が、外側相に対して、各場合、無水部分に関して、1〜5%(w/w)であることを特徴とする請求項1または2に記載の投与形態。
【請求項4】
前記充填剤が、二酸化けい素、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、燐酸カルシウムまたはこれらの物質の混合物からなることを特徴とする請求項3に記載の投与形態。
【請求項5】
20〜300μmの厚さの膜として存在することを特徴とする請求項1から4の1つ以上に記載の投与形態。
【請求項6】
0.5〜8cm2の面積を有する膜として存在することを特徴とする請求項1から5の1つ以上に記載の投与形態。
【請求項7】
少なくとも1つの面に低粘着の粗い表面を有することを特徴とする請求項1から6の1つ以上に記載の投与形態。
【請求項8】
前記ポリビニルアルコールが、部分的に加水分解した形態で存在し、水酸基の最大20%までが、アセチル基で置換されていることを特徴とする請求項1に記載の投与形態。
【請求項9】
最大20%まで水溶性ポリマーを含有することを特徴とする請求項1に記載の投与形態。
【請求項10】
可塑化添加剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の投与形態。

【図1】
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【公開番号】特開2010−270133(P2010−270133A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162577(P2010−162577)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【分割の表示】特願平10−525935の分割
【原出願日】平成9年11月21日(1997.11.21)
【出願人】(397036170)エルティエス ローマン テラピー−ズュステーメ アーゲー (6)
【Fターム(参考)】